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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20240116BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240116BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240116BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20240116BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240116BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240116BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240116BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20240116BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C08L63/00 Z
C08L75/04
C08L67/00
C08K5/3415
C08K3/013
H01L23/30 R
H01L23/14 R
H05K1/03 610L
H05K1/03 610Q
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020141248
(22)【出願日】2020-08-24
(65)【公開番号】P2022036841
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2023-06-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪内 啓之
(72)【発明者】
【氏名】池平 秀
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-132507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00
C08L 75/04
C08L 67/00
C08K 5/3415
C08K 3/013
H01L 23/29
H01L 23/14
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)無機充填剤、
(C-1)エラストマー、及び
(C-2)マレイミド基を含有する化合物、を含み、
樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、(C-1)成分の含有量(質量%)をC1とし、(C-2)成分の含有量(質量%)をC2としたとき、C1/C2が0.1以上10以下である、ファンアウト型パッケージの再配線層形成用の樹脂組成物。
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂、
(B)無機充填剤、
(C-1)エラストマー、及び
(C-2)マレイミド基を含有する化合物、を含み、
(C-2)成分が、(C-2a)置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物、及び(C-2b)芳香環と脂肪族炭化水素環とが縮合した骨格を含むマレイミド化合物、から選択される1種以上であり、
樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、(C-1)成分の含有量(質量%)をC1とし、(C-2)成分の含有量(質量%)をC2としたとき、C1/C2が0.1以上10以下である、樹脂組成物。
【請求項3】
(C-1)成分の含有量が、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、20質量%以上70質量%以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(C-2)成分の含有量が、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、1質量%以上40質量%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(C-1)成分及び(C-2)成分の合計含有量が、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、21質量%以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
半導体チップパッケージの絶縁層用である、請求項2~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
ファンアウト型パッケージの再配線層形成用である、請求項2~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(C-2)成分が、(C-2a)置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物、及び(C-2b)芳香環と脂肪族炭化水素環とが縮合した骨格を含むマレイミド化合物、から選択される1種以上である、請求項1、3~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(C-2)成分が、下記一般式(2)で表される、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化1】
(一般式(2)中、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表す。)
【請求項10】
一般式(2)中、Lは、酸素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数6~24のアリーレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1~50のアルキレン基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基を表す、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
(C-2)成分が、下記一般式(5)で表される、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化2】
(一般式(5)中、Rはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表し、Aはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。nは1~10の整数を表す。)
【請求項12】
一般式(5)中、Aは置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の環状の2価の脂肪族基;置換基を有していてもよいベンゼン環を有する2価の基;置換基を有していてもよいフタルイミド環を有する2価の基;又は置換基を有していてもよいピロメリット酸ジイミド環を有する2価の基を表す、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
(C-1)成分が、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、ポリエステル構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂である、請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
(C-1)成分が、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリエステル構造、及びポリカーボネート構造のいずれかを有する樹脂である、請求項1~13のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
支持体と、該支持体上に設けられた、請求項1~14のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物により形成された硬化物層を含む、回路基板。
【請求項17】
請求項16に記載の回路基板と、該回路基板上に搭載された半導体チップとを含む、半導体チップパッケージ。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物により形成された再配線形成層を含む、半導体チップパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、樹脂組成物を使用した、樹脂シート、回路基板、及び半導体チップパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板、半導体チップパッケージ等の回路基板に用いる絶縁層を形成する樹脂組成物として、例えば特許文献1には、特定の線状変性ポリイミド樹脂と熱硬化性樹脂とを含有する熱硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-37083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、特許文献1のような熱硬化性樹脂組成物をファンアウトパッケージの再配線形成層に用いた場合、その再配線形成層は、シリコンチップ、及び再配線層に隣接するポリイミド樹脂との密着性に劣ることを見出した。また、高温保存試験によって強度が低下し、高温保存試験後に再配線層が剥離(デラミネーション)してしまうことも見出した。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、シリコンチップ及びポリイミド樹脂との密着性に優れ、高温保存試験による強度の低下が抑制された硬化物を得ることができる樹脂組成物;当該樹脂組成物を使用した樹脂シート、回路基板、及び半導体チップパッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題につき鋭意検討した結果、所定のマレイミド化合物と、エラストマーとを組み合わせて樹脂組成物に用いることで、シリコンチップ及びポリイミド樹脂との密着性に優れ、高温保存試験による強度の低下が抑制された硬化物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)エポキシ樹脂、
(B)無機充填剤、
(C-1)エラストマー、及び
(C-2)マレイミド基を含有する化合物、を含む、ファンアウト型パッケージの再配線層形成用の樹脂組成物。
[2] (A)エポキシ樹脂、
(B)無機充填剤、
(C-1)エラストマー、及び
(C-2)マレイミド基を含有する化合物、を含み、
(C-2)成分が、(C-2a)置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物、及び(C-2b)芳香環と脂肪族炭化水素環とが縮合した骨格を含むマレイミド化合物、から選択される1種以上である、樹脂組成物。
[3] 樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、(C-1)成分の含有量(質量%)をC1とし、(C-2)成分の含有量(質量%)をC2としたとき、C1/C2が0.1以上10以下である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (C-1)成分の含有量が、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、20質量%以上70質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] (C-2)成分の含有量が、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、1質量%以上40質量%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] (C-1)成分及び(C-2)成分の合計含有量が、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、21質量%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] 半導体チップパッケージの絶縁層用である、[2]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] ファンアウト型パッケージの再配線層形成用である、[2]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] (C-2)成分が、(C-2a)置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物、及び(C-2b)芳香環と脂肪族炭化水素環とが縮合した骨格を含むマレイミド化合物、から選択される1種以上である、[1]、[3]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] (C-2)成分が、下記一般式(2)で表される、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化1】
(一般式(2)中、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表す。)
[11] 一般式(2)中、Lは、酸素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数6~24のアリーレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1~50のアルキレン基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基を表す、[10]に記載の樹脂組成物。
[12] (C-2)成分が、下記一般式(5)で表される、[1]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化2】
(一般式(5)中、Rはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表し、Aはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。nは1~10の整数を表す。)
[13] 一般式(5)中、Aは置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の環状の2価の脂肪族基;置換基を有していてもよいベンゼン環を有する2価の基;置換基を有していてもよいフタルイミド環を有する2価の基;又は置換基を有していてもよいピロメリット酸ジイミド環を有する2価の基を表す、[12]に記載の樹脂組成物。
[14] (C-1)成分が、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、ポリエステル構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂である、[1]~[13]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[15] (C-1)成分が、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリエステル構造、及びポリカーボネート構造のいずれかを有する樹脂である、[1]~[14]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[16] 支持体と、該支持体上に設けられた、[1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
[17] [1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物により形成された硬化物層を含む、回路基板。
[18] [17]に記載の回路基板と、該回路基板上に搭載された半導体チップとを含む、半導体チップパッケージ。
[19] [1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物により形成された再配線形成層を含む、半導体チップパッケージ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シリコンチップ及びポリイミド樹脂との密着性に優れ、高温保存試験による強度の低下が抑制された硬化物を得ることができる樹脂組成物;当該樹脂組成物を使用した樹脂シート、回路基板、及び半導体チップパッケージを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0010】
[樹脂組成物]
本発明の第1実施形態の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)無機充填剤、(C-1)エラストマー、及び(C-2)マレイミド基を含有する化合物を含む。以下、(C-1)成分及び(C-2)成分をまとめて「(C)成分」ということがある。本発明では、(A)~(C)成分を含有させることで、シリコンチップ及びポリイミド樹脂との密着性に優れ、高温保存試験による強度の低下が抑制された硬化物を得ることができる。第1実施形態の樹脂組成物は、ファンアウト型パッケージの再配線層を形成するための再配線形成層を形成するための樹脂組成物(ファンアウト型パッケージの再配線層形成用の樹脂組成物)として使用される。中でも、第1実施形態の樹脂組成物は、ファンアウト型WLPの再配線形成層を形成するための樹脂組成物(ファンアウト型WLPの再配線層形成用の樹脂組成物)、ファンアウト型PLPの再配線形成層を形成するための樹脂組成物(ファンアウト型PLPの再配線層形成用の樹脂組成物)として好適に使用することができる。
【0011】
また、本発明の第2実施形態の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)無機充填剤、(C-1)エラストマー、及び(C-2)マレイミド基を含有する化合物を含み、(C-2)成分が、(C-2a)置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物、及び(C-2b)芳香環と脂肪族炭化水素環とが縮合した骨格を含むマレイミド化合物、から選択される1種以上である。本発明では、(A)~(C)成分を含有させることで、シリコンチップ及びポリイミド樹脂との密着性に優れ、高温保存試験による強度の低下が抑制された硬化物を得ることができる。
【0012】
第1及び第2実施形態の樹脂組成物は、(A)~(C)成分に組み合わせて、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(D)硬化剤、(E)硬化促進剤、及び(F)その他の添加剤等が挙げられる。以下、第1及び第2実施形態の樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。なお、第1及び第2実施形態の樹脂組成物をまとめて「樹脂組成物」ということがある。
【0013】
<(A)エポキシ樹脂>
第1及び第2実施形態の樹脂組成物は、(A)成分として(A)エポキシ樹脂を含む。(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、(A)成分としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂から選択される1種以上が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂のいずれかがより好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂であることがさらに好ましい。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(A)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0015】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂を用いてもよく、固体状エポキシ樹脂を用いてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いてもよいが、本発明の効果を顕著に得る観点から、液状エポキシ樹脂のみを用いることが好ましい。
【0016】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0017】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0018】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0020】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0021】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
(A)エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.01~1:20、より好ましくは1:0.05~1:10、特に好ましくは1:0.1~1:1である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。さらに、通常は、樹脂シートの形態で使用する場合に、適度な粘着性がもたらされる。また、通常は、樹脂シートの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する。さらに、通常は、十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる。
【0023】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq~5000g/eq、より好ましくは50g/eq~3000g/eq、さらに好ましくは80g/eq~2000g/eq、さらにより好ましくは110g/eq~1000g/eqである。この範囲となることで、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0024】
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。
樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0025】
(A)エポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0026】
(A)エポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。「樹脂成分」とは、樹脂組成物の不揮発成分のうち、(B)無機充填材を除いた成分をいう。
【0027】
<(B)無機充填材>
第1及び第2実施形態の樹脂組成物は、(B)成分として(B)無機充填材を含む。無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカ、アルミナが好適であり、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(B)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
(B)成分の市販品としては、例えば、デンカ社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;などが挙げられる。
【0029】
(B)成分の比表面積としては、好ましくは1m/g以上、より好ましくは2m/g以上、特に好ましくは3m/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m/g以下、50m/g以下又は40m/g以下である。比表面積は、BET全自動比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0030】
(B)成分の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0031】
(B)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出する。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」、島津製作所社製「SALD-2200」等が挙げられる。
【0032】
(B)成分は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、アミノシラン系カップリング剤が好ましい。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0033】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM503」(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0034】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0035】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下が更に好ましい。
【0036】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0037】
(B)成分の含有量(体積%)は、本発明の効果を顕著に得る観点から、観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100体積%とした場合、好ましくは30体積%以上、より好ましくは40体積%以上、さらに好ましくは50体積%以上である。また、好ましくは80体積%以下、より好ましくは70体積%以下、さらに好ましくは60体積%以下である。
【0038】
(B)成分の含有量(質量%)は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0039】
<(C)成分>
第1実施形態の樹脂組成物は、(C)成分として、(C-1)エラストマー、及び(C-2)マレイミド基を含有する化合物を組み合わせて含む。また、第2実施形態の樹脂組成物は、(C)成分として、(C-1)エラストマー、及び(C-2)マレイミド基を含有する化合物を組み合わせて含み、(C-2)成分が、(C-2a)置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物、及び(C-2b)芳香環と脂肪族炭化水素環とが縮合した骨格を含むマレイミド化合物、から選択される1種以上である。
【0040】
(C-1)成分及び(C-2)成分を併用することにより、シリコンチップ及びポリイミド樹脂との密着性に優れ、高温保存試験による強度の低下が抑制された硬化物を得ることが可能となる。また、(C-1)成分は、通常、分子構造が柔軟であるので硬化物を柔軟にできる。よって、(C-1)成分を単独で用いることで反りの発生が抑制されるが、樹脂組成物に含まれる成分との相分離が大きくなり、シリコンチップ及びポリイミドとの密着性が低下しやすくなる。本発明では、(C-1)成分に加えて(C-2)成分を併用するので相分離の発生が抑制され、その結果前記の密着性が向上する。
【0041】
-(C-1)エラストマー-
第1及び第2実施形態の樹脂組成物は、(C)成分における(C-1)成分として、(C-1)エラストマーを含有する。(C-1)成分を樹脂組成物に含有させることで、本発明の効果を顕著に得ることができる。また、通常、(C-1)成分を樹脂組成物に含有させることで樹脂組成物の硬化物の反りを抑制することが可能になる。(C-1)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
(C-1)成分としては、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、ポリエステル構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂であることが好ましく、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリエステル構造、またはポリカーボネート構造から選択される1種または2種以上の構造を有する樹脂であることがより好ましく、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリエステル構造、及びポリカーボネート構造のいずれかを有する樹脂であることがさらに好ましい。樹脂組成物が上記の構造を有するエラストマーに加えて(C-2)成分を含むことで、通常、シリコンチップ及びポリイミド樹脂に対する硬化物の密着性を効果的に高めたり、高温保存試験による強度の低下を効果的に抑制したりすることが可能となる。なお、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレート並びにそれらの組み合わせを包含する用語である。これらの構造は、エラストマー分子の主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。
【0043】
(C-1)成分は、(C-2)成分との併用によりシリコンチップ及びポリイミド樹脂に対する硬化物の密着性を効果的に高めたり、高温保存試験による強度の低下を効果的に抑制したりする観点から、高分子量であることが好ましい。(C-1)成分の数平均分子量(Mn)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは1500以上、さらに好ましくは3000以上、5000以上である。上限は、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは900,000以下である。数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0044】
(C-1)成分は、(C-2)成分との併用によりシリコンチップ及びポリイミド樹脂に対する硬化物の密着性を効果的に高めたり、高温保存試験による強度の低下を効果的に抑制したりする観点から、ガラス転移温度(Tg)が低いことが好ましい。(C-1)成分のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。好ましくは―60℃以上、より好ましくは―50℃以上、さらに好ましくは―45℃以上である。
【0045】
(C-1)成分は、(A)エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させて剥離強度を高めるという観点から、(A)エポキシ樹脂と反応し得る官能基を有することが好ましい。なお、(A)エポキシ樹脂と反応し得る官能基としては、加熱によって現れる官能基も含めるものとする。
【0046】
好適な一実施形態において、(A)エポキシ樹脂と反応し得る官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基からなる群から選択される1種以上の官能基である。中でも、当該官能基としては、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基が好ましく、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基がより好ましく、フェノール性水酸基が特に好ましい。ただし、官能基としてエポキシ基を含む場合、(C-1)成分の重量平均分子量(Mw)は、5,000以上であることが好ましい。
【0047】
(C-1)成分の好適な実施形態は、ポリブタジエン構造を含有する樹脂であり、ポリブタジエン構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。なお、ポリブタジエン構造は、一部又は全てが水素添加されていてもよい。ポリブタジエン構造を含有する樹脂をポリブタジエン樹脂という。
【0048】
ポリブタジエン樹脂の具体例としては、クレイバレー社製の「Ricon 130MA8」、「Ricon 130MA13」、「Ricon 130MA20」、「Ricon 131MA5」、「Ricon 131MA10」、「Ricon 131MA17」、「Ricon 131MA20」、「Ricon 184MA6」(酸無水物基含有ポリブタジエン)、日本曹達社製の「GQ-1000」(水酸基、カルボキシル基導入ポリブタジエン)、「G-1000」、「G-2000」、「G-3000」(両末端水酸基ポリブタジエン)、「GI-1000」、「GI-2000」、「GI-3000」(両末端水酸基水素化ポリブタジエン)、ナガセケムテックス社製の「FCA-061L」(水素化ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)等が挙げられる。一実施形態として、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号に記載のポリイミド)、フェノール性水酸基含有ブタジエン等が挙げられる。該ポリイミド樹脂のブタジエン構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0049】
(C-1)成分の好適な実施形態は、ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂である。ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂をポリ(メタ)アクリル樹脂という。ポリ(メタ)アクリル樹脂としては、ナガセケムテックス社製のテイサンレジン、根上工業社製の「ME-2000」、「W-116.3」、「W-197C」、「KG-25」、「KG-3000」等が挙げられる。
【0050】
(C-1)成分の好適な実施形態は、ポリカーボネート構造を含有する樹脂である。ポリカーボネート構造を含有する樹脂をポリカーボネート樹脂という。ポリカーボネート樹脂としては、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。またヒドロキシル基末端ポリカーボネート、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミドを使用することもできる。該ポリイミド樹脂のカーボネート構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、国際公開第2016/129541号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0051】
また、(C-1)成分の他の実施形態としては、ポリシロキサン構造を含有する樹脂である。ポリシロキサン構造を含有する樹脂をシロキサン樹脂という。シロキサン樹脂としては、例えば、信越シリコーン社製の「SMP-2006」、「SMP-2003PGMEA」、「SMP-5005PGMEA」、アミン基末端ポリシロキサンおよび四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(国際公開第2010/053185号、特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等)等が挙げられる。
【0052】
(C-1)成分の他の実施形態としては、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造を含有する樹脂である。ポリアルキレン構造を含有する樹脂をポリアルキレン樹脂といい、ポリアルキレンオキシ構造を含有する樹脂をポリアルキレンオキシ樹脂という。ポリアルキレンオキシ構造は、炭素原子数2~15のポリアルキレンオキシ構造が好ましく、炭素原子数3~10のポリアルキレンオキシ構造がより好ましく、炭素原子数5~6のポリアルキレンオキシ構造がさらに好ましい。ポリアルキレン樹脂、ポリアルキレンオキシ樹脂の具体例としては、旭化成せんい社製の「PTXG-1000」、「PTXG-1800」等が挙げられる。
【0053】
(C-1)成分の他の実施形態としては、ポリイソプレン構造を含有する樹脂である。ポリイソプレン構造を含有する樹脂をポリイソプレン樹脂という。ポリイソプレン樹脂の具体例としては、クラレ社製の「KL-610」、「KL613」等が挙げられる。
【0054】
(C-1)成分の他の実施形態としては、ポリイソブチレン構造を含有する樹脂である。ポリイソブチレン構造を含有する樹脂をポリイソブチレン樹脂という。ポリイソブチレン樹脂の具体例としては、カネカ社製の「SIBSTAR-073T」(スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体)、「SIBSTAR-042D」(スチレン-イソブチレンジブロック共重合体)等が挙げられる。
【0055】
(C-1)成分の好適な実施形態は、ポリエステル構造を含有する樹脂である。ポリエステル構造を含有する樹脂をポリエステル樹脂という。ポリエステル樹脂としては、東洋紡社製の「バイロン600」、「バイロン560」、「バイロン230」、「バイロンGK-360」、「バイロンBX-1001」、三菱ケミカル社製の「LP-035」、「LP-011」、「TP-220」、「TP-249」、「SP-185」等が挙げられる。
【0056】
(C-1)エラストマーの含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。上限は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下である。
【0057】
(C-1)エラストマーの含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上である。上限は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、45質量%以下である。
【0058】
-(C-2)マレイミド基を含有する化合物-
第1及び第2実施形態の樹脂組成物は、(C)成分における(C-2)成分として、(C-2)マレイミド基を含有する化合物を含有する。(C-2)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。(C-2)成分を(C-1)成分と併用して樹脂組成物に含有させることで、シリコンチップ及びポリイミド樹脂との密着性に優れ、高温保存試験による強度の低下が抑制された硬化物を得ることが可能となる。(C-2)成分はマレイミド基を含有する。このマレイミド基はシリコンチップ上に残存するシラノールと反応することで、硬化物とシリコンチップとの間の密着性が向上すると考えられる。また、マレイミド基とシラノールとの反応は強固であるため、高温保存試験による強度の低下が抑制される。さらに、ポリイミド樹脂のイミド構造と、マレイミド基とは構造が似ていることから、樹脂組成物とポリイミドとの濡れ性がよくなり、その結果、樹脂組成物の硬化物とポリイミド樹脂との密着性が向上するとともに、高温保存試験による強度の低下が抑制されると考えられる。
【0059】
(C-2)成分は、下記式(1)で表されるマレイミド基を分子中に含有する。
【化3】
【0060】
(C-2)成分は、式(1)で表されるマレイミド基を分子中に含有する化合物を用いることができる。(C-2)成分の1分子当たりのマレイミド基の数は、1つでもよく、2つ以上でもよく、2つが好ましい。
【0061】
第1実施形態の樹脂組成物における(C-2)成分としては、
(C-2a)置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物、及び
(C-2b)芳香環と脂肪族炭化水素環とが縮合した骨格を含むマレイミド化合物、
から選択される1種以上であることが好ましい。
また、第2実施形態の樹脂組成物における(C-2)成分としては、
(C-2a)置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物、及び
(C-2b)芳香環と脂肪族炭化水素環とが縮合した骨格を含むマレイミド化合物、
から選択される1種以上である。
(C-2)成分としては、(C-2a)成分及び(C-2b)成分を単独で用いてもよく、併用して用いてもよい。また、(C-2b)成分は、(C-2a)成分に該当するものは除かれる。
【0062】
{(C-2a)成分}
(C-2a)成分は、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物である。(C-2a)成分は、例えば、脂肪族アミン化合物(ダイマー酸骨格を有するジアミン化合物など)と、マレイン酸無水物と、必要に応じてテトラカルボン酸二無水物とを含む成分をイミド化反応させることにより得ることができる。
【0063】
(C-2a)成分は炭素原子数が5以上の脂肪族基の長い炭素鎖を有する。この炭素鎖の作用により、分子構造が柔軟である。よって、硬化物を柔軟にできるので、高温保存試験時に生じうる応力の集中を抑制できる。したがって、破壊の起点となりうる応力の集中点の発生が高温保存試験後において抑制されるので、硬化物の強度を向上させることができる。また、分子構造が柔軟な(C-2a)成分の作用により、硬化物の靱性を向上させることができるので、これによっても、硬化物の破壊を抑制でき、シリコンチップ及びポリイミド樹脂との密着性を向上させることができる。
【0064】
炭素原子数5以上の脂肪族基は、1価でもよく、2価でもよく、3価以上でもよい。炭素原子数5以上の脂肪族基は、飽和脂肪族基であってもよく、不飽和脂肪族基であってもよい。炭素原子数5以上の脂肪族基としては、例えば、アルキル基、アルキレン基、アルケニレン基等が挙げられる。(C-2a)成分は、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基、及び、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルケニレン基からなる群より選ばれる少なくとも一の炭化水素基を含むマレイミド化合物が好ましい。例えば、(C-2a)成分は、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキル基、及び、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基、からなる群より選ばれる少なくとも一の炭化水素基を含むマレイミド化合物が好ましい。また、(C-2a)成分は、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキル基、及び、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルケニレン基、からなる群より選ばれる少なくとも一の炭化水素基を含むマレイミド化合物が好ましい。
【0065】
脂肪族基の炭素原子数は、通常、5以上である。シリコンチップ及びポリイミド樹脂に対する硬化物の密着性を効果的に高めたり、高温保存試験による強度の低下を効果的に抑制したりする観点から、脂肪族基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。本明細書において、ある基が置換基を含む場合、別に断らない限り、その置換基の炭素原子数は、前記の基の炭素原子数には含めない。よって、炭素原子数5以上の脂肪族基が置換基を含む場合、その置換基の炭素原子数は、別に断らない限り、炭素原子数5以上の脂肪族基の炭素原子数には含めない。
【0066】
炭素原子数が5以上のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。炭素原子数が5以上のアルキル基は、炭素原子数が5以上のアルキレン基及び炭素原子数が5以上のアルケニレン基の置換基として有されていてもよい。
【0067】
炭素原子数が5以上のアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状のアルキレン基とは、環状のアルキレン基のみからなる狭義のものだけでなく、直鎖状のアルキレン基と環状のアルキレン基との両方を含む広義のものも含める概念である。このようなアルキレン基としては、例えば、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0068】
炭素原子数が5以上のアルケニレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状のアルケニレン基とは、環状のアルケニレン基のみからなる場合と、直鎖状のアルケニレン基と環状のアルケニレン基との両方を含む場合とを含める概念である。このようなアルケニレン基としては、例えば、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、ヘプチレニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基、トリデシニレン基、ヘプタデシニレン基、ヘキサトリアコンチニレン基、オクチニレン-シクロヘキシニレン構造を有する基、オクチニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基、プロピニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基等が挙げられる。
【0069】
(C-2a)成分において、炭素原子数が5以上の脂肪族基は、マレイミド基の窒素原子と直接結合していることが好ましい。ここで、「直接」とは、マレイミド基の窒素原子と脂肪族基との間に他の基がないことをいう。
【0070】
(C-2a)成分は、本発明の効果を顕著に得る観点から、炭素原子数が5以上の脂肪族基を2以上含むことが好ましい。
【0071】
炭素原子数が5以上の脂肪族基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。互いに結合して形成された環としては、例えば、シクロヘキサン環等が挙げられる。
【0072】
炭素原子数が5以上の脂肪族基は、置換基を有していなくてもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-6アルキル基、-N(C1-10アルキル基)、C1-20アルキル基、C6-10アリール基、-NH、-CN、-C(O)O-C1-10アルキル基、-COOH、-C(O)H、-NO等が挙げられる。ここで、「Cp-q」(p及びqは正の整数であり、p<qを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がp~qであることを表す。例えば、「C1-10アルキル基」という表現は、炭素原子数1~10のアルキル基を示す。これら置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。
【0073】
上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
【0074】
(C-2a)成分は、芳香環を分子中に含むことが好ましい。よって、(C-2a)成分は、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基及び芳香環を含むマレイミド化合物が好ましい。芳香環は、単環式の芳香環でもよく、2個以上の単環式の芳香環が縮合した縮合芳香環でもよい。これらの芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ピリジン環等の単環式芳香環;インダン環、フルオレン環、ナフタレン環等の縮合芳香環;が挙げられる。中でも、芳香環は、芳香族炭素環が好ましい。芳香族炭素環の炭素原子数は、好ましくは6以上10以下である。
【0075】
(C-2a)成分の1分子当たりのマレイミド基の数は、1個でもよいが、好ましくは2個以上であり、好ましくは10個以下、より好ましく6個以下、特に好ましくは3個以下である。1分子当たり2個以上のマレイミド基を有する(C-2a)成分を用いることにより、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0076】
(C-2a)成分は、本発明の効果を顕著に得る観点から、下記一般式(2)で表されるマレイミド化合物であることが好ましい。
【化4】
一般式(2)中、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表す。
【0077】
一般式(2)におけるRは、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表す。炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。この2価の脂肪族基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状の2価の脂肪族基とは、環状の脂肪族基のみからなる場合と、直鎖状の脂肪族基と環状の脂肪族基との両方を含む場合とを含める概念である。2価の脂肪族基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基等が挙げられる。アルキレン基、及びアルケニレン基については上述したとおりである。
【0078】
Rの置換基としては、例えば、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-10アルキル基、-N(C1-10アルキル基)、C1-10アルキル基、C2-30アルケニル基、C2-30アルキニル基、C6-10アリール基、-NH、-CN、-C(O)O-C1-10アルキル基、-COOH、-C(O)H、-NO等が挙げられる。これら置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。置換基は、好ましくは炭素原子数が5以上のアルキル基である。
【0079】
一般式(2)におけるLは単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-NR-(Rは水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基)、酸素原子、硫黄原子、C(=O)NR-、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、及びこれら2種以上の2価の基の組み合わせからなる基等が挙げられる。アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、及び2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、炭素原子数が5以上のアルキル基を置換基として有していてもよい。フタルイミド由来の2価の基とは、フタルイミドから誘導される2価の基を表し、具体例としては一般式(3)で表される基が挙げられる。ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基とは、ピロメリット酸ジイミドから誘導される2価の基を表し、具体例としては一般式(4)で表される基が挙げられる。式中、「*」は結合手を表す。
【化5】
【0080】
一般式(2)中のLのおける2価の連結基としてのアルキレン基は、炭素原子数1~50のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~45のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~40のアルキレン基が特に好ましい。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチルエチレン基(2-プロピレン基)、シクロヘキシレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0081】
一般式(2)におけるLにおける2価の連結基としてのアルケニレン基は、炭素原子数2~50のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~45のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~40のアルケニレン基が特に好ましい。このアルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニレン基としては、例えば、メチルエチレニレン基(2-プロペニレン基)、シクロヘキセニレン基、ペンテニレン基、へキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基、ノネニレン基、デセニレン基、ウンデセニレン基、ドデセレン基、トリデセニレン基、ヘプタデセニレン基、ヘキサトリアコンテニレン基、オクチニレン-シクロヘキシニレン構造を有する基、オクチニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基、プロピニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基等が挙げられる。
【0082】
一般式(2)におけるLにおける2価の連結基としてのアルキニレン基は、炭素原子数2~50のアルキニレン基が好ましく、炭素原子数2~45のアルキニレン基がより好ましく、炭素原子数2~40のアルキニレン基が特に好ましい。このアルキニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキニレン基としては、例えば、2-プロピニレン基、シクロヘキシニレン基、ペンチニレン基、へキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基、トリデシニレン基、ヘプタデシニレン基、ヘキサトリアコンチニレン基、オクチニレン-シクロヘキシニレン構造を有する基、オクチニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基、プロピニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基等が挙げられる。
【0083】
一般式(2)におけるLにおける2価の連結基としてのアリーレン基は、炭素原子数6~24のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~18のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~14のアリーレン基がさらに好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらにより好ましい。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等が挙げられる。
【0084】
一般式(2)におけるLにおける2価の連結基であるアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、及びアリーレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては、一般式(2)中のRが有していてもよい置換基と同様であり、好ましくは炭素原子数が5以上のアルキル基である。
【0085】
一般式(2)におけるLにおける2種以上の2価の基の組み合わせからなる基としては、例えば、アルキレン基、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる2価の基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキレン基の組み合わせからなる2価の基;アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる2価の基;アルキニレン基、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる2価の基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキニレン基の組み合わせからなる2価の基;アルキニレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる2価の基;等が挙げられる。2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、それぞれの基の組み合わせにより縮合環等の環を形成してもよい。また、2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、繰り返し単位数が1~10の繰り返し単位であってもよい。
【0086】
中でも、一般式(2)におけるLとしては、酸素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数6~24のアリーレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1~50のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1~50のアルキニレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1~50のアルケレン基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基であることが好ましい。中でも、Lとしては、アルキレン基;アルキレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-アリーレン基-アルキレン基-アリーレン基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキレン-ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルケレン基;アルケレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルケレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-アリーレン基-アルケレン基-アリーレン基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキケレン-ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキニレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキニレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-アリーレン基-アルキニレン基-アリーレン基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキニレン-ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基がより好ましい。
【0087】
一般式(2)で表されるマレイミド化合物は、一般式(5)で表されるマレイミド化合物であることが好ましい。
【化6】
一般式(5)中、Rはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表し、Aはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。nは1~10の整数を表す。
【0088】
一般式(5)におけるRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表す。Rは、一般式(2)中のRと同様である。
【0089】
一般式(5)におけるAはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。Aにおける2価の脂肪族基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基等が挙げられる。Aにおける2価の脂肪族基としては、鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも環状、即ち置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の環状の2価の脂肪族基が好ましい。
【0090】
アルキレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このようなアルキレン基としては、例えば、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0091】
炭素原子数が5以上のアルケニレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状のアルケニレン基とは、環状のアルケニレン基のみからなる場合と、直鎖状のアルケニレン基と環状のアルケニレン基との両方を含む場合とを含める概念である。このようなアルケニレン基としては、例えば、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、ヘプチレニレン基、オクチニレン基、ノネニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基、トリデシニレン基、ヘプタデシニレン基、ヘキサトリアコンチニレン基、オクチニレン-シクロヘキシニレン構造を有する基、オクチニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基、プロピニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基等が挙げられる。
【0092】
Aが表す芳香環を有する2価の基における芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フタルイミド環、ピロメリット酸ジイミド環、芳香族複素環等が挙げられ、ベンゼン環、フタルイミド環、ピロメリット酸ジイミド環が好ましい。即ち、芳香環を有する2価の基としては、置換基を有していてもよいベンゼン環を有する2価の基、置換基を有していてもよいフタルイミド環を有する2価の基、置換基を有していてもよいピロメリット酸ジイミド環を有する2価の基が好ましい。芳香環を有する2価の基としては、例えば、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキレン基の組み合わせからなる基;アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基;ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基;フタルイミド由来の2価の基及びアルキレン基の組み合わせからなる基;等が挙げられる。上記アリーレン基は、一般式(2)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基と同様である。
【0093】
一般式(5)におけるAが表す、2価の脂肪族基及び芳香環を有する2価の基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記した式(2)中のRが表す置換基と同様である。
【0094】
中でも、一般式(5)におけるAとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の環状のアルキレン基;置換基を有していてもよいベンゼン環を有する2価の基;置換基を有していてもよいフタルイミド環を有する2価の基;又は置換基を有していてもよいピロメリット酸ジイミド環を有する2価の基を表すことが好ましい。
【0095】
一般式(5)におけるAが表す基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化7】
【化8】
【0096】
一般式(2)で表されるマレイミド化合物は、一般式(6)で表されるマレイミド化合物、及び一般式(7)で表されるマレイミド化合物のいずれかであることが好ましい。
【化9】
一般式(6)中、R及びRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表し、R10はそれぞれ独立に、酸素原子、アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基を表す。n1は1~10の整数を表す。
一般式(7)中、R、R及びRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表し、Rはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表し、R11及びR12はそれぞれ独立に炭素原子数が5以上のアルキル基を表す。t2は0~10の整数を表し、m1及びm2はそれぞれ独立に0~4の整数を表す。
【0097】
一般式(6)におけるR及びRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表す。R及びRは、一般式(2)中のRが表す炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基と同様であり、ヘキサトリアコンチニレン基、ヘキサトリアコンチレン基が好ましい。
【0098】
一般式(6)におけるR10はそれぞれ独立に、酸素原子、アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基、又はこれら2種以上の2価の基の組み合わせからなる基を表す。アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基は、一般式(2)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基と同様である。R10としては、2種以上の2価の基の組み合わせからなる基又は酸素原子であることが好ましい。
【0099】
一般式(6)におけるR10における2種以上の2価の基の組み合わせからなる基としては、酸素原子、アリーレン基、及びアルキレン基の組み合わせが挙げられる。2種以上の2価の基の組み合わせからなる基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化10】
【0100】
一般式(7)におけるR、R及びRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表す。R、R及びRは、一般式(2)中のRが表す置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基と同様であり、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基が好ましく、オクチレン基がより好ましい。
【0101】
一般式(7)におけるRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。Rは、一般式(5)中のAが表す置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基と同様であり、アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基;フタルイミド由来の2価の基及びアルキレン基の組み合わせからなる基が好ましく、アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基がより好ましい。アルキレン基は、一般式(2)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様である。
【0102】
一般式(7)におけるRが表す基の具体例としては、例えば以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化11】
【0103】
一般式(7)におけるR11及びR12はそれぞれ独立に炭素原子数が5以上のアルキル基を表す。R11及びR12は、上記した炭素原子数が5以上のアルキル基と同様であり、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が好ましく、ヘキシル基、オクチル基がより好ましい。
【0104】
一般式(7)におけるm1及びm2はそれぞれ独立に1~15の整数を表し、1~10の整数が好ましい。
【0105】
(C-2a)成分の具体例としては、以下の(C-2-1)~(C-2-4)の化合物を挙げることができる。但し、(C-2a)成分はこれら具体例に限定されるものではない。式中、aは1~10の整数を表す。
【化12】
【化13】
【0106】
(C-2a)成分の具体例としては、デジグナーモレキュールズ社製の「BMI1500」(式(C-2-1)の化合物)、「BMI1700」(式(C-2-2)の化合物)、「BMI3000J」「BMI3000」(式(C-2-3)の化合物)、「BMI689」(式(C-2-4)の化合物)、等が挙げられる。
【0107】
{(C-2b)成分}
(C-2b)成分は、芳香環と脂肪族炭化水素環とが縮合した骨格を含むマレイミド化合物である。芳香環と脂肪族炭化水素環とが縮合した骨格としては、インダン骨格、トリメチルインダン骨格、テトラリン骨格、ベンゾシクロブテン骨格、インデン骨格等が挙げられるが、本発明の効果を顕著に得る観点から、トリメチルインダン骨格であることが好ましい。よって、(C-2b)成分は、トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物であることが好ましい。トリメチルインダン骨格とは、下記式(C-2b-1)に示す骨格を表す。
【0108】
【化14】
【0109】
トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環には、置換基が結合していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、及び、メルカプト基が挙げられる。
アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~10である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、等が挙げられる。
アルキルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは1~10である。アルキルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
アルキルチオ基の炭素原子数は、好ましくは1~10である。アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等が挙げられる。
アリール基の炭素原子数は、好ましくは6~10である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
アリールオキシ基の炭素原子数は、好ましくは6~10である。アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
アリールチオ基の炭素原子数は、好ましくは6~10である。アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
シクロアルキル基の炭素原子数は、好ましくは3~10である。シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0110】
前記の置換基のうち、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及び、シクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0111】
トリメチルインダン骨格が含む1つのベンゼン環に結合する置換基の数は、1でもよく、2以上でもよい。トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合する置換基の数は、通常、0以上3以下である。置換基の数が2以上である場合、それら2以上の置換基は、同じでもよく、異なっていてもよい。中でも、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環には、置換基が結合していないことが好ましい。
【0112】
(C-2b)成分の1分子中に含まれるトリメチルインダン骨格の数は、1でもよく、2以上でもよい。上限は、例えば、10以下、8以下、7以下、又は6以下でありうる。
【0113】
(C-2b)成分は、上述したトリメチルインダン骨格に加えて、更に芳香環骨格を含むことが好ましい。当該芳香環骨格の環構成炭素の数は、好ましくは6~10である。芳香環骨格としては、例えば、ベンゼン環骨格、ナフタレン環骨格、等が挙げられる。(C-2b)成分の1分子中に含まれる前記の芳香環骨格の数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。(C-2b)成分が2以上の芳香環骨格をトリメチルインダン骨格に加えて含む場合、それら芳香環骨格は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0114】
前記の芳香環骨格が含む芳香環には、置換基が結合していてもよい。置換基としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基として上述した置換基、及び、ニトロ基が挙げられる。1つの芳香環に結合する置換基の数は、1でもよく、2以上でもよい。芳香環に結合する置換基の数は、通常、0以上4以下である。置換基の数が2以上である場合、それら2以上の置換基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0115】
(C-2b)成分は、上述したトリメチルインダン骨格に加えて、更に2価の脂肪族炭化水素基を含むことが好ましい。特に、(C-2b)成分が、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環以外の芳香環骨格を含む場合に、(C-2b)成分が2価の脂肪族炭化水素基を含むことが好ましい。この場合、2価の脂肪族炭化水素基は、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環と芳香環骨格との間を連結することが好ましい。また、2価の脂肪族炭化水素基は、芳香環骨格同士の間を連結することが好ましい。
【0116】
2価の脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1以上であり、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、特に好ましくは5以下である。2価の脂肪族炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基としてのアルキレン基がより好ましい。2価の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の直鎖アルキレン基;エチリデン基(-CH(CH)-)、プロピリデン基(-CH(CHCH)-)、イソプロピリデン基(-C(CH-)、エチルメチルメチレン基(-C(CH)(CHCH)-)、ジエチルメチレン基(-C(CHCH-)等の分岐鎖アルキレン基;等が挙げられる。(C-2b)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物が2以上の2価の脂肪族炭化水素基をトリメチルインダン骨格に加えて含む場合、それら2価の脂肪族炭化水素基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0117】
(C-2b)成分は、下記式(C-2b-2)で示す構造を含むことが好ましい。(C-2b)成分の全体が式(C-2b-2)で示す構造を有していてもよく、(C-2b)成分の部分が式(C-2b-2)で示す構造を有していてもよい。
【化15】
【0118】
(式中、Ara1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し;Ra1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;Ra2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;Ra3は、それぞれ独立に、2価の脂肪族炭化水素基を表し;na1は、正の整数を表し;na2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;na3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。Ra1のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Ra2のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。na2が2~4の場合、Ra1は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。na3が2~3の場合、Ra2は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
【0119】
式(C-2b-2)において、Ara1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。この2価の芳香族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは6以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは16以下である。2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基が挙げられる。2価の芳香族炭化水素基が有しうる置換基としては、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、及び、メルカプト基が挙げられる。各置換基の水素原子は、さらにハロゲン原子で置換されていてもよい。また、これらの置換基の具体例としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基と同じ例が挙げられる。2価の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基の数は、好ましくは1~4である。2価の芳香族炭化水素基が有する置換基の数が2以上である場合、それら2以上の置換基は、同じでもよく、異なっていてもよい。中でも、Ara1は、置換基を有さない2価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0120】
式(C-2b-2)において、Ra1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表す。アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。これらの基の具体例としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基と同じ例が挙げられる。中でも、Ra1は、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数3~6のシクロアルキル基、及び、炭素原子数6~10のアリール基からなる群より選ばれる1種類以上の基であることがより好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基が特に好ましい。
【0121】
式(C-2b-2)において、Ra2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表す。アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。これら基の具体例としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基と同じ例が挙げられる。中でも、Ra2は、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数3~6のシクロアルキル基、及び、炭素原子数6~10のアリール基からなる群より選択される1種類以上の基であることがより好ましい。
【0122】
式(C-2b-2)において、Ra3は、それぞれ独立に、2価の脂肪族炭化水素基を表す。好ましい2価の脂肪族炭化水素基の範囲は、上述した通りである。
【0123】
式(C-2b-2)において、na1は、正の整数を表す。na1は、好ましくは1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
【0124】
式(C-2b-2)において、na2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。na2は、好ましくは2又は3であり、より好ましくは2である。複数のna2は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。na2が2以上の場合、複数のRa1は、同一環内で、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0125】
式(C-2b-2)において、na3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。複数のna3は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。na3は、好ましくは0である。
【0126】
(C-2b)成分は、下記式(C-2b-3)で示す構造を含むことが特に好ましい。(C-2b)成分の全体が式(C-2b-3)で示す構造を有していてもよく、(C-2b)成分の部分が式(C-2b-3)で示す構造を有していてもよい。
【化16】
(式中、Rb1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;Rb2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;nb1は、正の整数を表し;nb2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;nb3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。Rb1のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Rb2のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。nb2が2~4の場合、Rb1は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。nb3が2~3の場合、Rb2は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
【0127】
式(C-2b-3)において、Rb1、Rb2、nb1、nb2及びnb3は、それぞれ、式(C-2b-2)におけるRa1、Ra2、na1、na2及びna3と同じである。
【0128】
(C-2b)成分は、更に、下記式(C-2b-4)で示す構造を含んでいてもよい。
【化17】
式(C-2b-4)において、Rc1、Rc2、nc2及びnc3は、それぞれ、式(C-2b-2)におけるRa1、Ra2、na2及びna3と同じである。また、式(C-2b-4)において、nc1は、繰り返し単位数であり、1~20の整数を表す。さらに、式(C-2b-4)において、*は、結合手を表す。例えば、(C-2b)成分は、式(C-2b-2)において、na2が3以下であり、且つ、マレイミド基が結合するベンゼン環のマレイミド基に対するオルト位及びパラ位のうち、2つ以上に、Ra1が結合していない場合に、式(C-2b-2)で表される構造に組み合わせて前記の式(C-2b-4)で表される構造を含みうる。また、例えば、(C-2b)成分は、式(C-2b-3)において、nb2が3以下であり、且つ、マレイミド基が結合するベンゼン環のマレイミド基に対するオルト位及びパラ位のうち、2つ以上に、Rb1が結合していない場合に、式(C-2b-3)で表される構造に組み合わせて前記の式(C-2b-4)で表される構造を含みうる。
【0129】
(C-2b)成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0130】
(C-2b)成分のマレイミド基当量は、好ましくは50g/eq.以上、より好ましくは100g/eq.以上、特に好ましくは200g/eq.以上であり、好ましくは2000g/eq.以下、より好ましくは1000g/eq.以下、特に好ましくは800g/eq.以下である。マレイミド基当量は、マレイミド基1当量あたりのマレイミド化合物の質量を表す。(C-2b)成分のマレイミド基当量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0131】
(C-2b)成分の製造方法は、特に制限は無い。(C-2b)成分は、例えば、発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の方法によって製造できる。この発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の製造方法によれば、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数に分布があるマレイミド化合物を得ることができる。この方法で得られるマレイミド化合物は、下記式(C-2b-5)で表される構造を含む。よって、(C-2b)成分は、式(C-2b-5)で表される構造を含むマレイミド化合物を含んでいてもよい。
【0132】
【化18】
【0133】
(式中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;nは、0.95~10.0の平均繰り返し単位数を表し;nは、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;nは、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。Rのアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Rのアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。nが2~4の場合、Rは、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。nが2~3の場合、Rは、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
【0134】
式(C-2b-5)において、R、R、n及びnは、それぞれ、式(C-2b-2)におけるRa1、Ra2、na2及びna3と同じである。
【0135】
式(C-2b-5)において、nは、平均繰り返し単位数を表し、その範囲は0.95~10.0である。発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の製造方法によれば、式(C-2b-5)で表される構造を含む一群のマレイミド化合物が得られる。式(C-2b-5)中の平均繰り返し単位数nが1.00より小さくなりうることから分かるように、こうして得られる式(C-2b-5)で表される構造を含むマレイミド化合物には、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物が含まれうる。そこで、式(C-2b-5)で表される構造を含むマレイミド化合物から、精製により、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物を除いて(C-2b)成分を得て、その得られた(C-2b)成分のみを樹脂組成物が含んでいてもよい。しかし、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物が樹脂組成物に含まれている場合でも、本発明の効果を得ることができる。また、精製を省略した場合、コストの抑制が可能である。そこで、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物を除くことなく、式(C-2b-5)で表される構造を含むマレイミド化合物を樹脂組成物が含むことが好ましい。
【0136】
式(C-2b-5)において、平均繰り返し単位数nは、好ましくは0.95以上、より好ましくは0.98以上、更に好ましくは1.0以上、特に好ましくは1.1以上であり、好ましくは10.0以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは7.0以下、特に好ましくは6.0以下である。平均繰り返し単位数nが前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。特に、樹脂組成物のガラス転移温度を効果的に高めることができる。
【0137】
式(C-2b-5)で表される構造の例としては、下記のものが挙げられる。
【0138】
【化19】
【0139】
式(C-2b-5)で表される構造を含むマレイミド化合物は、更に、前記の式(C-2b-4)で示す構造を含んでいてもよい。例えば、式(C-2b-5)で表される構造を含むマレイミド化合物は、式(C-2b-5)において、nが3以下であり、且つ、マレイミド基が結合するベンゼン環のマレイミド基に対するオルト位及びパラ位のうち、2つ以上に、Rが結合していない場合に、式(C-2b-5)で表される構造に組み合わせて式(C-2b-4)で表される構造を含みうる。
【0140】
式(C-2b-5)で表される構造を含むマレイミド化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定から算出される分子量分布Mw/Mnが、特定の範囲にあることが好ましい。分子量分布は、重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで割り算して求められる値であり、「Mw/Mn」で表される。具体的には、式(C-2b-5)で表される構造を含むマレイミド化合物の分子量分布Mw/Mnは、好ましくは1.0~4.0、より好ましくは1.1~3.8、更に好ましくは1.2~3.6、特に好ましくは1.3~3.4である。式(C-2b-5)で表される構造を含むマレイミド化合物の分子量分布Mw/Mnが前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0141】
式(C-2b-5)で表される構造を含むマレイミド化合物のうち、平均繰り返し単位数nが0のマレイミド化合物の量は、特定の範囲にあることが好ましい。式(C-2b-5)で表される構造を含むマレイミド化合物の前記GPC測定を行った場合、平均繰り返し単位数nが0のマレイミド化合物の量は、そのGPC測定の結果に基づいて面積%で表すことができる。詳細には、前記のGPC測定で得られるクロマトグラムにおいて、式(C-2b-5)で表される構造を含むマレイミド化合物のピークの総面積に対する、平均繰り返し単位数nが0のマレイミド化合物のピークの面積の割合(面積%)により、平均繰り返し単位数nが0のマレイミド化合物の量を表すことができる。具体的には、式(C-2b-5)で表される構造を含むマレイミド化合物の全量100面積%に対して、平均繰り返し単位数nが0のマレイミド化合物の量は、好ましくは32面積%以下、より好ましくは30面積%以下、更に好ましくは28面積%以下である。平均繰り返し単位数nが0のマレイミド化合物の量が前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0142】
(C-2)成分のマレイミド基当量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100g/eq.~10000g/eq.、より好ましくは1100g/eq.~9000g/eq.、さらに好ましくは120g/eq.~8000g/eq.である。マレイミド基当量は、1当量のマレイミド基を含む(C-2)成分の質量である。
【0143】
(C-2)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは150~16000、より好ましくは200~15000である。
【0144】
(C-2)成分の分子量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは400以上であり、好ましくは100000以下、より好ましくは80000以下、さらに好ましくは60000以下である。
【0145】
(C-2)成分の含有量は、(C-1)成分との併用によりシリコンチップ及びポリイミド樹脂との密着性に優れ、高温保存試験による強度の低下を抑制できる硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0146】
(C-2)成分の含有量は、(C-1)成分との併用によりシリコンチップ及びポリイミド樹脂との密着性に優れ、高温保存試験による強度の低下を抑制できる硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。上限は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0147】
(C-1)成分及び(C-2)成分の合計含有量は、シリコンチップ及びポリイミド樹脂との密着性に優れ、高温保存試験による強度の低下を抑制できる硬化物得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは21質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上、50質量%以上、又は55質量%以上である。上限は、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下、70質量%以下である。
【0148】
樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合の(C-1)成分の含有量をC1とし、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合の(C-2)成分の含有量をC2とする。そのとき、C1/C2が、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上、1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。C1/C2を斯かる範囲内とすることにより、シリコンチップ及びポリイミド樹脂との密着性に特に優れ、高温保存試験による強度の低下を効果的に抑制できる硬化物を得ることが可能となる。
【0149】
(C-1)成分及び(C-2)成分の合計含有量((C)成分の含有量)の、(A)エポキシ樹脂及び(D)硬化剤の合計含有量に対する質量比((C)成分の含有量/((A)成分の含有量+(D)成分の含有量))としては、好ましくは0.75を超え、より好ましくは0.76以上、さらに好ましくは0.8以上、0.9以上、1以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下、2以下、1.5以下である。斯かる質量比を前記の範囲内となるように調整することで、シリコンチップ及びポリイミド樹脂との密着性に特に優れ、高温保存試験による強度の低下を効果的に抑制できる硬化物を得ることが可能となる。
【0150】
<(D)硬化剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(D)成分として(D)硬化剤を含有していてもよい。(D)硬化剤は、通常、(A)成分と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有する。(D)硬化剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0151】
(D)硬化剤としては、例えば、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、アミン系硬化剤などが挙げられ中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、フェノール系硬化剤、及びナフトール系硬化剤のいずれかを含むことが好ましく、フェノール系硬化剤を含むことがより好ましい。
【0152】
(D)硬化剤は、本発明の効果を顕著に得る観点から窒素原子を含むことが好ましい。中でも、含窒素フェノール系硬化剤、含窒素ナフトール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、及びアミン系硬化剤から選択される1種以上が好ましく、含窒素フェノール系硬化剤、及び含窒素ナフトール系硬化剤のいずれかがより好ましく、含窒素フェノール系硬化剤がさらに好ましい。
【0153】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、含窒素フェノール系硬化剤としてはトリアジン骨格含有フェノール系硬化剤が好ましい。
【0154】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、「MEH-8000H」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;新日鉄住金化学社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-495V」、「SN-375」、「SN-395」;DIC社製の「TD-2090」、「TD-2090-60M」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」、「HPC-9500」、「KA-1160」、「KA-1163」、「KA-1165」;群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」、「ELPC75」等が挙げられる。
【0155】
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0156】
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を用いることができる。中でも、活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
【0157】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0158】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0159】
活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0160】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤として「EXB9416-70BK」、「EXB-8150-65T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
【0161】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
【0162】
酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「MH-700」等が挙げられる。
【0163】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OD100」(ベンゾオキサジン環当量218g/eq.)、「JBZ-OP100D」(ベンゾオキサジン環当量218g/eq.)、「ODA-BOZ」(ベンゾオキサジン環当量218g/eq.);四国化成工業社製の「P-d」(ベンゾオキサジン環当量217g/eq.)、「F-a」(ベンゾオキサジン環当量217g/eq.);昭和高分子社製の「HFB2006M」(ベンゾオキサジン環当量432g/eq.)等が挙げられる。
【0164】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0165】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-03(カルボジイミド基当量:216g/eq.)、V-05(カルボジイミド基当量:262g/eq.)、V-07(カルボジイミド基当量:200g/eq.);V-09(カルボジイミド基当量:200g/eq.);ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P(カルボジイミド基当量:302g/eq.)が挙げられる。
【0166】
(A)エポキシ樹脂と(D)硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01~1:10の範囲が好ましく、1:0.05~1:5がより好ましく、1:0.1~1:3がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。エポキシ樹脂と硬化剤との量比を斯かる範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより向上する。
【0167】
(D)硬化剤の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0168】
(D)硬化剤の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。上限は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0169】
<(E)硬化促進剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(E)成分として硬化促進剤を含有していてもよい。
【0170】
(E)成分としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。(E)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0171】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0172】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0173】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0174】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0175】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0176】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0177】
(E)成分の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0178】
(E)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上である。上限は、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。
【0179】
<(G)その他の添加剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更にその他の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤等の樹脂添加剤などが挙げられる。これらの添加剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。それぞれの含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0180】
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等を添加し、回転ミキサーなどを用いて混合・分散する方法などが挙げられる。
【0181】
<樹脂組成物の物性、用途>
第1実施形態の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)無機充填剤、(C-1)エラストマー、及び(C-2)マレイミド基を含有する化合物を含む。また、第2実施形態の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)無機充填剤、(C-1)エラストマー、及び(C-2)マレイミド基を含有する化合物、を含み、(C-2)成分が、(C-2a)置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物、及び(C-2b)芳香環と脂肪族炭化水素環とが縮合した骨格を含むマレイミド化合物、から選択される1種以上を含む。すでに上記したが、(C-1)成分及び(C-2)成分を併用することで、シリコンチップ及びポリイミド樹脂との密着性に優れ、高温保存試験による強度の低下を抑制された硬化物を得ることができる。
【0182】
樹脂組成物を180℃で90分間熱硬化させた硬化物は、シリコンチップとの密着性に優れるという特性を示す。よって、前記硬化物は、シリコンチップとの間の垂直方向への引っ張りに対する密着性に優れる絶縁層をもたらす。垂直引っ張り試験(試験スピード0.1kh/sec)で測定した垂直引っ張り強度は、好ましくは700kgf/cm以上である。垂直引っ張り強度の下限値は、10000kgf/cm以下等とし得る。垂直引っ張り強度の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0183】
樹脂組成物を180℃で90分間熱硬化させた硬化物は、ポリイミド樹脂との密着性に優れるという特性を示す。よって、前記硬化物は、ポリイミドとの間のピール強度に優れる絶縁層をもたらす。ピール強度は、好ましくは0.4kgf/cmを超え、より好ましくは0.4kgf/cm以上、さらに好ましくは0.5kgf/cm以上である。ピール強度の上限値は、10kgf/cm以下等とし得る。ピール強度の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0184】
樹脂組成物を180℃で90分間熱硬化させた硬化物は、高温保存試験による強度の低下を抑制できるという特性を示す。よって、前記硬化物は、HTS試験(High Thermal Storage test)前後の破断点強度の変化度が小さく、長期信頼性に優れる絶縁層をもたらす。変化度は、好ましくは-10%~+10%の範囲内である。HTS試験前後の破断点強度の変化度は後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0185】
本発明の樹脂組成物は、(C-1)成分及び(C-2)成分を併用しているので最低溶融粘度が低いという特性を示す。最低溶融粘度としては、好ましくは100poise以上、より好ましくは500poise以上、さらに好ましくは1000poise以上、2000poise以上、3000poise以上、3500poise以上であり、好ましくは7500poise以下、より好ましくは6500poise以下、さらに好ましくは6000poise以下である。ここで、用語「最低溶融粘度」は、60℃から200℃での最低溶融粘度を指す。最低溶融粘度は、動的粘弾性測定装置を用いて測定することができる。
【0186】
本発明の樹脂組成物は、シリコンチップ及びポリイミド樹脂との密着性に優れ、高温保存試験による強度の低下を抑制できる硬化物をもたらすことができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、半導体チップパッケージの絶縁層を形成するための樹脂組成物(半導体チップパッケージの絶縁層用の樹脂組成物)、半導体チップパッケージの再配線層を形成するための再配線形成層を形成するための樹脂組成物(半導体チップパッケージの再配線層形成用の樹脂組成物)として好適に使用することができる。
【0187】
半導体チップパッケージとしては、例えば、FC-CSP、MIS-BGAパッケージ、ETS-BGAパッケージ、ファンアウト型パッケージ、ファンイン型PLPが挙げられる。ファンアウト型パッケージには、例えば、ファンアウト型WLP(Wafer Level Package)、ファンアウト型PLP(Panel Level Package)が含まれうる。中でも、本発明の樹脂組成物は、ファンアウト型パッケージの再配線層を形成するための再配線形成層を形成するための樹脂組成物(ファンアウト型パッケージの再配線層形成用の樹脂組成物)として好適に使用でき、ファンアウト型WLPの再配線形成層を形成するための樹脂組成物(ファンアウト型WLPの再配線層形成用の樹脂組成物)、ファンアウト型PLPの再配線形成層を形成するための樹脂組成物(ファンアウト型PLPの再配線層形成用の樹脂組成物)として特に好適に使用することができる。
【0188】
半導体チップパッケージは、例えば、以下の(1)~(6)工程を経て製造される。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)シリコンチップ等の半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
【0189】
また、第2実施形態の樹脂組成物は、絶縁用途の樹脂組成物として好適に使用することができる。具体的には、絶縁層上に形成される導体層(再配線層を含む)を形成するための当該絶縁層を形成するための樹脂組成物(導体層を形成するための絶縁層形成用樹脂組成物)として好適に使用することができる。
【0190】
また、第2実施形態の樹脂組成物は、多層プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(多層プリント配線板の絶縁層形成用樹脂組成物)、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の層間絶縁層形成用樹脂組成物)、として好適に使用することができる。また、第2実施形態の樹脂組成物は、有機EL装置や半導体等の電子機器を封止するための樹脂組成物(封止用の樹脂組成物)として好適に使用することができ、特に、半導体を封止するための樹脂組成物(半導体封止用の樹脂組成物)、好ましくは半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)として好適に使用することもできる。
【0191】
さらに、前記の第1及び第2実施形態の樹脂組成物は、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、ダイボンディング材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が用いられる広範な用途に使用できる。
【0192】
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を有する。樹脂組成物層は、本発明の樹脂組成物を含む層であり、通常は、樹脂組成物で形成されている。
【0193】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化、及び当該樹脂組成物の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは55μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、3μm以上等とし得る。
【0194】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0195】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル;ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。);ポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」と略称することがある。)等のアクリルポリマー;環状ポリオレフィン;トリアセチルセルロース(以下「TAC」と略称することがある。);ポリエーテルサルファイド(以下「PES」と略称することがある。);ポリエーテルケトン;ポリイミド;等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0196】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。中でも、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0197】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の処理が施されていてもよい。
【0198】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」等が挙げられる。また、離型層付き支持体としては、例えば、東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」;等が挙げられる。
【0199】
支持体の厚さは、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0200】
樹脂シートは、例えば、樹脂組成物を、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布して、製造することができる。また、必要に応じて、樹脂組成物を有機溶剤に溶解して樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを塗布して樹脂シートを製造してもよい。溶剤を用いることにより、粘度を調整して、塗布性を向上させることができる。樹脂ワニスを用いた場合、通常は、塗布後に樹脂ワニスを乾燥させて、樹脂組成物層を形成する。
【0201】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤;等を挙げることができる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0202】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0203】
樹脂シートは、必要に応じて、支持体及び樹脂組成物層以外の任意の層を含んでいてもよい。例えば、樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムが設けられていてもよい。保護フィルムの厚さは、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって樹脂シートは使用可能となる。また、樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。
【0204】
[回路基板]
本発明の回路基板は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された硬化物層を含む。硬化物層は絶縁層又は封止層となりうる。この回路基板は、例えば、下記の工程(1)及び工程(2)を含む製造方法によって、製造できる。
(1)基材上に、樹脂組成物層を形成する工程。
(2)樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する工程。
【0205】
工程(1)では、基材を用意する。基材としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板(ステンレスや冷間圧延鋼板(SPCC)など)、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板が挙げられる。また、基材は、当該基材の一部として表面に銅箔等の金属層を有していてもよい。例えば、両方の表面に剥離可能な第一金属層及び第二金属層を有する基材を用いてもよい。このような基材を用いる場合、通常、回路配線として機能できる配線層としての導体層が、第二金属層の第一金属層とは反対側の面に形成される。金属層の材料としては、銅箔、キャリア付き銅箔、後述する導体層の材料等が挙げられ、銅箔が好ましい。また、このような金属層を有する基材としては市販品を用いることができ、例えば、三井金属鉱業社製のキャリア銅箔付極薄銅箔「Micro Thin」等が挙げられる。
【0206】
また、基材の一方又は両方の表面には、導体層が形成されていてもよい。以下の説明では、基材と、この基材表面に形成された導体層とを含む部材を、適宜「配線層付基材」ということがある。導体層に含まれる導体材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む材料が挙げられる。導体材料としては、単金属を用いてもよく、合金を用いてもよい。合金としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性の観点から、単金属としてのクロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅;及び、合金としてのニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金;が好ましい。その中でも、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属;及び、ニッケル・クロム合金;がより好ましく、銅の単金属が特に好ましい。
【0207】
導体層は、例えば配線層として機能させるために、パターン加工されていてもよい。この際、導体層のライン(回路幅)/スペース(回路間の幅)比は、特に制限されないが、好ましくは20/20μm以下(即ちピッチが40μm以下)、より好ましくは10/10μm以下、さらに好ましくは5/5μm以下、よりさらに好ましくは1/1μm以下、特に好ましくは0.5/0.5μm以上である。ピッチは、導体層の全体にわたって同一である必要はない。導体層の最小ピッチは、例えば、40μm以下、36μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0208】
導体層の厚さは、回路基板のデザインによるが、好ましくは3μm~35μm、より好ましくは5μm~30μm、さらに好ましくは10μm~20μm、特に好ましくは15μm~20μmである。
【0209】
導体層は、例えば、基材上にドライフィルム(感光性レジストフィルム)を積層する工程、フォトマスクを用いてドライフィルムに対して所定の条件で露光及び現像を行ってパターンを形成してパターンドライフィルムを得る工程、現像したパターンドライフィルムをめっきマスクとして電解めっき法等のメッキ法によって導体層を形成する工程、及び、パターンドライフィルムを剥離する工程を含む方法によって、形成できる。ドライフィルムとしては、フォトレジスト組成物からなる感光性のドライフィルムを用いることができ、例えば、ノボラック樹脂、アクリル樹脂等の樹脂で形成されたドライフィルムを用いることができる。基材とドライフィルムとの積層条件は、後述する基材と樹脂シートとの積層の条件と同様でありうる。ドライフィルムの剥離は、例えば、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ性の剥離液を使用して実施することができる。
【0210】
基材を用意した後で、基材上に、樹脂組成物層を形成する。基材の表面に導体層が形成されている場合、樹脂組成物層の形成は、導体層が樹脂組成物層に埋め込まれるように行うことが好ましい。
【0211】
樹脂組成物層の形成は、例えば、樹脂シートと基材とを積層することによって行われる。この積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを基材に加熱圧着することにより、基材に樹脂組成物層を貼り合わせることで、行うことができる。樹脂シートを基材に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ということがある。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、基材の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0212】
基材と樹脂シートとの積層は、例えば、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲である。加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲である。加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力13hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0213】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。なお、積層と平滑化処理は、真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0214】
また、樹脂組成物層の形成は、例えば、圧縮成型法によって行うことができる。圧縮成型法の具体的な操作は、例えば型として、上型及び下型を用意する。基材に、樹脂組成物を塗布する。樹脂組成物を塗布された基材を下型に取り付ける。その後、上型と下型とを型締めして、樹脂組成物に熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0215】
また、圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしてもよい。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。下型に、樹脂組成物を載せる。また、上型に、基材を取り付ける。その後、下型に載った樹脂組成物が上型に取り付けられた基材に接するように上型と下型とを型締めし、熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0216】
圧縮成型法における成型条件は、樹脂組成物の組成により異なる。成型時の型の温度は、樹脂組成物が優れた圧縮成型性を発揮できる温度が好ましく、例えば、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。また、成形時に加える圧力は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、さらに好ましくは5MPa以上であり、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下、さらに好ましくは20MPa以下である。キュアタイムは、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、特に好ましくは5分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、特に好ましくは20分以下である。通常、樹脂組成物層の形成後、型は取り外される。型の取り外しは、樹脂組成物層の熱硬化前に行ってもよく、熱硬化後に行ってもよい。
【0217】
基材上に樹脂組成物層を形成した後、樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なるが、硬化温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは150℃~220℃の範囲、より好ましくは170℃~200℃の範囲)、硬化時間は5分間~120分間の範囲(好ましくは10分間~100分間、より好ましくは15分間~90分間)である。
【0218】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を、通常5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)、予備加熱してもよい。
【0219】
以上のようにして、絶縁層を有する回路基板を製造できる。また、回路基板の製造方法は、更に、任意の工程を含んでいてもよい。
例えば、樹脂シートを用いて回路基板を製造した場合、回路基板の製造方法は、樹脂シートの支持体を剥離する工程を含んでいてもよい。支持体は、樹脂組成物層の熱硬化の前に剥離してもよく、樹脂組成物層の熱硬化の後に剥離してもよい。
【0220】
回路基板の製造方法は、例えば、絶縁層を形成した後で、その絶縁層の表面を研磨する工程を含んでいてもよい。研磨方法は特に限定されない。例えば、平面研削盤を用いて絶縁層の表面を研磨することができる。
【0221】
回路基板の製造方法は、例えば、導体層を層間接続する工程(3)、いわゆる絶縁層に穴あけをする工程を含んでいてもよい。これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。ビアホールの形成方法としては、例えば、レーザー照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。ビアホールの寸法や形状は回路基板のデザインに応じて適宜決定してよい。なお、工程(3)は、絶縁層の研磨又は研削によって層間接続を行ってもよい。
【0222】
ビアホールの形成後、ビアホール内のスミアを除去する工程を行うことが好ましい。この工程は、デスミア工程と呼ばれることがある。例えば、絶縁層上への導体層の形成をめっき工程により行う場合には、ビアホールに対して、湿式のデスミア処理を行ってもよい。また、絶縁層上への導体層の形成をスパッタ工程により行う場合には、プラズマ処理工程などのドライデスミア工程を行ってもよい。さらに、デスミア工程によって、絶縁層に粗化処理が施されてもよい。
【0223】
また、絶縁層上に導体層を形成する前に、絶縁層に対して、粗化処理を行ってもよい。この粗化処理によれば、通常、ビアホール内を含めた絶縁層の表面が粗化される。粗化処理としては、乾式及び湿式のいずれの粗化処理を行ってもよい。乾式の粗化処理の例としては、プラズマ処理等が挙げられる。また、湿式の粗化処理の例としては、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。
【0224】
ビアホールを形成後、絶縁層上に導体層を形成する。ビアホールが形成された位置に導体層を形成することで、新たに形成された導体層と基材表面の導体層とが導通して、層間接続が行われる。導体層の形成方法は、例えば、めっき法、スパッタ法、蒸着法などが挙げられ、中でもめっき法が好ましい。好適な実施形態では、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の適切な方法によって絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成する。また、樹脂シートにおける支持体が金属箔である場合、サブトラクティブ法により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。形成される導体層の材料は、単金属でもよく、合金でもよい。また、この導体層は、単層構造を有していてもよく、異なる種類の材料の層を2層以上含む複層構造を有していてもよい。
【0225】
ここで、絶縁層上に導体層を形成する実施形態の例を、詳細に説明する。絶縁層の表面に、無電解めっきにより、めっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応して、めっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより電解めっき層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等の処理により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成できる。なお、導体層を形成する際、マスクパターンの形成に用いるドライフィルムは、上記ドライフィルムと同様である。
【0226】
回路基板の製造方法は、基材を除去する工程(4)を含んでいてもよい。基材を除去することにより、絶縁層と、この絶縁層に埋め込まれた導体層とを有する回路基板が得られる。この工程(4)は、例えば、剥離可能な金属層を有する基材を用いた場合に、行うことができる。
【0227】
[半導体チップパッケージ]
本発明の第一実施形態に係る半導体チップパッケージは、上述した回路基板と、この回路基板に搭載された半導体チップとを含む。この半導体チップパッケージは、回路基板に半導体チップを接合することにより、製造することができる。
【0228】
回路基板とシリコンチップ等の半導体チップとの接合条件は、半導体チップの端子電極と回路基板の回路配線とが導体接続できる任意の条件を採用できる。例えば、半導体チップのフリップチップ実装において使用される条件を採用できる。また、例えば、半導体チップと回路基板との間に、絶縁性の接着剤を介して接合してもよい。
【0229】
接合方法の例としては、半導体チップを回路基板に圧着する方法が挙げられる。圧着条件としては、圧着温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは130℃~200℃の範囲、より好ましくは140℃~180℃の範囲)、圧着時間は通常1秒間~60秒間の範囲(好ましくは5秒間~30秒間)である。
【0230】
また、接合方法の他の例としては、半導体チップを回路基板にリフローして接合する方法が挙げられる。リフロー条件は、120℃~300℃の範囲としてもよい。
【0231】
半導体チップを回路基板に接合した後、半導体チップをモールドアンダーフィル材で充填してもよい。このモールドアンダーフィル材として、上述した樹脂組成物を用いてもよく、また、上述した樹脂シートの樹脂組成物層を用いてもよい。
【0232】
本発明の第二実施形態に係る半導体チップパッケージは、半導体チップと、前記樹脂組成物の硬化物とを含む。このような半導体チップパッケージでは、通常、樹脂組成物の硬化物が再配線形成層として機能する。第二実施形態に係る半導体チップパッケージとしては、例えば、ファンアウト型WLPが挙げられる。なお、ポリイミドは再配線形成層の絶縁材料として用いられうる。
【0233】
このようなファンアウト型WLPのような半導体チップパッケージの製造方法は、
(A)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(B)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(C)半導体チップを封止する封止層を形成する工程、
(D)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(E)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、本発明の樹脂組成物層によって樹脂組成物層を形成し、熱硬化させて、再配線形成層(絶縁層)を形成する工程、
(F)再配線形成層(絶縁層)上に導体層(再配線層)を形成する工程、及び
(G)導体層上にソルダーレジスト層を形成する工程、を含む。また、半導体チップパッケージの製造方法は、(H)複数の半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程を含み得る。
【0234】
このような半導体チップパッケージの製造方法の詳細は、国際公開第2016/035577号の段落0066~0081の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0235】
本発明の第三実施形態に係る半導体チップパッケージは、例えば第二実施形態の半導体チップパッケージにおいて、封止層を、本発明の樹脂組成物の硬化物で形成した半導体チップパッケージである。
【0236】
[半導体装置]
上述した半導体チップパッケージが実装される半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例
【0237】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、別途明示のない限り、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0238】
<マレイミド化合物の用意>
発明協会公開技報公技番号2020-500211号の合成例1に記載の方法で合成されたマレイミド化合物AのMEK溶液(不揮発成分70質量%)を用意した。このマレイミド化合物Aは、下記式で表される。
【0239】
【化20】
【0240】
マレイミド化合物AのFD-MSスペクトルを測定すると、M+=560、718及び876のピークが確認される。これらのピークは、それぞれ、nが0、1及び2の場合に相当する。また、マレイミド化合物AをGPCによって分析して、インダン骨格部分の繰り返し単位数nの値を数平均分子量に基づいて求めると、n=1.47であり、分子量分布(Mw/Mn)=1.81である。さらに、マレイミド化合物Aの全量100面積%中、平均繰り返し単位数nが0のマレイミド化合物の含有割合は、26.5面積%である。
【0241】
前記のマレイミド化合物AのFD-MSスペクトルは、下記の測定装置及び測定条件で測定されたものを表す。
(FD-MSスペクトルの測定装置及び測定条件)
測定装置:JMS-T100GC AccuTOF
測定条件
測定範囲:m/z=4.00~2000.00
変化率:51.2mA/min
最終電流値:45mA
カソード電圧:-10kV
記録間隔:0.07sec
【0242】
前記のマレイミド化合物AのGPCは、下記の測定装置及び測定条件で測定されたものを表す。
測定装置:東ソー社製「HLC-8320 GPC」
カラム:東ソー社製ガードカラム「HXL-L」、東ソー社製「TSK-GEL G2000HXL」、東ソー社製「TSK-GEL G2000HXL」、東ソー社製「TSK-GEL G3000HXL」、及び、東ソー社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の単分散ポリスチレンを用いる。
試料:マレイミド化合物の不揮発成分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0243】
マレイミド化合物Aの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))、及び、マレイミド化合物中のインダン骨格に寄与する平均繰り返し単位数「n」は、前記のGPC測定により得られたGPCチャートから算出されたものを表す。また、平均繰り返し単位数「n」は、数平均分子量(Mn)に基づき算出されたものを表す。具体的には、nが0~4の化合物について、理論分子量と、GPCにおける実測値分子量とを散布図上にプロットし、その近似直線を引く。そして、この直線上の実測値Mn(1)が示す点より数平均分子量(Mn)を求め、更に平均繰り返し単位する「n」を算出する。さらに、GPC測定の結果に基づき、マレイミド化合物Aの全量100面積%中、平均繰り返し単位数nが0のマレイミド化合物の含有割合(面積%)が、算出される。詳細については、発明協会公開技報公技番号2020-500211号を参照しうる。
【0244】
<エラストマーAの合成>
反応容器に、2官能性ヒドロキシ基末端ポリブタジエン(日本曹達社製「G-3000」、数平均分子量=3000、ヒドロキシ基当量=1800g/eq.)69gと、芳香族炭化水素系混合溶剤(出光石油化学社製「イプゾール150」)40gと、ジブチル錫ラウレート0.005gとを入れ、混合して均一に溶解させた。均一になったところで60℃に昇温し、更に撹拌しながらイソホロンジイソシアネート(エボニックデグサジャパン社製「IPDI」、イソシアネート基当量=113g/eq.)8gを添加し、約3時間反応を行った。
【0245】
次いで反応物に、クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」、水酸基当量=117g/eq.)23gと、エチルジグリコールアセテート(ダイセル社製)60gとを添加し、攪拌しながら150℃まで昇温し、約10時間反応を行った。FT-IRによって2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピークの消失の確認をもって反応の終点とみなし、反応物を室温まで降温した。そして、反応物を100メッシュの濾布で濾過して、ブタジエン構造及びフェノール性水酸基を有するエラストマー(フェノール性水酸基含有ブタジエン樹脂:不揮発成分50質量%)を得た。エラストマーAの数平均分子量は5900、ガラス転移温度は-7℃であった。
【0246】
<エラストマーBの合成>
反応容器にポリカーボネートジオール(数平均分子量:約2,000、水酸基当量:1,000、不揮発分:100%、クラレ社製「C-2015N」)80gおよびジブチル錫ジラウレート0.01gを、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(ダイセル社製「エチルジグリコールアセテート」)37.6g中に均一に溶解させ混合物を得た。次いで、該混合物を50℃に昇温し、さらに撹拌しながら、トルエン-2,4-ジイソシアネート(イソシアネート基当量:87.08)13.9gを添加し、約3時間反応を行った。次いで、この反応物を室温まで冷却してから、これにベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(酸無水物当量:161.1)14.3g、トリエチレンジアミン0.11g、およびジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(ダイセル社製「エチルジグリコールアセテート」)70.5gを添加し、撹拌しながら130℃まで昇温し、約4時間反応を行った。FT-IRより2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピーク消失の確認をもって反応の終点とみなし、反応物を室温まで降温してから目開きが100μmである濾布で濾過して、イミド構造、並びにウレタンおよびカーボネート構造を有するエラストマーBを得た。
【0247】
得られたエラストマーBの粘度および不揮発分、並びにエラストマーBの数平均分子量およびガラス転移温度を以下に記載する。
エラストマーBの粘度:6Pa・s(25℃、E型粘度計)
エラストマーBの不揮発分:50%
エラストマーBの数平均分子量:11,500
エラストマーBのガラス転移温度:-1℃
【0248】
<エラストマーCの用意>
エラストマーCとして、ポリエステル樹脂(東洋紡社製「バイロン560」数平均分子量:19,000、ガラス転移温度7℃)を用意した。
【0249】
<無機充填材の調製>
実施例及び比較例で用いたシリカA、及びシリカBは、以下のとおりである。
シリカA:球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマテックス社製「SO-C2」)。球形シリカ100部に対してアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)1部で表面処理したもの。
シリカB:球状シリカ(電気化学工業社製「UFP-30」、平均粒径0.3μm、比表面積30.7m/g)。球状シリカ100部に対してアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)2部で表面処理したもの。
【0250】
<実施例1>
グリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「JER630」、エポキシ当量97g/eq.)1部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032D」、エポキシ当量140g/eq)5部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマテックス社製「SO-C2」)65部、エラストマーA(不揮発成分50質量%)を20部、マレイミド化合物(デジグナーモレキュールズ製「BMI-689」)4部、クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」、フェノール性水酸基当量:117g/eq)3部、フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)4部、硬化促進剤(四国化成工業社製、「1B2PZ」)0.05部、及びメチルエチルケトン15部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。
【0251】
支持体として、離型層を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型層上に、前記の樹脂ワニスを、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが50μmとなるように均一に塗布した。その後、樹脂ワニスを80℃~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、支持体及び樹脂組成物層を含む樹脂シートを得た。
【0252】
<実施例2>
実施例1において、さらに活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量223g/eq、固形分65質量%のトルエン溶液)3.1部を用いた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0253】
<実施例3>
実施例2において、シリカA 65部をシリカB 42部に変更した。以上の事項以外は実施例2と同様にして樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0254】
<実施例4>
実施例3において、マレイミド化合物(デジグナーモレキュールズ製「BMI-689」)4部を、マレイミド化合物(デジグナーモレキュールズ製「BMI-1500」)4部に変え、メチルエチルケトンの量を15部から18部に変更した。以上の事項以外は実施例3と同様にして樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0255】
<実施例5>
実施例1において、シリカA 65部をシリカB 42部に変更し、マレイミド化合物(デジグナーモレキュールズ製「BMI-689」)4部を、マレイミド化合物(デジグナーモレキュールズ製「BMI-1700」)4部に変え、メチルエチルケトンの量を15部から18部に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0256】
<実施例6>
実施例4において、マレイミド化合物(デジグナーモレキュールズ製「BMI-1500」)4部を、マレイミド化合物(デジグナーモレキュールズ製「BMI-3000」)4部に変え、メチルエチルケトンの量を15部から20部に変更した。以上の事項以外は実施例4と同様にして樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0257】
<実施例7>
実施例2において、エラストマーAの量を20部から8部に変更し、マレイミド化合物(デジグナーモレキュールズ製「BMI-1500」)の量を4部から9部へ変更した。以上の事項以外は実施例2と同様にして樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0258】
<実施例8>
実施例7において、シリカA 65部をシリカB 42部に変更し、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032D」、エポキシ当量140g/eq)の量を5部から3部に変更し、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-7200L」、エポキシ当量247g/eq)2部を用いた。以上の事項以外は実施例7と同様にして樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0259】
<実施例9>
実施例3において、マレイミド化合物(デジグナーモレキュールズ製「BMI-689」)4部を、マレイミド化合物A 5.7部に変更した。以上の事項以外は実施例3と同様にして樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0260】
<実施例10>
実施例9において、エラストマーA 20部をエラストマーB 20部に変更した。以上の事項以外実施例9と同様にして樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0261】
<実施例11>
実施例9において、エラストマーA 20部をエラストマーC 10部に変更し、シクロヘキサノン10部を追加した。以上の事項以外は実施例9と同様にして樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0262】
<比較例1>
実施例2において、マレイミド化合物(デジグナーモレキュールズ製「BMI-689」)4部を用いなかった。以上の事項以外は実施例2と同様にして樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0263】
<比較例2>
実施例3において、マレイミド化合物(デジグナーモレキュールズ製「BMI-689」)4部を用いなかった。以上の事項以外は実施例3と同様にして樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0264】
<シリコンウエハとの密着力の評価>
12インチシリコンウエハ(厚さ775μm)の片面全体に、上述した実施例及び比較例で得た樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いてラミネートし、支持体を剥離した。得られた樹脂組成物層付きシリコンウエハをオーブン中180℃および90分の条件で熱処理して、硬化した樹脂組成物層(即ち、絶縁層)付きシリコンウエハを形成した。研磨後のサンプルを幅1cm角の試験片に切断し、絶縁層に対して垂直にφ2.7mmの接着剤付きstud pinを立てて150℃で60分加熱し、stud pinと絶縁層が接着した試験片を作製した。得られたstud pin付き試験片をQUAD GROUP社製垂直引張型試験機ROMULUSを使用して、試験スピード0.1Kg/secで垂直引っ張り試験の測定を行った。5個の試験片について測定を行い、平均値を算出し、以下の基準で評価した。
〇:垂直引っ張り強度が700kgf/cm以上
×:垂直引っ張り強度が700kgf/cm未満
【0265】
<ポリイミドとの密着力の評価>
上述した実施例及び比較例で得た樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が前記の内層基板と接合するように、内層基板の両面にラミネートした。このラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、温度100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより、実施した。次いで、ラミネートされた樹脂シートを、大気圧下、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間、熱プレスして平滑化した。その後、支持体を剥離して、樹脂組成物層、内層基板及び樹脂組成物層をこの順で含む「中間複層体I」を得た。
【0266】
他方、ポリイミドフィルム(厚み12.5μm、東レ・デュポン社製「カプトン100EN」)を用意した。このポリイミドフィルムを130℃30分乾燥させたのち、中間複層体Iの樹脂組成物層に接合するように、中間複層体Iの両面にラミネートした。このラミネートは、前述した内層基板への樹脂シートのラミネートと同じ条件で行った。これにより、ポリイミド、樹脂組成物層、内層基板、樹脂組成物層及びポリイミドをこの順で含む「中間複層体II」を得た。
【0267】
この中間複層体IIを、180℃のオーブンに投入して90分間追加で加熱した。これにより、樹脂組成物層の熱硬化が行われて、ポリイミド、樹脂組成物層の硬化物としての絶縁層、内層基板、樹脂組成物層の硬化物としての絶縁層、及び、ポリイミドをこの順で含む「評価基板A」を得た。
【0268】
評価基板Aを用いて、ポリイミドと絶縁層との密着力(ピール強度)の測定を行った。このピール強度の測定は、JIS C6481に準拠して行った。具体的には、下記の操作によって、ピール強度の測定を行った。
【0269】
評価基板Aのポリイミドに、幅10mm、長さ100mmの矩形部分を囲む切込みをいれた。この矩形部分の一端を剥がして、つかみ具(ティー・エス・イー社製、オートコム型試験機「AC-50C-SL」)で掴んだ。前記矩形部分の長さ35mmの範囲を垂直方向に引き剥がし、この引き剥がし時の荷重(kgf/cm)を、ピール強度として測定した。前記の引き剥がしは、室温中にて、50mm/分の速度で行った。ポリイミドとの密着力は以下の基準で評価した。
〇:ピール強度が0.4kgf/cmを超える。
×:ピール強度が0.4kgf/cm未満。
【0270】
<高温保存試験後の強度低下率の評価>
(評価用硬化物Cの作製)
実施例、比較例で作製した樹脂シートの一部を切り出し、180℃にて90分加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させた。その後、支持体を剥離し、評価用硬化物Cを得た。
【0271】
(HTS試験)
評価用硬化物CをHTS試験(High Thermal Storage test)に供した。HTS試験では、150℃で1000時間の条件で評価用硬化物Cを保持した。これにより、HTS試験後の評価用硬化物C’を得た。
【0272】
(HTS試験前後の破断点強度の測定)
評価用硬化物Cを、平面視ダンベル形状の1号形に切り出すことにより5個の試験片Fを得た。同様に、評価用硬化物C’を、平面視ダンベル形状の1号形に切り出すことにより5個の試験片F’を得た。試験片F、F’の各々につき、オリエンテック社製引張試験機「RTC-1250A」を用いて、23℃、試験速度5mm/minの測定条件で引張試験を行い、応力-ひずみ曲線から引張破断点強度(以下、単に「破断点強度」ともいう)を求めた。測定は、JIS K7127:1999に準拠して実施した。5個の試験片Fの破断点強度の平均値をHTS試験前の引張破断点強度σ0とした。5個の試験片F’の破断点強度の平均値をHTS試験後の引張破断点強度σ1とした。
【0273】
(変化度(%)の算出)
続いて、HTS試験前後における引張破断点強度の変化度(%)を下記式に基づき算出した。
変化度(%)={(σ1-σ0)/σ0}×100
【0274】
(評価)
上述したように得られた変化度(%)を以下の基準にしたがって評価した。
○:変化度(%)が-10%~+10%の範囲内にある場合、変化度が小さく、長期信頼性に優れている。
×:変化度(%)が-10%~+10%の範囲内になく、変化度が大きく、長期信頼性に劣る。
【0275】
【表1】
【0276】
実施例1~11において、(E)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。