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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20240116BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240116BHJP
   H02H 7/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H02J1/00 309R
B60L3/00 J
H02H7/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020104776
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021197873
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】瀧内 新悟
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-114974(JP,A)
【文献】特開2004-088821(JP,A)
【文献】特開2008-022675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
H02H7/00
H02H7/10-7/20
H02J1/00-1/16
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ(210)と、
前記バッテリと複数の電力配線(211,212)を介して接続される電気機器(240,260)と、
複数の前記電力配線それぞれに設けられて前記バッテリと前記電気機器との間の電流の通電と遮断を制御する複数のメインスイッチ(221)と、
ユーザの使用時に第1レベル、非使用時に第2レベルとなるトリガ信号を出力するセンサ部(270)と、
直列接続された充電スイッチ(231)と制限抵抗(232)を備え、複数の前記メインスイッチのうちの少なくとも1つに並列接続される充電回路(230)と、を有する給電システム(200)に含まれる制御装置であって、
前記制限抵抗の温度が所定値よりも低い場合、前記トリガ信号が前記第2レベルから前記第1レベルになると前記充電スイッチを通電状態と遮断状態とに切り換えるとともに前記メインスイッチを通電状態にし、前記トリガ信号が前記第1レベルから前記第2レベルに切り換わる際に、前記メインスイッチを通電状態から遮断状態に切り換える通常処理、および、前記制限抵抗の温度が前記所定値よりも高い場合、前記トリガ信号に依らずに、前記メインスイッチを通電状態、前記充電スイッチを遮断状態に維持する維持処理を実行し、
時間を計測するタイマー(140)と、
前記所定値に関わる冷却時間と閾値の記憶されたメモリ(120)と、
前記充電スイッチが遮断状態から通電状態に切り換わるとカウンタ値を加算し、前記充電スイッチが通電状態から遮断状態に切り換わってから、前記充電スイッチの遮断状態の継続時間が前記冷却時間を超えると前記カウンタ値を減算するカウンタ(130)と、
前記カウンタ値が前記閾値を上回らない場合に前記通常処理を実行し、前記カウンタ値が前記閾値を上回った場合に前記維持処理を実行する演算部(110)と、を有し、
前記給電システムは車両に搭載され、
前記センサ部は、前記トリガ信号の他に、前記車両から前記ユーザが離間したか否かを示す離間信号を出力し、
前記演算部は前記維持処理を実行している際に、前記離間信号に基づいて前記ユーザが前記車両から離れたと判断した場合、前記メインスイッチを遮断状態にする制御装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記カウンタ値が前記閾値を上回った後、前記カウンタ値が前記閾値よりも値の低い所定値になるまで、前記トリガ信号に依らずに、前記メインスイッチを通電状態、前記充電スイッチを遮断状態に維持する請求項に記載の制御装置。
【請求項3】
前記メモリには前記冷却時間と前記閾値のほかに昇温時間が記憶されており、
前記カウンタは、前記充電スイッチが遮断状態から通電状態に切り換わると前記カウンタ値を加算するとともに、前記充電スイッチの通電状態の継続される時間が昇温時間を経過するごとに前記カウンタ値を加算する請求項または請求項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示は、バッテリと電気機器との間に設けられるスイッチを制御する制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、高電圧バッテリとモータとの間に接続されるメインリレーとグラウンドリレー、および、メインリレーに並列接続されるプリチャージリレーそれぞれを制御する電源制御装置が知られている。プリチャージリレーには、高電圧バッテリからモータへの突入電流を制限するための突入制限抵抗が直列接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-114974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される電源制御装置は、ユーザ操作によってイグニッションキースイッチから始動指示信号を受けたときに、グラウンドリレーとプリチャージリレーをONする。所定時間経過後、電源制御装置はメインリレーをONする。次いで電源制御装置はプリチャージリレーをOFFする。この際に電源制御装置は制限抵抗冷却カウンタをインクリメントし始める。
【0005】
電源制御装置は、ユーザ操作によってイグニッションキースイッチから停止指示信号を受けたときに、制限抵抗冷却カウンタの値が規定値に達したかどうかを判断する。制限抵抗冷却カウンタの値が規定値に達していない場合、電源制御装置はメインリレーとグラウンドリレーのONを継続する。制限抵抗冷却カウンタの値が規定値に達している場合、電源制御装置はメインリレーとグラウンドリレーをOFFする。
【0006】
係る制御により、制限抵抗冷却カウンタの値が規定値に達するまで、プリチャージリレーがOFFになる。そのために通電によって昇温した突入制限抵抗の冷却時間が確保される。突入制限抵抗(制限抵抗)の過昇温が抑制される。
【0007】
しかしながら、係る制御の場合、ユーザ操作によってイグニッションキースイッチから停止指示信号が出力された際に、制限抵抗冷却カウンタの値が規定値に達していないと、必ず、ユーザ操作後にメインリレーとグラウンドリレーがOFFになる。ユーザの操作タイミングとメインリレーとグラウンドリレーそれぞれがOFFになる際に生じる遮断音の発生タイミングとがずれる。この結果、ユーザが違和感を覚える可能性がある。
【0008】
本開示の目的は、ユーザが違和感を覚える機会を少なくするとともに、制限抵抗の過昇温が抑制された制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様による制御装置は、バッテリ(210)と、
バッテリと複数の電力配線(211,212)を介して接続される電気機器(240,260)と、
複数の電力配線それぞれに設けられてバッテリと電気機器との間の電流の通電と遮断を制御する複数のメインスイッチ(221)と、
ユーザの使用時に第1レベル、非使用時に第2レベルとなるトリガ信号を出力するセンサ部(270)と、
直列接続された充電スイッチ(231)と制限抵抗(232)を備え、複数のメインスイッチのうちの少なくとも1つに並列接続される充電回路(230)と、を有する給電システム(200)に含まれる制御装置であって、
制限抵抗の温度が所定値よりも低い場合、トリガ信号が第2レベルから第1レベルになると充電スイッチを通電状態と遮断状態とに切り換えるとともにメインスイッチを通電状態にし、トリガ信号が第1レベルから第2レベルに切り換わる際に、メインスイッチを通電状態から遮断状態に切り換える通常処理、および、制限抵抗の温度が所定値よりも高い場合、トリガ信号に依らずに、メインスイッチを通電状態、充電スイッチを遮断状態に維持する維持処理を実行するし、
時間を計測するタイマー(140)と、
所定値に関わる冷却時間と閾値の記憶されたメモリ(120)と、
充電スイッチが遮断状態から通電状態に切り換わるとカウンタ値を加算し、充電スイッチが通電状態から遮断状態に切り換わってから、充電スイッチの遮断状態の継続時間が冷却時間を超えるとカウンタ値を減算するカウンタ(130)と、
カウンタ値が閾値を上回らない場合に通常処理を実行し、カウンタ値が閾値を上回った場合に維持処理を実行する演算部(110)と、を有し、
給電システムは車両に搭載され、
センサ部は、トリガ信号の他に、車両からユーザが離間したか否かを示す離間信号を出力し、
演算部は維持処理を実行している際に、離間信号に基づいてユーザが車両から離れたと判断した場合、メインスイッチを遮断状態にする
【0010】
本開示によれば、ユーザ操作のためにトリガ信号が第1レベルから第2レベルに切り換わる操作タイミングと遮断音の発生タイミングとに時間的なずれの発生する頻度が少なくなる。そのためにユーザが違和感を覚える機会が少なくなる。また、制限抵抗の過昇温が抑制される。
【0011】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車載システムを示す回路図である。
図2】第1実施形態の冷却処理を説明するためのフローチャートである。
図3】冷却処理を説明するためのタイミングチャートである。
図4】加算処理を説明するためのフローチャートである。
図5】第2実施形態の冷却処理を説明するためのタイミングチャートである。
図6】第3実施形態の冷却処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0014】
各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせが可能である。また、特に組み合わせに支障が生じなければ、組み合わせが可能であることを明示していなくても、実施形態同士、実施形態と変形例、および、変形例同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0015】
(第1実施形態)
図1図3に基づいて制御装置100を含む給電システム200を説明する。この給電システム200はハイブリッド自動車や電気自動車などの電動車両に搭載されている。なお、制御装置100は車両だけではなく、例えばドローンやロボットなどの移動体や家電などの各種電気製品に適用可能である。制御装置100はこれら各種電気部品の給電システム200に適宜採用可能である。
【0016】
<車載システム>
図1に示すように給電システム200は制御装置100の他に、バッテリ210、SMR220、プリチャージ回路230、電力変換装置240、モータ250、電気負荷260、および、センサ部270を有している。
【0017】
図面においては表記を簡略化するため、電力変換装置240をINV、モータ250をMG、電気負荷260をCOMP、センサ部270をSENSと表記している。SMRはSystem Main Relayの略である。電力変換装置240と電気負荷260が電気機器に相当する。
【0018】
制御装置100はセンサ部270や図示しないセンサから入力される信号などの各種信号および他の車載制御装置との通信結果に基づいて、給電システム200に含まれるスイッチの通電と遮断を制御している。
【0019】
バッテリ210は電気的に直列接続された複数の電池セルを備えている。この電池セルとしては例えばリチウムイオン電池などの二次電池を採用することができる。電気的に直列接続された複数の電池セルのうちの最低電位の電池セルの負極にNバスバ211が接続されている。最高電位の電池セルの正極にPバスバ212が接続されている。これらNバスバ211とPバスバ212それぞれに電力変換装置240と電気負荷260が電気的に接続されている。Nバスバ211とPバスバ212それぞれが電力配線に相当する。
【0020】
SMR220はNバスバ211とPバスバ212それぞれに設けられたメインスイッチ221を備えている。メインスイッチ221はノーマリクローズ式の電磁リレーである。メインスイッチ221は励磁電流が供給されない場合に通電状態、励磁電流が供給される場合に遮断状態になる。図面においては通電状態をON、遮断状態をOFFと表記している。
【0021】
メインスイッチ221はNバスバ211とPバスバ212それぞれにおけるバッテリ210と電力変換装置240(電気負荷260)との間に設けられている。そのため、励磁電流の非供給によってメインスイッチ221が通電状態になると、バッテリ210が電力変換装置240および電気負荷260それぞれと電気的に接続される。励磁電流の供給によってメインスイッチ221が遮断状態になると、バッテリ210が電力変換装置240および電気負荷260それぞれと電気的に接続されなくなる。
【0022】
プリチャージ回路230は充電スイッチ231と制限抵抗232を備えている。充電スイッチ231と制限抵抗232は電気的に直列接続されて直列回路を構成している。この直列回路の一端がNバスバ211におけるメインスイッチ221とバッテリ210との間に接続されている。直列回路の他端がNバスバ211におけるメインスイッチ221と電力変換装置240(電気負荷260)との間に接続されている。これにより充電スイッチ231と制限抵抗232はNバスバ211に設けられたメインスイッチ221と並列接続されている。プリチャージ回路230が充電回路に相当する。
【0023】
電力変換装置240は大容量の平滑コンデンサと電力変換回路を有している。平滑コンデンサの備える2つの電極の一方がNバスバ211に接続されている。2つの電極の他方がPバスバ212に接続されている。
【0024】
平滑コンデンサは電力変換回路の使用時に充電状態で用いられる。平滑コンデンサの充電はバッテリ210からの電力供給によって行われる。この電力供給は、Pバスバ212に設けられたメインスイッチ221とプリチャージ回路230の充電スイッチ231それぞれを通電状態、Nバスバ211に設けられたメインスイッチ221を遮断状態にすることで行われる。係るスイッチ制御により、バッテリ210から平滑コンデンサへの電力供給が制限抵抗232を介して行われる。バッテリ210から平滑コンデンサへと流れる電力の急激な増大が抑制される。
【0025】
電力変換回路はインバータ回路を含んでいる。インバータ回路はNバスバ211とPバスバ212との間で並列接続された少なくとも3つの相回路を有する。相回路は直列接続された2つのスイッチ素子と、これら2つのスイッチ素子それぞれに逆並列接続された還流ダイオードと、を備えている。
【0026】
モータ250は電動車両の走行に用いられる。モータ250の備えるステータコイルに相回路の備える2つのスイッチ素子の中点が電気的に接続される。メインスイッチ221の通電状態で、各相回路の備えるスイッチ素子がPWM制御される。これにより電力変換回路で三相交流が生成される。この三相交流がステータコイルに供給されることで、三相回転磁界がステータコイルから発生される。この三相回転磁界とモータ250のロータから発生される磁界との相互作用によって回転トルクがロータに発生する。これによりモータ250が力行状態になる。電動車両が走行可能状態になる。
【0027】
また、モータ250が電動車両の走行輪の回転エネルギーによって回生発電した場合、例えばスイッチ素子が遮断状態に制御される。こうすることで回生発電によって生成された交流電力が還流ダイオードを通る。還流ダイオードによって交流電力が直流電力に変換される。この直流電力がバッテリ210や電気負荷260に供給される。なお電力変換回路は入力電力の電圧レベルを変換するコンバータ回路を含んでもよい。
【0028】
電気負荷260にはDCDCコンバータや車両アクセサリが含まれている。DCDCコンバータは供給された直流電力を12Vに降圧し、それをスピーカ、パワーウィンドウ、および、パワーステアリング装置などに供給する。車両アクセサリは例えばヒータや空調などであり、供給された直流電力によって駆動する。
【0029】
これら電気負荷260には容量成分が含まれている。これら容量成分は電気負荷260の使用時に充電される。これら容量成分は上記したプリチャージ回路230を介した電力給電によって充電される。
【0030】
なお、上記したように電気負荷260には様々な機器が含まれている。これら機器は車両状態に応じて選択的に使用される。そのために電気負荷260の容量成分の静電容量は車両状態に応じて変化する。この結果、プリチャージ回路230を介した容量成分への電力供給量は車両状態に応じて変化する。
【0031】
センサ部270は各種車両状態を検出する機能を果たしている。センサ部270に含まれる複数のセンサの一部は、例えば平滑コンデンサの両端電圧やそれに流れる電流を検出する。これらセンサの検出結果が制御装置100に入力される。
【0032】
<制御装置>
制御装置100はこれまでに説明したセンサ部270の信号、および、図示しない他のセンサの信号や他の車載制御装置との通信結果に基づいて、給電システム200に含まれるスイッチの通電と遮断を制御する。
【0033】
制御装置100はPバスバ212に設けられたメインスイッチ221とプリチャージ回路230の充電スイッチ231それぞれを通電状態にする。また制御装置100はNバスバ211に設けられたメインスイッチ221を遮断状態にする。こうすることで制御装置100は電力変換装置240に含まれる平滑コンデンサを充電する。また制御装置100は電気負荷260に含まれる容量成分を充電する。
【0034】
制御装置100はNバスバ211とPバスバ212それぞれに設けられたメインスイッチ221を通電状態にする。また制御装置100は充電スイッチ231を遮断状態にする。こうすることで制御装置100はバッテリ210を電力変換装置240および電気負荷260それぞれと電気的に接続する。
【0035】
制御装置100はメインスイッチ221を通電状態にしつつ電力変換装置240に含まれるスイッチ素子をPWM制御する。こうすることで制御装置100はモータ250を力行する。また制御装置100はスイッチ素子を例えば遮断状態にする。こうすることで制御装置100はモータ250で生成された交流電力を直流電力に変換する。なお、電力変換装置240のPWM制御は他の車載制御装置で行われてもよい。
【0036】
<制限抵抗の昇温>
上記したように充電スイッチ231を通電状態にすると、制限抵抗232に電流が流れる。これによって制限抵抗232が昇温する。この制限抵抗232の昇温は、充電スイッチ231が遮断状態になると停止する。制限抵抗232は自然冷却を開始し、その温度が低下する。自然冷却時間が長くなるほどに制限抵抗232の温度が雰囲気温度に近づく。
【0037】
しかしながら、自然冷却時間が十分に確保されずに、充電スイッチ231が通電状態と遮断状態とに幾度も切り換えられると、制限抵抗232が高温状態に保たれる虞がある。これによって制限抵抗232そのものや制限抵抗232に接続される配線などに不具合が生じる虞がある。
【0038】
<冷却制御>
制御装置100は係る不具合が生じることを抑制するために後述の冷却処理を実行している。制御装置100はこの冷却処理を実行するための構成要素として、図1に示す演算部110、メモリ120、カウンタ130、タイマー140を有する。図面では演算部110をAU、メモリ120をMEM、カウンタ130をCOUNT、タイマー140をTIM、閾値をTHと表記している。
【0039】
演算部110はメモリ120に記憶されたコマンドや各種情報を読み出すとともに、外部から入力される信号に基づいて冷却処理を実行している。演算部110は冷却処理と並行して、センサ部270や各種センサから入力される信号を所定周期でサンプリングしている。
【0040】
以下では表記が煩雑となることを避けるために、必要に応じて、制御装置100がサンプリングしている各種信号をまとめてセンサ信号と示す。このセンサ信号には、ユーザの使用時にハイレベル、非使用時にローレベルになるトリガ信号が含まれている。ハイレベルが第1レベル、ローレベルが第2レベルに相当する。
【0041】
メモリ120には上記のコマンドの他に、冷却フラグ、閾値、および、冷却時間が記憶されている。冷却フラグは演算部110によって0と1とに書き換え可能になっている。閾値と冷却時間とは実験やシミュレーションなどによって、あらかじめ値の設定される固定値である。閾値は1以上の整数であり、冷却時間は数分程度の値である。本実施形態において閾値は2、冷却時間は1分に設定されている。閾値と冷却時間それぞれは制限抵抗の温度状態を判定する所定値に関連している。
【0042】
カウンタ130は演算部110によって値がインクリメント若しくはディクリメントされる。カウンタ130の値は制限抵抗232の温度状態を示している。カウンタ130の値が高いほどに制限抵抗232が高温状態であることを示している。以下においては、必要に応じて、カウンタ130の値をカウンタ値と示す。
【0043】
タイマー140は演算部110によって時間計測の開始と停止、および、計測時間のクリアが制御される。タイマー140の計測時間は制限抵抗232の自然冷却時間を示している。計測時間が長いほどに制限抵抗232が自然冷却されたことを示している。
【0044】
<フローチャート>
以下、図2のフローチャートに基づいて冷却制御を説明する。この冷却制御に通常処理と維持処理それぞれが含まれている。図面では開始をS、終了をEで表記している。Pバスバ212に設けられたメインスイッチ221をPSMR、Nバスバ211に設けられたメインスイッチ221をNSMR、充電スイッチ231をCSWと表記している。カウンタ値をCV、閾値をTH、冷却フラグをCFと表記している。
【0045】
図2に示すステップS10は給電システム200の始状態を示している。ステップS10においてNバスバ211とPバスバ212それぞれに設けられたメインスイッチ221と充電スイッチ231は遮断状態(オフ状態)になっている。そして冷却フラグは0になっている。
【0046】
ステップS10の次のステップS20は制御装置100がオフ状態かオン状態かを示している。制御装置100がオフ状態の場合、当然ながらにして制御装置100は何ら制御を行わない。そのために制御装置100の処理が終了になる。制御装置100がオン状態の場合、制御装置100はステップS30から冷却制御を実質的に処理し始める。
【0047】
ステップS30において制御装置100の演算部110は、トリガ信号が入力されているか否かを判定する。このトリガ信号は、具体的にはユーザのキー操作によるイグニッションスイッチのオンオフ状態や外部電源の充電コネクタの挿抜状態を示す信号である。トリガ信号が入力されていない場合、演算部110はステップS20とステップS30とを繰り返す待機状態になる。トリガ信号が入力されている場合、演算部110はステップS40へ進む。
【0048】
なお、トリガ信号が入力されているとは、トリガ信号がハイレベルであることを示している。トリガ信号が入力されていないとは、トリガ信号がローレベルであることを示している。そのために演算部110にトリガ信号が入力されるタイミングは、トリガ信号の立ち上がりエッジの入力タイミングに相当する。演算部110にトリガ信号が入力されなくなるタイミングは、トリガ信号の立ち下がりエッジの入力タイミングに相当する。
【0049】
ステップS40へ進むと演算部110は、Pバスバ212に設けられたメインスイッチ221とプリチャージ回路230の充電スイッチ231それぞれを通電状態(オン状態)にする。演算部110はNバスバ211に設けられたメインスイッチ221を遮断状態に維持する。そして演算部110はステップS50へ進む。係るスイッチ制御により、制限抵抗232を介して平滑コンデンサと容量成分に電力供給される。この電力供給によって制限抵抗232が昇温する。
【0050】
ステップS50へ進むと演算部110は、カウンタ値を+1だけインクリメントする。そして演算部110はステップS60へ進む。
【0051】
ステップS60へ進むと演算部110は、カウンタ値と閾値とを比較する。カウンタ値が閾値以下の場合、演算部110はステップS70へ進む。カウンタ130値が閾値よりも大きい場合、演算部110はステップS80を介してステップS70へ進む。ステップS80へ進むと演算部110は冷却フラグを1にする。
【0052】
ステップS70へ進むと演算部110は、平滑コンデンサと容量成分の電力供給が終了しているとみなして、Nバスバ211とPバスバ212に設けられたメインスイッチ221と充電スイッチ231それぞれを通電状態にする。この後に演算部110はステップS90へ進む。
【0053】
なお、以上に示したステップS40からステップS70の間において、演算部110は平滑コンデンサと容量成分の電力供給の終了をセンサ信号に基づいて判断する処理を行ってもよい。また、演算部110は単に電力供給の終了が期待される時間だけ待機状態になってもよい。
【0054】
ステップS90へ進むと演算部110は、Nバスバ211とPバスバ212に設けられたメインスイッチ221を通電状態に保ちつつ、充電スイッチ231を遮断状態にする。この後に演算部110はステップS100へ進む。この充電スイッチ231の通電状態から遮断状態への切り換えによって、制限抵抗232が自然冷却し始める。
【0055】
ステップS100へ進むと演算部110は、タイマー140を用いて時間計測を開始する。これによりタイマー140で充電スイッチ231が遮断状態に継続される時間(継続時間)が計測される。タイマー140で制限抵抗232が自然冷却される時間(自然冷却時間)が計測される。この後に演算部110はステップS110へ進む。
【0056】
ステップS110へ進むと演算部110は、メモリ120に記憶されている冷却時間とタイマー140の計測時間とを比較する。計測時間が冷却時間を超えている場合、演算部110はステップS120へ進む。計測時間が冷却時間を超えていない場合、演算部110はステップS130へ進む。
【0057】
ステップS120へ進むと演算部110は、カウンタ値を-1だけディクリメントする。そして演算部110はステップS130へ進む。
【0058】
ステップS130へ進むと演算部110は、カウンタ値が0か否かを判定する。カウンタ値が0の場合、演算部110はステップS140へ進む。カウンタ値が0でない場合、演算部110はステップS150へ進む。
【0059】
なお、ステップS130において演算部110は、カウンタ値が閾値よりも低い所定値か否かを判定してもよい。本実施形態の場合、閾値が2なので、所定値としては0のほかに1を採用することができる。
【0060】
ステップS140へ進むと演算部110は、冷却フラグを0にする。そして演算部110はステップS150へ進む。
【0061】
ステップS150へ進むと演算部110は、トリガ信号の入力が途絶えたか否かを判定する。トリガ信号の入力が途絶えた場合、演算部110はステップS160へ進む。トリガ信号が入力されている場合、演算部110はステップS110へ戻る。
【0062】
係る制御を行うため、トリガ信号が入力され続けている限り、演算部110はステップS110からステップS150の処理をループし続ける。このループ過程において、タイマー140で計測される時間が長くなり、その計測時間が冷却時間を超えると、カウンタ値がディクリメントされる。計測時間が冷却時間分を超えるごとにカウンタ値が漸次ディクリメントされる。カウンタ値が0になると、冷却フラグが0になる。
【0063】
ステップS160へ進むと演算部110は冷却フラグが0か否かを判定する。冷却フラグが0の場合、演算部110はステップS170へ進む。冷却フラグが1の場合、演算部110はステップS110へ戻る。
【0064】
係る制御を行うため、トリガ信号が途絶えたとしても、冷却フラグが1である限り、演算部110はステップS110からステップS160の処理をループし続ける。すなわち、例えばユーザ操作のためにトリガ信号が非入力になったとしても、演算部110はNバスバ211とPバスバ212に設けられたメインスイッチ221を通電状態、充電スイッチ231を遮断状態に保ち続ける。
【0065】
これにより、制限抵抗232の自然冷却が継続されるとともに、バッテリ210から電力変換装置240と電気負荷260への電力供給が継続される。平滑コンデンサと容量成分の静電容量の低減が抑制される。
【0066】
なお、演算部110がステップS110からステップS160のループ処理を行っている際に、ユーザ操作のためにトリガ信号が再び入力されると、演算部110はステップS110からステップS150のループ処理に移行する。
【0067】
演算部110は、トリガ信号の入力が途絶え、なおかつ、冷却フラグが0の場合、ステップS170へ進む。ステップS170へ進むと演算部110は、Nバスバ211とPバスバ212に設けられたメインスイッチ221を遮断状態にする。この後に演算部110はステップS20へ戻る。
【0068】
<タイミングチャート>
次に、図3のタイミングチャートに基づいて冷却処理を説明する。図面では上から順に、トリガ信号、カウンタ値、冷却フラグ、Pバスバ212に設けられたメインスイッチ221、Nバスバ211に設けられたメインスイッチ221、および、充電スイッチ231それぞれの時間変化を示している。続いて、電力変換装置240と電気負荷260の印加電圧、メインスイッチ221が通電状態から遮断状態に切り換わる時に生じる遮断音それぞれの時間変化を示している。
【0069】
図3ではトリガ信号をTRSIG、カウンタ値をCV、冷却フラグをCFと表記している。Pバスバ212に設けられたメインスイッチ221をPSMR、Nバスバ211に設けられたメインスイッチ221をNSMR、充電スイッチ231をCSWと表記している。印加電圧をAV、遮断音をBS、時間をTと表記している。また、閾値をTHと表記している。
【0070】
図3に示す時間t1の前において、トリガ信号は未入力、カウンタ値は0、冷却フラグは0、メインスイッチ221と充電スイッチ231それぞれがオフ状態になっている。そのために印加電圧は0、遮断音は未発生になっている。時間t1の前は、図2に示すステップS10の給電システム200の始状態と同等である。
【0071】
時間t1において、例えばユーザ操作によってイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り換えられると、トリガ信号が制御装置100に入力される。このトリガ信号の入力に応じて、制御装置100はPバスバ212に設けられたメインスイッチ221と充電スイッチ231それぞれを通電状態に切り換える。そして制御装置100はカウンタ値を+1だけインクリメントする。この際に制限抵抗232が昇温し始める。
【0072】
時間t1でのスイッチ制御によって平滑コンデンサと容量成分とに電力が供給され始める。平滑コンデンサと容量成分それぞれが充電され始める。この結果、電力変換装置240と電気負荷260の印加電圧が上昇し始める。
【0073】
時間t2になると印加電圧の上昇が止まる。これは平滑コンデンサと容量成分の充電が完了したことを示している。制御装置100はこの充電完了をセンサ信号の入力に基づいて判断すると、Pバスバ212に設けられたメインスイッチ221と充電スイッチ231それぞれの通電状態を保ちつつ、Nバスバ211に設けられたメインスイッチ221を通電状態にする。
【0074】
時間t3になると制御装置100は充電スイッチ231を遮断状態にし、時間計測を開始する。この際に制限抵抗232の昇温が止まるとともに、自然冷却が開始する。
【0075】
時間t3から冷却時間分だけ経過した時間t4になると、制御装置100はカウンタ値を-1だけディクリメントする。
【0076】
時間t5になると、ユーザ操作によってイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り換えられる。これにより制御装置100に入力されるトリガ信号が途絶える。この際に冷却フラグは0になっている。そこで制御装置100はメインスイッチ221を通電状態から遮断状態に切り換える。この際に遮断音が発生する。このようにユーザ操作によってイグニッションスイッチがオン状態からオフ状態に切り換えられた際に、遮断音が発生する。
【0077】
時間t6になると、トリガ信号が制御装置100に入力される。そこで制御装置100はPバスバ212に設けられたメインスイッチ221と充電スイッチ231を通電状態にし、カウンタ値を+1だけインクリメントする。係る制御によって平滑コンデンサと容量成分それぞれが充電され始める。制限抵抗232が昇温し始めるとともに印加電圧が上昇し始める。
【0078】
時間t7になって印加電圧の上昇が止まると制御装置100は、Pバスバ212に設けられたメインスイッチ221と充電スイッチ231それぞれの通電状態を保ちつつ、Nバスバ211に設けられたメインスイッチ221を通電状態にする。
【0079】
時間t8になると制御装置100は充電スイッチ231を遮断状態にし、時間計測を開始する。
【0080】
時間t8から冷却時間が経過する前の時間t9になると、制御装置100に入力されるトリガ信号が途絶える。この際にカウンタ値は1であるものの、冷却フラグは0になっている。そこで制御装置100はメインスイッチ221を遮断状態に切り換える。この場合においても、ユーザの操作によってイグニッションスイッチがオン状態からオフ状態に切り換えられた際に、遮断音が発生する。
【0081】
時間t8から冷却時間が経過する前の時間t10において、再びトリガ信号が制御装置100に入力される。制御装置100はPバスバ212に設けられたメインスイッチ221と充電スイッチ231を通電状態にし、カウンタ値を+1だけインクリメントする。これによりカウンタ値が総計2になる。
【0082】
時間t11になると制御装置100はPバスバ212に設けられたメインスイッチ221と充電スイッチ231それぞれの通電状態を保ちつつ、Nバスバ211に設けられたメインスイッチ221を通電状態にする。
【0083】
時間t12になると制御装置100は充電スイッチ231を遮断状態にし、時間計測を開始する。
【0084】
時間t11から冷却時間が経過する前の時間t13になると、制御装置100に入力されるトリガ信号が途絶える。この際にカウンタ値は2であるものの、冷却フラグは0になっている。そのために制御装置100はメインスイッチ221を遮断状態に切り換える。この際に遮断音が発生する。
【0085】
時間t11から冷却時間が経過する前の時間t14において、再三にわたりトリガ信号が制御装置100に入力される。制御装置100はPバスバ212に設けられたメインスイッチ221と充電スイッチ231を通電状態にし、カウンタ値を+1だけインクリメントする。これによりカウンタ値が総計3になる。この際に制御装置100はカウンタ値が閾値を超えたと判断する。制御装置100は冷却フラグを0から1にする。
【0086】
時間t15になると制御装置100はPバスバ212に設けられたメインスイッチ221と充電スイッチ231それぞれの通電状態を保ちつつ、Nバスバ211に設けられたメインスイッチ221を通電状態にする。
【0087】
時間t16になると制御装置100は充電スイッチ231を遮断状態にし、時間計測を開始する。
【0088】
時間t16から冷却時間が経過する前の時間t17になると、制御装置100に入力されるトリガ信号が途絶える。この際にカウンタ値は3であり、冷却フラグは1になっている。そのために制御装置100はメインスイッチ221の通電状態を維持するとともに、充電スイッチ231を遮断状態に維持する。
【0089】
時間t16から冷却時間が経過した時間t18になると、制御装置100はカウンタ値を-1だけディクリメントする。これによりカウンタ値が2になる。この際にカウンタ値は0になっていないので、制御装置100は冷却フラグを1のままにする。制御装置100はメインスイッチ221の通電状態と充電スイッチ231の遮断状態を維持する。
【0090】
カウンタ値がディクリメントされた時間t18から冷却時間が経過する前の時間t19でトリガ信号が制御装置100に入力される。この際に制御装置100はメインスイッチ221の通電状態と充電スイッチ231の遮断状態を維持している。そのために制限抵抗232の自然冷却が継続される。
【0091】
時間t20になると、制御装置100に入力されるトリガ信号が途絶える。この際にカウンタ値は2であり、冷却フラグは1になっている。そのために制御装置100はメインスイッチ221の通電状態と充電スイッチ231の遮断状態を維持している。遮断音は未発生となる。
【0092】
時間t18から冷却時間が経過した時間t21になると、制御装置100はカウンタ値を-1だけディクリメントする。これによりカウンタ値が1になる。未だカウンタ値は0になっていないので、制御装置100は冷却フラグを1のままにする。制御装置100はメインスイッチ221の通電状態と充電スイッチ231の遮断状態を維持する。
【0093】
時間t21から冷却時間が経過した時間t22になると、制御装置100はカウンタ値を-1だけディクリメントする。これによりカウンタ値が0になる。この際に制御装置100は冷却フラグを1から0にする。そして制御装置100はメインスイッチ221を通電状態から遮断状態に切り換える。ユーザ操作の終了した時間t17および時間t20よりも後の時間t21で、遮断音が発生する。
【0094】
<作用効果>
これまでに説明したように、充電スイッチ231が通電状態になって、制限抵抗232に電流が流れると、カウンタ値がインクリメントされる。充電スイッチ231が遮断状態になって、制限抵抗232の自然冷却時間が冷却時間を超えると、カウンタ値がディクリメントされる。
【0095】
したがって、制限抵抗232の自然冷却時間が冷却時間を超えないほどの短期間で、ユーザ操作のためにトリガ信号の入力と非入力が起こり、充電スイッチ231が通電状態と遮断状態とに幾度も切り換えられると、カウンタ値が漸次インクリメントされる。これによりカウンタ値が大きくなり、カウンタ値と閾値との差が縮まる。
【0096】
しかしながら、カウンタ値が閾値よりも大きくならない限り、冷却フラグは0である。この場合、ユーザ操作のためにトリガ信号が入力から非入力に切り換えられたタイミングで、メインスイッチ221が通電状態から遮断状態に切り換えられる。ユーザの操作タイミングとメインスイッチ221の通電状態から遮断状態への変化による遮断音の発生タイミングとが同時になる。
【0097】
カウンタ値が閾値よりも大きくなると、冷却フラグは1になる。この場合、メインスイッチ221は通電状態に維持される。そのため、ユーザ操作のためにトリガ信号が入力から非入力に切り換えられたタイミングで、メインスイッチ221は通電状態から遮断状態に切り換えられなくなる。ユーザの操作タイミングと遮断音の発生タイミングとが同時にならなくなる。
【0098】
以上によれば、ユーザ操作のためにトリガ信号が入力から非入力に切り換える操作タイミングと遮断音の発生タイミングとに時間的なずれの発生する頻度が少なくなる。そのためにユーザが違和感を覚える機会が少なくなる。
【0099】
また、冷却フラグが1になると、充電スイッチ231が遮断状態に維持される。これにより、短期間で制限抵抗232に電流が流れることが、閾値よりも多く繰り返されることが抑制される。制限抵抗232の過昇温が抑制される。
【0100】
冷却フラグが1から0になるまで、メインスイッチ221の通電状態と充電スイッチ231の遮断状態が維持される。冷却フラグが1から0になるまでには、冷却時間の複数回分の時間を要する。
【0101】
係る長時間の間、充電スイッチ231の遮断状態が維持される。この間、制限抵抗232が自然冷却される。これにより、昇温によって制限抵抗232に不具合の発生することが抑制される。
【0102】
係る長時間の経過後、トリガ信号が未入力の場合、メインスイッチ221が通電状態から遮断状態になる。そのため、例えば図3に示す一例では、ユーザが時間t20でキースイッチ操作によってイグニッションスイッチをオフ状態にした後の時間t22で遮断音が発生する。この時間t20から時間t22に至るまでの間にユーザが車両から離れる可能性が生じる。このように、ユーザの操作タイミングと遮断音の発生タイミングとが同時にはならないものの、ユーザが遮断音を認知する可能性が低まる。これによりユーザが違和感を覚える機会が少なくなる。
【0103】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図4図5に基づいて説明する。
【0104】
第1実施形態では制御装置100が冷却処理において図2に示すステップS50の後にステップS60を実行する例を示した。これに対して本実施形態の制御装置100は冷却処理においてステップS50の後に図4に示す加算処理を実行する。
【0105】
制御装置100の演算部110は、図2に示すステップS50の処理の後、図4に示すステップS51へ進む。
【0106】
ステップS51へ進むと演算部110は、タイマー140を用いて時間計測を開始する。これによりタイマー140で制限抵抗232の通電昇温時間が計測される。この後に演算部110はステップS52へ進む。
【0107】
ステップS52へ進むと演算部110は、メモリ120に記憶されている昇温時間とタイマー140の計測時間とを比較する。計測時間が昇温時間を超えている場合、演算部110はステップS53へ進む。計測時間が昇温時間を超えていない場合、演算部110はステップS54へ進む。
【0108】
ステップS53へ進むと演算部110は、カウンタ値を+1だけインクリメントする。そして演算部110はステップS54へ進む。
【0109】
ステップS54へ進むと演算部110は、平滑コンデンサと容量成分の充電が完了したか否かをセンサ信号に基づいて判断する。充電が完了した場合、演算部110は図2に示すステップS60へ進む。充電が未完了の場合、演算部110はステップS52へと戻る。演算部110はステップS52~ステップS54をループする。
【0110】
第1実施形態で説明したように、電気負荷260に含まれる様々な機器は車両状態に応じて選択的に使用される。そのために電気負荷260の容量成分の静電容量が車両状態に応じて変化する。したがって、演算部110がステップS52~ステップS54のループ処理を実行する時間が、車両状態に応じて変化する。
【0111】
このループ処理の間、充電スイッチ231は通電状態になっている。そのために制限抵抗232に電流が流れることで、制限抵抗232の昇温が継続される。ループ処理の時間が長くなるほどに、制限抵抗232が昇温する。それに伴ってカウンタ値が増大する。
【0112】
したがって、例えば図5のタイミングチャートに示すように、充電スイッチ231が一度通電状態になったらカウンタ値が+1だけインクリメントされるだけではなく、充電スイッチ231の通電時間の長さに応じてカウンタ値が漸次インクリメントされる。
【0113】
図5に示す一例では、トリガ信号が入力されて充電スイッチ231が通電状態になった時間t1から、平滑コンデンサと容量成分の充電が完了して充電スイッチ231が遮断状態になるまでの時間t3の間に、カウンタ値が+3だけインクリメントされる。本実施形態の閾値は5に設定されている。そのために冷却フラグは0のままである。
【0114】
時間t3から時間t4に至るまでに制御装置100はカウンタ値を漸次ディクリメントする。時間t4においてカウンタ値が総計0になる。
【0115】
時間t6で制御装置100にトリガ信号が入力されると、制御装置100はPバスバ212に設けられたメインスイッチ221と充電スイッチ231を通電状態にする。制御装置100は充電スイッチ231を時間t8になるまで通電状態とする。この間にカウンタ値が+3だけインクリメントされる。
【0116】
時間t8になると制御装置100は充電スイッチ231を遮断状態にする。時間t8から時間t10に至るまでに制御装置100はカウンタ値を-1だけディクリメントする。これによりカウンタ値が総計+2になる。
【0117】
時間t10で制御装置100に再びトリガ信号が入力されると、制御装置100はPバスバ212に設けられたメインスイッチ221と充電スイッチ231を通電状態にする。制御装置100は充電スイッチ231を時間t12になるまで通電状態とする。この間にカウンタ値が+3だけインクリメントされる。これによりカウンタ値が総計+5になる。
【0118】
時間t12になると制御装置100は充電スイッチ231を遮断状態にする。時間t12から時間t14に至るまでに制御装置100はカウンタ値を-1だけディクリメントする。カウンタ値が総計+4になる。
【0119】
時間t14で制御装置100に再三にわたってトリガ信号が入力されると、制御装置100はPバスバ212に設けられたメインスイッチ221と充電スイッチ231を通電状態にする。制御装置100は充電スイッチ231を時間t16になるまで通電状態とする。この間にカウンタ値が+2だけインクリメントされる。これによりカウンタ値が総計+6になる。この際に制御装置100はカウンタ値が閾値を上回ったと判断する。制御装置100は冷却フラグを0から1にする。
【0120】
この後、制御装置100はカウンタ値が0になるまで冷却フラグを1に保つ。それとともに制御装置100は、メインスイッチ221の通電状態と充電スイッチ231の遮断状態を維持する。
【0121】
以上に示したように、充電スイッチ231が遮断状態から通電状態になった際にカウンタ値をインクリメントするだけではなく、充電スイッチ231の通電時間に応じてカウンタ値をインクリメントする。充電スイッチ231の通電時間は制限抵抗232の昇温と相関がある。そのために制限抵抗232の昇温状態がカウンタ値により反映される。
【0122】
このカウンタ値が閾値を上回ったか否かに基づいて、充電スイッチ231を遮断状態に維持するか否かを決定する。そのため、制限抵抗232の昇温状態に応じた充電スイッチ231の状態制御の精度が向上される。これにより制限抵抗232の過昇温が効果的に抑制される。
【0123】
なお本実施形態に記載の制御装置100には、第1実施形態に記載の制御装置100と同等の構成要素が含まれている。そのために本実施形態の制御装置100が第1実施形態に記載の制御装置100と同等の作用効果を奏することは言うまでもない。以下に示す他の実施形態と変形例でも同様である。したがってその記載を省略する。
【0124】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図6に基づいて説明する。
【0125】
第1実施形態では制御装置100が図2に示すステップS160においてNOの場合にステップS110へ戻る例を示した。これに対して本実施形態の制御装置100は図6に示すようにステップS160においてNOの場合にステップS180へ進む。
【0126】
ステップS180へ進むと演算部110は、センサ信号に基づいて、ユーザが車両から離間したか否かを判定する。ユーザが車両から離間している場合、演算部110はステップS170へ進む。そして演算部110はステップS170でメインスイッチ221を遮断状態にする。ユーザが車両に滞在している場合、演算部110はステップS110へ戻る。
【0127】
このようにユーザが車両から離間する場合にメインスイッチ221を遮断状態にする。これによりメインスイッチ221を制御するための電力消費が低減される。
【0128】
なお、ユーザが車両から離間したか否かを判定するためのセンサとしては、ドアの開閉状態を示すドアセンサ、シートベルトの着脱状態を示すドアセンサなどがある。これら各種センサがセンサ部270に含まれている。これら各種センサの出力がセンサ信号に含まれている。これら各種センサの出力が離間信号に相当する。
【0129】
また、図6ではステップS160においてNOの場合にステップS180を実行する例を示した。しかしながら、ステップS180は例えばステップS140やステップS150の後に実行してもよい。
【0130】
(第1の変形例)
各実施形態ではNバスバ211に設けられたメインスイッチ221にプリチャージ回路230が並列接続される例を示した。しかしながらPバスバ212に設けられたメインスイッチ221にプリチャージ回路230が並列接続された構成を採用することもできる。Nバスバ211に設けられたメインスイッチ221とPバスバ212に設けられたメインスイッチ221それぞれにプリチャージ回路230が並列接続された構成を採用することもできる。
【0131】
Nバスバ211とPバスバ212それぞれに設けられたメインスイッチ221にプリチャージ回路230が並列接続されている場合、平滑コンデンサと容量成分それぞれを充電する際、充電スイッチ231だけを通電状態にしてもよい。平滑コンデンサと容量成分それぞれの充電が完了した後、メインスイッチ221を通電状態にし、充電スイッチ231を遮断状態にしてもよい。
【0132】
(第2の変形例)
各実施形態では閾値と冷却時間が固定値である例を示した。第2実施形態では昇温時間が固定値である例を示した。しかしながら、これら閾値、冷却時間、および、昇温時間それぞれはセンサ信号に基づいて値の変化する可変値であってもよい。例えばセンサ信号で検出される外部雰囲気温度が低くなるほどに閾値が大きくなってもよい。外部雰囲気温度が低くなるほどに冷却時間が短くなってもよい。外部雰囲気温度が低くなるほどに昇温時間が長くなってもよい。
【0133】
各実施形態ではメインスイッチ221は励磁電流が供給されない場合に通電状態、励磁電流が供給される場合に遮断状態になるノーマリクローズ式の電磁リレーである例を示した。しかしながら、メインスイッチ221としては、励磁電流が供給される場合に通電状態、励磁電流が供給されない場合に遮断状態になるノーマリオープン式の電磁リレーを採用することもできる。
【0134】
<制御装置の形態>
各実施形態で記載した制御装置100は電子制御装置(Electronic Control Unit)とも呼ばれる場合がある。制御装置100または制御システムは、(a)if-then-else形式と呼ばれる複数の論理、または、(b)機械学習でチューニングされた学習済みモデルによって提供することができる。機械学習でチューニングされた学習済みモデルは、例えばニューラルネットワークとしてのアルゴリズムによって提供される。
【0135】
制御装置100は、少なくとも1つのコンピュータを含む制御システムによって提供される。制御システムは、データ通信装置によってリンクされた複数のコンピュータを含む場合がある。コンピュータは、ハードウェアである少なくとも1つプロセッサ(ハードウェアプロセッサ)を含む。ハードウェアプロセッサは、下記(i)、(ii)、または、(iii)により提供することができる。
【0136】
(i)ハードウェアプロセッサは、少なくとも1つのメモリに格納されたプログラムを実行する少なくとも1つのプロセッサコアである場合がある。この場合、コンピュータは、少なくとも1つのメモリと、少なくとも1つのプロセッサコアとによって提供される。プロセッサコアはCPU、GPU、RISC-CPUなどと呼ばれる。CPUはCentral Processing Unitの略である。GPUはGraphics Processing Unitの略である。メモリは記憶媒体とも呼ばれる。メモリはプロセッサによって読み取り可能な「プログラムおよびデータのうちの少なくとも一方」を非一時的に格納する非遷移的かつ実体的な記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリ、磁気ディスク、または、光学ディスクなどによって提供される。プログラムは、それ単体で、またはプログラムが格納された記憶媒体として流通する場合がある。
【0137】
(ii)ハードウェアプロセッサは、ハードウェア論理回路である場合がある。この場合、コンピュータは、プログラムされた多数の論理ユニット(ゲート回路)を含むデジタル回路によって提供される。デジタル回路は、ロジック回路アレイ、例えば、ASIC、FPGA、PGA、CPLDなどとも呼ばれる。ASICはApplication-Specific Integrated Circuitの略である。FPGAはField Programmable Gate Arrayの略である。PGAはProgrammable Gate Arrayの略である。CPLDはComplex Programmable Logic Deviceの略である。デジタル回路は、プログラムおよびデータのうちの少なくとも一方を格納したメモリを備える場合がある。コンピュータは、アナログ回路によって提供される場合がある。コンピュータは、デジタル回路とアナログ回路との組み合わせによって提供される場合がある。
【0138】
(iii)ハードウェアプロセッサは、上記(i)と上記(ii)との組み合わせである場合がある。(i)と(ii)とは、異なるチップの上、または共通のチップの上に配置される。これらの場合、(ii)の部分は、アクセラレータとも呼ばれる。
【0139】
制御装置100と信号源と制御対象物とは、多様な要素を提供する。それらの要素の少なくとも一部は、ブロック、モジュール、またはセクションと呼ぶことができる。さらに、制御システムに含まれる要素は、意図的な場合にのみ、機能的な手段と呼ばれる。
【0140】
この開示に記載の制御装置100およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。代替的に、この開示に記載の制御装置100およびその手法は、1つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。代替的に、この開示に記載の制御装置100およびその手法は、1つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと1つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0141】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0142】
100…制御装置、110…演算部、120…メモリ、130…カウンタ、140…タイマー、200…給電システム、210…バッテリ、211…Nバスバ、212…Pバスバ、221…メインスイッチ、230…プリチャージ回路、231…充電スイッチ、232…制限抵抗、240…電力変換装置、250…モータ、260…電気負荷、270…センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6