(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20240116BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F27/29 G
H01F17/04 F
(21)【出願番号】P 2021065964
(22)【出願日】2021-04-08
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】相良 卓馬
(72)【発明者】
【氏名】孝山 康太
(72)【発明者】
【氏名】宮本 昌史
(72)【発明者】
【氏名】中本 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 香織
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-186415(JP,A)
【文献】特開2020-126976(JP,A)
【文献】特開2001-093756(JP,A)
【文献】特開2002-110428(JP,A)
【文献】特開2018-098334(JP,A)
【文献】特開2022-088037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を有する巻芯部と、前記巻芯部における前記中心軸線に沿う方向の第1端に接続しており、前記巻芯部の周面よりも前記中心軸線を中心とする径方向の外側に張り出している第1鍔部と、前記巻芯部における前記第1端とは反対側の第2端に接続しており、前記巻芯部の前記周面よりも前記中心軸線を中心とする径方向の外側に張り出している第2鍔部と、を有するコアと、
前記中心軸線を回転軸として、前記巻芯部の前記周面上を螺旋状に延びる部分を有するワイヤと、
前記ワイヤの第1端に接続しており、前記第1鍔部の表面に設けられた第1端子電極と、
前記ワイヤの第2端に接続しており、前記第2鍔部の表面に設けられた第2端子電極と、
前記巻芯部よりも前記中心軸線に沿う方向に長く延びるとともに、前記第1鍔部及び前記第2鍔部に接続している天板と、を備え、
前記中心軸線に直交する軸を直交軸、前記直交軸に沿う2つの方向のうち1つを正方向、前記正方向の反対方向を負方向としたとき、
前記天板は、前記第1鍔部における前記正方向の端、及び前記第2鍔部における前記正方向の端に接続しており、
前記第1端子電極は、前記第1鍔部の表面のうちの前記負方向の端に位置しており、
前記ワイヤのうち、前記第1端子電極と接続する箇所から前記中心軸線を中心として1周巻き回る箇所までの範囲を第1ワイヤ範囲としたとき、
前記ワイヤは、前記第1ワイヤ範囲内で前記天板との接続箇所を有し、
前記接続箇所において、前記ワイヤは前記巻芯部の前記周面から離隔して
おり、
前記第1ワイヤ範囲において、前記巻芯部の前記周面から離隔している範囲を非接触範囲としたとき、
前記非接触範囲は、前記ワイヤにおける前記第1ワイヤ範囲以外の箇所及び他のワイヤを間に挟まずに前記巻芯部の周面から離隔しており、且つ、前記ワイヤにおける前記第1ワイヤ範囲よりも前記第2端側のターンに接触していない
コイル部品。
【請求項2】
前記天板と前記第1鍔部及び前記第2鍔部とを接着する接着剤を有しており、
前記接着剤は、前記天板の表面のうち前記第1鍔部と向かい合う面及び前記第2鍔部と向かい合う面に塗布されており、
前記接続箇所は、前記接着剤を介して前記天板に接続している
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記巻芯部の前記直交軸に沿う前記正方向の端から前記第1鍔部の前記直交軸に沿う前記負方向の端までの寸法を、コア寸法とし、
前記ワイヤの直径を、ワイヤ径としたとき、
前記ワイヤ径は、前記コア寸法に対して5%以上20%以下である
請求項1又は請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記中心軸線に沿う方向から視て、前記ワイヤの延び方向における前記非接触範囲の第1端と前記中心軸線とを通る直線と、前記ワイヤの延び方向における前記非接触範囲の第1端とは反対の第2端と前記中心軸線とを通る直線と、がなす角のうち、前記非接触範囲を向く角の大きさは、180度以上である
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第2端子電極は、前記第2鍔部の表面のうちの前記負方向の端に位置しており、
前記ワイヤのうち、前記第2端子電極と接続する箇所から前記中心軸線を中心として1周巻き回る箇所までの範囲を第2ワイヤ範囲とし、
前記接続箇所を第1接続箇所としたとき、
前記ワイヤは、前記第2ワイヤ範囲内で前記天板との第2接続箇所を有し、
前記第2接続箇所において、前記ワイヤは前記巻芯部の前記周面から離隔している
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項6】
中心軸線を有する巻芯部と、前記巻芯部における前記中心軸線に沿う方向の第1端に接続しており、前記巻芯部の周面よりも前記中心軸線を中心とする径方向の外側に張り出している第1鍔部と、前記巻芯部における前記第1端とは反対側の第2端に接続しており、前記巻芯部の前記周面よりも前記中心軸線を中心とする径方向の外側に張り出している第2鍔部と、を有するコアと、
前記中心軸線を回転軸として、前記巻芯部の前記周面上を螺旋状に延びる部分を有するワイヤと、
前記ワイヤの第1端に接続しており、前記第1鍔部の表面に設けられた第1端子電極と、
前記ワイヤの第2端に接続しており、前記第2鍔部の表面に設けられた第2端子電極と、
前記巻芯部よりも前記中心軸線に沿う方向に長く延びるとともに、前記第1鍔部及び前記第2鍔部に接続している天板と、を備え、
前記中心軸線に直交する軸を直交軸、前記直交軸に沿う2つの方向のうち1つを正方向、前記正方向の反対方向を負方向としたとき、
前記天板は、前記第1鍔部における前記正方向の端、及び前記第2鍔部における前記正方向の端に接続しており、
前記第1端子電極は、前記第1鍔部の表面のうちの前記負方向の端に位置しており、
前記ワイヤのうち、前記第1端子電極と接続する箇所から前記中心軸線を中心として1周巻き回る箇所までの範囲を第1ワイヤ範囲としたとき、
前記ワイヤは、前記第1ワイヤ範囲内で前記天板との接触箇所を有し、
前記接触箇所において、前記ワイヤは前記巻芯部の前記周面から離隔して
おり、
前記第1ワイヤ範囲において、前記巻芯部の前記周面から離隔している範囲を非接触範囲としたとき、
前記非接触範囲は、前記ワイヤにおける前記第1ワイヤ範囲以外の箇所及び他のワイヤを間に挟まずに前記巻芯部の周面から離隔しており、且つ、前記ワイヤにおける前記第1ワイヤ範囲よりも前記第2端側のターンに接触していない
コイル部品。
【請求項7】
中心軸線を有する巻芯部と、前記巻芯部における前記中心軸線に沿う方向の第1端に接続しており、前記巻芯部の周面よりも前記中心軸線を中心とする径方向の外側に張り出している第1鍔部と、前記巻芯部における前記第1端とは反対側の第2端に接続しており、前記巻芯部の前記周面よりも前記中心軸線を中心とする径方向の外側に張り出している第2鍔部と、を有するコアと、
前記中心軸線を回転軸として、前記巻芯部の前記周面上を螺旋状に延びる部分を有するワイヤと、
前記ワイヤの第1端に接続しており、前記第1鍔部の表面に設けられた第1端子電極と、
前記ワイヤの第2端に接続しており、前記第2鍔部の表面に設けられた第2端子電極と、を備え、
前記中心軸線に直交する軸を直交軸、前記直交軸に沿う2つの方向のうち1つを正方向、前記正方向の反対方向を負方向としたとき、
前記第1端子電極は、前記第1鍔部の表面のうちの前記負方向の端に位置しており、
前記ワイヤのうち、前記第1端子電極と接続する箇所から前記中心軸線を中心として1周巻き回る箇所までの範囲を第1ワイヤ範囲としたとき、
前記第1ワイヤ範囲のうち、前記中心軸線から視て前記正方向側のすべての範囲において、前記ワイヤは前記巻芯部から離隔して
おり、
前記第1ワイヤ範囲において、前記巻芯部の前記周面から離隔している範囲を非接触範囲としたとき、
前記非接触範囲は、前記ワイヤにおける前記第1ワイヤ範囲以外の箇所及び他のワイヤを間に挟まずに前記巻芯部の周面から離隔しており、且つ、前記ワイヤにおける前記第1ワイヤ範囲よりも前記第2端側のターンに接触していない
コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のコイル部品は、中心軸線を有する巻芯部と、第1鍔部と、第2鍔部と、ワイヤと、を備えている。巻芯部は四角柱状になっている。第1鍔部は、巻芯部の第1端に接続している。第1鍔部は、巻芯部の周面よりも中心軸を中心とする径方向の外側に張り出している。第2鍔部は、巻芯部の第2端に接続している。第2鍔部は、巻芯部の周面よりも中心軸を中心とする径方向の外側に張り出している。そして、ワイヤは、巻芯部の中心軸線を回転軸として、巻芯部の周面上を螺旋状に延びている。さらに、ワイヤは、螺旋状に延びている部分において、中心軸線に沿う方向に隣り合って延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のようなコイル部品では、1つのワイヤにおいて、ターン同士が中心軸線に沿う方向に隣り合っている。そのため、ワイヤの各ターン間において寄生容量が発生する。ターン間の寄生容量が過度に大きい場合、コイル部品の特性が悪化する虞がある。より具体的には、高周波帯におけるインピーダンスが低下する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、中心軸線を有する巻芯部と、前記巻芯部における前記中心軸線に沿う方向の第1端に接続しており、前記巻芯部の周面よりも前記中心軸線を中心とする径方向の外側に張り出している第1鍔部と、前記巻芯部における前記第1端とは反対側の第2端に接続しており、前記巻芯部の前記周面よりも前記中心軸線を中心とする径方向の外側に張り出している第2鍔部と、を有するコアと、前記中心軸線を回転軸として、前記巻芯部の前記周面上を螺旋状に延びる部分を有するワイヤと、前記ワイヤの第1端に接続しており、前記第1鍔部の表面に設けられた第1端子電極と、前記ワイヤの第2端に接続しており、前記第2鍔部の表面に設けられた第2端子電極と、前記巻芯部よりも前記中心軸線に沿う方向に長く延びるとともに、前記第1鍔部及び前記第2鍔部に接続している天板と、を備え、前記中心軸線に直交する軸を直交軸、前記直交軸に沿う2つの方向のうち1つを正方向、前記正方向の反対方向を負方向としたとき、前記天板は、前記第1鍔部における前記正方向の端、及び前記第2鍔部における前記正方向の端に接続しており、前記第1端子電極は、前記第1鍔部の表面のうちの前記負方向の端に位置しており、前記ワイヤのうち、前記第1端子電極と接続する箇所から前記中心軸線を中心として1周巻き回る箇所までの範囲を第1ワイヤ範囲としたとき、前記ワイヤは、前記第1ワイヤ範囲内で前記天板との接続箇所を有し、前記接続箇所において、前記ワイヤは前記巻芯部の前記周面から離隔しているコイル部品である。
【0006】
上記構成によれば、ワイヤにおける天板との接続箇所近傍は、同ワイヤにおける巻芯部の周面上を延びる部分に対して離隔している。したがって、ワイヤにおける天板との接続箇所近傍において発生する寄生容量を小さくすることができる。その結果、寄生容量に起因するコイル部品の特性悪化を抑制できる。
【0007】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、中心軸線を有する巻芯部と、前記巻芯部における前記中心軸線に沿う方向の第1端に接続しており、前記巻芯部の周面よりも前記中心軸線を中心とする径方向の外側に張り出している第1鍔部と、前記巻芯部における前記第1端とは反対側の第2端に接続しており、前記巻芯部の前記周面よりも前記中心軸線を中心とする径方向の外側に張り出している第2鍔部と、を有するコアと、前記中心軸線を回転軸として、前記巻芯部の前記周面上を螺旋状に延びる部分を有するワイヤと、前記ワイヤの第1端に接続しており、前記第1鍔部の表面に設けられた第1端子電極と、前記ワイヤの第2端に接続しており、前記第2鍔部の表面に設けられた第2端子電極と、前記巻芯部よりも前記中心軸線に沿う方向に長く延びるとともに、前記第1鍔部及び前記第2鍔部に接続している天板と、を備え、前記中心軸線に直交する軸を直交軸、前記直交軸に沿う2つの方向のうち1つを正方向、前記正方向の反対方向を負方向としたとき、前記天板は、前記第1鍔部における前記正方向の端、及び前記第2鍔部における前記正方向の端に接続しており、前記第1端子電極は、前記第1鍔部の表面のうちの前記負方向の端に位置しており、前記ワイヤのうち、前記第1端子電極と接続する箇所から前記中心軸線を中心として1周巻き回る箇所までの範囲を第1ワイヤ範囲としたとき、前記ワイヤは、前記第1ワイヤ範囲内で前記天板との接触箇所を有し、前記接触箇所において、前記ワイヤは前記巻芯部の前記周面から離隔しているコイル部品である。
【0008】
上記構成によれば、ワイヤにおける天板との接触箇所近傍は、同ワイヤにおける巻芯部の周面上を延びる部分に対して離隔している。したがって、ワイヤにおける天板との接触箇所近傍において発生する寄生容量を小さくすることができる。その結果、寄生容量に起因するコイル部品の特性悪化を抑制できる。
【0009】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、中心軸線を有する巻芯部と、前記巻芯部における前記中心軸線に沿う方向の第1端に接続しており、前記巻芯部の周面よりも前記中心軸線を中心とする径方向の外側に張り出している第1鍔部と、前記巻芯部における前記第1端とは反対側の第2端に接続しており、前記巻芯部の前記周面よりも前記中心軸線を中心とする径方向の外側に張り出している第2鍔部と、を有するコアと、前記中心軸線を回転軸として、前記巻芯部の前記周面上を螺旋状に延びる部分を有するワイヤと、前記ワイヤの第1端に接続しており、前記第1鍔部の表面に設けられた第1端子電極と、前記ワイヤの第2端に接続しており、前記第2鍔部の表面に設けられた第2端子電極と、を備え、前記中心軸線に直交する軸を直交軸、前記直交軸に沿う2つの方向のうち1つを正方向、前記正方向の反対方向を負方向としたとき、前記第1端子電極は、前記第1鍔部の表面のうちの前記負方向の端に位置しており、前記ワイヤのうち、前記第1端子電極と接続する箇所から前記中心軸線を中心として1周巻き回る箇所までの範囲を第1ワイヤ範囲としたとき、前記第1ワイヤ範囲のうち、前記中心軸線から視て前記正方向側のすべての範囲は、前記巻芯部から離隔しているコイル部品である。
【0010】
上記構成によれば、ワイヤの第1ワイヤ範囲のうち、中心軸線から視て正方向側のすべての範囲は、巻芯部から離隔している。したがって、相応に広い範囲において、発生する寄生容量を小さくすることができる。その結果、寄生容量に起因するコイル部品の特性悪化を抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
寄生容量に起因するコイル部品の高周波帯におけるインピーダンスの低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図8】ワイヤの第1ワイヤ範囲を説明するための説明図。
【
図9】ワイヤの第2ワイヤ範囲を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<コイル部品の一実施形態>
以下、コイル部品の一実施形態について説明する。なお、図面は理解を容易にするため構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図中のものと異なる場合がある。また、断面図ではハッチングを付しているが、理解を容易にするために一部の構成要素のハッチングを省略している場合がある。
【0014】
(全体構成)
図1に示すように、コイル部品10は、コア10Cを備えている。コア10Cは、巻芯部11を備えている。巻芯部11は、四角柱状である。したがって、巻芯部11は、中心軸線CAを有し、且つ中心軸線CAに沿う方向に延びている。また、巻芯部11は、中心軸線CAを囲む周面11Fを有している。
【0015】
なお、以下の説明では、中心軸線CAに沿う方向に延びる軸を第1軸Xとする。また、
図2に示すように、中心軸線CAに直交する巻芯部11の断面において、四角形を構成する4つの辺のうちいずれか特定の辺と平行に延びる軸を第2軸Yとする。そして、
図1に示すように、第1軸X及び第2軸Yに直交する軸を第3軸Zとする。すなわち、第3軸Zは、中心軸線CAに直交する直交軸である。また、第1軸Xに沿う方向の一方を第1正方向X1とし、第1軸Xに沿う方向の他方を第1負方向X2とする。そして、
図2に示すように、第2軸Yに沿う方向の一方を第2正方向Y1とし、第2軸Yに沿う方向の他方を第2負方向Y2とする。さらに、
図1に示すように、第3軸Zに沿う方向の一方を第3正方向Z1とし、第3軸Zに沿う方向の他方を第3負方向Z2とする。すなわち、第3正方向Z1の反対方向が第3負方向Z2である。
【0016】
図1に示すように、コア10Cは、さらに第1鍔部12と、第2鍔部13と、を備えている。第1鍔部12は、巻芯部11の第1正方向X1の端である第1端に接続している。第1鍔部12は、巻芯部11の周面11Fよりも、中心軸線CAを中心とする径方向の外側に張り出している。
図2に示すように、巻芯部11の周面11Fからの突出量は、第2正方向Y1及び第2負方向Y2においては同一である。一方で、
図1に示すように、第3負方向Z2における巻芯部11の周面11Fからの突出量は、第3正方向Z1における巻芯部11の周面11Fからの突出量よりも大きい。換言すれば、第1鍔部12の第3軸Zに沿う方向の中心は、巻芯部11の中心軸線CAよりも第3負方向Z2にずれている。
【0017】
第2鍔部13は、巻芯部11の第1負方向X2の端である第2端に接続している。第2鍔部13は、巻芯部11を挟んで、第1鍔部12と第1軸Xに沿う方向に対称形状になっている。第1鍔部12及び第2鍔部13における、巻芯部11の中心軸線CAに直交する断面は、四角形である。
【0018】
コア10Cの材質は、非導電性材料である。コア10Cの材質は、例えば、アルミナ、ニッケル亜鉛系フェライト、樹脂、又はこれらの混合物等である。
また、
図3に示すように、巻芯部11のうちの第3正方向Z1の端から、第1鍔部12のうちの第3負方向Z2の端までの寸法を、コア寸法CDとする。このとき、コア寸法CDは、例えば1mm以下である。
【0019】
コイル部品10は、第1端子電極21と、第2端子電極22と、を備えている。
図3に示すように、第1端子電極21は、第1鍔部12の表面に位置している。具体的には、第1鍔部12の第3負方向Z2の端における表面に位置している。
【0020】
第2端子電極22は、第2鍔部13の表面に位置している。具体的には、第2鍔部13の第3負方向Z2の端における表面に位置している。
第1端子電極21及び第2端子電極22は、銀の金属層、及び金属層の表面に施された銅、ニッケル、錫のめっき層からなる。本実施形態では、コイル部品10において、第1端子電極21及び第2端子電極22が存在する面、すなわち第3負方向Z2を向く面は、コイル部品10を基板に実装する際に基板と対向する面である。
【0021】
図1に示すように、コイル部品10は、ワイヤ30を備えている。ワイヤ30の第1端は、第1端子電極21に接続している。ワイヤ30の第2端は、第2端子電極22に接続している。ワイヤ30は、中心軸線CAを回転軸として、巻芯部11の周面11F上を螺旋状に延びる部分を有している。
【0022】
図3に示すように、ワイヤ30の直径をワイヤ径WDとする。ワイヤ径WDは、ワイヤ径WDは、コア寸法CDに対して5%以上20%以下である。なお、ワイヤ30の詳細は後述する。
【0023】
コイル部品10は、天板40を備えている。天板40は、第2軸Yに沿う方向よりも第1軸Xに沿う方向に長い長方形の板状である。天板40は、コア10Cの第3正方向Z1の端に接続している。すなわち、天板40は、コア10Cのうち、第1端子電極21及び第2端子電極22が配置されている端と反対側の端に接続している。天板40は、第1鍔部12の第3正方向Z1の端面と第2鍔部13の第3正方向Z1の端面とを架け渡すように、コア10Cに接続している。そのため、天板40の第1軸Xに沿う方向の寸法は、巻芯部11の第1軸Xに沿う方向の寸法よりも大きい。換言すると、天板40は、巻芯部11よりも中心軸線CAに沿う方向に長く延びている。また、
図2に示すように、天板40の第2軸Yに沿う方向の寸法は、第1鍔部12の第2軸Yに沿う方向の寸法及び第2鍔部13の第2軸Yに沿う方向の寸法と略同一である。
【0024】
ここで、コア10Cの表面粗さ及び天板40の表面粗さを説明する。以下の各数値は、天板40の第3負方向Z2を向く面、第1鍔部12の第3正方向Z1を向く表面を、それぞれ測定したものである。
【0025】
コア10Cの表面粗さについて、コア10Cの表面の展開面積比Sdrは、0.08である。コア10Cの表面の山頂点TPの算術平均値Spcは、2160である。コア10Cの表面の算術平均高さSaは、0.40である。これらの値は、ISO25178にて定められた規格で、非接触式にて測定した。
【0026】
一方で、天板40の表面粗さについて、天板40の表面の展開面積比Sdrは、0.19である。天板40の表面の山頂点TPの算術平均値Spcは、2860である。天板40の表面の算術平均高さSaは、0.28である。そのため、天板40の表面の展開面積比Sdrは、0.15以上であり、且つ0.50以下である。また、天板40の表面の展開面積比Sdrは、コア10Cの表面の展開面積比Sdrよりも大きい。
【0027】
このように、コア10C及び天板40の表面はいずれも一定の粗さを有している。そして、天板40の表面は、コア10Cの表面と比べて、粗さが大きくなっている。
図1に示すように、天板40は、第1鍔部12及び第2鍔部13に接着剤50を介して接続している。一方で、接着剤50は、巻芯部11には接触してない。接着剤50は、天板40と第1鍔部12とを接続する第1接着部51と、天板40と第2鍔部13とを接続する第2接着部52とに分かれている。接着剤50は、熱硬化性の接着剤であり、例えばエポキシ樹脂からなる。
【0028】
(第1接着部及び第2接着部について)
図4に示すように、第1接着部51は、第1鍔部12と天板40とを接続している。また、
図5に示すように、第1接着部51は、天板40の第3負方向Z2を向く面のうち、第1軸Xに沿う方向の中央よりも第1正方向X1側に位置している。
【0029】
そして、
図3及び
図4に示すように、第1接着部51は、天板40の第3負方向Z2を向く面のうち、第1範囲A11に濡れ広がっている。
図5に示すように、第1範囲A11において、第1接着部51は、第1膜厚部51Aと、第1膜薄部51Bと、を有している。
【0030】
図6に示すように、第1膜厚部51Aは、粗さのある天板40の表面において、山頂点TPよりも表面から離れた位置までの厚みを有する部分である。第1膜厚部51Aは、天板40の第3負方向Z2を向く面のうち、天板40の第1軸Xに沿う方向の中央よりも第1正方向X1側に位置している。
【0031】
一方で、第1膜薄部51Bは、粗さのある天板40の表面において、山頂点TPまでの厚みを有しない部分である。すなわち、
図7に示すように、第1膜薄部51Bは、粗さのある天板40の表面において山頂点TPと山頂点TPとの間の谷間の部分に濡れ広がっているものの、天板40の山頂点TPは覆われていない。また、
図5に示すように、第1膜薄部51Bは、第3軸Zに沿う方向から視たときに、第1膜厚部51Aの周りを囲んでいる。そして、第1膜薄部51Bの第1負方向X2の端は、天板40の第1軸Xに沿う方向の中央まで至っていない。
【0032】
図4に示すように、第1鍔部12の第3正方向Z1を向く面は、第1接着部51の第1膜薄部51Bの一部分に向かい合っている。そして、
図3及び
図4に示すように、第1鍔部12は、第1接着部51のうち、第1膜厚部51Aの一部分を介して天板40に接続している。そのため、
図5に示すように、第1鍔部12の表面上において接着剤50が存在している範囲である第2範囲A21は、第1接着部51における第1膜厚部51Aが存在している範囲よりも小さい。そのため、第1範囲A11は、第2範囲A21より大きい。
【0033】
また、
図3に示すように、第2接着部52は、天板40の第3負方向Z2を向く面のうち、第3範囲A12に濡れ広がっている。
図5に示すように、第3範囲A12において、第2接着部52は、第2膜厚部52Aと、第2膜薄部52Bと、を有している。
【0034】
第2接着部52は、第3軸Zに沿う方向から視たときに、天板40の第1軸Xに沿う方向の中央を通る第2軸Yに平行な軸を対称軸として、第1接着部51と線対称である。そのため、第2膜厚部52Aは、第1膜厚部51Aと同様に、粗さのある天板40の表面において山頂点TPよりも表面から離れた位置までの厚みを有する部分である。第2膜厚部52Aは、天板40の第3負方向Z2を向く面のうち、天板40の第1軸Xに沿う方向の中央よりも第1負方向X2の端に位置している。
【0035】
一方で、第2膜薄部52Bは、第1膜薄部51Bと同様に、粗さのある天板40の表面において、山頂点TPまでの厚みを有しない部分である。すなわち、第2膜薄部52Bは、粗さのある天板40の表面において山頂点TPと山頂点TPとの間の谷間の部分に濡れ広がっているものの、天板40の山頂点TPは覆われていない。また、第2膜薄部52Bは、第3軸Zに沿う方向から視たときに、第2膜厚部52Aの周りを囲んでいる。そして、第2膜薄部52Bの第1正方向X1の端は、天板40の第1軸Xに沿う方向の中央まで至っていない。そのため、第2膜薄部52Bと第1膜薄部51Bとは、接触していない。すなわち、第1範囲A11と、第3範囲A12とは、離れている。なお、天板40の表面において接着剤50が存在している範囲を第1存在範囲A1とするとき、第1存在範囲A1は、第1範囲A11と第3範囲A12とを合わせた範囲である。
【0036】
図4に示すように、第2鍔部13の第3正方向Z1を向く面は、第2接着部52の第2膜薄部52Bの一部分に向かい合っている。そして、
図3に示すように、第2鍔部13は、第2接着部52のうち、第2膜厚部52Aの一部分を介して天板40に接続している。そのため、
図5に示すように、第2鍔部13の表面上において接着剤50が存在している範囲である第4範囲A22は、第2接着部52における第2膜厚部52Aが存在している範囲よりも小さい。そのため、第3範囲A12は、第4範囲A22より大きい。
【0037】
第2範囲A21と、第4範囲A22と、を合わせた範囲を第2存在範囲A2とする。第1存在範囲A1は、第2存在範囲A2よりも大きい。具体的には、第1存在範囲A1は、第2存在範囲A2の大きさの1.1倍以上となっている。
【0038】
(ワイヤについて)
次に、ワイヤ30について、詳述する。
図2に示すように、ワイヤ30の第1端は、第1端子電極21の第1負方向X2を向く面に接続している。また、ワイヤ30の第1端は、第2軸Yに沿う方向において、第1鍔部12の中央に位置している。
【0039】
また、ワイヤ30の第2端は、第2端子電極22の第1正方向X1を向く面に接続している。また、ワイヤ30の第2端は、第2軸Yに沿う方向において、第2鍔部13の中央に位置している。
【0040】
ワイヤ30は、第1端を含む第1部分30Aと、第2端を含む第2部分30Bと、第1部分30Aと第2部分30Bとの間の部分である中央部分30Cと、を有している。
ワイヤ30のうちの中央部分30Cは、巻芯部11の中心軸線CAを回転軸として、巻芯部11の周面11F上を螺旋状に延びている。一方で、ワイヤ30における第1端を含む第1部分30Aは、周面11Fとは離れて、中心軸線CAを回転軸として、螺旋状に延びている。同様に、ワイヤ30における第2端を含む第2部分30Bは、周面11Fとは離れて、中心軸線CAを回転軸として、螺旋状に延びている。
【0041】
ここで、
図8に示すように、ワイヤ30のうち、第1端子電極21と接続する第1箇所P1から中心軸線CAを中心として1周巻き回る箇所である第2箇所P2までの範囲を第1ワイヤ範囲WA1とする。
【0042】
ワイヤ30は、第1ワイヤ範囲WA1の大部分において、巻芯部11の中心軸線CAを中心として、巻芯部11の周面11Fから離れて円弧状に延びている。ここで、第1ワイヤ範囲WA1内において、ワイヤ30が巻芯部11の周面11Fから連続して離隔している範囲を、第1非接触範囲SR1とする。第1非接触範囲SR1の一方の端は第1箇所P1である。第1非接触範囲SR1の他方の端は、ワイヤ30を第1端から辿って行ったときに、初めて周面11Fに接触した箇所である第3箇所P3である。すなわち、第1非接触範囲SR1は、
図8において、ワイヤ30の第1箇所P1から時計回りに第3箇所P3まで辿った範囲である。ワイヤ30の第3箇所P3は、ワイヤ30を第1端から辿って行ったときに、4つある巻芯部11のコーナのうち、4つ目のコーナである。
【0043】
ここで、中心軸線CAに沿う方向から視たときに、第1箇所P1と中心軸線CAとを通る直線を第1仮想直線VL1とする。また、中心軸線CAに沿う方向から視たときに、第3箇所P3と中心軸線CAとを通る直線を第2仮想直線VL2とする。このとき、第1仮想直線VL1と第2仮想直線VL2とがなす角のうち、第1非接触範囲SR1を向く第1角C1の大きさは、180度以上かつ360度未満である。そのため、第1非接触範囲SR1は、180度以上360度未満の範囲で巻き回されており、且つ、180度以上360度未満の範囲に亘って連続して周面11Fから離隔している。
【0044】
また、中心軸線CAに沿う方向から視たときに、第1非接触範囲SR1は、周面11F上のうち、中心軸線CAよりも第3正方向Z1、すなわち天板40に近い側のすべての範囲に亘って存在している。さらに、中心軸線CAに沿う方向から視たときに、第1非接触範囲SR1は、周面11Fのうち、第2正方向Y1を向く面、第2負方向Y2を向く面の略全域に対して離隔している。
【0045】
ワイヤ30は、第1非接触範囲SR1内において、接着剤50を介して、天板40と接続する第1接続箇所CP1を有している。具体的には、ワイヤ30の第1接続箇所CP1は、接着剤50のうち、第1接着部51の第1膜厚部51Aを介して天板40と接続している。そのため、第1接続箇所CP1において、ワイヤ30は巻芯部11の周面11Fから離隔している。
【0046】
また、ワイヤ30の第2部分30Bは、ワイヤ30の第1部分30Aと、対称の構造となっている。
図9に示すように、ワイヤ30のうち、第2端子電極22と接続する第4箇所P4から中心軸線CAを中心として1周巻き回る箇所である第5箇所P5までの範囲を第2ワイヤ範囲WA2とする。
【0047】
ワイヤ30は、第2ワイヤ範囲WA2の大部分において、巻芯部11の中心軸線CAを中心として、巻芯部11の周面11Fから離れて円弧状に延びている。ここで、第2ワイヤ範囲WA2内において、ワイヤ30が巻芯部11の周面11Fから連続して離隔している範囲を、第2非接触範囲SR2とする。第2非接触範囲SR2の一方の端は第4箇所P4である。第2非接触範囲SR2の他方の端は、ワイヤ30を第2端から辿って行ったときに、初めて周面11Fに接触した箇所である第6箇所P6である。すなわち、第2非接触範囲SR2は、
図8において、ワイヤ30の第2端から反時計回りに第6箇所P6まで辿った範囲である。ワイヤ30の第6箇所P6は、ワイヤ30を第2端から辿って行ったときに、4つある巻芯部11のコーナのうち、4つ目のコーナである。
【0048】
ここで、中心軸線CAに沿う方向から視たときに、第4箇所P4と中心軸線CAとを通る直線を第3仮想直線VL3とする。また、中心軸線CAに沿う方向から視たときに、第6箇所P6と中心軸線CAとを通る直線を第4仮想直線VL4とする。このとき、第3仮想直線VL3と第4仮想直線VL4とがなす角のうち、第2非接触範囲SR2を向く第2角C2の大きさは、180度以上かつ360度未満である。そのため、第2非接触範囲SR2は、180度以上360度未満の範囲で巻き回されており、且つ、180度以上360度未満の範囲に亘って連続して周面11Fから離隔している。
【0049】
また、中心軸線CAに沿う方向から視たときに、第2非接触範囲SR2は、周面11F上のうち、中心軸線CAよりも第3正方向Z1、すなわち天板40に近い側のすべての範囲に亘って存在している。さらに、中心軸線CAに沿う方向から視たときに、第2非接触範囲SR2は、周面11Fのうち、第2正方向Y1を向く面、第2負方向Y2を向く面の略全域に対して離隔している。
【0050】
ワイヤ30は、第2非接触範囲SR2内において、接着剤50を介して、天板40と接続する第2接続箇所CP2を有している。具体的には、ワイヤ30の第2接続箇所CP2は、接着剤50のうち、第2接着部52の第2膜厚部52Aを介して天板40と接続している。そのため、第2接続箇所CP2において、ワイヤ30は、巻芯部11の周面11Fから離隔している。
【0051】
(実施形態の作用)
以下の作用及び効果において、ワイヤ30の第1部分30Aについて説明することは、ワイヤ30の第2部分30Bにおいても同様である。そのため、ワイヤ30の第2部分30Bについての説明は省略する。
【0052】
上述したように、ワイヤ30の第1部分30Aにおいて、第1接続箇所CP1は、巻芯部11の周面11Fから離隔している。そのため、
図3に示すように、第1部分30Aのターンと中央部分30Cのターンとは、互いに接触しておらず、これらの間にスペースが生じている。
【0053】
(実施形態の効果)
(1)仮に、第1部分30Aのターンが、巻芯部11の周面11F上を延びていると、中央部分30Cのターンと接触する。このように、ターン同士が近づいて接触する場合には、ターン同士の距離が小さいことに起因して、相応に大きな寄生容量が発生する。
【0054】
一方、上記実施形態によれば、ワイヤ30の第1部分30Aにおいて、第1接続箇所CP1は、巻芯部11の周面11Fから離隔している。そのため、
図3に示すように、コイル部品10において、第1部分30Aのターンと、中央部分30Cのターンとは、接触していない。このように第1部分30Aのターンと中央部分30Cのターンとの間にスペースが生じていることにより、ターン同士が近づいて接触する場合と比べて、発生する寄生容量を低減させることができる。そして、ワイヤ30において発生する寄生容量を低減することは、コイル部品10の高周波帯におけるインピーダンスの低下を抑制することに繋がる。
【0055】
(2)上記実施形態によれば、ワイヤ30は、接着剤50によって、天板40に固定されている。そのため、ワイヤ30が巻芯部11の周面11Fから離隔している状態をより維持しやすい。
【0056】
(3)上記実施形態によれば、ワイヤ30の第1接続箇所CP1は、接着剤50を介して天板40に接続している。そのため、天板40を第1鍔部12及び第2鍔部13に接続するための接着剤50を、ワイヤ30を天板40に接続するための構成としても利用できる。したがって、ワイヤ30を天板40に接続するために特殊な部材を追加したり、天板40の形状として特殊な形状を採用したりする必要はない。
【0057】
(4)上記実施形態によれば、ワイヤ径WDは、コア寸法CDに対して5%以上20%以下である。つまり、ワイヤ径WDが、コア寸法CDに対して比較的に大きい。そのため、ワイヤ30を巻芯部11の周面11F上にテンションをかけて巻き回した後に、ワイヤ30の第1端を第1端子電極21に圧着させる際に、テンションを巻き回しの際よりも小さくすることで、第1ワイヤ範囲WA1に第1非接触範囲SR1を設けやすい。
【0058】
(5)上記実施形態によれば、第1仮想直線VL1と第2仮想直線VL2とがなす角のうち、第1非接触範囲SR1を向く第1角C1の大きさは、180度以上かつ360度未満である。そのため、第1非接触範囲SR1は、180度以上360度未満の範囲で巻き回されている。そのため、第1非接触範囲SR1が、相応に広い範囲に広がっているため、発生する寄生容量をより小さくできる。この点、第2角C2についても同様である。
【0059】
また、第1非接触範囲SR1が360度以上となり、仮に、第1接続箇所CP1に、ワイヤ30が複数ターンによって接続しているとする。この場合、仮に、ワイヤ30の被覆膜が劣化等によって損傷すると、接着剤50を介して、第1接続箇所CP1の複数ターン間で、通電してしまう虞がある。本実施形態では、第1非接触範囲SR1は、360度未満の範囲で巻き回されているため、このような意図しない通電が発生することを回避できる。
【0060】
(6)上記実施形態によれば、中心軸線CAに沿う方向から視たときに、ワイヤ30は、第1非接触範囲SR1において、第2正方向Y1を向く面、第2負方向Y2を向く面の略全域に対して離隔している。そのため、第1非接触範囲SR1を連続して180度以上の範囲に設けるうえで、第1接続箇所CP1を含めた範囲に設定しやすい。
【0061】
(7)上記実施形態によれば、ワイヤ30の第2部分30Bにおいて、第1部分30Aにおける第1ワイヤ範囲WA1に第1接続箇所CP1と同様に、第2接続箇所CP2が存在する。そのため、ワイヤ30の第1端を含む第1部分30Aに加えて、ワイヤ30の第2端を含む第2部分30Bにおいても、発生する寄生容量を低減できる。
【0062】
(8)接着剤50が存在している第1存在範囲A1は、第1鍔部12の表面上において接着剤50が存在する範囲と、第2鍔部13の表面上において接着剤50が存在する範囲と、を合わせた第2存在範囲A2よりも大きい。そのため、接着剤50は、天板40の表面上において、第1鍔部12及び第2鍔部13と、天板40との固定に必要な範囲を超えて広がっている。このように、天板40の表面上の広い範囲に接着剤50が存在することで、存在する接着剤50の分だけ、天板40に対する第3軸Zに沿う方向の荷重に耐えやすくなる。その結果、天板40に荷重が加わっても、破損の発生を抑制できる。
【0063】
なお、接着剤50は、巻芯部11とは接触していない。仮に、接着剤50が巻芯部11まで到達していると、ワイヤ30の多くが接着剤50と接することになり、ワイヤ30の被膜劣化の虞がある。そのため、この劣化による隣り合ったワイヤ間での短絡発生を回避することができる。また、第1鍔部12及び第2鍔部13と、天板40とを接着させるのに必要最低限な量と比べて、過度に接着剤50の量が多く必要となることはない。
【0064】
(9)上記実施形態によれば、第3軸Zに沿う方向から視たときに、巻芯部11の天板40に向かい合っている面は、第1範囲A11の一部及び第3範囲A12の一部と重なっている。すなわち、第1存在範囲A1の一部は、巻芯部11と向かい合っている。巻芯部11は、第2軸Yに沿う方向において、コイル部品10の中央に位置している。そのため、天板40を接着剤50で補強されるので、コイル部品10を基板上に実装する際に天板40に対して荷重が加わる場合でも、天板40が当該荷重に耐えることができる。
【0065】
(10)上記実施形態によれば、第1存在範囲A1の大きさは、第2存在範囲A2の大きさの1.1倍以上である。1.1倍以上あれば、第1存在範囲A1の面積として、天板40を補強できるに足る面積を確保できる。
【0066】
(11)上記実施形態によれば、天板40の表面の展開面積比Sdrは、0.15以上0.50以下である。そのため、天板40の表面に接着剤50を塗布する際に、接着剤50が天板40の微細な凸凹の間を濡れ広がりやすい。したがって、接着剤50の塗布方法として特殊な方法を採用せずとも、接着剤50を天板40の表面上の広い範囲に塗布できる。
【0067】
(12)上記実施形態によれば、天板40の表面の展開面積比Sdrは、第1鍔部12及び第2鍔部13の表面の展開面積比Sdrよりも大きい。そのため、接着剤50は、第1鍔部12及び第2鍔部13の表面よりも、天板40の表面を濡れ広がりやすい。その結果、天板40の表面上に接着剤50が濡れ広がる範囲を、第1鍔部12及び第2鍔部13の表面上に接着剤50が濡れ広がる範囲よりも大きくしやすい。
【0068】
<その他の実施形態>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施することができる。また、コイル部品10の第1軸Xに沿う方向の中央よりも第1正方向X1側についての変更例は、コイル部品の第1軸Xに沿う方向の中央よりも第1負方向X2側についても同様に適用できる。
【0069】
・上記実施形態において、巻芯部11の形状は、上記実施形態の例に限られない。例えば、円柱状でもよいし、四角柱状以外の多角柱状でもよい。
・上記実施形態において、複数のワイヤ30が巻芯部11に巻き回されていてもよい。なお、ワイヤ30の本数にあわせて、端子電極の数は、適宜調整されればよい。なお、複数のワイヤ30が存在する場合、少なくとも1つのワイヤ30における第1部分30Aが、第1接続箇所CP1を有していればよい。
【0070】
・上記実施形態において、ワイヤ径WDは、コア寸法CDに対して5%未満であってもよいし、20%より大きくてもよい。コア寸法CD及びワイヤ径WDは、必要な特性等に併せて、適宜調整されればよい。
【0071】
・上記実施形態において、ワイヤ30の中央部分30Cは、巻芯部11の周面11F上と常に接触して螺旋状に延びているが、部分的に周面11Fから離れて螺旋状に延びていることもある。例えば、ワイヤ30が、中心軸線CAに沿う方向から巻芯部11を視たときの4つのコーナ近傍にのみ接触していてもよい。このように、ワイヤ30が断続的に周面11Fに接触している場合であっても、ワイヤ30は、周面11F上を延びているといえる。
【0072】
・上記実施形態において、第1角C1の大きさは、180度未満であってもよい。すなわち、第1非接触範囲SR1が180度未満であってもよい。少なくとも、第1接続箇所CP1が、第1非接触範囲SR1に含まれていればよい。さらに、第1非接触範囲SR1の一部が、第1ワイヤ範囲WA1に含まれていればよく、第1非接触範囲SR1の一部が、第1ワイヤ範囲WA1外に存在していてもよい。この点、第2角C2及び第2非接触範囲SR2についても同様である。
【0073】
・上記実施形態において、ワイヤ30の第1部分30Aは、周面11Fのうち、第3正方向Z1を向く面に対してのみ、離れていてもよい。つまり、第1部分30Aは、周面11Fのうち第3負方向Z2を向く面に対して接触していてもよい。
【0074】
・上記実施形態において、少なくとも第1接続箇所CP1が天板40と接続しており、且つ、周面11Fから離れていれば、第2接続箇所CP2は省いてもよい。この場合でも、第1接続箇所CP1においては、寄生容量を低減できる。
【0075】
・上記実施形態において、天板40の形状は、上記実施形態の例に限らない。少なくとも、第1鍔部12と第2鍔部13とを架け渡していればよく、例えば、天板40の第3負方向Z2の面に、突起部が設けられていてもよい。
【0076】
・上記実施形態において、第1存在範囲A1は、巻芯部11と向かい合う部分に存在していなくてもよい。例えば、第1範囲A11は、第1鍔部12と向かい合う部分にのみ存在しており、第2範囲A21が、第1鍔部12の第3正方向Z1を向く面のうちの一部にのみ存在していてもよい。
【0077】
・上記実施形態においては、第1範囲A11と第3範囲A12とは離れているが、両者が接触しており、1つの第1存在範囲A1となっていてもよい。また、3つ以上に分かれて存在する範囲によって、第1存在範囲A1が構成されていてもよい。
【0078】
・上記実施形態において、接着剤50は、すべて膜厚部で構成されていてもよい。例えば、天板40の第3負方向Z2を向く面のすべてに、相応の量の接着剤50を塗布することで、すべて膜厚部としてもよい。
【0079】
・上記実施形態において、天板40の展開面積比Sdrや、コア10Cの展開面積比Sdrは、上記実施形態の例に限られない。天板40の展開面積比Sdrが0.15未満であってもよいし0.50より大きくてもよい。また、天板40の展開面積比Sdrが、コア10Cの展開面積比Sdr以下であってもよい。この場合、天板40の第3負方向Z2を向く面において、接着剤50を広く濡れ広げるために、天板40に先に接着剤50を塗布すればよい。また、天板40に接着剤50を乗せた後に、治具を用いて接着剤50を塗り広げたり、スピンコート処理等で接着剤50を塗り広げたりしてもよい。
【0080】
・上記実施形態において、第1存在範囲A1の大きさは、第2存在範囲A2の大きさの1.1倍未満であってもよい。塗布工程において、接着剤50の塗布範囲にばらつきが生じにくいのであれば、第1存在範囲A1の大きさが第2存在範囲A2の大きさの1.1倍未満であっても、第1存在範囲A1の大きさが第2存在範囲A2の大きさよりも大きくなる可能性は高い。
【0081】
・上記実施形態において、接着剤50は、熱硬化性の接着剤50としたが、接着剤50の種類は、適宜変更されればよい。接着剤50は、樹脂だけで構成されていてもよいし、樹脂にシリカフェラーのような無機フィラーが添加されていてもよい。なお、接着剤50に無機フィラーを含む場合、無機フィラーは、膜厚部にのみ存在しやすい。
【0082】
・上記実施形態において、第1存在範囲A1の大きさは、第2存在範囲A2の大きさ以下であってもよい。この場合、第1接続箇所CP1は、コア10Cと天板40とを接続する接着剤50とは別の接着剤を介して天板40に接続されていてもよい。
【0083】
・上記実施形態において、接着剤50を省いて、コア10Cと天板40とが一体化されていてもよい。この場合、
図10に示す変更例のコイル部品110のように、第1接触箇所CP11は、他の部材を介さず直接天板40に接触していてもよい。例えば、天板40をコア10Cに接続する前の状態において、第1鍔部12の第3正方向Z1の端から視て、ワイヤ30の第1部分30Aが第3正方向Z1側にはみ出るように、ワイヤ30を巻き回す。この状態で、天板40で第1部分30Aを押さえつけるように、天板40をコア10Cに接続する。すると、第1部分30Aは、自らの弾性力により天板40に押し付けられる。その結果、第1部分30Aは天板40に対して直接接続された第1接触箇所CP11を有することになる。そのため、コイル部品110は、第1接続箇所CP1を有していない一方で、第1接触箇所CP11を有している。そして、第1接触箇所CP11において、ワイヤ30は巻芯部11の周面11Fから離隔している。同様に、コイル部品10は、第2接続箇所CP2を有していない一方で、第2接触箇所CP12を有している。そして、第2接触箇所CP12において、ワイヤ30は巻芯部11の周面11Fから離隔している。
【0084】
この構成によれば、第1接触箇所CP11において、ワイヤ30は巻芯部11の周面11Fから離隔している。そのため、コイル部品10において、第1部分30Aのターンと、中央部分30Cのターンとは、接触していない。このように第1部分30Aのターンと中央部分30Cのターンとの間にスペースが生じていることにより、ターン同士が近づいて接触する場合と比べて、発生する寄生容量を低減させることができる。そして、ワイヤ30において発生する寄生容量を低減することは、コイル部品10の高周波帯におけるインピーダンスの低下を抑制することに繋がる。
【0085】
・上記実施形態において、ワイヤ30の第1部分30Aが第1接続箇所CP1を有していなくてもよい。さらに、第1部分30Aが第1接続箇所CP1を有していない場合、
図11に示すコイル部品210のように、天板40を省略することもできる。これらの変更例の場合、中心軸線CAに沿う方向から視たときに、第1非接触範囲SR1は、中心軸線CAよりも第3正方向Z1側のすべての範囲に亘って存在していればよい。
【符号の説明】
【0086】
10…コイル部品
10C…コア
11…巻芯部
11F…周面
12…第1鍔部
13…第2鍔部
21…第1端子電極
22…第2端子電極
30…ワイヤ
30A…第1部分
30B…第2部分
30C…中央部分
40…天板
50…接着剤
CA…中心軸線
CP1…第1接続箇所
CP11…第1接触箇所
CP12…第2接触箇所
CP2…第2接続箇所
WA1…第1ワイヤ範囲
WA2…第2ワイヤ範囲