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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20240116BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F27/29 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021064359
(22)【出願日】2021-04-05
(65)【公開番号】P2022159899
(43)【公開日】2022-10-18
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】本田 裕行
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 香織
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-107653(JP,A)
【文献】特開2020-107861(JP,A)
【文献】特開2017-188568(JP,A)
【文献】特開2019-134065(JP,A)
【文献】特開2019-216146(JP,A)
【文献】特表2017-508298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00- 5/06
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26-27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 38/42-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯部と、前記巻芯部の第1端に設けられた第1鍔部と、前記巻芯部の第2端に設けられた第2鍔部と、を有するコアと、
前記巻芯部の軸に沿って巻回され、複数のワイヤを含むコイルと、
前記第1鍔部に設けられ前記コイルに接続された複数の電極部と、前記第2鍔部に設けられ前記コイルに接続された複数の電極部と、を備え、
前記コイルは、前記巻芯部に巻回された巻回領域を有し、
前記巻回領域は、前記複数のワイヤが互いに撚り合わされた撚り線部と、前記複数のワイヤが互いに撚り合わされないで並走した並走部とを有し、
前記複数のワイヤは、前記巻芯部に同じ方向に巻回された第1ワイヤおよび第2ワイヤを含み、
前記撚り線部は、前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤが互いに撚り合わされた第1の撚り線部を含み、前記並走部は、前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤが互いに撚り合わされないで並走した第1の並走部を含み、
前記第1の並走部は、前記巻芯部に少なくとも1ターン以上連続して巻回されており、
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤは、
前記巻回領域における前記第1端側の一方端領域および前記第2端側の他方端領域で前記第1の撚り線部を構成し、
前記巻回領域のうち前記一方端領域および前記他方端領域の間では、互いに撚り合わされずに前記第1の並走部のみを構成している、コイル部品。
【請求項2】
前記第1の撚り線部は、前記巻芯部に少なくとも1ターン以上連続して巻回され、かつ、前記巻芯部に少なくとも1ターン以上連続して巻回された状態の前記第1の撚り線部のツイスト数は、1以上である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記コイル全体として、前記第1の撚り線部のツイスト数は、自然数である、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記巻回領域において、前記第1の並走部の少なくとも一部の同一ターンを構成する前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤのうちの一方のワイヤは、前記巻芯部に巻回された第1層を構成し、前記同一ターンを構成する前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤのうちの他方のワイヤは、前記第1層上に巻回された第2層を構成する、請求項1からの何れか一つに記載のコイル部品。
【請求項5】
前記巻回領域の前記一方端領域における前記第1の撚り線部のターン数と、前記他方端領域における前記第1の撚り線部のターン数とは同じである、請求項1から4のいずれか一つに記載のコイル部品。
【請求項6】
前記巻回領域のうち前記一方端領域および前記他方端領域の間において、前記第1の並走部は、前記巻芯部に複数ターン以上連続して巻回されている、請求項1から5のいずれか一つに記載のコイル部品。
【請求項7】
記第1鍔部に設けられた複数の電極部は、第1電極部および第2電極部を含み
前記第2鍔部に設けられた複数の電極部は、第3電極部および第4電極部を含み
前記第1ワイヤは、前記第1電極部と前記第3電極部とに電気的に接続され、前記第2ワイヤは、前記第2電極部と前記第4電極部とに電気的に接続され、
前記軸方向からみて、前記第1電極部および前記第2電極部は、前記第1鍔部の左右幅の中央位置に対して対称に配置され、前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤは、前記巻芯部における前記第1鍔部の左右幅の中央位置から前記第1電極部および前記第2電極部に引き出され、
前記軸方向からみて、前記第3電極部および前記第4電極部は、前記第2鍔部の左右幅の中央位置に対して対称に配置され、前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤは、前記巻芯部における前記第2鍔部の左右幅の中央位置から前記第3電極部および前記第4電極部に引き出される、請求項1からの何れか一つに記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイル部品としては、特開2017-188568号公報(特許文献1)に記載されたものがある。このコイル部品は、巻芯部を有するコアと、巻芯部に巻回され、複数のワイヤを含むコイルとを備える。コイルは、複数のワイヤが互いに撚り合わされた撚り線部を有し、撚り線部は、巻芯部上に連続して複数ターン巻回された第1層と、第1層から連続して第1層上に複数ターン巻回された第2層とを構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-188568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のようなコイル部品では、良好なモード変換特性が確保できる。しかしながら、撚り線部が巻芯部に巻回されているため、隣り合うターンの撚り線部の間において、デッドスペースが発生しやすい。さらに、撚り線部において、ワイヤの巻き膨れが生じやすく、この場合、隣り合うターンの撚り線部の間において、デッドスペースがより発生しやすくなる。このように、撚り線部を巻芯部に密に巻回することは困難となり、コイルの巻数を増加し難く、高いインダクタンス値を得ることは難しい。特に、撚り線部を2層に形成すると、デッドスペースがさらに増加し、コイルの巻数を増加し難く、高いインダクタンス値を得ることは難しい。
【0005】
そこで、本開示は、モード変換特性を確保しつつインダクタンス値を向上できるコイル部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるコイル部品は、
巻芯部を有するコアと、
前記巻芯部の軸に沿って巻回され、複数のワイヤを含むコイルと
を備え、
前記コイルは、前記巻芯部に巻回された巻回領域を有し、
前記巻回領域は、前記複数のワイヤが互いに撚り合わされた撚り線部と、前記複数のワイヤが互いに撚り合わされないで並走した並走部とを有する。
【0007】
前記態様によれば、巻回領域は、並走部を有するので、巻芯部に対してワイヤを密に巻回することができ、これにより、巻芯部に対してコイルの巻数を増加でき、インダクタンス値を向上できる。また、巻回領域は、撚り線部を有するので、モード変換特性を確保できる。
【0008】
好ましくは、コイル部品の一実施形態では、前記撚り線部は、前記巻芯部に少なくとも1ターン以上連続して巻回され、かつ、前記巻芯部に少なくとも1ターン以上連続して巻回された状態の前記撚り線部のツイスト数は、1以上である。
【0009】
ここで、ツイスト数が1であるとは、複数のワイヤが互いに撚り合わされた状態において、複数のワイヤの特定の相対位置から次の同じ相対位置に最初に戻るまでの状態をいう。つまり、互いに撚り合わされた複数のワイヤの位置関係が0°から360°まで回転したときの状態をいう。
【0010】
前記実施形態によれば、撚り線部が巻芯部に1/2ターン連続して巻回される場合や、巻芯部に連続して巻回された状態の撚り線部のツイスト数が1/2である場合に比べて、モード変換特性を向上できる。
【0011】
好ましくは、コイル部品の一実施形態では、前記並走部は、前記巻芯部に少なくとも1ターン以上連続して巻回される。
【0012】
前記実施形態によれば、並走部が巻芯部に1/2ターン連続して巻回される場合に比べて、巻芯部に対してコイルの巻数をより増加でき、インダクタンス値をより向上できる。
【0013】
好ましくは、コイル部品の一実施形態では、前記コイル全体として、前記撚り線部のツイスト数は、自然数である。
【0014】
前記実施形態によれば、コイル全体として、撚り線部のツイスト数は、自然数であるので、コイル全体として、撚り線部の複数のワイヤを対称に配置できる。これにより、撚り線部の容量成分をより十分に打ち消すことができ、モード変換特性を向上できる。
【0015】
好ましくは、コイル部品の一実施形態では、
前記コアは、前記巻芯部の第1端に設けられた第1鍔部と、前記巻芯部の第2端に設けられた第2鍔部とを含み、
前記第1鍔部に設けられ前記コイルに接続された複数の電極部と、前記第2鍔部に設けられ前記コイルに接続された複数の電極部とをさらに備え、
前記巻回領域において、前記撚り線部の少なくとも一部は、前記巻芯部における前記第1端および前記第2端の少なくとも一方に最も近い位置に存在する。
【0016】
前記実施形態によれば、撚り線部の少なくとも一部は、第1端および第2端の少なくとも一方に最も近い位置に存在するので、電極部に近い部分において第1ワイヤと第2ワイヤの間の容量差を小さくできる。これにより、撚り線部と電極部との間の浮遊容量を低減でき、モード変換特性を向上できる。
【0017】
好ましくは、コイル部品の一実施形態では、
前記コアは、前記巻芯部の第1端に設けられた第1鍔部と、前記巻芯部の第2端に設けられた第2鍔部とを含み、
前記第1鍔部に設けられ前記コイルに接続された複数の電極部と、前記第2鍔部に設けられ前記コイルに接続された複数の電極部とをさらに備え、
前記巻回領域において、前記並走部の少なくとも一部は、前記巻芯部における前記第1端および前記第2端の少なくとも一方に最も近い位置に存在する。
【0018】
前記実施形態によれば、並走部の少なくとも一部は、第1端および第2端の少なくとも一方に最も近い位置に存在するので、並走部が存在する巻芯部の端部から電極部までの間において、複数のワイヤが互いに撚り合わされない状態とすることができる。これにより、巻芯部の端部から電極部に引き出されるワイヤの長さを製品ごとに一定にすることができ、製品ごとの特性のばらつきを抑制できる。
【0019】
また、巻芯部の端部から電極部までの間において、複数のワイヤの撚り合わせにより発生するワイヤの巻き膨れを抑制でき、コイル部品を実装基板に実装する際に、はんだが、巻芯部の端部から電極部に引き出されるワイヤに接触することを低減できる。
【0020】
また、巻芯部の端部から電極部までの間では、複数のワイヤを互いに撚り合わさないで、複数のワイヤを巻芯部の端部に巻回した後で互いに撚り合わすことができる。これにより、複数のワイヤの撚り合わせの開始位置を安定することができる。
【0021】
好ましくは、コイル部品の一実施形態では、
前記コアは、前記巻芯部の第1端に設けられた第1鍔部と、前記巻芯部の第2端に設けられた第2鍔部とを含み、
前記第1鍔部に設けられ前記コイルに接続された複数の電極部と、前記第2鍔部に設けられ前記コイルに接続された複数の電極部とをさらに備え、
前記巻回領域において、前記撚り線部と前記並走部は、前記軸に沿って、交互に並んでいる。
【0022】
前記実施形態によれば、撚り線部と並走部は、軸に沿って、交互に並んでいるので、各ターンのワイヤ容量をより均一にして、モード変換特性をより向上でき、また、ワイヤをより巻芯部に対してより密に巻回することができ、インダクタンス値をより向上できる。
【0023】
好ましくは、コイル部品の一実施形態では、前記並走部は、互いに撚り合わされないで並走した第1ワイヤおよび第2ワイヤを含み、
前記巻回領域において、前記並走部の少なくとも一部の同一ターンを構成する第1ワイヤおよび第2ワイヤのうちの一方のワイヤは、前記巻芯部に巻回された第1層を構成し、前記同一ターンを構成する第1ワイヤおよび第2ワイヤのうちの他方のワイヤは、前記第1層上に巻回された第2層を構成する。
【0024】
前記実施形態によれば、並走部の少なくとも一部の同一ターンを構成する第1ワイヤおよび第2ワイヤは、2層を構成するので、コイルの巻数を増加でき、インダクタンス値をより向上できる。
【0025】
好ましくは、コイル部品の一実施形態では、前記巻回領域において、前記撚り線部は、前記巻芯部に連続して複数ターン巻回された第1層と、前記第1層上に連続して複数ターン巻回された第2層とを構成する。
【0026】
前記実施形態によれば、撚り線部は2層構造であるので、コイルの巻数を増加でき、インダクタンス値をより向上できる。
【0027】
好ましくは、コイル部品の一実施形態では、前記巻回領域において、前記撚り線部および前記並走部の何れか一方は、前記巻芯部に連続して複数ターン巻回された第1層を構成し、前記撚り線部および前記並走部の何れか他方は、前記第1層上に連続して複数ターン巻回された第2層を構成する。
【0028】
前記実施形態によれば、撚り線部および並走部は、2層構造を構成するので、コイルの巻数を増加でき、インダクタンス値をより向上できる。また、撚り線部および並走部を増加でき、コイルの巻数を増加しつつ、モード変換特性をより向上できる。
【0029】
好ましくは、コイル部品の一実施形態では、
前記コアは、前記巻芯部の第1端に設けられた第1鍔部と、前記巻芯部の第2端に設けられた第2鍔部とを含み、
前記第1鍔部に設けられた第1電極部および第2電極部と、前記第2鍔部に設けられた第3電極部および第4電極部とをさらに備え、
前記コイルは、前記第1電極部と前記第3電極部とに電気的に接続された第1ワイヤと、前記第2電極部と前記第4電極部とに電気的に接続された第2ワイヤとを含み、
前記軸方向からみて、前記第1電極部および前記第2電極部は、前記第1鍔部の左右幅の中央位置に対して対称に配置され、前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤは、前記巻芯部における前記第1鍔部の左右幅の中央位置から前記第1電極部および前記第2電極部に引き出され、
前記軸方向からみて、前記第3電極部および前記第4電極部は、前記第2鍔部の左右幅の中央位置に対して対称に配置され、前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤは、前記巻芯部における前記第2鍔部の左右幅の中央位置から前記第3電極部および前記第4電極部に引き出される。
【0030】
前記実施形態によれば、第1ワイヤの巻芯部から第1電極部までの引き出しの長さと第2ワイヤの巻芯部から第2電極部までの引き出しの長さとを揃えることができ、また、第1ワイヤの巻芯部から第3電極部までの引き出しの長さと第2ワイヤの巻芯部から第4電極部までの引き出しの長さとを揃えることができて、モード変換特性をより向上することができる。
【発明の効果】
【0031】
本開示の一態様であるコイル部品によれば、モード変換特性を確保しつつインダクタンス値を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】コイル部品の第1実施形態を示す下面側からみた斜視図である。
図2A】Z撚りの撚り線部の拡大図である。
図2B】S撚りの撚り線部の拡大図である。
図3】撚り線部の所定位置における断面を説明する説明図である。
図4】コイル部品の簡略断面図である。
図5】コイル部品の第2実施形態を示す簡略断面図である。
図6】コイル部品の第3実施形態を示す簡略断面図である。
図7A】コイル部品の第4実施形態を示す簡略断面図である。
図7B】コイル部品の第1変形例を示す簡略断面図である。
図7C】コイル部品の第2変形例を示す簡略断面図である。
図8】コイル部品の第5実施形態を示す第1鍔部の外面側からみた端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本開示の一態様であるコイル部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0034】
(第1実施形態)
図1は、コイル部品の第1実施形態を示す下面側からみた斜視図である。図1に示すように、コイル部品1は、コア10と、コア10に巻回されたコイル20と、コア10に設けられコイル20が電気的に接続され、外部端子となる第1電極部31、第2電極部32、第3電極部33および第4電極部34と、コア10に取り付けられた板部材15とを備える。なお、図1では、便宜上、コイル20の一部を簡略化して示している。
【0035】
コア10は、一定方向に延びる形状であってコイル20が巻回された巻芯部13と、巻芯部13の延びる方向の第1端に設けられ、当該方向と直交する方向に張り出す第1鍔部11と、巻芯部13の延びる方向の第2端に設けられ、当該方向と直交する方向に張り出す第2鍔部12とを有する。コア10の材料としては、例えば、フェライトの焼結体や、磁性粉含有樹脂の成型体などの磁性体が好ましく、アルミナや、樹脂などの非磁性体であってもよい。巻芯部13の延びる方向に直交する巻芯部13の横断面は、四角形状でもその他の多角形状でもよく、円状、楕円状、これらを適宜組み合わせた形状であってもよい。なお、以下では、コア10の下面を、実装基板に実装される面とし、コア10の下面と反対側の面を、コア10の上面とする。
【0036】
第1鍔部11は、巻芯部13側を向く内面111と、内面111と反対側を向く外面112と、内面111と外面112とを接続する下面113と、下面113と反対側を向く上面114と、内面111と外面112とを接続し下面113と上面114とを接続する2つの側面115とを有する。
【0037】
同様に、第2鍔部12は、巻芯部13側を向く内面121と、内面121と反対側を向く外面122と、下面123と、上面124と、2つの側面125とを有する。第2鍔部12の下面123、上面124、側面125は、それぞれ第1鍔部11の下面113、上面114、側面115と同じ方向に向いている。なお、下面、上面は説明上のものであり、実際に鉛直方向下方、上方と対応していなくてもよい。
【0038】
板部材15は、第1鍔部11の上面114と第2鍔部12の上面124とに接着剤により取り付けられる。板部材15の材料は、例えば、コア10と同じである。コア10と板部材15は、ともに磁性体であるとき、閉磁路を構成し、インダクタンスの取得効率が向上する。板部材15は、例えば、長さが約3.2mm、幅が約2.5mm、厚みが約0.7mmである。
【0039】
第1鍔部11は、下面113側に、2つの足部を有し、一方の足部に、第1電極部31が設けられ、他方の足部に、第2電極部32が設けられている。第1電極部31および第2電極部32は、それぞれ、外面112と下面113に連続して設けられている。第1電極部31および第2電極部32の外面112に設けられた部分は、例えば、NiCr層、NiCu層、Cu層、Ni層およびSn層を含んでいる。第1電極部31および第2電極部32の下面113に設けられた部分は、例えば、Ag層、Cu層、Ni層およびSn層を含んでいる。
【0040】
第2鍔部12は、下面123側に、2つの足部を有し、第1電極部31が設けられた足部と同じ側にある一方の足部に、第3電極部33が設けられ、第2電極部32が設けられた足部と同じ側にある他方の足部に、第4電極部34が設けられている。第3電極部33および第4電極部34は、それぞれ、外面122と下面123に連続して設けられている。
【0041】
図1に示すように、第1鍔部11の下面113と第2鍔部12の下面123は、それぞれ足部の下面部分から足部間の股部の斜面部分を通って股部の下面部分を含む部分を指す。なお、以下では、第1電極部31、第2電極部32、第3電極部33および第4電極部34をまとめて説明する場合に、電極部31~34と記載する場合がある。
【0042】
コイル20は、巻芯部13に巻回された巻回領域Z1と、巻芯部13に巻回されていない非巻回領域Z2とを有する。より詳細には、非巻回領域Z2は、巻回領域Z1の両側のそれぞれに位置し、巻芯部13から離れて電極部31~34に接続される領域である。
【0043】
コイル20は、巻芯部13の軸に沿って巻回された第1ワイヤ21および第2ワイヤ22を含む。すなわち、コイル20のコイル軸は、巻芯部13の延びる方向(巻芯部13の軸)と一致する。第1ワイヤ21および第2ワイヤ22は、例えば銅などの金属(例えば、導体径:φ0.020mm~φ0.080mm)からなる導線がポリウレタン、イミド変性ポリウレタン、ポリエステルイミド、ポリアミドイミドなどの樹脂からなる被膜で覆われた絶縁被膜付導線である。
【0044】
第1ワイヤ21は、第1端が第1電極部31と、第2端が第3電極部33と電気的に接続されている。第2ワイヤ22は、第1端が第2電極部32と、第2端が第4電極部34と電気的に接続されている。第1ワイヤ21および第2ワイヤ22と、電極部31~34とは、例えば熱圧着、ろう付け、溶接などによって接続される。
【0045】
第1ワイヤ21および第2ワイヤ22は、巻芯部13に対して、同じ方向に巻回されている。これにより、コイル部品1では、差動信号など第1ワイヤ21と第2ワイヤ22とに逆相の信号が入力されれば、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22により発生する磁束が打ち消し合い、インダクタとしての働きが弱まり、当該信号を通過させる。一方、外来ノイズなど第1ワイヤ21と第2ワイヤ22とに同相の信号が入力されれば、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22により発生する磁束が強め合い、インダクタとしての働きが強まり、当該ノイズの通過を遮断する。したがって、コイル部品1は、差動信号などのディファレンシャルモードの信号の通過損失を低下しつつ、外来ノイズなどのコモンモードの信号を減衰させるコモンモードチョークコイルとして機能する。
【0046】
コイル部品1は、実装基板に実装される際、第1鍔部11の下面113および第2鍔部12の下面123が実装基板に対向する。このとき、巻芯部13が第1端から第2端に延びる方向(巻芯部13の軸)と、実装基板の主面は平行となる。すなわち、コイル部品1は、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22のコイル軸が実装基板と平行となる横巻型である。
【0047】
コイル20は、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22が互いに撚り合わされた撚り線部25を有する。図2A図2Bは、撚り線部25の拡大図である。図2A図2Bでは、便宜上、第2ワイヤ22に斜線を施している。図2Aは、Z撚りの撚り線部25aを示し、図2Bは、S撚りの撚り線部25bを示す。Z撚りの撚り線部25aの撚り方向とS撚りの撚り線部25bの撚り方向は、逆方向である。撚り方向とは、互いに撚り合わされた第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の回転方向をいう。
【0048】
図2A図2Bに示すように、撚り線部25は、第1ワイヤ21と第2ワイヤ22が互いに撚り合わされた部分である。撚り線部25では、2本のワイヤ間の相対的な差異(線路長、浮遊容量の偏りなど)が小さくなるので、コイル部品1内でディファレンシャルモード信号がコモンモード信号に変換されて出力される、あるいはその逆に変換されて出力されるなどのモード変換出力が低減し、モード変換特性を良好なものとすることができる。
【0049】
なお、図2A図2Bの撚り線部25では、第1ワイヤ21と第2ワイヤ22は密着して撚り合わされているが、互いの間隔が空いた箇所が存在していてもよく、全体的に間隔が空いたまま撚り合わされていてもよい。なお、コイル20において、撚り線部25の撚り方向はZ撚りであってもよいし、S撚りであってもよいし、後述するようにZ撚りとS撚りとが混在していてもよい。
【0050】
図2A図2Bに示すように、撚り線部25の撚りピッチPとは、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22が互いに撚り合わされた状態において、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の特定の相対位置から次の同じ相対位置に最初に戻るまでの長さをいう。つまり、互いに撚り合わされた複数のワイヤの位置関係が0°から360°まで回転したときの長さをいう。
【0051】
また、撚り線部25のツイスト数において、互いに撚り合わされた第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の位置関係が360°回転したときを、ツイスト数を1とする。例えば、2本のワイヤ21,22において、ワイヤの位置関係が180°回転したとき、すなわち2本のワイヤ21,22がちょうど入れ替わったときのツイスト数を1/2とし、さらにワイヤの位置関係が180°回転したとき、すなわち2本のワイヤ21,22の位置関係が最初に戻ったときのツイスト数を1とする。
【0052】
図3は、撚り線部25の所定位置における断面を説明する説明図である。図3に示すように、A-A断面の位置からB-B断面の位置までのツイスト数は1/4であり、A-A断面の位置からC-C断面の位置までのツイスト数は1/2であり、A-A断面の位置からD-D断面の位置までのツイスト数は3/4であり、A-A断面の位置からE-E断面の位置までのツイスト数は1である。
【0053】
A-A断面の位置における撚り線部25の第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の構造は、C-C断面の位置における撚り線部25の第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の構造と対称であるため、ワイヤ間の容量が打ち消される。同様に、B-B断面の位置における撚り線部25の第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の構造は、D-D断面の位置における撚り線部25の第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の構造と対称であるため、ワイヤ間の容量が打ち消される。このように、撚り線部25のツイスト数が1であるとき、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22が対称に配置されることとなり、対称となるワイヤ間の容量が互いに打ち消され、モード変換特性を向上できる。
【0054】
図4は、コイル部品1の簡略断面図である。図4は、巻芯部13の軸13aを含む断面の一部を示す図である。図4では、コイル20の巻芯部13の第1端131側から数えたターン序数を数字で示す。ターン序数は、第1鍔部11に近いターンから順番に数えた番号ではなく、コイル20の巻き回しの順番の番号である。この実施形態では、コイル20は、巻芯部13の第1端131から第2端132に向かって、6ターン巻回されている。
【0055】
巻回領域Z1は、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22が互いに撚り合わされた撚り線部25と、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22が互いに撚り合わされないで並走した並走部26とを有する。具体的に述べると、撚り線部25は、第1ターンと第6ターンを構成し、並走部26は、第2ターン、第3ターン、第4ターンおよび第5ターンを構成する。撚り線部25および並走部26は、それぞれ、巻芯部13上に巻回された第1層を構成する。
【0056】
上記構成によれば、巻回領域Z1は、並走部26を有するので、巻芯部13に対してワイヤ21,22を密に巻回することができ、これにより、巻芯部13に対してコイル20の巻数を増加でき、インダクタンス値を向上できる。また、巻回領域Z1は、撚り線部25を有するので、モード変換特性を確保できる。
【0057】
好ましくは、撚り線部25は、巻芯部13に少なくとも1ターン以上連続して巻回され、かつ、巻芯部13に少なくとも1ターン以上連続して巻回された状態の撚り線部25のツイスト数は、1以上である。上記構成によれば、撚り線部25が巻芯部13に1/2ターン連続して巻回される場合や、巻芯部13に連続して巻回された状態の撚り線部25のツイスト数が1/2である場合に比べて、モード変換特性を向上できる。
【0058】
好ましくは、並走部26は、巻芯部13に少なくとも1ターン以上連続して巻回される。上記構成によれば、並走部26が巻芯部13に1/2ターン連続して巻回される場合に比べて、巻芯部13に対してコイルの巻数をより増加でき、インダクタンス値をより向上できる。
【0059】
好ましくは、コイル20全体として、撚り線部25のツイスト数は、自然数である。上記構成によれば、コイル20全体として、撚り線部25のワイヤ21,22を対称に配置できる。これにより、撚り線部25の容量成分をより十分に打ち消すことができ、モード変換特性を向上できる。
【0060】
図4に示すように、巻回領域Z1において、撚り線部25の少なくとも一部は、巻芯部13における第1端131および第2端132の少なくとも一方に最も近い位置に存在する。この実施形態では、第1の撚り線部25は、第1端131に最も近い位置に存在し、第2の撚り線部25は、第2端132に最も近い位置に存在する。つまり、第1の撚り線部25は、第1ターンを構成し、第2の撚り線部25は、第6ターンを構成する。
【0061】
上記構成によれば、第1の撚り線部25は、第1端131に最も近い位置に存在するので、第1電極部31および第2電極部32に近い第1の撚り線部25において第1ワイヤ21と第2ワイヤ22の間の容量差を小さくできる。これにより、第1の撚り線部25と第1、第2電極部31,32との間の浮遊容量を低減でき、モード変換特性を向上できる。また、第2の撚り線部25は、第2端132に最も近い位置に存在するので、第3電極部33および第4電極部34に近い第2の撚り線部25において第1ワイヤ21と第2ワイヤ22の間の容量差を小さくできる。これにより、第2の撚り線部25と第3、第4電極部33,34との間の浮遊容量を低減でき、モード変換特性を向上できる。
【0062】
なお、撚り線部25の少なくとも一部は、第1端131または第2端132に最も近い位置に存在してもよい。つまり、撚り線部25は、第1ターンまたは第6ターンを構成してもよい。また、撚り線部25は、第1ターンおよび第6ターンを構成しているが、さらに、第2ターンから第5ターンの少なくとも3つを構成してもよい。
【0063】
(第2実施形態)
図5は、コイル部品の第2実施形態を示す簡略断面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、コイルの構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0064】
図5に示すように、第2実施形態のコイル部品1Aでは、コイル20Aの巻回領域Z1において、並走部26の少なくとも一部は、巻芯部13における第1端131および第2端132の少なくとも一方に最も近い位置に存在する。この実施形態では、第1の並走部26は、第1端131に最も近い位置に存在し、第2の並走部26は、第2端132に最も近い位置に存在する。つまり、第1の並走部26は、第1ターンを構成し、第2の並走部26は、第6ターンを構成する。また、他の並走部26は、第4ターンおよび第5ターンを構成し、撚り線部25は、第2ターンおよび第3ターンを構成する。
【0065】
上記構成によれば、第1の並走部26は、第1端131に最も近い位置に存在するので、第1の並走部26が存在する巻芯部13の第1端131から第1電極部31および第2電極部32までの間において、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22が互いに撚り合わされない状態とすることができる。これにより、巻芯部13の第1端131から第1電極部31および第2電極部32に引き出されるワイヤ21,22の長さを製品ごとに一定にすることができ、製品ごとの特性のばらつきを抑制できる。
【0066】
また、巻芯部13の第1端131から第1、第2電極部31,32までの間において、ワイヤ21,22の撚り合わせにより発生するワイヤ21,22の巻き膨れを抑制でき、コイル部品1Aを実装基板に実装する際に、はんだが、巻芯部13の第1端131から第1、第2電極部31,32に引き出されるワイヤ21,22に接触することを低減できる。
【0067】
また、巻芯部13の第1端131から第1、第2電極部31,32までの間では、ワイヤ21,22を互いに撚り合わさないで、ワイヤ21,22を巻芯部13の第1端131に巻回した後で互いに撚り合わすことができる。これにより、第1端131からワイヤ21,22を巻回する際、ワイヤ21,22の撚り合わせの開始位置を安定することができる。特に、第1の並走部26を1ターン以上とすることで、安定した巻回態様とすることができる。
【0068】
同様に、第2の並走部26は、第2端132に最も近い位置に存在するので、第2の並走部26が存在する巻芯部13の第2端132から第3電極部33および第4電極部34までの間において、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22が互いに撚り合わされない状態とすることができる。これにより、巻芯部13の第2端132から第3、第4電極部33,34に引き出されるワイヤ21,22の長さを製品ごとに一定にすることができ、製品ごとの特性のばらつきを抑制できる。
【0069】
また、巻芯部13の第2端132から第3、第4電極部33,34までの間において、ワイヤ21,22の撚り合わせにより発生するワイヤ21,22の巻き膨れを抑制でき、コイル部品1Aを実装基板に実装する際に、はんだが、巻芯部13の第2端132から第3、第4電極部33,34に引き出されるワイヤ21,22に接触することを低減できる。
【0070】
なお、並走部26の少なくとも一部は、第1端131または第2端132に最も近い位置に存在してもよい。つまり、並走部26は、第1ターンまたは第6ターンを構成してもよい。また、並走部26は、第1ターンおよび第6ターンを構成しているが、さらに、第2ターンから第5ターンの少なくとも3つを構成してもよい。
【0071】
(第3実施形態)
図6は、コイル部品の第3実施形態を示す簡略断面図である。第3実施形態は、第1実施形態とは、コイルの構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0072】
図6に示すように、第3実施形態のコイル部品1Bでは、コイル20Bの巻回領域Z1において、撚り線部25と並走部16は、軸13aに沿って、交互に並んでいる。具体的に述べると、撚り線部25は、第1ターン、第3ターンおよび第5ターンを構成し、並走部26は、第2ターン、第4ターンおよび第6ターンを構成する。なお、撚り線部25は、第2ターン、第4ターンおよび第6ターンを構成し、並走部26は、第1ターン、第3ターンおよび第5ターンを構成するようにしてもよい。
【0073】
上記構成によれば、撚り線部25と並走部16は、軸13aに沿って、交互に並んでいる。各ターンのワイヤ21,22の容量をより均一にして、モード変換特性をより向上でき、また、ワイヤ21,22をより巻芯部13に対してより密に巻回することができ、インダクタンス値をより向上できる。
【0074】
(第4実施形態)
図7Aは、コイル部品の第4実施形態を示す簡略断面図である。第4実施形態は、第1実施形態とは、コイルの構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0075】
図7Aに示すように、第4実施形態のコイル部品1Cでは、並走部26は、互いに撚り合わされないで並走した第1ワイヤ21および第2ワイヤ22を含む。コイル20Cの巻回領域Z1において、並走部26の少なくとも一部の同一ターンを構成する第1ワイヤ21および第2ワイヤ22のうちの一方のワイヤは、巻芯部13に巻回された第1層L1を構成し、前記同一ターンを構成する第1ワイヤ21および第2ワイヤ22のうちの他方のワイヤは、第1層L1上に巻回された第2層L2を構成する。
【0076】
具体的に述べると、並走部26は、第4ターンから第8ターンを構成する。そして、第4ターンを構成する第1、第2ワイヤ21,22と、第5ターンを構成する第2ワイヤ22と、第6ターンを構成する第2ワイヤ22と、第7ターンを構成する第2ワイヤ22と、第8ターンを構成する第2ワイヤ22とは、第1層L1を構成する。第5ターンを構成する第1ワイヤ21と、第6ターンを構成する第1ワイヤ21と、第7ターンを構成する第1ワイヤ21と、第8ターンを構成する第1ワイヤ21とは、第2層L2を構成する。なお、撚り線部25は、第1ターンから第3ターンを構成し、各ターンは、第1層L1を構成する。
【0077】
言い換えると、軸13aを含む断面において、並走部26の少なくとも一部の同一ターンを構成する第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の配列方向は、軸13aに平行な方向でなく、軸13aに交差する方向である。第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の配列方向は、第1ワイヤ21の中心と第2ワイヤ22の中心とを結ぶ方向である。好ましくは、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の配列方向は、軸13aに直交する方向に対して僅かに傾斜している。
【0078】
具体的に述べると、軸13aを含む断面において、第5ターンを構成する第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の配列方向と、第6ターンを構成する第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の配列方向と、第7ターンを構成する第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の配列方向と、第8ターンを構成する第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の配列方向とは、互いに平行であり、軸13aに交差している。第4ターンを構成する第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の配列方向は、軸13aに平行である。
【0079】
上記構成によれば、並走部26の少なくとも一部の同一ターンを構成する第1ワイヤ21および第2ワイヤ22は、2層を構成するので、コイル20Cの巻数を増加でき、インダクタンス値をより向上できる。なお、第5ターンから第8ターンを構成する第1ワイヤ21が、第1層L1を構成し、第5ターンから第8ターンを構成する第2ワイヤ22が、第2層L2を構成してもよい。
【0080】
図7Bは、コイル部品の第1変形例を示す簡略断面図である。図7Bに示すように、第1変形例のコイル部品1Dでは、図7Aの構成に加えて、さらに、コイル20Dの巻回領域Z1において、撚り線部25は、巻芯部13に連続して複数ターン巻回された第1層L1と、第1層L1上に連続して複数ターン巻回された第2層L2とを構成する。
【0081】
具体的に述べると、撚り線部25は、第1ターンから第5ターンを構成する。そして、第1ターンから第3ターンは、第1層L1を構成する。第4ターンおよび第5ターンは、第2層L2を構成する。
【0082】
また、並走部26は、第6ターンから第10ターンを構成する。そして、第6ターンを構成する第1、第2ワイヤ21,22と、第7ターンを構成する第2ワイヤ22と、第8ターンを構成する第2ワイヤ22と、第9ターンを構成する第2ワイヤ22と、第10ターンを構成する第2ワイヤ22とは、第1層L1を構成する。第7ターンを構成する第1ワイヤ21と、第8ターンを構成する第1ワイヤ21と、第9ターンを構成する第1ワイヤ21と、第10ターンを構成する第1ワイヤ21とは、第2層L2を構成する。
【0083】
上記構成によれば、撚り線部25は2層を構成するので、コイル20Dの巻数を増加でき、インダクタンス値をより向上できる。なお、並走部26は、1層構造であってもよい。
【0084】
図7Cは、コイル部品の第2変形例を示す簡略断面図である。図7Cに示すように、第2変形例のコイル部品1Fでは、図7Aの構成と比べて、並走部の構成が相違する。つまり、第2変形例のコイル部品1Fでは、コイル20Fの巻回領域Z1において、並走部26は、巻芯部13に連続して複数ターン巻回された第1層L1と、第1層L1上に連続して複数ターン巻回された第2層L2とを構成する。
【0085】
具体的に述べると、並走部26は、第4ターンから第8ターンを構成する。そして、第4ターンから第6ターンは、第1層L1を構成する。第7ターンおよび第8ターンは、第2層L2を構成する。なお、撚り線部25は、第1ターンから第3ターンを構成し、各ターンは、第1層L1を構成する。
【0086】
言い換えると、軸13aを含む断面において、並走部26の同一ターンを構成する第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の配列方向は、軸13aに平行な方向である。
具体的に述べると、軸13aを含む断面において、第4ターンを構成する第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の配列方向と、第5ターンを構成する第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の配列方向と、第6ターンを構成する第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の配列方向と、第7ターンを構成する第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の配列方向と、第8ターンを構成する第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の配列方向とは、互いに平行であり、軸13aに平行である。
【0087】
上記構成によれば、並走部26は2層を構成するので、コイル20Fの巻数を増加でき、インダクタンス値をより向上できる。
【0088】
さらに、コイル部品の他の変形例を説明する。図示しないが、巻回領域Z1において、撚り線部25および並走部26の何れか一方は、巻芯部13に連続して複数ターン巻回された第1層L1を構成し、撚り線部25および並走部26の何れか他方は、第1層L1上に連続して複数ターン巻回された第2層L2を構成する。なお、巻回領域Z1において、第1層L1が撚り線部25であり、かつ、第2層L2が並走部26である領域と、第1層L1が並走部26であり、かつ、第2層L2が撚り線部25である領域とが、混在していてもよい。
【0089】
上記構成によれば、撚り線部25および並走部26は、2層構造を構成するので、コイルの巻数を増加でき、インダクタンス値をより向上できる。また、撚り線部25および並走部26を増加でき、コイルの巻数を増加しつつ、モード変換特性をより向上できる。
【0090】
(第5実施形態)
図8は、コイル部品の第5実施形態を示す第1鍔部の外面側からみた端面図である。第5実施形態は、第1実施形態とは、ワイヤの引き出し位置および鍔部の構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0091】
図8に示すように、第5実施形態のコイル部品1Eでは、軸13a方向からみて、第1電極部31および第2電極部32は、第1鍔部11Eの左右幅Wの中央位置Cに対して対称に配置されている。左右幅Wは、第1鍔部11Eの左右の側面115,115の間の寸法をいう。軸13a方向からみて、第1ワイヤ21は、巻芯部13における第1鍔部11Eの左右幅Wの中央位置Cから第1電極部31に引き出され、第2ワイヤ22は、巻芯部13における第1鍔部11Eの左右幅Wの中央位置Cから第2電極部32に引き出される。
【0092】
具体的に述べると、第1鍔部11Eは、内面111と外面112と上面114に開口する溝部110を有する。第1ワイヤ21および第2ワイヤ22は、巻芯部13から溝部110を通過して第1、第2電極部31,32に引き出される。第1ワイヤ21は、第1電極部31における外面112に設けられた部分に接続され、第2ワイヤ22は、第2電極部32における外面112に設けられた部分に接続される。
【0093】
上記構成によれば、第1ワイヤ21の巻芯部13から第1電極部31までの引き出しの長さと第2ワイヤ22の巻芯部13から第2電極部32までの引き出しの長さとを揃えることができて、モード変換特性をより向上することができる。
【0094】
また、第1ワイヤ21は、第1電極部31の外面112部分に接続され、実装面である第1電極部31の下面113部分に接続されないので、第1ワイヤ21がはんだに触れることを低減できる。これにより、実装時や信頼性試験での第1ワイヤ21へのダメージが少なくなり、第1ワイヤ21の断線リスクが低下する。なお、第1電極部31は、第1鍔部11の上面114、外面112および下面113に渡って連続して設けてもよく、このとき、第1電極部31における上面114に設けられた部分に第1ワイヤ21を接続することで、第1ワイヤ21がはんだに触れることをより低減できる。
【0095】
同様に、第2ワイヤ22は、第2電極部32の外面112部分に接続され、実装面である第2電極部32の下面113部分に接続されないので、第2ワイヤ22がはんだに触れることを低減できる。
【0096】
図示しないが、第2鍔部においても第1鍔部11Eと同様である。つまり、軸13a方向からみて、第3電極部33および第4電極部34は、第2鍔部の左右幅の中央位置に対して対称に配置され、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22は、巻芯部13における第2鍔部の左右幅の中央位置から第3電極部33および第4電極部34に引き出される。
【0097】
上記構成によれば、第1ワイヤ21の巻芯部13から第3電極部33までの引き出しの長さと第2ワイヤ22の巻芯部13から第4電極部34までの引き出しの長さとを揃えることができて、モード変換特性をより向上することができる。
【0098】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第5実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0099】
前記実施形態では、コイル部品を、コモンモードチョークコイルとして用いているが、例えば、トランス、結合インダクタアレイなどの複数のワイヤが巻芯部に巻回される巻線型コイルとして用いてもよい。これらの巻線型コイルにおいても、線間容量の低減は有用である。
【0100】
前記実施形態では、板部材を設けているが、板部材を省くようにしてもよい。前記実施形態では、コイルがワイヤを2本含むが、コイルは複数のワイヤを含めばよく、3本以上としてもよい。この場合、撚り線部も2本のワイヤが撚り合わされた構成に限られず、3本以上のワイヤが撚り合わされた構成となっていてもよい。また、ワイヤの数量の増加に伴って、電極部の数量を増加してもよい。
【0101】
前記実施形態では、撚り線部および並走部の少なくとも一方を巻芯部に1層または2層巻回しているが、撚り線部および並走部の少なくとも一方を巻芯部に3層以上巻回してもよい。
【0102】
前記実施形態では、撚り線部は、巻芯部に巻回されている領域に存在しているが、巻芯部に巻回されていない領域に存在していてもよい。例えば、撚り線部は、電極部から巻芯部までの間の非巻回領域に存在していてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F コイル部品
10 コア
11,11E 第1鍔部
12 第2鍔部
13 巻芯部
13a 軸
131 第1端
132 第2端
15 板部材
20,20A,20B,20C,20D,20F コイル
21 第1ワイヤ
22 第2ワイヤ
25 撚り線部
26 並走部
31 第1電極部
32 第2電極部
33 第3電極部
34 第4電極部
110 溝部
C 中央位置
W 左右幅
L1 第1層
L2 第2層
Z1 巻回領域
Z2 非巻回領域
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8