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特許7420145リスク予測装置、リスク予測方法、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】リスク予測装置、リスク予測方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20240116BHJP
   G16H 50/30 20180101ALI20240116BHJP
【FI】
G16H10/00
G16H50/30
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021554034
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2019043104
(87)【国際公開番号】W WO2021084747
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】林谷 昌洋
(72)【発明者】
【氏名】久保 雅洋
【審査官】森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-176473(JP,A)
【文献】特開2005-278708(JP,A)
【文献】特開2005-202547(JP,A)
【文献】特開2018-067266(JP,A)
【文献】特開2016-168188(JP,A)
【文献】国際公開第2015/050174(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象患者から、症状が悪化するリスクの推移を示すリスク推移データを取得する取得手段と、
過去の複数の患者の前記リスク推移データを蓄積する蓄積手段と、
前記取得手段で取得された前記対象患者の前記リスク推移データと、前記蓄積手段に蓄積された過去の前記リスク推移データとに基づいて、前記対象患者の入院予定期間に応じた期間の前記リスクの変化を予測する予測手段と、
前記予測手段で予測された前記リスクの変化に基づいて、前記対象患者に対して症状の悪化を予防するためのケアを行うべきか否かを判定する判定手段と
を備え
前記判定手段は、前記予測手段で予測された前記対象患者の入院予定期間に応じた期間の前記リスクの上昇値又は上昇割合が所定の閾値を越えた場合に、前記症状の悪化を予防するためのケアを行うべきと判定する
ことを特徴とするリスク予測装置。
【請求項2】
前記予測手段は、前記蓄積手段に蓄積された複数の前記リスク推移データの中から、前記取得手段で取得された前記リスク推移データに類似した前記リスク推移データを抽出し、前記取得手段で取得された前記リスク推移データと、前記抽出した前記リスク推移データとに基づいて、前記対象患者の入院予定期間に応じた期間の前記リスクの変化を予測することを特徴とする請求項1に記載のリスク予測装置。
【請求項3】
前記対象患者に関する情報である対象患者データを取得する第2の取得手段を更に備え、
前記予測手段は、前記取得手段で取得された前記リスク推移データと、前記蓄積手段に蓄積された前記リスク推移データと、前記対象患者データとに基づいて、前記対象患者の入院予定期間に応じた期間の前記リスクの変化を予測することを特徴とする請求項2に記載のリスク予測装置。
【請求項4】
前記対象患者データは、前記対象患者の既往歴に関する情報を含むことを特徴とする請求項3に記載のリスク予測装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記対象患者に対して前記症状の悪化を予防するためのケアを行うべきと判定した場合に、前記症状の悪化を予防するためのケアの内容を示す情報を出力することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のリスク予測装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記対象患者に対して前記症状の悪化を予防するためのケアを行うべきと判定した場合に、前記予測手段で予測された前記対象患者の入院予定期間に応じた期間の前記リスクの上昇度合いに応じて、それぞれ異なる前記症状の悪化を予防するためのケアの内容を示す情報を出力することを特徴とする請求項に記載のリスク予測装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記対象患者に対して前記症状の悪化を予防するためのケアを行うべきと判定した場合に、前記予測手段で予測された前記対象患者の入院予定期間に応じた期間の前記リスクの上昇値又は上昇割合に応じて、それぞれ異なる種類の前記症状の悪化を予防するためのケアの内容を示す情報を出力する請求項に記載のリスク予測装置。
【請求項8】
前記判定手段は、前記対象患者に対して前記症状の悪化を予防するためのケアを行うべきと判定した場合に、前記予測手段で予測された前記対象患者の入院予定期間に応じた期間の前記リスクの上昇値又は上昇割合に応じて、それぞれ異なる数の前記症状の悪化を予防するためのケアの内容を示す情報を出力する請求項又はに記載のリスク予測装置。
【請求項9】
前記判定手段は、前記対象患者に対して前記症状の悪化を予防するためのケアを行うべきと判定した場合に、前記予測手段で予測された前記対象患者の入院予定期間に応じた期間の前記リスクの上昇値又は上昇割合に応じて、前記症状の悪化を予防するためのケアを行うべき度合いを前記症状の悪化を予防するためのケアの内容を示す情報として出力する請求項からのいずれか一項に記載のリスク予測装置。
【請求項10】
少なくとも1つのコンピュータによって、
対象患者から、症状が悪化するリスクの推移を示すリスク推移データを取得し、
過去の複数の患者の前記リスク推移データを取得し、
前記対象患者の前記リスク推移データと、前記過去の複数の患者の前記リスク推移データとに基づいて、前記対象患者の入院予定期間に応じた期間の前記リスクの変化を予測し、
予測された前記リスクの変化に基づいて、前記対象患者に対して症状の悪化を予防するためのケアを行うべきか否かを判定し
予測された前記対象患者の入院予定期間に応じた期間の前記リスクの上昇値又は上昇割合が所定の閾値を越えた場合に、前記症状の悪化を予防するためのケアを行うべきと判定する
ことを特徴とするリスク予測方法。
【請求項11】
対象患者から、症状が悪化するリスクの推移を示すリスク推移データを取得し、
過去の複数の患者の前記リスク推移データを取得し、
前記対象患者の前記リスク推移データと、前記過去の複数の患者の前記リスク推移データとに基づいて、前記対象患者の入院予定期間に応じた期間の前記リスクの変化を予測し、
予測された前記リスクの変化に基づいて、前記対象患者に対して症状の悪化を予防するためのケアを行うべきか否かを判定し
予測された前記対象患者の入院予定期間に応じた期間の前記リスクの上昇値又は上昇割合が所定の閾値を越えた場合に、前記症状の悪化を予防するためのケアを行うべきと判定する
ようにコンピュータを動作させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者のリスクを予測するリスク予測装置、リスク予測方法、及びコンピュータプログラムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、患者(例えば、病院に入院している患者等)に関するデータを利用して、将来的な患者の状態を予測するものが知られている。例えば特許文献1では、患者データに基づいて正常組織合併症の確率を予測する技術が開示されている。特許文献2では、被検体から取得された測定値に基づいて腎疾患に伴う合併症を発症する可能性を予測する技術が開示されている。特許文献3では、生成された予後モデルを用いて合併症の可能性を予測する技術が開示されている。
【0003】
その他の関連する技術として、特許文献4では、患者の病歴をデータ解析して最良の薬物療法を提案する技術が開示されている。特許文献5では、患者の生体情報と、従前の治療条件及びその治療結果と相関性から、望ましい治療条件を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2018-514021号公報
【文献】国際公開2017/130985号パンフレット
【文献】特表2009-533782号公報
【文献】特開2010-020784号公報
【文献】特開2005-267364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1から3に記載された技術では、将来的な患者の状態が、合併症の発症リスクとして予測されている。合併症の発症を抑制するためには、例えば患者に対して適切な対処(ケア)を実践することが求められる。
【0006】
しかしながら、将来的な患者の状態を予測しただけでは、その患者に対処をすべきか否か判断することは難しい。例えば、患者の状態が悪化することが予測されたとしても、すぐに対処を行った方がよいのか、現時点では対処を行わなくても問題ないのか、適切な判断を下すことは容易ではない。このように、上述した各特許文献に記載された技術には、将来的な患者の状態を予測できたとしても、患者に対する対処の要否を適切に判断できないという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、患者に対して対処を行うべきか否か適切に判定することが可能なリスク予測装置、リスク予測方法及びコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のリスク予測装置の一の態様は、対象患者から、症状が悪化するリスクの推移を示すリスク推移データを取得する取得手段と、過去の複数の患者の前記リスク推移データを蓄積する蓄積手段と、前記取得手段で取得された前記対象患者の前記リスク推移データと、前記蓄積手段に蓄積された過去の前記リスク推移データとに基づいて、前記対象患者の将来の前記リスクの変化を予測する予測手段と、前記予測手段で予測された前記リスクの変化に基づいて、前記対象患者に対し対処を行うべきか否かを判定する判定手段とを備える。
【0009】
本発明のリスク予測方法の一の態様は、対象患者から、症状が悪化するリスクの推移を示すリスク推移データを取得し、過去の複数の患者の前記リスク推移データを取得し、前記対象患者の前記リスク推移データと、前記過去の複数の患者の前記リスク推移データとに基づいて、前記対象患者の将来の前記リスクの変化を予測し、予測された前記リスクの変化に基づいて、前記対象患者に対して対処を行うべきか否かを判定する。
【0010】
本発明のコンピュータプログラムの一の態様は、対象患者から、症状が悪化するリスクの推移を示すリスク推移データを取得し、過去の複数の患者の前記リスク推移データを取得し、前記対象患者の前記リスク推移データと、前記過去の複数の患者の前記リスク推移データとに基づいて、前記対象患者の将来の前記リスクの変化を予測し、予測された前記リスクの変化に基づいて、前記対象患者に対して対処を行うべきか否かを判定するようにコンピュータを動作させる。
【発明の効果】
【0011】
上述したリスク予測装置、リスク予測方法、及びコンピュータプログラムのそれぞれの一の態様によれば、予測された患者のリスクの変化に基づいて、患者に対して対処を行うべきか否かを適切に判定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係るリスク予測装置の全体構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係るリスク予測装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係るリスク予測装置の動作の流れを示すフローチャートである。
図4】患者から取得されるリスク推移データの一例を示すグラフである。
図5】患者への対処の要否を判定する方法の一例を示す図(その1)である。
図6】患者への対処の要否を判定する方法の一例を示す図(その2)である。
図7】第2実施形態に係るリスク予測装置の全体構成を示すブロック図である。
図8】第2実施形態に係るリスク予測装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、リスク予測装置、リスク予測方法、及びコンピュータプログラムの実施形態について説明する。
【0014】
<第1実施形態>
第1実施形態に係るリスク予測装置について、図1から図6を参照して説明する。
【0015】
(装置構成)
まず、図1及び図2を参照しながら、第1実施形態に係るリスク予測装置の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係るリスク予測装置の全体構成を示すブロック図である。図2は、第1実施形態に係るリスク予測装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0016】
図1において、第1実施形態に係るリスク予測装置1は、病院に入院している患者のリスク(具体的には、患者の症状が悪化するリスク)を予測して、それに対する対処の要否を判定する装置であり、主な構成要素として、リスクデータ取得部110と、過去リスクデータ蓄積部120と、リスク変化予測部130と、リスク対処判定部140とを備えて構成されている。
【0017】
リスクデータ取得部110は、リスク対処の判定対象となる対象患者のリスクの推移を示すリスク推移データを取得することが可能に構成されている。リスク推移データは、患者の症状が悪化するリスクに関連する、患者の状態に関する指標であり、例えば一般的なバイタルサイン(血圧、脈拍、体温等)の他、FIM(Functional Independence Measure:機能的自立度評価表)、BI(Barthel Index:バーセルインデックス)、NIHSS(National Institute of Health Stroke Scale:脳卒中重症度の評価スケール)、MMT(Manual Muscle Test:徒手筋力テスト)、JCS(Japan Coma Scale:意識レベル)、及びSpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)等の指標、並びに患者の属性(例えば、性別や年齢など)等に関する情報から取得(或いは、算出)できる。なお、リスク推移データの具体的な取得方法(或いは、算出方法)については、既存の技術を適宜採用することができるため、ここでの詳細な説明は省略する。リスク推移データ取得部110で取得されたリスク推移データは、リスク変化予測部130に出力される構成となっている。
【0018】
過去リスクデータ蓄積部120は、過去に取得されたリスク推移データ(例えば、それ以前にリスクデータ取得部110で取得されたリスク推移データ、或いは他の装置で同様に取得されたリスクデータ等)を蓄積可能に構成されている。過去リスクデータ蓄積部120は、対象患者だけでなく、その他の患者のリスク推移データも蓄積している。また、過去リスクデータ蓄積部120は、ネットワーク等を用いて複数のリスク推移データを収集及び共有可能に構成されていてもよい。この場合、過去リスクデータ蓄積部120は、例えば1つの病院で収集されたリスク推移データを蓄積してもよいし、複数の病院で収集されたリスク推移データを蓄積してもよい。過去リスクデータ蓄積部120に蓄積された過去のリスク推移データは、適宜リスク変化予測部130に出力される構成となっている。
【0019】
リスク変化予測部130は、リスクデータ取得部110で取得された対象患者のリスク推移データ、及び過去リスクデータ蓄積部から読みだした過去のリスク推移データに基づいて、対象患者の将来のリスク変化を予測可能に構成されている。リスク変化の具体的な予測方法については、後に詳述する。リスク変化予測部130で予測されたリスク変化は、リスク対処判定部140に出力される構成となっている。
【0020】
リスク対処判定部140は、リスク変化予測部130で予測された対象患者のリスク変化に基づいて、対象患者に対する対処(具体的には、リスクを小さくするための対処)を行うべきか否かを判定する。リスク対処判定部140による具体的な判定方法については、後に詳述する。リスク対処判定部140は、その判定結果(即ち、対処の要否)や対処の内容を、ディスプレイ等に出力可能に構成されている。
【0021】
図2に示すように、本実施形態に係るリスク予測装置1は、CPU(Central Processing Unit)11と、RAM(Random Access Memory)12と、ROM(Read Only Memory)13と、記憶装置14とを備えている。リスク予測装置1は更に、入力装置15と、出力装置16とを備えていてもよい。CPU11と、RAM12と、ROM13と、記憶装置14と、入力装置15と、出力装置16とは、データバス17を介して接続されている。
【0022】
CPU11は、コンピュータプログラムを読み込む。例えば、CPU11は、RAM12、ROM13及び記憶装置14のうちの少なくとも一つが記憶しているコンピュータプログラムを読み込んでもよい。例えば、CPU11は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体が記憶しているコンピュータプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。CPU11は、ネットワークインタフェースを介して、リスク予測装置1の外部に配置される不図示の装置からコンピュータプログラムを取得してもよい(つまり、読み込んでもよい)。CPU11は、読み込んだコンピュータプログラムを実行することで、RAM12、記憶装置14、入力装置15及び出力装置16を制御する。本実施形態では特に、CPU11が読み込んだコンピュータプログラムを実行すると、CPU11内には、対象患者のリスクを予測し、対処を行うべきか否かを判定するための機能ブロックが実現される。上述したリスクデータ取得部110、リスク変化予測部130、及びリスク対処判定部140は、例えばこのCPU11において実現されるものである。
【0023】
RAM12は、CPU11が実行するコンピュータプログラムを一時的に記憶する。RAM12は、CPU11がコンピュータプログラムを実行している際にCPU11が一時的に使用するデータを一時的に記憶する。RAM12は、例えば、D-RAM(Dynamic RAM)であってもよい。
【0024】
ROM13は、CPU11が実行するコンピュータプログラムを記憶する。ROM13は、その他に固定的なデータを記憶していてもよい。ROM13は、例えば、P-ROM(Programmable ROM)であってもよい。
【0025】
記憶装置14は、リスク予測装置1が長期的に保存するデータを記憶する。記憶装置14は、CPU11の一時記憶装置として動作してもよい。記憶装置14は、例えば、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)及びディスクアレイ装置のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。上述した過去リスクデータ蓄積部120は、この記憶装置14によって実現されてもよい。
【0026】
入力装置15は、リスク予測装置1のユーザからの入力指示を受け取る装置である。入力装置15は、例えば、キーボード、マウス及びタッチパネルのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。より具体的には、入力装置15は、医療従事者が保有するスマートフォンやタブレット、病院に設置されたパソコン等を含んでいてもよい。
【0027】
出力装置16は、リスク予測装置1に関する情報を外部に対して出力する装置である。例えば、出力装置16は、リスク予測装置1に関する情報を表示可能な表示装置であってもよい。より具体的には、出力装置16は、医療従事者が保有するスマートフォンやタブレット、病院に設置されたパソコン等のディスプレイであってもよい。
【0028】
(動作説明)
次に、図3を参照しながら、第1実施形態に係るリスク予測装置1の動作の流れについて説明する。図3は、第1実施形態に係るリスク予測装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【0029】
図3に示すように、第1実施形態に係るリスク予測装置1の動作時には、まずリスクデータ取得部110が、対象患者のリスク推移データを取得する(ステップS101)。ここで、リスク推移データについて、図4を参照して具体的に説明する。図4は、患者から取得されるリスク推移データの一例を示すグラフである。
【0030】
図4に示すように、リスク推移データは、対象患者のリスクの時間変化を示すデータとして取得される。より具体的には、リスク推移データは、過去のあるタイミング(例えば、対象患者が入院したタイミング)から、現在までのリスクの推移を示すデータとして取得される。このため、リスクデータ取得部110は、一定期間におけるリスク推移データの値を一時的に記憶可能なものとして構成されていてもよい。なお、ここでのリスクは数値化されたパラメータ(例えば、リスクが高いほど大きくなり、リスクが低いほど小さくなるパラメータ)である。ここで取得されたリスク推移データは、リスク変化予測部130に入力される。
【0031】
図3に戻り、リスク変化予測部130は、対象患者のリスク推移データが入力されると、過去リスクデータ蓄積部120から過去のリスク推移データを抽出する(ステップS102)。具体的には、リスク変化予測部130は、過去リスクデータ蓄積部120に蓄積されている複数の患者のリスク推移データの中から、対象患者のリスク推移データに類似したリスク推移データを抽出する。なお、どの程度の範囲を類似として扱うかは、事前のシミュレーション等によって最適なパラメータを設定すればよい。類似したリスク推移データの抽出方法については、既存の技術を適宜採用することができるため、ここでの詳細な説明は省略するが、相関関数を用いた判定手法がその一例として挙げられる。
【0032】
続いて、リスク変化予測部130は、リスクデータ取得部110で取得された対象患者のリスク推移データと、過去リスクデータ蓄積部120から抽出された過去のリスク推移データとに基づいて、対象患者の将来のリスク変化を予測する(ステップS103)。即ち、対象患者のリスクが、今後どのように変化していくかを予測する。対象患者のリスクは、例えば類似する過去データと同様の変化をするものとして(例えば、過去データとの相関関係を用いて)予測される。なお、リスク変化を予測する期間は予め設定されていればよく、例えば患者の入院予定期間等に応じた期間が設定される。
【0033】
続いて、リスク対処判定部140が、予測したリスク変化に基づいて、リスクの上昇度合いが所定閾値以上であるか否かを判定する(ステップS104)。なお、ここでの「リスクの上昇度合い」とは、リスクがどれだけ上昇したかを示す指標であり、例えばリスクの上昇値又は上昇割合を用いることができる(ただし、リスクの上昇度合いとして、リスクの上昇値又は上昇割合以外のパラメータを用いてもよい)。また、「所定閾値」とは、対象患者に対してリスクを小さくする対処を行うべきか否かを判定するための閾値であり、例えば合併症の発生リスク等に応じて最適な値が設定されている。
【0034】
リスクの上昇度合いが所定閾値以上である場合(ステップS104:YES)、リスク対処判定部140は、対象患者に対処を行うべきであると判断し、対処を推奨する旨を出力する(ステップS105)。一方、リスクの上昇度合いが所定閾値以上でない場合(ステップS104:NO)、リスク対処判定部140は、対象患者に対処を行う必要はないと判断し、対処は不要である旨を出力する(ステップS106)。なお、対処を行うべきでないと判断できるような場合には、対処を推奨しない旨を出力するようにしてもよい。
【0035】
(対処要否の判定)
次に、図5及び図6を参照しながら、リスク対処判定部140による具体的な判定方法(即ち、図3のステップS104の詳細)について説明する。図5は、患者への対処の要否を判定する方法の一例を示す図(その1)である。図6は、患者への対処の要否を判定する方法の一例を示す図(その2)である。
【0036】
図5に示すように、対象患者のリスクが今後も順調に低下することが予測された場合(図中の破線参照)、リスクの上昇度合いが所定閾値を越えることはない。この場合、リスク対処判定部140は、対象患者の症状が今後も安定すると判断し、対処不要である旨を出力する。或いは、リスク対処判定部140は、対処に関する情報を出力しないようにしてもよい。
【0037】
他方、図6に示すように、対象患者のリスクが将来的に大きく上昇することが予測された場合(図中の破線参照)、リスクの上昇度合いが所定閾値を越える可能性が高いと想定される。このようにリスクの上昇度合いが所定閾値を越えた場合、リスク対処判定部140は、対象患者の症状悪化する可能性が高いと判断し、対処を推奨する旨を出力する。また、リスク対処判定部140は、リスクの変化傾向からリスク上昇の原因(例えば、合併症の発生等)を導出できる場合には、リスクを小さくするための対処内容を示す情報を出力するようにしてもよい。ここでの「対処内容を示す情報」は、どのような対処を行えばよいのかを具体的に示す情報(例えば、対処の種類や手順等を示す情報)である。
【0038】
なお、所定閾値を複数設定しておけば、リスクの上昇を段階的に判定することができる。この場合、予測されたリスク上昇の度合いに応じて、出力される情報が変更されてもよい。例えば、リスク対処判定部140は、予測されたリスク上昇の度合いが、低めに設定された第1閾値以上、且つ高めに設定された第2閾値以下である場合(言い換えれば、リスク上昇の度合いが相対的に小さい場合)には、「対処を行った方がよい」旨を出力し、予測されたリスク上昇の度合いが、高めに設定された第2閾値以上である場合(言い換えれば、リスク上昇の度合いが相対的に大きい場合)には、「必ず対処を行うべき」旨を出力するようにしてもよい。このように、対処内容を示す情報には、対処を行うべき度合いを示す情報が含まれていてもよい。
【0039】
また、対象内容を出力する場合には、リスクの上昇の度合いに応じて、推奨される対処の数や種類が変更されてもよい。例えば、(i)予測されたリスクが、低めに設定された第1閾値以上、且つ高めに設定された第2閾値以下である場合には、出力する対処の種類は少なく、効果の大きい対処や、実践が容易な対処(例えば、口腔ケアや、ベッド角度アップ等)が出力される一方で、(ii)予測されたリスクが、高めに設定された第2閾値以上である場合には、出力する対処の種類は多く、効果が相対的に小さい対処や、効果があるものの実践が必ずしも用意ではない対処(例えば、呼吸苦運連や腹圧訓練等)まで出力されるようにしてもよい。
【0040】
(技術的効果)
次に、第1実施形態に係るリスク予測装置1によって得られる技術的効果について説明する。
【0041】
図1から図6で説明したように、第1実施形態に係るリスク予測装置1によれば、対象患者のリスク推移データ、及び過去のリスク推移データから予測されたリスク変化に基づいて、対象患者に対処を行うべきか否かを判定することができる。従って、対象患者の症状悪化(特に、合併症の発生)を効率的に予防することが可能である。
【0042】
合併症の発生は、医療施設における退院遅延の大きな原因にもなっている。よって、合併症の発生を予防することで、退院遅延の発生も回避することが可能となる。この結果、病床数不足等の問題に対しても有益な効果が得られる。
【0043】
なお、合併症の発生を抑制するための対処は、すべての患者に対して行われてもよいものであるが、その場合、医療スタッフがすべての患者に対応することが要求され、業務負荷が著しく増大してしまうおそれがある。しかるに本実施形態では、予測されたリスク変化に応じて患者ごとに対処の要否が出力されるため、医療スタッフは、対処を行うべき患者に対して効率的に対処を行うことができる。よって、医療スタッフの業務負荷を軽減することができる。
【0044】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るリスク予測装置について、図7及び図8を参照して説明する。なお、第2実施形態は、上述した第1実施形態と比較して一部の構成及び動作が異なるのみであり、その他の部分は概ね同様である。このため、以下ではすでに説明した第1実施形態と異なる部分について説明し、他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0045】
(装置構成)
まず、図7を参照しながら、第2実施形態に係るリスク予測装置1の構成について説明する。図7は、第2実施形態に係るリスク予測装置の全体構成を示すブロック図である。なお、図7では、図1で示した構成要素と同様のものに同一の符号を付している。
【0046】
図7に示すように、第2実施形態に係るリスク予測装置1は、第1実施形態の構成(図1参照)に加えて、患者データ取得部150を備えている。
【0047】
患者データ取得部150は、対象患者から対象患者データを取得可能に構成されている。なお、ここでの「対象患者データ」とは、対象患者のリスク変化に影響を及ぼす可能性のあるデータであって、リスクデータ取得部110で取得されたリスク推移データとは異なるデータ(より具体的には、リスクデータとして考慮されている各種データとは異なるデータ)である。対象患者データは、例えば対象患者の既往歴に関する情報を含んでいる。患者データ取得部150で取得された対象患者データは、リスク変化予測部130に出力される構成となっている。
【0048】
(動作説明)
次に、図8を参照しながら、第2実施形態に係るリスク予測装置1の動作の流れについて説明する。図8は、第2実施形態に係るリスク予測装置の動作の流れを示すフローチャートである。なお、図8では、図3で示した処理と同様の処理に同一の符号を付している。
【0049】
図8に示すように、第2実施形態に係るリスク予測装置1の動作時には、第1実施形態と同様に、リスクデータ取得部110がリスク推移データを取得し(ステップS101)、リスク変化予測部130が、過去リスクデータ蓄積部120から対象患者のリスク推移データに類似する過去のリスクデータを抽出する(ステップS102)。
【0050】
その後、第2実施形態では、患者データ取得部150が、対象患者から対象患者データを取得する(ステップS201)。そして、リスク変化予測部130は、対象患者のリスク推移データ及び抽出された過去のリスク推移データに加え、患者データ取得部150で取得された対象患者データを考慮して、対象患者のリスク変化を予測する(ステップS202)。
【0051】
対象患者データを考慮してリスク変化を予測すると、対象患者データを考慮しない場合と比較して、より高い精度で対象患者のリスク変化を予測することが可能となる。例えば、対象患者の対象患者データが、合併症を発症した既往歴があることを示す場合、対象患者が今後合併症を発生する可能性は通常よりも高いと判断できる。よって、この場合は、合併症を発症した既往歴がない患者と比較して、対象患者の症状が悪化するリスク変化が高まるように予測される。
【0052】
続いて、リスク対処判定部140が、予測したリスク変化に基づいて、リスクの上昇度合いが所定閾値以上であるか否かを判定する(ステップS104)。リスク対処判定部140は、リスクの上昇度合いが所定閾値以上である場合(ステップS104:YES)、対処を推奨する旨を出力する(ステップS105)一方で、リスクの上昇度合いが所定閾値以上でない場合(ステップS104:NO)、対処を推奨しない旨を出力する(ステップS106)。
【0053】
(技術的効果)
次に、第2実施形態に係るリスク予測装置1によって得られる技術的効果について説明する。
【0054】
図7及び図8で説明したように、第2実施形態に係るリスク予測装置1によれば、患者データを用いることで、対象患者のリスク変化をより正確に予測できる。この結果、患者に対する対処の要否をより適切に判定することが可能となる。
【0055】
<付記>
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
【0056】
(付記1)
付記1に記載のリスク予測装置は、対象患者から、症状が悪化するリスクの推移を示すリスク推移データを取得する取得手段と、過去の複数の患者の前記リスク推移データを蓄積する蓄積手段と、前記取得手段で取得された前記対象患者の前記リスク推移データと、前記蓄積手段に蓄積された過去の前記リスク推移データとに基づいて、前記対象患者の将来の前記リスクの変化を予測する予測手段と、前記予測手段で予測された前記リスクの変化に基づいて、前記対象患者に対し対処を行うべきか否かを判定する判定手段とを備えることを特徴とするリスク予測装置である。
【0057】
(付記2)
付記2に記載のリスク予測装置は、前記予測手段は、前記蓄積手段に蓄積された複数の前記リスク推移データの中から、前記取得手段で取得された前記リスク推移データに類似した前記リスク推移データを抽出し、前記取得手段で取得された前記リスク推移データと、前記抽出した前記リスク推移データとに基づいて、前記対象患者の将来の前記リスクの変化を予測することを特徴とする付記1に記載のリスク予測装置である。
【0058】
(付記3)
付記3に記載のリスク予測装置は、前記対象患者に関する情報である対象患者データを取得する第2の取得手段を更に備え、前記予測手段は、前記取得手段で取得された前記リスク推移データと、前記蓄積手段に蓄積された前記リスク推移データと、前記対象患者データとに基づいて、前記対象患者の将来の前記リスクの変化を予測することを特徴とする付記2に記載のリスク予測装置である。
【0059】
(付記4)
付記4に記載のリスク予測装置は、前記対象患者データは、前記対象患者の既往歴に関する情報を含むことを特徴とする付記3に記載のリスク予測装置である。
【0060】
(付記5)
付記5に記載のリスク予測装置は、前記判定手段は、前記予測手段で予測された前記対象患者の将来の前記リスクの上昇値又は上昇割合が所定の閾値を越えた場合に、前記対処を行うべきと判定することを特徴とする付記1から4のいずれか一項に記載のリスク予測装置である。
【0061】
(付記6)
付記6に記載のリスク予測装置は、前記判定手段は、前記対象患者に対して前記対処を行うべきと判定した場合に、前記対処の内容を示す情報を出力することを特徴とする付記5に記載のリスク予測装置である。
【0062】
(付記7)
付記7に記載のリスク予測装置は、前記判定手段は、前記対象患者に対して前記対処を行うべきと判定した場合に、前記予測手段で予測された前記対象患者の将来の前記リスクの上昇度合いに応じて、それぞれ異なる前記対処の内容を示す情報を出力することを特徴とする付記6に記載のリスク予測装置である。
【0063】
(付記8)
付記8に記載のリスク予測装置は、前記判定手段は、前記対象患者に対して前記対処を行うべきと判定した場合に、前記予測手段で予測された前記対象患者の将来の前記リスクの上昇値又は上昇割合に応じて、それぞれ異なる種類の前記対処の内容を示す情報を出力する付記7に記載のリスク予測装置である。
【0064】
(付記9)
付記9に記載のリスク予測装置は、前記判定手段は、前記対象患者に対して前記対処を行うべきと判定した場合に、前記予測手段で予測された前記対象患者の将来の前記リスクの上昇値又は上昇割合に応じて、それぞれ異なる数の前記対処の内容を示す情報を出力する付記7又は8に記載のリスク予測装置である。
【0065】
(付記10)
付記10に記載のリスク予測装置は、前記判定手段は、前記対象患者に対して前記対処を行うべきと判定した場合に、前記予測手段で予測された前記対象患者の将来の前記リスクの上昇値又は上昇割合に応じて、前記対処を行うべき度合いを前記対処の内容を示す情報として出力する付記7から9のいずれか一項に記載のリスク予測装置である。
【0066】
(付記11)
付記11に記載のリスク予測方法は、対象患者から、症状が悪化するリスクの推移を示すリスク推移データを取得し、過去の複数の患者の前記リスク推移データを取得し、前記対象患者の前記リスク推移データと、前記過去の複数の患者の前記リスク推移データとに基づいて、前記対象患者の将来の前記リスクの変化を予測し、予測された前記リスクの変化に基づいて、前記対象患者に対して対処を行うべきか否かを判定することを特徴とするリスク予測方法である。
【0067】
(付記12)
付記12に記載のコンピュータプログラムは、対象患者から、症状が悪化するリスクの推移を示すリスク推移データを取得し、過去の複数の患者の前記リスク推移データを取得し、前記対象患者の前記リスク推移データと、前記過去の複数の患者の前記リスク推移データとに基づいて、前記対象患者の将来の前記リスクの変化を予測し、予測された前記リスクの変化に基づいて、前記対象患者に対して対処を行うべきか否かを判定するようにコンピュータを動作させることを特徴とするコンピュータプログラムである。
【0068】
(付記13)
付記13に記載の記録媒体は、付記12に記載のコンピュータプログラムが記録されていることを特徴とする記録媒体である。
【0069】
本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うリスク予測装置、リスク予測方法、及びコンピュータプログラムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 リスク予測装置
11 CPU
12 RAM
13 ROM
14 記憶装置
15 入力装置
16 出力装置
17 データバス
110 リスクデータ取得部
120 過去リスクデータ蓄積部
130 リスク変化予測部
140 リスク対処判定部
150 患者データ取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8