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特許7420005冷却制御装置、冷却システム、プログラム及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】冷却制御装置、冷却システム、プログラム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   F01P 7/16 20060101AFI20240116BHJP
   F01P 3/18 20060101ALI20240116BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20240116BHJP
   B60K 11/02 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
F01P7/16 501
F01P7/16 504Z
F01P3/18 Q
F01P3/20 B
B60K11/02
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020130846
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2021110330
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2020000455
(32)【優先日】2020-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 寿英
【審査官】藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-023059(JP,A)
【文献】特開2004-076603(JP,A)
【文献】特開2016-030923(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0039434(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 1/00 - 11/20
B60K 11/02 - 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象(11)を冷却する第1冷却回路(20)及び電駆動ユニット(12,13)を冷却する第2冷却回路(30)を有する冷却システム(10)を制御する冷却制御装置(50)において、
前記第1冷却回路には、前記冷却対象を冷却する第1冷却部(22)と第1熱交換器(23)との間で冷媒を循環させる第1冷媒通路(21)が設けられ、
前記第2冷却回路には、前記電駆動ユニットを冷却する電駆動ユニット冷却部(32,33)と第2熱交換器(34)との間で冷媒を循環させる第2冷媒通路(31)が設けられ、
前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器は、それぞれ前記冷媒を放熱する装置であり、前記第1熱交換器は、前記第2熱交換器よりも放熱後の前記冷媒の温度を低くするように構成されており、
前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路との間には、前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路を接続する接続経路(41,42)が設けられ、
前記接続経路における冷媒の流れを制御する経路制御装置(24,43)が設けられており、
前記電駆動ユニットの要求電流量を算出する電流量算出部(51)と、
前記電流量算出部により算出された前記要求電流量に応じて前記第2冷媒通路に流すべき冷媒の温度である必要冷媒温度を決定する冷媒温度決定部(52)と、
前記第2冷媒通路において、前記第2熱交換器から供給された後であって、前記電駆動ユニット冷却部に供給される前の冷媒の温度を第2冷媒温度として取得し、前記第2冷媒温度が、決定された必要冷媒温度よりも高い場合、前記第1冷媒通路から前記接続経路を介して前記第2冷媒通路に冷媒が流れるように前記経路制御装置を制御するシステム制御部(53)と、を備える冷却制御装置。
【請求項2】
前記システム制御部は、前記必要冷媒温度と前記第2冷媒温度との比較に基づいて、前記第1冷媒通路から前記第2冷媒通路への第1冷媒流量を調整する請求項1に記載の冷却制御装置。
【請求項3】
前記第2冷媒通路には、前記電駆動ユニット冷却部から前記第2熱交換器への冷媒の流れを制御する第2冷媒制御装置(35,36)が設けられ、
前記システム制御部は、前記必要冷媒温度と前記第2冷媒温度との温度差が閾値以上である場合には、前記電駆動ユニット冷却部から前記第2熱交換器への冷媒の流れを停止させ、前記第1冷媒通路から前記接続経路を介して前記第2冷媒通路に供給された冷媒が全て前記電駆動ユニット冷却部に流入するように第2冷媒制御装置を制御する請求項1又は2に記載の冷却制御装置。
【請求項4】
前記第2冷媒通路には、前記電駆動ユニット冷却部から前記第2熱交換器への冷媒の流れを制御する第2冷媒制御装置(35,36)が設けられ、
前記第2熱交換器は、冷媒と外気との間で熱交換を行うラジエータであり、
前記システム制御部は、前記第2熱交換器に流入する冷媒の温度が外気温よりも低い場合には、前記電駆動ユニット冷却部から前記第2熱交換器への冷媒の流れを停止させるように第2冷媒制御装置を制御する請求項1~3のうちいずれか1項に記載の冷却制御装置。
【請求項5】
前記電流量算出部は、車両の状況に基づいて、前記電駆動ユニットの要求電流量を予測して、算出する請求項1~4のうちいずれか1項に記載の冷却制御装置。
【請求項6】
前記第2冷媒通路には、前記電駆動ユニット冷却部から前記第2熱交換器への冷媒の流れを制御する第2冷媒制御装置(35,36)が設けられ、
前記システム制御部は、
前記第1冷媒通路に流れる冷媒の温度を第1冷媒温度として取得し、
前記必要冷媒温度、前記第1冷媒温度及び前記第2冷媒温度に基づいて、前記第1冷媒通路から前記第2冷媒通路への第1冷媒流量を調整するとともに、前記電駆動ユニット冷却部から前記第2熱交換器への第2冷媒流量を調整し、
前記第1冷媒流量に基づいて、前記経路制御装置を制御し、前記第2冷媒流量に基づいて前記第2冷媒制御装置を制御する請求項1~5のうちいずれか1項に記載の冷却制御装置。
【請求項7】
前記システム制御部は、前記第1冷媒通路に流れる冷媒の温度を第1冷媒温度として取得するように構成されており、当該第1冷媒温度が前記冷却対象の冷却用冷媒としての冷媒許容温度よりも高い場合には、前記第2冷媒通路から前記第1冷媒通路に冷媒が流れないように前記経路制御装置を制御する請求項1~6のうちいずれか1項に記載の冷却制御装置。
【請求項8】
前記第2冷媒温度が必要冷媒温度に達したときに前記第1冷媒通路に流れる冷媒の温度である第1冷媒温度を予測する温度予測部(54)を備え、
前記システム制御部は、前記温度予測部により予測された前記第1冷媒温度の予測温度が前記冷却対象の冷却用冷媒としての冷媒許容温度よりも高い場合には、前記第2冷媒通路から前記第1冷媒通路に冷媒が流れないように前記経路制御装置を制御する請求項1~7のうちいずれか1項に記載の冷却制御装置。
【請求項9】
前記第1冷媒温度の予測温度が前記冷却対象の冷却用冷媒としての冷媒許容温度よりも高い場合、前記第1熱交換器又は前記第2熱交換器の冷却能力を向上させるように前記第1熱交換器又は前記第2熱交換器を制御する熱交換器制御部(56)を備える請求項8に記載の冷却制御装置。
【請求項10】
前記冷却対象の温度が温度許容値に達するまでの上昇時間を予測する上昇時間予測部(55)を備え、
前記電流量算出部は、車両の状況に基づいて、前記電駆動ユニットの要求電流量を予測して、要求電流量が予め決められた閾値よりも高くなると予測される予測期間を特定し、
前記システム制御部は、前記上昇時間予測部により予測された上昇時間が、前記予測期間が終了するまでの時間よりも短いと判定した場合、前記第1冷媒通路から前記第2冷媒通路に冷媒が流れないように前記経路制御装置を制御する請求項1~9のうちいずれか1項に記載の冷却制御装置。
【請求項11】
前記上昇時間予測部により予測された上昇時間が、前記予測期間が終了するまでの時間よりも短いと判定された場合、前記第1熱交換器又は前記第2熱交換器の冷却能力を向上させるように前記第1熱交換器又は前記第2熱交換器を制御する熱交換器制御部(56)を備える請求項10に記載の冷却制御装置。
【請求項12】
前記第1冷却回路には、前記冷媒を貯蔵する冷媒貯蔵部(100)が設けられている請求項1~9のうちいずれか1項に記載の冷却制御装置。
【請求項13】
前記冷媒貯蔵部は、前記第1冷媒通路において、前記第1冷却部の前であって、前記第1熱交換器の後に配置されており、前記第1熱交換器により放熱された冷媒の少なくとも一部が一旦貯蔵されている請求項12に記載の冷却制御装置。
【請求項14】
前記冷媒貯蔵部への冷媒の流入量及び流出量を調整する調整部(101)を制御する貯蔵制御部(50)を備え、
前記貯蔵制御部は、前記第2冷媒温度が、決定された必要冷媒温度よりも高い場合、前記冷媒貯蔵部から貯蔵された冷媒を前記第1冷媒通路又は前記第2冷媒通路に供給するように前記調整部を制御する請求項12又は13に記載の冷却制御装置。
【請求項15】
前記第1冷却回路において、前記第1冷却部の前であって、前記第1熱交換器の後における第1冷媒通路の直径は、他の箇所における第1冷媒通路の直径に比較して大きく形成されている請求項1~14のうちいずれか1項に記載の冷却制御装置。
【請求項16】
冷却対象(11)を冷却する第1冷却回路(20)及び電駆動ユニット(12,13)を冷却する第2冷却回路(30)を有する冷却システム(10)を制御する冷却制御装置(50)において、
前記第1冷却回路には、前記冷却対象を冷却する第1冷却部(22)と第1熱交換器(23)との間で冷媒を循環させる第1冷媒通路(21)が設けられ、
前記第2冷却回路には、前記電駆動ユニットを冷却する電駆動ユニット冷却部(32,33)と第2熱交換器(34)との間で冷媒を循環させる第2冷媒通路(31)が設けられ、
前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器は、それぞれ前記冷媒を放熱する装置であり、前記第1熱交換器は、前記第2熱交換器よりも放熱後の前記冷媒の温度を低くするように構成されており、
前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路との間に、前記第1冷媒通路の冷媒の温度を、前記第2冷媒通路の冷媒の温度に伝達する伝熱装置(80)が設けられ、
前記電駆動ユニットの要求電流量を算出する電流量算出部(51)と、
前記電流量算出部により算出された前記要求電流量に応じて前記第2冷媒通路に流すべき冷媒の温度である必要冷媒温度を決定する冷媒温度決定部(52)と、
前記第2冷媒通路において、前記第2熱交換器から供給された後であって、前記電駆動ユニット冷却部に供給される前の冷媒の温度を第2冷媒温度として取得し、前記第2冷媒温度が、決定された必要冷媒温度よりも高い場合、前記第1冷媒通路の冷媒の温度を、前記第2冷媒通路の冷媒の温度に伝達させるように前記伝熱装置を制御するシステム制御部(53)と、を備える冷却制御装置。
【請求項17】
冷却対象(11)を冷却する第1冷却部(22)と、第1熱交換器(23)と、前記第1冷却部と前記第1熱交換器との間で冷媒を循環させる第1冷媒通路(21)と、を有する第1冷却回路(20)と、
電駆動ユニット(12,13)を冷却する電駆動ユニット冷却部(32,33)と、第2熱交換器(34)と、前記電駆動ユニット冷却部と前記第2熱交換器との間で冷媒を循環させる第2冷媒通路(31)と、を有する第2冷却回路(30)と、
前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路を接続する接続経路(41,42)と、
前記接続経路における冷媒の流れを制御する経路制御装置(24,43)と、
前記経路制御装置を制御する冷却制御装置(50)と、を備え、
前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器は、それぞれ前記冷媒を放熱する装置であり、前記第1熱交換器は、前記第2熱交換器よりも放熱後の前記冷媒の温度を低くするように構成されており、
前記冷却制御装置は、
前記電駆動ユニットの要求電流量を算出する電流量算出部(51)と、
前記電流量算出部により算出された前記要求電流量に応じて前記第2冷媒通路に流すべき冷媒の温度である必要冷媒温度を決定する冷媒温度決定部(52)と、
前記第2冷媒通路において、前記第2熱交換器から供給された後、前記電駆動ユニット冷却部に供給される前の冷媒の温度を第2冷媒温度として取得し、前記第2冷媒温度が、決定された必要冷媒温度よりも高い場合、前記第1冷媒通路から前記第2冷媒通路に冷媒が流れるように前記経路制御装置を制御するシステム制御部(53)と、を備える冷却システム(10)。
【請求項18】
冷却対象(11)を冷却する第1冷却回路(20)及び電駆動ユニット(12,13)を冷却する第2冷却回路(30)を有する冷却システム(10)を制御する冷却制御装置(50)に実行させるプログラムにおいて、
前記第1冷却回路には、前記冷却対象を冷却する第1冷却部(22)と第1熱交換器(23)との間で冷媒を循環させる第1冷媒通路(21)が設けられ、
前記第2冷却回路には、前記電駆動ユニットを冷却する電駆動ユニット冷却部(32,33)と第2熱交換器(34)との間で冷媒を循環させる第2冷媒通路(31)が設けられ、
前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器は、それぞれ前記冷媒を放熱する装置であり、前記第1熱交換器は、前記第2熱交換器よりも放熱後の前記冷媒の温度を低くするように構成されており、
前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路との間には、前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路を接続する接続経路(41,42)が設けられ、
前記接続経路における冷媒の流れを制御する経路制御装置(50)が設けられており、
前記電駆動ユニットの要求電流量を算出する電流量算出ステップ(S101)と、
前記電流量算出ステップにより算出された前記要求電流量に応じて前記第2冷媒通路に流すべき冷媒の温度である必要冷媒温度を決定する冷媒温度決定ステップ(S101)と、
前記第2冷媒通路において、前記第2熱交換器から供給された後であって、前記電駆動ユニット冷却部に供給される前の冷媒の温度を第2冷媒温度として取得し、前記第2冷媒温度が、決定された必要冷媒温度よりも高い場合、前記第1冷媒通路から前記第2冷媒通路に冷媒が流れるように前記経路制御装置を制御するシステム制御ステップ(S108)と、を備えるプログラム。
【請求項19】
冷却対象(11)を冷却する第1冷却回路(20)及び電駆動ユニット(12,13)を冷却する第2冷却回路(30)を有する冷却システム(10)を制御する冷却制御装置(50)が実行する制御方法において、
前記第1冷却回路には、前記冷却対象を冷却する第1冷却部(22)と第1熱交換器(23)との間で冷媒を循環させる第1冷媒通路(21)が設けられ、
前記第2冷却回路には、前記電駆動ユニットを冷却する電駆動ユニット冷却部(32,33)と第2熱交換器(34)との間で冷媒を循環させる第2冷媒通路(31)が設けられ、
前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器は、それぞれ前記冷媒を放熱する装置であり、前記第1熱交換器は、前記第2熱交換器よりも放熱後の前記冷媒の温度を低くするように構成されており、
前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路との間には、前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路を接続する接続経路(41,42)が設けられ、
前記接続経路における冷媒の流れを制御する経路制御装置(24,43)が設けられており、
前記電駆動ユニットの要求電流量を算出する電流量算出ステップ(S101)と、
前記電流量算出ステップにより算出された前記要求電流量に応じて前記第2冷媒通路に流すべき冷媒の温度である必要冷媒温度を決定する冷媒温度決定ステップ(S101)と、
前記第2冷媒通路において、前記第2熱交換器から供給された後であって、前記電駆動ユニット冷却部に供給される前の冷媒の温度を第2冷媒温度として取得し、前記第2冷媒温度が、決定された必要冷媒温度よりも高い場合、前記第1冷媒通路から前記第2冷媒通路に冷媒が流れるように前記経路制御装置を制御するシステム制御ステップ(S108)と、を含む制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却制御装置、冷却システム、プログラム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電池を搭載し、モータを動力源とする電気自動車やハイブリッド車が知られている。これらの車両では、特許文献1に示すように、モータやインバータなどの電駆動ユニットを冷却する冷却回路と、蓄電池を冷却する冷却回路とが設けられている。一般的に、電駆動ユニットを冷却する冷却回路と、蓄電池を冷却する冷却回路とでは、求められる冷媒温度が異なるため、独立して冷媒が循環するように設けられている。
【0003】
しかしながら、状況によっては、双方の冷却回路に対して冷媒を循環させることが好ましい場合ある。例えば、特許文献1の冷却回路では、冬季において電駆動ユニットの放熱により加熱された冷媒を蓄電池の加温に用いて排熱を回収し、エネルギー効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-23059号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電駆動ユニットに含まれるインバータなどにおいては、その出力電流の最大値は、その冷却回路の能力、すなわち、冷媒温度に依存する。このため、出力電流の最大値を向上させるためには、冷却能力を大きくすべく、電駆動ユニットの冷却回路が大型化するという問題があった。
【0006】
しかしながら、出力電流の最大値を向上させたい期間は、一時的なものである。したがって、そのような一時的に必要とされる冷却能力を獲得するために、冷却回路を大型化することは、コスト面や収容スペースなどの観点から見れば、釣り合わず、問題であった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、冷却システムを小型化することが可能な冷却制御装置、冷却システム、プログラム及び制御方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、冷却対象を冷却する第1冷却回路及び電駆動ユニットを冷却する第2冷却回路を有する冷却システムを制御する冷却制御装置において、前記第1冷却回路には、前記冷却対象を冷却する第1冷却部と第1熱交換器との間で冷媒を循環させる第1冷媒通路が設けられ、前記第2冷却回路には、前記電駆動ユニットを冷却する電駆動ユニット冷却部と第2熱交換器との間で冷媒を循環させる第2冷媒通路が設けられ、前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器は、それぞれ前記冷媒を放熱する装置であり、前記第1熱交換器は、前記第2熱交換器よりも放熱後の前記冷媒の温度を低くするように構成されており、前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路との間には、前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路を接続する接続経路が設けられ、前記接続経路における冷媒の流れを制御する経路制御装置が設けられており、前記電駆動ユニットの要求電流量を算出する電流量算出部と、前記電流量算出部により算出された前記要求電流量に応じて前記第2冷媒通路に流すべき冷媒の温度である必要冷媒温度を決定する冷媒温度決定部と、前記第2冷媒通路において、前記第2熱交換器から供給された後であって、前記電駆動ユニット冷却部に供給される前の冷媒の温度を第2冷媒温度として取得し、前記第2冷媒温度が、決定された必要冷媒温度よりも高い場合、前記第1冷媒通路から前記接続経路を介して前記第2冷媒通路に冷媒が流れるように前記経路制御装置を制御するシステム制御部と、を備える。
【0009】
冷却対象の冷却で使用される冷媒の温度は、電駆動ユニットの冷却で使用される冷媒の温度に比較して、温度が低い。また、電駆動ユニットの電流量の最大値を増加させたい期間は、例えば、車両の走行開始時や坂道発進時など一時的なものであることが多い。
【0010】
そこで、第2冷媒温度が必要冷媒温度よりも高い場合、第1冷媒通路から接続経路を介して第2冷媒通路に冷媒が流れるように経路制御装置を制御することとした。これにより、第2熱交換器を大型化しなくても、第1冷却回路における冷媒を利用して、電駆動ユニットを冷却し、電流量の最大値を向上させることが可能となる。つまり、冷却システムを小型化することができる。
【0011】
上記課題を解決するための別の手段は、冷却対象を冷却する第1冷却回路及び電駆動ユニットを冷却する第2冷却回路を有する冷却システムを制御する冷却制御装置において、前記第1冷却回路には、前記冷却対象を冷却する第1冷却部と第1熱交換器との間で冷媒を循環させる第1冷媒通路が設けられ、前記第2冷却回路には、前記電駆動ユニットを冷却する電駆動ユニット冷却部と第2熱交換器との間で冷媒を循環させる第2冷媒通路が設けられ、前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器は、それぞれ前記冷媒を放熱する装置であり、前記第1熱交換器は、前記第2熱交換器よりも放熱後の前記冷媒の温度を低くするように構成されており、前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路との間に、前記第1冷媒通路の冷媒の温度を、前記第2冷媒通路の冷媒の温度に伝達する伝熱装置が設けられ、前記電駆動ユニットの要求電流量を算出する電流量算出部と、前記電流量算出部により算出された前記要求電流量に応じて前記第2冷媒通路に流すべき冷媒の温度である必要冷媒温度を決定する冷媒温度決定部と、前記第2冷媒通路において、前記第2熱交換器から供給された後であって、前記電駆動ユニット冷却部に供給される前の冷媒の温度を第2冷媒温度として取得し、前記第2冷媒温度が、決定された必要冷媒温度よりも高い場合、前記第1冷媒通路の冷媒の温度を、前記第2冷媒通路の冷媒の温度に伝達させるように前記伝熱装置を制御するシステム制御部と、を備える。
【0012】
冷却対象の冷却で使用される冷媒の温度は、電駆動ユニットの冷却で使用される冷媒の温度に比較して、温度が低い。また、電駆動ユニットの電流量の最大値を増加させたい期間は、例えば、車両の走行開始時や坂道発進時など一時的なものであることが多い。
【0013】
そこで、第2冷媒温度が必要冷媒温度よりも高い場合、第1冷媒通路の冷媒の温度を、第2冷媒通路の冷媒の温度に伝達させるように伝熱装置を制御することとした。これにより、第2熱交換器を大型化しなくても、第1冷却回路における冷媒温度を利用して、電駆動ユニットを冷却し、電流量の最大値を向上させることが可能となる。つまり、冷却システムを小型化することができる。
【0014】
また、伝熱装置により熱を伝えるだけであるので、第1冷媒通路の冷媒を第2冷媒通路に流して、第2冷媒通路の冷媒と混合させる必要がない。このため、第1冷却回路及び第2冷却回路を閉回路で実現することが可能となる。冷媒を混合させる場合に比較して、第1冷媒通路から第2冷媒通路への伝熱を素早く終了させることができる。
【0015】
上記課題を解決するための別の手段は、冷却対象を冷却する第1冷却部と、第1熱交換器と、前記第1冷却部と前記第1熱交換器との間で冷媒を循環させる第1冷媒通路と、を有する第1冷却回路と、電駆動ユニットを冷却する電駆動ユニット冷却部と、第2熱交換器と、前記電駆動ユニット冷却部と前記第2熱交換器との間で冷媒を循環させる第2冷媒通路と、を有する第2冷却回路と、前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路を接続する接続経路と、前記接続経路における冷媒の流れを制御する経路制御装置と、前記経路制御装置を制御する冷却制御装置と、を備え、前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器は、それぞれ前記冷媒を放熱する装置であり、前記第1熱交換器は、前記第2熱交換器よりも放熱後の前記冷媒の温度を低くするように構成されており、前記冷却制御装置は、前記電駆動ユニットの要求電流量を算出する電流量算出部と、前記電流量算出部により算出された前記要求電流量に応じて前記第2冷媒通路に流すべき冷媒の温度である必要冷媒温度を決定する冷媒温度決定部と、前記第2冷媒通路において、前記第2熱交換器から供給された後、前記電駆動ユニット冷却部に供給される前の冷媒の温度を第2冷媒温度として取得し、前記第2冷媒温度が、決定された必要冷媒温度よりも高い場合、前記第1冷媒通路から前記第2冷媒通路に冷媒が流れるように前記経路制御装置を制御するシステム制御部と、を備える。
【0016】
これにより、第2熱交換器を大型化しなくても、第1冷却回路における冷媒を利用して、電駆動ユニットを冷却し、電流量の最大値を向上させることが可能となる。つまり、冷却システムを小型化することができる。
【0017】
上記課題を解決するための別の手段は、冷却対象を冷却する第1冷却回路及び電駆動ユニットを冷却する第2冷却回路を有する冷却システムを制御する冷却制御装置に実行させるプログラムにおいて、前記第1冷却回路には、前記冷却対象を冷却する第1冷却部と第1熱交換器との間で冷媒を循環させる第1冷媒通路が設けられ、前記第2冷却回路には、前記電駆動ユニットを冷却する電駆動ユニット冷却部と第2熱交換器との間で冷媒を循環させる第2冷媒通路が設けられ、前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器は、それぞれ前記冷媒を放熱する装置であり、前記第1熱交換器は、前記第2熱交換器よりも放熱後の前記冷媒の温度を低くするように構成されており、前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路との間には、前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路を接続する接続経路が設けられ、前記接続経路における冷媒の流れを制御する経路制御装置が設けられており、前記電駆動ユニットの要求電流量を算出する電流量算出ステップと、前記電流量算出ステップにより算出された前記要求電流量に応じて前記第2冷媒通路に流すべき冷媒の温度である必要冷媒温度を決定する冷媒温度決定ステップと、前記第2冷媒通路において、前記第2熱交換器から供給された後であって、前記電駆動ユニット冷却部に供給される前の冷媒の温度を第2冷媒温度として取得し、前記第2冷媒温度が、決定された必要冷媒温度よりも高い場合、前記第1冷媒通路から前記第2冷媒通路に冷媒が流れるように前記経路制御装置を制御するシステム制御ステップと、を備える。
【0018】
これにより、第2熱交換器を大型化しなくても、第1冷却回路における冷媒を利用して、電駆動ユニットを冷却し、電流量の最大値を向上させることが可能となる。つまり、冷却システムを小型化することができる。
【0019】
上記課題を解決するための別の手段は、冷却対象を冷却する第1冷却回路及び電駆動ユニットを冷却する第2冷却回路を有する冷却システムを制御する冷却制御装置が実行する制御方法において、前記第1冷却回路には、前記冷却対象を冷却する第1冷却部と第1熱交換器との間で冷媒を循環させる第1冷媒通路が設けられ、前記第2冷却回路には、前記電駆動ユニットを冷却する電駆動ユニット冷却部と第2熱交換器との間で冷媒を循環させる第2冷媒通路が設けられ、前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器は、それぞれ前記冷媒を放熱する装置であり、前記第1熱交換器は、前記第2熱交換器よりも放熱後の前記冷媒の温度を低くするように構成されており、前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路との間には、前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路を接続する接続経路が設けられ、前記接続経路における冷媒の流れを制御する経路制御装置が設けられており、前記電駆動ユニットの要求電流量を算出する電流量算出ステップと、前記電流量算出ステップにより算出された前記要求電流量に応じて前記第2冷媒通路に流すべき冷媒の温度である必要冷媒温度を決定する冷媒温度決定ステップと、前記第2冷媒通路において、前記第2熱交換器から供給された後であって、前記電駆動ユニット冷却部に供給される前の冷媒の温度を第2冷媒温度として取得し、前記第2冷媒温度が、決定された必要冷媒温度よりも高い場合、前記第1冷媒通路から前記第2冷媒通路に冷媒が流れるように前記経路制御装置を制御するシステム制御ステップと、を含む。
【0020】
これにより、第2熱交換器を大型化しなくても、第1冷却回路における冷媒を利用して、電駆動ユニットを冷却し、電流量の最大値を向上させることが可能となる。つまり、冷却システムを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】冷却システムの概略を示す全体図。
図2】(a)は、インバータ電流量マップを示す図、(b)は、必要冷媒温度マップを示す図。
図3】(a)は、流量マップを示す図、(b)は、冷却水温度マップを示す図。
図4】電池温度マップを示す図。
図5】(a)は、上昇時間予測マップを示す図、(b)は、インバータ電流量マップを示す図。
図6】冷却回路接続処理の流れを示すフローチャート。
図7】第2実施形態における冷却システムの概略を示す全体図。
図8】別例における冷却システムの概略を示す全体図。
図9】別例における冷却システムの概略を示す全体図。
図10】別例における冷却システムの概略を示す全体図。
図11】第3実施形態における冷却システムの概略を示す全体図。
図12】第3実施形態における冷却回路接続処理の流れを示すフローチャート。
図13】第2冷媒温度の変化を示す図。
図14】蓄電池流入口温度の変化を示す図。
図15】比較例における冷却システムの概略を示す全体図。
図16】蓄電池流入口温度の変化を示す図。
図17】別例における冷却システムの概略を示す全体図。
図18】別例における冷却システムの概略を示す全体図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る冷却制御装置、冷却システム、プログラム及び制御方法を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本発明に係る冷却制御装置、冷却システム、プログラム及び制御方法は、この実施形態において、車両(例えば、電気自動車やハイブリッド車)に適用されている。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付している。
【0023】
図1に示すように、冷却システム10は、充放電可能な蓄電池11を冷却するための第1冷却回路20と、インバータ12及びモータ13を冷却するための第2冷却回路30と、冷却システム10を制御する冷却制御装置としてのECU50と、を備える。なお、蓄電池11が第1冷却回路20の冷却対象となる。
【0024】
インバータ12は、電力変換回路であり、蓄電池11から供給される直流電流を交流電流に変換してモータ13に供給する。もしくは、インバータ12は、モータ13から供給される交流電流を直流電流に変換して蓄電池11を充電する。
【0025】
モータ13は、電動機及び発電機として機能する回転電機であり、例えば、永久磁石を用いた同期式3相交流モータである。モータ13の回転軸は、車軸と機械的に連結されている。モータ13が電動機として機能する場合、モータトルクによって、回転軸及び当該回転軸に連結された車軸を回転させ、車軸に固定されている駆動輪を回転駆動させる。一方、車両の減速時に、モータ13が発電機として機能する場合、モータ13は、駆動輪の回転を抑制する回生ブレーキ(回生制動)を行う。そして、モータ13は、駆動輪の運動エネルギーを電力に変換して出力する。この電力は、インバータ12を介して、蓄電池11に充電される。つまり、モータ13は、減速時に回生発電を行う。なお、この実施形態において、インバータ12及びモータ13は、電駆動ユニットに相当する。
【0026】
第1冷却回路20は、冷媒としての冷却水が循環するように形成された第1冷媒通路21と、蓄電池11を冷却する蓄電池冷却部22と、第1熱交換器としてのチラー23と、冷却水の流れを生成する第1ポンプ24と、を備える。
【0027】
蓄電池冷却部22と、チラー23と、第1ポンプ24は、第1冷媒通路21において直列に配置されている。第1ポンプ24は、冷却水が、第1冷媒通路21を介して蓄電池冷却部22とチラー23との間を循環するように、冷却水の流れ(水圧や方向等)を制御するものである。なお、第1ポンプ24は、ECU50からの指令に基づいて制御されている。また、蓄電池冷却部22、チラー23、及び第1ポンプ24の配置順序は任意に変更可能である。
【0028】
蓄電池冷却部22は、蓄電池11を冷却するための装置であり、第1冷却部に相当する。蓄電池冷却部22は、冷却水が第1冷媒通路21から流入すると、流入した冷却水に対して蓄電池11からの熱を伝え、伝熱後の冷却水を、第1冷媒通路21に流出させる(戻す)ように構成されている。
【0029】
チラー23は、図示しない冷凍回路の一部を構成するものであって、冷凍回路を流れる冷媒と第1冷媒通路21を流れる冷却水とを熱交換し、供給された冷却水の温度を調整する熱交換器である。具体的には、チラー23は、冷却水が第1冷媒通路21から流入すると、流入した冷却水を冷却し(放熱させ)、冷却後の冷却水を、第1冷媒通路21に流出させるように構成されている。チラー23は、ECU50に接続されており、ECU50からの指令に基づいて制御されている。このチラー23により、第1冷媒通路21を介して蓄電池冷却部22に流入する冷却水の温度は、所定の温度、例えば、20℃~30℃程度に保たれている。
【0030】
第2冷却回路30は、冷却水が循環するように形成された第2冷媒通路31と、インバータ12を冷却するインバータ冷却部32と、モータ13を冷却するモータ冷却部33と、第2熱交換器としてのラジエータ34と、冷却水の流れを生成する第2ポンプ35と、を備える。この実施形態において、インバータ冷却部32及びモータ冷却部33が電駆動ユニット冷却部に相当する。
【0031】
インバータ冷却部32と、モータ冷却部33と、ラジエータ34と、第2ポンプ35は、第2冷媒通路31において直列に配置されている。第2ポンプ35は、冷却水が、第2冷媒通路31を介して、第2ポンプ35→インバータ冷却部32→モータ冷却部33→ラジエータ34→第2ポンプ35→インバータ冷却部32→・・・の順番で、循環するように冷却水の流れ(水圧等)を制御するものである。なお、第2ポンプ35は、ECU50からの指令に基づいて制御されている。また、インバータ冷却部32、モータ冷却部33、ラジエータ34、及び第2ポンプ35の配置順序は任意に変更可能である。ただし、一般的に、モータ13に比較して、インバータ12のほうが、温度が低くなっているように制御することが望ましい。このため、モータ冷却部33よりも先に、ラジエータ34からインバータ冷却部32に冷却水が流入するように配置することが望ましい。
【0032】
インバータ冷却部32は、インバータ12を冷却するための装置であり、冷却水が第2冷媒通路31から流入すると、流入した冷却水に対してインバータ12からの熱を伝え(インバータ12の熱を放熱し)、伝熱後の温まった冷却水を、第2冷媒通路31に流出させる(戻す)ように構成されている。
【0033】
モータ冷却部33も同様に、モータ13を冷却するための装置であり、冷却水が第2冷媒通路31から流入すると、流入した冷却水に対してモータ13からの熱を伝え、伝熱後の冷却水を、第2冷媒通路31に流出させる(戻す)ように構成されている。
【0034】
ラジエータ34は、第2冷媒通路31を流れる冷却水と、外気との間で熱交換する熱交換器である。具体的には、ラジエータ34は、冷却水が第2冷媒通路31から流入すると、外気に対して流入した冷却水の熱を放熱して冷却し、冷却後の冷却水を、第2冷媒通路31に流出させる(戻す)ように構成されている。ラジエータ34は、ECU50の指令に基づいて制御されている。このラジエータ34により、第2冷媒通路31を介してインバータ冷却部32に供給される冷却水の温度は、所定の温度、例えば、60℃程度に保たれている。
【0035】
したがって、チラー23及びラジエータ34は、それぞれ冷却水を放熱する装置であり、チラー23は、ラジエータ34よりも放熱後の冷却水の温度を低くするように構成されている。
【0036】
また、第2冷媒通路31において、モータ冷却部33とラジエータ34との間には、第2バルブ36が配置されている。第2バルブ36は、第2冷媒通路31において、モータ冷却部33からラジエータ34に流れる冷却水の流量等を制御するものである。第2バルブ36は、ECU50に接続されており、ECU50の指令に基づいて制御されている。なお、第2バルブ36は、通常、開状態となっている。
【0037】
そして、第1冷却回路20と第2冷却回路30とは、第1接続経路41及び第2接続経路42により、接続されている。第1接続経路41は、第1冷媒通路21において蓄電池冷却部22の流出口と第1ポンプ24の流入口との間の第1接続点41aと、第2冷媒通路31においてラジエータ34の流出口と第2ポンプ35の流入口との間の第2接続点41bと、を連結するように設けられている。
【0038】
第2接続経路42は、第1冷媒通路21において第1接続点41aと第1ポンプ24の流入口との間の第3接続点42aと、第2冷媒通路31においてモータ冷却部33の流出口と第2バルブ36の流入口との間の第4接続点42bと、を連結するように設けられている。
【0039】
また、第2接続経路42には、第2接続経路42を流れる冷却水の流量等を制御する第1バルブ43が設けられている。第1バルブ43は、ECU50に接続されており、ECU50の指令に基づいて制御されている。
【0040】
次に、ECU50について説明する。ECU50は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えた電子制御装置である。このECU50は、各種情報を取得可能に構成されている。また、ECU50は、電流量算出部51としての機能や、冷媒温度決定部52としての機能、システム制御部53としての機能、温度予測部54としての機能、上昇時間予測部55としての機能、熱交換器制御部56としての機能など、各種機能を備える。ECU50は、取得した各種情報に基づき、これらの各種機能を実行する。これらの機能は、ECU50が備える記憶装置(記憶用メモリ)に記憶されたプログラムが実行されることで、各種機能が実現される。このプログラムが、本発明に係るプログラムに相当する。なお、各種機能は、ハードウェアである電子回路によって実現されてもよく、あるいは、少なくとも一部をソフトウェア、すなわちコンピュータ上で実行される処理によって実現されてもよい。
【0041】
以下、ECU50が備える各種機能について説明する。
【0042】
電流量算出部51は、インバータ12の要求電流量を算出するものである。要求電流量とは、モータ13に所望のトルクを出力させるために必要な電流量のことである。すなわち、モータ13の出力トルクは、インバータ12から供給される電流量に比例するため、モータ13の出力トルクを大きくする必要がある場合には、それに比例して必要な電流量も多くなる。したがって、電流量算出部51は、モータ13において必要とされる出力トルクに応じて、インバータ12の要求電流量を算出している。
【0043】
そして、この実施形態における電流量算出部51は、車両の状況に基づいて、インバータ12の要求電流量を予測して、算出するように構成されている。この実施形態における車両の状況とは、モータ13の回転数、アクセルの操作量、ブレーキの操作量、シフトレバーの位置(ポジション)、車両姿勢角等の車両情報に基づいて特定される車両の走行状態のことである。車両の走行状態としては、例えば、停止時の車両が発進するときの走行状態、坂道発進するときの走行状態、段差を乗り越えるときの走行状態、急加速するときの走行状態などがある。
【0044】
電流量算出部51は、前記車両情報に基づいて車両の走行状態を特定し、特定した走行状態に応じたインバータ電流量マップを参照する。そして、電流量算出部51は、そのインバータ電流量マップに基づいて、要求電流量を予測して、算出する。インバータ電流量マップは、例えば、図2(a)に示すように、特定された走行状態において、インバータ12の要求電流量の時間変化の予測を示すマップである。図2(a)における破線部分が、車両停止時から全開加速発進が行われるときにおけるインバータ電流量マップである。
【0045】
インバータ電流量マップでは、少なくとも予測期間におけるインバータ12の必要電流量の時間変化が示されている。予測期間とは、特定された走行状態が開始してから完了すると予測されるまでの期間であり、インバータ12の要求電流量が予め決められた閾値(例えば、通常の状態において要求される電流量の最大値)よりも高くなる期間である。電流量算出部51は、インバータ電流量マップを参照して、予測期間における要求電流量の最大値を特定する。また、電流量算出部51は、特定した走行状態が完了すると予測されるまでの予測期間を特定する。
【0046】
なお、電流量算出部51が特定した要求電流量の最大値(要求値)が、モータ電流制限値及びインバータ電流制限値のうちいずれか一方よりも高い場合、電流量算出部51は、モータ電流制限値及びインバータ電流制限値のうち最も小さい(少ない)値を、要求電流量の最大値として上書きする。
【0047】
ここで、モータ電流制限値は、モータ13において入力が許容される電流量の上限値であり、モータ13の温度などに基づいてマップ等により特定される。同様に、インバータ電流制限値は、インバータ12において出力が許容される電流量の上限値であり、インバータ12の温度などに基づいてマップ等より特定される。モータ電流制限値及びインバータ電流制限値は、それぞれ予め決められた値であってもよい。
【0048】
次に、冷媒温度決定部52について説明する。冷媒温度決定部52は、電流量算出部51により算出された要求電流量に応じて第2冷媒通路31に流すべき冷却水の温度としての必要冷媒温度を決定するものである。具体的には、冷媒温度決定部52は、必要冷媒温度マップを備えている。この必要冷媒温度マップは、図2(b)に示すように、インバータ流量ごとに、インバータ最大電流と必要冷媒温度との関数をグラフで示すものである。図2(b)の必要冷媒温度マップにおいて、関数グラフM1~M3は、それぞれ、インバータ流量が、それぞれX1~X3(リットル毎秒)の時におけるインバータ最大電流と必要冷媒温度との関数グラフを例示するものである。
【0049】
ここで、インバータ流量は、第2冷媒通路31においてインバータ冷却部32に流入する冷却水の流量のことであり、インバータ最大電流は、インバータ12が出力可能な最大電流のことである。必要冷媒温度は、対応する最大電流を出力させるために、インバータ冷却部32に流入させるべき冷却水の温度である。つまり、インバータ12が出力可能な最大電流は、インバータ12の温度に依存しており、一般的には、インバータ12の温度が低ければ、出力可能な電流量が大きくなる。
【0050】
冷媒温度決定部52は、必要冷媒温度マップを参照して、要求電流量の最大値に対応するインバータ最大電流に基づいて、インバータ流量と必要冷媒温度の組み合わせを特定する。
【0051】
システム制御部53は、第1冷媒通路21から第1接続経路41及び第2接続経路42を介して第2冷媒通路31に冷却水が流れるように、第1ポンプ24、及び第1バルブ43を制御するものである。その際、システム制御部53は、第2冷媒通路31において、モータ冷却部33からラジエータ34へ冷却水の流量を調整するように、第2ポンプ35、及び第2バルブ36を制御する。本実施形態において、第1接続経路41及び第2接続経路42が、接続経路に相当する。また、第1ポンプ24、及び第1バルブ43が、経路制御装置に相当する。また、第2ポンプ35、及び第2バルブ36が、第2冷媒制御装置に相当する。
【0052】
システム制御部53による制御について詳しく説明する。システム制御部53は、第1冷媒通路21に流れる冷却水の温度である第1冷媒温度を取得する。この実施形態では、第1冷媒通路21において、蓄電池冷却部22から流出した後であって、第1接続点41aを通過する前の冷却水の温度を取得する。具体的には、蓄電池冷却部22の流出口付近に第1の水温センサ25が配置されており、システム制御部53は、当該第1の水温センサ25により検出された第1冷媒温度を取得する。つまり、この実施形態において、第1冷媒温度は、蓄電池冷却部22の流出口付近の温度である。
【0053】
また、システム制御部53は、第2冷媒通路31に流れる冷却水の温度である第2冷媒温度を取得する。この実施形態では、第2冷媒通路31において、第2接続点41bの通過後であって、インバータ冷却部32に供給される前の箇所に第2の水温センサ37が配置されており、システム制御部53は、当該第2の水温センサ37により検出された第2冷媒温度を取得する。つまり、この実施形態において、第2冷媒温度は、インバータ冷却部32の流入口付近の温度である。
【0054】
そして、システム制御部53は、第2冷媒温度が、決定された必要冷媒温度よりも高い場合、第1冷媒通路21から第1接続経路41を介して第2冷媒通路31に冷却水が流れるように、第1ポンプ24及び第1バルブ43を制御する。ここで決定された必要冷媒温度とは、第1冷媒流量がゼロの時におけるインバータ流量に対応する必要冷媒温度である。なお、第1冷媒流量は、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31へ流入する冷却水の流量である。
【0055】
その際、システム制御部53は、必要冷媒温度と第2冷媒温度との比較に基づいて、第1冷媒流量を調整し、第1冷媒流量に基づいて、第1ポンプ24及び第1バルブ43を制御する。つまり、システム制御部53は、通常、必要冷媒温度と第2冷媒温度との差が大きいほど、第1冷媒流量を多く(大きく)して、第1ポンプ24及び第1バルブ43を制御する。
【0056】
また、システム制御部53は、第1冷媒流量に応じて、モータ冷却部33からラジエータ34への第2冷媒流量を調整し、第2冷媒流量に基づいて、第2ポンプ35及び第2バルブ36を制御する。例えば、システム制御部53は、第1冷媒流量を多い(大きい)ほど、第2冷媒流量を少なくして(小さくして)第2ポンプ35及び第2バルブ36を制御する。
【0057】
ここで、第1冷媒流量及び第2冷媒流量の調整方法についてより詳しく説明する。システム制御部53は、各箇所における冷却水の流量の関数をグラフで示す流量マップを備える。図3(a)に示す流量マップでは、インバータ流量と第1冷媒流量との関数グラフF1と、第2冷媒流量と第1冷媒流量との関数グラフF2と、が示されている。図3(a)に示す流量マップでは、関数グラフF1に示すように、インバータ流量は、第1冷媒流量に対して比例して増加する関係となっている。
【0058】
図3(a)に示す流量マップでは、関数グラフF2に示すように、第2冷媒流量は、第1冷媒流量に対して反比例して減少する関係となっている。流量マップは、各部圧損マップ、各ポンプの出力マップ、バルブ圧損マップ、各部温度、バルブ開度などのパラメータに基づいて計算により取得してもよいし、実験などにより取得してもよい。
【0059】
また、システム制御部53は、各部における冷却水の温度と、第1冷媒流量との関数をグラフでそれぞれ示す冷却水温度マップを有する。図3(b)に示す冷却水温度マップでは、第1冷媒流量と第1冷媒温度との関数グラフT11と、第1冷媒流量とラジエータ流出口温度との関数グラフT12と、第1冷媒流量と第2冷媒温度との関数グラフT13と、が示されている。
【0060】
図3(b)に示す冷却水温度マップでは、関数グラフT11に示すように、第1冷媒温度(つまり、蓄電池冷却部22から流出する冷却水の温度)は、第1冷媒流量に比例して増加する関係となっている。つまり、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31に流入する冷却水が多くなるほど、また、第2冷媒流量が少なくなるほど、第1冷媒温度が上昇することがわかる。
【0061】
図3(b)に示す冷却水温度マップにおいて、ラジエータ流出口温度とは、ラジエータ34の流出口から、第2接続点41bに到達するまで(つまり、第1冷媒通路21から流入する冷却水と合流する前まで)の間における冷却水の温度である。図3(b)に示す冷却水温度マップでは、関数グラフT12に示すように、ラジエータ流出口温度は、第1冷媒流量が所定量となるまで第1冷媒流量に反比例して減少し、所定量以上となった場合には、第1冷媒流量に比例して増加する関係となっている。
【0062】
図3(b)に示す冷却水温度マップでは、関数グラフT13に示すように、第2冷媒温度(つまり、インバータ冷却部32に流入する冷却水の温度)は、第1冷媒流量に反比例して減少する関係となっている。つまり、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31に流入する冷却水が多くなるほど、第2冷媒温度が下降することがわかる。なお、第1冷媒流量がゼロである場合には、ラジエータ34からの冷却水が全てインバータ冷却部32に流入することから、第2冷媒温度とラジエータ流出口温度はほぼ同じである。
【0063】
この冷却水温度マップは、第1冷媒流量がゼロの時における第1冷媒温度及び第2冷媒温度の組み合わせごとに用意されている。もしくは、予め決められた第1冷媒温度及び第2冷媒温度における冷却水温度マップが用意されており、それを利用してもよい。また、予め決められた第1冷媒温度及び第2冷媒温度における冷却水温度マップを、第1冷媒流量がゼロの時に取得される第1冷媒温度及び第2冷媒温度の組み合わせに応じて、補正して利用してもよい。
【0064】
そして、システム制御部53は、流量マップを参照して、冷媒温度決定部52により特定されたインバータ流量と必要冷媒温度との組み合わせを、第1冷媒流量と必要冷媒温度との組み合わせに変換する。システム制御部53は、この第1冷媒流量と必要冷媒温度との組み合わせから、必要冷媒温度と第1冷媒流量との関数グラフT14を特定する。
【0065】
そして、システム制御部53は、特定した必要冷媒温度と第1冷媒流量との関数グラフT14を冷却水温度マップに適用する。図3(b)に示す冷却水温度マップでは、関数グラフT14に示すように、必要冷媒温度は、第1冷媒流量にほぼ比例して増加する関係となっている。つまり、インバータ流量が多ければ多いほど、必要冷媒温度が高くてもよくなることがわかる。
【0066】
そして、システム制御部53は、冷却水温度マップにおいて、特定した必要冷媒温度と第1冷媒流量との関数グラフT14と、第1冷媒流量と第2冷媒温度との関数グラフT13との交点を特定する。つまり、システム制御部53は、必要冷媒温度と第2冷媒温度とが一致する第1冷媒流量を特定する。
【0067】
その後、システム制御部53は、流量マップを参照して、特定した第1冷媒流量に対応する第2冷媒流量を特定する。以上のように、システム制御部53は、必要冷媒温度、第1冷媒温度、及び第2冷媒温度に基づいて、第1冷媒流量を調整(算出)するとともに、モータ冷却部33からラジエータ34への第2冷媒流量を調整(算出)している。
【0068】
そして、システム制御部53は、特定した第1冷媒流量に基づいて、第1ポンプ24及び第1バルブ43を制御するとともに、特定した第2冷媒流量に基づいて、第2ポンプ35及び第2バルブ36を制御する。
【0069】
なお、システム制御部53は、後述する温度予測部54により特定されたチラー流出口温度が、温度予測部54により特定された冷媒許容温度以下であるか否かを判定しており、この判定結果が否定の場合には、冷却水の流入を禁止する。つまり、第1冷媒流量をゼロとする。
【0070】
また、システム制御部53は、上昇時間予測部55から、蓄電池11の温度が電池温度許容値に達するまでの上昇時間を取得している。そして、システム制御部53は、この上昇時間に基づいて、蓄電池11の温度が電池温度許容値に達するまでに、走行状態が開始してから完了するまでの予測期間が終了するか否かを判定している。そして、この判定結果が否定の場合には、システム制御部53は、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31へ冷却水を流入させることを禁止する。つまり、第1冷媒流量をゼロとする。
【0071】
次に、温度予測部54について説明する。温度予測部54は、図4に示す電池温度マップを備えている。図4に示す電池温度マップでは、第1冷媒流量とモータ流出口温度との関数グラフT21と、第1冷媒流量とチラー流入口温度との関数グラフT22と、第1冷媒流量と冷媒許容温度との関数グラフT23と、が示されている。
【0072】
モータ流出口温度は、モータ冷却部33の流出口から流出する冷却水の温度に相当し、チラー流入口温度は、チラー23の流入口に流入する冷却水の温度に相当する。冷媒許容温度は、蓄電池冷却部22に流入する冷却水の温度として許容される温度に相当する。冷媒許容温度は、蓄電池11の温度が予め決められた温度(電池温度許容値)以下とするために、蓄電池冷却部22に流入する冷却水の温度として許容される温度に相当する。
【0073】
図4に示す電池温度マップにおいて、関数グラフT21に示すように、モータ流出口温度は、第1冷媒流量に反比例して減少する関係となっている。つまり、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31に流入する冷却水が多くなるほど、モータ流出口温度は、下降することがわかる。
【0074】
図4に示す電池温度マップにおいて、関数グラフT22に示すように、チラー流入口温度は、第1冷媒流量に比例して増加する関係となっている。つまり、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31に流入する冷却水が多くなるほど、チラー流入口温度は、上昇し、モータ流出口温度に近づいていくことがわかる。図4に示す電池温度マップにおいて、関数グラフT23に示すように、冷媒許容温度は、第1冷媒流量に比例して漸増する関係となっている。
【0075】
この電池温度マップは、第1冷媒流量がゼロの時におけるモータ流出口温度とチラー流入口温度との組み合わせごとに用意されている。もしくは、予め決められたモータ流出口温度とチラー流入口温度における許容温度マップが用意されており、第1冷媒流量がゼロの時におけるモータ流出口温度とチラー流入口温度の組み合わせに応じて、許容温度マップを補正して利用してもよい。
【0076】
そして、温度予測部54は、関数グラフT22において、チラー流入口温度からチラー23による冷却温度を減算することにより、第1冷媒流量とチラー流出口温度(すなわち、蓄電池冷却部22に流入する冷却水の温度)との関数グラフT24を取得する。
【0077】
なお、チラー23による冷却温度は、温度予測部54により特定されるものである。このチラー23による冷却温度は、チラー23の冷却性能から特定することができ、チラー23の冷却性能は、チラー23に供給される電力や冷凍回路の冷媒温度等に基づいて性能マップ等により特定される。
【0078】
そして、システム制御部53は、電池温度マップの関数グラフT23を参照して、必要冷媒温度と第2冷媒温度とが一致するときにおける第1冷媒流量に対応する冷媒許容温度を特定する。同様に、システム制御部53は、電池温度マップの関数グラフT24を参照して、必要冷媒温度と第2冷媒温度とが一致するときにおける第1冷媒流量に対応するチラー流出口温度を特定する。このチラー流出口温度は、現時点における温度ではなく、予測温度となる。そして、システム制御部53は、特定したチラー流出口温度が、特定した冷媒許容温度以下であるか否かを判定する。この判定結果が否定の場合には、システム制御部53は、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31へ冷却水を流入させることを禁止する。
【0079】
次に上昇時間予測部55について説明する。上昇時間予測部55は、上昇時間予測マップを備えている。上昇時間予測マップは、図5(a)に示すように、蓄電池11の温度が電池温度許容値に達するまでの上昇時間と第1冷媒流量との関数グラフT31が示されている。上昇時間予測マップにおける上昇時間と第1冷媒流量との関数グラフT31は、チラー流入口温度、蓄電池11の電流量、蓄電池11の本体温度、放熱量、熱容量、温度上限などに基づいて上昇時間予測部55により特定される。
【0080】
そして、上昇時間予測部55は、上昇時間予測マップに示される関数グラフT31に基づいて、必要冷媒温度と第2冷媒温度とが一致するときにおける第1冷媒流量に対応する上昇時間(図5(a)においてt1で示す)を特定する。システム制御部53は、この上昇時間に基づいて、蓄電池11の温度が電池温度許容値に達するまでに、走行状態が開始してから完了するまでの予測期間が終了するか否かを判定する。つまり、上昇時間「t1」が、予測期間が終了するまでの時間(図5(b)においてt2で示す)より長いか否かを判定する。そして、この判定結果が否定の場合には、システム制御部53は、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31へ冷却水を流入させることを禁止する。
【0081】
次に、熱交換器制御部56について説明する。熱交換器制御部56は、チラー流出口温度が、冷媒許容温度以下でない場合、もしくは、上昇時間が、予測期間が終了するまでの時間よりも短い場合、チラー23の冷却能力を向上させるようにチラー23を制御する。
【0082】
次に、ECU50が実行する冷却回路接続処理の流れについて図6に基づいて説明する。冷却回路接続処理は、所定周期ごとにECU50により実行される。冷却回路接続処理が実行されることにより、本発明に係る制御方法が実施されることとなる。
【0083】
電流量算出部51としてのECU50は、前述したようにインバータ12の要求電流量を算出する(ステップS101)。また、ステップS101において、冷媒温度決定部52としてのECU50は、前述したように算出された要求電流量に応じて第2冷媒通路31に流すべき冷却水の温度としての必要冷媒温度を決定する。つまり、ステップS101において、ECU50は、要求電流量の最大値に対応するインバータ最大電流に基づいて、インバータ流量と必要冷媒温度の組み合わせを特定する。このステップS101が、電流量算出ステップ及び冷媒温度決定ステップに相当する。
【0084】
次に、システム制御部53としてのECU50は、要求電流量を出力させるにはインバータ12の冷却が不足しているか否かを判定する(ステップS102)。つまり、ECU50は、第2冷媒温度を取得し、第2冷媒温度が必要冷媒温度よりも高いか否かを判定する。比較対象となる必要冷媒温度は、ステップS101において特定されたインバータ流量と必要冷媒温度の組み合わせに基づいて特定される。なお、このインバータ流量は、第1冷媒流量がゼロの時におけるインバータ流量であり、流量マップより特定される。
【0085】
ステップS102の判定結果が否定の場合、ECU50は、冷却回路接続処理を終了する。一方、ステップS102の判定結果が肯定の場合、システム制御部53としてのECU50は、第1冷媒流量を算出する(ステップS103)。
【0086】
ステップS103では、前述したように、ECU50は、流量マップを参照して、ステップS101において特定されたインバータ流量と必要冷媒温度との組み合わせを、第1冷媒流量と必要冷媒温度との組み合わせに変換して、必要冷媒温度と第1冷媒流量との関数グラフT14を特定する。そして、ECU50は、特定した必要冷媒温度と第1冷媒流量との関数グラフT14を冷却水温度マップに適用し、関数グラフT14と、関数グラフT13との交点を特定する。この交点に基づいて、ECU50は、必要冷媒温度と第2冷媒温度とが一致するときにおける第1冷媒流量を算出する。
【0087】
温度予測部54としてのECU50は、前述したように、ステップS103において算出された第1冷媒流量に対応するチラー流出口温度を特定する(ステップS104)。そして、温度予測部54としてのECU50は、前述したように、電池温度マップの関数グラフT23を参照して、ステップS103において算出された第1冷媒流量に対応する冷媒許容温度を特定する。そして、ECU50は、ステップS104で特定されたチラー流出口温度が、当該冷媒許容温度以下であるか否かを判定する(ステップS105)。つまり、第1冷媒流量を調整しても、蓄電池11を十分冷却することができるか否かを判定する。
【0088】
ステップS105の判定結果が否定の場合には、ECU50は、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31へ冷却水を流入させることを禁止して、後述するステップS120に移行する。
【0089】
次に、上昇時間予測部55としてのECU50は、上昇時間予測マップに示される関数グラフT31に基づいて、ステップS103(又はステップS121)で算出された第1冷媒流量に対応する上昇時間を特定する(ステップS106)。
【0090】
そして、システム制御部53としてのECU50は、ステップS106で特定された上昇時間に基づいて、蓄電池11の温度が電池温度許容値に達するまでに、走行状態が開始してから完了するまでの予測期間が終了するか否かを判定する(ステップS107)。具体的には、ECU50は、上昇時間「t1」が、予測期間の終了時までの時間「t2」よりも長いか否かを判定する。
【0091】
ステップS107の判定結果が否定の場合、ECU50は、後述するステップS120に移行する。一方、ステップS107の判定結果が肯定の場合、システム制御部53としてのECU50は、第1冷却回路20と第2冷却回路30を接続し、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31へ冷却水が流れ込むように制御する(ステップS108)。すなわち、ECU50は、特定した第1冷媒流量に基づいて、第1ポンプ24及び第1バルブ43を制御する。また、ステップS108において、ECU50は、流量マップを参照して、特定した第1冷媒流量に対応する第2冷媒流量を特定し、特定した第2冷媒流量に基づいて、第2ポンプ35及び第2バルブ36を制御する。このステップS108がシステム制御ステップに相当する。
【0092】
そして、システム制御部53としてのECU50は、第2冷媒温度が、必要冷媒温度よりも高いか否かを判定する(ステップS109)。この第2冷媒温度は、第2の水温センサ37から取得した実際の冷却水の温度である。この判定結果が肯定の場合、ECU50は、蓄電池11の温度が電池温度許容値よりも低いか否かを判定する(ステップS110)。この判定結果が肯定の場合、ECU50は、所定時間経過後、ステップS109に再び移行し、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31への冷却水の流入を継続する。
【0093】
一方、ステップS109又はステップS110の判定結果が否定の場合、ECU50は、第1冷却回路20と第2冷却回路30との接続を終了する(ステップS111)。すなわち、ECU50は、第1冷媒流量がゼロとなるように、第1ポンプ24及び第1バルブ43を制御する。それとともに、ECU50は、流量マップを参照して、第1冷媒流量がゼロとなるときに対応する第2冷媒流量を特定し、特定した第2冷媒流量に基づいて、第2ポンプ35及び第2バルブ36を制御する。そして、ECU50は、冷却回路接続処理を終了する。
【0094】
一方、ステップS120に移行した場合、熱交換器制御部56としてのECU50は、チラー23の冷却性能を向上させる余地があるか否かを判定する(ステップS120)。具体的には、ECU50は、チラー23に供給される電力が予め決められた限界値以下であるか否かを判定する。
【0095】
この判定結果が否定の場合、ECU50は、冷却回路接続処理を終了する。一方、ステップS120の判定結果が肯定の場合、ECU50は、チラー23の冷却性能を向上させる(ステップS121)。そして、ECU50は、チラー23の冷却性能を向上させた後、改めて第1冷媒流量及びチラー流出口温度を特定し、第1冷媒流量とチラー流出口温度との関数グラフT24を取得する(ステップS121)。そして、システム制御部53は、ステップS105に移行する。
【0096】
以上のように構成したことにより、本実施形態では、以下の優れた効果を有する。
【0097】
一般的に、蓄電池11の冷却で使用される冷却水の温度は、例えば、20℃~30℃程度で、インバータ12やモータ13等の冷却で使用される冷却水の温度(例えば、60℃前後)に比較して、その温度が低い。また、インバータ12の電流量の最大値を増加させたい期間は、例えば、車両の走行開始時や坂道発進時など一時的なものであることが多い。
【0098】
そこで、システム制御部53として機能するECU50は、第2冷媒温度が必要冷媒温度よりも高い場合、第1冷媒通路21から第1接続経路41及び第2接続経路42を介して第2冷媒通路31に冷却水が流れるように、第1ポンプ24及び第1バルブ43を制御することとした。これにより、ラジエータ34を大型化しなくても、第1冷却回路20における低温の冷却水を利用して、インバータ12を冷却し、電流量の最大値を向上させることが可能となる。つまり、冷却システム10を小型化することができる。
【0099】
システム制御部53として機能するECU50は、必要冷媒温度と第2冷媒温度との比較に基づいて、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31への第1冷媒流量を調整するように構成されている。より詳しくは、ECU50は、流量マップを参照して、ステップS101において特定されたインバータ流量と必要冷媒温度との組み合わせを、第1冷媒流量と必要冷媒温度との組み合わせに変換して、必要冷媒温度と第1冷媒流量との関数グラフT14を特定する。そして、ECU50は、特定した必要冷媒温度と第1冷媒流量との関数グラフT14を冷却水温度マップに適用し、関数グラフT14と、関数グラフT13との交点を特定する。この交点に基づいて、ECU50は、必要冷媒温度と第2冷媒温度とが一致するときにおける第1冷媒流量を算出する。
【0100】
これにより、必要冷媒温度と第2冷媒温度とが一致するように、第1冷媒流量を調整して、第2冷媒温度を必要冷媒温度へと素早く近づけることが可能となる。また、第2冷媒温度が過度に冷却されることや、第1冷媒温度が余分に上昇してしまうことを抑制できる。
【0101】
第1冷媒通路21から第2冷媒通路31に冷却水が流れるように制御しても、第2冷媒温度がすぐに必要冷媒温度となるわけではない。そこで、電流量算出部51として機能するECU50は、車両の状況に基づいて、インバータ12の要求電流量を予測して、算出するようにした。具体的には、ECU50は、車両情報等に基づいて車両の走行状態を特定し、特定した走行状態に応じたインバータ電流量マップを参照する。そして、ECU50は、そのインバータ電流量マップに基づいて、特定された走行状態が開始してから完了すると予測されるまでの予測期間における要求電流量を予測して、算出する。ECU50は、その要求電流量に基づいて第1冷媒通路21から第2冷媒通路31に冷却水が流れるように制御する。これにより、適切なタイミングでインバータ12の要求電流量を向上させることができる。
【0102】
システム制御部53としてのECU50は、必要冷媒温度、第1冷媒温度、及び第2冷媒温度に基づいて、第1冷媒流量及び第2冷媒流量を調整する。詳しくは、ECU50は、冷却水温度マップを参照して、第1冷媒流量と第2冷媒温度との関数グラフT13を特定する。冷却水温度マップは、取得した第1冷媒温度及び第2冷媒温度に基づいて特定されるため、関数グラフT13も第1冷媒温度及び第2冷媒温度に基づいて特定されることとなる。例えば、取得した第2冷媒温度に応じて、第2冷媒温度の初期値、つまり、第2冷媒流量がゼロの時の第2冷媒温度が特定される。また、第1冷媒温度が低ければ、関数グラフT13において、第2冷媒温度の低下割合が大きくなり(傾きが急になり)、第1冷媒温度が高ければ、第1冷媒温度の低下割合が小さくなる(傾きが緩やかになる)。
【0103】
そして、ECU50は、必要冷媒温度と第1冷媒流量との関数グラフT14と、第1冷媒流量と第2冷媒温度との関数グラフT13との交点を特定し、必要冷媒温度と第2冷媒温度が一致する第1冷媒流量を調整する。そして、ECU50は、流量マップに基づいて、必要冷媒温度と第2冷媒温度が一致する第1冷媒流量に応じて、第2冷媒流量を調整する。
【0104】
このように、必要冷媒温度、第1冷媒温度、及び第2冷媒温度を考慮するため、第1冷媒流量及び第2冷媒流量を適切に調整することができる。これにより、例えば、第2冷媒温度と必要冷媒温度の差が大きい場合であっても、第1冷媒通路21からインバータ冷却部32へ流れ込む冷却水の量を多くして、第2冷媒温度を急速に低減させることが可能となる。
【0105】
また、例えば、第2冷媒温度と必要冷媒温度との差が小さい場合、第1冷媒流量を少なくする一方で、第2冷媒流量を多くしている。これにより、第1冷媒通路21からインバータ冷却部32へ流れ込む冷却水の量を少なくして、第1冷媒温度の上昇を抑制しつつ、第2冷媒温度をゆっくり低減させることが可能となる。また、例えば、第1冷媒温度が低く、第1冷媒温度と第2冷媒温度との差が大きい場合、第1冷媒流量を少なくして、第1冷媒温度の上昇を抑制することができる。したがって、適切なタイミングでインバータ12の要求電流量を満たしつつ、冷却水の温度を適切に管理することができる。
【0106】
チラー流出口温度が蓄電池11の冷却用冷媒としての冷媒許容温度よりも高い場合に、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31に冷却水が流れてしまうと、蓄電池11を適切に冷却することができなくなり、不都合が生じる。その一方で、モータ13の出力トルクが若干小さくなっても、蓄電池11の適切に冷却できなくなるのに比較して、不都合が少ない。そこで、ECU50は、チラー流出口温度が冷媒許容温度よりも高い場合には、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31に冷却水が流れないように制御している。これにより、蓄電池11を優先的に冷却することができるようにした。
【0107】
一旦、チラー流出口温度が冷媒許容温度を越えてしまうと、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31への冷却水の供給を停止しても、即座に第1冷媒温度を冷媒許容温度以下とすることは困難である。そこで、温度予測部54として機能するECU50は、第2冷媒温度が必要冷媒温度に達するように第1冷媒流量が調整されたときにおけるチラー流出口温度を予測している。そして、システム制御部53としてのECU50は、予測されたチラー流出口温度が冷媒許容温度よりも高い場合には、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31に冷却水が流れないように制御している。これにより、蓄電池11を優先的に冷却することができるようにした。
【0108】
熱交換器制御部56としてのECU50は、予測されたチラー流出口温度が冷媒許容温度よりも高い場合であって、チラー23の冷却性能を向上させる余地がある場合、チラー23の冷却性能を向上させている。そして、ECU50は、冷却性能を向上させた後、再びチラー流出口温度が冷媒許容温度以下となるか否かを判定し、冷媒許容温度以下となる場合には、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31へと冷却水を流入させる。これにより、インバータ12の要求電流量を可能な限り供給することができる。
【0109】
上昇時間予測部55としてのECU50は、蓄電池11の温度が電池許容温度に達するまでの上昇時間を予測している。また、電流量算出部51としてのECU50は、車両の状況に基づいて、要求電流量が予め決められた閾値よりも高くなると予測される予測期間を特定している。そして、システム制御部53としてのECU50は、予測された上昇時間が、予測期間が終了するまでの時間よりも短いと判定した場合、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31に冷却水が流れないように制御する。したがって、蓄電池11の温度が電池許容温度を越えないようにして、蓄電池11を優先的に冷却することができるようにした。
【0110】
熱交換器制御部56としてのECU50は、上昇時間が、予測期間が終了するまでの時間よりも短いと判定された場合であって、チラー23の冷却性能を向上させる余地がある場合、チラー23の冷却性能を向上させている。そして、ECU50は、冷却性能を向上させた後、再び上昇時間が、予測期間が終了するまでの時間よりも長くなるか否かを判定し、上昇時間が、予測期間が終了するまでの時間よりも長いと判定された場合には、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31へと冷却水を流入させるようにした。これにより、インバータ12の要求電流量を可能な限り供給することができる。
【0111】
(第2実施形態)
第1実施形態の冷却システム10の構成を次のように変更してもよい。なお、第1実施形態と同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付している。
【0112】
図7に示すように、第2実施形態における冷却システム10は、第1実施形態と異なり、第1接続経路41及び第2接続経路42が設けられていない。その一方で、第1冷媒通路21と第2冷媒通路31との間に、第1冷媒通路21の冷却水の温度を、第2冷媒通路31の冷却水の温度に伝達する伝熱装置80が設けられている。なお、伝熱装置80は、互いの冷却回路の冷却水を混入させることなく、壁面などを介して冷却水の熱のみを伝達するように構成されているものである。
【0113】
そして、第2実施形態におけるシステム制御部53としてのECU50は、第2冷媒温度が、必要冷媒温度よりも高い場合、第1冷媒通路21の冷却水の温度を、第2冷媒通路31の冷却水の温度に伝達させるように伝熱装置80を制御するように構成されている。
【0114】
このように第2実施形態において、ECU50は、第2冷媒温度が必要冷媒温度よりも高い場合、第1冷媒通路21の冷却水の温度を、第2冷媒通路31の冷却水の温度に伝達させるように伝熱装置80を制御している。これにより、ラジエータ34を大型化しなくても、第1冷却回路20における冷却水の温度を利用して、インバータ12を冷却し、インバータ12の電流量の最大値を向上させることが可能となる。つまり、冷却システム10を小型化することができる。
【0115】
また、伝熱装置80により熱を伝えるだけであるので、第1冷媒通路21の冷却水を第2冷媒通路31に流して、第2冷媒通路31の冷却水と混合させる必要がない。このため、第1冷却回路20及び第2冷却回路30を閉回路で実現することが可能となり、冷媒の種類を異ならせることが可能となる。また、冷却水を混合させる場合に比較して、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31への伝熱を素早く終了させることができる。
【0116】
(第3実施形態)
第1実施形態の冷却システム10の構成を次のように変更してもよい。なお、第1実施形態と同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付している。
【0117】
図11に示すように、第3実施形態の第1冷却回路20には、冷却水を貯蔵する冷媒貯蔵部としてのタンク100が設けられている。このタンク100は、第1冷媒通路21において、蓄電池冷却部22の前であって、チラー23の後に配置されている。つまり、チラー23と、タンク100と、蓄電池冷却部22は、この順番で直列に配置されている。そして、タンク100は、チラー23により放熱された冷却水の少なくとも一部が一旦貯蔵されるように構成されている。
【0118】
次に、第3実施形態の冷却回路接続処理の流れについて図12に基づいて説明する。ステップS101~ステップS110までの処理、及びステップS120,S121の処理は、第1実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0119】
ステップS110の判定結果が肯定の場合、ECU50は、蓄電池冷却部22の流入口の温度である蓄電池流入口温度を取得し、蓄電池流入口温度が冷媒許容温度以下であるか否かを判定する(ステップS201)。蓄電池流入口温度は、タンク100と蓄電池冷却部22との間における冷却水の温度のことであり、図示しない水温センサ等により検出される。ステップS201の判定結果が肯定の場合、ECU50は、所定時間経過後、ステップS109に再び移行し、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31への冷却水の流入を継続する。
【0120】
一方、ステップS109,S110,S201の判定結果のいずれかが否定の場合、ECU50は、第1冷却回路20と第2冷却回路30との接続を終了する(ステップS111)。すなわち、ECU50は、第1冷媒流量がゼロとなるように、第1ポンプ24及び第1バルブ43を制御する。それとともに、ECU50は、流量マップを参照して、第1冷媒流量がゼロとなるときに対応する第2冷媒流量を特定し、特定した第2冷媒流量に基づいて、第2ポンプ35及び第2バルブ36を制御する。そして、ECU50は、冷却回路接続処理を終了する。
【0121】
以上のように構成したことにより、第3実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、以下の優れた効果を有する。
【0122】
第1冷却回路20に、チラー23により放熱された冷却水の少なくとも一部を一旦貯蔵するタンク100を設けた。これにより、チラー23により放熱された冷却水の水量が増え、第2冷却回路30から冷却水が第1冷却回路20に流入しても、第1冷媒温度の温度上昇を緩やかにすることができる。これにより、蓄電池11の温度が電池温度許容値に達するまでの上昇時間を長くすることができ、ステップS107を肯定しやすくなる。
【0123】
また、図13に示すように、第1冷却回路20と第2冷却回路30との接続後(時点T100)、第2冷媒温度を設定した温度に保つことができる時間(時点T101~時点T103)を長くすることができる。つまり、第2冷媒温度を低い温度で維持可能な時間を長くすることができる。図13において破線は、タンク100を設けない場合における第2冷媒温度の遷移を示すものである。この破線によれば、タンク100を設けない場合、第2冷媒温度を設定した温度に保つことができる時間(時点T101~時点T102)が短くなることがわかる。
【0124】
また、タンク100を設けることにより、図14に示すように、タンク100を設けない場合に比較して、蓄電池流入口温度の温度変化を緩やかにすることができる。なお、図14において、破線によって、タンク100を設けない場合における温度変化を示し、実線によって、タンク100を設けた場合における温度変化を示す。図14の破線において、時点T201~時点T202で蓄電池流入口温度が一時的に上昇するのは、接続後、第2冷却回路30からの温度の高い冷却水が第1冷却回路20における冷却水と混じることなく流入するためだと考えられる。なお、一定時間経過後、冷却水が混じるので、蓄電池流入口温度が低下した状態で保たれる(時点T202~時点T203)。その後、第2冷媒温度の上昇に伴い、蓄電池流入口温度が上昇し、冷媒許容温度を超えることとなる(時点T203a)。
【0125】
一方、タンク100を設けた場合、接続後、第2冷却回路30からの温度の高い冷却水がタンク100内に一旦貯留され、温度の低い冷却水と混ざった後、蓄電池冷却部22に供給される。このため、図14の実線に示すように、蓄電池流入口温度の変化を緩やかにすることができる。また、蓄電池流入口温度が冷媒許容温度以下に保たれる時間(時点T201~時点T204)を、タンク100を設けない場合に比較して長くすることができる。したがって、ステップS110,S201において肯定となりやすくすることができ、長い間、第1冷却回路20と第2冷却回路30とを接続することができる。
【0126】
また、タンク100を、蓄電池冷却部22の前であって、チラー23の後に配置した。このため、図15に示すように、タンク100を蓄電池冷却部22の後に設けた場合に比較して、図16に示すように蓄電池流入口温度の温度変化を緩やかにすることができる。
【0127】
なお、図16において、破線(下流側)によって、タンク100を蓄電池冷却部22の後に設けた場合(図15参照)における温度変化を示し、実線(上流側)によって、タンク100を蓄電池冷却部22の前に配置した場合(図13参照)における温度変化を示す。また、図16の破線において、時点T301~時点T302で蓄電池流入口温度が一時的に上昇するのは、接続後、第2冷却回路30からの温度の高い冷却水が第1冷却回路20における冷却水と混じることなく流入するためだと考えられる。なお、一定時間経過後、冷却水が混じるので、蓄電池流入口温度が低下した状態で保たれる(時点T302~時点T303)。その後、第2冷媒温度の上昇に伴い、蓄電池流入口温度が上昇し、冷媒許容温度を超えることとなる(時点T304)。
【0128】
一方、タンク100を蓄電池冷却部22の前に配置した場合、接続後、第2冷却回路30からの温度の高い冷却水がタンク100内に一旦貯留され、温度の低い冷却水と混ざった後、蓄電池冷却部22に供給される。このため、図16の実線に示すように、蓄電池流入口温度の変化を緩やかにすることができる。また、第2冷媒温度が上昇しても、タンク100を蓄電池冷却部22の前に配置した場合に比較して、蓄電池流入口温度を緩やかに上昇させることができる。なお、この例において、冷媒許容温度を超える時点T304は、タンク100をどの位置に設けてもほぼ同じである。
【0129】
(上記実施形態の変形例)
上記実施形態における構成を以下に説明するように変更してもよい。なお、この変形例では、主に、上記各実施形態で説明した構成に対する相違部分について説明する。また、この変形例では、特に記載がなければ、基本構成として、第1実施形態のものを例に説明する。
【0130】
・上記実施形態では、インバータ12の要求電流量や、冷却水の温度などを予測していたが、予測を行わなくてもよい。また、第1冷媒流量や第2冷媒流量の変化に基づいて、どのように必要冷媒温度や第2冷媒温度が変化するかについても予測していたが、予測しなくてもよい。
【0131】
例えば、ECU50は、現時点におけるインバータ12の要求電流量を算出し、当該要求電流量に応じた必要冷媒温度を特定し、現時点における第2冷媒温度が当該必要冷媒温度よりも高い場合には、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31に冷却水を流入させるようにしてもよい。その際、第1冷媒流量は、第2冷媒温度と必要冷媒温度との温度差が大きいほど、多くすることが望ましい。
【0132】
・上記実施形態において、ECU50は、第2冷媒温度と必要冷媒温度との温度差が閾値以上である場合に、第1冷媒流量を最大とし、第2冷媒流量がゼロとなるように、第1ポンプ24、第1バルブ43、第2ポンプ35及び第2バルブ36を制御してもよい。このように、第1冷媒流量を多くする一方で、モータ冷却部33からラジエータ34への冷却水の流れを停止させることにより、第1冷却回路20からインバータ冷却部32へ流れ込む冷却水の量を最大限多くして、冷却水の温度を急速に低減させることが可能となる。これにより、第2冷媒温度が高い場合であっても、素早く第2冷媒温度を必要冷媒温度にすることができる。
【0133】
・上記実施形態において、ECU50は、ラジエータ34に流入する冷却水の温度が外気温よりも低い場合には、ラジエータ34への冷却水の流れを停止させるように第2ポンプ35及び第2バルブ36を制御してもよい。すなわち、ラジエータ34に流入する冷媒水の温度が外気温よりも低い場合、つまり、外気温のほうが高い場合、ラジエータ34を通過させると、冷却水の温度が上昇する場合がある。それに伴い、第2冷媒温度も高くなる可能性があるので、このような場合には、ラジエータ34への冷却水の流れを停止させることにより、効率的に第2冷媒温度を低減させることが可能となる。
【0134】
・上記実施形態において、冷媒の種類は、冷却水に限らず任意変更してもよい。気体を採用してもよい。
【0135】
・上記実施形態において、温度予測部54は、チラー流出口温度と、冷媒許容温度とを比較したが、蓄電池冷却部22の流出口付近における冷却水の温度である第1冷媒温度は、チラー流出口温度よりも当然高いため、チラー流出口温度の代わりに第1冷媒温度を採用してもよい。
【0136】
・上記実施形態において、第1冷媒温度が冷媒許容温度よりも高い場合には、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31に冷却水が流れないようにしたが、短時間であるならば、予測期間が終了するまで流してもよい。
【0137】
・上記実施形態において、ECU50は、電池温度マップを参照して、第1冷媒流量に基づいて、チラー流出口温度を予測していたが、予測しなくてもよい。取得したチラー流出口温度に基づいて判定してもよい。また、例えば、ステップS104,S105を省略してもよい。
【0138】
・上記実施形態において、ECU50は、蓄電池11の温度が電池温度許容値に達するまでの上昇時間を予測し、予測した上昇時間が、予測期間が終了するまでの時間よりも長いと判定した場合、第1冷媒通路21から第2冷媒通路31に冷媒が流れないようにしている。この別例として、上昇時間や予測期間を特定しなくてもよい。例えば、ステップS106,S107を省略してもよい。
【0139】
・上記実施形態において、ECU50は、予測した上昇時間が、予測期間が終了するまでの時間よりも長いか否かを判定したが、予測した上昇時間が、インバータ12の要求電流のうち最大値に達するまでの時間よりも長いか否かを判定してもよい。
【0140】
・上記実施形態において、ステップS104,S105と、ステップS106,S107の実行順序を変更してもよい。
【0141】
・上記実施形態において、熱交換器制御部56としてのECU50は、チラー23の冷却性能のみを制御していたが、チラー23の代わりにラジエータ34の冷却性能を制御してもよい。また、チラー23及びラジエータ34の冷却性能を制御してもよい。
【0142】
・上記実施形態において、第1ポンプ24、第1バルブ43、第2ポンプ35及び第2バルブ36の位置は適宜変更してもよい。例えば、図8(a)、図8(b)のようにしてもよい。また、第1バルブ43や第2バルブ36の代わりに3方弁に変更してもよい。例えば、図9(a)では、3方弁110を第1接続経路41と第2冷媒通路31との接続点に設けている。図9(b)では、3方弁110を第2接続経路42と第2冷媒通路31との接続点に設けている。
【0143】
・上記実施形態の第1冷却回路20において、図10に示すように、蓄電池11以外に冷却される冷却対象としての冷却機器200を配置してもよい。冷却機器200としては例えば、充電にかかわる装置やCPUなどである。
【0144】
・上記実施形態において、インバータ12は、DCDCコンバータが一体化したものであってもよい。また、インバータ12とモータ13とが一体化していてもよい。また、モータ13が省略され、インバータ12のみでもよい。モータ13のみやコンバータのみでもよい。これらは、すべて電駆動ユニットに相当する。電駆動ユニットとは、例えばPCU(パワーコントロールユニット)のことである。
【0145】
・上記実施形態において、ECU50は、第1冷却回路20と第2冷却回路30との接続後、所定時間が経過したか否かを判定し、所定時間が経過した場合には、接続を終了してもよい。つまり、ステップS111に移行してもよい。
【0146】
・上記実施形態において、ステップS120~121の処理は省略してもよい。
【0147】
・上記実施形態におけるインバータ電流量マップは、第2冷媒温度、蓄電池11の電圧、キャリア周波数をパラメータとして算出してもよい。なお、キャリア周波数は、キャリア周波数マップに基づいて、モータ13の回転数やモータ13の出力トルク(印加電流)をパラメータとして算出される。
【0148】
・上記実施形態の流量マップにおいて、各部流量は、各部圧損マップ、ポンプ出力マップ、バルブ圧損マップ、各部温度、バルブ開度などをパラメータとして算出してもよい。同様に、冷却水温度マップにおいて、第2冷媒温度は、第1冷媒流量、第2冷媒流量、ラジエータ流出口温度、第1冷媒温度をパラメータとして算出してもよい。また、ラジエータ流出口温度は、ラジエータ放熱性能マップ、ラジエータ流入口温度、第2冷媒流量、外気状態(温度、湿度、気圧)をパラメータとして算出してもよい。ラジエータ流入口温度は、モータ冷却部33の流出口におけるモータ流出口温度をパラメータとして算出してもよい。モータ流出口温度は、モータ冷却部33の流入口におけるモータ流入口温度及びモータ13の放熱温度をパラメータとして算出してもよい。モータ13の放熱温度は、モータ放熱量マップ、モータ13の温度、インバータ流量、インバータ流出口温度をパラメータとして算出してもよい。インバータ流出口温度は、インバータ流入口温度及びインバータ12の放熱温度をパラメータとして算出してもよい。インバータ12の放熱温度は、インバータ損失マップ、インバータ電流、キャリア周波数、電池電圧、インバータ流量、インバータ流入口温度をパラメータとして算出してもよい。
【0149】
・上記実施形態において、第1冷媒温度は、電池放熱温度及び蓄電池冷却部22の流入口の温度である蓄電池流入口温度をパラメータとして算出してもよい。電池放熱温度は、電池放熱量マップ、蓄電池11の電池本体温度、チラー流出口温度、及び蓄電池11からの電流量をパラメータとして算出してもよい。チラー流出口温度は、チラー吸熱量、チラー流入口温度及び蓄電池11からの電流量をパラメータとして算出してもよい。チラー流入口温度は、モータ流出口温度及び第1冷媒流量などをパラメータとして算出してもよい。
【0150】
・上記実施形態において、上昇温度は、蓄電池冷却部22の流入口の温度である蓄電池流入口温度、電流量、蓄電池11の電池本体温度、電池放熱量マップ、蓄電池11の熱容量、及び蓄電池11の電池温度上限をパラメータとして算出してもよい。
【0151】
・上記第3実施形態において、タンク100を複数設けてもよい。また、第1冷却回路20内において、タンク100の配置を任意に変更してもよい。例えば、図15に示すように、蓄電池冷却部22の後であって、第1接続点41aの前に配置してもよい。
【0152】
・上記第3実施形態において、タンク100を断熱材によって覆うことにより、冷却水の温度を維持する保温機能を設けてもよい。
【0153】
・上記第3実施形態において、タンク100を、チラー23及び蓄電池冷却部22に対して直列に接続したが、チラー23と蓄電池冷却部22とをつなぐ第1冷媒通路21に対して並列に接続してもよい。例えば、図17のように配置してもよい。そして、ECU50は、バルブ101を制御することによって、第1冷媒通路21とタンク100との間で冷却水の流入及び流出を制御してもよい。バルブ101の配置は任意に変更可能である。
【0154】
また、例えば、図18のようにタンク100を配置及び接続してもよい。すなわち、図17と同様に、タンク100を並列に接続し、さらに、タンク100と第2冷媒通路31と接続してもよい。図18では、第2冷媒通路31において、第2接続点41bに接続している。そして、ECU50は、バルブ101を制御することによって、タンク100から第2冷媒通路31へ冷却水を流出させるように制御してもよい。
【0155】
すなわち、ECU50は、第2冷媒温度が、必要冷媒温度よりも高い場合、タンク100から貯蔵された冷却水を第2冷媒通路31に供給するようにバルブ101を制御してもよい。図18において、ECU50は、貯蔵制御部として機能し、バルブ101が、タンク100への冷却水の流入量及び流出量を調整する調整部として機能する。これにより、第1冷媒温度の上昇を抑制しつつ、第2冷媒温度を低下させることが可能となる。なお、バルブ101の数及び配置は任意に変更可能である。
【0156】
・上記実施形態において、ステップS109の判定結果が否定の場合(第2冷媒温度≦必要冷媒温度となった場合)、ECU50は、ステップS111に移行して、第1冷却回路20と第2冷却回路30との接続を終了している。この別例として、ステップS109の判定結果が否定の場合、ECU50は、予測期間が終了したか否かを判定して、この判定結果が肯定の場合、ステップS111に移行してもよい。
【0157】
・上記実施形態の第1冷却回路20において、蓄電池冷却部22の前であって、チラー23の後における第1冷媒通路21の直径を、他の箇所における第1冷媒通路21の直径に比較して大きく形成してもよい。このようにすれば、蓄電池冷却部22の前であって、チラー23の後における第1冷媒通路21の容量を大きくすることができ、タンク100を設けた場合のように、第1冷媒温度の上昇を抑制しつつ、第2冷媒温度を低下させることが可能となる。また、タンク100を設けた場合のように、第1冷媒温度の上昇を緩やかにすることができる。
【0158】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0159】
10…冷却システム、11…蓄電池、12…インバータ、13…モータ、20…第1冷却回路、21…第1冷媒通路、22…蓄電池冷却部、23…チラー、24…第1ポンプ、30…第2冷却回路、31…第2冷媒通路、32…インバータ冷却部、33…モータ冷却部、34…ラジエータ、41…第1接続経路、42…第2接続経路、43…第1バルブ、50…ECU、51…電流量算出部、52…冷媒温度決定部、53…システム制御部。
図1
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