(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】移動式クレーンの疲労損傷評価装置、疲労損傷評価プログラムおよび疲労損傷評価方法
(51)【国際特許分類】
B66C 23/90 20060101AFI20240116BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20240116BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B66C23/90 Z
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
B66C23/90 Q
B66C23/90 V
(21)【出願番号】P 2020097559
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 正裕
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-163047(JP,A)
【文献】特開2016-088652(JP,A)
【文献】特開2017-190983(JP,A)
【文献】国際公開第2021/064776(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/90
G01M 99/00
G01H 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象部位を含む下部構造体と、該下部構造体に搭載された旋回台と、該旋回台に設けられたブームとを有する移動式クレーンの疲労損傷評価装置であって、
前記ブームに作用する倒伏モーメントを測定するモーメント測定器と、
前記ブームの旋回角を測定する旋回角測定器と、
前記モーメント測定器および前記旋回角測定器の測定値が入力される演算装置と、を備え、
前記演算装置は、
吊荷の地切から着地までの一作業ごとに、前記倒伏モーメントおよび前記旋回角の測定値に基づき前記評価対象部位に生じる応力の変動幅の定格応力全振幅に対する比率である応力振幅比を求め、該応力振幅比から一作業疲労損傷値を求め、
所定期間における前記一作業疲労損傷値を積算して、累積疲労損傷値を求める
ことを特徴とする疲労損傷評価装置。
【請求項2】
前記演算装置は、
前記倒伏モーメントの測定値の定格値に対する比率である負荷率を求め、
前記一作業の期間における前記旋回角の変化から前記評価対象部位に生じる応力の振幅率を求め、
前記負荷率に前記振幅率を乗じて前記応力振幅比を求める
ことを特徴とする請求項1記載の疲労損傷評価装置。
【請求項3】
前記演算装置は、
前記評価対象部位の使用開始時から現在までの前記累積疲労損傷値を求め、
前記累積疲労損傷値が前記評価対象部位に対して定められた寿命閾値を超えたときに、前記評価対象部位の寿命が到来したと判断する
ことを特徴とする請求項1または2記載の疲労損傷評価装置。
【請求項4】
前記評価対象部位は前記旋回台が搭載されたフレームの前方部分または後方部分である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の疲労損傷評価装置。
【請求項5】
前記評価対象部位は前記旋回台とフレームとの間に介在する旋回ベアリングを該フレームに固定するボルトである
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の疲労損傷評価装置。
【請求項6】
評価対象部位を含む下部構造体と、該下部構造体に搭載された旋回台と、該旋回台に設けられたブームとを有する移動式クレーンの疲労損傷評価をするようコンピュータを機能させるための疲労損傷評価プログラムであって、
前記ブームに作用する倒伏モーメントおよび前記ブームの旋回角の測定値が入力され、
吊荷の地切から着地までの一作業ごとに、前記倒伏モーメントおよび前記旋回角の測定値に基づき前記評価対象部位に生じる応力の変動幅の定格応力全振幅に対する比率である応力振幅比を求め、該応力振幅比から一作業疲労損傷値を求め、
所定期間における前記一作業疲労損傷値を積算して、累積疲労損傷値を求めるよう、コンピュータを機能させる
ことを特徴とする疲労損傷評価プログラム。
【請求項7】
前記倒伏モーメントの測定値の定格値に対する比率である負荷率を求め、
前記一作業の期間における前記旋回角の変化から前記評価対象部位に生じる応力の振幅率を求め、
前記負荷率に前記振幅率を乗じて前記応力振幅比を求めるよう、コンピュータを機能させる
ことを特徴とする請求項6記載の疲労損傷評価プログラム。
【請求項8】
前記評価対象部位の使用開始時から現在までの前記累積疲労損傷値を求め、
前記累積疲労損傷値が前記評価対象部位に対して定められた寿命閾値を超えたときに、前記評価対象部位の寿命が到来したと判断するよう、コンピュータを機能させる
ことを特徴とする請求項6または7記載の疲労損傷評価プログラム。
【請求項9】
評価対象部位を含む下部構造体と、該下部構造体に搭載された旋回台と、該旋回台に設けられたブームとを有する移動式クレーンの疲労損傷評価方法であって、
前記ブームに作用する倒伏モーメントを測定し、
前記ブームの旋回角を測定し、
吊荷の地切から着地までの一作業ごとに、前記倒伏モーメントおよび前記旋回角の測定値に基づき前記評価対象部位に生じる応力の変動幅の定格応力全振幅に対する比率である応力振幅比を求め、該応力振幅比から一作業疲労損傷値を求め、
所定期間における前記一作業疲労損傷値を積算して、累積疲労損傷値を求める
ことを特徴とする疲労損傷評価方法。
【請求項10】
前記倒伏モーメントの測定値の定格値に対する比率である負荷率を求め、
前記一作業の期間における前記旋回角の変化から前記評価対象部位に生じる応力の振幅率を求め、
前記負荷率に前記振幅率を乗じて前記応力振幅比を求める
ことを特徴とする請求項9記載の疲労損傷評価方法。
【請求項11】
前記評価対象部位の使用開始時から現在までの前記累積疲労損傷値を求め、
前記累積疲労損傷値が前記評価対象部位に対して定められた寿命閾値を超えたときに、前記評価対象部位の寿命が到来したと判断する
ことを特徴とする請求項9または10記載の疲労損傷評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンの疲労損傷評価装置、疲労損傷評価プログラムおよび疲労損傷評価方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、移動式クレーンの下部構造体の疲労損傷を評価するための装置、プログラムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動式クレーンの構成部材のメンテナンス時期の到来を作業量に基づき判断することがある。例えば、特許文献1には、ホイールクレーンの下部走行体の被害量を算出することが開示されている。港湾荷役を行なう場合、クレーン装置は約90度の旋回範囲内での作業を繰り返す。そこで、上部旋回体の旋回中心周りに4つの旋回範囲を設け、旋回範囲毎に被害量を算出する。旋回範囲毎の被害量が均一になるように、オペレータがホイールクレーンの岸壁に対する向きを適宜変更する。そうすることで、下部走行体の特定箇所の部材が早期に疲労破壊することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動式クレーンの場合、旋回台を支持する部材に生じる応力はブームの旋回角によって大きく変わる。しかし、従来技術では、ブームの旋回角を考慮して疲労損傷を評価することはなされておらず、評価精度が低かった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、移動式クレーンの構成部材の疲労損傷を精度よく評価できる疲労損傷評価装置、疲労損傷評価プログラムおよび疲労損傷評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の疲労損傷評価装置は、評価対象部位を含む下部構造体と、該下部構造体に搭載された旋回台と、該旋回台に設けられたブームとを有する移動式クレーンの疲労損傷評価装置であって、前記ブームに作用する倒伏モーメントを測定するモーメント測定器と、前記ブームの旋回角を測定する旋回角測定器と、前記モーメント測定器および前記旋回角測定器の測定値が入力される演算装置と、を備え、前記演算装置は、吊荷の地切から着地までの一作業ごとに、前記倒伏モーメントおよび前記旋回角の測定値に基づき前記評価対象部位に生じる応力の変動幅の定格応力全振幅に対する比率である応力振幅比を求め、該応力振幅比から一作業疲労損傷値を求め、所定期間における前記一作業疲労損傷値を積算して、累積疲労損傷値を求めることを特徴とする。
第2発明の疲労損傷評価装置は、第1発明において、前記演算装置は、前記倒伏モーメントの測定値の定格値に対する比率である負荷率を求め、前記一作業の期間における前記旋回角の変化から前記評価対象部位に生じる応力の振幅率を求め、前記負荷率に前記振幅率を乗じて前記応力振幅比を求めることを特徴とする。
第3発明の疲労損傷評価装置は、第1または第2発明において、前記演算装置は、前記評価対象部位の使用開始時から現在までの前記累積疲労損傷値を求め、前記累積疲労損傷値が前記評価対象部位に対して定められた寿命閾値を超えたときに、前記評価対象部位の寿命が到来したと判断することを特徴とする。
第4発明の疲労損傷評価装置は、第1~第3発明のいずれかにおいて、前記評価対象部位は前記旋回台が搭載されたフレームの前方部分または後方部分であることを特徴とする。
第5発明の疲労損傷評価装置は、第1~第3発明のいずれかにおいて、前記評価対象部位は前記旋回台とフレームとの間に介在する旋回ベアリングを該フレームに固定するボルトであることを特徴とする。
第6発明の疲労損傷評価プログラムは、評価対象部位を含む下部構造体と、該下部構造体に搭載された旋回台と、該旋回台に設けられたブームとを有する移動式クレーンの疲労損傷評価をするようコンピュータを機能させるための疲労損傷評価プログラムであって、前記ブームに作用する倒伏モーメントおよび前記ブームの旋回角の測定値が入力され、吊荷の地切から着地までの一作業ごとに、前記倒伏モーメントおよび前記旋回角の測定値に基づき前記評価対象部位に生じる応力の変動幅の定格応力全振幅に対する比率である応力振幅比を求め、該応力振幅比から一作業疲労損傷値を求め、所定期間における前記一作業疲労損傷値を積算して、累積疲労損傷値を求めるよう、コンピュータを機能させることを特徴とする。
第7発明の疲労損傷評価プログラムは、第6発明において、前記倒伏モーメントの測定値の定格値に対する比率である負荷率を求め、前記一作業の期間における前記旋回角の変化から前記評価対象部位に生じる応力の振幅率を求め、前記負荷率に前記振幅率を乗じて前記応力振幅比を求めるよう、コンピュータを機能させることを特徴とする。
第8発明の疲労損傷評価プログラムは、第6または第7発明において、前記評価対象部位の使用開始時から現在までの前記累積疲労損傷値を求め、前記累積疲労損傷値が前記評価対象部位に対して定められた寿命閾値を超えたときに、前記評価対象部位の寿命が到来したと判断するよう、コンピュータを機能させることを特徴とする。
第9発明の疲労損傷評価方法は、評価対象部位を含む下部構造体と、該下部構造体に搭載された旋回台と、該旋回台に設けられたブームとを有する移動式クレーンの疲労損傷評価方法であって、前記ブームに作用する倒伏モーメントを測定し、前記ブームの旋回角を測定し、吊荷の地切から着地までの一作業ごとに、前記倒伏モーメントおよび前記旋回角の測定値に基づき前記評価対象部位に生じる応力の変動幅の定格応力全振幅に対する比率である応力振幅比を求め、該応力振幅比から一作業疲労損傷値を求め、所定期間における前記一作業疲労損傷値を積算して、累積疲労損傷値を求めることを特徴とする。
第10発明の疲労損傷評価方法は、第9発明において、前記倒伏モーメントの測定値の定格値に対する比率である負荷率を求め、前記一作業の期間における前記旋回角の変化から前記評価対象部位に生じる応力の振幅率を求め、前記負荷率に前記振幅率を乗じて前記応力振幅比を求めることを特徴とする。
第11発明の疲労損傷評価方法は、第9または第10発明において、前記評価対象部位の使用開始時から現在までの前記累積疲労損傷値を求め、前記累積疲労損傷値が前記評価対象部位に対して定められた寿命閾値を超えたときに、前記評価対象部位の寿命が到来したと判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1および第2発明によれば、ブームの旋回角を考慮した応力振幅比に基づいて累積疲労損傷値を求めるため、評価対象部位の疲労損傷を精度よく評価できる。
第3発明によれば、評価対象部位の寿命が到来したことを検知できるので、適切な時期にメンテナンスを促すことができる。
第4発明によれば、フレームの前方部分または後方部分の疲労損傷を精度よく評価できる。
第5発明によれば、旋回ベアリングを固定するボルトの疲労損傷を精度よく評価できる。
第6および第7発明によれば、ブームの旋回角を考慮した応力振幅比に基づいて累積疲労損傷値を求めるため、評価対象部位の疲労損傷を精度よく評価できる。
第8発明によれば、評価対象部位の寿命が到来したことを検知できるので、適切な時期にメンテナンスを促すことができる。
第9および第10発明によれば、ブームの旋回角を考慮した応力振幅比に基づいて累積疲労損傷値を求めるため、評価対象部位の疲労損傷を精度よく評価できる。
第11発明によれば、評価対象部位の寿命が到来したことを検知できるので、適切な時期にメンテナンスを促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】第1実施形態に係る疲労損傷評価装置のブロック図である。
【
図6】疲労損傷評価の演算に用いられる座標系の説明図である。
【
図7】他の例における疲労損傷評価の演算に用いられる座標系の説明図である。
【
図8】第1実施形態における疲労損傷評価処理のフローチャートである。
【
図10】第2実施形態における疲労損傷評価処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
〔第1実施形態〕
(移動式クレーン)
本発明の第1実施形態に係る疲労損傷評価装置は、移動式クレーンの疲労損傷を評価するのに用いられる。移動式クレーンの種類は特に限定されない。移動式クレーンとして、オールテレーンクレーン、ラフテレーンクレーン、トラッククレーン、積載形トラッククレーンなどが挙げられる。以下、積載形トラッククレーンの場合を例に説明する。
【0010】
図1に示すように、積載形トラッククレーンCRは汎用トラック10を有する。汎用トラック10の前方部分には運転室11が設けられており、後方部分には荷台12が設けられている。汎用トラック10の車両フレーム13のうち、運転室11と荷台12との間の部分には、小型クレーン20が搭載されている。
【0011】
小型クレーン20は車両フレーム13上に固定されたフレーム21を有する。フレーム21には旋回台22が旋回可能に設けられている。旋回台22の上端部にはブーム23が起伏可能に設けられている。旋回台22にはウインチが内蔵されている。このウインチから延ばされたワイヤロープはブーム23の先端部まで導かれている。ワイヤロープはブーム23の先端部とフック24とに設けられた滑車に掛け回されている。これにより、フック24はブーム23の先端部から吊り下げられている。フック24には吊荷LOが吊り下げられる。
【0012】
小型クレーン20は油圧回路により油圧駆動される。小型クレーン20には油圧回路を操作する操作レバー群25が設けられている。操作者は操作レバー群25を用いて小型クレーン20を操作できる。
【0013】
小型クレーン20は油圧回路を制御する制御装置26を有する。制御装置26はCPU、メモリなどで構成されたコンピュータである。制御装置26からの制御信号に基づいて油圧回路が動作する。これにより、制御装置26は小型クレーン20の動作を制御する。
【0014】
小型クレーン20は制御装置26と双方向に通信可能な遠隔操作端末を有してもよい。遠隔操作端末は、いわゆるラジコン送信機をはじめとする無線操作端末でもよいし、有線操作端末でもよい。操作者は遠隔操作端末を用いて小型クレーン20を操作できる。
【0015】
小型クレーン20はアウトリガ装置30を有する。
図2に示すように、フレーム21は水平に配置された筒部を有する。筒部は断面が略矩形の筒形の部材であり、両端が開口している。筒部の両端の開口部には、それぞれ、アウトリガ内箱31が挿入されている。アウトリガ内箱31は断面が略矩形の梁部材である。アウトリガ内箱31の先端部にはアウトリガジャッキ32が設けられている。アウトリガジャッキ32は油圧シリンダで構成される。アウトリガジャッキ32は積載形トラッククレーンCRの左右両側に配置される。
【0016】
クレーン作業を行なう際にはアウトリガ装置30を張り出す。アウトリガ装置30を張り出すには、アウトリガ内箱31を筒部から引き出し、アウトリガジャッキ32を伸長してフロート33を地面に接触させる。アウトリガジャッキ32を接地すると、積載形トラッククレーンCRの重量の一部がアウトリガ装置30にかかる。これにより積載形トラッククレーンCRが支持される。クレーン作業の終了後はアウトリガ装置30を格納する。アウトリガ装置30を格納するには、アウトリガジャッキ32を収縮して、アウトリガ内箱31を筒部に引き込む。
【0017】
図4に示すように、フレーム21と旋回台22と間には旋回ベアリング27が介在している。旋回ベアリング27は、外輪27aと、外輪27aの内側に嵌め込まれた内輪27bとを有する。外輪27aと内輪27bとの間には複数のベアリングボールが介在しており、外輪27aは内輪27bに対して旋回可能となっている。
【0018】
外輪27aには複数のボルトにより旋回台22が固定されている。また、内輪27bはボルト27cによりフレーム21の天板21aに固定されている。ボルト27cは内輪27bの周方向に沿って複数設けられている。旋回ベアリング27により、旋回台22はフレーム21に対して旋回可能となっている。
【0019】
旋回ベアリング27には駆動装置28が設けられている。駆動装置28は油圧モータ28aを有する。油圧モータ28aの回転軸は減速機28bを介してピニオンギヤ28cに連結している。外輪27aの外周面にはギヤが形成されている。外輪27aのギヤとピニオンギヤ28cとが噛み合わされている。油圧モータ28aが駆動すると、ピニオンギヤ28cが回転し、外輪27aが内輪27bに対して旋回する。これにより、旋回台22が旋回する。
【0020】
なお、旋回ベアリング27の外輪27aをフレーム21に固定し、内輪27bを旋回台22に固定してもよい。この場合、内輪27bの内周面に形成したギヤにピニオンギヤ28cを噛み合わせれば、油圧モータ28aの駆動により旋回台22を旋回させることができる。
【0021】
特許請求の範囲に記載の「フレーム」は旋回台が搭載される部位であればよく、積載形トラッククレーンCRのフレーム21に限定されない。例えば、オールテレーンクレーン、ラフテレーンクレーン、トラッククレーンなどの下部走行体のフレームも特許請求の範囲に記載の「フレーム」に相当する。
【0022】
特許請求の範囲に記載の「下部構造体」は、旋回台が搭載される構造体であればよい。本実施形態の場合、フレーム21のほか、アウトリガ装置30も下部構造体の一部である。オールテレーンクレーン、ラフテレーンクレーン、トラッククレーンなどの下部走行体も特許請求の範囲に記載の「下部構造体」に相当する。
【0023】
特許請求の範囲に記載の「旋回台」は、本実施形態の旋回台22に限定されない。旋回台には運転席などが設けられてもよい。
【0024】
(疲労損傷評価装置)
つぎに、本実施形態の疲労損傷評価装置の構成を説明する。
図5に示すように、疲労損傷評価装置AAは演算装置40を有する。演算装置40はCPU、メモリなどで構成されたコンピュータである。コンピュータに疲労損傷評価プログラムをインストールすることで、演算装置40としての機能が実現される。疲労損傷評価プログラムはコンピュータで読み取り可能な各種の記憶媒体に記憶することができる。演算装置40を小型クレーン20の油圧回路を制御する制御装置26の一機能として実現してもよい。また、演算装置40と制御装置26とを別の装置としてもよい。
【0025】
疲労損傷評価装置AAはブーム23に作用する倒伏モーメントMを測定するモーメント測定器41を有する。倒伏モーメントMは吊荷LOの荷重およびブーム23の自重により生じる。モーメント測定器41の構成は特に限定されないが、ブーム23を起伏させる油圧シリンダ内の油圧を圧力センサで測定する構成が挙げられる。また、フック24を吊り下げるワイヤロープの張力から吊荷LOの荷重Wを求める荷重測定器、ブーム23の長さLを測定する長さ測定器およびブーム23の起伏角φを測定する起伏角測定器からモーメント測定器41を構成してもよい。吊荷LOの荷重W、ブーム23の長さLおよび起伏角φから倒伏モーメントMを求めることができる。
【0026】
疲労損傷評価装置AAはブーム23の旋回角Θを測定する旋回角測定器42を有する。旋回角測定器42の構成は特に限定されないが、フレーム21または旋回台22に設けた複数の近接スイッチによりブーム23の旋回角Θを離散的に検知する構成が挙げられる。また、旋回台22の回転角をポテンショメータで読み取る構成が挙げられる。
【0027】
演算装置40にはモーメント測定器41および旋回角測定器42の測定値M、Θが入力されている。演算装置40は倒伏モーメントMおよび旋回角Θに基づいて、疲労損傷評価を行なう。
【0028】
(疲労損傷評価方法)
つぎに、疲労損傷評価方法を説明する。
疲労損傷評価装置AAは移動式クレーンの下部構造体に含まれる特定部位の疲労損傷を評価する。以下、疲労損傷を評価する対象の部位を「評価対象部位P」と称する。評価対象部位Pは下部構造体に含まれる部位であれば特に限定されないが、ブームを用いた作業により応力が変化する部位が好適に選択される。例えば、積載形トラッククレーンCRの場合、フレーム21の前方部分、後方部分、旋回ベアリング27をフレーム21に固定するボルト27cなどが評価対象部位Pとなる。
【0029】
フレーム21の前方部分とは、例えば、
図3に示すP1の部分である。フレーム21は旋回台22を支持する部材である。そのため、ブーム23に作用する倒伏モーメントMにより前方部分P1に負荷が生じる。例えば、ブーム23が前方に旋回すると前方部分P1に圧縮応力が発生する。ブーム23が後方に旋回すると前方部分P1に引張応力が発生する。なお、前方部分P1の位置によっては、これと逆の場合もある。
【0030】
フレーム21の後方部分P2にもブーム23に作用する倒伏モーメントMにより負荷が生じる。例えば、ブーム23が前方に旋回すると後方部分P2に引張応力が発生する。ブーム23が後方に旋回すると後方部分P2に圧縮応力が発生する。なお、後方部分P2の位置によっては、これと逆の場合もある。
【0031】
図4に示すように、旋回ベアリング27をフレーム21に固定する複数のボルト27cのうち選択されたものを評価対象部位P3とすることもできる。ボルトP3には締結により生じる引張応力が生じている。ブーム23がボルトP3の位置とは逆側に旋回すると、ボルトP3に生じる引張応力は大きくなる。ブーム23がボルトP3の位置に旋回すると、ボルトP3に生じる引張応力は小さくなる。
【0032】
図6に示すように、評価対象部位Pの水平面内での位置を基準として、疲労損傷評価の演算に用いられる座標系を定義する。ブーム23の旋回中心をOとする。ブーム23の旋回中心Oと評価対象部位Pとを通る水平線を基準線BLとする。ブーム23の旋回中心Oを通り基準線BLと直行する水平線を分画線DLとする。分画線DLより評価対象部位P側の領域を前方領域FAとする。分画線DLより評価対象部位Pとは反対側の領域を後方領域RAとする。
【0033】
この座標系におけるブーム23の旋回角をθとする。ブーム23の旋回中心Oを基準として評価対象部位Pの方向を「真正面」という。ブーム23の旋回中心Oを基準として評価対象部位Pとは逆方向を「真後ろ」という。旋回角θはブーム23が真正面に向いたときを0°とする。
【0034】
なお、
図6は評価対象部位Pがフレーム21の前方部分である場合の座標系を示している。この座標系における前後は積載形トラッククレーンCRを基準とした前後と一致する。しかし、疲労損傷評価の演算に用いられる座標系における前後と移動式クレーンの前後とは必ずしも一致しない。
【0035】
例えば、旋回ベアリング27のボルト27cは旋回中心Oの周りに複数設けられている。いずれのボルト27cを評価対象とするかにより座標系が変わる。
図7に示すように、位置P3に配置されたボルト27cを評価対象部位とした場合、疲労損傷評価の演算に用いられる座標系における前後と積載形トラッククレーンCRの前後とは一致しなくなる。
【0036】
一般に、旋回角測定器42で測定される旋回角Θはブーム23が積載形トラッククレーンCRの真正面に向いたときを0°としている。そのため、疲労損傷評価の演算に用いられる座標系における旋回角θと旋回角測定器42で測定される旋回角Θとは必ずしも一致しない。そこで、演算装置40は座標系と移動式クレーンの向きとの関係に基づき、旋回角測定器42で測定された旋回角Θを座標系における旋回角θに変換する。
【0037】
図8に示すように、演算装置40は、概略すると、以下の手順で評価対象部位Pの疲労損傷評価を行なう。
ステップS1:一作業ごとに評価対象部位に生じる応力の応力振幅比を求める。
ステップS2:一作業ごとに応力振幅比から一作業疲労損傷値を求める。
ステップS3:一作業疲労損傷値を積算して累積疲労損傷値を求める。
【0038】
ここで、「一作業」とは吊荷LOの地切から着地までのクレーン作業を意味する。吊荷LOの地切とは、フック24に玉掛けされた吊荷LOが地面、荷台などに置かれた状態から浮き上がることを意味する。吊荷LOの着地とは、フック24に吊り下げられた吊荷LOが地面、荷台などに置かれることを意味する。したがって、一作業は一の吊荷LOの荷重がブーム23にかかっている間の作業といえる。
【0039】
一作業の開始時には、ブーム23は無負荷状態から吊荷LOの荷重がかかった状態となる。また、一作業の終了時には、ブーム23は吊荷LOの荷重がかかった状態から無負荷状態となる。したがって、一作業の期間は、モーメント測定器41で測定された倒伏モーメントMの変化により判断できる。
【0040】
以下、ステップS1~S3の各処理を詳説する。
【0041】
(ステップS1)演算装置40は、まず、一作業ごとに評価対象部位Pに生じる応力の応力振幅比r
iを求める。ここで、「応力振幅比r
i」とは、式(1)に示すように、評価対象部位Pに生じる応力の変動幅Δσ
iの定格応力全振幅σ
ppに対する比率である。「定格応力全振幅σ
pp」とは、ブーム23に定格モーメントが作用している条件下でブーム23を360°旋回したときに評価対象部位Pに生じる応力の全振幅(ピーク・トゥー・ピーク)である。
【数1】
ここで、r
iはi番目作業における応力振幅比、Δσ
iはi番目作業における評価対象部位Pに生じる応力の変動幅、σ
ppは定格応力全振幅を意味する。
【0042】
応力振幅比r
iはブーム23に作用する倒伏モーメントMおよびブーム23の旋回角θの測定値に基づいて求めることができる。応力振幅比r
iは、例えば、
図9に示されるステップS11~S13により求められる。
【0043】
(ステップS11)演算装置40は、まず、ブーム23の負荷率f
iを求める。式(2)に示すように、負荷率f
iは倒伏モーメントの測定値M
iの定格値M
cに対する比率である。ここで、定格モーメントM
cは、ブーム23に作用しうる倒伏モーメントMの最大値である。一般に、定格モーメントM
cは、定格荷重の吊荷LOを吊り下げたときブーム23に生じる倒伏モーメントMである。
【数2】
ここで、f
iはi番目作業における負荷率、M
iはi番目作業における倒伏モーメント、M
cは定格モーメントを意味する。
【0044】
負荷率fiはブーム23にかかる負荷の最大値に対する実負荷の比率を意味する。ブーム23にかかる負荷の最大値は、ブーム23に定格モーメントMcが作用しているときにかかる負荷である。したがって、式(2)により負荷率fiが求まる。
【0045】
(ステップS12)つぎに、演算装置40は、一作業の期間における旋回角θの変化から評価対象部位Pに生じる応力の振幅率aiを求める。振幅率aiは、ブーム23が前方領域FAおよび後方領域RAの両方で旋回したか、一方で旋回したかにより具体的な計算方法が異なる。以下、それぞれの場合について、振幅率aiの計算方法を順に説明する。
【0046】
ケースA:ブームが前方領域および後方領域の両方で旋回した場合
一作業の期間においてブーム23が前方領域FAおよび後方領域RAの両方に渡って旋回した場合、式(3)に基づいて、振幅率a
iを求めることができる。
【数3】
ここで、a
iはi番目作業における振幅率、θ(t)はi番目作業の期間中の時刻tにおける旋回角、max{cosθ(t)}はcosθ(t)の最大値、min{cosθ(t)}はcosθ(t)の最小値、σ
fはブーム23が真正面に向いたときに評価対象部位Pに生じる定格応力(定格圧縮応力または定格引張応力)の絶対値、σ
rはブーム23が真後ろに向いたときに評価対象部位Pに生じる定格応力(定格引張応力または定格圧縮応力)の絶対値を意味する。
【0047】
評価対象部位Pがフレーム21の前方部分などの場合、
図3においては(評価対象部位Pがフレーム21の前方部分P1の場合には、
図3の左側が前方領域FAであり、右側が後方領域RAである。)、ブーム23の先端部が前方領域FAにあると評価対象部位P1に圧縮応力が生じる。また、ブーム23の先端部が後方領域RAにあると評価対象部位P1に引張応力が生じる。なお、部位によってはその逆のこともある。
【0048】
評価対象部位Pに生じうる圧縮応力の最大値を「定格圧縮応力」という。定格圧縮応力はブーム23に定格モーメントMcが作用している条件下でブーム23を360°旋回したときに評価対象部位Pに生じる圧縮応力の最大値である。評価対象部位Pに生じうる引張応力の最大値を「定格引張応力」という。定格引張応力はブーム23に定格モーメントMcが作用している条件下でブーム23を360°旋回したときに評価対象部位Pに生じる引張応力の最大値である。
【0049】
ケースB:ブームが前方領域で旋回した場合
一作業の開始時および終了時はブーム23に吊荷LOの荷重がかからない。ブーム23にかかる負荷は無負荷状態から吊荷LOの荷重がかかった負荷状態に変化する。そのため、評価対象部位Pに生じる応力の振幅率aiを求めるには、無負荷状態からの応力の変化を考慮する必要がある。そのため、ケースBでは、つぎのように振幅率aiを求める。
【0050】
一作業の期間においてブーム23が前方領域FAのみで旋回した場合、式(4)に基づいて、振幅率a
iを求めることができる。
【数4】
【0051】
ケースC:ブームが後方領域で旋回した場合
ブームが後方領域で旋回した場合にも、無負荷状態からの応力の変化を考慮する必要がある。そのため、ケースCでは、つぎのように振幅率aiを求める。
【0052】
一作業の期間においてブーム23が後方領域RAのみで旋回した場合、式(5)に基づいて、振幅率a
iを求めることができる。
【数5】
【0053】
式(3)~(5)は、評価対象部位Pの定格圧縮応力と定格引張応力の絶対値が異なることをも想定している。例えば、評価対象部位Pがフレーム21の前方部分、後方部分などの場合、定格圧縮応力と定格引張応力の絶対値が異なる場合がある。また、旋回ベアリング27のボルト27cには、ブーム23に作用する倒伏モーメントMに起因する引張応力が生じるが、圧縮応力は生じない。
【0054】
このように、評価対象部位Pによっては、定格圧縮応力と定格引張応力の絶対値が異なることがある。すなわち、ブーム23を真正面に向けたときの圧縮応力(または引張応力)と、ブーム23を真後ろに向けたときの引張応力(または圧縮応力)とで、絶対値が異なることがある。
【0055】
なお、評価対象部位Pに生じる応力の変動には、いわゆる両振りと片振りとがある。両振りとは、ブーム23を旋回させると、評価対象部位Pに圧縮応力と引張応力とが交互に生じることをいう。片振りの場合、評価対象部位Pに生じる応力は圧縮応力および引張応力のいずれかである。ブーム23を旋回させると、評価対象部位Pに応力が生じた状態と、その応力が開放された状態とが交互に生じる。例えば、旋回ベアリング27のボルト27cには、引張応力が生じるが圧縮応力は生じない。このような片振りの場合、式(3)、(4)、(5)において、σfおよびσrのいずれかが0に設定される。
【0056】
また、評価対象部位Pによっては、定格圧縮応力と定格引張応力の絶対値が同一になることがある。すなわち、ブーム23を真正面に向けたときの圧縮応力(または引張応力)と、ブーム23を真後ろに向けたときの引張応力(または圧縮応力)とで、絶対値が同一になることがある。つまり、σf=σrという条件になる。
【0057】
以下に示すとおり、式(3)においてσ
f=σ
rとすると式(6)が導かれる。
【数6】
【0058】
また、以下に示すとおり、σ
f=σ
rとすると、式(4)から式(7)が導かれ、式(5)から式(8)が導かれる。
【数7】
【数8】
【0059】
(ステップS13)
図9に戻り説明する。演算装置40は、式(9)に示すように、負荷率f
iに振幅率a
iを乗じて応力振幅比r
iを求める。
【数9】
【0060】
なお、定格応力全振幅はσ
ppである。したがって、負荷率f
i(ブーム23に倒伏モーメントM
iが作用している)条件下でブーム23を360°旋回したときに評価対象部位Pに生じる応力の全振幅はf
iσ
ppである。振幅率をa
iとすると応力変動幅Δσ
iは式(10)で表される。
【数10】
【0061】
以下に示すとおり、式(1)のΔσ
iに式(10)を代入すると、式(9)が得られる。すなわち、式(1)と式(9)は同義である。
【数11】
【0062】
以上のステップS11~S13で説明した方法は、一作業の期間においてブーム23に作用する倒伏モーメントMiが変化しないことを前提としている。しかし、ブーム23の作業半径が変化すると倒伏モーメントMiは増減する。そこで、一作業の期間における倒伏モーメントMiの時間変化も考慮して応力振幅比riを求めてもよい。
【0063】
(ステップS2)
図8に戻り説明する。演算装置40は応力振幅比r
iから一作業疲労損傷値d
iを求める。一作業疲労損傷値は、例えば、式(11)に基づいて求められる。
【数12】
ここで、d
iはi番目作業における一作業疲労損傷値、αは所定の定数を意味する。
【0064】
JIS B 8822-1:2001には、クレーンの荷重スペクトル係数Kpを求めるにあたり、クレーンの使用中における個々の荷重の大きさ(荷重レベル)Piをクレーンが取り扱うと予想される最大荷重(定格荷重)Pmaxで除した値(Pi/Pmax)を3乗した値を用いることが記載されている。これに倣うならば、α=3とすればよい。ただし、試験結果、安全率などを考慮して、αを他の値に設定してもよい。
【0065】
(ステップS3)つぎに、演算装置40は、式(12)に示すように、所定期間における一作業疲労損傷値d
iを積算して累積疲労損傷値Dを求める。すなわち、m番目の一作業からn番目の一作業まで、一作業ごとに求めた一作業疲労損傷値d
iを積算して累積疲労損傷値Dを求める。
【数13】
【0066】
一作業疲労損傷値diを積算する期間(開始時および終了時)は任意に定めることができる。例えば、積算期間を1時間、1日、1月または1年と定めることができる。演算装置40は一作業ごとにステップS1~S3までの処理を行ない、これを積算期間の間繰り返し行なう。これにより、積算期間において評価対象部位Pに蓄積された累積疲労損傷値Dを求めることができる。
【0067】
求められた累積疲労損傷値Dは、画面表示してもよいし、データとして他のデバイスに転送できるようにしてもよい。
【0068】
本実施形態によれば、ブームの旋回角θを考慮した応力振幅比riに基づいて累積疲労損傷値Dを求めるため、評価対象部位Pの疲労損傷を精度よく評価できる。評価対象部位Pとしてフレームの前方部分または後方部分を選択すれば、フレームの前方部分または後方部分の疲労損傷を精度よく評価できる。評価対象部位Pとしてアウトリガ外箱の先端部を選択すれば、アウトリガ外箱の疲労損傷を精度よく評価できる。評価対象部位Pとして旋回ベアリングをフレームに固定するボルトを選択すれば、そのボルトの疲労損傷を精度よく評価できる。
【0069】
〔第2実施形態〕
つぎに、本発明の第2実施形態に係る疲労損傷評価装置AAを説明する。
移動式クレーンを構成する各種部材は、使用するにしたがい疲労損傷が蓄積され、ひいては破損に至る。部材が破損する前に寿命の到来を検知できれば、補修、交換などのメンテナンスを行なうことができる。本実施形態の疲労損傷評価装置AAは評価対象部位Pの寿命の到来を検知するものである。
【0070】
図10に示すように、演算装置40は応力振幅比の演算(ステップS1)、一作業疲労損傷値の演算(ステップS2)および累積疲労損傷値の演算(ステップS3)を行なう。これらは第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0071】
本実施形態において、演算装置40は、評価対象部位Pの使用開始時から現在までの累積疲労損傷値Dを求める。すなわち、演算装置40は一作業ごとにステップS1~S3までの処理を行ない、これを評価対象部位Pの使用開始時から現在まで繰り返し行なう。
【0072】
そして、累積疲労損傷値Dを求める度(新たな一作業疲労損傷値diを加算する度)に、累積疲労損傷値Dと寿命閾値Tとを比較する(ステップS4)。寿命閾値Tは評価対象部位Pに対して予め定められた値である。寿命閾値Tは試験などにより定められる。累積疲労損傷値Dが寿命閾値Tを超えない場合、処理はステップS1に戻る。
【0073】
累積疲労損傷値Dが寿命閾値Tを超える場合、演算装置40は評価対象部位Pの寿命が到来したと判断する。この場合、演算装置40は警報を発して、寿命の到来をユーザに通知する(ステップS5)。警報の手段は特に限定されないが、インジケータランプの点灯、画面表示、音声などが挙げられる。
【0074】
本実施形態によれば、評価対象部位Pの寿命が到来したことを検知できるので、移動式クレーンの使用状態に応じて、適切な時期にメンテナンスを促すことができる。そのため、ユーザは移動式クレーンの品質維持に効果的なメンテナンスが可能となる。
【符号の説明】
【0075】
CR 積載形トラッククレーン
10 汎用トラック
20 小型クレーン
21 フレーム
22 旋回台
23 ブーム
27 旋回ベアリング
30 アウトリガ装置
31 アウトリガ内箱
32 アウトリガジャッキ
AA 疲労損傷評価装置
40 演算装置
41 モーメント測定器
42 旋回角測定器