(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20240116BHJP
B65B 25/14 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
A47K10/16 D
A47K10/16 A
B65B25/14 B
(21)【出願番号】P 2021100908
(22)【出願日】2021-06-17
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 遥絵
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】実開平2-120308(JP,U)
【文献】特開昭50-155702(JP,A)
【文献】特開平2-296620(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0073720(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
B65B 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅広衛生薄葉紙を所定長だけ巻き取って幅広衛生薄葉紙ロールを形成するロール形成ステップを含む巻取工程と、前記幅広衛生薄葉紙ロールを製品幅に切断する切断ステップを含む切断工程と、を含む個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法であって、
前記巻取工程は、前記幅広衛生薄葉紙ロールにおける前記幅広衛生薄葉紙の巻き取り終端部に幅広包装紙の巻き取り始端部を接着し、前記幅広衛生薄葉紙の巻き取り動作によって、前記幅広衛生薄葉紙ロールの全周をその全幅に亘って前記幅広包装紙で筒状に包装するとともに前記幅広包装紙の巻き取り終端部を前記筒状の前記幅広包装紙の外周面に接着して、幅広衛生薄葉紙ロール包装体を形成する包装ステップをさらに含み、
前記切断ステップは、前記幅広衛生薄葉紙ロール包装体を前記製品幅に切断する動作によって実施されることを特徴とする個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法。
【請求項2】
前記巻取工程と前記切断工程との間に、前記幅広衛生薄葉紙ロール包装体をアキュームレータに蓄積する蓄積工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法。
【請求項3】
前記包装ステップにおいて、前記幅広包装紙の巻き取り始端部を、前記幅広衛生薄葉紙の巻き取り終端部の半径方向内側となる面に接着することを特徴とする請求項1または2に記載の個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法。
【請求項4】
前記包装ステップにおいて、前記幅広包装紙の巻き取り始端部を、前記幅広衛生薄葉紙の巻き取り終端部の半径方向外側となる面に接着することを特徴とする請求項1または2に記載の個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法。
【請求項5】
前記幅広衛生薄葉紙として幅広水解性トイレットペーパーが用いられ、前記幅広包装紙として幅広水解性包装紙が用いられ、ならびに前記幅広衛生薄葉紙の巻き取り終端部への前記幅広包装紙の巻き取り始端部の接着、および前記幅広包装紙の巻き取り終端部の前記幅広包装紙の前記筒状の外周面への接着に、水溶性接着剤が用いられて、個包装された水解性トイレットロールが製造されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生薄葉紙ロールが包装紙で個別に包装された個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生薄葉紙ロールが包装紙で1つ1つ個別に包装された個包装衛生薄葉紙ロールは、広く用いられている。個包装衛生薄葉紙ロールの例には、ロール状のトイレットペーパーが包装紙で個別に包装された個包装トイレットロールなどがあり、個包装トイレットロールは例えば業務用のトイレットロールとして用いられている。
【0003】
この種の個包装衛生薄葉紙ロールを製造するにあたっては、衛生薄葉紙ロールの製品幅の数倍から数十倍の幅寸法を有する幅広衛生薄葉紙を幅広の紙管に所定長だけ巻き取って幅広衛生薄葉紙ロールを形成し、当該幅広衛生薄葉紙ロールを切断して製品幅の衛生薄葉紙ロールを形成し、次いで、形成された製品幅の衛生薄葉紙ロールを包装紙で個別に包装する個包装を行っている。
【0004】
例えば特許文献1は、個包装トイレットロールの製造方法を開示している。特許文献1では、トイレットロールの個包装に際して、トイレットロールの幅寸法よりも幅広の包装紙をトイレットロールの外周に筒状に巻き回し、次いで、トイレットロールの軸方向両側に出ている包装紙の耳部分をトイレットロールに対して絞り込んで紙管内に押し込み、トイレットロールが筒状の包装紙内から不用意に抜けないようにしている。
図4は、そのようにして製造された従来の個包装トイレットロールの概略的な部分破断斜視図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の個包装衛生トイレットロールの製造方法にあっては、トイレットロールの幅寸法よりも幅広の包装紙が必要となり、包装紙の使用量が多くなってコスト高となる。また、そればかりでなく、トイレットロールに対してその軸方向両側に出ている包装紙の耳部分を絞り込んで紙管内に押し込む必要があり、そのための加工設備が複雑で高価であるという問題がある。
【0007】
本発明は、包装紙の使用量を可及的に削減でき、しかも複雑で高価な加工設備を必要とせず、個包装衛生薄葉紙ロールを簡単かつ低コストに製造することができる個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者は、幅広衛生薄葉紙を所定長だけ巻き取って幅広衛生薄葉紙ロールを形成するロール形成ステップを含む巻取工程と、幅広衛生薄葉紙ロールを製品幅に切断する切断ステップを含む切断工程と、を含む個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法であって、巻取工程は、幅広衛生薄葉紙ロールにおける幅広衛生薄葉紙の巻き取り終端部に幅広包装紙の巻き取り始端部を接着し、幅広衛生薄葉紙の巻き取り動作によって、幅広衛生薄葉紙ロールの全周をその全幅に亘って幅広包装紙で筒状に包装するとともに幅広包装紙の巻き取り終端部を筒状の幅広包装紙の外周面に接着して、幅広衛生薄葉紙ロール包装体を形成する包装ステップをさらに含み、切断ステップは、幅広衛生薄葉紙ロール包装体を製品幅に切断する動作によって実施される個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法とすることにより、包装紙の使用量を可及的に削減でき、しかも複雑で高価な加工設備を必要とせず、個包装衛生薄葉紙ロールを簡単かつ低コストに製造することができる個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法が得られることを見出した。
【0009】
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 幅広衛生薄葉紙を所定長だけ巻き取って幅広衛生薄葉紙ロールを形成するロール形成ステップを含む巻取工程と、幅広衛生薄葉紙ロールを製品幅に切断する切断ステップを含む切断工程と、を含む個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法であって、
巻取工程は、幅広衛生薄葉紙ロールにおける幅広衛生薄葉紙の巻き取り終端部に幅広包装紙の巻き取り始端部を接着し、幅広衛生薄葉紙の巻き取り動作によって、幅広衛生薄葉紙ロールの全周をその全幅に亘って幅広包装紙で筒状に包装するとともに幅広包装紙の巻き取り終端部を筒状の幅広包装紙の外周面に接着して、幅広衛生薄葉紙ロール包装体を形成する包装ステップをさらに含み、
切断ステップは、幅広衛生薄葉紙ロール包装体を製品幅に切断する動作によって実施されることを特徴とする個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法。
[2] 巻取工程と切断工程との間に、幅広衛生薄葉紙ロール包装体をアキュームレータに蓄積する蓄積工程をさらに含むことを特徴とする[1]に記載の個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法。
[3] 包装ステップにおいて、幅広包装紙の巻き取り始端部を、幅広衛生薄葉紙の巻き取り終端部の半径方向内側となる面に接着することを特徴とする[1]または[2]に記載の個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法。
[4] 包装ステップにおいて、幅広包装紙の巻き取り始端部を、幅広衛生薄葉紙の巻き取り終端部の半径方向外側となる面に接着することを特徴とする[1]または[2]に記載の個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法。
[5] 幅広衛生薄葉紙として幅広水解性トイレットペーパーが用いられ、幅広包装紙として幅広水解性包装紙が用いられ、ならびに幅広衛生薄葉紙の巻き取り終端部への幅広包装紙の巻き取り始端部の接着、および幅広包装紙の巻き取り終端部の幅広包装紙の筒状の外周面への接着に、水溶性接着剤が用いられて、個包装された水解性トイレットロールが製造されることを特徴とする[1]から[4]のいずれかに記載の個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、個包装衛生薄葉紙ロールの製造にあたり、包装紙の使用量を可及的に削減でき、しかも複雑で高価な加工設備を必要とせず、個包装衛生薄葉紙ロールを簡単かつ低コストに製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の製造方法により製造される個包装衛生薄葉紙ロールの構成を示す模式図である。
【
図2A】本発明の実施形態に適用可能な巻取装置の例を示す模式図である。
【
図2B】本発明の実施形態に係る巻取工程の第1の態様を説明するための図である。
【
図2C】本発明の実施形態に係る巻取工程の第2の態様を説明するための図である。
【
図3】本発明の実施形態を適用可能な製造設備の構成例を示す模式図である。
【
図4】従来の製造方法により製造された個包装衛生薄葉紙ロールを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法について説明する。図中、同一の符号は、同一または同様の構成を示すものとする。以下の実施形態および図面は例示の目的で記載したものであり、本発明を限定するものではない。
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法は、ロール状のトイレットペーパー、ペーパータオル、キッチンペーパー、ティシュペーパーのような衛生薄葉紙ロール製品全般を対象とする。より詳細には、本実施形態に係る製造方法は、トイレットロール、ペーパータオルロール、キッチンペーパーロール、ティシュペーパーロールのような衛生薄葉紙ロールが包装紙で1つ1つ別々に(個別に)包装された個包装衛生薄葉紙ロールの製造に適用することができる。
【0014】
(個包装衛生薄葉紙ロール)
図1は、本発明の実施形態に係る個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法により製造される個包装衛生薄葉紙ロールの構成を説明するための概略的な部分破断斜視図である。
【0015】
図1に示されるように、個包装衛生薄葉紙ロール100は、衛生薄葉紙ロール10と、当該衛生薄葉紙ロール10の外周に巻き回された包装紙20と、を含む。
【0016】
衛生薄葉紙ロール10は、衛生薄葉紙12が、円筒状の巻芯である紙管14に、所定長だけロール状に巻き回されたものである。「所定長」は、衛生薄葉紙ロールの種類や用途によって決定される。
【0017】
包装紙20は、衛生薄葉紙ロール10の全周を、製品幅に亘って筒状に包装している。また、衛生薄葉紙ロール10の2つの端面10eは、包装紙20によって覆われておらず、露出されている。なお、本明細書において、「製品幅」とは、個包装衛生薄葉紙ロール製品に含まれる衛生薄葉紙ロールの幅方向における寸法(幅寸法、CD方向の長さ)であり、衛生薄葉紙ロールの種類や用途によって決定される。
【0018】
衛生薄葉紙ロール10を形成する衛生薄葉紙12の長さ方向(MD方向)の2つの端部のうち、紙管14側の端部(すなわち、半径方向内側の端部)である衛生薄葉紙12の巻き取り始端部は、紙管14の外周に、接着剤で接着されている(不図示)。また、紙管14側の端部とは反対側の端部(すなわち、半径方向外側の端部)である衛生薄葉紙12の巻き取り終端部は、包装紙20の長さ方向(MD方向)の2つの端部のうち、紙管14側の端部(すなわち、半径方向内側の端部)である包装紙20の巻き取り始端部と、接着剤で接着されている(不図示)。
【0019】
また、
図1に示されるように、包装紙20の長さ方向(MD方向)の2つの端部のうち、紙管14側の端部とは反対側の端部(すなわち、半径方向外側の端部)である包装紙20の巻き取り終端部20eは、衛生薄葉紙ロール10の外周に筒状に巻き回されている当該包装紙20の外周面に、接着剤34で接着されている。その結果、衛生薄葉紙12の巻き取り終端部と包装紙20の巻き取り始端部との接着部の領域は、包装紙20で覆われて個包装衛生薄葉紙ロール100の外観から見えなくなっている。
【0020】
包装紙20の使用量の削減の観点から、包装紙20は、好ましくは、衛生薄葉紙ロール10の周方向において包装紙20自身が重なり合う長さができるだけ短くなるように、筒状に巻き回されている。
【0021】
(衛生薄葉紙)
本例において、衛生薄葉紙12は、1枚の原紙シートで構成されている、いわゆる単プライ品である。衛生薄葉紙12には、柔らかさ、滑らかさ、美観を付与する等の目的で、その全面に亘って、衛生薄葉紙12の両面のうちの一方の表面にエンボス凸部を、他方の表面にエンボス凸部の裏側で構成されるエンボス凹部を形成するエンボス加工が施されていてもよい。また、衛生薄葉紙12には、衛生薄葉紙12の使用時に衛生薄葉紙ロール10から引き出された衛生薄葉紙12を衛生薄葉紙ロール10本体から切り離すための衛生薄葉紙12の幅方向(CD方向)に亘って延在するミシン目が、衛生薄葉紙12の長さ方向(MD方向)において所定間隔毎に形成されていてもよい。
【0022】
なお、本発明の実施形態において、衛生薄葉紙12は、単プライ品に限定されず、複数の原紙シートが重ね合わされた積層シートの形態の、いわゆる複数プライ品であってもよい。衛生薄葉紙12が複数プライ品であるとき、それぞれの原紙シートの種類(材質、物性等)は、要求品質等に応じて同一であってもよく異なっていてもよく、必ずしも全ての原紙シートの種類が同一である必要はない。また、衛生薄葉紙12が複数プライ品であるとき、積層シートに含まれる重ね合わされた複数の原紙シートの剥離(プライ剥がれとも称される)を防止する目的で、積層シートに対して、一部、例えば、幅方向(CD方向)両側縁部にその構成シートを互いに接合するための接合エンボス加工がさらに施されていてもよい。また、衛生薄葉紙12が複数プライ品であって全面に亘ってエンボス加工が施されているとき、エンボス加工は、衛生薄葉紙12を構成する複数の原紙シートのプライに対して一体的にエンボス加工を施す、いわゆるシングルエンボスであってもよく、衛生薄葉紙12を構成する複数の原紙シートを重ね合わせる前にエンボス加工を施し次いで重ね合わせる、いわゆるダブルエンボスであってもよい。
【0023】
(原紙シート)
衛生薄葉紙12を構成する原紙シートは、繊維原料であるパルプ成分を含むスラリーを抄紙することによって得ることができる。原紙シートには、クレープ加工、カレンダー加工が施されていてもよい。
【0024】
原紙シートの抄紙には、例えば、ツインワイヤフォーマ方式、円網フォーマ方式、サクションプレストフォーマ方式、クレセントフォーマ方式等の知られている抄紙機が用いられてもよい。
【0025】
抄紙機は、クレープ加工を行うクレーピング部を備えていてもよい。クレーピング部では、原紙シートの抄造工程において、抄造される原紙シート(ウェブ)を乾燥させる間に、必要に応じて、原紙シートに対し、クレーピングドクターによってクレープと呼ばれる非常に細かい波状の皺を付与することができる。クレープにより、原紙シートに柔らかさ、嵩高さ(バルク感)、吸収性、美観(クレープの形状)、良好な手触り感などを付与することができる。
【0026】
また、抄紙機は、カレンダー部を備えていてもよい。カレンダー部では、乾燥された原紙シートに対して、必要に応じて、カレンダーロール対により上下から原紙シートを挟み込み押圧するカレンダー処理を施すことができる。これによって、原紙シートは圧縮されて、紙厚の調整および均一化、ならびに表面の平滑化などがなされる。カレンダー部は抄紙機とは別に設けられていてもよい。カレンダー処理は、複数段階に分けて行われてもよい。
【0027】
(パルプ成分)
パルプ成分としては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹パルプ(広葉樹クラフトパルプ(LKP))、針葉樹パルプ(針葉樹クラフトパルプ(NKP))、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプが挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。パルプ成分は上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。これらパルプ成分は衛生薄葉紙の品質に大きく影響するので、要求品質に合わせて所定の種類および配合割合で適宜配合される。
【0028】
(任意成分)
原紙シートには、要求品質および操業の安定のために、任意成分として様々な薬品が添加されていてもよい。任意成分としては、例えば、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、柔軟剤、嵩高剤、染料、香料、分散剤、濾水向上剤、ピッチコントロール剤、歩留向上剤等を挙げることができる。乾燥紙力剤としては、例えば、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を挙げることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミドエピクロロヒドリン、尿素、メラミン、熱架橋性ポリアクリルアミド等を挙げることができる。柔軟剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等を挙げることができる。上記の任意成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
(坪量)
原紙シートの坪量は、衛生薄葉紙ロールの種類や用途、および要求品質に合わせて、例えば、7~30g/m2とすることができる。例えば、原紙シートの坪量は、好ましくは10g/m2以上とすることができ、および好ましくは24g/m2以下とすることができる。坪量は、日本工業規格JIS P8124の規定に従って測定される。
【0030】
(紙管)
紙管14は、円筒形状を有しており、その周りに衛生薄葉紙12が巻き回されて衛生薄葉紙ロール10を成す。紙管14の素材は、その外周面に、本技術分野においてピックアップ糊として知られる任意の接着剤を塗布し、衛生薄葉紙12の始端部を接着固定し、衛生薄葉紙12を巻き回すことのできるものであればよく、紙管原紙、段ボール原紙、クラフト紙等の厚紙から形成されていることが多い。紙管14は、例えば、スパイラル状に巻き回された帯状紙によって形成されていてもよい。
【0031】
(包装紙)
包装紙20には、知られている紙素材を用いることができる。紙素材は、繊維原料であるパルプ成分から、湿式抄紙法または乾式抄紙法によって得られるものであってもよく、また、市販品であってもよい。
【0032】
包装紙20には、必要な情報を記すためおよび/または視覚的に美しい外観を付与するためなどの目的で、必要に応じて、印刷やエンボスなどが施されていてもよい。例えば、包装紙20の表面(両面または片面、特には、個包装衛生薄葉紙ロール100の外周面となる面)には、商品名等が適宜印刷されていてもよい。印刷インクは、水滴や湿気により印刷図柄が汚損されないように、また、例えば個包装衛生薄葉紙ロール100が個包装トイレットロールである場合であって包装紙20を水洗トイレなどに投棄した場合にインクが溶出して便器を汚染することを避けるために、油性インクや水性耐性インクを使用することが好ましい。
【0033】
また、包装紙20は、香料によって着香されていてもよい。着香方法は従来公知の方法を用いることができる。例えば、香料を含む溶液を包装紙20に塗布、散布(スプレー)する方法や、香料をマイクロカプセル化し香料内包マイクロカプセルとして包装紙に塗布する方法を挙げることができる。
【0034】
(個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法)
本発明の第1の実施形態に係る個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法は、製品幅の衛生薄葉紙ロールの全周が製品幅の包装紙で筒状に包装された個包装衛生薄葉紙ロールを製造する方法であって、「巻取工程」と、「切断工程」と、を含む。
【0035】
(巻取工程)
本実施形態において、「巻取工程」は、
(1)幅広衛生薄葉紙を所定長だけ巻き取って幅広衛生薄葉紙ロールを形成する「ロール形成ステップ」と、
(2)ロール形成ステップによって形成された幅広衛生薄葉紙ロールを幅広包装紙によって包装して幅広衛生薄葉紙ロール包装体を形成する「包装ステップ」と、
を含む。
【0036】
「ロール形成ステップ」では、幅広衛生薄葉紙を紙管の周りに所定長だけ巻き取って、ロール状の幅広衛生薄葉紙である幅広衛生薄葉紙ロールを形成する。
【0037】
「包装ステップ」では、幅広衛生薄葉紙ロールにおける幅広衛生薄葉紙の巻き取り終端部に幅広包装紙の巻き取り始端部を接着し、幅広衛生薄葉紙の巻き取り動作によって幅広衛生薄葉紙ロールの全周をその全幅に亘って幅広包装紙で筒状に包装するとともに、幅広包装紙の巻き取り終端部を筒状の幅広包装紙の外周面に接着して、幅広衛生薄葉紙ロールがその全周を全幅に亘って幅広包装紙で包装された、幅広衛生薄葉紙ロール包装体を形成する。
【0038】
包装ステップにおいて、幅広包装紙は幅広衛生薄葉紙に接着固定され、これにより、幅広包装紙は、個包装衛生薄葉紙ロール内において、幅広衛生薄葉紙の巻き取り動作に伴って一体的に巻き回されることとなる。
【0039】
本実施形態において、巻取工程におけるロール形成ステップの巻き取り動作と包装ステップの巻き取り動作は、同一の装置によって行われる共通の動作として行うことができ、ロール形成ステップと包装ステップは一続きに行うことができる。
【0040】
(切断工程)
本実施形態において、「切断工程」は、巻取工程によって形成された幅広衛生薄葉紙ロール包装体を製品幅に切断する動作によって、幅広衛生薄葉紙ロールを衛生薄葉紙ロールの製品幅に切断する「切断ステップ」を含む。つまり、切断ステップにより、その全周を全幅に亘って幅広包装紙で筒状に包装された幅広衛生薄葉紙ロールが、周りを取り巻いている当該幅広包装紙ごと、製品幅に切断される。その結果、製品幅の衛生薄葉紙ロールの全周がその全幅に亘って製品幅の包装紙で筒状に包装された個包装衛生薄葉紙ロールが得られる。
【0041】
なお、本明細書において、「幅広衛生薄葉紙」、「幅広衛生薄葉紙ロール」、「幅広衛生薄葉紙ロール包装体」という際の「幅広」とは、個包装衛生薄葉紙ロールの製品幅よりも長い幅寸法(CD方向の長さ)をいう。幅広衛生薄葉紙の幅寸法は、概して、製品幅の数倍から二十数倍に設定され、倍率に応じた数の製品の製造を可能にする。
【0042】
(巻取装置)
図2Aから
図2Cは、本実施形態に係る衛生薄葉紙ロールの製造方法の「巻取工程」に適用可能な「巻取装置」の例を示す概略図である。
図2Aから
図2Cを参照して、上述の巻取工程に適用可能な製造装置の構成例、および巻取工程における各ステップについて説明する。
【0043】
(1)ロール形成ステップ
図2Aを参照して、本実施形態に係る巻取工程の「ロール形成ステップ」の例を説明する。
【0044】
本例において、シート操出機能およびシート巻取機能を有する巻取装置の原反ロールスタンドには、帯状をなす長尺の幅広衛生薄葉紙12Wが巻き取られた原反ロール50が配されている。
【0045】
原反ロール50は、原反ロールスタンドに対して回転可能に取り付けられており、シート繰出機能によって回転駆動されつつ幅広衛生薄葉紙12Wを繰り出すことができる。
【0046】
原反ロール50から繰り出された幅広衛生薄葉紙12Wは、原反ロールスタンドの下流側に配されたエンボス加工部60に搬送される。
【0047】
エンボス加工部60は、端的には、幅広衛生薄葉紙12Wに対してエンボス加工を施して、エンボスパターンを付与するユニットである。エンボスロールユニットは、エンボスパターンに対応した凹凸部が外周面に形成されたエンボスロールと、弾性変形可能な硬質合成ゴムなどの硬質なゴム状弾性体にて表面が形成されたバックアップロールとを含む。幅広衛生薄葉紙12Wは、エンボスロールとバックアップロールとの間に挿通されて、バックアップロールがエンボスロールの外周面に所定圧で押し当てられることによって、表面にエンボスパターンが付与される。エンボス加工は、概して、幅広衛生薄葉紙12Wに柔らかさや良好な手触り感等を付与するために行われる。本発明の実施形態において、エンボス加工は、任意選択的であり、必須ではない。
【0048】
エンボス加工部60によりエンボスパターンが付与された幅広衛生薄葉紙12Wは、その下流側に配されたフィード手段Fを介して、その下流側に配されたミシン目形成部70に送り込まれる。
【0049】
ミシン目形成部70は、幅広衛生薄葉紙12Wを幅方向(CD方向)に横切る切り離し用ミシン目を、幅広衛生薄葉紙12Wの長手方向(MD方向)に沿って一定間隔毎に形成するようにしている。切り離し用ミシン目の形成には、知られている任意のミシン目形成手段を用いることができる。
【0050】
本例では、ミシン目形成手段は、駆動回転される回転刃ホルダー72hであって、この回転刃ホルダーの回転軸線と平行な方向に沿って一直線状をなす刃先が不連続となった櫛歯状カッター72cが取り付けられた回転刃ホルダー72hと、この回転刃ホルダー72hと対向して固定状態に保持される固定刃ホルダー74hであって、刃先が回転刃ホルダー72hの回転軸線と平行な方向に沿って一直線状に連続する直線状カッター74cが取り付けられた固定刃ホルダー74hと、を備えている。
【0051】
ミシン目形成手段は、幅広衛生薄葉紙12Wを、幅広衛生薄葉紙12Wの通過速度に応じた周速で回転させられた回転刃ホルダー72hの櫛歯状カッター72cと固定刃ホルダー74hの直線状カッター74cとの間を通過させる。これにより幅広衛生薄葉紙12Wの幅方向に沿って櫛歯状カッター72cの刃先に対応した切り離し用ミシン目が、幅広衛生薄葉紙12Wの幅方向両側端縁に跨がって形成される。なお、本発明の実施形態において、切り離し用ミシン目の形成は、任意選択的であり、必須ではない。
【0052】
ミシン目形成部70より切り離し用ミシン目が形成された幅広衛生薄葉紙12Wは、巻取部54に送出される。
【0053】
巻取部54は、上流から送られてくる幅広衛生薄葉紙12Wの先端部(巻き取り始端部)を、軸方向に長尺の巻芯である幅広紙管14Wに接着剤を介して巻き付けて、幅広衛生薄葉紙12Wを幅広紙管14Wに所定長だけ巻き取り、その後、幅広衛生薄葉紙12Wを切断手段55により切断して、幅広紙管14Wに巻き取られた幅広衛生薄葉紙12Wの巻き取り終端部を原反ロール50本体から切り離す。これにより、幅広紙管14Wに幅広衛生薄葉紙12Wが所定長だけ巻き取られた幅広衛生薄葉紙ロール10Wが形成される。
【0054】
(2)包装ステップ
次いで、
図2Bおよび
図2Cを参照して、
図2Aに示される巻取装置の巻取部54で形成された幅広衛生薄葉紙ロール10Wを幅広包装紙20Wで包装する、本実施形態の製造方法に係る巻取工程の「包装ステップ」の例を説明する。
図2Bおよび
図2Cは、包装ステップの互いに代替的な態様を示す。
【0055】
(包装ステップの第1の態様:「内面接着方式」)
図2Bを参照して、本実施形態の製造方法に係る巻取工程の包装ステップの第1の態様を説明する。
図2Bは、
図2Aにおいて符号2Bで示される巻取装置の巻取部54の近傍を示す概略的な拡大図であり、巻取部54で形成された幅広衛生薄葉紙ロール10Wを、幅広包装紙20Wで包装するステップを示す。
図2Aにおける符号2Bで示される領域には、幅広衛生薄葉紙ロール10Wに当接して押圧力をかけつつ巻き取り動作を行うための、ニップロールNおよびベッドロールBがそれぞれ部分的に含まれているが、
図2Bでは、これらのロールの記載は省略されている。
【0056】
まず、
図2Bの(i)を参照して、幅広衛生薄葉紙ロール10Wの全周をその全幅に亘って包装することのできる寸法を有する幅広包装紙20Wを準備する。また、幅広衛生薄葉紙ロール10Wにおける幅広衛生薄葉紙12Wの巻き取り終端部12eの領域に、知られている任意の塗工装置56により、接着剤32を付与する。
【0057】
接着剤32は、幅広衛生薄葉紙12Wの巻き取り終端部12eと、幅広包装紙20Wの巻き取り始端部20sと、を接着させるためのものである。包装ステップの第1の態様において、接着剤32は、幅広衛生薄葉紙12Wの両面のうち、幅広衛生薄葉紙ロール10Wにおいて半径方向内側となる面である内面に付与される。
【0058】
接着剤32は、幅広衛生薄葉紙12Wの巻き取り終端部12eの領域の全体に一様に(例えばCD方向に延びる直線状に)付与されてもよく、または間欠的に(例えばCD方向に延びる点線状に)付与されてもよく、使用開始前の接着部の不用意な接着剥がれ等が生じない限り、それ以外の任意の形状で付与されてもよい。
【0059】
塗工装置56は、本例では、接着剤を噴霧する噴霧器であるが、これに限定されない。接着剤32は、本技術分野で知られている任意の接着剤を使用することができ、適度な接着強度を有し、乾燥性が良好で、操業性に優れたものであることが好ましい。本明細書において、適度な接着強度とは、製品の製造工程において受ける変形に対して剥がれにくく、また、製品使用時に包装紙を取り除こうとした際に剥離が容易な強度をいう。
【0060】
次いで、
図2Bの(ii)を参照して、幅広包装紙20Wの長さ方向(MD方向)の一方の端部を巻き取り始端部20sとし、幅広包装紙20Wの巻き取り始端部20sと幅広衛生薄葉紙12Wの巻き取り終端部12eとを、接着剤32を介して重ね合わせて、接着させる。
【0061】
上述のように接着剤32は幅広衛生薄葉紙12Wの内面に付与されているので、幅広包装紙20Wは、接着剤32を介して、幅広衛生薄葉紙12Wの内面側に接着される。以下、本明細書において、このような積層順となる接着方式を、「内面接着方式」ともいう。
【0062】
次いで、幅広衛生薄葉紙ロール10Wを図中矢印で示される巻取方向に回転させる巻き取り動作により、接着により幅広衛生薄葉紙12Wと一体化された幅広包装紙20Wを、幅広衛生薄葉紙ロール10Wの全周をその全幅に亘って覆うように、筒状に巻き回す。
【0063】
このとき、あらかじめ、幅広包装紙20Wの長さ方向(MD方向)の他方の端部である巻き取り終端部20eの領域に、知られている任意の塗工装置56により、接着剤34を付与しておく。そうすることで、図中矢印方向への巻き取り動作によって幅広衛生薄葉紙ロール10Wの周囲に筒状に巻き回された幅広包装紙20Wの巻き取り終端部20eは、当該幅広包装紙20Wの外周面に、接着剤34を介して接着されることとなる。これにより、
図2Bの(iii)に示されるような、幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wが得られる。
【0064】
図2Bの(ii)において、接着剤34は、幅広包装紙20Wの巻き取り終端部20eの領域の全体に一様に(例えばCD方向に延びる直線状に)付与されてもよく、または間欠的に(例えばCD方向に延びる点線状に)付与されてもよく、不用意な接着剥がれ等が生じない限り、それ以外の任意の形状で付与されてもよい。接着剤34は、本技術分野で知られている任意の接着剤を使用することができ、適度な接着強度を有し、乾燥性が良好で、操業性に優れたものであることが好ましい。接着剤34は、上述の接着剤32と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0065】
接着剤34と接着剤32とが同一の接着剤である場合、
図2Bの(ii)に示される、幅広包装紙20Wの巻き取り終端部20eの領域に接着剤34を付与するための塗工装置56と、
図2Bの(i)に示される、幅広衛生薄葉紙12Wの巻き取り終端部12eに接着剤32を付与するための塗工装置56とは、別個に設けられたものであってもよく、同一の装置を共通に用いるものであってもよい。
【0066】
幅広衛生薄葉紙12Wの巻き取り終端部12eの領域への接着剤の付与と、幅広包装紙20Wの巻き取り終端部20eの領域への接着剤の付与を、同一の塗工装置56を共通に用いて行う場合、塗工装置56を例えば
図2Bの(i)に示されるような所定の位置に配置しておき、幅広衛生薄葉紙ロール10Wを図中矢印の方向に回転させる巻き取り動作によって、塗工装置56と幅広衛生薄葉紙12Wおよび幅広包装紙20Wとの相対位置を変動させることで、幅広衛生薄葉紙12Wおよび幅広包装紙20Wの所望の位置に対して、接着剤を付与することができる。この構成の場合、製造設備の簡素化が可能となり、省スペース化およびコストの削減に寄与し得る。
【0067】
図2Bの(iii)は、上述の「内面接着方式」により形成された幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wの模式的な側面図であり、「内面接着方式」による幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wにおける幅広衛生薄葉紙12Wと幅広包装紙20Wとの積層構成を模式的に示す。図に示されるように、「内面接着方式」によれば、幅広包装紙20Wの巻き取り始端部20sは、幅広衛生薄葉紙12Wの内面に接着されるため、幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wの半径方向において、幅広包装紙20Wの下側に埋もれた形となる。
【0068】
なお、
図2Bでは、ステップおよび積層構成を明確にするために幅広衛生薄葉紙12W、幅広包装紙20Wおよび接着剤32,34が厚く描かれていることから、
図2Bの(iii)において、幅広衛生薄葉紙12Wと幅広包装紙20Wとの間に、ある程度の大きな空間が形成されているように見える。しかしながら、この図は正確な縮尺に基づいているものではなく、本来の幅広衛生薄葉紙12W、幅広包装紙20W、および接着剤32,34の厚さははるかに薄い。また、巻取装置により幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wが形成される際には、
図2Aに示される巻取部54において見られるように、幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wは、巻き取り動作においてニップロールNおよびベッドロールBにより当接され押圧力を受けつつ形成される。そのため、実際には、図に示されるような相対的に大きな空間が層間に生じることはない。
【0069】
(包装ステップの第2の態様:「外面接着方式」)
次に、
図2Cを参照して、本実施形態の製造方法に係る巻取工程の包装ステップの第2の態様を説明する。
図2Cは、
図2Aにおいて符号2Cで示される巻取装置の巻取部54の近傍を示す概略的な拡大図であり、巻取部54で形成された幅広衛生薄葉紙ロール10Wを、幅広包装紙20Wで包装するステップを示す。
図2Aにおける符号2Cで示される領域には、幅広衛生薄葉紙ロール10Wに当接して押圧力をかけつつ巻き取り動作を行うための、ニップロールNおよびベッドロールBがそれぞれ部分的に含まれているが、
図2Cでは、これらのロールの記載は省略されている。
図2Bの説明と重複する説明は省略する場合がある。
【0070】
まず、
図2Cの(i)を参照して、幅広衛生薄葉紙ロール10Wの全周をその全幅に亘って包装することのできる寸法を有する幅広包装紙20Wを準備し、幅広包装紙20Wの巻き取り始端部20sとなる領域に、知られている任意の塗工装置56により、接着剤32を付与する。接着剤32は、幅広衛生薄葉紙12Wの巻き取り終端部12eと、幅広包装紙20Wの巻き取り始端部20sと、を接着させるためのものである。
【0071】
次いで、
図2Cの(ii)を参照して、接着剤32が付与された幅広包装紙20Wの巻き取り始端部20sと、幅広衛生薄葉紙12Wの巻き取り終端部12eとを、幅広衛生薄葉紙12Wの両面のうち幅広衛生薄葉紙ロール10Wにおいて半径方向外側となる面である外面に接着剤32が接するようにして、重ね合わせて接着させる。
【0072】
また、幅広衛生薄葉紙12Wの巻き取り終端部12eにおいて、幅広衛生薄葉紙12Wの両面のうち幅広衛生薄葉紙ロール10Wにおいて半径方向内側となる面である内面に、知られている任意の塗工装置56により、接着剤33を付与する。接着剤33は、幅広衛生薄葉紙12Wの巻き取り終端部12eと、幅広衛生薄葉紙ロール10Wの外周面と、を接着させるためのものである。なお、接着剤33は、省略するようにしてもよい。
【0073】
また、幅広包装紙20Wの巻き取り終端部20eにおいて、幅広包装紙20Wの両面のうち幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wにおいて半径方向内側となる面である内面に、知られている任意の塗工装置56により、接着剤34を付与する。接着剤34は、幅広包装紙20Wの巻き取り終端部20eと、幅広包装紙20Wの外周面と、を接着させるためのものである。
【0074】
接着剤32,33,34は、本技術分野で知られている任意の接着剤を使用することができ、適度な接着強度を有し、乾燥性が良好で、操業性に優れたものであることが好ましい。接着剤32,33,34は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。同一の接着剤については、塗工装置56は別個に設けられたものであってもよく、同一の装置を共通に用いるものであってもよい。同一の装置を共通に用いる場合は、製造設備の簡素化が可能となり、省スペース化およびコストの削減に寄与し得る。
【0075】
接着剤は、付与されるべき領域の全体に一様に(例えばCD方向に延びる直線状に)付与されてもよく、または間欠的に(例えばCD方向に延びる点線状に)付与されてもよく、不用意な接着剥がれ等が生じない限り、それ以外の任意の形状で付与されてもよい。
【0076】
次いで、幅広衛生薄葉紙ロール10Wを図中矢印で示される巻取方向に回転させる巻き取り動作により、接着により幅広衛生薄葉紙12Wと一体化された幅広包装紙20Wを、幅広衛生薄葉紙ロール10Wの全周をその全幅に亘って覆うように、筒状に巻き回す。図中矢印方向への巻き取り動作によって幅広衛生薄葉紙ロール10Wの周囲に筒状に巻き回された幅広包装紙20Wの巻き取り終端部20eは、当該幅広包装紙20Wの外周面に、接着剤34を介して接着されることとなり、
図2Cの(iii)に示されるような構成の、幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wが得られる。
【0077】
上述のように、
図2Cに示す態様では、接着剤32は幅広衛生薄葉紙12Wの外面に付与されているので、幅広包装紙20Wは、接着剤32を介して、幅広衛生薄葉紙12Wの外面側に接着される。以下、本明細書において、このような積層順となる接着方式を、「外面接着方式」ともいう。
【0078】
図2Cの(iii)は、上述の「外面接着方式」により形成された幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wの模式的な側面図であり、「外面接着方式」による幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wにおける幅広衛生薄葉紙12Wと幅広包装紙20Wとの積層構成を模式的に示す。図に示されるように、「外面接着方式」によれば、幅広包装紙20Wの巻き取り始端部20sは、幅広衛生薄葉紙12Wの外面に接着されるため、幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wの半径方向において、幅広衛生薄葉紙ロール10Wは、幅広包装紙20Wで全体が包まれる形となる。
【0079】
なお、
図2Cでは、積層構成を明確にするために幅広衛生薄葉紙12W、幅広包装紙20Wおよび接着剤32,33,34が厚く描かれていることから、
図2Cの(iii)において、幅広衛生薄葉紙12Wと幅広包装紙20Wとの間に、ある程度の大きな空間が形成されているように見える。しかしながら、この図は正確な縮尺に基づいているものではなく、本来の幅広衛生薄葉紙12W、幅広包装紙20W、および接着剤32,33,34の厚さははるかに薄い。また、巻取装置により幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wが形成される際には、
図2Aに示される巻取部54において見られるように、幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wは、巻き取り動作においてニップロールNおよびベッドロールBにより当接され押圧力を受けつつ形成される。そのため、実際には、図に示されるような相対的に大きな空間が層間に生じることはない。
【0080】
(切断装置)
本実施形態に係る衛生薄葉紙ロールの製造方法の「切断工程」に適用可能な「切断装置」としては、当技術分野において知られている任意のロールカッターを用いることができる。ロールカッターとは、ロール状に巻かれたシート状のものを開反せずに輪切り(スリット)するための切断装置をいい、そのような切断装置の例には、例えば、ログソーが含まれる。
【0081】
(切断ステップ)
図2Bに示される「内面接着方式」により形成された幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wおよび
図2Cに示される「外面接着方式」により形成された幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wは、いずれも、後続の切断工程の切断ステップにおいて切断装置により製品幅に切断されて、換言すると輪切りにされて、個包装衛生薄葉紙ロール100となる。
【0082】
したがって、
図2Bの(iii)に示される「内面接着方式」により形成された幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wにおける幅広衛生薄葉紙12Wと幅広包装紙20Wとの積層構成は、「内面接着方式」により形成された個包装衛生薄葉紙ロール100における衛生薄葉紙12と包装紙20との積層構成を説明する図として適用することができる。
【0083】
同様に、
図2Cの(iii)に示される「外面接着方式」により形成された幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wにおける幅広衛生薄葉紙12Wと幅広包装紙20Wとの積層構成は、「外面接着方式」により形成された個包装衛生薄葉紙ロール100における衛生薄葉紙12と包装紙20との積層構成を説明する図として適用することができる。
【0084】
(第1の実施形態の作用効果)
従来の個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法では、衛生薄葉紙ロールの個包装に際して、衛生薄葉紙ロールの幅寸法よりも幅広の包装紙を衛生薄葉紙ロールの外周に筒状に巻き付け、次いで、衛生薄葉紙ロールの軸方向両側に出ている包装紙の耳部分を衛生薄葉紙ロールに対して絞り込んで紙管内に押し込み、衛生薄葉紙ロールが筒状の包装紙内から不用意に抜けないようにしていた(例えば、特許文献1)。
【0085】
それに対して、本発明の第1の実施形態に係る個包装衛生薄葉紙ロール100の製造方法は、幅広衛生薄葉紙12Wを所定長だけ巻き取って幅広衛生薄葉紙ロール10Wを形成するロール形成ステップを含む巻取工程と、幅広衛生薄葉紙ロール10Wを製品幅に切断する切断ステップを含む切断工程と、を含む個包装衛生薄葉紙ロール100の製造方法であって、巻取工程は、幅広衛生薄葉紙ロール10Wにおける幅広衛生薄葉紙12Wの巻き取り終端部12eに幅広包装紙20Wの巻き取り始端部20sを接着し、幅広衛生薄葉紙12Wの巻き取り動作によって、幅広衛生薄葉紙ロール10Wの全周をその全幅に亘って幅広包装紙20Wで筒状に包装するとともに幅広包装紙20Wの巻き取り終端部20eを筒状の当該幅広包装紙20Wの外周面に接着して、幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wを形成する包装ステップをさらに含み、切断ステップは、幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wを製品幅に切断する動作によって実施されることを特徴とする。
【0086】
かかる本実施形態の製造方法では、巻取工程において、幅広包装紙20Wは、幅広衛生薄葉紙ロール10Wに対して端部が接着剤で接着された状態で巻き取られる。そのため、巻取工程によって形成された幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wを後続の切断工程で切断することによって得られる製品幅の個包装衛生薄葉紙ロール100において、包装紙20は衛生薄葉紙12に接着固定されているので、筒状の包装紙20内からの衛生薄葉紙ロール10の不用意な抜けを防止することができる。
【0087】
したがって、本実施形態の製造方法によれば、従来の製造方法とは異なり、個別包装されるべき衛生薄葉紙ロールのそれぞれに対してその幅寸法よりも幅広の包装紙を用いる必要がなく、包装紙の使用量を可及的に削減することができる。また、従来のように包装紙の耳部分を絞り込んで紙管内に押し込むような複雑で高価な加工設備を必要とせず、個包装衛生薄葉紙ロールを簡単かつ低コストに製造することができる。
【0088】
(「内面接着方式」の作用効果)
本実施形態の製造方法において、巻取工程の包装ステップに、
図2Bを参照して説明した「内面接着方式」を採用した場合、製造された個包装衛生薄葉紙ロール100において、包装紙20の巻き取り始端部20sは、衛生薄葉紙12の内面に接着されている。そのため、個包装衛生薄葉紙ロール100の使用を開始する際に、包装紙20を巻き解くと、その動作によって衛生薄葉紙12の巻き取り終端部12eを、衛生薄葉紙ロール10の外周面から離れるように巻き出すことができる。これにより、衛生薄葉紙12の使用開始が容易になる。
【0089】
(「外面接着方式」の作用効果)
本実施形態の製造方法において、巻取工程の包装ステップに、
図2Cを参照して説明した「外接着方式」を採用した場合、幅広包装紙20Wの巻き取り始端部20sは、幅広衛生薄葉紙12Wの外面に接着される。外面接着方式によれば、幅広包装紙20Wの巻き取り始端部20sを幅広衛生薄葉紙12Wの内面に接着する内面接着方式よりも簡単に、幅広包装紙20Wの巻き取り始端部20sを幅広衛生薄葉紙12Wの巻き取り終端部12eに接着することができ、より簡単でより安価な加工設備で加工を行うことができる。
【0090】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。特段の記載のない限り、第1の実施形態に適用可能な構成は、本実施形態に適用可能である。
【0091】
本発明の第2の実施形態に係る製造方法は、「巻取工程」と「切断工程」との間に、幅広衛生薄葉紙ロール包装体をアキュームレータに蓄積する「蓄積工程」をさらに含むことを特徴とする。
【0092】
図3を参照して、個包装衛生薄葉紙ロールの製造設備および製造工程の例を示しつつ、本発明の第2の実施形態に係る製造方法について説明する。
【0093】
(個包装衛生薄葉紙ロールの製造設備および製造工程の例)
図3は、本実施形態に係る個包装衛生薄葉紙ロール100の製造方法に適用可能な製造設備の例を示す概略図である。
図3に例示される製造設備は、ワインダ部A、アキュームレータ部B、切断部C、パッケージング部D、および箱詰め部Eを含み、各部では、それぞれ、[1]巻取工程、[2]蓄積工程、[3]切断工程、[4]パッケージング工程、および[5]箱詰め工程が行われる。各工程について、以下に説明する。
【0094】
[1]巻取工程(ワインダ部A):
図3を参照して、ワインダ部Aは、ワインダ54を備える。ワインダ54は、第1の実施形態の説明に用いた
図2Aに示される巻取装置とロール配置が異なるが、ワインダ部Aでは、第1の実施形態について説明したのと同様の、ロール形成ステップと包装ステップとを含む巻取工程が行われる。したがって、第1の実施形態の説明を適用することができるため、ここでは巻取工程の各ステップについての詳細な説明は省略する。
【0095】
ワインダ部Aによる巻取工程によって、幅広衛生薄葉紙ロール10Wの全周がその全幅に亘って幅広包装紙20Wで筒状に包装されるとともに、幅広包装紙20Wの巻き取り終端部20eが筒状の当該幅広包装紙20Wの外周面に接着された、幅広衛生薄葉紙ロール包装体(以下、ログとも称する)100Wが得られる。かかる幅広衛生薄葉紙ロール包装体(ログ)100Wにおいて、幅広包装紙20Wの巻き取り始端部20sと、幅広衛生薄葉紙12Wの巻き取り終端部12eとは、接着剤で接着されている。
【0096】
[2]蓄積工程(アキュームレータ部B):
図3を参照して、ワインダ部Aの後段には、アキュームレータ58を備えるアキュームレータ部Bが配置されている。
【0097】
(アキュームレータ)
アキュームレータとは、一般に、連続運転するラインにおいて、巻出し/巻取りロール交換時にラインを停止させることのないように長尺材を蓄積させる機構をいう。
【0098】
本実施形態では、アキュームレータ部Bのアキュームレータ58は、巻取装置(ワインダ)54と併用され、ワインダ54から取り出された幅広衛生薄葉紙ロール包装体(ログ)100Wを、後段の工程(切断部Cにおいて製品幅の個包装衛生薄葉紙ロール100に切断する切断工程)に送る前に、一時的に蓄積させておくために用いられる。これにより、ワインダ54における紙継等の作業時間を稼ぐことができ、巻取工程と切断工程との間における連続運転ラインの停止を防止して、製造設備内における各工程の安定運転を図ることができる。
【0099】
上記工程の安定化運転を実現するためにアキュームレータ部Bに蓄積されるべきログ100Wの本数や蓄積時間は、設備速度、巻取工程における紙継作業時間等により決定することができる。
【0100】
ここで、本実施形態では、ワインダ部Aでの巻取工程において、幅広衛生薄葉紙12Wの巻き取り終端部12eと幅広包装紙20Wの巻き取り始端部20sとの接着、幅広包装紙20Wの巻き取り終端部20eと外周面との接着などに、接着剤が使用される。これらの接着剤が十分に乾燥していないと、後段の切断工程において、幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wを製品幅に切断する時に用いられるカッターの刃などによって幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wが変形を受けた際に、接着部の接着が剥がれてしまうことがある。
【0101】
かかる不具合を防止するために、アキュームレータ部Bにおけるログ100Wの蓄積時間は、巻取工程において使用される接着剤の種類、塗布量、衛生薄葉紙ロールの材質等を勘案して、接着剤が確実に固化される時間と同等またはそれ以上に設定されてもよい。
【0102】
[3]切断工程(切断部C):
アキュームレータ部Bにおいてアキュームレータ58に蓄積されたログ100Wは、切断部Cに順次送り出される。
図3の例では、アキュームレータ部Bから切断部Cに対して2本のログ100Wが並走するように順次送り出され、切断部Cにおいて、ログソー62のような切断手段によって製品幅の幅寸法にカットされて、個包装トイレットロール100が形成される。なお、送り出されるログの数は2本に限定されるものではなく、例えば4本を並走させる場合もある。
【0103】
[4]パッケージング工程(パッケージング部D):
切断部Cにおいて製品幅の幅寸法に切断された個包装トイレットロール100は、次いで、パッケージング部Dに送り込まれる。パッケージング部Dに送り込まれた個包装トイレットロール100は、所定の数のロールを一組としてパッケージング袋40に挿入され、開口部が封着されて、パッケージング42とされる。本例では、1つのパッケージング袋40に、8個(4個×2段)の個包装トイレットロール100が封入されている。パッケージング袋40は、例えば、可撓性フィルム製であってもよい。
【0104】
なお、本発明の実施形態において、パッケージング工程は、必須の工程ではない。パッケージング工程が不要な場合は、パッケージング工程は省略され、切断工程によって形成された個包装トイレットロール100は、切断部Cから直接的に箱詰め部Eに送られて、箱詰め工程が行われる。この場合、製造設備はパッケージング部Dを備えていなくてもよい。
【0105】
[5]箱詰め工程(箱詰め部E):
パッケージング42は、複数個を1組として、段ボール箱44に箱詰めされ、箱詰め体46として、出荷される。
【0106】
(第2の実施形態の作用効果)
本実施形態に係る製造方法は、巻取工程と切断工程との間に、幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wをアキュームレータ58に蓄積する蓄積工程を含む。
【0107】
かかる構成によれば、アキュームレータ部Bの前後段の工程において、ワインダ54における紙継のような時間がかかる工程のための作業時間を稼ぐことができ、巻取工程と切断工程との間における連続運転ラインの停止を防止して、製造設備内における各工程の安定運転を図ることができる。
【0108】
また、かかる構成によれば、巻取工程において使用される接着剤の種類、塗布量、幅広衛生薄葉紙12Wや幅広包装紙の材質等を考慮に入れた蓄積時間を設定することで、蓄積工程において幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wがアキュームレータに蓄積されている間に、巻取工程において幅広衛生薄葉紙12Wの巻き取り終端部12eに幅広包装紙20Wの巻き取り始端部20sを接着するために用いられた接着剤32、および幅広包装紙20Wの巻き取り終端部20eを筒状の幅広包装紙20Wの外周面に接着するために用いられた接着剤34のような接着剤を、確実に固化させることができる。
【0109】
切断工程において幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wを製品幅に切断する時に、切断に用いるカッターの刃などにより幅広衛生薄葉紙ロール包装体100Wに対してそのロール形状を変形させるような力(例えば径方向の力)が加えられることがある。そのような場合であっても、本実施形態では、接着に用いられた接着剤を確実に固化させることができるので、衛生薄葉紙と包装紙との接着、および包装紙の端部と包装紙の外周面との接着部分の接着ははがれにくく、包装紙20が衛生薄葉紙ロール10から不用意に剥離することを防止することができる。
【0110】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。特段の記載のない限り、上述の実施形態に適用可能な構成は、本実施形態に適用可能である。
【0111】
第3の実施形態に係る個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法は、個包装トイレットロールの製造を対象とし、特には、水解性トイレットペーパーがロール状に巻かれてなる水解性トイレットロールが水解性包装紙で個別に包装された個包装水解性トイレットロールの製造を対象とする。
【0112】
本実施形態では、幅広衛生薄葉紙12Wとして幅広水解性トイレットペーパーが用いられ、幅広包装紙20Wとして幅広水解性包装紙が用いられ、ならびに幅広衛生薄葉紙の巻き取り終端部への幅広包装紙の巻き取り始端部の接着、および幅広包装紙の巻き取り終端部の幅広包装紙の筒状の外周面への接着には、水溶性接着剤が用いられて、個包装水解性トイレットロール100が製造される。
【0113】
(水解性トイレットペーパー)
本実施形態に係るトイレットペーパー12は、日本工業規格JIS P 4501で規定されるほぐれやすさの試験方法における結果が100秒以下の水解性を有する「水解性トイレットペーパー」である。トイレットペーパー12の水解性が100秒以下であると、水洗トイレ等に廃棄されたときに、トイレットペーパー12は短時間に水中でほぐれて、トイレットペーパー12が排水管に詰まることが防止される。トイレットペーパー12の水解性が100秒を超えると、トイレットペーパー12が水中でほぐれるのに時間がかかり、水洗トイレ等に廃棄されたときにトイレットペーパー12が排水管に詰まるおそれがある。
【0114】
上記水解性は、トイレットペーパー12の抄造に用いられる原料スラリーの叩解度の調整、湿潤紙力剤の不使用など既知の方法により達成することが可能である。
【0115】
(水解性包装紙)
本実施形態に係る包装紙20は、日本工業規格JIS P 4501で規定されるほぐれやすさの試験方法における結果が100秒以下の水解性を有する「水解性包装紙」である。包装紙20の水解性が100秒以下であると、水洗トイレ等に廃棄されたときに、包装紙20は、短時間に水中でほぐれて、包装紙が排水管に詰まることが防止される。包装紙20の水解性が100秒を超えると、包装紙20が水中でほぐれるのに時間がかかり、水洗トイレ等に廃棄されたときに包装紙20が排水管に詰まるおそれがある。
【0116】
水解性包装紙20に使用される紙素材の製造方法としては、従来公知の方法を用いればよいが、一般的には通常行われている湿式抄紙法や乾式抄紙法が採られる。また、本発明において、当該包装紙に使用される紙素材は、市販されている水分散性紙を適宜用いることができる。
【0117】
上記水解性は、水解性包装紙20が湿式抄紙法により抄造された場合は、抄造に用いられる原料スラリーの叩解度の調整、湿潤紙力剤の不使用など既知の方法により達成することが可能である。
【0118】
また、水解性包装紙20には、水分散性繊維で製造された素材を使用することが出来る。水分散性繊維としては、水中において繊維がそれぞれ独立した形態を保ったままバラバラに分散するものであればよく、好ましくは、水中でバクテリアにより分解される水分散性繊維を使用することが好ましい。
【0119】
(水分散繊維)
水分散繊維の例には、レーヨン、アセテートなどの再生化学繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなどの合成繊維やそれらを組みあわせた合成複合繊維、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプ、マニラ麻、リンダーパルプ、竹パルプなどの天然繊維などを挙げることができる。
【0120】
また、上記水分散性繊維に加えて、水溶性高分子を併用してもよい。水溶性高分子としては、ガラクトマンナン類(カシアガム、ローカストビーンガム、タラガム、グァーガム等)、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、アラビアガム、ガティガム、カラヤガム、トラガントガム、グルコマンナン、ペクチン、カラギナン、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、マクロホモプシスガム、カードラン、デキストラン、プルラン、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等のセルロース誘導体、微小繊維状セルロース、発酵セルロース、水溶性ヘミセルロース、大豆多糖類、ゼラチンなどから選ばれる1種または2種以上を挙げることができる。
【0121】
(水溶性接着剤)
図2Bおよび
図2Cを参照して、本実施形態では、幅広トイレットペーパー12Wの巻き取り終端部12eへの幅広包装紙20Wの巻き取り始端部20sの接着、および幅広包装紙20Wの筒状の外周面への幅広包装紙20Wの巻き取り終端部20eの接着に、水に溶解する性質を有する接着剤である「水溶性接着剤」が用いられる。水溶性接着剤には、本技術分野で知られている任意の水溶性接着剤を用いることができる。水溶性接着剤は、好ましくは、セルロール誘導体接着剤である。水溶性接着剤は、例えば噴霧器のような、知られている任意の塗工装置56により塗布することができる。
【0122】
塗布された水溶性接着剤の接着力、ならびに水洗トイレ等に廃棄されたときの、水溶性接着剤の水溶性、水解性トイレットペーパー12および水解性包装紙20の水溶性接着剤が付与された部分の水解性を確保すべく、水溶性接着剤の塗布量は、例えば、0.1g/m2~5.0g/m2程度とするのが望ましい。この付与量の範囲であると、水溶性接着剤の接着性が十分に発揮されるとともに、水洗トイレ等に廃棄された際の各構成要素の水解性が確保される。
【0123】
(第3の実施形態の作用効果)
個包装トイレットロール100は、包装紙20を剥がして取り除いてトイレットロール10をむき出しにすることによって、トイレットロール10を構成するトイレットペーパー12の使用が開始される。本実施形態では、個包装トイレットロール100において、包装紙20およびトイレットペーパー12は、いずれも、日本工業規格JIS P 4501で規定されるほぐれやすさの試験方法における結果が100秒以下の水解性100秒以下である水解性を有する。また、包装紙20の端部とその外周面との接着、包装紙20とトイレットペーパー12との接着には、水溶性接着剤が用いられている。
【0124】
かかる本実施形態の構成によれば、トイレットロール10から引き出されるトイレットペーパー12だけでなく、使用開始にあたって個包装トイレットロール100から取り除いた包装紙20を、排水管への詰まりを心配することなく、水洗トイレ等に流すことができる。
【0125】
なお、本実施形態において、さらに、紙管14の素材を、日本工業規格JIS P 4501で規定される、ほぐれやすさの試験方法における結果が100秒以下である水解性を有するものとし、トイレットペーパー12と紙管14とを接着させるために用いられる接着剤を水溶性接着剤としてもよい。かかる構成によれば、さらに、トイレットペーパー12を使い切った後に残った紙管14を、排水管への詰まりを心配することなく、水洗トイレ等に流すことができる。
【0126】
(その他)
本発明の実施形態に係る個包装衛生薄葉紙ロールの製造方法は、包装紙20に対して印刷を施す工程、エンボスを施す工程、香料を付与する工程のうちの1つまたは複数をさらに含んでいてもよい。
【0127】
本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【符号の説明】
【0128】
B ベッドロール
F フィード手段
N ニップロール
W ワインディングロール
10 衛生薄葉紙ロール
10e 端面
12 衛生薄葉紙
14 紙管
20 包装紙
32,33,34 接着剤
40 パッケージング袋
42 パッケージング
44 段ボール箱
46 箱詰め体
50 原反ロール
55 切断手段
56 塗工装置
58 アキュームレータ
60 エンボス加工部
62 ログソー
70 ミシン目形成部
100 個包装衛生薄葉紙ロール