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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】車載装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
B60R11/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020204966
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092264
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】前田 和則
(72)【発明者】
【氏名】野場 悠佑
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-302797(JP,A)
【文献】特開2007-331465(JP,A)
【文献】特開2014-051243(JP,A)
【文献】登録実用新案第3116660(JP,U)
【文献】特開平09-055586(JP,A)
【文献】実開平02-127075(JP,U)
【文献】特開2001-184535(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005011605(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 9/00-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載装置であって、
スイッチ当接部材(76)を有するベース(70)と、
前記ベースを、第1の位置または第2の位置に保持し、且つ、前記第1の位置から前記第2の位置に到る既定経路以外での前記ベースの移動を阻止する構造を有するケース(30)と、
当該車載装置が分解または破壊された場合に、保護機能を作動させるために用いられ、前記ベースが前記第1の位置にあるときに、前記スイッチ当接部材に当接して接点が閉じた状態となり、前記ベースが前記第2の位置にあるときに、前記スイッチ当接部材との当接から解放されて前記接点が開放された状態となるように前記ケース内に固定されるスイッチ(16)と、
を備える車載装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載装置であって、
前記ベースおよび前記ケースは、前記第2の位置にある前記ベースが前記第1の位置に逆行することを防止するように構成された逆行防止機構(811,821,831,841,611b,621b,631b,641b)を有する
車載装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車載装置であって、
前記ケースは、前記既定経路に沿った前記ベースの移動をガイドするように構成されたガイド部材(61~66)を更に備える、
車載装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車載装置であって、
前記ケースに固定された状態で前記ケースに収容されるインナーユニット(90)を更に備え、
前記スイッチは、前記インナーユニットに設けられる、
車載装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車載装置であって、
前記インナーユニットは回路基板(102)を備え、
前記スイッチは前記回路基板に設けられる、
車載装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の車載装置であって、
車両の取付面(200)に設けられるブラケット(210)に対して前記取付面に非垂直な方向へ前記ケースをスライドされることによって、前記ケースが前記ブラケットに装着されるように構成された装着部(41,42,43,44)を更に備える、
車載装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車載装置であって、
前記ケースは、前記スイッチおよび前記ベースが収容される空間を形成する側壁(302,303)を備え、
前記装着部は、前記側壁の内側面に設けられ、スライド元側が固定端となりスライド先側が開放端となるよう舌片状に構成され、
前記ブラケットに設けられ被嵌合部の内側面に形成された凹部に、前記装着部を嵌合させることで、前記装着部と前記側壁とで前記被嵌合部を挟持するように構成された
車載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ETCレーンに設置された路側アンテナがETC通信することで料金決済をするETCシステムの車載器(以下、ETC車載器)を、車両に標準搭載された状態で一般顧客に販売することが検討され、すでに運用もされている。ETCは登録商標である。このようなETC車載器に対しては、盗難による不正使用を抑制するための保護機能を備えることが要求されることがある。この保護機能は、例えば、ETC車載器が車両から取り外されまたは分解された場合は少なくともETC車載器内に記録されている情報が盗まれないようにする機能を含む。
【0003】
特許文献1には、保護機能を備えたETC車載器が開示されている。特許文献1に開示されているETC車載器は、両面粘着テープによって車両のフロントガラスに貼り付けられる。このETC車載器は、当該ETC車載器における両面粘着テープが接着される面から突出するように設けられたスイッチ操作ボタンを備えている。このスイッチ操作ボタンは、弾性部材によりETC車載器の内部から外部へ付勢されており、この付勢力によりETC車載器から突出する。このETC車載器がフロントガラスに貼り付けられると、スイッチ操作ボタンがフロントガラスに当接し、フロントガラスからの荷重を受けてETC車載器の内部に押し込まれる。これにより保護機能が有効化される。保護機能が有効化されているETC車載器が車両から取り外されまたは分解されることにより、スイッチ操作ボタンが弾性部材の付勢力によってETC車載器から突出した状態になると、保護機能が作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許第105620377号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発明者の詳細な検討の結果、以下に述べる課題が見出された。即ち、特許文献1に開示されたETC車載器を車両に標準搭載させる場合、車両メーカにおいて、ETC車載器をフロントガラスに強く押しつけて両面粘着テープで貼り付ける必要がある。このとき、フロントガラスには、ガラス面に垂直な方向の大きな荷重がかかる。そのため、フロントガラスが例えばインストルメントパネルや車両のボデーなどの部品にすでに接着剤で取り付けられている場合、フロントガラスと部品との接着が剥がれる可能性がある。
【0006】
これを防ぐために、ETC車載器を例えば次のようにフロントガラスに取り付けることが考えられる。即ち、フロントガラスの表面に予めブラケットを設けておく。そして、ETC車載器をフロントガラスの表面に平行な方向へスライドさせることによりブラケットに装着させる。スイッチ操作ボタンは、フロントガラスまたはブラケットからの荷重によって、前述と同様にETC車載器の内部に押し込まれるようにする。
【0007】
しかし、このような装着方法は、フロントガラスへの荷重を弱めることは可能になるものの、その反面、別の課題が生じる。即ち、ETC車載器がフロントガラスの表面に平行な方向へスライドされるため、スイッチ操作ボタンに対し、当該スイッチ操作ボタンがETC車載器から突出または内部に押し込まれる方向と交差する方向の荷重(以下、スライド方向荷重)が、フロントガラスまたはブラケットからかかる。スイッチ操作ボタンにスライド方向荷重がかかると、スイッチ操作ボタンが傾き、ETC車載器がブラケットに取り付けられても保護機能が正常に有効化されなくなるおそれがある。
【0008】
このような課題は、ETC車載器に限らず、車両に正常に取り付けられている状態ではスイッチが操作され、車両から取り外されまたは分解等されると当該スイッチの操作が解除されるように構成された、各種の車載装置において同様に生じ得る課題である。
【0009】
本開示の1つの局面は、スイッチを備えた車載装置において、当該車載装置を車両の取付対象に取り付ける際に取付対象にかかる荷重を抑制しつつ、取付対象への取り付け後にスイッチを適正な操作状態にさせることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、車載装置であって、ベース(70)と、ケース(30)と、スイッチ(16)と、を備える。ベースは、スイッチ当接部材(76)を有する。ケースは、ベースを、第1の位置または第2の位置に保持し、且つ、第1の位置から第2の位置に到る既定経路以外でのベースの移動を阻止する構造を有する。スイッチは、ベースが第1の位置にあるときに、スイッチ当接部材に当接して接点が閉じた状態となり、ベースが第2の位置にあるときに、スイッチ当接部材との当接から解放されて接点が開放された状態となるようにケース内に固定される。
【0011】
このような構成によれば、車両への車載装置の取り付けとは独立に、スイッチの操作を行うことができる。従って、当該車載装置を車両の取付面に取り付ける際に、取付面にかかる荷重を抑制しつつ、取付面への取り付け後にスイッチを適正に操作できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車載装置がフロントガラスに取り付けられた状態を示す斜視図である。
図2】アウターベースが仮固定され且つ付属のワイヤーカバーが取り外された状態の車載装置の斜視図である。
図3】アウターベースが仮固定された状態の車載装置を、フロントガラスへの取り付け面側から見た斜視図である。
図4】車載装置の分解斜視図、およびこの車載装置が取り付けられる車両のフロントガラス並びに取付ブラケットの斜視図である。
図5】基板ユニットの側面図である。
図6】取外検知スイッチの構成および動作を示す説明図である。
図7】インナーベースの斜視図である。
図8】第2基板が収容されたインナーベースの平面図である。
図9図8におけるIX-IX断面を示す断面図である。
図10図8におけるX-X断面を示す断面図である。
図11】基板ユニットおよびインナーベースを一体化したインナーユニットの斜視図である。
図12】アウターベースの斜視図である。
図13】ケースのフロントガラスへの取り付け面側からみた斜視図である。
図14】インナーユニットが装着されたケースを、ケースを透視した状態で示した正面図である。
図15】アウターベースが取り外された状態の車載装置の底面図である。
図16図14におけるXVI-XVI断面を示す断面図である。
図17】アウターベースが仮固定された車載装置を取付ブラケットに取り付ける際の手順に従って、取付ブラケットに対する車載装置の状態を、ケースを透視した側面図により示した説明図である。
図18】アウターベースが仮固定された車載装置の平面図である。
図19図18におけるXIX-XIX断面を示す断面図である。
図20図18におけるXX-XX断面を示す断面図である。
図21】アウターベースを仮固定から本固定にする際の手順に従って、車載装置の状態を、ケースを透視した側面図により示した説明図である。
図22図21におけるXXII-XXII断面を示す断面図、および仮固定に用いる部位の拡大図である。
図23図21におけるXXIII-XIII断面を示す断面図、および本固定に用いる部位の拡大図である。
図24】取外検知スイッチおよびアウターベースの状態を、仮固定時および本固定時のそれぞれについて示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
[1-1.車載装置]
図1に示す本実施形態の車載装置1は、車両に搭載される。具体的には、車載装置1は、例えば、車両におけるフロントガラス200の内面、即ち車室内側の表面に設けられる。なお、本実施形態では、一例として、フロントガラス200は湾曲しておらず平面状に形成されているものとする。また、本実施形態では、説明の利便性を考慮して、車載装置1に対し、図1図24にX,Y,Zで示すように3次元座標系を規定する。以下の説明では、必要に応じて3次元座標系を適宜援用しつつ説明する。また、X軸方向を側方、Y軸正方向を後方、Y軸負方向を前方、Z軸正方向を上方、Z軸負方向を下方ともいう。
【0014】
図4に示すように、フロントガラス200の内面には、取付ブラケット210が設けられる。取付ブラケット210は、例えば接着剤8によってフロントガラス200の内面に固着される。取付ブラケット210は、略矩形状の板状の形状を有する。
【0015】
取付ブラケット210は、4つの被嵌合部211,212,213,214が設けられている。2つの被嵌合部211,213は、取付ブラケット210における第1の側辺に沿って設けられている。他の2つの被嵌合部212,214は、取付ブラケット210における、第1の側辺と対向する第2の側辺に沿って、2つの被嵌合部211,213と対向するように設けられている。4つの被嵌合部211,212,213,214において、内側を向いた面を内側面という。
【0016】
被嵌合部211,212,213,214は、内側面に凹部211a,212a,213a,214aを備える。これら凹部211a,212a,213a,214aは、図17図19等に示すように、車載装置1における嵌合部41,42,43,44との嵌合に用いられる。嵌合部41~44が、装着部に相当する。
【0017】
取付ブラケット210は、さらに、2つのブラケット被係合部216,217が設けられている。ブラケット被係合部216,217は、被嵌合部212,214よりも若干Y軸正方向にずれた位置において、X軸に沿って互いに対向するように設けられる。ブラケット被係合部216,217には、図20等に示すように、車載装置1におけるインナー係合部24,25との係合に用いられる。
【0018】
なお、フロントガラス200は、車両において、ガラス面が傾斜した状態で搭載される。具体的には、フロントガラス200は、例えば、X軸が水平面に平行となるように搭載される。また例えば、フロントガラス200は、Y軸が水平方向および鉛直方向のいずれとも非平行となるよう、且つ、Y軸負方向が路面に向かう方向でY軸正方向が路面から離れる方向となるように搭載される。
【0019】
本実施形態の車載装置1は、例えば、ETCおよびETC2.0を利用するためのいわゆるETC車載器である。車載装置1が車両の走行路の近傍に設けられた路側通信機と通信することにより、車両のユーザはETCおよびETC2.0のサービスを享受することができる。
【0020】
図1図16を参照しながら、車載装置1の具体的構成を説明する。図1図4に示すように、車載装置1は、ケース30と、アウターベース70とを備える。
車載装置1は、ハーネスカバー3と、通信スイッチ操作部5と、インジケータレンズ7と、基板ユニット10と、インナーベース20とをさらに備える。ケース30には、車載装置1の構成部品のうち、ハーネスカバー3を除く、ほぼ全ての構成部品が収容される。
【0021】
[1-2.基板ユニット]
基板ユニット10は、図4,5に示すように、第1基板101と、第2基板102とを備える。
【0022】
第1基板101および第2基板102にはそれぞれ、ETC車載器としての機能を実現するための各種回路および部品が実装される。
実装される各種回路および部品には、外部コネクタ12と、通信スイッチ13と、2つのLED14,15と、取外検知スイッチ16と、基板間コネクタ19とが含まれる。
【0023】
外部コネクタ12は、第1基板101の下面に実装され、当該車載装置1を搭載する車両との電気的な接続に用いられる。基板間コネクタ19は、図19に示すように、第1基板101の下面に設けられた第1コネクタ19aと、第2基板102の上面に設けられ第2コネクタ19bとを有し、第1基板101と第2基板102とを電気的に接続する、いわゆるBtoBコネクタである。外部コネクタ12および基板間コネクタ19は、第1基板101と第2基板102を一定の間隔で対向した状態に保持する。
【0024】
第1基板101には、図4および図11等に示すように、切欠部17が設けられる。切欠部17には、後述するケース30に設けられたボス58が挿通される。第2基板102には、図8および図11等に示すように、第1基板101の切欠部17と対向する位置にネジ貫通孔18が設けられる。
【0025】
図4および図5図11等に示すように、通信スイッチ13は、第1基板101の上面に実装され、通信スイッチ操作部5を介して操作される。車載装置1は、例えばBluetoothの通信規格に基づく無線通信機能を備えている。Bluetoothは登録商標である。通信スイッチ13は、例えば、ユーザによる、Bluetoothにおけるペアリングの実行の指示を受け付けるためのスイッチである。通信スイッチ13が操作されると、基板ユニット10に実装された制御回路は、他の通信装置とのペアリングを実行する。
【0026】
LED14,15は、第1基板101の上面に実装され、車載装置1の状態および通信状況などを視覚的に示すために使用される。
図5および図15等に示すように、取外検知スイッチ16は、第2基板102の下面に実装される。つまり、第2基板102が回路基板に相当する。取外検知スイッチ16は、車載装置1が分解または破壊された場合に、保護機能を作動させるために用いられる。保護機能が作動すると、少なくとも車載装置1内に記録されている情報が盗まれないように、車載装置1の機能の一部または全てが強制停止される。
【0027】
取外検知スイッチ16は、図6に示すように、本体161と可動片162とを備える。本体161は、直方体状の形状を有する。本体161において、第2基板102に取り付けられる側の面とは反対側の面を上面という。
【0028】
可動片162は、本体161の一端に設けられた回動軸を中心に回動可能に取り付けられる。本体161内には、可動片162の回動位置に応じてオンオフする接点の他、可動片162を図6における反時計回り方向に付勢する付勢機構が内蔵される。可動片162が荷重を受けていない開放状態のときに、可動片162は、付勢機構の付勢力によって、図6の上段に示すように、本体161の上面からの突出量が大きくなる位置に保持される。この状態で、本体161に内蔵された接点は非接触状態(すなわち、オフ)となる。
【0029】
可動片162は、図6における右から左へ向かう方向に、荷重を受けると、付勢機構の付勢力に抗して時計回り方向に回動する。可動片162が一定角度以上回動し、例えば、図6下段に示す状態に達すると、本体161に内蔵された接点は接触状態(すなわち、オン)となる。
【0030】
[1-3.インナーベース]
インナーベース20は、図4および図7~11および図15~16等に示すように、基板収容空間21を備える。基板収容空間21には、基板ユニット10が収容される。
【0031】
インナーベース20の下面には、ネジ貫通孔22およびインナー開口部23が設けられる。ネジ貫通孔22は、インナーベース20に収納される第2基板102のネジ貫通孔18と対向する位置に設けられ、ネジ9を挿通させるために用いられる。インナー開口部23は、基板収容空間21に基板ユニット10が収容されたときに、取外検知スイッチ16の可動片162を、インナーベース20の外部へ露出させるために用いられる。
【0032】
インナーベース20は、2つのインナー係合部24,25をさらに備える。インナー係合部24,25は、図20に示すように、L字上の腕部を有するスナップフィット構造の部材であり、インナーベース20の後端付近に設けられる。インナー係合部24,25は、車載装置1が取付ブラケット210に取り付けられたときに、Y軸方向における車載装置1の位置を決めるために用いられる。
【0033】
インナーベース20は、図7に示すように、第2基板当接部26と、基板係合部27,28と、第1基板当接部29とをさらに備える。
第2基板当接部26は、基板収容空間21において第2基板102を位置決めするために用いられる。第2基板当接部26は、溝部261と、段差部262とを有する。
【0034】
溝部261は、インナーベース20の前壁201に設けられ、第2基板102の前縁部を挿入可能な幅を有する。段差部262は、インナーベース20の2つの側壁202,203に設けられ、溝部261の下方側面と同一面を形成する。
【0035】
基板係合部27,28は、インナーベース20の各側壁202,203の後方寄りに設けられ、U字型の腕部を有したスナップフィット構造の部材である。基板係合部27,28は、インナーベース20に収容された第2基板102との係合に用いられる。
【0036】
第1基板当接部29は、インナーベース20の前壁201の上端面、および側壁202,203の上端面のうち、前壁201の上端面と同じ高さを有する部位の他、インナーベース20の後端付近に設けられ、前壁201の上端面と同じ高さを有する突起状の部位等のことをいう。
【0037】
ここで、インナーベース20に基板ユニット10を組み付ける手順について説明する。
まず、第2基板102の前縁端を前壁201の溝部261に挿入した状態で、第2基板102を、インナーベース20の下面に向けて押し込む。すると、基板係合部27,28は、第2基板102の側縁部に当接して腕部が変形する。第2基板102の下面が段差部262に到達すると、基板係合部27,28の腕部の先端に形成された爪部が、第2基板102を乗り越えて、第2基板102の上面に当接する。これにより第2基板102は、図8~10に示すように、インナーベース20内において、第2基板当接部26によって位置決めされる位置にロックされる。
【0038】
その後、第1基板101と第2基板102とが基板間コネクタ19によって接続され、かつ、第1基板101の下面が、第1基板当接部29に当接する位置まで、第1基板101を押し込む。その結果、図11に示すように、インナーベース20と基板ユニット10とが一体化される。以下では、基板ユニット10とインナーベース20とが一体化された構造物を、インナーユニット90という。
【0039】
[1-4.アウターベース]
アウターベース70は、図4および図12等に示すように、上方に開口した略直方体の形状を備える。アウターベース70は、インナーベース20を下方から覆うように、ケース30に配置される。
【0040】
アウターベース70は、底壁701と、前壁702と、第1側壁703と、第2側壁704と、第1後壁705と、第2後壁706とを備える。第1後壁705および第2後壁706は、底壁701の後端において、外部コネクタ12が配置される部位の両側に設けられる。第1側壁703は、壁の高さが他の部位より高い被案内部81,83,85を有し、同様に、第2側壁704は、壁の高さが他の部位より高い被案内部82,84,86を有する。被案内部81,82は、第1側壁703および第2側壁704の前端に設けられる。被案内部83,84は、第1側壁703および第2側壁704の後端に設けられる。被案内部85,86は、第1側壁703および第2側壁704の前後端の間の中心付近に設けられる。
【0041】
アウターベース70は、2つのアウター開口部71,72と、2つの第1ベースリブ73,74と、第2ベースリブ75と、スイッチ当接部76と、2つの第1アウター係合部811,821と、2つの第2アウター係合部831,841とを備える。
【0042】
アウター開口部71は、第1側壁703と後壁705との接続部近傍の底壁701に設けられる。アウター開口部72は、第2側壁704と後壁706との接続部近傍の底壁701に設けられる。アウター開口部71,72は、アウターベース70の上側に組付けられるインナーベース20のインナー係合部24,25を、アウターベース70の下側へ露出させるための構造である。
【0043】
第1ベースリブ73,74は、底壁701の後端部のうち後壁705,706のない部位であって、後壁705,706との境界付近に設けられる。第1ベースリブ73,74は、アウターベース70をケース30に組み付ける際に、ケース30の第1ケーススリット34,35にそれぞれ挿入される。
【0044】
第2ベースリブ75は、前壁702の上端付近から後方に向けて突設される。第2ベースリブ75は、アウターベース70をケース30に組み付ける際に、ケース30の第2ケーススリット36に挿入される。第2ベースリブ75は、第1ベースリブ73,74と共に、主として、ケース30に組付けられたアウターベース70のZ軸方向へのがたつきを抑制する。
【0045】
第1アウター係合部811,821は、側壁703,704の前端に位置する被案内部81,82に設けられる。第2アウター係合部831,841は、側壁703,704の後端に位置する被案内部83,84に設けられる。各アウター係合部811,821,831,841は、いずれも、板状の腕部と腕部の開放端に形成された係合爪とを有するスナップフィット構造の部材である。なお、側壁703,704において、各アウター係合部811,821,831,841は、腕部の固定端が前方側に位置し、開放端が後方側に位置するように配置され、係合爪は、側方外側に向けて突設される。
【0046】
アウター係合部811,821,831,841は、ケース30に対してアウターベース70を仮固定および本固定する際に用いられる。
スイッチ当接部76は、底壁701に設けられ、底壁701から上方へ立設された低背の凸状形状を備える。スイッチ当接部76は、ケース30に仮固定または本固定された状態からのアウターベース70の移動に伴って可動片162を操作し、取外検知スイッチ16をオンオフするために用いられる。
【0047】
[1-5.ケース]
ケース30は、図1~4および図13~16等に示すように、下方および前方に開口し且つ後方に部分的に開口した略直方体状の形状を備える。ケース30は、ケース底板301と、第1側板302と、第2側板303と、ケース前板304とを備え、収容空間305を形成する。ケース前板304は、アウターベース70の前壁702によって塞がれる部位に、ケース切欠部306を有する。
【0048】
ケース底板301には、ケース開口部31と、2つのレンズ嵌入孔32,33が設けられる。
ケース開口部31には、通信スイッチ操作部5が配置される。通信スイッチ操作部5は、上方側の面のほぼ全体がケース開口部31から露出し、且つケース開口部31を塞ぐように配置される。通信スイッチ操作部5は、基板ユニット10に実装された通信スイッチ13に当接する部位を有する。これにより、車載装置1のユーザにより通信スイッチ操作部5が押下操作されると、この操作に連動して、通信スイッチ13が押下される。
【0049】
2つのレンズ嵌入孔32,33は、ケース底板301においてインナーユニット90の第1基板101に実装されたLED14,15と対向する位置に設けられ、インジケータレンズ7が嵌入される。
【0050】
LED14,15から発光された光は、インジケータレンズ7に入射してインジケータレンズ7内を導光され、レンズ嵌入孔32,33にて露出するインジケータレンズ7の意匠面から、車載装置1の外部へ放射される。
【0051】
ケース30は、図13及び図14等に示すように、5つの第1ケースリブ51~55と、第2ケースリブ56とを備える。
第1ケースリブ51,52は、ケース底板301とケース前板304との接続部近傍において、X軸方向の中心に対して対称な位置に互いに離間して設けられる。
【0052】
第1ケースリブ53,55は、ケース底板301と第1側板302との接続部近傍において、この順でY軸方向に沿って互いに離間して設けられる。第1ケースリブ52,54は、ケース底板301と第2側板303との接続部近傍において、第1ケースリブ53,55と対向する位置に設けられる。第1ケースリブ51~55は、その先端(すなわち、下側端)が同一平面に位置し、ケース30に収容されたインナーユニット90の第1基板101の上面に当接する高さを有する。第2ケースリブ56は、ケース底板301の後端付近に設けられる。第2ケースリブ56は、ケース30に収容されたインナーユニット90の第2基板102の上面に当接する高さを有する。
【0053】
ケース底板301には、図13および図16等に示すように、ボス58が突設される。ボス58は、例えば円柱状に形成され、ネジ穴を有する。ボス58は、インナーユニット90を、ケース30に固定するために用いられる。
【0054】
ケース30は、図13に示すように、2つの第1ケーススリット34,35と、第2ケーススリット36とを備える。第1ケーススリット34,35は、ケース底板301の後端近傍にて、外部コネクタ12の両側に設けられた壁状部位に形成される。第2ケーススリット36は、ケース前板304の下端から切欠部306に向けて突出した矩形リング状の部位である。
【0055】
ケース30にアウターベース70を組み付ける際に、第1ケーススリット34,35には第1ベースリブ73,74が挿入され、第2ケーススリット36には、第2ベースリブ75が挿入される。ケーススリット34~36は、ケース30に組み付けられたアウターベース70のX軸方向およびZ軸方向へのがたつきを抑制する。
【0056】
ケース30は、4つの第1スライドレール61,62,63,64と、2つの第2スライドレール65,66とをさらに備える。各スライドレール61~66は、ケース30に対するアウターベース70の平行移動、即ちY軸方向へのスライドを案内するために用いられる。スライドレール61~66がガイド部材に相当する。また、スライドレール61~66によって規制されるアウターベース70の移動経路が既定経路に相当する。
【0057】
第1スライドレール61,62は、第1側板302および第2側板303の内面における前端近傍、すなわち、ケース30にアウターベース70が組み付けられたときに、アウターベース70の被案内部81,82と対応する位置に設けられる。
【0058】
第1スライドレール63,64は、第1側板302および第2側板303の内面における後端近傍、すなわち、ケース30にアウターベース70が組み付けられたときに、アウターベース70の被案内部83,84と対応する位置に設けられる。
【0059】
第2スライドレール65,66は、第1側板302および第2側板303の内面における前後端の中心付近、すなわち、ケース30にアウターベース70が組み付けられたときに、アウターベース70の被案内部85,86と対応する位置に設けられる。
【0060】
第1スライドレール61~64は、いずれも第1案内部材61a~64aと、第2案内部材61b~64bとを備える。第1案内部材61a~64aは、第1側板302または第2側板303の下端近傍に、Y軸方向に沿って設けられる。第2案内部材61b~64bは、第1案内部材61aとはZ軸正方向に間隔を空け、かつY軸方向に沿って設けられる。なお、第1案内部材61a~64aと、第2案内部材61b~64bとは、アウターベース70の移動時に、被案内部81~84の上下端が両案内部材によってガイドされる位置および間隔に設定される。
【0061】
第2スライドレール65,66は、アウターベース70の移動時に、被案内部85,86の上端がガイドされる位置に設けられる。
ケース30は、4つの被係合部611,621,631,641をさらに備える。被係合部611,621,631,641は、それぞれ、アウターベース70のアウター係合部811,821,831,841と係合することで、アウターベース70を、仮固定または本固定の状態に保持するために用いられる。なお、ケース30に仮固定されたアウターベース70の位置が第1の位置に相当し、ケース30に本固定されたアウターベース70の位置が第2の位置に相当する。
【0062】
各被係合部611,621,631,641は、それぞれ第1スライドレール61~64を形成する第1案内部材61a~64aと第2案内部材61b~64bとの間に設けられる。
【0063】
図22および図23に示すように、被係合部611,631により、第1側板302の内面には、アウター係合部811,831の係合爪を係合させる凹部611a,611b、および凹部631a,631bがY軸に沿って形成される。同様に、被係合部621,641により第2側板303の内面には、アウター係合部821,841の係合爪を係合させる凹部621a,621bおよび凹部641a,641bがY軸に沿って形成される。
【0064】
凹部611a,621a,631a,641aは、アウターベース70を仮固定したときに、各アウター係合部811,821,831,841の爪部が係合する位置に設けられる。凹部611b,621b,631b,641bは、アウターベース70を本固定したときに、各アウター係合部811,821,831,841の爪部が係合する位置に設けられる。以下では、凹部611a,621a,631a,641aを仮固定用凹部、凹部611b,621b,631b,641bを本固定用凹部という。
【0065】
ケース30は、図13図15等に示すように、4つの嵌合部41~44を更に備える。嵌合部41~44は、車載装置1を取付ブラケット210に装着するために用いられる。
嵌合部41~44は、第1側板302および第2側板303において、取付ブラケット210の被嵌合部211~214と対応する位置に設けられる。嵌合部41,42は、第1案内部材61a,62aの後端から、第1側板302および第2側板303との間に隙間を有した状態で後方に向けて延設した舌片状の突起物である。なお、突起物の固定端がスライド元側であり、突起物の開放端がスライド先側である。嵌合部43,44は、第2スライドレール65,66の下方(すなわち、Z軸負方向)に設けられ、第2側板303との間に隙間を有した状態となるように後方に向けて延びるように設けられた舌片状の突起物である。なお、上記隙間の幅は、取付ブラケット210の被嵌合部211~214の凹部211a~214aが形成された部位を、嵌合部41~44と第1側板302または第2側板303との間に挿入可能な大きさに形成される。
【0066】
[2.車載装置1の組み立て]
図14図16に示すように、まず、インナーユニット90を、第1基板101の切欠部17にボス58が挿入され、ボス58の先端が、第2基板102の上面のネジ貫通孔18が形成された部位に当接するようケース30の収容空間305内に配置する。このとき、ケース30とインナーユニット90との間に、通信スイッチ操作部5とインジケータレンズ7を挟持する。通信スイッチ操作部5は、ケース開口部31を塞ぎ、インジケータレンズ7は、レンズ嵌入孔32,33に嵌入された状態となるように配置する。
【0067】
次に、インナーベース20の底面側から、インナーベース20のネジ貫通孔22および第2基板102のネジ貫通孔18を貫通させたネジ9を、ボス58に螺合させる。ネジ9がボス58に螺合されると、インナーベース20の底面と第2基板102とが、ボス58とネジ9の頭部との間に挟み込まれる。これにより、インナーユニット90は、第1基板101の上面がケース底板301と対向した状態でケース30内に固定される。このとき、第1ケースリブ51~55が第1基板101に当接し、第2ケースリブ56が第2基板102に当接することで、ネジ9のみによる固定に比べ、インナーユニット90がケース30により適切に固定され且つ位置決めされる。
【0068】
次に、ケース30に、アウターベース70を仮固定する。アウターベース70を仮固定した状態では、第1案内部材61aと第2案内部材61bとの間に、被案内部81が位置し、第1案内部材62aと第2案内部材62bとの間に、被案内部82が位置する。また、第1案内部材63aと第2案内部材63bとの間に、被案内部83が位置し、第1案内部材64aと第2案内部材64bとの間に、被案内部84が位置する。更に、図23に示すように、アウター係合部811,821,831,841の係合爪が、それぞれ仮固定用凹部611a,621a,631a,641aに係合される。
【0069】
アウターベース70がケース30に仮固定された状態(以下、仮固定状態)では、インナーベース20のインナー開口部23からインナーユニット90の外部に露出するように配置された取外検知スイッチ16は、図3等に示すように、アウターベース70によって覆い隠される。
【0070】
なお、車載装置1は、仮固定状態で出荷される。従って、車載装置1が車両メーカへ輸送される際、あるいは車載装置1が車両メーカに納入されてから実際に車両に取り付けられるまでの間、取外検知スイッチ16は、意図しない干渉、接触、塵、埃等から保護される。
【0071】
[3.車載装置の取り付け手順]
次に、車載装置1を取付ブラケット210に取り付ける手順について、図17図23を参照して説明する。なお、図17および図21では、説明の便宜上、ケース30を破線で示し、本来はケース30によって視認できないケース30の内部を示す。
【0072】
車載装置1の取付ブラケット210への取り付けは、仮固定状態の車載装置1、即ちアウターベース70がケース30に仮固定された状態の車載装置1を用いる。
まず、車載装置1を、取付ブラケット210の上に、図17の上段に示す第1の状態となるように保持する。
【0073】
第1状態では、車載装置1は、ケース30の嵌合部41~44のそれぞれが、対応する取付ブラケット210の被嵌合部211~214の真上からY軸負方向に移動させた位置、に保持される。つまり、嵌合部41~44と被嵌合部211~214とがZ軸方向で重なり合うことがない位置に保持される。
【0074】
次に、第1の状態から、車載装置1を下方へ移動させて取付ブラケット210に載置させることで、車載装置1と取付ブラケット210の位置が、図17の中段に示す第2の状態に遷移する。
【0075】
第2の状態では、取付ブラケット210の被嵌合部211~214が、ケース30に覆われる。また、ケース30の嵌合部41~44のそれぞれが、取付ブラケット210の被嵌合部211~214のうちの対応する1つにY軸負方向に隣接する。
【0076】
第2の状態から、車載装置1をY軸負方向にスライドさせることで、図17下段に示す第3の状態に遷移する。
第3の状態では、ケース30の嵌合部41~44のそれぞれが、取付ブラケット210被嵌合部211~214のうちの対応する1つに嵌合する。即ち、嵌合部41が被嵌合部211の凹部211aに嵌合し、嵌合部42が被嵌合部212の凹部212aに嵌合し、嵌合部43が被嵌合部213の凹部213aに嵌合し、嵌合部44が被嵌合部214の凹部214aに嵌合する。
【0077】
第3の状態では、さらに、図20に示すように、インナーベース20のインナー係合部24が、取付ブラケット210のブラケット被係合部216に係合される。図20には示されていないが、インナー係合部25も同様に、ブラケット被係合部217に係合される。
【0078】
第3の状態から、図21に示すように、アウターベース70をY軸正方向へ押し込むことで、アウターベース70はケース30に本固定される。
押し込まれたアウターベース70は、スライドレール61~66によって、Z軸方向への移動が規制されつつ、ケース30の内部へスライドされる。その結果、各アウター係合部811,821,831,841は、図22に示すように、仮固定用凹部611a,621a,631a,641aにそれぞれ係合された状態から、図23に示すように、本固定用凹部611b,621b,631b,641bにそれぞれ係合された状態になる。
【0079】
また、アウターベース70を押し込むときに、ケース30の第1ケーススリット34,35に、第1ベースリブ73,74が挿入され、第2ケーススリット36に第2ベースリブ75が挿入される。
【0080】
本固定されたアウターベース70は、スライドレール61~66およびケーススリット34~36により、ケース30に対してZ軸方向への動きが規制される。その結果、アウターベース70をY軸負方向に引き出すことなく、ケース30からアウターベースを取り外すことが困難になる。
【0081】
[4.取外検知スイッチの動作]
仮固定状態の車載装置1では、図24上段に示すように、アウターベース70のスイッチ当接部76は、取外検知スイッチ16の下方に位置し、可動片162に当接して取外検知スイッチ16がオンする角度まで可動片162を回動させた状態となる。
【0082】
仮固定状態から本固定状態にするために、アウターベース70が押し込まれると、取外検知スイッチ16に対してスイッチ当接部76がY軸負方向に移動する。すると、本固定状態の車載装置1では、図24下段に示すように、スイッチ当接部76は、可動片162とは非接触となり、付勢機構の作用により可動片162は、取外検知スイッチ16がオフする角度に保持される。
【0083】
車載装置1は、仮固定状態で出荷される。すなわち、アウターベース70の前端がケース30から飛び出た状態、かつ、取外検知スイッチ16がオンした状態で出荷される。
そして、車載装置1は、車両に搭載される段階で、アウターベース70がスライドされて本固定される。本固定されると、取外検知スイッチ16はオフした状態となる。
【0084】
上述したように、車載装置1は、アウターベース70をY軸負方向へ引き出す以外の分解が困難な構造を有するため、本固定された車載装置1を不正使用のために分解しようとした場合、必然的にアウターベース70を引き出す操作が行われる。
【0085】
このとき、アウターベース70のスイッチ当接部76は、取外検知スイッチ16の下方を通過するように移動し、その課程で、可動片162に当接して回動させた図24上段に示す状態となり、取外検知スイッチ16がオンする。このように本固定後に取外検知スイッチ16のオフからオンへの遷移が検知されると車載装置1が分解または破壊されたとして、保護機能を作動させる。
【0086】
[5.効果]
以上説明した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(5-1)車載装置1では、取外検知スイッチ16は、ケース30に対してアウターベース70を仮固定の位置から本固定の位置にスライドさせることで操作され、オンからオフに変化する。従って、アウターベース70が仮固定されたケース30を、取付ブラケット210に装着する段階では、取外検知スイッチ16の状態は変化せず、装着後に、仮固定されているアウターベース70を本固定することで、取外検知スイッチ16は状態が変化する。つまり、車両への車載装置1の取り付けとは独立に、取外検知スイッチ16の操作を行うことができる。
【0087】
従って、車載装置1を取付ブラケット210に取り付ける際に、フロントガラス200にかかる荷重を抑制しつつ、取付ブラケット210への取り付け後に取外検知スイッチ16を適正に検知待状態に変化(すなわち、オフ)させることができる。
【0088】
(5-2)車載装置1では、アウターベース70は、ケースに設けられたスライドレール61~66に沿って直線的にスライドするように移動方向が規制される。また、本固定されたアウターベース70は、スライドレール61~66およびケーススリット34~36により、ケース30に対してX軸方向およびZ軸方向への動きが規制される。つまり、車載装置1は、本固定されたアウターベース70を、Y軸負方向に引き出すことなく、ケース30から取り外すことが困難になるように構成されている。従って、アウターベース70が本固定された後、車載装置1が分解または破壊される過程で、アウターベース70はY軸負方向に移動することになるため、スイッチ当接部76によって取外検知スイッチ16を適切にオンさせることができる。
【0089】
(5-3)車載装置1では、取外検知スイッチ16は、通常使用時にオフし異常検知時にオンする常時オフ設定であるため、通常使用時にオンし異常検知時にオフする常時オン設定である場合に生じる以下のリスクを回避できる。
【0090】
すなわち、常時オン設定の場合、通常使用時に、車両の振動によって接点が摩耗する等して、取外検知スイッチ16がオフし、意図せず保護機能が作動して車載装置1を使用できなくなる可能性がある。また、常時オン設定の場合、通常使用時に接点が接触し続けるため、接点が固着する可能性がある。接点が固着すると、車載装置1が分解や破壊される等して取外検知スイッチがオフする状況が発生しても、保護機能が作用せず、不正使用される可能性がある。
【0091】
これに対して、常時オフ設定の車載装置1では、通常使用時に取外検知スイッチ16の接点に摩耗や固着が発生することがなく、上記リスクを回避できる。
(5-4)車載装置1では、アウターベース70は、アウター係合部811,821,831,841が、ケース30の仮固定用凹部611a,621a,631a,641aに係合することで、仮固定状態に暫定的に保持される。従って、仮固定にされたアウターベース70が意図せずケース30から抜けることを抑制できる。
【0092】
(5-5)車載装置1では、仮固定状態のアウターベース70は、スライドされてアウター係合部811,821,831,841がケース30の本固定用凹部611b,621b,631b,641bに係合することにより、本固定状態に保持される。従って、本固定されたアウターベース70が意図せず仮固定の方向へ移動すること、ひいてはその移動により取外検知スイッチ16がオンされることを抑制できる。つまり、アウター係合部811,821,831,841および本固定用凹部611b,621b,631b,641bが、逆行防止機構に相当する。
【0093】
(5-6)車載装置1では、アウターベース70は、取外検知スイッチ16を覆い隠すようにケース30に取り付けられる。従って、車両に組み付けられる前の車載装置1において、取外検知スイッチ16が車載装置1の外部から干渉を受けて誤って操作されることを抑制できる。
【0094】
(5-7)車載装置1では、ケース30の嵌合部41~44は、取付ブラケット210の被嵌合部211~214の内側に形成された凹部211a~214aに嵌合する。つまり、嵌合部41~44と第1側板302または第2側板303とによって被嵌合部211~214が挟持されるように構成されている。従って、取付ブラケット210に取り付けられた車載装置1が、上側から押圧される等して、第1側板302および第2側板303に対して外側へ開く方向の外力が加えられても、嵌合部41~44が被嵌合部211~214から外れることを抑制できる。
【0095】
(5-8)車載装置1では、ケース30を取付ブラケット210に装着すると、インナーベース20のインナー係合部24、25が、取付ブラケット210のブラケット被係合部216、217に係合される。従って、自重によって車載装置1が取り付け方向とは逆方向に移動し、これにより被嵌合部211~214への嵌合部41~44の嵌合が外れてしまうことを抑制できる。
【0096】
[6.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0097】
(6-1)車載装置1は、どのような方法で取付ブラケット210に嵌合されてもよい。即ち、4つの嵌合部41~44を介して嵌合されることは一例であり、他の方法で嵌合されてもよい。
【0098】
(6-2)アウターベース70は、ケース30に対してどのような方法で仮固定および本固定にされてもよい。仮固定または本固定にされたアウターベース70のケース30からの脱落を抑制する具体的方法も、上記実施形態とは異なるものであってもよい。
【0099】
(6-3)アウターベース70は、ケース30とは異なる部位に固定或いは係合されてもよい。例えば、アウターベース70は、インナーベース20または他の部材との機械的繋がりによって仮固定および本固定されてもよい。アウターベース70を仮固定の状態から本固定の状態へガイドするためのガイドレールについても、ケース30とは異なる部材に設けられていてもよい。
【0100】
(6-4)アウターベース70が仮固定状態から本固定状態へ移動する際の移動方向は、Y軸正方向に限定されない。Y軸正方向とは異なる方向にスライドされることによって仮固定状態から本固定状態へ移行されてもよい。
【0101】
(6-5)取外検知スイッチ16は、どのような形状、構成であってもよい。即ち、取外検知スイッチ16は、アウターベース70が当接することによってどのように作用してオンされてもよい。
【0102】
(6-6)上記実施形態の車載装置1は、2つの基板を備えているが、基板の数は1つでもよいし3つ以上でもよい。
(6-7)上記実施形態の車載装置1は、ETCおよびETC2.0を利用するためのいわゆるETC車載器であるが、車載装置1の用途はこれに限定されるものではない。
【0103】
(6-8)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【符号の説明】
【0104】
1…車載装置、90…インナーユニット、16…取外検知スイッチ、30…ケース、70…アウターベース。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24