(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】真空バルブ、ターボ分子ポンプおよび真空容器
(51)【国際特許分類】
F16K 51/00 20060101AFI20240116BHJP
F04D 19/04 20060101ALI20240116BHJP
F16K 51/02 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
F16K51/00 B
F04D19/04 H
F16K51/02 A
(21)【出願番号】P 2020097272
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】小崎 純一郎
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/063805(WO,A1)
【文献】特開2007-180467(JP,A)
【文献】特表2022-552791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 51/00
F04D 19/04
F16K 51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気流路の開口面積を調節する真空バルブであって、
前記排気流路の開口面積を調節し、凹部が形成された弁体と、
前記排気流路の内部を移動するパーティクルを捕捉するための第1捕捉部材とを備え、
前記第1捕捉部材は、前記凹部に配置され
た、網目状の金属の細線からなるシート状の網目構造体である、真空バルブ。
【請求項2】
請求項1に記載の真空バルブにおいて、
前記凹部を構成する前記弁体の表面は、斜面、曲面、球面または放物面のいずれかである、真空バルブ。
【請求項3】
請求項1に記載の真空バルブにおいて、
前記凹部の側面は、前記弁体における弁座に対向する面に略垂直である、真空バルブ。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の真空バルブにおいて、
前記凹部は、前記真空バルブが全開状態または一部開状態のときに、前記排気流路の下流側の開口部に対向する位置に配置される、真空バルブ。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の真空バルブにおいて、
前記真空バルブは、前記弁体が前記排気流路に直交する方向に移動するか、または、前記弁体が前記排気流路を流れる流体の流れ方向に移動する形式のバルブである、真空バルブ。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の真空バルブと、
前記真空バルブが接続される吸気口が形成されたターボ分子ポンプ本体とを備えるターボ分子ポンプ。
【請求項7】
排気流路の開口面積を調節する真空バルブと、
前記真空バルブが接続される吸気口が形成されたターボ分子ポンプ本体と、を備え、
前記真空バルブは、
前記排気流路の開口面積を調節し、凹部が形成された弁体と、
前記排気流路の内部を移動するパーティクルを捕捉するための第1捕捉部材と、
を備え、
前記第1捕捉部材は、前記凹部に配置されており、
前記ターボ分子ポンプ本体は、前記吸気口とロータとの間の流路に、パーティクルを捕捉するための第2捕捉部材を備える
、
ターボ分子ポンプ。
【請求項8】
真空室と、
前記真空室の排気側に設けられ、排気流路の下流側の面に凹部が形成された弁体と、
前記排気流路の内部を移動するパーティクルを捕捉するための第1捕捉部材とを備え、
前記第1捕捉部材は、前記凹部に配置され
た、網目状の金属の細線からなるシート状の網目構造体である、真空容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空バルブ、ターボ分子ポンプおよび真空容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子ポンプは、半導体生産等のエッチングプロセスおよび化学気相成長(chemical vapor deposition;CVD)プロセスの際に、これらのプロセスが行われる真空容器の排気において使用される。この真空容器からターボ分子ポンプ内に、これらのプロセスにおける生成物等のパーティクルが流入すると、パーティクルは高速回転するロータにより跳ね飛ばされる場合がある。この跳ね飛ばされたパーティクルを反跳パーティクルと呼ぶ。反跳パーティクルは上記真空容器の内部まで達することがある。
【0003】
この問題に対処するため、真空容器とロータとの間に配置された部材により、反跳パーティクルを捕捉することが提案されている。特許文献1では、細線を編み上げて形成され、ターボ分子ポンプの吸気口とロータとの間に配置された円筒状の網目構造体により反跳パーティクルが捕捉される。特許文献2では、処理室と排気ポンプとの間の排気流路に突出自在な弁体に放射状に配置された細板状の阻止部材により、反跳パーティクルが阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-223213号公報
【文献】特開2010-034392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1および2の方法では、反跳パーティクルを捕捉するための部材を流路に配置することにより、流路のコンダクタンスが低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、排気流路の開口面積を調節する真空バルブであって、前記排気流路の開口面積を調節し、凹部が形成された弁体と、前記排気流路の内部を移動するパーティクルを捕捉するための第1捕捉部材とを備え、前記第1捕捉部材は、前記凹部に配置されている、真空バルブに関する。
本発明の第2の態様は、第1の態様の真空バルブと、前記真空バルブが接続される吸気口が形成されたターボ分子ポンプ本体とを備えるターボ分子ポンプに関する。
本発明の第3の態様は、真空室と、前記真空室の排気側に設けられ、排気流路の下流側の面に凹部が形成された弁体と、前記排気流路の内部を移動するパーティクルを捕捉するための第1捕捉部材とを備え、前記第1捕捉部材は、前記凹部に配置されている、真空容器に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、真空バルブに配置された捕捉部材により反跳パーティクルを捕捉しつつ、流路のコンダクタンスの低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る半導体製造装置の構成を示す概念図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の真空バルブが開状態の場合の半導体製造装置を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の真空バルブが閉状態の場合の半導体製造装置を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、弁体の凹部を示す半導体製造装置の拡大断面図である。
【
図5】
図5は、反跳パーティクルの移動を説明するための概念図である。
【
図6B】
図6Bは、第1捕捉部材を構成するネットを示す概念図である。
【
図7】
図7は、変形例に係る弁体の凹部を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、変形例に係る弁体の凹部を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、変形例に係るターボ分子ポンプのバッフルを模式的に示す拡大断面図である。
【
図10】
図10は、変形例に係るターボ分子ポンプのバッフルを示す斜視図である。
【
図11】
図11は、バッフルにおける第2捕捉部材の配置を説明するための概念図である。
【
図12】
図12は、変形例に係る弁体の凹部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
-実施形態-
本実施形態の真空バルブは、真空容器を排気する真空ポンプの吸気口に設けられ、排気流路の開口面積を調節する真空バルブである。真空バルブは、排気流路の開口面積を調節する弁体を備える。この弁体は、排気流路の内部を移動するパーティクルを捕捉する部材を備える。真空バルブに配置される当該部材を第1捕捉部材と呼ぶ。以下の実施形態では、半導体製造装置において、真空容器の内部の処理室と、当該真空容器を減圧するターボ分子ポンプとの間に真空バルブが配置される例を用いて説明する。真空バルブの真空容器側は吸気側であり、真空ポンプ側が排気側である。
【0011】
図1は、本実施形態に係る半導体製造装置1の構成を模式的に示す側面図である。
図2および
図3は、それぞれ、真空バルブ20が開状態および閉状態の場合の、半導体製造装置1の構成を模式的に示す断面図である。半導体製造装置1は、ターボ分子ポンプ10と、真空バルブ20と、真空容器40とを備える。ターボ分子ポンプ10は、ケーシング11と、ロータ12とを備える。ケーシング11は、ケーシング本体11Aと、フランジ11Bとを備える。真空バルブ20は、弁体駆動部21と、連結部22と、弁体24とを備える。弁体24は、弁体本体240と、第1捕捉部材200とを備え、凹部30が形成されている。真空容器40には、処理室41が形成されている。
【0012】
ターボ分子ポンプ10は、ケーシング11の内部にARを回転軸として回転自在なロータ12が格納されている。ロータ12は、例えば磁気軸受により非接触支持されたり、玉軸受により支持され、不図示のモータにより高速回転駆動される。
【0013】
ロータ12には、複数段の回転翼(不図示)が形成されている。ケーシング11に固定された固定側には、回転軸ARの軸方向に対して回転翼と交互に配置された複数段の固定翼(不図示)が設けられている。
なお、図示は省略するが、ターボ分子ポンプ10は、ロータ側に円筒状のネジロータ、固定側にネジロータの外周側に設けられたネジステータが設けられていてもよい。
【0014】
ターボ分子ポンプ10には、真空処理室41に連通する吸気口13が形成されている。吸気口13には、処理室41を真空排気する排気流路(以下、単に流路ということもある)が形成されている。ロータ12を高速回転駆動することにより、吸気口13から流入した気体分子は回転翼および固定翼の隙間を通って不図示の排気口から排気される。この排気口には、補助ポンプが排気可能に接続される。
【0015】
以下では、回転軸ARに沿ってz軸をとり、z軸に垂直に、x軸およびy軸を互いに垂直になるように設定した(座標系9参照)。
図1~5、7~9、12では、x軸を紙面に垂直に、y軸を紙面に向かって右方向に配置した。また、断面図では、適宜後ろ側にある物体を省略して端面図としている。
【0016】
真空バルブ20は、真空容器40の処理室41とターボ分子ポンプ10の吸気口13とを排気可能に接続する排気流路に配置され、当該流路の流量を調節する。排気流路の開口面積とは、排気流路の流れ方向に垂直な断面の面積を指す。真空バルブ20は、弁体24が弁座から、弁座シート面と交差する方向に移動する形式のバルブであることが好ましく、ポペットバルブがより好ましい。ポペットバルブは、弁体24が弁座から、弁座シート面と垂直の方向に移動する形式のバルブである。ポペットバルブは、流路を流れる流体の流れ方向に移動する形式のバルブともいえる。
図2の例はポペットバルブであり、連結部22が弁座、連結部22の上面がxy平面に平行な弁座シート面S1に相当する。真空バルブ20の開閉の際、弁体24は弁座シート面S1と垂直な方向(z方向)に往復移動する(矢印A1)。
【0017】
図2および
図3はそれぞれ真空バルブ20の全開状態および全閉状態を示す。これらの他、弁体24が開状態での位置と閉状態の位置との中間の任意の位置に停止可能にすることができる。この場合、真空バルブ20は部分的な開状態となる。部分的な開状態での流路のコンダクタンスは、全開状態におけるコンダクタンスと全閉状態のコンダクタンス(ゼロ)との間の値をとる。
【0018】
また、半導体製造装置1において、処理室41の圧力を制御するように、弁体24の位置が自動で調整されることが好ましい。例えば、半導体製造装置1の不図示の制御装置の制御により、入力装置からの入力に基づいて処理室41の圧力が設定され、当該圧力を実現するように流路のコンダクタンスが弁体24の位置により調節される。
【0019】
真空バルブ20の弁体駆動部21は、弁体24を支持しつつ、開状態における位置と閉状態における位置との間を移動させる。弁体駆動部21の駆動機構は、特に限定されず、空気式または電動式等の駆動機構を備える構成にすることができる。
図2では、弁体駆動部21と弁体24とが物理的に離れているように見えるが、弁棒等により適宜連結される。本実施形態の図では弁体駆動部21が2つ示されているが、その個数は特に限定されない。
【0020】
真空バルブ20の連結部22には、開口部23が形成されている。連結部22はxy平面に沿って開口部23を囲むように形成されている。ターボ分子ポンプ10のフランジ11Bの上面は、xy平面に平行となっており、真空バルブ20の連結部22の下面に当接する。これにより、連結部22の開口部23とフランジ11Bの吸気口13とが排気可能に接続される。フランジ11Bの上面には、Oリング等のシール部材(不図示)が配置され、シール部材によりフランジ11Bと連結部22とがシールされる。シール部材によるシールされる連結部22の領域を当接部220という。
なお、
図2の例では連結部22の上面に弁体24の弁座を設け、かつ、連結部22の下面にフランジ11Bが当接する当接部220を設ける構成としたが、弁体24の弁座が設けられる部材と、当接部220が設けられる部材とは、別の部材で構成されてもよい。
【0021】
図4は、真空バルブ20が開状態における、弁体24の凹部30を示す拡大断面図である。弁体24は、板状の部材からなり、xy平面に沿って配置されている。弁体24の弁座として機能する連結部22のシート面S1に対向する面である下面S2に、凹部30が形成されている。下面S2は、xy平面に沿って配置されている。凹部30は、弁体24の真空バルブ20の排気側の面において、開口部23に対向する位置に配置されている。凹部30の中心軸ACは、ロータ12の回転軸ARと略一致することが好ましい。凹部30に、第1捕捉部材200が配置されている。第1捕捉部材200は、凹部30の内側に配置され、弁体24の下面S2から突出しないことが好ましい。第1捕捉部材200は、ボルト等の固定具により弁体24に固定され、真空バルブ20の開閉の際に、弁体24と一体となって移動する。
【0022】
本実施形態では、弁体24の凹部30を構成する表面は、曲面となっている。これにより、開口部23から飛来したパーティクルを、凹部30の中心軸ACに近い方向に跳ね返すことができ、凹部30の外側、すなわち外周側にある処理室41への流路にパーティクルが進入することを抑制することができる。例えば、回転軸ARに沿って反跳パーティクルが飛来する場合、その進行方向は、矢印A2で示される方向(z方向)となる。このとき、反跳パーティクルは凹部30の内側に向けて反射される可能性が高くなり(矢印A3)、処理室41へと進入することを抑制できる。凹部の形状としては、球面または放物面が好ましい。上記と同様の観点から、凹部30を構成する弁体24の表面は、斜面でもよい。
【0023】
凹部30の最大径L3は、凹部30に第1捕捉部材200が配置可能であれば特に限定されない。しかし、凹部30の最大径L3は、ターボ分子ポンプ10の吸気口13の最大径L1、および、真空バルブ20の開口部23の最大径L2の少なくとも一方の1.1倍よりも大きいことが好ましい。これにより、吸気口13または開口部23を覆うように凹部30を配置することができ、処理室41への反跳パーティクルの進入をさらに抑制することができる。凹部30の弁体24に平行な面に沿った形状、すなわち図のxy平面における形状は特に限定されないが、開口部23に合わせた形状が好ましく、円状、楕円状等にすることができる。
【0024】
凹部30の最大径L3とは、中心軸ACに直交し、凹部30の内壁の2点を通る線分のうち、最も長い線分の長さとすることができる。開口部23の最大径L2とは、回転軸ARに直交し、開口部23の内壁の2点を通る線分のうち、最も長い線分の長さとすることができる。吸気口13の最大径L1とは、回転軸ARに直交し、吸気口13の内壁の2点を通る線分のうち、最も長い線分の長さとすることができる。
換言すると、
図4の各部材の上面視では、一例として開口部である吸気口13、開口部23、凹部30は円形であり、凹部30の最大径L3が開口部13、23の最大径L1、L2よりも大きく、かつ、凹部30内に吸気口13および開口部23が含まれる。
【0025】
第1捕捉部材200は、弁体24が配置される排気流路の内部を移動するパーティクルを捕捉するための部材である。
【0026】
図5は、第1捕捉部材200による反跳パーティクルの捕捉を説明するための概念図である。半導体製造装置1の処理室41では、エッチングプロセスおよびCVDプロセス等において、化学反応または機械部品の摺動等により、サブミクロンオーダーの径のパーティクルが発生し得る。これらのパーティクルが吸気口13を介してターボ分子ポンプ10内に流入すると、高速回転するロータ12により跳ね飛ばされる(矢印A4)。凹部30および第1捕捉部材200が無いとすると、反跳パーティクルは弁体24の下面S2および弁座シート面S1の間で反射しながら進み、処理室41に達し得る(破線矢印A5)。これらの反跳パーティクルが処理室41まで達すると、パーティクルがウェハ上に付着し半導体の生産歩留まりの悪化の原因となる。
【0027】
一方、本実施形態の真空バルブ20では、反跳パーティクルが第1捕捉部材200により捕捉されるため、処理室41への反跳パーティクルの進入を抑制することができる。また、反跳パーティクルが開口部23から第1捕捉部材200に入射した際に捕捉されなくとも、凹部30により内側に反射される(
図4の矢印A2、A3)から、処理室41への流路へと向かいにくい。さらに、凹部30の反射後に再び第1捕捉部材200を通過する可能性が高いため、この通過の際に捕捉される可能性もある。
【0028】
本実施形態に係る第1捕捉部材200は、網目状の金属の細線からなるシート状の網目構造体である。第1捕捉部材200は、後述するように金属ワイヤ等の細線を編み上げたものからなり、網目の大きさはパーティクルの大きさよりも大きい。そのため、第1捕捉部材200に入射した反跳パーティクルは、一部は表面部分のワイヤに跳ね返されるが、大部分は第1捕捉部材200の内部に侵入し、内部でワイヤとの衝突を繰り返すことになる。衝突を繰り返すことで反跳パーティクルの運動エネルギーは小さくなり、最終的には第1捕捉部材200の内部に捕捉されることになる。
【0029】
図6Aは、第1捕捉部材200を構成する網目構造体を説明するための概念図である。網目構造体には、特許文献1に記載のように布状のネット2000が用いられる。ネット2000は、
図6Bに示すように、ステンレスワイヤ等の金属細線を、編機によりメリヤス編みしたものである。なお、メリヤス編みしたネットを型付けローラで挟んで、波付けしたものをネット2000として用いても良い。金属細線のネットに代えて、アルミナとシリカとから成るアルミナシリカ繊維を編み上げて布状としたものを用いても良い。その場合、適度の柔軟性を得るために、シリカの比率を6~10%とすることが好ましい。さらに、金属細線の編み方はメリヤス編みに限るものではなく平織り等でも良い。
【0030】
本実施形態に係る第1捕捉部材200は、金属ワイヤ等を編み上げたネット2000で構成されているため、金属繊維をフェルト状とした捕捉部材に比べて隙間が大きい。そのため、反跳パーティクルは第1捕捉部材200の内部まで侵入しやすく、確実に捕捉されることになる。
【0031】
なお、本実施の形態では、目の粗いネット2000を積層したシート状の構造とすることで、反跳パーティクルが第1捕捉部材200のより内部まで入り込み易くしている。その場合、同一網目のものを積層しても良いし、表面に近いものは網目を粗くするとともに、パーティクルが捕捉される内部の層の網目についてやや細かくするように、網目の粗さを層に応じて変えても良い。また、金属メッシュ等の比較的平らなネットを積層する場合には、金属メッシュを波折りしてから積層することにより嵩を大きくし、反跳パーティクルを内部にまで入り易くするのが好ましい。
【0032】
真空容器40は、半導体生産のエッチングプロセスまたはCVDプロセス等のプロセスを行うための耐圧容器である。真空容器40には、これらのプロセスを内部で行うための処理室41が形成されている。
なお、本実施形態の真空バルブ20は、半導体生産用の真空容器40に接続される他、任意の用途の真空容器に排気可能に接続することができる。
【0033】
上述の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)本実施形態の真空バルブは、真空容器40を排気する真空ポンプ10の吸気口13に設けられ、排気流路の開口面積を調節する真空バルブ20である。真空バルブ20は、排気流路の開口面積を調節し、真空ポンプ10側に凹部30が形成された弁体24と、排気流路の内部を移動するパーティクルを捕捉するための第1捕捉部材200とを備え、第1捕捉部材200は、凹部30に配置されている。これにより、反跳パーティクルを捕捉しつつ、流路のコンダクタンスの低下を抑制することができる。
【0034】
(2)本実施形態の真空バルブにおいて、第1捕捉部材200は、真空バルブ20が全開状態または一部開状態のときに、排気流路と接続される開口部23に対向する位置に配置される。これにより、効率よく反跳パーティクルを捕捉することができる。
【0035】
次のような変形も本発明の範囲内であり、上述の実施形態と組み合わせることが可能である。以下の変形例において、上述の実施形態と同様の構造、機能を示す部位等に関しては、同一の符号で参照し、適宜説明を省略する。
【0036】
(変形例1)
上述の実施形態において、凹部の側面を弁体の下面に略垂直な面としてもよい。
【0037】
図7は、本変形例に係る弁体24Aを模式的に示す断面図である。弁体24Aは、弁体本体240Aと、第1捕捉部材200とを備え、凹部30Aが形成されている。第1捕捉部材200は、凹部30Aに配置されている。凹部30Aの側面31は、円筒状に形成されている。側面31は、z軸方向に伸び、弁体24Aにおいて弁座と対向する面である下面S2に略垂直な面となっている。これにより、凹部30Aを容易に加工することができる。
なお、凹部30Aの弁体24Aに平行な面に沿った形状、すなわち図のxy平面における形状は特に限定されないが、開口部23に合わせた形状が好ましく、円状、楕円状等にすることができる。
【0038】
(変形例2)
上述の実施形態において、複数の第1捕捉部材を凹部に配置してもよい。
【0039】
図8は、本変形例に係る凹部を模式的に示す断面図である。弁体24Bは、弁体本体240と、第1捕捉部材200Aおよび200Bと、支持部材245とを備え、凹部30が形成されている。第1捕捉部材200Aおよび200Bは、互いに略平行に凹部30に配置されている。第1捕捉部材200Aおよび200Bは、弁体24Bに沿ってxy平面に略平行に広がるシート状の構造を有する。xy平面に沿った、第1捕捉部材200Aの幅と第2捕捉部材200Bの幅は異なる。第1捕捉部材200Aおよび200Bは、それぞれ、配置された位置における凹部30の幅に応じた幅を有する。
【0040】
支持部材245は、第1捕捉部材200Aおよび200Bを支持するための部材である。支持部材245による第1捕捉部材200Aおよび200Bの支持の態様は特に限定されない。本変形例では、支持部材245を、弁体24Bの下面S2に略垂直に伸びる柱状の構造体とする。第1捕捉部材200Aおよび200Bは支持部材245にボルト等の固定具により固定されている。支持部材245の材料は支持に十分な強度があれば特に限定されず、金属等とすることができる。
【0041】
本変形例では、凹部30に複数のシート状の第1捕捉部材200Aおよび200Bが配置されている。これにより、凹部30の各深さにおける幅に合わせた第1捕捉部材を配置することができ、その結果、第1捕捉部材を凹部30により稠密に配置でき効率よくパーティクルを捕捉することができる。
【0042】
(変形例3)
上述の実施形態において、ターボ分子ポンプの吸気口とロータとの間の流路に、パーティクルを捕捉するための第2捕捉部材を配置してもよい。本変形例の半導体製造装置は、ターボ分子ポンプが第2捕捉部材を支持するためのバッフルを備える点で上述の実施形態とは異なっている。
【0043】
図9および
図10は、バッフル15を説明する図である。
図9は、本変形例のターボ分子ポンプにおいて、バッフル15が設けられている部分の拡大図である。
図10は、バッフル15の斜視図である。ターボ分子ポンプ10Aは、固定翼16と回転翼120が回転軸方向(z軸方向)に沿って交互に配置されている。バッフル15は、ケーシング11のフランジ11Bに取り付けられている。
図10に示すように、バッフル15は、円盤150、支柱151、枠152、第2捕捉部材300を備えている。枠152はリブ構造を有しており、内側リング152Aと、外側リング152Bと、リング152Aおよび152Bを接続する放射状リブ152Cとを備えている。
【0044】
複数の支柱151は内側リング152Aの内周面に等間隔で固定されており、各支柱151の下端には円盤150が固定されている。支柱151の長さは、
図9に示すように、円盤150がロータ12の上面の近傍に配置されるように設定される。磁気浮上型の場合、ロータ12は磁気浮上されて高速で回転するが、ガス負荷に応じて回転軸方向に僅かに上下する。そのため、円盤150は、ロータ12が上下に移動してもロータ12と接触しない程度の位置に配置される。また、円盤150が回転翼120の上方を塞がないように、円盤150の外径寸法は、回転翼120の付け根部分の直径寸法以下に設定される。
【0045】
板状の第2捕捉部材300は、符号300A~300Cで示すように、内側リング152Aの外周面、外側リング152Bの内周面、および放射状リブ152Cの一方の面を覆うように設けられている。なお、
図10に示す第2捕捉部材300Cの配置は、ロータ12が、吸気口側から見て時計回りに回転する構成の場合に適用される。ロータ12が反時計回りに回転する構成の場合には、第2捕捉部材300を、放射状リブ152Cの反対側の面が覆われるように取り付けるのが好ましい。第2捕捉部材300は、全体の形状が異なる他は、第1捕捉部材200と同様の構造、材料を有するものとでき、第2捕捉部材300は、金属の網目構造体であることが好ましい。
【0046】
図11は、吸気口側から見たバッフル15を示す。破線は、ロータ12の一段目の回転翼120を示す。吸気口13からポンプ内に落下し、バッフル15を通過したパーティクルは、中央部分の円盤150の上に落下するか、または、円盤150よりも外周側の回転翼120の上に落下する。円盤150上に落下したパーティクルは円盤上に留まるので、装置側に戻ることはない。
【0047】
一方、回転翼120上に落下したパーティクルは、高速回転する回転翼120により跳ね飛ばされる。
図11では、回転翼120は矢印Rのように時計回りに回転している。回転翼120に落下したパーティクルは、接線方向に力を受けるので、接線方向に跳ね飛ばされる傾向が大きい。
図11では、パーティクルが単純に接線方向に跳ね飛ばされた場合の軌跡Pをいくつか示した。このように接線方向に跳ね飛ばされることから、反跳パーティクルは、外周側の第2捕捉部材300により多く入射すると考えられる。第2捕捉部材300に入射した反跳パーティクルは捕捉され、真空バルブへの進入が抑制される。
【0048】
第2捕捉部材300により捕捉されなかった反跳パーティクルは、吸気口13に対して垂直(図のz方向)に近い方向に進むものが多くなる。これらの反跳パーティクルは、吸気口13に対向する位置に配置されている凹部30に入射し、第1捕捉部材200により捕捉される。従って、本変形例では、第1捕捉部材200および第2捕捉部材300の組合せにより、反跳パーティクルをさらに効率的に捕捉することができる。
【0049】
(変形例4)
上述の実施形態において、真空バルブ20は、ターボ分子ポンプの一部として構成されていてもよい。この場合、上述のターボ分子ポンプ10がターボ分子ポンプ本体に相当し、ターボ分子ポンプ本体と真空バルブ20がターボ分子ポンプを構成する。あるいは、真空バルブ20は、真空容器の一部として構成されていてもよい。この場合、上述の真空容器40は真空容器本体に相当し、真空容器本体40と真空バルブ20が真空容器を構成する。他の態様として、弁体24を真空容器の一部として構成し、弁体駆動部22を弁体駆動装置として着脱可能に構成してもよい。
【0050】
(変形例5)
上述の実施形態では、真空バルブ20が閉状態において、第1捕捉部材200が開口部23に対向する位置に配置されている。しかし、真空バルブ20が全開状態および一部開状態の少なくとも一方において、凹部30が開口部23と対向する位置に配置されていれば、閉状態において凹部30が開口部23と対向する位置に配置されていなくともよい。
【0051】
(変形例6)
上述の実施形態では、第1捕捉部材を金属の網目構造体としたが、第1捕捉部材は、パーティクルを捕捉可能であればその構造および材料は特に限定されない。例えば、第1捕捉部材には、繊維を圧縮してフェルト状にしたもの、例えばステンレスフェルトまたはフッ素樹脂のフェルトを用いてもよいし、ゴム材、スポンジ材、コットン材等の柔軟性を有する素材を用いてもよい。
【0052】
(変形例7)
上述の実施形態では、ポペットバルブの例を用いて説明したが、スライドバルブの弁体に凹部を形成し、当該凹部に第1捕捉部材を配置してもよい。スライドバルブは、弁体が排気流路に直交する方向に移動するバルブである。スライドバルブの場合、一部開状態において、特に効率よく反跳パーティクルを捕捉することができる。
【0053】
(変形例8)
上述の実施形態において、弁体における凹部と反対側の面は平面としたが、凸部が形成されていてもよい。これにより、凹部が形成された部分の強度が減少することを抑制することができる。
【0054】
図12は、本変形例における弁体24Cを模式的に示す断面図である。弁体24Cは、弁体本体240Bと、第1捕捉部材200とを備える。弁体24Cには、開口部23に向かい合う下面S2に凹部30が形成されている他、弁体24Cにおける凹部30の反対側の上面S3に凸部60が形成されている。凸部60の形状は特に限定されない。
図12では、弁体24Cの中心部において、開口部23の開口面積と同程度の大きさの領域に、逆さまにしたお椀状の形状の凸部60が形成されている。凸部60の上面の形状は、凹部30を構成する弁体24Cの表面の形状と略同一の形状にすることができる。
【0055】
(態様)
上述した複数の例示的な実施形態またはその変形は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0056】
(第1項)一態様に係る真空バルブは、排気流路の開口面積を調節する真空バルブであって、前記排気流路の開口面積を調節し、凹部が形成された弁体と、前記排気流路の内部を移動するパーティクルを捕捉するための第1捕捉部材とを備え、前記第1捕捉部材は、前記凹部に配置されている。これにより、真空バルブに配置された捕捉部材により反跳パーティクルを捕捉しつつ、流路のコンダクタンスの低下を抑制することができる。
【0057】
(第2項)他の一態様に係る真空バルブでは、第1項の態様の真空バルブにおいて、前記凹部を構成する前記弁体の表面は、斜面、曲面、球面または放物面のいずれかとすることができる。これにより、入射した反跳パーティクルを所望の方向に反射させ、より効率よく捕捉することができる。
【0058】
(第3項)他の一態様に係る真空バルブでは、第1項の態様の真空バルブにおいて、前記凹部の側面は、前記弁体における弁座に対向する面に略垂直とすることができる。これにより、凹部を容易に加工することができる。
【0059】
(第4項)他の一態様に係る真空バルブでは、第1項から第3項までのいずれかの態様の真空バルブにおいて、前記凹部は、前記真空バルブが全開状態または一部開状態のときに、前記排気流路の下流側の開口部に対向する位置に配置することができる。これにより、真空バルブの開口部から飛来するパーティクルをさらに効率よく捕捉することができる。
【0060】
(第5項)他の一態様に係る真空バルブでは、第1項から第4項までいずれかの態様の真空バルブにおいて、前記真空バルブは、前記弁体が前記排気流路に直交する方向に移動するか、または、前記弁体が前記排気流路を流れる流体の流れ方向に移動する形式のバルブとすることができる。これらの真空バルブでは、第1捕捉部材によるコンダクタンスの低下への影響が特に小さい。
【0061】
(第6項)一態様に係るターボ分子ポンプは、第1項から第5項までいずれかの態様の真空バルブと、前記真空バルブが接続される吸気口が形成されたターボ分子ポンプ本体とを備える。これにより、ターボ分子ポンプの吸気口側の真空容器に反跳パーティクルが進入するのを低減しつつ、コンダクタンスの低下により排気効率が落ちることを抑制することができる。
【0062】
(第7項)他の一態様に係るターボ分子ポンプでは、第6項の態様のターボ分子ポンプにおいて、前記ターボ分子ポンプ本体は、前記吸気口とロータとの間の流路に、パーティクルを捕捉するための第2捕捉部材を備えることができる。これにより、ターボ分子ポンプの吸気口側の真空容器に反跳パーティクルが進入することをさらに低減することができる。
【0063】
(第8項)一態様に係る真空容器は、真空室と、前記真空室の排気側に設けられ、排気流路の下流側の面に凹部が形成された弁体と、前記排気流路の内部を移動するパーティクルを捕捉するための第1捕捉部材とを備え、前記第1捕捉部材は、前記凹部に配置されている。これにより、真空容器の排気側からの反跳パーティクルの進入を抑制しつつ、排気効率の低下を抑制することができる。
【0064】
本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1…半導体製造装置、9…座標系、10,10A…ターボ分子ポンプ、11…ケーシング、11A…ケーシング本体、11B…フランジ、12…ロータ、13…吸気口、15…バッフル、16…固定翼、20…真空バルブ、21…弁体駆動部、22…連結部、23…開口部、24,24A,24B,24C…弁体、30,30A…凹部、31…弁体の側面、40…真空容器、41…処理室、60…凸部、120…回転翼、200,200A,200B…第1捕捉部材、220…当接部、240,240A,240B…弁体本体、245…支持部材、300,300A,300B,300C…第2捕捉部材、2000…ネット、AC…凹部の中心軸、AR…ロータの回転軸、S1…弁座シート面、S2…弁体の下面、S3…弁体の上面。