(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】車載用電子装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/467 20060101AFI20240116BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240116BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H01L23/46 C
B60R16/02 610C
H05K7/20 H
(21)【出願番号】P 2020118485
(22)【出願日】2020-07-09
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】松岡 侯宏
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106774751(CN,A)
【文献】特開2018-206964(JP,A)
【文献】特開2018-206959(JP,A)
【文献】特開2009-164178(JP,A)
【文献】特開2009-076704(JP,A)
【文献】実開昭62-080395(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0282065(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/467
B60R 16/02
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電子装置(1)であって、
電子部品(8)が実装された回路基板(4)を、筐体(2)内に収容して構成され、
前記筐体の一壁部には、前記電子部品からの放熱を行うための放熱部(10)と、前記放熱部に対して送風を行うための送風部(13)とが設けられ、
前記放熱部は、送風方向に延びる複数本の金属製の放熱フィン(18)を前記一壁部の外面に有しており、
前記筐体の一壁部には、前記放熱部と前記送風部との間に位置して、該一壁部を貫通し前記放熱フィンに向けて送風するための排気穴(21)が設けられ、
前記送風部には、前記筐体の一壁部に吸気穴(17)が形成されていると共に、該一壁部の内面側に、前記吸気穴から外気を吸込み、前記排気穴から吐出させる送風ファン装置(5)が配設されて
おり、
前記送風ファン装置により形成される風は、前記回路基板を通過せずに前記排気穴から吐出される車載用電子装置。
【請求項2】
前記筐体は、全体が金属製とされ、前記放熱フィンが一体に設けられている請求項1記載の車載用電子装置。
【請求項3】
前記排気穴は、前記筐体の一壁部のうち前記放熱部と前記送風部との間において内側に窪んだ位置に前記放熱フィン側を向いて開口し、
前記筐体の一壁部の外面には、前記排気穴から前記放熱フィンに向けて傾斜状に延びる排気用ガイド面(22)が設けられている
請求項1又は2記載の車載用電子装置。
【請求項4】
前記排気用ガイド面の基端部は、前記回路基板の近傍に位置しており、それらの間の隙間を塞ぐ閉塞部材が設けられている
請求項3記載の車載用電子装置。
【請求項5】
前記筐体の送風部には、前記送風ファン装置の羽根車(14)を回転自在に支持する軸受部(16)が一体に設けられている
請求項1から4のいずれか一項に記載の車載用電子装置。
【請求項6】
前記筐体の一壁部には、前記排気穴及び吸気穴の少なくとも一部が、前記放熱部と前記軸受部との間に位置して設けられている
請求項5記載の車載用電子装置。
【請求項7】
前記筐体の送風部には、前記送風ファン装置の羽根車を囲むように、スクロールケーシング(15)が一体に設けられている
請求項1から6のいずれか一項に記載の車載用電子装置。
【請求項8】
前記回路基板は、前記筐体に設けられた取付部(11)に直接的に取付けられている
請求項1から7のいずれか一項に記載の車載用電子装置。
【請求項9】
前記筐体の放熱部は、前記電子部品の直上に隙間をもって配置され、その隙間に放熱ゲル(9)が配置されている
請求項1から8のいずれか一項に記載の車載用電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載される車載用電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両には、例えばマルチメディアユニットやカーナビシステム等の制御装置として、ECU(Electronic Control Unit)と称される各種の電子装置が搭載される。この種の電子装置は、筐体内に、CPU等の発熱性の電子部品を実装した回路基板を収容して構成される。このとき、電子部品の冷却のために、筐体の左右の側壁部に吸気口及び排気口を夫々設けると共に、筐体内に、電子部品の熱を放熱するためのフィンを有するヒートシンク、筐体内に冷却風を流すための冷却ファン等を設けて構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような車載用の電子装置にあっては、例えばオペレーティングシステムが毎年のように更新され、機能が拡張されていくことに伴い、ハードウエアの機能もアップデートが必要となる。ただし、電子装置のハードウエアそのものを交換することは、コスト面も含めて困難性が大きい事情があり、簡易的な手法で、ハードウエアの機能の向上を図ることが望まれる。そこで、本出願人においては、ハードウエアブースターと称される、例えばスティック型のような薄型で小型の電子装置を、後付けで付加することにより、ハードウエアの高性能化を実現することを試みている。
【0005】
この場合、後付けの電子装置にあっては、後付けであるため、限られたスペースでも搭載できるように、十分な小型化、薄型化が求められる。これと共に、CPU等の高性能化に伴い発熱量も増え、特に車載用といった過酷な環境で使用されるものでは、それに耐え得るように、電子部品に対するより効果的な冷却構造が求められる。しかしながら、上記特許文献1に示されたものでは、ヒートシンクが筐体内部に配置されているため、冷却効率が悪く、また、送風羽根及びモータをケーシングに組付けてユニット化された軸流型のファン装置が採用されており、全体の小型化が難しい構成となっていた。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、筐体内部の電子部品に対する高い冷却性能を確保しながらも、十分な小型化を実現することができる車載用電子装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の車載用電子装置(1)は、車両に搭載されるものであって、電子部品(8)が実装された回路基板(4)を、筐体(2)内に収容して構成されるものにおいて、前記筐体の一壁部には、前記電子部品からの放熱を行うための放熱部(10)と、前記放熱部に対して送風を行うための送風部(13)とが設けられ、前記放熱部は、送風方向に延びる複数本の金属製の放熱フィン(18)を前記一壁部の外面に有しており、前記筐体の一壁部には、前記放熱部と前記送風部との間に位置して、該一壁部を貫通し前記放熱フィンに向けて送風するための排気穴(21)が設けられ、前記送風部には、前記筐体の一壁部に吸気穴(17)が形成されていると共に、該一壁部の内面側に、前記吸気穴から外気を吸込み、前記排気穴から吐出させる送風ファン装置(5)が配設されている。
【0008】
これによれば、筐体の一壁部に部分的に放熱部が設けられ、電子部品の熱は、該一壁部の外面に設けられた金属製の放熱フィンに伝達され、放熱が行われる。この場合、送風ファン装置が駆動されることにより、筐体の一壁部に設けられた吸気穴から外気が吸込まれ、筐体の一壁部のうち放熱部と送風部との間に位置する排気穴から冷却風として吐出される。吐出された冷却風を、筐体の外面に露出した放熱フィンに直接的に当てることができ、更に冷却風が放熱フィン部分を通過することによって外部への放熱、すなわち電子部品の冷却が図られる。これにより、放熱部の放熱フィンからの放熱及び送風ファン装置による送風によって、高い冷却効果を得ることができる。
【0009】
このとき、筐体の一壁部そのものが放熱フィンを有した放熱部つまりヒートシンクとして機能することになり、筐体とヒートシンクとを別体に設ける場合に比べて、部品数の削減や省スペース化を図ることができる。また、筐体の一壁部に設けられた送風部には、吸気穴が形成され、その内側に送風ファン装置が設けられることにより、筐体の一壁部がファンケーシングの少なくとも一部を構成する形態となる。従って、ファンケーシングを別体に有するファン装置に比べて、小型化、薄型化を図ることができる。この結果、筐体内部の電子部品に対する高い冷却性能を確保しながらも、十分な小型化を実現することができるという効果を奏する。また送風ファン装置により形成される風は、回路基板を通過せずに排気穴から吐出される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態を示すもので、車載用電子装置の外観を示す斜視図
【
図4】車載用電子装置を
図1のI-I線で破断した半部の様子を示す斜視図
【
図5】半部の様子を
図4とは異なる方向から示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、車載用電子装置として、例えば自動車用のECU(Electronic Control Unit)に対し、後付けでアップデートを実現するための、ハードウエアブースターと称される小型の電子装置に適用した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る車載用電子装置1(以下、単に「電子装置1」という)は、例えば自動車のインストルメントパネル部分に搭載される。尚、実際の車載時には筐体の吸気穴のある面を下向きにする場合もあるが、図面及び以下の説明では、便宜上、吸気穴を筐体の上面側に有し、且つ、長手方向を左右方向とした状態、つまり
図3を縦断正面図として説明する。
【0012】
図1、
図2は、本実施形態に係る電子装置1の全体の外観構成を概略的に示している。この電子装置1は、筐体2及びカバー3から構成されるケース内に、回路基板4及び送風ファン装置5等を組込んで構成される。前記筐体2は、図で下面が開放し、図で上下方向に薄型で左右方向やや長い薄形矩形箱状をなしている。本実施形態では、筐体2は、全体が金属製とされ、例えばアルミダイカストにより製作される。この筐体2の詳細な構成については後述する。
【0013】
前記カバー3は、例えばプラスチックから、前記筐体2の下面開口部を塞ぐような矩形板状に構成されている。このカバー3の四辺部の各中央部には、図で上面側に立ち上がるように、係合片部6が一体に設けられている。この係合片部6には、矩形状の係合穴6aが形成され、前記筐体2の側面に形成された係合爪7が、係合穴6aに弾性的に係合するようになっている。これにより、筐体2とカバー3とが着脱可能に結合される。ちなみに本実施形態では、
図1に示すように、ケース全体の外形の幅寸法Wは例えば80mm、奥行き寸法Dは例えば45mm、高さ寸法Hは例えば15mm程度とされている。
【0014】
前記回路基板4は、
図3等にも示すように、横長な形状をなし、筐体2内に水平つまりカバー3と平行に配置される。この回路基板4の上面には、CPU8を含む複数個の電子部品が実装され、電気回路が構成されている。前記CPU8は、回路基板4のうち図で右端部寄りに位置して実装されている。CPU8は、発熱量の大きいものとされており、後述する冷却構造による効果的な冷却が求められる部品となっている。このCPU8は、その上面が放熱面とされ、例えばシリコン製の放熱ゲル9を介して、後述する筐体2の放熱部としてのヒートシンク10に熱的に接続される。
【0015】
このとき、
図2、
図3に一部示すように、前記回路基板4は、前記筐体2に設けられた取付部に直接的に取付けられる。即ち、回路基板4の4つのコーナー部には、ねじ挿通穴4aが形成されている。これに対し、
図6にも一部示すように、前記筐体2の上壁部の下面側には、それらねじ挿通穴4aに対応して、取付部としての4個のねじボス部11が下方に延びるようにして一体的に設けられている。これにて、回路基板4は、4個のねじ12が、下面側から各ねじ挿通穴4aに通されて各ねじボス部11に締付けられることにより、筐体2に取付けられる。尚、図示はしないが、回路基板4には、筐体2の例えば左側壁部に設けられた開口部に臨むようにして、外部接続用の例えばUSB規格のコネクタが設けられ、このコネクタを介して外部即ち車両内の既存のECUとの接続がなされる。
【0016】
前記送風ファン装置5は、前記CPU8等を冷却するためのもので、本実施形態では遠心ファンが採用されている。この送風ファン装置5は、筐体2の図で左側部の、回路基板4の上方に設けられる送風部13に位置して組み込まれる。この送風ファン装置5は、遠心型の羽根車14、その羽根車14を回転駆動するための例えばDCブラシレスモータからなる図示しないファンモータ、前記羽根車14を囲むスクロールケーシング15(
図6参照)等から構成される。このとき、後述するように、前記羽根車14は、軸方向を上下方向として、筐体2にスクロールケーシング15と共に一体に設けられた軸受部16に回転自在に支持される。
【0017】
これにて、送風ファン装置5は、
図3、
図5に示すように、ファンモータの駆動により羽根車14が回転することにより、軸方向即ち筐体2の上面側から矢印A方向に空気を吸い込み、冷却風を生成して半径方向この場合図で右方に吐出するように構成されている。この場合、図で左から右に向けて矢印B方向に送風がなされ、その方向が送風方向とされる。従って、送風部13は、前記ヒートシンク10よりも送風方向上流側に位置して設けられている。
【0018】
さて、前記筐体2の構成について、
図3から
図7も参照して説明する。
図6は、筐体2に羽根車14を取付けた状態で、上下反転させた状態で示しており、また、
図7は、筐体2を
図1、
図2とは異なる方向から示している。上記したように、筐体2は、例えばアルミダイカストにより、下面が開口した薄型矩形箱状に一体成形されており、図で右側に放熱部としてのヒートシンク10が一体的に設けられていると共に、図で左側に位置して、送風部13が設けられている。
【0019】
そのうち前記送風部13においては、まず筐体2の一壁部である上壁部に、前記送風ファン装置5により外気を吸込むための吸気穴17が上下に貫通して形成されている。この吸気穴17は、前記羽根車14に対応して、4本の細幅な円弧状の穴が、間隔をおいて円形状をなすように並ぶ形態で、内外に二重となるように形成されている。また、
図6等に示すように、筐体2の上壁部の下部には、前記スクロールケーシング15が一体に設けられている。このスクロールケーシング15は、羽根車14の前後及び左側を僅かな隙間をもって曲線状に囲み、図で右側に開口するような薄い壁を設けることにより構成されている。
【0020】
そして、
図4等に示すように、筐体2の上壁部の下面側には、前記吸気穴17の内周側に対応位置して、羽根車14を支持する軸受部16が一体に設けられている。詳しく図示はしないが、この軸受部16は、円筒状に設けられ、その中心穴内に羽根車14の軸部が差し込まれて回転可能に支持するようになっている。尚、前記吸気穴17は、軸受部16の外周側を囲むように位置しているので、放熱部としてのヒートシンク10と軸受部16との間に位置している。
【0021】
一方、
図3等に示すように、筐体2のうち右側に位置して設けられるヒートシンク10は、筐体2の上壁部のうち送風部13を構成する部分よりも、一段下がった位置に水平に設けられる上壁部の上面に、左右方向即ち送風方向に延びる複数本の放熱フィン18を一体に有している。放熱フィン18の上端の位置と、送風部13の上面とがほぼ同じ高さとされている。
図6にも示すように、ヒートシンク10を構成する上壁部の下面には、前記CPU8の真上に位置して下方にやや凸となる凸部19が設けられており、この凸部19と前記CPU8の上面との間に前記放熱ゲル9が設けられている。
【0022】
そして、筐体2の上壁部には、
図3、
図4等に示すように、前記送風部14とヒートシンク10との間の部分に位置して内側即ち下方に窪むようにやや傾斜して降下する立ち下がり壁20が一体に設けられている。この立ち下がり壁20は、前記スクロールケーシング15の右側の開口部に臨んでおり、この立ち下がり壁20に、前記送風部13からの冷却風を前記放熱フィン18部分に向けて送風するための排気穴21が、貫通して設けられている。この排気穴21は、
図7にも示すように、放熱フィン18同士間に位置して開口している。また、この排気穴21も、前記ヒートシンク10と軸受部16との間に位置して設けられている。
【0023】
更に、
図3、
図5等に示すように、筐体2の上壁部には、前記排気用ガイド面22の下端辺部から、右方に向けて緩やかに上昇するように傾斜状に延びてヒートシンク10の上壁部に連なる排気用ガイド面22が設けられている。前記放熱フィン18は、排気用ガイド面22の上面にまで延びて設けられている。また、排気用ガイド面22の基端即ち下端の辺部は、前記回路基板4の上面近傍に位置されている。このとき、図示はしないが、排気用ガイド面22の下端部に、回路基板4の上面に接するように、スポンジやゴム等の弾性材料からなる閉塞部材を設けることも可能である。
【0024】
これにて、送風ファン装置5の駆動により、送風部13からの冷却風が、矢印Bで示すように、回路基板4の上面をほとんど通過せずに、排気穴21から右方に吐出され、排気用ガイド面22の上面を流れながらヒートシンク10の上面の放熱フィン18間に送風される。尚、上記したように、筐体2には、更に上壁部の下面側に位置して、ねじボス部11が一体に設けられ、側壁部に位置して、前記係合爪7やコネクタ用の開口部も設けられている。
【0025】
次に、上記のように構成された電子装置1の作用・効果について述べる。上記構成の電子装置1は、例えば、自動車用のECUに対し、後付けでハードウエア資源のアップデートを実現するために、インストルメントパネル部分に搭載される。この種の電子装置1にあっては、狭い部分でも搭載可能とするために、十分な小型化が求められると共に、CPU8の高性能化に伴う発熱量の増大に対処するため、回路基板4上に実装された発熱部品であるCPU8についてのより高い冷却効果が求められる。
【0026】
上記構成においては、回路基板4上のCPU8により発生する熱は、放熱ゲル9を介して、筐体2の上壁部において、凸部19からヒートシンク10に伝達され、放熱フィン18から放熱が行われる。このとき、送風ファン装置5が駆動されることにより、
図3等に矢印Aで示すように、筐体2の上壁部に設けられた吸気穴17から外気が吸込まれ、矢印Bで示すように、ヒートシンク10と送付部13との間に位置する排気穴21から冷却風として吐出される。排気穴21から吐出された冷却風は、排気用ガイド面22を通って放熱フィン18に直接的に当たるようになり、冷却風が放熱フィン18部分を通過することによって外部への放熱が図られる。これにより、ヒートシンク10の放熱フィン18からの放熱及び送風ファン装置5による送風によって、CPU8の高い冷却効果を得ることができる。
【0027】
このとき、筐体2の上壁部そのものが放熱フィン18を有したヒートシンク10として機能することになり、筐体2とヒートシンクとを別体に設ける場合に比べて、部品数の削減や省スペース化を図ることができる。また、筐体2の上壁部に設けられた送風部13には、吸気穴17が形成され、その内側に送風ファン装置5が設けられることにより、筐体2の一部がファンケーシングの少なくとも一部を構成する形態となる。従って、ファンケーシングを別体に有する場合に比べて、小型化、薄型化を図ることができる。この結果、本実施形態によれば、筐体2内部のCPU8に対する高い冷却性能を確保しながらも、十分な小型化を実現することができるという優れた効果を得ることができる。
【0028】
特に本実施形態では、筐体2全体を金属製この場合アルミ製とすることによって、放熱フィン18を筐体2に一体に設ける構成とした。これにより、放熱フィン18を一体的に設けることが容易となり、またヒートシンク10における熱伝導性をより高いものとして放熱効果を向上させることができる。また本実施形態では、送風ファン装置5により形成される冷却風が、回路基板4をほとんど通過せずに排気穴21から吐出される構成とした。これにより、吸い込んだ外気が高湿度の場合において、比較的低温の回路基板4にその外気を当てることに伴う結露の発生を、未然に防止することができる。
【0029】
本実施形態では、排気穴21を、放熱フィン18側を向いて開口するように設けると共に、筐体2の上壁部の外面に、排気穴21から放熱フィン18に向けて傾斜状に延びる排気用ガイド面22を設ける構成とした。これにより、排気穴21から吐出された冷却風が、傾斜状に延びる排気用ガイド面22に沿って流れることにより、風速を保ってスムーズに流れて放熱フィン部分18部分に供給される。従って、冷却風による放熱をより効率的に行うことが可能となる。
【0030】
また本実施形態では、筐体2の送風部13に、送風ファン装置5の羽根車14を回転自在に支持する軸受部16を一体に設けるように構成した。これにより、軸受部を別体に設ける場合に比べて、部品数の減少、送風ファン装置5部分の構成の簡単化、ひいては全体の小型化を図ることができる。しかも、筐体2の送風部13には、羽根車14を囲むスクロールケーシング15が一体に設けられている。これにより、通常は別体に設けられるスクロールケーシングを、筐体2に一体に設けることによって、より一層の部品数の減少、送風ファン装置5部分の構成の簡単化、ひいては全体の小型化を図ることができる。
【0031】
このとき、上記のように、筐体2に軸受部16を一体に設けた場合には、ヒートシンク10部分の熱が、送風部13ひいては軸受部16に伝達されて.軸受部16の変形ひいては羽根車14の支持精度の悪化などの悪影響を及ぼす虞が考えられる。ところが本実施形態では、筐体2の上壁部には、排気穴21及び吸気穴17の一部が、ヒートシンク10と軸受部16との間に位置して設けられている。これにより、排気穴21及び吸気穴17が、ヒートシンク10から軸受部16への熱伝達の抵抗となるので、ヒートシンク10の熱が、軸受部16に対して悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0032】
更に本実施形態では、回路基板4を、筐体2に設けられた取付部としてのねじボス部11に直接的に取付ける構成とした。これにより、回路基板4上のCPU8の放熱面と、筐体2のヒートシンク10この場合凸部19の下面との間の寸法管理が容易となり、熱伝達の効果を高めるに有効となる。このとき、ヒートシンク10の下面の凸部19は、CPU8の直上に隙間をもって配置され、その隙間に放熱ゲル9が配置されているので、隙間を小さくすることが容易で、CPU8からヒートシンク10への放熱ゲル9を介した熱伝達効果、ひいてはCPU8の冷却効果を高いものとすることができる。
【0033】
尚、上記実施形態では詳しく説明しなかったが、排気用ガイド面22の基端即ち下端の辺部が、回路基板4の上面近傍に配置されているが、それらの間の隙間を塞ぐ閉塞部材を設けるようにすることができる。これによれば、送風ファン装置5により生じた冷却風を、回路基板4に沿って流すことなく、排気穴21から排気用ガイド面22に効率良く流すことができる。これと共に、回路基板4表面を冷却風が流れることに伴う結露を防止する効果をより高めることができる。前記閉塞部材には、スポンジやゴムなどのクッション材を採用することにより、寸法誤差の吸収を行うことができ、より効果的となる。
【0034】
また、上記実施形態では、回路基板4を筐体2に取付けるにあたって、ねじボス部11にねじ止めする構成を採用したが、係合など様々な構成を採用することができる。上記実施形態では、筐体2全体をアルミダイカスト製としたが、放熱部部分のみを金属製とし、残りの部分を合成樹脂製とする等の変更も可能である。上記実施形態では、カバー3を合成樹脂製としたが、板金やダイカストなど金属製としても良い。上記実施形態では、送風ファン装置5として、遠心ファンを採用したが、他のファン装置例えば軸流ファンを採用することもできる。この場合、軸流ファンの吐出側に空気を放熱部方向に誘導する誘導壁を設ける構成とすることができる。軸受部やスクロールケーシング部分を、筐体2とは別体に設けるように構成しても良い。
【0035】
その他、上記実施形態では、ハードウエアの高性能化のためのハードウエアブースターと称される後付け用の電子装置に本発明を適用するようにしたが、様々な用途、種類の車両用電子装置全般に適用することが可能である。筐体の全体の形状や、コネクタの配置などについても様々な変更が可能であることは勿論である。本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0036】
図面中、1は車載用電子装置、2は筐体、3はカバー、4は回路基板、5は送風ファン装置、8はCPU(電子部品)、9は放熱ゲル、10はヒートシンク(放熱部)、11はねじボス部(取付部)、13は送風部、14は羽根車、15はスクロールケーシング、16は軸受部、17は吸気穴、18は放熱フィン、21は排気穴、22は排気用ガイド面を示す。