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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】車載の異常検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/86 20200101AFI20240116BHJP
   G01S 7/497 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G01S17/86
G01S7/497
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020166005
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2021063800
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2019189634
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青木 豊
(72)【発明者】
【氏名】秋山 啓子
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-145952(JP,A)
【文献】特開2014-070936(JP,A)
【文献】特開平09-116892(JP,A)
【文献】特開2016-099821(JP,A)
【文献】国際公開第2019/186742(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/091970(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0012808(US,A1)
【文献】特開2018-205305(JP,A)
【文献】特開平11-002519(JP,A)
【文献】中国実用新案第207328393(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0180637(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
G01B 11/00 - 11/30
G01C 3/00 - 3/32
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲の物体を検出するために使用される光センサ(20)とカメラ(10)とのどちらかに異常が発生していることを検出する車載の異常検出装置(40)であって、
前記光センサが前記車両の周囲に光を照射して反射する反射光を受光して検出する反射強度画像(300)と、前記光センサが光を照射しないときに前記光センサが前記車両の周囲の光を受光して検出する背景光画像(310)との少なくとも一方と、前記カメラが撮影する前記車両の周囲の撮影画像(320)との相関値を算出するように構成された相関値算出部(42、S400~S406、S414)と、
前記相関値算出部が算出する前記相関値が所定範囲から外れている場合、前記光センサと前記カメラとのどちらかが異常であると判定するように構成された異常判定部(44、S408、S416、S418)と、
を備え、
前記相関値算出部は、前記車両の周囲の明るさが所定値以上の場合、前記背景光画像と前記撮影画像との前記相関値を算出し、前記車両の周囲の明るさが所定値未満の場合、前記反射強度画像と前記撮影画像との前記相関値を算出するように構成されている、
異常検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検出装置であって、
前記光センサの受光部(24)の受光素子(210)としてSPADが使用されている、
異常検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の異常検出装置であって、
前記異常判定部(S408)は、前記相関値が前記所定範囲から外れている場合、前記光センサまたは前記カメラのどちらかが仮異常であると判定するように構成されており、
前記異常判定部が前記光センサと前記カメラとのどちらかが仮異常であると判定すると、前記光センサに指示して前記反射強度画像および前記背景光画像の解像度を高くするように構成された解像度調整部(46、S412)をさらに備え、
前記相関値算出部(S414)は、前記解像度調整部により前記解像度が高くなった前記反射強度画像と前記背景光画像との少なくとも一方と前記撮影画像との前記相関値を再度算出するように構成されており、
前記異常判定部(S416、S418)は、前記相関値算出部が再度算出した前記相関値が前記所定範囲から外れている場合、前記光センサと前記カメラとのどちらかが異常であると確定するように構成されている、
異常検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の異常検出装置であって、
前記異常判定部が前記光センサと前記カメラとのどちらかが仮異常であると判定すると、前記解像度調整部は、前記光センサに検出領域を狭くするように指示することにより前記解像度を高くするように構成されている、
異常検出装置。
【請求項5】
請求項3に記載の異常検出装置であって、
前記異常判定部が前記光センサと前記カメラとのどちらかが仮異常であると判定すると、前記解像度調整部は、前記相関値が前記所定範囲から外れている検出領域の前記解像度を高くし、他の検出領域の前記解像度を低くするように前記光センサに指示するように構成されている、
異常検出装置。
【請求項6】
請求項2を引用する請求項3に記載の異常検出装置であって、
前記異常判定部が前記光センサと前記カメラとのどちらかが仮異常であると判定すると、前記解像度調整部は、前記光センサに1画素(202、204)当たりのSPAD数を少なくするように指示することにより前記解像度を高くするように構成されている、
異常検出装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の異常検出装置であって、
前記相関値算出部は、前記相関値を算出する前記反射強度画像と前記背景光画像との少なくとも一方と前記撮影画像とを複数の小領域(302、312、322)に分割し、前記反射強度画像と前記背景光画像との少なくとも一方と前記撮影画像との対応する前記小領域の前記相関値を算出するように構成されており、
前記異常判定部は、前記相関値算出部が算出する前記小領域の前記相関値が前記所定範囲から外れている場合、前記光センサと前記カメラとのどちらかが異常であると判定するように構成されている、
異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の周囲の物体を検出するために使用される光センサとカメラとのどちらかに異常が発生していることを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の周囲の物体を検出するために使用される光センサとカメラとのどちらかに異常が発生していることを検出する技術が知られている。例えば、下記の特許文献1には、光センサの発光部からビーム光を照射してから対象物で反射する反射光を受光部の複数の受光素子で受光するまでの時間に基づいて、対象物までの距離を測定する技術が記載されている。受光部は、画素毎に測定した距離に基づき、距離画像を出力する。さらに、受光部は、受光した反射光の光強度に基づいて第1明度画像を出力する。
【0003】
また、特許文献1には、カメラが撮影する撮影画像の各画素について、対象物の表面の明度に応じた第2明度画像を取得する技術が記載されている。
そして、特許文献1に記載された技術では、第1明度画像の各画素の明度を各画素の距離に基づいて補正し、補正された第1明度画像の画素と第2明度画像の画素との明度差が閾値以上の場合、対応する距離画像の画素を誤差画素として検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-070936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている技術では、カメラは正常であり、カメラが撮影する第2明度画像に異常がないことを前提にしている。しかしながら、発明者の詳細な検討の結果、以下の課題が見出された。
【0006】
すなわち、カメラが正常であることを前提にしているので、カメラが異常の場合、異常を検出できない。
本開示の1つの局面は、車両の周囲の物体を検出するために使用される光センサとカメラとのどちらが異常であっても異常を検出する技術を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの態様による車載の異常検出装置(40)は、車両の周囲の物体を検出するために使用される光センサ(20)とカメラ(10)とのどちらかに異常が発生していることを検出する異常検出装置であって、相関値算出部(42、S400~S406、S414)と、異常判定部(44、S408、S416、S418)と、を備えている。
【0008】
相関値算出部は、光センサが車両の周囲に光を照射して反射する反射光を受光して検出する反射強度画像(300)と、光センサが光を照射しないときに光センサが車両の周囲の光を受光して検出する背景光画像(310)との少なくとも一方と、カメラが撮影する車両の周囲の撮影画像(320)との相関値を算出する。
【0009】
異常判定部は、相関値算出部が算出する相関値が所定範囲から外れている場合、光センサとカメラとのどちらかが異常であると判定する。
このような構成によれば、光センサとカメラとのどちらが異常であっても、異常を検出
できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の異常検出装置の構成を示すブロック図。
図2】発光部を示す模式図。
図3】受光部を示す模式図。
図4】小領域に分割された反射強度画像または背景光画像と撮影画像とを示す模式図。
図5】異常な小領域を示す模式図。
図6】解像度を高くした受光部を示す模式図。
図7】異常検出処理を示すフローチャート。
図8】第2実施形態の発光部を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す車載の異常検出システム2は、カメラ10と、SPAD-LiDAR20と、異常検出装置40と、を備える。SPAD-LiDAR20は、発光部22と、受光部24と、距離画像検出部26と、反射強度画像検出部28と、背景光画像検出部30と、を備える。SPADは、Single Photon Avalanche Diodeの略であり、LiDARは、Light Detection and Rangeの略である。
【0012】
異常検出装置40は、相関値算出部42と、異常判定部44と、解像度調整部46と、を備える。異常検出装置40は、図示しない物体検出装置が車両の周囲の物体を検出するために使用するカメラ10とSPAD-LiDAR20とのどちらかに異常が発生していることを検出する。以下、SPAD-LiDARを単にLiDARとも言う。
【0013】
LiDAR20の発光部22は、例えば、車両の周囲の任意の方向として車両の進行方向である前方の所定領域を検出領域として、ボイスコイル等を使用する図示しない駆動部により、一定のフレームレートで水平方向に走査しつつ間欠的にパルス状のレーザ光を照射する。
【0014】
図2に示すように、発光部22は、4個のLD102~108を有するLD部100を備える。LD部100の4個のLD102~108により、垂直方向に長いレーザ光が車両前方の所定領域に対して、水平方向に走査されて照射される。LDは、Laser Diodeの略である。
【0015】
受光部24は、発光部22が照射したレーザ光が物体で反射される反射光と、太陽光または照明等の光源の光、ならびに光源の光が物体で反射される反射光である背景光とを受光する。
【0016】
図3に示すように、受光部24は、2次元的に配列された複数の画素202を受光面200に備えている。各画素は、複数の受光素子210を備えている。図3では、1個の画素202は、6×8の配列による48個の受光素子210で構成されている。受光素子210は、受光強度に応じた電流値を有する受光信号を出力する。
【0017】
受光素子210には、アバランシェフォトダイオードとして、ガイガーモードで動作するSPADが使用されている。受光素子210として、例えば、SPAD以外のアバランシェフォトダイオードまたはフォトダイオード等を用いてもよい。
【0018】
LiDAR20の距離画像検出部26は、発光部22がレーザ光を照射してから受光部24が反射光を受光するまでの時間に基づいて、物体までの距離を画素202毎に検出し、車両前方の所定領域の全体画像として距離画像を検出する。
【0019】
反射強度画像検出部28は、発光部22が照射するレーザ光の反射光を受光部24が画素202毎に受光する強度を検出し、車両前方の所定領域の全体画像として反射強度画像を検出する。
【0020】
背景光画像検出部30は、発光部22がレーザ光を照射しない間に、受光部24が画素202毎に受光する背景光の強度を検出し、車両前方の所定領域の全体画像として背景光画像を検出する。尚、本実施形態では、反射光の強度と背景光の強度とは、輝度によりグレーススケールで表される。
【0021】
図4に示すように、反射強度画像検出部28が検出する反射強度画像300と、背景光画像検出部30が検出する背景光画像310とは、それぞれ小領域302、312に分割される。そして、カメラ10が撮影する撮影画像320は、小領域302、312に対応する小領域322に分割される。画像を水平方向と垂直方向とに分割する分割数は、1以上の任意の数であり、適宜設定される。分割数が1の場合は分割しないことを意味する。
【0022】
尚、小領域302、312、322は、反射強度画像300と背景光画像312と撮影画像320との重複する領域において分割される。
異常検出装置40の相関値算出部42は、反射強度画像検出部28が検出する反射強度画像300と背景光画像検出部30が検出する背景光画像310との少なくとも一方と、カメラ10が撮影する撮影画像320との対応する小領域302、312、322について、相関関数により相関値を算出する。小領域302、312、322における相関値は、例えば各画素の相関値の合計で表される。
【0023】
異常判定部44は、相関値算出部42が算出する小領域302、312、322の相関値と所定範囲とを比較し、相関値が所定範囲から外れている場合、カメラ10とLiDAR20とのどちらかが異常であると判定する。カメラ10とLiDAR20との異常の原因として、例えば、カメラ10本体とLiDAR20本体の故障、またはカメラ10とLiDAR20との検出部への塵または汚れの付着、またはカメラ10とLiDAR20との画素不良、などが考えられる。
【0024】
異常判定部44は、相関値と比較される所定範囲を次のようにして決定する。異常判定部44は、例えば、これまで相関値算出部42が算出してきた相関値のデータを記憶しておき、相関値の標準偏差σを算出する。そして、異常判定部44は、相関値の絶対値に対して、5σ以内を所定範囲として決定する。
【0025】
また、異常判定部44は、カメラ10とLiDAR20とのどちらかが異常であると判定すると、カメラ10のレンズとLiDAR20の光透過部とにクリーニング装置が設置されている場合、クリーニング装置を作動させる。クリーニング装置を作動させることにより、汚れが除去されて相関値が所定範囲内になれば、異常原因は汚れであると判断できる。クリーニング装置を作動させても相関値が所定範囲から外れる場合、異常原因は汚れ以外であると判断できる。
【0026】
またカメラ10とLiDAR20とのどちらが異常かを、次のように判定してもよい。
異常判定部44は、相関値が所定範囲から外れている小領域において、撮影画像320の各画素、ならびに反射強度画像300と背景光画像310との少なくとも一方の各画素
について輝度の時間履歴をチェックする。異常判定部44は、カメラ10とLiDAR20との両方の装置のうち、時間履歴において輝度が変化しない装置を異常であると判定する。
【0027】
また、異常判定部44は、相関値が所定範囲から外れている小領域において、撮影画像320、ならびに反射強度画像300と背景光画像310との少なくとも一方をエッジ処理した時間履歴をチェックする。異常判定部44は、カメラ10とLiDAR20との両方の装置のうち、時間履歴においてエッジ数が継続して所定値以上の装置を異常であると判定する。
【0028】
カメラ10とLiDAR20とのうち異常な装置が特定されると、物体検出装置は、カメラ10とLiDAR20とのうち異常な装置を使用せず正常な装置を使用して車両の周囲の物体を検出する。
【0029】
また、特定の小領域について、カメラ10とLiDAR20とのうちどちらかの装置が異常で、他の小領域については両方の装置が正常の場合、異常が発生している小領域については正常な装置を使用し、他の小領域については両方の装置を使用して物体を検出してもよい。
【0030】
特定の小領域に異常が発生した装置については、異常を示すダイアグコードをフラッシュメモリ等に記憶しておくことにより、物体検出装置の異常箇所を特定して異常箇所の交換等を行うことができる。
【0031】
また、全ての小領域において相関値が所定範囲から外れている場合、カメラ10とLiDAR20とに電力を供給する電力経路に異常があるか、LiDAR20の発光部22全体の発光不良と考えられる。この場合も、異常を示すダイアグコードをフラッシュメモリ等に記憶しておくことにより、物体検出装置の異常箇所を特定して異常箇所の交換等を行うことができる。
【0032】
また、異常判定部44は、LD部100の4個のLD102~108のいずれかからレーザ光が照射される範囲の全ての小領域について、相関値が常に所定範囲から外れている場合、該当するLD102~108が発光不良であると判定する。この場合も、異常を示すダイアグコードをフラッシュメモリ等に記憶しておくことにより、物体検出装置の異常箇所を特定して異常箇所の交換等を行うことができる。
【0033】
解像度調整部46は、相関値が所定範囲から外れているのでカメラ10とLiDAR20とのどちらかが異常であると判定されると、異常と判定された小領域の反射強度画像300と背景光画像310との解像度を高くするようにLiDAR20に指示する。
【0034】
通常、LiDAR20が検出する反射強度画像300と背景光画像310との解像度は、カメラ10が撮影する撮影画像320の解像度よりも低い。そこで、異常と判定された小領域の反射強度画像300と背景光画像310との解像度を高くすることにより、小領域の反射強度画像300と背景光画像310との解像度を撮影画像320に近づけることができる。
【0035】
以下、異常と判定された小領域の反射強度画像300と背景光画像310との解像度を高くする解像度向上方式(1)~(3)について説明する。
(1)検出領域の縮小
例えば、図5に示すように、反射強度画像300と背景光画像310とにおいて斜線の小領域302、312の相関値が所定範囲から外れている場合、解像度調整部46は、斜
線の小領域302、312に対応する水平方向の検出領域だけを、車両前方の所定領域を走査するときと同じフレームレートで再度走査するようにLiDAR20に指示する。
【0036】
フレームレートが同じであれば、検出領域が狭くなることにより、異常と判定された小領域302、312の解像度は高くなる。
反射強度画像300の解像度を高くする場合、発光部22からレーザ光が照射され、レーザ光の反射光を受光部24が受光することにより小領域が走査される。背景光画像310の解像度を高くする場合、発光部22からレーザ光は照射されず、受光部24が背景光を受光することにより小領域が走査される。
【0037】
解像度調整部46の指示により解像度が高くなった小領域については、相関値算出部42により再度相関値が算出される。そして、相関値算出部42により再度算出される相関値が所定範囲から外れている場合、異常判定部44は、カメラ10とLiDAR20とのどちらかが異常であると判定する。
【0038】
(2)走査角度の調整
解像度調整部46は、図5において斜線の小領域302、312に対応する水平方向の検出領域の走査角度間隔を、車両前方の所定領域を走査するときの通常の走査角度間隔よりも小さくし、他の小領域302、312に対応する水平方向の検出領域の走査角度間隔を通常よりも大きくして、再度所定領域を走査するようにLiDAR20に指示する。
【0039】
走査角度間隔が小さくなることにより、異常と判定された斜線の小領域302、312の解像度は高くなる。尚、走査角度間隔を変更しても、車両前方の所定領域に対する走査回数が同じになるように走査角度間隔を設定することが望ましい。
【0040】
(3)1画素当たりのSPAD数の減少
解像度調整部46は、異常と判定された小領域において、1画素当たりに割り当てられているSPAD数を減少して再度走査するようにLiDAR20に指示する。1画素当たりのSPAD数が減少することにより、異常と判定された小領域の画素数が増加するので、解像度が高くなる。
【0041】
例えば、図6に示すように、受光部24の受光面200において、6×8のSPAD210で1個の画素202が構成されている場合、3×8のSPAD210で1個の画素204を構成することにより、図6において縦方向、つまり垂直方向の解像度が高くなる。水平方向のSPAD数を減少することにより、水平方向の解像度を高くしてもよい。
【0042】
[1-2.処理]
次に、異常検出装置40が実行する異常検出処理について、図7のフローチャートを用いて説明する。図7のフローチャートが示す異常検出処理は、物体検出処理の数サイクルに1度、あるいは車両のスタートスイッチがオンになったときに1度、実行される。
【0043】
図7のS400において相関値算出部42は、車両の周囲の明るさが所定値以上であるか否かを判定する。
例えば、受光センサを備えている場合、車両の周囲の明るさが所定値以上であるか否かを、受光センサの検出値と所定値とを比較して判定してもよい。
【0044】
あるいは、受光センサを備えているか否かに拘わらず、車両の周囲の明るさが所定値以上であるか否かを、反射強度画像が明るいか暗いか、ならびに背景光画像が明るいか暗いかに基づいて判定してもよい。
【0045】
反射強度画像が明るいか暗いかは、受光部24が画素毎に受光する反射光の平均値が所定値以上であるか否かに基づいて決定される。同様に、背景光画像が明るいか暗いかは、受光部24が画素毎に受光する背景光の平均値が所定値以上であるか否かに基づいて決定される。反射強度画像と背景光画像とのそれぞれが明るいか暗いかを判定するときに使用される所定値は、同じでもよいし異なっていてもよい。
【0046】
反射強度画像が明るく、背景光画像が暗い場合、車両の周囲の明るさは所定値未満であり、車両の周囲は暗いと判定される。反射強度画像と背景光画像との両方が明るい場合、車両の周囲の明るさは所定値以上であり、車両の周囲は明るいと判定される。
【0047】
また、反射強度画像と背景光画像との両方が暗い場合、後段で求められるカメラ10の撮影画像と、反射強度画像または背景光画像との相関値が所定範囲を外れていれば、LiDAR20の故障と判定される。
【0048】
S400の判定がYesである、つまり、車両の周囲の明るさが所定値以上である場合、S402において相関値算出部42は、カメラ10が撮影する撮影画像との相関値を算出する画像として背景光画像をLiDAR20から取得する。これは、車両の周囲の明るさが所定の明るさ以上であれば、背景光の強度が十分に大きく、背景光画像の各画素の強度も充分に大きいと判断できるからである。
【0049】
S400の判定がNoである、つまり、車両の周囲の明るさが所定の明るさ未満である場合、S404において相関値算出部42は、カメラ10が撮影する撮影画像との相関値を算出する画像として反射強度画像をLiDAR20から取得する。これは、車両の周囲の明るさが所定の明るさ未満であれば、背景光の強度が小さく、背景光画像の各画素の強度も小さいので、背景光画像の強度よりも反射強度画像の強度の方が大きいと判断できるからである。
【0050】
S406において相関値算出部42は、S402またはS404で取得された背景光画像または反射強度画像の一方と、カメラ10が撮影する撮影画像との相関値を、分割された小領域毎に相関関数により算出する。
【0051】
S408において異常判定部44は、今回の小領域において算出された相関値が所定範囲内か否かを判定する。相関値が大きい方が相関が強い場合は、所定範囲内か否かは相関値が所定値以上であるか否かによって判定される。相関値が小さい方が相関が強い場合は、所定範囲内か否かは相関値が所定値以下であるか否かによって判定される。
【0052】
S408の判定がNoである、つまり今回の小領域において算出された相関値が所定範囲から外れている場合、処理はS412に移行する。
S408の判定がYesである、つまり今回の小領域において算出された相関値が所定範囲内の場合、S410において異常判定部44は、全ての小領域についてS408の判定が実行されたか否かを判定する。
【0053】
S410の判定がNoである、つまりS408の判定が実行されていない小領域が存在する場合、処理はS406に移行する。S410の判定がYesである、つまり全ての小領域についてS408の判定が実行された場合、カメラ10とLiDAR20とのどちらも異常は発生しておらず正常であると判断され、本処理は終了する。
【0054】
S412において解像度調整部46は、相関値が所定範囲から外れている小領域について、S402またはS404で採用された背景光画像または反射強度画像の解像度を、例えば前述した解像度向上方式(1)~(3)に基づいて高くするようにLiDAR20に
指示する。
【0055】
S414において相関値算出部42は、小領域において、解像度が高くなった背景光画像または反射強度画像とカメラ10による撮影画像との相関値を算出する。
S416において異常判定部44は、今回の小領域において再度算出された相関値が、所定範囲内か否かを判定する。S416の判定がYesである、つまり再度算出された相関値が所定範囲内の場合、異常判定部44は、カメラ10とLiDAR20とに異常はないと判断し、処理をS410に移行する。
【0056】
S416の判定がNoである、つまり再度算出された相関値が所定範囲から外れている場合、S418において異常判定部44は、カメラ10とLiDAR20とのどちらかが異常であると確定する。この場合、カメラ10とLiDAR20とを使用した物体検出処理は中止される。
【0057】
[1-3.効果]
以上説明した上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1a)LiDAR20が検出する反射強度画像または背景光画像の一方とカメラ10が撮影する撮影画像との相関値を算出することにより、LiDAR20とカメラ10とのどちらが異常であっても異常を検出できる。
【0058】
(1b)小領域において算出された反射強度画像または背景光画像の一方と撮影画像との相関値により仮異常と判定されると、仮異常と判定された小領域において、反射強度画像または背景光画像のうち撮影画像と相関値を算出する方の画像の解像度を高めて再度画像が検出される。これにより、解像度が高くなった反射強度画像または背景光画像の一方を使用して、撮影画像との相関値を高精度に算出できるので、異常判定を高精度に実行できる。
【0059】
(1c)仮異常と判定された小領域だけを検出領域とする場合、画像全体ではなく、仮異常と判定された小領域についてだけ、LiDAR20に指示して反射強度画像または背景光画像のうち撮影画像と相関値を算出する方の画像の解像度を高めて再度画像が検出される。そして、画像全体ではなく、仮異常と判定された小領域について、反射強度画像または背景光画像のうち解像度が高くなった画像と撮影画像との相関値が算出される。これにより、異常判定に要する処理負荷を低減できる。
【0060】
(1d)車両の周囲の明るさに基づいて、反射強度画像または背景光画像のうち、カメラ10が撮影する撮影画像との相関値を算出する画像を選択するので、反射強度画像と背景光画像との両方と撮影画像との相関値を算出して異常判定する場合に比べ、異常判定の処理負荷を低減できる。
【0061】
上記実施形態では、LiDAR20が光センサに対応する。
[2.第2実施形態]
[2-1.第1実施形態との相違点]
図8に示す第2実施形態の発光部22のLD部110は、通常使用される第1のLD部120に加え、予備の第2のLD部130を備えている点で、第1実施形態と異なる。他の第2実施形態の基本的な構成は図1に示す第1実施形態と同様である。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0062】
[2-2.処理]
図8に示すように、第2実施形態の発光部22は、通常、第1のLD部120の4個のLD122~128からレーザ光を照射し、第2のLD部130のLD132~138か
らレーザ光を照射しない。図8では、使用するLD122~128、132~138を白、使用しないLD122~128、132~138を斜線で示している。
【0063】
異常判定部44は、第1のLD部120の4個のLD122~128のうち、例えばLD122からレーザ光が照射される範囲の全ての小領域について相関値が常に所定範囲から外れている場合、該当するLD122が発光不良であると判定する。
【0064】
この場合、異常判定部44は、該当する異常なLD122に代えて、異常なLD122と隣り合う第2のLD部130のLD132からレーザ光を照射するように、発光部22に指示する。
【0065】
[2-3.効果]
第2実施形態では、第1実施形態の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(2a)第1のLD部120の4個のLD122~128のうち、例えばLD122に発光不良が発生すると、異常なLD122に代えて隣り合う第2のLD部130のLD132からレーザ光を照射するので、物体検出装置による物体検出を正常に継続できる。
【0066】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0067】
(3a)上記実施形態では、車両の周囲の明るさに基づいて、反射強度画像または背景光画像のうち、カメラ10が撮影する撮影画像との相関値を算出する画像が選択された。これに対し、車両の周囲の明るさに拘わらず、反射強度画像と背景光画像との両方と撮影画像との相関値を算出して異常判定してもよい。この場合、反射強度画像と背景光画像とのうち少なくとも一方の画像と撮影画像との相関値が所定範囲内であれば、カメラ10とLiDAR20とは正常であると判定される。
【0068】
(3b)上記実施形態では、全体画像を分割した小領域毎に算出される反射強度画像または背景光画像の一方と撮影画像との相関値に基づいて、異常判定が実行された。これに対し、全体画像を分割せず、反射強度画像または背景光画像の一方、あるいは反射強度画像と背景光画像との両方と、撮影画像との全体画像同士の相関値を算出して異常判定を実行してもよい。
【0069】
この場合、異常判定を実行する前に、全体画像について、反射強度画像または背景光画像の一方、あるいは反射強度画像と背景光画像との両方の解像度を高めてから撮影画像との相関値を算出してもよい。
【0070】
(3c)上記実施形態では、光センサであるLiDAR20の発光部22は、車両の進行方向である前方の所定領域に対して、水平方向に走査しつつ間欠的にパルス状のレーザ光を照射して、受光部24が物体で反射される反射光を受光した。
【0071】
これに対し、車両の進行方向である前方の所定領域に対して高出力のレーザ光を照射し、2次元受光素子アレイで反射光を受光してもよい。これにより、発光部からの1回の照射で、車両の進行方向である前方の所定領域に存在する物体が検出される。
【0072】
この場合、反射強度画像または背景光画像の一方と撮影画像との相関値が所定範囲を外れていると判定されると、解像度調整部46は、例えば、1画素当たりに割り当てられているSPAD数を減少して再度光を照射するように光センサに指示する。1画素当たりのSPAD数が減少することにより、前方の所定領域に対応する画素数が増加するので、解
像度が高くなる。
【0073】
(3d)上記実施形態では、光センサであるLiDAR20の発光部22は、車両の進行方向である前方の所定領域に対して、垂直方向に長いレーザ光を水平方向に走査して照射した。これに対し、光センサ20の発光部22の構成によっては、水平方向と垂直方向との両方向に走査してレーザ光を照射してもよい。
【0074】
(3e)本開示に記載の異常検出装置40およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の異常検出装置40およびその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の異常検出装置40およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。異常検出装置40に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0075】
(3f)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0076】
(3g)上述した異常検出装置40の他、当該異常検出装置40を構成要素とするシステム、当該異常検出装置40としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、異常検出方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0077】
10:カメラ、20:LiDAR(光センサ)、40:異常検出装置、42:相関値算出部、44:異常判定部、46:解像度調整部、202、204:画素、210:受光素子、300:反射強度画像、310:背景光画像、320:撮影画像、302、312、322:小領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8