(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】動力工具
(51)【国際特許分類】
B23D 47/02 20060101AFI20240116BHJP
B23D 45/16 20060101ALI20240116BHJP
B27B 9/04 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B23D47/02
B23D45/16
B27B9/04
(21)【出願番号】P 2022077898
(22)【出願日】2022-05-11
(62)【分割の表示】P 2021532758の分割
【原出願日】2020-06-26
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2019130336
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】長田 淑晃
(72)【発明者】
【氏名】倉賀野 慎治
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 健
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/010136(WO,A1)
【文献】特開2021-193367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 47/02
B23D 45/16
B27B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ及び切断刃を支持する本体部と、
前記本体部を支持し、加工材上を摺動可能な摺動面を有するベース基部と、
前記ベース基部に取付け可能であって少なくとも1つの案内面を有する補助部材と、
前記ベース基部に設けられたネジボス部と、
前記ネジボス部に支持され、前記ネジボス部に螺合する押圧部材と、
前記ネジボス部に取り付けられ、前記押圧部材が回転して下方へ移動した際に前記押圧部材の押圧力を前記補助部材に伝達するように構成された介在部材と、を有し、
前記介在部材は、前記補助部材が前記ベース基部に固定されている状態では、前記押圧部材と前記補助部材の両方が前記介在部材に対して離間した状態と比較して、弾性変形した状態で前記押圧部材と前記補助部材とによって挟まれるように構成される、動力工具。
【請求項2】
前記補助部材は、前記案内面から延在して前記ベース基部に係合可能な延在部を有し、
前記押圧部材は、前記介在部材を介して前記延在部を押圧する、請求項1に記載の動力工具。
【請求項3】
前記ベース基部は、前記延在部を挿入する挿入部を有し、
前記介在部材は、
前記挿入部に位置する下部と、
前記下部の前記延在部の延在方向における一方側の端部に接続されて上方かつ前記延在方向の一方側へ延びる立ち上がり部と、
を有する、請求項2に記載の動力工具。
【請求項4】
前記立ち上がり部の上端は、前記ネジボス部の下端よりも上方に位置する、請求項3に記載の動力工具。
【請求項5】
前記立ち上がり部における前記延在方向一方側の端部は、前記ネジボス部よりも前記延在方向の一方側に位置する、請求項4に記載の動力工具。
【請求項6】
前記介在部材の少なくとも一部は前記ネジボス部の上方に位置し、前記介在部材は前記ネジボス部の上面で支持される、請求項2から5のいずれか一項に記載の動力工具。
【請求項7】
前記介在部材には貫通孔が形成され、前記押圧部材の一部が前記貫通孔に挿通されることで、前記介在部材の前記ネジボス部に対する相対移動が規制される、請求項1から6のいずれか一項に記載の動力工具。
【請求項8】
前記押圧部材は、前記ネジボス部に螺合する軸部と、前記軸部と一体化されて前記軸部の外径よりも径方向外側へ突出する部分を含む頭部と、を有し、
前記介在部材は、前記頭部によって前記補助部材から離れる方向への移動が規制される、請求項1から7のいずれか一項に記載の動力工具。
【請求項9】
前記介在部材は、前記延在部の延在方向に延びる平面部と、前記平面部に接続される折り曲げ部とを有し、
前記折り曲げ部によって、前記介在部材の前記延在部の延在方向に沿った前記ネジボス部に対する相対移動が規制される、請求項2から6のいずれか一項に記載の動力工具。
【請求項10】
前記押圧部材は、前記ネジボス部に螺合する軸部と、前記軸部と一体化されて前記軸部の外径よりも径方向外側へ突出する部分を含む頭部と、を有し、
前記軸部の周囲に設けられる挟持部材を含み、
前記介在部材は、前記頭部に支持された前記挟持部材と前記ネジボス部とで挟み込まれて保持される、請求項1から9のいずれか一項に記載の動力工具。
【請求項11】
前記介在部材は、前記ネジボス部の下方に位置する平面部と、前記平面部の端部から
上方に立ち上がるように延びるとともに前記ネジボス部よりも前記延在方向の一方または他方に位置する立ち上がり部と、を有し、
前記立ち上がり部は前記補助部材と前記ネジボス部の直接的な接触を規制する、請求項2から6のいずれか一項に記載の動力工具。
【請求項12】
前記立ち上がり部の一部は、前記ネジボス部の下面よりも上方に位置する部分を有する、請求項11に記載の動力工具。
【請求項13】
モータ及び切断刃を支持する本体部と、
前記本体部を支持し、加工材上を摺動可能な摺動面を有するベース基部と、
前記ベース基部に取付け可能であって少なくとも1つの案内面を有する補助部材と、
前記ベース基部に設けられたネジボス部と、
前記ネジボス部に支持され、前記ネジボス部に螺合する押圧部材と、
前記ネジボス部に取り付けられ、弾性変形によって前記押圧部材の下端と前記補助部材との間に介在する部分が変位可能であって、前記押圧部材が回転して下方へ移動した際に前記押圧部材の押圧力を前記補助部材に伝達する介在部材と、を有する、動力工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸鋸等の動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、丸鋸に関する。この丸鋸は、ベースが分割式となっており、ベース基部からサブベース(分割片)を取り外すことで作業形態を変更可能とし、作業性を向上させている。サブベースのベース基部への固定は、サブベースから延在するバーをベース基部に係合させ、操作ノブを回転させて螺進するボルト部材(またはカム部材)の先端を当該バー部分に押圧させることで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の丸鋸では、サブベースを円滑にベース基部に装着させるために、サブベースのバーとベース基部との係合はガタつきを有するものであったため、サブベースをベース基部に対して所望の位置にセットしてからボルトを回転させるまでの間に、サブベースの位置が変化してしまうことがある。ガイドや直角定規等、サブベース以外の補助部材をベース基部に固定する場合にも同様の問題がある。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、ベース基部に対する補助部材の固定を好適に実施可能な動力工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、動力工具である。この動力工具は、
モータ及び切断刃を支持する本体部と、
前記本体部を支持し、加工材上を摺動可能な摺動面を有するベース基部と、
前記ベース基部に取付け可能であって少なくとも1つの案内面を有する補助部材と、
前記ベース基部に設けられたネジボス部と、
前記ネジボス部に支持され、前記ネジボス部に螺合する押圧部材と、
前記ネジボス部に取り付けられ、前記押圧部材が回転して下方へ移動した際に前記押圧部材の押圧力を前記補助部材に伝達するように構成された介在部材と、を有し、
前記介在部材は、前記補助部材が前記ベース基部に固定されている状態では、前記押圧部材と前記補助部材の両方が前記介在部材に対して離間した状態と比較して、弾性変形した状態で前記押圧部材と前記補助部材とによって挟まれるように構成される。
【0007】
前記補助部材は、前記案内面から延在して前記ベース基部に係合可能な延在部を有し、
前記押圧部材は、前記介在部材を介して前記延在部を押圧してもよい。
【0008】
前記ベース基部は、前記延在部を挿入する挿入部を有し、
前記介在部材は、
前記挿入部に位置する下部と、
前記下部の前記延在部の延在方向における一方側の端部に接続されて上方かつ前記延在方向の一方側へ延びる立ち上がり部と、
を有してもよい。
【0009】
前記立ち上がり部の上端は、前記ネジボス部の下端よりも上方に位置してもよい。
前記立ち上がり部における前記延在方向一方側の端部は、前記ネジボス部よりも前記延在方向の一方側に位置してもよい。
【0010】
前記介在部材の少なくとも一部は前記ネジボス部の上方に位置し、前記介在部材は前記ネジボス部の上面で支持されてもよい。
前記介在部材には貫通孔が形成され、前記押圧部材の一部が前記貫通孔に挿通されることで、前記介在部材の前記ネジボス部に対する相対移動が規制されてもよい。
前記押圧部材は、前記ネジボス部に螺合する軸部と、前記軸部と一体化されて前記軸部の外径よりも径方向外側へ突出する部分を含む頭部と、を有し、
前記介在部材は、前記頭部によって前記補助部材から離れる方向への移動が規制されてもよい。
前記介在部材は、前記延在部の延在方向に延びる平面部と、前記平面部に接続される折り曲げ部とを有し、
前記折り曲げ部によって、前記介在部材の前記延在部の延在方向に沿った前記ネジボス部に対する相対移動が規制されてもよい。
前記押圧部材は、前記ネジボス部に螺合する軸部と、前記軸部と一体化されて前記軸部の外径よりも径方向外側へ突出する部分を含む頭部と、を有し、
前記軸部の周囲に設けられる挟持部材を含み、
前記介在部材は、前記頭部に支持された前記挟持部材と前記ネジボス部とで挟み込まれて保持されてもよい。
【0011】
前記介在部材は、前記ネジボス部の下方に位置する平面部と、前記平面部の端部から上方に立ち上がるように延びるとともに前記ネジボス部よりも前記延在方向の一方または他方に位置する立ち上がり部と、を有し、
前記立ち上がり部は前記補助部材と前記ネジボス部の直接的な接触を規制してもよい。
【0012】
前記立ち上がり部の一部は、前記ネジボス部の下面よりも上方に位置する部分を有してもよい。
【0013】
本発明の別の態様は、動力工具である。この動力工具は、
モータ及び切断刃を支持する本体部と、
前記本体部を支持し、加工材上を摺動可能な摺動面を有するベース基部と、
前記ベース基部に取付け可能であって少なくとも1つの案内面を有する補助部材と、
前記ベース基部に設けられたネジボス部と、
前記ネジボス部に支持され、前記ネジボス部に螺合する押圧部材と、
前記ネジボス部に取り付けられ、弾性変形によって前記押圧部材の下端と前記補助部材との間に介在する部分が変位可能であって、前記押圧部材が回転して下方へ移動した際に前記押圧部材の押圧力を前記補助部材に伝達する介在部材と、を有する。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ベース基部に対する補助部材の固定を好適に実施可能な動力工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る動力工具1の右側面図。
【
図7】
図6の挿入部31に補助部材60の延在部62を挿入した状態の斜視図。
【
図8】動力工具1の、挿入部31を含む前後方向と垂直な断面で切断した要部拡大断面図。
【
図9】
図8の挿入部31に補助部材60の延在部62を挿入した状態の断面図。
【
図10】
図9の蝶ボルト33を締め付けた状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示である。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
本実施の形態は、動力工具1に関する。
図1~
図3及び
図5により、動力工具1における互いに直交する前後、上下、左右の各方向を定義する。前後方向は、動力工具1の作業方向である。上下方向は、ベース(ベース基部)30と垂直な方向である。左右方向は、前方向(切断進行方向)を見た場合を基準に定義する。なお、
図1及び
図5は動力工具1に電池パック51が装着された状態を示すが、
図3は動力工具1に電池パック51が装着されていない状態を示す。
【0019】
動力工具1は、携帯用丸鋸(携帯用切断機)であって、本体10及びベース30を備える。本体10は、周知の傾動支持機構20及び揺動支持機構25により、ベース30に連結支持される。本体10は、傾動支持機構20の支持により、ベース30に対して左右の少なくとも一方向に傾動可能である。また、本体10は、揺動支持機構(切込深さ調整機構)25の支持により、ベース30に対して上下方向に揺動可能である。ベース30は、例えばアルミ等の金属製の略長方形の板材である。ベース30の長手方向は動力工具1の作業方向と一致する。ベース30の底面は、被削材(加工材)との摺動面である。本体10のハウジング(外殻)は、相互に組み合わされて一体化された、モータハウジング11、ハンドルハウジング12、及びギヤカバー13により構成される。
【0020】
モータハウジング11は、例えば樹脂成形体であり、
図2に示すモータ6を内部に収容する。モータ6は、インナーロータ型のブラシレスモータであり、出力軸6aの周囲に、出力軸6aと一体に回転する磁性体からなるロータコア6bを有する。ロータコア6bには、ロータマグネット(永久磁石)6cが挿入保持される。ロータマグネット6cは、軸周り方向に等間隔(例えば90度間隔)に複数(例えば4つ)設けられる。ロータコア6bの周囲には、ステータコア6dが設けられる(モータハウジング11に固定される)。ステータコア6dにステータコイル(図示省略)が設けられる。ステータコア6dの左方には、インバータ回路基板44が、出力軸6aと略垂直に設けられる。インバータ回路基板44には、複数の(例えば6つの)FETやIGBT等のスイッチング素子44aが搭載される。
【0021】
ハンドルハウジング12は、例えば左右二分割構造の樹脂成形体であり、ギヤカバー13に接続される。ハンドルハウジング12は、モータハウジング11及びギヤカバー13に接続されると共に制御基板41(
図4)を収容する基部12a、グリップ部となるハンドル部12b、及びハンドル部12bの前端部と基部12aとを連結する連結部12cを含む。基部12aの上面には、操作パネル17が設けられる。図示は省略するが、操作パネル17には、動力工具1の動作モードやライトの点灯有無を切り替えるスイッチや、各種状態表示用のLED等が設けられる。基部12aの後端部とハンドル部12bの後端部とが互いに接続される。ハンドル部12bには、使用者がモータの駆動、停止を切り替えるためのトリガ部(操作部)5が設けられる。トリガ部5によってオンオフが切り替えられるスイッチ5a(
図4)が、ハンドル部12b内に設けられる。ハンドルハウジング12の後端部に、電源となる電池パック51(
図1及び
図5)が後方から着脱可能にスライド装着される。
【0022】
ギヤカバー13は、例えばアルミ等の金属製であり、ハンドルハウジング12に接続される。ギヤカバー13は、モータ6の回転を減速して鋸刃(切断刃)16に伝達する減速機構8(
図2)を覆うと共に、鋸刃16の上半分を覆う。保護カバー15は、例えば樹脂成形体であり、鋸刃16の下半分を開閉可能に覆う。先端工具(回転具)としての鋸刃16は、円板状の回転刃であり、モータ6によって回転駆動される。鋸刃16は、ベース30の下面から下方に突出する。
【0023】
ベース30の前部には、左右方向と平行に延びる挿入部31が設けられる。
図6~
図10に示すように、ベース30の左前部には、挿入部31の上方を前後方向に跨ぐように、ネジボス部32が設けられる。ネジボス部32には、蝶ボルト33が螺合する。蝶ボルト33は、押圧機構の主押圧部を成す。
図8~
図10に示すように、蝶ボルト33は、頭部33aと軸部33bを有する。頭部33aは、作業者が蝶ボルト33を回転させて蝶ボルト33の締結、解除を操作するための部分である。軸部33bは、ネジボス部32のネジ穴と係合するネジ軸である。軸部33bの軸方向は、上下方向と平行である。軸部33bの周囲には、コイルバネ34が設けられる。コイルバネ34は、蝶ボルト33の姿勢を維持するための部材である。
【0024】
板バネ35は、本発明における押圧機構の副押圧部を成す。板バネ35は、ネジボス部32に取り付けられる(係止される)。板バネ35は、右方に開いたU字状であってネジボス部32の上下に跨がる。板バネ35の上面部は、ネジボス部32の上面部とコイルバネ34の下端部とに挟持される。コイルバネ34により、板バネ35の上方への移動(後述の補助部材60から離れる方向の移動)が規制され、また板バネ35の上下方向を軸とする回転が抑制されることで、上下方向を軸とする回転方向のガタつきが抑制される。板バネ35の下面部は、好ましくは平面であって、ネジボス部32の下方に位置し、挿入部31に臨む。板バネ35は、第1湾曲部35a、第2湾曲部35b、及び貫通穴35cを有する。貫通穴35cは、板バネ35の上面部に設けられる。蝶ボルト33の軸部33bは、貫通穴35cを貫通し、ネジボス部32のネジ穴に螺合する。第1湾曲部35aは、板バネ35の下面部の左端部から立ち上がる部分であり、左下方(板バネ35側)に凸となるように湾曲している。第2湾曲部35bは、板バネ35の下面部の右端部から立ち上がる部分であり、右下方(板バネ35側)に凸となるように湾曲している。第1湾曲部35a及び第2湾曲部35bは、挿入部31に対する補助部材60の延在部62の挿入及び取外しの際の引っかかりを抑制し、挿入及び取外しを容易とするために設けられる。
【0025】
ベース30には、補助部材60を取付け可能である。補助部材60は、被削材の側面と平行に切断するためのガイドである。補助部材60は、案内面61及び延在部(ガイドバー)62を有する。案内面61は、左右方向と垂直な面であって、被削材の側面に接触する。延在部62は、案内面61から延びる棒状部であって、左右方向と平行に延びる部分がベース30の挿入部31に挿入される(ベース30に係合する)。挿入部31に挿入された延在部62を、蝶ボルト33及び板バネ35が押圧し、補助部材60がベース30に対して固定される。以下、ベース30に対する補助部材60の固定手順を説明する。
【0026】
図8に示すように、補助部材60の取付け前に、蝶ボルト33の軸部33bの下端部が板バネ35の下面部から離間するように蝶ボルト33を緩めておく。この状態で、補助部材60の延在部62をベース30の挿入部31に挿入する。このとき、延在部62は、第1湾曲部35aと係合しながら挿入部31に挿入されるため、引っかかり及び傷つきが抑制される。挿入部31に挿入された延在部62の上面は、板バネ35の下面部に好ましくは面接触し、板バネ35の下面部を上方に押す。これにより、板バネ35が弾性変形される。このため、板バネ35の弾性付勢力が延在部62に上方からの押圧力として印加され、補助部材60の前後、左右、回転方向の移動に弱い抵抗力が働く。この抵抗力は、作業者による補助部材60の移動を許容しつつ、ベース30が傾いたり振動が加わったりした場合の補助部材60の移動を抑制する程度の抵抗力である。なお、補助部材60は、挿入部31の前後の壁面により前後方向の移動が規制されるが、延在部62の円滑な装着のために、挿入部31内で僅かに前後方向に移動可能あるいは上下方向を軸に回転可能となることは避けられない。しかし、本発明によれば、板バネ35の弾性付勢力により、このような補助部材60の前後方向の移動や上下方向を軸とする回転が抑制される。補助部材60の上下方向のガタつきも、板バネ35の弾性付勢力により抑制される。
【0027】
図9に示すように案内面61が所望位置となるまで延在部62を挿入部31に挿入した後、
図10に示すように蝶ボルト33を締め付ける。これにより、蝶ボルト33の軸部33bの下端部が、板バネ35の下面部に接触し、板バネ35の下面部を介して延在部62を上方から押圧する。蝶ボルト33を十分な強度で締め付けることで、補助部材60をベース30に対して強固に固定することができる。
【0028】
作業者は、押圧方向(上下方向)における蝶ボルト33の位置(補助部材60との相対位置)を変化させることにより、蝶ボルト33から補助部材60への押圧力を変更可能である。蝶ボルト33の軸部33bの下端部は、補助部材60に押圧力を付与する接触部であり、蝶ボルト33の押圧方向の位置の変化(蝶ボルト33の締付状態の変化)に伴って前記押圧方向と交差する方向に移動する、具体的には上下方向を軸に回転する。
【0029】
板バネ35は、蝶ボルト33から補助部材60への押圧力が無くても(蝶ボルト33の軸部33bの下端部が板バネ35の下面部から離間していても)補助部材60に所定の押圧力を与える。板バネ35は、挿入部31の前後の壁面により上下方向を軸とする回転が規制される。補助部材60を固定する際に、蝶ボルト33は回転しながら延在部62を押圧するが、軸部33bと延在部62の上面との間には上下方向を軸とする回転が規制された板バネ35の下面部が介在することから、上下方向を軸とする蝶ボルト33の回転力は延在部62の上面に伝達されず、また軸部33bの下端部が延在部62の上面に直接当接しながら回転することもない。
【0030】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0031】
(1) 蝶ボルト33の軸部33bの下端部と延在部62の上面との間に板バネ35が介在することから、蝶ボルト33を締め付けて(回転させて)軸部33bの下端部により延在部62の上面を押圧していく過程で、軸部33bの回転力(トルク)が補助部材60に伝達されることを抑制できる。このため、蝶ボルト33の締付時に補助部材60が回転方向に動いたり微妙な位置変化を起こしたりすることを抑制でき、切断精度への影響を抑制できる。
【0032】
(2) 蝶ボルト33の軸部33bの下端部と延在部62の上面との間に板バネ35が介在することから、軸部33bの下端部が補助部材60の延在部62の上面に直接接触した状態で回転することがなくなるため、軸部33bの下端部により補助部材60の延在部62の上面を変形、または傷つけてしまうことを抑制できる。
【0033】
(3) 蝶ボルト33を緩めた状態(蝶ボルト33が補助部材60の延在部62を押圧していない状態)でも、挿入部31に挿入された補助部材60の延在部62に板バネ35が弾性付勢力を印加するため、補助部材60を所望位置にセットしてから蝶ボルト33を締め付けるまでの間に補助部材60が位置ずれすることを抑制できる。このため、補助部材60の固定作業が容易で、固定精度も高めやすい。
【0034】
(4) 板バネ35が第1湾曲部35aを有するため、補助部材60の延在部62をベース30の挿入部31に挿入する際の引っかかり及び傷つきを抑制し、挿入部31への延在部62の挿入を容易とすることができる。また、板バネ35が第2湾曲部35bを有するため、延在部62を挿入部から引き抜く際の引っかかり及び傷つきを抑制し、挿入部31からの延在部62の引き抜きを容易とすることができる。
【0035】
以下、動力工具1について補足説明する。ベース30の後部には、左右方向と平行に延びる挿入部71が設けられる。ベース30の右後部には、挿入部71の上方を前後方向に跨ぐように、ネジボス部72が設けられる。ネジボス部72には、蝶ボルト73が螺合する。蝶ボルト73の軸方向は、上下方向と平行である。蝶ボルト73の軸部の周囲には、コイルバネ74が設けられる。コイルバネ74は、蝶ボルト73の姿勢を維持するための部材である。図示は省略したが、前述のネジボス部32に板バネ35を設けたのと同様に、ネジボス部72にも同様の板バネを設けてもよい。例えば補助部材60の案内面61が前後に長尺の場合、左右方向に延びる延在部62が前後に設けられることがある。そのような場合、後側の延在部62を挿入部71に挿入し、蝶ボルト73を締め付ける。このとき、ネジボス部72にも板バネを設けておけば、ネジボス部32に板バネ35を設けたのと同様の作用効果が得られる。
【0036】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0037】
補助部材は、実施の形態で例示したガイドに限定されず、ベース下面の面積を疑似的に増やす効果のあるサブベースや、異なる形状を有する他の種類であってもよい。本発明の動力工具は、着脱可能に装着した電池パックの電力で動作するコードレスタイプに限定されず、外部の交流電源からの供給電力で動作するコード付きタイプであってもよい。また、本発明はベースを有するその他動力工具、例えばジグソーなどにも適用可能である。また、本発明における副押圧部(板バネ)の押圧方向は下方向としたが、同様の効果を奏すれば、押圧方向は自由に設定して良い。
【符号の説明】
【0038】
1…動力工具(携帯用丸鋸)、5…トリガ部、5a…スイッチ、6…モータ、6a…出力軸、6b…ロータコア、6c…ロータマグネット(永久磁石)、6d…ステータコア、8…減速機構、10…本体、11…モータハウジング、12…ハンドルハウジング、12a…基部、12b…ハンドル部、12c…連結部、13…ギヤカバー、15…保護カバー、16…鋸刃(切断刃)、17…操作パネル、20…傾動支持機構、25…揺動支持機構(切込深さ調整機構)、30…ベース(ベース基部)、31…挿入部、32…ネジボス部、33…蝶ボルト、33a…頭部、33b…軸部、34…コイルバネ、35…板バネ、35a…第1湾曲部、35b…第2湾曲部、35c…貫通穴、41…制御基板、44…インバータ回路基板、44a…スイッチング素子、51…電池パック、60…補助部材(ガイド)、61…案内面、62…延在部、71…挿入部、72…ネジボス部、73…蝶ボルト、74…コイルバネ。