(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】ガラス材の製造方法及びガス流路用部材
(51)【国際特許分類】
C03B 19/00 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
C03B19/00 Z
(21)【出願番号】P 2020134692
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池本 政幸
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-169130(JP,A)
【文献】特開2002-173328(JP,A)
【文献】国際公開第2016/009882(WO,A1)
【文献】特開2017-007934(JP,A)
【文献】特開昭62-297235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00-8/04
C03B 11/00-11/16
C03B 19/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス原料塊を浮遊させた状態で加熱することによって、前記ガラス原料塊を加熱融解させた溶融ガラスを得る工程と、
前記溶融ガラスを冷却してガラス材を得る工程と、
を備え、
前記溶融ガラスを得る工程において、ガスを間欠的に噴出させることにより、前記ガラス原料塊を浮遊させ
、
前記溶融ガラスを冷却する工程において、ガスを間欠的に噴出させることにより、前記溶融ガラスを浮遊させた状態で冷却し、
前記溶融ガラスを冷却する工程における、ガスを間欠的に噴出させる周波数が、前記溶融ガラスを得る工程における、ガスを間欠的に噴出させる周波数よりも高い、ガラス材の製造方法。
【請求項2】
ガラス原料塊を浮遊させた状態で加熱することによって、前記ガラス原料塊を加熱融解させた溶融ガラスを得る工程と、
前記溶融ガラスを冷却してガラス材を得る工程と、
を備え、
前記溶融ガラスを得る工程において、ガスを間欠的に噴出させることにより、前記ガラス原料塊を浮遊させ、
前記溶融ガラスを冷却する工程において、ガスを連続的に噴出させることにより、前記溶融ガラスを浮遊させた状態で冷却する、ガラス材の製造方法。
【請求項3】
前記溶融ガラスを得る工程において、ガスを間欠的に通過させるガス流路用部材を通して、ガスを間欠的に噴出させることにより、前記ガラス原料塊を浮遊させる、請求項1
または2に記載のガラス材の製造方法。
【請求項4】
前記ガス流路用部材が、ガス流入孔及びガス流出孔を含むケース部材と、前記ケース部材内に収納されており、回転軸を中心に回転する回転ドラムとを有し、
前記回転ドラムが、前記回転軸が延びる方向において対向し合っている第1の主面及び第2の主面と、前記第1の主面及び前記第2の主面を接続する側面とを含み、
前記回転ドラムに、複数のガス流路が構成されており、
前記回転ドラムが回転するときに、前記複数のガス流路のうち1つのガス流路と、前記ガス流入孔及び前記ガス流出孔が連結される状態と、連結されない状態とが繰り返されるように、前記複数のガス流路、前記ガス流入孔及び前記ガス流出孔が配置されている、請求項
3に記載のガラス材の製造方法。
【請求項5】
前記回転ドラムの前記第2の主面が前記ガス流出孔側に位置しており、
前記回転ドラムの前記側面に、前記回転軸を中心とする周回方向において周期的に、複数の第1の孔部が設けられており、前記第2の主面に、前記周回方向において周期的に、複数の第2の孔部が設けられており、各前記第1の孔部と各前記第2の孔部とが連結されることにより、前記回転ドラム内に前記複数のガス流路が構成されている、請求項
4に記載のガラス材の製造方法。
【請求項6】
前記複数の第1の孔部を結んだ仮想線と接するように、前記ケース部材に前記ガス流入孔が設けられており、
前記複数の第2の孔部を結んだ仮想線と接するように、前記ケース部材に前記ガス流出孔が設けられている、請求項
5に記載のガラス材の製造方法。
【請求項7】
前記溶融ガラスを得る工程において、前記ガラス原料塊にレーザー光を照射することにより、前記ガラス原料塊を加熱融解させる、請求項1~
6のいずれか一項に記載のガラス材の製造方法。
【請求項8】
前記溶融ガラスを得る工程において、ガスを5Hz以上、1000Hz以下で間欠的に噴出させることにより、前記ガラス原料塊を浮遊させる、請求項1~
7のいずれか一項に記載のガラス材の製造方法。
【請求項9】
ガラス材の製造装置に用いられるガス流路用部材であって、
ガス流入孔及びガス流出孔を含むケース部材と、前記ケース部材内に収納されており、回転軸を中心に回転する回転ドラムとを有し、
前記回転ドラムが、前記回転軸が延びる方向において対向し合っている第1の主面及び第2の主面と、前記第1の主面及び前記第2の主面を接続する側面とを含み、
前記回転ドラムに、複数のガス流路が構成されており、
前記回転ドラムが回転するときに、前記複数のガス流路のうち1つのガス流路と、前記ガス流入孔及び前記ガス流出孔が連結される状態と、連結されない状態とが繰り返されるように、前記複数のガス流路、前記ガス流入孔及び前記ガス流出孔が配置されており、
ガスを間欠的に通過させる、ガス流路用部材。
【請求項10】
前記回転ドラムの前記第2の主面が前記ガス流出孔側に位置しており、
前記回転ドラムの前記側面に、前記回転軸を中心とする周回方向において周期的に、複数の第1の孔部が設けられており、前記第2の主面に、前記周回方向において周期的に、複数の第2の孔部が設けられており、各前記第1の孔部と各前記第2の孔部とが連結されることにより、前記回転ドラム内に前記複数のガス流路が構成されている、請求項
9に記載のガス流路用部材。
【請求項11】
前記複数の第1の孔部を結んだ仮想線と接するように、前記ケース部材に前記ガス流入孔が設けられており、
前記複数の第2の孔部を結んだ仮想線と接するように、前記ケース部材に前記ガス流出孔が設けられている、請求項
10に記載のガス流路用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無容器浮遊法によるガラス材の製造方法及びそれに用いるガス流路用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス材の製造方法として、無容器浮遊法に関する研究がなされている。例えば、特許文献1には、ガス浮遊炉で浮遊させたバリウムチタン系強誘電体の試料にレーザービームを照射して加熱溶融した後に、冷却することにより、バリウムチタン系強誘電体の試料をガラス化させる方法が記載されている。このように、無容器浮遊法では、容器の壁面との接触に起因する結晶化の進行を抑制できるため、従来の容器を用いた製造方法ではガラス化させることができなかった材料であってもガラス化し得る場合がある。従って、無容器浮遊法は、新規な組成を有するガラス材を製造し得る方法として注目に値すべき方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の無容器浮遊法では、ガラス原料塊から溶融ガラスを得る際に、浮上用のガスによって、加熱されているガラス原料塊の下部が過度に冷却されることがある。均質な溶融ガラスを得られていない状態でガラス原料塊の下部が過度に冷却されると、ガラス材が失透するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、ガラス材の失透が生じ難い、ガラス材の製造方法及びそれに用いるガス流路用部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガラス材の製造方法は、ガラス原料塊を浮遊させた状態で加熱することによって、ガラス原料塊を加熱融解させた溶融ガラスを得る工程と、溶融ガラスを冷却してガラス材を得る工程とを備え、溶融ガラスを得る工程において、ガスを間欠的に噴出させることにより、ガラス原料塊を浮遊させることを特徴とする。
【0007】
溶融ガラスを得る工程において、ガスを間欠的に通過させるガス流路用部材を通して、ガスを間欠的に噴出させることにより、ガラス原料塊を浮遊させることが好ましい。
【0008】
ガス流路用部材が、ガス流入孔及びガス流出孔を含むケース部材と、ケース部材内に収納されており、回転軸を中心に回転する回転ドラムとを有し、回転ドラムが、回転軸が延びる方向において対向し合っている第1の主面及び第2の主面と、第1の主面及び第2の主面を接続する側面とを含み、回転ドラムに、複数のガス流路が構成されており、回転ドラムが回転するときに、複数のガス流路のうち1つのガス流路と、ガス流入孔及びガス流出孔が連結される状態と、連結されない状態とが繰り返されるように、複数のガス流路、ガス流入孔及びガス流出孔が配置されていることが好ましい。
【0009】
回転ドラムの第2の主面がガス流出孔側に位置しており、回転ドラムの側面に、回転軸を中心とする周回方向において周期的に、複数の第1の孔部が設けられており、第2の主面に、周回方向において周期的に、複数の第2の孔部が設けられており、各第1の孔部と各第2の孔部とが連結されることにより、回転ドラム内に複数のガス流路が構成されていることが好ましい。
【0010】
複数の第1の孔部を結んだ仮想線と接するように、ケース部材にガス流入孔が設けられており、複数の第2の孔部を結んだ仮想線と接するように、ケース部材にガス流出孔が設けられていることが好ましい。
【0011】
溶融ガラスを得る工程において、ガラス原料塊にレーザー光を照射することにより、ガラス原料塊を加熱融解させることが好ましい。
【0012】
溶融ガラスを得る工程において、ガスを5Hz以上、1000Hz以下で間欠的に噴出させることにより、ガラス原料塊を浮遊させることが好ましい。
【0013】
溶融ガラスを冷却する工程において、ガスを間欠的に噴出させることにより、溶融ガラスを浮遊させた状態で冷却し、溶融ガラスを冷却する工程における、ガスを間欠的に噴出させる周波数が、溶融ガラスを得る工程における、ガスを間欠的に噴出させる周波数よりも高いことが好ましい。
【0014】
溶融ガラスを冷却する工程において、ガスを連続的に噴出させることにより、溶融ガラスを浮遊させた状態で冷却することが好ましい。
【0015】
本発明に係るガス流路用部材は、ガラス材の製造装置に用いられるガス流路用部材であって、ガス流入孔及びガス流出孔を含むケース部材と、ケース部材内に収納されており、回転軸を中心に回転する回転ドラムとを有し、回転ドラムが、回転軸が延びる方向において対向し合っている第1の主面及び第2の主面と、第1の主面及び第2の主面を接続する側面とを含み、回転ドラムに、複数のガス流路が構成されており、回転ドラムが回転するときに、複数のガス流路のうち1つのガス流路と、ガス流入孔及びガス流出孔が連結される状態と、連結されない状態とが繰り返されるように、複数のガス流路、ガス流入孔及びガス流出孔が配置されており、ガスを間欠的に通過させることを特徴とする。
【0016】
回転ドラムの第2の主面がガス流出孔側に位置しており、回転ドラムの側面に、回転軸を中心とする周回方向において周期的に、複数の第1の孔部が設けられており、第2の主面に、周回方向において周期的に、複数の第2の孔部が設けられており、各第1の孔部と各第2の孔部とが連結されることにより、回転ドラム内に複数のガス流路が構成されていることが好ましい。
【0017】
複数の第1の孔部を結んだ仮想線と接するように、ケース部材にガス流入孔が設けられており、複数の第2の孔部を結んだ仮想線と接するように、ケース部材にガス流出孔が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るガラス材の製造方法及びガス流路用部材によれば、ガラス材の失透が生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るガラス材の製造方法で用いる、製造装置の一例を示す模式的断面図である。
【
図2】成形型における成形面の構成を示す平面図である。
【
図3】加熱されているガラス原料塊が成形面上を移動し、または変形する様子を説明するための、模式的平面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るガラス材の製造方法において用いる、ガス流路用部材の断面図であって、回転ドラムにおける複数のガス流路のうち1つのガス流路と、ケース部材におけるガス流入孔及びガス流出孔とが連結されている状態を示す断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係るガラス材の製造方法において用いる、ガス流路用部材の断面図であって、回転ドラムにおける複数のガス流路のうち1つのガス流路と、ケース部材におけるガス流入孔及びガス流出孔とが連結されていない状態を示す断面図である。
【
図6】
図4に示すガス流路用部材の回転ドラムの正面図である。
【
図7】
図4に示すガス流路用部材の回転ドラムの底面図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態の変形例に係るガラス材の製造方法で用いる、製造装置の一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るガラス材の製造方法で用いる、製造装置の一例を示す模式的断面図である。ガラス材の製造装置10は、ガス流路用部材1と、成形型2とを有する。成形型2は、ガス流路用部材1を介してガス供給機構3に接続されている。なお、ガス供給機構3は、例えばガスボンベ等である。
【0022】
成形型2は成形面2aを有する。成形面2aは曲面形状を有する。成形面2aには、複数のガス噴出孔2bが設けられている。具体的には、
図2に示すように、複数のガス噴出孔2bは、成形面2aの中心から放射状に配列されている。もっとも、複数のガス噴出孔2bの配置は、
図2に示す例に限定されるものではない。なお、成形型2は、連続気孔を有する多孔質体により構成されていてもよい。この場合、ガス噴出孔2bは、連続気孔により構成される。
【0023】
図1に示すように、ガス供給機構3からガス流路用部材1を経由して、ガス噴出孔2bからガスが噴出される。これにより、ガラス原料塊などの浮遊対象物4を浮遊させることができる。ガスの種類は、特に限定されない。ガスは、例えば、空気や酸素であってもよいし、窒素ガスやアルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスであってもよい。
【0024】
以下において、製造装置10を用いたガラス材の製造方法について説明する。
図1に示すように、成形型2のガス噴出孔2bからガスを噴出させることにより、ガラス原料塊を成形面2a上で浮遊させる。すなわち、浮遊対象物4としてのガラス原料塊が成形面2aに接触していない状態で、ガラス原料塊を保持する。なお、本明細書においては、浮遊対象物4はガラス原料塊以外に、溶融ガラス等を指す場合もある。
【0025】
このとき、本実施形態においては、ガスを間欠的に噴出させる。
図1中の複数の矢印Aは、ガス流路用部材1側から、ガスが間欠的に供給されていることを示す。ガスの流量は、ガスを間欠的に噴出させてもガラス原料塊を浮遊させることができる流量とされている。
【0026】
ガラス原料塊としては、例えば、ガラス材の原料粉末をプレス成形等により一体化したもの、ガラス材の原料粉末をプレス成形等により一体化した後に焼結させた焼結体、目標ガラス組成と同等の組成を有する結晶の集合体等が挙げられる。また、ガラス原料塊の形状は、特に限定されず、例えば、レンズ状、球状、円柱状、多角柱状、直方体状、楕円球状等とすることができる。
【0027】
次に、ガラス原料塊を浮遊させた状態で、レーザー光照射装置5からレーザー光を照射することにより、ガラス原料塊を加熱融解させる。これにより、溶融ガラスを得る。次に、溶融ガラスを浮遊させた状態で冷却することにより、ガラス材を得ることができる。
【0028】
上記方法によれば、容器の壁面との接触に起因する結晶化の進行を抑制できる。よって、例えば、チタン酸バリウム系ガラス材、ランタン-ニオブ複合酸化物系ガラス材、ランタン-ニオブ-アルミニウム複合酸化物系ガラス材、ランタン-ニオブ-タンタル複合酸化物系ガラス材、ランタン-タングステン複合酸化物系ガラス材、ランタン-ニオブ-ガリウム複合酸化物系ガラス材、ランタン-チタン-ジルコニウム複合酸化物系ガラス材等を好適に製造し得る。
【0029】
本実施形態の特徴は、溶融ガラスを得る工程において、ガスを間欠的に噴出させることにより、ガラス原料塊を浮遊させることにある。これにより、ガスが過剰に供給され続けることを抑制することができる。そのため、溶融ガラスとなる前の不安定な状態である、完全に融解していないガラス原料塊の下部が過剰に冷却されることを抑制することができる。よって、ガラス原料塊が完全に融解した均質な溶融ガラスを、より確実に得ることができる。この溶融ガラスを冷却してガラス材を得るため、ガラス材の失透が生じ難い。
【0030】
従来は、溶融ガラスを得る工程においてガスを連続的に噴出させるため、ガスが過剰に供給されがちであった。そのため、
図3に示すように、加熱されたガラス原料塊が動き回り、または変形することがあった。このような場合には、加熱している最中のガラス原料塊に、レーザー光を安定的に照射することは困難となる。よって、溶融ガラスにおいて溶融ムラが生じるおそれがある。この結果、ガラス材において脈理が生じるおそれがある。
【0031】
これに対して、本実施形態においては、ガスの噴出により、成形面2aとガラス原料塊との間に乱流が生じたとしても、その直後にはガスの噴出は停止され、乱流は抑制される。このように、ガスを間欠的に噴出させることにより、強い乱流が継続的に生じることを抑制できる。これにより、溶融ガラスを得る工程において、加熱されたガラス原料塊が動き回ることを抑制することができ、ガラス原料塊の位置及び形状を安定化することができる。よって、ガラス原料塊にレーザー光を安定的に照射することができ、ガラス原料塊を安定的に加熱することができる。従って、溶融ガラスにおける溶融ムラを抑制することができる。この結果、ガラス材における脈理を抑制することができる。
【0032】
以下において、本実施形態の方法に用いるガス流路用部材1の具体的な構成を示す。
図4は、第1の実施形態に係るガラス材の製造方法において用いる、ガス流路用部材の断面図であって、回転ドラムにおける複数のガス流路のうち1つのガス流路と、ケース部材におけるガス流入孔及びガス流出孔とが連結されている状態を示す断面図である。
図5は、
図4とは異なる状態の、第1の実施形態に係るガラス材の製造方法において用いる、ガス流路用部材の断面図であって、回転ドラムにおける複数のガス流路のうち1つのガス流路と、ケース部材におけるガス流入孔及びガス流出孔とが連結されていない状態を示す断面図である。
【0033】
図4及び
図5に示すように、ガス流路用部材1は、ケース部材6と、回転ドラム7とを有する。ケース部材6は本体部8及び蓋部9を有する。本体部8には、ガス流入孔12及びガス流出孔13が設けられている。ケース部材6内に回転ドラム7が収納されている。ケース部材6と回転ドラム7は、いずれも断面が円形である。即ち、ケース部材6は有底円筒状の本体部8と円板状の蓋部9を有し、回転ドラム7は円柱状または円筒状である。回転ドラム7の直径は、特に限定されないが、例えば50mm~300mm程度である。
【0034】
回転ドラム7は回転ドラム本体14及び回転軸15を有する。なお、ケース部材6の蓋部9には、回転軸15が通るように、孔部が設けられている。回転軸15は、例えばモータに接続される。回転ドラム7は回転軸15を中心に回転する。この回転により、
図4及び
図5の状態が繰り返される。この繰り返しにより、ガス流路用部材1は、ガスを間欠的に通過させる。以下において、ガス流路用部材1の構成をより詳細に説明する。
【0035】
図6は、
図4に示すガス流路用部材の回転ドラムの正面図である。
図7は、
図4に示すガス流路用部材の回転ドラムの底面図である。
【0036】
図6に示すように、回転ドラム本体14は、第1の主面14a、第2の主面14b及び側面14cを有する。第1の主面14a及び第2の主面14bは、回転軸15が延びる方向において対向し合っている。第2の主面14bがケース部材6のガス流出孔13側に位置する。第1の主面14a及び第2の主面14bは側面14cにより接続されている。
【0037】
回転ドラム7には複数のガス流路16が構成されている。具体的には、回転ドラム本体14の側面14cに、複数の第1の孔部17が設けられている。複数の第1の孔部17は、回転軸15を中心とする周回方向において周期的に設けられている。
図7に示すように、回転ドラム7の第2の主面14bには複数の第2の孔部18が設けられている。複数の第2の孔部18は、回転軸15を中心とする周回方向において周期的に設けられている。各第1の孔部17と各第2の孔部18とが連結されることにより、回転ドラム7内に複数のL字型のガス流路16が構成されている。なお、以下においては、
図6に示すように、複数の第1の孔部17を結んだ仮想線を第1の仮想線Bとする。
図7に示すように、複数の第2の孔部18を結んだ仮想線を第2の仮想線Cとする。
【0038】
図4に示す状態では、複数のガス流路16のうち1つのガス流路と、ガス流入孔12及びガス流出孔13とが連結されている。具体的には、
図6に示す第1の仮想線Bと接するように、ケース部材6にガス流入孔12が設けられている。これにより、第1の孔部17及びガス流入孔12の位置が一致する(第1の孔部17及びガス流入孔12が重なる)ときには、該第1の孔部17とガス流入孔12とが連結される。
図7に示す第2の仮想線Cと接するように、ケース部材6にガス流出孔13が設けられている。これにより、第2の孔部18及びガス流出孔13の位置が一致する(第2の孔部18及びガス流出孔13が重なる)ときには、該第2の孔部18とガス流出孔13とが連結される。このときに、ガスがガス流路16を通り、
図1に示すガス噴出孔2bから噴出される。
【0039】
他方、
図5に示す状態では、ガス流路16と、ガス流入孔12及びガス流出孔13とは連結されない。より具体的には、複数の第1の孔部17のうちいずれもガス流入孔12の位置と一致していない(複数の第1の孔部17のうちいずれもガス流入孔12と重なっていない)。従って、ガス流入孔12の回転ドラム本体14側は、回転ドラム本体14の側面14cにより塞がれている。同様に、複数の第2の孔部18のうちいずれもガス流出孔13の位置と一致していない(複数の第2の孔部18のうちいずれもガス流出孔13と重なっていない)。従って、ガス流出孔13の回転ドラム本体14側は、回転ドラム本体14の第2の主面14bにより塞がれている。そのため、このときには、ガスの流路が遮断される。よって、ガスはガス噴出孔2bから噴出されない。
【0040】
上記のように、回転ドラム7は回転軸15を中心に回転する。それによって、
図4に示す状態及び
図5に示す状態が繰り返される。具体的には、複数のガス流路16のうち1つのガス流路と、ガス流入孔12及びガス流出孔13とが連結される状態から、連結されない状態となり、さらに上記ガス流路と隣接するガス流路と、ガス流入孔12及びガス流出孔13とが連結される状態となる。この繰り返しにより、ガスが間欠的に噴出される。
【0041】
もっとも、ガス流路用部材1の構成は上記に限定されない。複数のガス流路16のうち1つのガス流路と、ガス流入孔12及びガス流出孔13とが連結される状態と、連結されない状態とが繰り返されるように、複数のガス流路16、ガス流入孔12及びガス流出孔13が配置されていればよい。例えば上記実施形態において、ガス流路用部材1のガスの流入、流出方向を反対にしてもよい。具体的にはガス流出孔13をガス流入孔に、ガス流入孔12をガス流出孔としてもよい。また回転ドラム7の第1の主面14a及び第2の主面14bにそれぞれ開口部を有し、且つ回転軸15と平行して複数のガス流路16が回転ドラム7内に設けられ、蓋部9及びケース部材6の前記各開口部と対応する位置にガス流入孔12及びガス流出孔13が設けられたガス流路用部材1を用いてもよい。
【0042】
溶融ガラスを得る工程においては、ガスを5Hz以上で間欠的に噴出させることが好ましい。ガスの噴出を50Hz以上とすることがより好ましく、100Hz以上とすることがさらに好ましい。それによって、ガラス原料塊を好適に浮遊させることができる。一方で、ガスの噴出を1000Hz以下とすることが好ましく、500Hz以下とすることがより好ましく、200Hz以下とすることがさらに好ましい。それによって、ガラス原料塊の下部が過剰に冷却されることを効果的に抑制することができ、かつガラス原料塊の位置及び形状を効果的に安定化することができる。従って、ガラス材の失透及び脈理を効果的に抑制することができる。
【0043】
ガスの噴出における周波数の調整は、回転ドラム7の回転速度を調整することにより行うことができる。
【0044】
ここで、ガスを噴出する時間をtON、ガスの噴出を停止する時間をtOFF、ガスを噴出する時間tONとガスの噴出を停止する時間tOFFとの比をtON/tOFFとする。tON/tOFFは、0.2以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2以上であることがさらに好ましい。それによって、ガラス原料塊を好適に浮遊させることができる。一方で、tON/tOFFは、10以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましい。それによって、ガラス原料塊の下部が過剰に冷却されることを効果的に抑制することができ、かつガラス原料塊の位置及び形状を効果的に安定化することができる。
【0045】
tON/tOFFの調整は、回転ドラム7における各第2の孔部18の径と各第2の孔部18のピッチを調整することにより行うことができる。なお、各第1の孔部17の径は、例えば、各第2の孔部18の径と同じにすればよい。各第2の孔部18のピッチに対する径が大きいほど、tON/tOFFは大きくなり、各第2の孔部18のピッチに対する径が小さいほど、tON/tOFFは小さくなる。各第1の孔部17の径及び各第2の孔部18の径の大きさは、特に限定されないが、例えば1mm~10mm程度である。
【0046】
ところで、ガスの噴出の周波数を、溶融ガラスを得る工程と、溶融ガラスを冷却する工程とにおいて異ならせてもよい。具体的には、溶融ガラスを冷却する工程における、ガスを間欠的に噴出させる周波数が、溶融ガラスを得る工程における、ガスを間欠的に噴出させる周波数よりも高いことが好ましい。それによって、溶融ガラスを効果的に冷却することができ、生産性を高めることができる。なお、ガラス原料塊から溶融ガラスを得た後においては、溶融ガラスを得る工程においてよりも、浮遊対象物4の位置及び形状の安定性は高まる。これは溶融ガラスの均質性が比較的高く、重心が比較的安定しているためである。よって、溶融ガラスを得る工程と、溶融ガラスを冷却する工程とにおいてガスの噴出の周波数を異ならせても、ガラス材の失透及び脈理を抑制できるという、上記効果を得られる。
【0047】
溶融ガラスを冷却する工程においては、ガスを100Hz以上で間欠的に噴出させることが好ましい。ガスの噴出を200Hz以上とすることがより好ましく、300Hz以上とすることがさらに好ましい。それによって、溶融ガラスを容易に、かつ効果的に冷却することができる。溶融ガラスを得る工程と溶融ガラスを冷却する工程とにおいて、ガスの噴出の周波数を異ならせる場合には、上記各工程毎に回転ドラム7の回転速度を異ならせればよい。
【0048】
(変形例)
図8は、第1の実施形態の変形例に係るガラス材の製造方法で用いる、製造装置の一例を示す模式的断面図である。本変形例は、溶融ガラスを冷却する工程において、ガスを連続的に噴出させることにより、溶融ガラスを浮遊させた状態で冷却する点において、第1の実施形態と異なる。
【0049】
図8に示す製造装置20においては、第1のガス供給経路D及び第2のガス供給経路Eが設けられている。第1のガス供給経路Dは、第1の実施形態と同様に構成されている。具体的には、第1のガス供給経路Dにおいては、ガス供給機構3から、ガス流路用部材1を経て、ガス噴出孔2bにガスを供給する。他方、第2のガス供給経路Eは、ガス供給機構23から、ガス流路用部材1を経ずに、ガス噴出孔2bにガスを供給する。
【0050】
溶融ガラスを得る工程においては、第1の実施形態と同様に、第1のガス供給経路Dを用い、ガスを間欠的に噴出させる。次に、溶融ガラスを得た後に、第1のガス供給経路Dから第2のガス供給経路Eに切り替える。これにより、溶融ガラスを冷却する工程においては、第2のガス供給経路Eを用い、ガスを連続的に噴出させる。それによって、溶融ガラスを効果的に冷却することができ、生産性を高めることができる。さらに、第1の実施形態と同様に、ガラス材の失透及び脈理を抑制することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…ガス流路用部材
2…成形型
2a…成形面
2b…ガス噴出孔
3…ガス供給機構
4…浮遊対象物
5…レーザー光照射装置
6…ケース部材
7…回転ドラム
8…本体部
9…蓋部
10…製造装置
12…ガス流入孔
13…ガス流出孔
14…回転ドラム本体
14a…第1の主面
14b…第2の主面
14c…側面
15…回転軸
16…ガス流路
17…第1の孔部
18…第2の孔部
20…製造装置
23…ガス供給機構
D…第1のガス供給経路
E…第2のガス供給経路