(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】判定システム、判定方法、コンピュータプログラム、及び認証システム
(51)【国際特許分類】
G06V 40/40 20220101AFI20240116BHJP
G06V 40/16 20220101ALI20240116BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240116BHJP
【FI】
G06V40/40
G06V40/16 A
G06T7/00 510F
(21)【出願番号】P 2021565167
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2019049178
(87)【国際公開番号】W WO2021124395
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】早坂 昭裕
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/079031(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/072899(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06V 40/16
G06V 40/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段の画角内にマーカを投影手段に投影させる投影制御手段と、
前記撮像手段から前記マーカを含む対象者の画像を取得する取得手段と、
前記画像に含まれる前記マーカの写り具合を解析する解析手段と、
前記解析結果に基づいて、前記対象者が生体であるか否かを判定する判定手段と
を備え
、
前記解析手段は、前記マーカの位置、角度、大きさ、及び形状の少なくとも一つに基づいて解析することを特徴とする判定システム。
【請求項2】
前記解析手段は、前記画像に含まれる前記マーカと、事前に撮像された参照画像に含まれる前記マーカの一致度を算出し、
前記判定手段は、前記一致度に基づいて生体であるか否かを判定する
請求項1に記載の判定システム。
【請求項3】
前記投影制御手段は、前記撮像手段の画角内に前記マーカを少なくとも部分的に背景に投影するように投影手段に投影させ、
前記解析手段は、前記投影手段と前記背景との位置関係に基づいて、不正が行われていない場合に撮像される前記マーカの写り具合を予測し、予測された前記マーカの写り具合に基づいて、前記画像に含まれる前記マーカの写り具合を解析する
請求項1に記載の判定システム。
【請求項4】
前記解析手段は、前記対象者の境界部分で前記マーカに歪みが生じているか否かを解析する
請求項1に記載の判定システム。
【請求項5】
前記解析手段は、前記対象者の凹凸により前記マーカに歪みが生じているか否かを解析する
請求項1に記載の判定システム。
【請求項6】
前記判定手段は、前記解析結果が、予測された前記マーカよりも前記画像に含まれる前記マーカが小さい場合に生体でないと判定する
請求項3に記載の判定システム。
【請求項7】
撮像手段の画角内にマーカを投影手段に投影させ、
前記撮像手段から前記マーカを含む対象者の画像を取得し、
前記画像に含まれる前記マーカの写り具合を解析し、
前記解析結果に基づいて、前記対象者が生体であるか否かを判定
し、
前記画像に含まれる前記マーカの写り具合は、前記マーカの位置、角度、大きさ、及び形状の少なくとも一つに基づいて解析することを特徴とする判定方法。
【請求項8】
撮像手段の画角内にマーカを投影手段に投影させ、
前記撮像手段から前記マーカを含む対象者の画像を取得し、
前記画像に含まれる前記マーカの写り具合を解析し、
前記解析結果に基づいて、前記対象者が生体であるか否かを判定
し、
前記画像に含まれる前記マーカの写り具合は、前記マーカの位置、角度、大きさ、及び形状の少なくとも一つに基づいて解析するようにコンピュータを動作させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
撮像手段の画角内にマーカを投影手段に投影させる投影制御手段と、
前記撮像手段から前記マーカを含む対象者の画像を取得する取得手段と、
前記画像に含まれる前記マーカの写り具合を解析する解析手段と、
前記解析結果に基づいて、前記対象者が生体であるか否かを判定する判定手段と、
前記対象者が生体であると判定された場合に、前記対象者の認証処理を実行する実行手段と
を備え
、
前記解析手段は、前記マーカの位置、角度、大きさ、及び形状の少なくとも一つに基づいて解析することを特徴とする認証システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者に関する判定を行う判定システム、判定方法、コンピュータプログラム、及び認証システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムとして、生体認証を実行する際の不正を検知するものが知られている。例えば特許文献1では、生体距離と非生体距離との差を利用して、なりすましを検知する技術が開示されている。特許文献2では、被写体の瞳に写った映像と特定の画像とを比較することで、なりすましを検知する技術が開示されている。特許文献3では、認証場所で特定の背景画像を表示するようにし、撮影画像の輝度値を用いてなりすましを検知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2009/110323号
【文献】特開2007-072861号公報
【文献】特開2007-026330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
なりすましの判定には様々な手法が用いられている。しかしながら、上述した各特許文献に記載された技術は、装置構成や処理内容が複雑である、或いは、状況によって判定精度が低くなってしまう等の技術的問題点を有している。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、対象者が生体であるか否かを精度よく判定することが可能な判定システム、判定方法、コンピュータプログラム、及び認証装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の判定システムの一の態様は、撮像手段の画角内にランダムなマーカを投影手段に投影させる投影制御手段と、前記撮像手段から前記マーカを含む対象者の画像を取得する取得手段と、前記画像に含まれる前記マーカの状態に基づいて、前記撮像手段で撮像された前記対象者が生体であるか否かを判定する判定手段とを備える。
【0007】
本発明の判定方法の一の態様は、撮像手段の画角内にランダムなマーカを投影手段に投影させ、前記撮像手段から前記マーカを含む対象者の画像を取得し、前記画像に含まれる前記マーカの状態に基づいて、前記撮像手段で撮像された前記対象者が生体であるか否かを判定する。
【0008】
本発明のコンピュータプログラムの一の態様は、撮像手段の画角内にランダムなマーカを投影手段に投影させ、前記撮像手段から前記マーカを含む対象者の画像を取得し、前記画像に含まれる前記マーカの状態に基づいて、前記撮像手段で撮像された前記対象者が生体であるか否かを判定するようにコンピュータを動作させる。
【0009】
本発明の認証システムの一の態様は、撮像手段の画角内にランダムなマーカを投影手段に投影させる投影制御手段と、前記撮像手段から前記マーカを含む対象者の画像を取得する取得手段と、前記画像に含まれる前記マーカの状態に基づいて、前記撮像手段で撮像された前記対象者が生体であるか否かを判定する判定手段と、前記対象者が生体であると判定された場合に、前記対象者の認証処理を実行する実行手段とを備える。
【発明の効果】
【0010】
上述した判定システム、判定方法、コンピュータプログラム、及び認証システムのそれぞれの一の態様によれば、対象者が生体であるか否かを精度よく判定することができる。これにより、例えば写真等によるなりすましを検知し、生体認証を適切に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る判定システムの機能的構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る判定システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る認証システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る認証システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【
図5】通常時のマーカ投影例を示すイメージ図である。
【
図6】攻撃時のマーカ投影例を示すイメージ図である。
【
図7】通常時の撮像画像と攻撃時の撮像画像との違いを示す比較図である。
【
図8】対象者に重なるようにマーカを投影する例を示す比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、判定システム、判定方法、コンピュータプログラム、及び認証システムの実施形態について説明する。
【0013】
<判定システム>
本実施形態に係る判定システムについて、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0014】
(機能的構成)
まず
図1を参照しながら、本実施形態に係る判定システムの機能的構成について説明する。
図1は、実施形態に係る判定システムの機能的構成を示すブロック図である。
【0015】
図1において、本実施形態に係る判定システム10は、認証処理の対象者(言い換えれば、顔画像の撮像対象)が生体であるか否かを判定するための装置として構成されている。判定システム10は、その機能を実現するための処理ブロックとして、投影制御部101と、画像取得部102と、生体判定部103とを備えている。
【0016】
投影制御部101は、マーカを投影する投影手段(例えば、後述する投光器20)の動作を制御するものとして構成されている。投影制御部101は、投影手段を制御して、ランダムなマーカを対象者の背景又は対象者に重なるように投影することが可能である。投影制御部101は、例えば予め複数種類のマーカ(具体的には、色や形状、大きさ等が異なるマーカ)を記憶しておき、その中からランダムで1つ又は複数のマーカを選択して投影する。或いは、投影制御部101は、その都度マーカを自動的に生成して投影するようにしてもよい。
【0017】
画像取得部102は、生体であるか否かを判定する対象者の画像を取得可能に構成されている。画像取得部102は、投影制御部101によって投影されたマーカを含む対象者の画像を取得する。また、画像取得部102は、時間的に連続した複数の画像(言い換えれば、動画)を取得するように構成されてもよい。画像取得部102で取得された画像は、生体判定部103に出力される構成となっている。
【0018】
生体判定部103は、画像取得部102で取得された画像に基づいて、対象者が生体であるか否かを判定する。より具体的には、生体判定部103は、対象者が実際に撮像手段(例えば、後述するカメラ30)の前に存在しているのか、それとも写真等による“なりすまし”が行われているのかを判定する。生体判定部103は、対象者の画像に含まれるマーカ(即ち、投影制御部101によって投影されたマーカ)の状態に基づいて、対象者が生体であるか否かを判定する。生体判定部103における具体的な判定方法については、後に詳述する。生体判定部103による判定結果は、外部装置(例えば、後述する認証装置40)に出力される構成となっている。
【0019】
(ハードウェア構成)
次に、
図2を参照しながら、本実施形態に係る判定システム10のハードウェア構成について説明する。
図2は、実施形態に係る判定システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0020】
図2に示すように、本実施形態に係る判定システム10は、CPU(Central Processing Unit)11と、RAM(Random Access Memory)12と、ROM(Read Only Memory)13と、記憶装置14とを備えている。判定システム10は更に、入力装置15と、出力装置16とを備えていてもよい。CPU11と、RAM12と、ROM13と、記憶装置14と、入力装置15と、出力装置16とは、データバス17を介して接続されている。
【0021】
CPU11は、コンピュータプログラムを読み込む。例えば、CPU11は、RAM12、ROM13及び記憶装置14のうちの少なくとも一つが記憶しているコンピュータプログラムを読み込むように構成されている。或いは、CPU11は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体が記憶しているコンピュータプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。CPU11は、ネットワークインタフェースを介して、判定システム10の外部に配置される不図示の装置からコンピュータプログラムを取得してもよい(つまり、読み込んでもよい)。CPU11は、読み込んだコンピュータプログラムを実行することで、RAM12、記憶装置14、入力装置15及び出力装置16を制御する。本実施形態では特に、CPU11が読み込んだコンピュータプログラムを実行すると、CPU11内には、対象者が生体であるか否かを判定するための機能ブロックが実現される。
【0022】
RAM12は、CPU11が実行するコンピュータプログラムを一時的に記憶する。RAM12は、CPU11がコンピュータプログラムを実行している際にCPU11が一時的に使用するデータを一時的に記憶する。RAM12は、例えば、D-RAM(Dynamic RAM)であってもよい。
【0023】
ROM13は、CPU11が実行するコンピュータプログラムを記憶する。ROM13は、その他に固定的なデータを記憶していてもよい。ROM13は、例えば、P-ROM(Programmable ROM)であってもよい。
【0024】
記憶装置14は、判定システム10が長期的に保存するデータを記憶する。記憶装置14は、CPU11の一時記憶装置として動作してもよい。記憶装置14は、例えば、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)及びディスクアレイ装置のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0025】
入力装置15は、判定システム10のユーザからの入力指示を受け取る装置である。入力装置15は、例えば、キーボード、マウス及びタッチパネルのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0026】
出力装置16は、判定システム10に関する情報を外部に対して出力する装置である。例えば、出力装置16は、判定システム10に関する情報を表示可能な表示装置(例えば、ディスプレイ)であってもよい。
【0027】
<認証システム>
次に、上述した判定システム10を備える認証システムについて、
図3から
図8を参照して説明する。
【0028】
(システム構成)
まず、
図3を参照しながら、本実施形態に係る認証システムの全体構成について説明する。
図3は、実施形態に係る認証システムの全体構成を示すブロック図である。
【0029】
図3において、本実施形態に係る認証システム1は、対象者の顔画像を利用した認証処理(所謂、顔認証)を実行するシステムとして構成されている。認証システム1は、上述した判定システム10と、投光器20と、カメラ30と、認証装置40とを備えている。
【0030】
投光器20は、判定システム10における投影制御部101の指示に従って、ランダムなマーカを投影可能に構成されている。投光器20は、カメラ30の画角内にマーカを投影可能な位置に配置されている。投光器20は、可視光でマーカを投影してもよいし、近赤外線光のような不可視光でマーカを投影してもよい。
【0031】
カメラ30は、認証処理の対象者の画像(特に、顔周辺の画像)を撮像可能に構成されている。また、カメラ30は、対象者と共に投光器20から投影されるマーカを撮像可能な位置に配置されている。カメラ30で取得された画像は、判定システム10における画像取得部102に出力される構成となっている。なお、投光器20が不可視光でマーカを投影する場合には、カメラ30は不可視光を撮像可能なカメラとして構成されればよい。
【0032】
認証装置40は、カメラ30で撮像された画像に基づいて、対象者の顔認証を実行する。また認証装置40は特に、判定システム10の判定結果(即ち、対象者が生体であるか否か)に基づいて認証処理を実行可能に構成されている。認証装置40における判定システム10の判定結果の利用方法については、後に詳しく説明する。なお、認証装置40は、顔認証に代えて、顔認証以外の生体認証(例えば、虹彩認証等)を実行可能に構成されてもよい。認証装置40が実行する認証処理の具体的な内容については、既存の手法を適宜採用することができるため、ここでの詳細な説明は省略する。認証装置40は、例えばクラウドとして構成されていてもよい。
【0033】
(動作の流れ)
次に、
図4を参照しながら、本実施形態に係る認証システム1の動作の流れについて説明する。
図4は、本実施形態に係る認証システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【0034】
図4に示すように、本実施形態に係る認証システム1は、まず認証処理の対象者が存在しているか否かを判定する(ステップS101)。対象者が存在しているか否かは、例えばカメラの画角内における物体の存在を検出することで判定できる。対象者の存在は、カメラ30によって検出されてもよいし、他の図示せぬセンサ等で検出されてもよい。或いは、対象者による端末操作等があった場合に、対象者の存在を検出するようにしてもよい。なお、対象者が存在しないと判定された場合(ステップS101:NO)、以降の処理は省略され、一連の動作が終了することになる。この場合、所定期間経過後に、ステップS101の処理が再開されてもよい。
【0035】
対象者が存在すると判定された場合(ステップS101:YES)、投影制御部101は、投影するマーカをランダムに選択する(ステップS102)。そして、投影制御部101は、選択したマーカを投影するように投光器20を制御する。この際、投影制御部101は、マーカの投影位置を指定してもよい。具体的には、投影制御部101は、対象者の背景(言い換えれば、対象者とは重ならない位置)にマーカを投影するように指示してもよいし、対象者に少なくとも部分的に重なる位置にマーカを投影するように指示してもよい。ただし、対象者に重なるようにマーカを投影する場合には、対象者に眩しさを感じさせないよう目の位置を避けて投影する、或いは不可視光で投影することが好ましい。また、複数のマーカを異なる位置に投影するように指示してもよい。
【0036】
マーカが投影されると、画像取得部102が、カメラ30から対象者の画像を取得する(ステップS104)。この画像には、投光器20によって投影されているマーカも含まれている。なお、対象者の動画を取得する場合、画像取得部102は、連続して対象者の画像を取得すればよい。
【0037】
続いて、生体判定部103が、画像取得部102で取得された対象者の画像に基づいて、対象者が生体であるか否かを判定する(ステップS105)。生体判定部103は、対象者の画像に含まれているマーカが想定される状態で撮像されているか否かによって、対象者が生体であるか否かを判定する。具体的には、生体判定部103は、対象者の画像に含まれているマーカの状態が想定通りのものである場合に対象者が生体であると判定し、想定外のものである場合に対象者が生体でないと判定する。生体判定部103は、例えばマーカの位置、角度、大きさの少なくとも1つを用いて、マーカの状態が想定通りものであるか否かを判定する。ただし、生体判定部103は、マーカの位置、角度、大きさ以外のパラメータ(例えば、色や形状等)を用いて、対象者が生体であるか否かを判定してもよい。
【0038】
生体判定部103は、例えば、予め対象者が存在しない状態で壁に向かってマーカを投光し、その際の撮影画像を参照画像として記憶する。このようにすれば、参照画像との比較によって、マーカの状態が想定通りのものであるか否かを判定できる。より具体的には、生体判定部103は、対象者を撮影した画像に含まれるマーカと参照画像内のマーカとの、位置、角度、大きさ夫々の一致度(少なくとも一つでもよい)に基づき、対象者が生体か否かを判定することができる。なお、一致度の導出については、適宜既存の手法を採用すればよいが、例えばSSD(Sum Of Squared Difference)や、SAD(Sum of Absolute Difference)等のような画像処理における一般的なテンプレートマッチングやパターンマッチング手法を用いてもよい。
【0039】
対象者が生体であると判定された場合(ステップS105:YES)、認証装置40が対象者の認証処理(ここでは、顔画像を用いた顔認証)を実行する(ステップS106)。具体的には、認証装置40は、対象者の画像から顔領域を抽出し、対象者の顔が予め登録された顔と一致するか否かを判定する。なお、顔認証には、対象者の画像がそのまま用いられてもよいし、対象者の画像から抽出された特徴量(例えば、輝度等)が用いられてもよい。認証装置40は、認証処理が終了すると、その結果(例えば、「認証OK」又は「認証NG」)を出力する。
【0040】
一方、対象者が生体でないと判定された場合(ステップS105:NO)、認証装置40は対象者の顔認証を実行しない(即ち、ステップS106が省略される)。対象者が生体でない場合、例えば写真等による“なりすまし”が疑われるからである。認証処理が実行されない結果、例えば不正に認証処理を突破しようとするユーザからの攻撃を回避することができる。なお、生体判定部103は、対象者が生体でないと判定した場合に、なりすましが行われている旨を通知するようにしてもよい。具体的には、生体判定部103は、システムの管理者等に対して警告表示や警告音声を出力するようにしてもよい。
【0041】
(具体的な動作例)
次に、
図5から
図7を参照しながら、本実施形態に係る認証システム1(特に、判定システム10)の具体的な動作例について説明する。
図5は、通常時のマーカ投影例を示すイメージ図である。
図6は、攻撃時のマーカ投影例を示すイメージ図である。
図7は、通常時の撮像画像と攻撃時の撮像画像との違いを示す比較図である。
【0042】
図5に示すように、対象者500が投光器20及びカメラ30の前に実際に存在する場合(言い換えれば、対象者500が生体である場合)、投光器20から投影されるマーカ200は、対象者500の背景(例えば、対象者500の背後に存在する壁等)に投影される。この場合、投光器20と背景との位置関係は事前に判明しているため、マーカがどのような状態で背景に投影されるかは、正確に予測することができる。例えば、予め対象者が存在しない状態でマーカを背景(例えば、壁等)に投影し、その際の撮像画像を参照画像として記憶しておけば、投光器20と背景との位置関係を事前に把握することが可能である。
【0043】
一方、
図6に示すように、攻撃者600が、対象者500の写真をカメラ30に向けている場合(言い換えれば、対象者500が生体でない場合)、投光器20から投影されるマーカ200は、対象者500の写真上に投影される。この場合、マーカ200は、想定よりも近い位置に投影されることになるため、例えばマーカ200の大きさは想定されたものより小さくなる。
【0044】
図7に示すように、上述した
図5及び
図6の状況で撮像される対象者500の画像を比較すると、マーカ200の写り具合に明確な差が生ずる。具体的には、対象者500が生体である場合、
図7(a)のように、マーカ200が想定通りの状態で撮像画像に写り込む。一方で、対象者500が生体でない場合、
図7(b)のように、マーカ200が想定外の状態(具体的には、
図7(a)よりも小さく投影された状態)で撮像画像に写り込む。このように、撮像画像におけるマーカ200の写り具合を解析すれば、対象者500が生体であるか否かを正確に判定することができる。
【0045】
なお、上述した例では、説明の便宜上、マーカ200が丸印であるものとしたが、マーカの形状は特に限定されるものではない。例えば、マーカ200は、より複雑なパターンを含むものであってもよいし、文字等を含むものであってもよい。また、対象者の背景に複数のマーカ200が投影されるようにしてもよい。この場合、投影された複数のマーカ200のうち、少なくとも1つのマーカ200が想定外の状態で撮像画像に写り込んでいる場合に、対象者500が生体でないと判定するようにすればよい。
【0046】
(変形例)
次に、
図8を参照しながら、変形例に係る認証システム1の具体的な動作例について説明する。
図8は、対象者に重なるようにマーカを投影する例を示す比較図である。
【0047】
図8に示すように、マーカ200は対象者500に重なるように投影されてもよい。このような場合でも、対象者500が生体であるか否かによって、撮像画像におけるマーカ200の写り具合に明確な差が生ずる。具体的には、対象者500が生体である場合、
図8(a)のように、生体の境界部分でマーカ200に歪み(ずれ)が生ずる。或いは、対象者500にマーカ200が完全に重なるように投影されたとしても、対象者500の凹凸に起因してマーカ200に大なり小なり歪みが生ずることになる。一方で、対象者500が生体でない場合(例えば、写真のような平面的な物体の場合)、
図8(b)のように、マーカ200には歪みが生じない。このように、対象者500に重なるようにマーカ200を投影すれば、撮像画像におけるマーカ200に歪みが生じているか否かによって、対象者500が生体であるか否かを判定することができる。なお、仮にマーカ200に歪みが生じている場合であっても、生じている歪みが不自然な場合、対象者500が生体でないと判定するようにしてもよい。
【0048】
(変形例2)
投光器20(即ち、マーカ200を投影する投影手段)は、判定システム10と独立して設けられるものであってもよい。例えば、投光器20は、手動で(即ち、操作者の操作によって)マーカ200の投影を行うように構成されてもよい。このようにすれば、操作者の任意のタイミングでマーカ200を投影することが可能となる。この場合、判定システム10は、投影制御部101を備えていなくともよい。
【0049】
(変形例3)
マーカ200は、対象者500が存在していない状態で投影開始されてもよい。具体的には、マーカ200を投影した後に対象者500が存在しているか否かを判定し、対象者500が存在している場合に対象者500の画像を取得するようにしてもよい。このようにすれば、対象者500が予めマーカ200の位置を目視できる(即ち、カメラ30で撮像される前に、マーカ200の位置を確認することができる)。よって、対象者500は、マーカ200の位置に応じて自身の位置を調整することができる。例えば、対象者500は、マーカ200が目に当たらないように立ち位置を調整できる。
【0050】
(技術的効果)
次に、本実施形態に係る認証システム1によって得られる技術的効果について説明する。
【0051】
図1から
図7で説明したように、本実施形態に係る認証システム1では、認証処理を実行する際に、マーカ200が投影され、対象者500が生体であるか否かの判定が行われる。よって、例えば写真等を利用した“なりすまし”による攻撃を回避することができる。本実施形態のようにマーカ200を利用すれば、比較的簡易な装置構成で、不正な認証突破を回避することができる。また、対象者500に対して特別なアクションを要求することがないため、認証処理における対象者500の負担を増加させることもない。
【0052】
<付記>
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0053】
(付記1)
付記1に記載の判定システムは、撮像手段の画角内にランダムなマーカを投影させる投影制御手段と、前記撮像手段から前記マーカを含む対象者の画像を取得する取得手段と、前記画像に含まれる前記マーカの状態に基づいて、前記撮像手段で撮像された前記対象者が生体であるか否かを判定する判定手段とを備えることを特徴とする判定システムである。
【0054】
(付記2)
付記2に記載の判定システムは、前記判定手段は、前記画像内の前記マーカの位置、角度及び大きさの少なくとも1つに基づいて、前記撮像手段で撮像された前記対象者が生体であるか否かを判定することを特徴とする付記1に記載の判定システムである。
【0055】
(付記3)
付記3に記載の判定システムは、前記判定手段は、前記撮像手段で撮像された前記対象者が生体でないと判定した場合に、なりすましが行われている旨を通知することを特徴とする付記1又は2に記載の判定システムである。
【0056】
(付記4)
付記4に記載の判定システムは、前記投影制御手段は、前記対象者の背景部分に前記マーカを投影させることを特徴とする付記1から3のいずれか一項に記載の判定システムである。
【0057】
(付記5)
付記5に記載の判定システムは、前記投影制御手段は、前記対象者に少なくとも部分的に重なるように前記マーカを投影させることを特徴とする付記1から3のいずれか一項に記載の判定システムである。
【0058】
(付記6)
付記6に記載の判定システムは、前記投影制御手段は、不可視光で前記マーカを投影させることを特徴とする付記1から5のいずれか一項に記載の判定システムである。
【0059】
(付記7)
付記7に記載の判定システムは、前記取得手段は、前記撮像手段から時間的に連続する複数の画像を取得し、前記判定手段は、前記複数の画像に含まれる前記マーカの状態に基づいて、前記撮像手段で撮像された前記対象者が生体であるか否かを判定することを特徴とする付記1から6のいずれか一項に記載の判定システムである。
【0060】
(付記8)
付記8に記載の判定方法は、撮像手段の画角内にランダムなマーカを投影手段に投影させ、前記撮像手段から前記マーカを含む対象者の画像を取得し、前記画像に含まれる前記マーカの状態に基づいて、前記撮像手段で撮像された前記対象者が生体であるか否かを判定することを特徴とする判定方法である。
【0061】
(付記9)
付記9に記載のコンピュータプログラムは、撮像手段の画角内にランダムなマーカを投影手段に投影させ、前記撮像手段から前記マーカを含む対象者の画像を取得し、前記画像に含まれる前記マーカの状態に基づいて、前記撮像手段で撮像された前記対象者が生体であるか否かを判定するようにコンピュータを動作させることを特徴とするコンピュータプログラムである。
【0062】
(付記10)
付記10に記載の認証システムは、撮像手段の画角内にランダムなマーカを投影手段に投影させる投影制御手段と、前記撮像手段から前記マーカを含む対象者の画像を取得する取得手段と、前記画像に含まれる前記マーカの状態に基づいて、前記撮像手段で撮像された前記対象者が生体であるか否かを判定する判定手段と、前記対象者が生体であると判定された場合に、前記対象者の認証処理を実行する実行手段とを備えることを特徴とする認証システムである。
【0063】
本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う判定システム、判定方法、コンピュータプログラム、及び認証システムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 認証システム
10 判定システム
20 投光器
30 カメラ
40 認証装置
101 投影制御部
102 画像取得部
103 生体判定部
200 マーカ
500 対象者
600 攻撃者