(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】自動試料注入装置
(51)【国際特許分類】
G01N 30/24 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
G01N30/24 Z
(21)【出願番号】P 2020178625
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】福島 大貴
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-102262(JP,A)
【文献】特開平10-104241(JP,A)
【文献】国際公開第2012/117844(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/207844(WO,A1)
【文献】米国特許第4713974(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
G01N 35/00-35/10
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工程を含む分析装置への試料注入動作を実行するインジェクタ、及び、前記インジェクタの動作管理を行なうための管理装置を備えた自動試料注入装置であって、
前記インジェクタは、
前記試料注入動作で使用される、内部に収容される液体が異なる複数種類のバイアルが予め設定された場所に設置されるターレットと、
前記ターレット上の所定の場所にバイアルが設置されているか否かを検知するためのバイアルセンサと、を備え、
前記管理装置は、
ユーザにより入力される情報に基づき、前記試料注入動作において使用すべきバイアルの種類に関する条件を設定するように構成された条件設定部と、
前記インジェクタが前記試料注入動作を開始する前に、前記条件設定部により設定された前記条件において前記試料注入動作で使用するように設定されている種類のバイアルのうち前記ターレット上において不足しているバイアルが存在するか否かを、前記バイアルセンサの検知結果を用いて判定するように構成されたバイアル判定部と、を備えている、自動試料注入装置。
【請求項2】
前記ターレット上には、複数の同一種類のバイアルが設置されるようになっており、
前記バイアル判定部は、前記条件設定部によって前記試料注入動作において同一種類のバイアルを複数回にわたって使用するように設定されている場合に、複数回にわたって使用するように設定されている種類のバイアルが前記ターレット上に複数設置されているか否かを判定するように構成されており、
前記管理装置は、
前記条件設定部により設定された前記条件に基づいて前記試料注入動作のためのシーケンス情報を作成するシーケンス作成部であって、前記バイアル判定部の判定結果に基づき、前記複数の工程のそれぞれにおいて使用するバイアルを設定することにより前記シーケンス情報を作成するように構成されているシーケンス作成部をさらに備えており、
前記インジェクタは、前記シーケンス作成部により作成された前記シーケンス情報に基づいて前記試料注入動作を実行するように構成されている、請求項1に記載の自動試料注入装置。
【請求項3】
前記シーケンス作成部は、前記試料注入動作において複数回にわたって使用するように設定されている同一の溶媒を収容する複数のバイアルが前記ターレット上に設置されていることが前記バイアル判定部の判定結果により検知された場合に、当該溶媒の複数回にわたる使用を、当該溶媒を収容する複数のバイアルに割り振るように構成されている、請求項2に記載の自動試料注入装置。
【請求項4】
前記バイアル判定部は、判定対象の種類のバイアルが前記ターレット上に設置されていないと判定したときにエラーを出力するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の自動試料注入装置。
【請求項5】
前記バイアル判定部の判定対象のバイアルの種類には、溶媒を収容する溶媒バイアルが含まれる、請求項1から4のいずれか一項に記載の自動試料注入装置。
【請求項6】
前記バイアル判定部の判定対象のバイアルの種類には、廃液を収容しておくための廃液バイアルが含まれる、請求項1から5のいずれか一項に記載の自動試料注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフィ分析用の自動試料注入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフィ分析を行なうための分析装置に試料を自動注入する自動試料注入装置が知られている(特許文献1参照)。自動試料注入装置は、実際に分析装置への試料注入に関する一連の動作(以下、試料注入動作と称する)を実行するインジェクタを備えている。インジェクタは、試料や溶媒などの液体を収容する複数のバイアルが設置されるターレット、及び、ターレット上のバイアルから液を吸入したり分注したりするためのシリンジを備えている。
【0003】
インジェクタが実行すべき試料注入動作には、試料注入前の溶媒を用いたシリンジの洗浄、試料によるシリンジの共洗い、分析装置への試料注入、試料注入後のシリンジの洗浄、といった複数の工程が含まれる。各工程において使用される溶媒の種類、その溶媒を用いた洗浄の回数といった条件はユーザが事前に設定する。インジェクタは、ユーザによって設定された各条件に基づくシーケンス情報にしたがって試料注入動作を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ユーザが設定した条件に基づくシーケンスのとおりにインジェクタが試料注入動作を実行するためには、ターレット上の所定の場所に必要なバイアルが正しく設置されている必要がある。必要なバイアルをユーザがターレットに設置し忘れていたりバイアルの設置する場所を間違っていたりすると、インジェクタは試料注入動作を正しく実行することができず、分析結果に悪影響を与える。
【0006】
そこで、各工程の実行時に、フォトセンサなどによってターレットの所定の位置にバイアルが設置されているか否かを検知し、バイアルが設置されていない場合は、エラーを出して試料注入動作を中断したり、その工程をスキップしたりするといった対応を採ることもあり得る。しかし、そのような対応では、同じバイアルを複数の工程で使用するような場合に、同じバイアルの有無を何度も確認することになり、無駄な時間が発生する。また、ユーザが不在の状態での自動連続分析を予定していた場合などにエラーで試料注入動作を中断すると、ユーザが戻ってくるまで試料注入動作が中断されたままになるため、分析効率が悪くなるという問題がある。さらに、シリンジに吸入した液体を廃液バイアルへ廃棄する工程の直前に所定位置に廃液バイアルが設置されていないことを検知した場合、シリンジ内に吸入した液体の捨て場所がなく、シリンジ内に液体が溜まり続けることになり、その液体の性質によって不具合の原因となり得る。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、試料注入動作を実行するのに必要なバイアルがターレットの所定位置に設置されていない状態で試料注入動作が開始されることを防止できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る自動試料注入装置は、複数の工程を含む分析装置への試料注入動作を実行するインジェクタ、及び、前記インジェクタの動作管理を行なうための管理装置を備えている。前記インジェクタは、前記試料注入動作で使用される、内部に収容される液体が異なる複数種類のバイアルが予め設定された場所に設置されるターレットと、前記ターレット上の所定の場所にバイアルが設置されているか否かを検知するためのバイアルセンサと、を備えている。前記管理装置は、ユーザにより入力される情報に基づき、前記試料注入動作において使用すべきバイアルの種類に関する条件を設定するように構成された条件設定部と、前記インジェクタが前記試料注入動作を開始する前に、前記条件設定部により設定された前記条件において前記試料注入動作で使用するように設定されている種類のバイアルのうち前記ターレット上において不足しているバイアルが存在するか否かを、前記バイアルセンサの検知結果を用いて判定するように構成されたバイアル判定部と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る自動試料注入装置によれば、ユーザにより入力される情報に基づいて試料注入動作中のインジェクタの条件が設定された後、その条件に基づく試料注入動作が開始される前に、当該試料注入動作で使用される種類のバイアルのうち前記ターレット上において不足しているバイアルが存在するか否かを検知するように構成されているので、試料注入動作を実行するのに必要なバイアルが揃っているか否かをその試料注入動作が開始される前に知ることができる。これにより、試料注入動作を実行するのに必要なバイアルがターレットの所定位置に設置されていない状態で試料注入動作が開始されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】自動試料注入装置の一実施例を示す概略構成図である。
【
図2】同実施例における条件設定から試料注入動作までの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3】同実施例における洗浄シーケンスの作成動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】ターレット上に設定された溶媒バイアルの設置場所の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る自動試料注入装置の一実施例について説明する。
【0012】
図1に示されているように、自動試料注入装置は、インジェクタ2、管理装置4及び情報表示装置6を備えている。インジェクタ2は、ガスクロマトグラフィ分析を行なうための分析装置の筐体上に配置され、分析装置の筐体の上面に設けられた注入ポートへ試料を注入するものである。インジェクタ2は、管理装置4から提供されるシーケンス情報にしたがって分析装置への試料注入動作を実行する。試料注入動作には、試料注入前のシリンジ10の洗浄、分析装置への試料注入、試料注入後のシリンジ10の洗浄といった複数の工程が含まれており、各工程において使用される溶媒の種類、その溶媒を用いた洗浄の回数といった条件はユーザが管理装置4において設定する。
【0013】
インジェクタ2は、インジェクタ本体8及びターレット12を備えている。インジェクタ本体8は、液体の吸入及び吐出を行なうシリンジ10を備えている。インジェクタ本体8は、先端が鉛直下方を向いた状態のシリンジ10を上下動させることができる。ターレット12は円盤形状のテーブルであり、上面に複数のバイアルホルダ14を有する。複数のバイアルホルダ14は同一円周上に配列されている。各バイアルホルダ14には、溶媒を収容したバイアル、試料を収容したバイアル、廃液を貯留しておくためのバイアルなどが載置される。ターレット12は、バイアルホルダ14が配列されている円周の中心を回転中心として水平面内で回転し、バイアルホルダ14に載置されている任意のバイアルをシリンジ10の直下に配置することができる。
【0014】
図4に示されているように、ターレット12上には、互いに異なる溶媒をそれぞれ収容した複数のバイアルを設置することができ、各溶媒を収容したバイアルの設置場所(バイアルホルダ14)は予め規定されている。
図4の例では、溶媒A、溶媒B、溶媒C、溶媒Dの4種類の溶媒をそれぞれ収容したバイアルを設置するためのバイアルホルダ14がそれぞれ3つずつ用意されており、各溶媒A~Dを収容したバイアルを最大で3本ずつターレット12に設置することができる。
【0015】
ここで、同じ溶媒を収容するバイアルは互いに同じ種類のバイアルである。したがって、溶媒Aを収容するバイアルが3本存在する場合、それら3本のバイアルは互いに同じ種類のバイアルである。一方で、溶媒Aを収容するバイアルと溶媒Bを収容するバイアルは互いに異なる種類のバイアルであり、各種溶媒を収容するバイアルと廃液を貯留しておくためのバイアルは互いに異なる種類のバイアルである。つまり、同じ種類のバイアルとは、バイアル自体(容器自体)の種類では無く、内部に収容された液体が同じであることや、廃液が貯留されるバイアルであることを意味する。
【0016】
図1に戻って、インジェクタ2は、ターレット12の各バイアルホルダ14上にバイアルが設置されているか否かを検知するためのバイアルセンサ16を備えている。この実施例では、バイアルセンサ16は発光部16a及び受光部16bを有する透過型フォトセンサであり、シリンジ10の近傍の所定位置に配置されたバイアルホルダ14上にバイアルが設置されているか否かを光学的に検知することができる。
【0017】
管理装置4は、汎用のパーソナルコンピュータ又は専用のコンピュータによって実現されるものである。管理装置4には、種々の情報表示を行なう液晶ディスプレイなどの情報表示装置6が通信可能に接続されている。
【0018】
管理装置4には、条件設定部18、シーケンス作成部20及びバイアル判定部22が設けられている。条件設定部18、シーケンス作成部20及びバイアル判定部22は、管理装置4内のCPUが所定のプログラムを実行することによって得られる機能である。
【0019】
条件設定部18は、ユーザにより入力される情報に基づいて試料注入動作の各工程の条件を設定するように構成されている。条件設定部18によって設定される条件には、試料注入前の洗浄及び試料注入後の洗浄でそれぞれ使用する溶媒の種類(例えば、溶媒A、溶媒B)、各溶媒を用いて実施する洗浄の回数などが含まれる。
【0020】
シーケンス作成部20は、条件設定部18により設定された条件に基づいて試料注入動作に含まれる各工程のシーケンス情報を作成するように構成されている。シーケンス作成部20によって作成されるシーケンス情報には、例えば、各溶媒を用いた洗浄においてターレット12上に載置されている各溶媒のバイアルのうちどのバイアルを使用するのかを示す情報が含まれる。例えば、条件設定部18によって試料注入前のシリンジ10の洗浄工程において溶媒Aを用いた洗浄を3回実行するように設定されており、ターレット12上には溶媒Aを収容したバイアルが2本設置されている場合、シーケンス作成部20は、溶媒Aを用いた1回目、2回目、3回目のそれぞれの洗浄においてどのバイアルを使用するのか、すなわち、どのバイアルに収容されている溶媒Aを使用するのかを設定することによって当該洗浄動作のシーケンス情報を作成する。
【0021】
バイアル判定部22は、条件設定部18により試料注入動作において使用するように設定されている種類のバイアルのうちターレット12上において不足しているバイアルが存在するか否かを、バイアルセンサ16の検知結果に基づいて判定するように構成されている。バイアル判定部22による判定対象のバイアルには、各種溶媒を収容する溶媒バイアルのほか、廃液を貯留しておくための廃液バイアルが含まれる。例えば、試料注入前のシリンジ10の洗浄工程で溶媒A、B、Dを使用するように設定されている場合、バイアル判定部22は、溶媒A、B、Dを収容するバイアルがそれぞれ少なくとも1本はターレット12上に存在しているか否か、洗浄に使用したそれらの溶媒を貯留しておくための廃液バイアルがターレット12上に存在しているか、を判定する。
【0022】
条件設定から試料注入動作までの動作の一例について、
図1とともに
図2のフローチャートを用いて説明する。
【0023】
条件設定部18は、ユーザにより入力される情報に基づいて試料注入動作の各工程の条件を設定する(ステップ101)。条件設定部18により各工程の条件が設定された後、シーケンス作成部20が各工程のシーケンス情報を作成するが、その際、バイアル判定部22は、各工程で使用するように設定されている種類のバイアルがターレット12上に設置されているか否かを判定する(ステップ102)。使用するように設定されている種類のバイアルがターレット12上に設置されていない場合、すなわち、ターレット12上のバイアルが不足している場合(ステップ103:Yes)、バイアル判定部22はエラーを出力し、例えば、不足しているバイアルの種類を情報表示部6に表示する。
【0024】
試料注入動作の実行に必要な種類のバイアルがすべてターレット12に設置されている場合(ステップ103:No)、シーケンス作成部20は各工程のシーケンス情報を作成してインジェクタ2へ送信する(ステップ104)。インジェクタ2はシーケンス作成部20によって作成されたシーケンス情報に基づき、分析装置への試料注入動作を実行する(ステップ105)。
【0025】
次に、試料注入前及び/又は試料注入後の洗浄工程におけるシーケンス情報(洗浄シーケンス)の作成動作の一例を、
図1とともに
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0026】
ここでは、
図4のように、ターレット12上に溶媒A~Dを収容するバイアルをそれぞれ3本ずつ設置可能とし、同じ溶媒を収容する3本のバイアルはそれぞれバイアル1、バイアル2、バイアル3と定義されているものとする。シーケンス作成部20は、各溶媒A~Dを使用する洗浄工程において各溶媒A~Dを収容するバイアル1~3のうちどのバイアルを使用するのか(使用バイアル)を溶媒ごとに設定していく。
【0027】
最初に、シーケンス作成部20は、対象となる溶媒を特定する(ステップ201)。ここでは、溶媒Aが対象の溶媒として特定されたものとして説明を続ける。シーケンス作成部20は、条件設定部18により設定された溶媒Aによる洗浄回数を参照し(ステップ202)、溶媒Aによる洗浄回数が1回以上に設定されている場合(ステップ203:Yes)、シーケンス作成部20は、使用バイアルを設定しようとしている当該洗浄が、装置が起動した後の溶媒Aを用いた1回目の分析における洗浄か否かを確認する(ステップ204)。
【0028】
当該洗浄が、装置が起動した後の溶媒Aを用いた1回目の分析における洗浄である場合(ステップ204:Yes)、シーケンス作成部20は、バイアル番号を1(すなわち、バイアル1)に仮設定する(ステップ205)。バイアル判定部22は、溶媒Aのバイアル1を設置すべきバイアルホルダ14上にバイアルが設置されているか否かをバイアルセンサ16の検知結果を用いて判定する(ステップ206)。溶媒Aのバイアル1が設置されている場合(ステップ206:Yes)、シーケンス作成部20は、当該洗浄での使用バイアルを「バイアル1」と設定する(ステップ210)。一方で、溶媒Aのバイアル1が設置されていない場合には(ステップ206:No)、バイアル判定部22がエラーを出力する。
【0029】
また、当該洗浄が、装置が起動した後の溶媒Aを用いた2回目以降の分析における洗浄である場合(ステップ204:No)、シーケンス作成部20は、前回の洗浄(直前に使用バイアルを設定した洗浄)の使用バイアルのバイアル番号nに+1をした番号「n+1」を当該洗浄の使用バイアルのバイアル番号(すなわち、バイアルn+1)に仮設定する(ステップ207)。例えば、当該洗浄が2回目の分析における洗浄であれば、使用バイアルはバイアル2に仮設定される。また、当該洗浄が3回目の分析における洗浄であり、2回目の分析における洗浄の使用バイアルがバイアル2(すなわち、n=2)に設定されていれば、当該洗浄の使用バイアルはバイアル3(すなわち、2+1)に仮設定される。
【0030】
仮設定したバイアル番号「n+1」が溶媒Aのバイアルの設置可能数(この例では3)を超えた場合(ステップ208:Yes)、シーケンス作成部20は、当該洗浄における使用バイアルを「バイアル1」に設定する(ステップ205、206、210)。一方で、仮設定したバイアル番号「n+1」が溶媒Aのバイアルの設置可能数を超えない場合(ステップ208:No)、バイアル判定部22は、溶媒Aのバイアルn+1を設置すべきバイアルホルダ14上にバイアルが設置されているか否かをバイアルセンサ16の検知結果を用いて判定する(ステップ209)。溶媒Aのバイアルn+1がターレット12上に設置されている場合(ステップ209:Yes)、シーケンス作成部20は、当該洗浄での使用バイアルを「バイアルn+1」と設定する(ステップ210)。一方で、溶媒Aのバイアルn+1がターレット12上に設置されていない場合(ステップ209:No)、シーケンス作成部20は、当該洗浄における使用バイアルを「バイアル1」に設定する(ステップ205、206、210)。すなわち、バイアル判定部22は、同一種類のバイアルが複数回にわたって使用されるように設定されている場合、その種類のバイアルがターレット12上に複数設置されているか否かを判定し、シーケンス作成部20は、バイアル判定部22の判定結果に基づいて各洗浄での使用バイアルを設定する。
【0031】
上記の動作を溶媒Aについて設定されている洗浄回数の分だけ実行し(ステップ211)、設定された洗浄回数のそれぞれにおいて使用する使用バイアルを設定した後、次の溶媒(溶媒B)についてもステップ201~211を同様に実行する(ステップ212)。このように、すべての溶媒A~Dについて上記ステップ201~211を実行することにより、洗浄工程における各溶媒A~Dの使用バイアルを設定する。これにより、洗浄工程におけるシーケンスが設定される。ここで作成されたシーケンスはインジェクタ2に提供され、インジェクタ2は提供されたシーケンスにしたがって各溶媒A~Dを用いた洗浄を実行する。
【0032】
上記動作によれば、ターレット12上に溶媒Aを収容するバイアルが2本(バイアル1及びバイアル2)設置されている状態で、溶媒Aを使用する洗浄の回数が4回に設定された場合には、溶媒Aを用いた1回目の洗浄でバイアル1、2回目の洗浄でバイアル2、3回目の洗浄でバイアル1、4回目の洗浄でバイアル2が使用される設定された洗浄シーケンスが作成される。また、ターレット12上に溶媒Aを収容するバイアルが1本(バイアル1のみ)しか設置されていない状態で、溶媒Aを使用する洗浄の回数が4回に設定された場合には、溶媒Aを使用するすべての洗浄においてバイアル1を使用するように設定された洗浄シーケンスが作成される。このように、洗浄工程において使用予定の各溶媒のバイアルが少なくとも1本、ターレット12上の所定の場所に設置されていれば、エラーになることなくシーケンスが作成され、洗浄工程を含む試料注入動作が実行される。
【0033】
以上において説明した実施例は、本発明に係る自動試料注入装置の実施形態の一例を示したに過ぎない。本発明に係る自動試料注入装置の実施形態は、以下に示すとおりである。
【0034】
本発明に係る自動試料注入装置の一実施形態では、複数の工程を含む分析装置への試料注入動作を実行するインジェクタ、及び、前記インジェクタの動作管理を行なうための管理装置を備えており、前記インジェクタは、前記試料注入動作で使用される、内部に収容される液体が異なる複数種類のバイアルが予め設定された場所に設置されるターレットと、前記ターレット上の所定の場所にバイアルが設置されているか否かを検知するためのバイアルセンサと、を備え、前記管理装置は、ユーザにより入力される情報に基づき、前記試料注入動作において使用すべきバイアルの種類に関する条件を設定するように構成された条件設定部と、前記インジェクタが前記試料注入動作を開始する前に、前記条件設定部により設定された前記条件において前記試料注入動作で使用するように設定されている種類のバイアルのうち前記ターレット上において不足しているバイアルが存在するか否かを、前記バイアルセンサの検知結果を用いて判定するように構成されたバイアル判定部と、を備えている。なお、この実施形態において、同一の液体を収容する複数のバイアルは互いに同一種類のバイアルであると定義され、互いに異なる液体を収容する複数のバイアルは互いに種類の異なるバイアルであると定義されている。
【0035】
上記実施形態の第1態様では、前記ターレット上には、複数の同一種類のバイアルが設置されるようになっており、前記バイアル判定部は、前記条件設定部によって前記試料注入動作において同一種類のバイアルを複数回にわたって使用するように設定されている場合に、複数回にわたって使用するように設定されている種類のバイアルが前記ターレット上に複数設置されているか否かを判定するように構成されており、前記管理装置は、前記条件設定部により設定された前記条件に基づいて前記試料注入動作のためのシーケンス情報を作成するシーケンス作成部であって、前記バイアル判定部の判定結果に基づき、前記複数の工程のそれぞれにおいて使用するバイアルを設定することにより前記シーケンス情報を作成するように構成されているシーケンス作成部をさらに備えており、前記インジェクタは、前記シーケンス作成部により作成された前記シーケンス情報に基づいて前記試料注入動作を実行するように構成されている。このような態様により、ターレット上に設置されている各種バイアルの本数に応じたシーケンスが自動的に作成されるので、ターレット上に設置されている各種バイアルの本数を考慮してユーザがシーケンスを作成する必要がなく、試料注入動作に関するユーザの設定作業の負担が軽減される。
【0036】
上記第1態様において、前記シーケンス作成部は、前記試料注入動作において複数回にわたって使用するように設定されている同一の溶媒を収容する複数のバイアルが前記ターレット上に設置されていることが前記バイアル判定部の判定結果により検知された場合に、当該溶媒の複数回にわたる使用を、当該溶媒を収容する複数のバイアルに割り振るように構成されていてもよい。そうすれば、ユーザがターレットに同一の溶媒を収容する複数のバイアルを設置していた場合に、ユーザが各溶媒を収容するバイアルの本数を設定しなくても、設置された複数のバイアルを満遍なく使用することができる。
【0037】
上記実施形態の第2態様では、前記バイアル判定部は、判定対象の種類のバイアルが前記ターレット上に設置されていないと判定したときにエラーを出力するように構成されている。このような態様により、ユーザは試料注入動作の条件設定とターレット上のバイアルの設置状況とが対応していないことを容易に認識できる。この第2態様は、上記第1態様と組み合わせることができる。
【0038】
上記実施形態の第3態様では、前記バイアル判定部の判定対象のバイアルの種類には、溶媒を収容する溶媒バイアルが含まれる。この第3態様は、上記第1態様及び/又は第2態様と組み合わせることができる。
【0039】
上記実施形態の第4態様では、前記バイアル判定部の判定対象のバイアルの種類には、廃液を収容しておくための廃液バイアルが含まれる。この第3態様は、上記第1態様、第2態様及び/又は第3態様と組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0040】
2 インジェクタ
4 管理装置
6 情報表示装置
8 インジェクタ本体
10 シリンジ
12 ターレット
14 バイアルホルダ
16 バイアルセンサ
16a 発光部
16b 受光部
18 条件設定部
20 シーケンス作成部
22 バイアル判定部