(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20240116BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G03G9/08 381
G03G9/087 331
(21)【出願番号】P 2022170526
(22)【出願日】2022-10-25
(62)【分割の表示】P 2017185059の分割
【原出願日】2017-09-26
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 真也
(72)【発明者】
【氏名】川上 栄治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 賢
(72)【発明者】
【氏名】上脇 聡
(72)【発明者】
【氏名】坂元 梓也
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 優輝
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-224367(JP,A)
【文献】特開2014-174344(JP,A)
【文献】特開2011-128434(JP,A)
【文献】特開2016-014699(JP,A)
【文献】特開2012-133332(JP,A)
【文献】特開2001-117260(JP,A)
【文献】特開2015-011326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリエステル樹脂と、非晶性ポリエステル樹脂とが分散した分散液中で、当該結晶性ポリエステル樹脂と当該非晶性ポリエステル樹脂とを凝集して凝集粒子を得る凝集工程と、
前記凝集粒子を加熱して融合させて、加熱溶融後において粘弾性体であり50℃以上60℃以下で熱処理が行われた場合により粘性的な状態からより弾性的な状態に変化するトナー粒子を形成する形成工程と、
を含み、
前記結晶性ポリエステル樹脂は多価カルボン酸と多価アルコールとを重縮合することで生成する重縮合体であり、
前記凝集工程における前記結晶性ポリエステル樹脂と前記非晶性ポリエステル樹脂との混合比は、加熱溶融後であり且つ50℃以上60℃以下で熱処理が行われる前の30℃における損失弾性率と貯蔵弾性率との比を、加熱溶融後であり且つ50℃以上60℃以下で熱処理が行われた後の30℃における損失弾性率と貯蔵弾性率との比で除した値が2以上6以下になるように決められることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項2】
加熱溶融後であり且つ50℃以上60℃以下で熱処理が行われる前の30℃における前記損失弾性率と前記貯蔵弾性率との比は、0.7以上1.5以下であることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項3】
前記結晶性ポリエステル樹脂と前記非晶性ポリエステル樹脂とを含む結着ポリエステル樹脂は、加熱溶融後において、冷却の時間の経過に伴い、前記結晶性ポリエステル樹脂と前記非晶性ポリエステル樹脂とが相分離することを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項4】
前記分散液は、前記結晶性ポリエステル樹脂と、前記非晶性ポリエステル樹脂と、結晶核剤とが分散した分散液であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項5】
前記分散液は、液中に、前記結晶性ポリエステル樹脂と前記非晶性ポリエステル樹脂とが混合した混合樹脂粒子と、前記非晶性ポリエステル樹脂の粒子が分散した分散液である請求項1乃至4の何れかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、イエロートナーは、軟化点以上の温度領域において、その熱処理後の貯蔵弾性率がその熱処理前の貯蔵弾性率よりも小さくなるように設定されていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成システムなどでは、例えば、記録媒体上に静電荷像現像用トナーを載せ、トナーが載った記録媒体を加熱および加圧することでトナーを記録媒体に定着させ、その後、記録媒体を排出することがある。また、静電荷像現像用トナーとしては、加熱溶融する樹脂を含み、加熱溶融後において粘弾性体であるものが用いられることがある。
【0005】
ここで、記録媒体の定着によりトナーが加熱溶融した後、このトナーがより粘性的な状態からより弾性的な状態に変化することがある。
トナーの粘弾性の変化速度が過度に大きいと、例えば、加熱溶融後すぐにトナーの弾性が強くなるとともにトナーの脆性が強くなることがある。この場合、記録媒体の定着後であって排出前に、記録媒体上の画像に外力が作用することに起因してこの画像が欠ける(例えば、後処理装置による記録媒体の折り曲げ処理に際して記録媒体の折り曲がり部に位置する画像が欠ける)おそれがある。
【0006】
また、トナーの粘弾性の変化速度が過度に小さいと、例えばトナーの粘性が強いうちに記録媒体が排出されることがある。この場合、排出された記録媒体上の画像が他の部分に移る(例えば、排出された一の記録媒体上の画像が、次に排出され積載される他の記録媒体に移る)ことで、記録媒体上の画像が欠損するおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、加熱溶融後であり且つ50℃以上60℃以下で熱処理が行われる前の30℃における静電荷像現像用トナーの損失弾性率と貯蔵弾性率との比を、加熱溶融後であり且つ50℃以上60℃以下で熱処理が行われた後の30℃における静電荷像現像用トナーの損失弾性率と貯蔵弾性率との比で除した値が、2よりも小さく又は6よりも大きくなるように結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂との混合比が定められる場合に比べて、記録媒体に形成された画像が欠けにくい静電荷像現像用トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とが分散した分散液中で、当該結晶性ポリエステル樹脂と当該非晶性ポリエステル樹脂とを凝集して凝集粒子を得る凝集工程と、前記凝集粒子を加熱して融合させて、加熱溶融後において粘弾性体であり50℃以上60℃以下で熱処理が行われた場合により粘性的な状態からより弾性的な状態に変化するトナー粒子を形成する形成工程と、を含み、前記結晶性ポリエステル樹脂は多価カルボン酸と多価アルコールとを重縮合することで生成する重縮合体であり、前記凝集工程における前記結晶性ポリエステル樹脂と前記非晶性ポリエステル樹脂との混合比は、加熱溶融後であり且つ50℃以上60℃以下で熱処理が行われる前の30℃における損失弾性率と貯蔵弾性率との比を、加熱溶融後であり且つ50℃以上60℃以下で熱処理が行われた後の30℃における損失弾性率と貯蔵弾性率との比で除した値が2以上6以下になるように決められることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法である。
請求項2に記載の発明は、加熱溶融後であり且つ50℃以上60℃以下で熱処理が行われる前の30℃における前記損失弾性率と前記貯蔵弾性率との比は、0.7以上1.5以下であることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナーの製造方法である。
請求項3に記載の発明は、前記結晶性ポリエステル樹脂と前記非晶性ポリエステル樹脂とを含む結着ポリエステル樹脂は、加熱溶融後において、冷却の時間の経過に伴い、前記結晶性ポリエステル樹脂と前記非晶性ポリエステル樹脂とが相分離することを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナーの製造方法である。
請求項4に記載の発明は、前記分散液は、前記結晶性ポリエステル樹脂と、前記非晶性ポリエステル樹脂と、結晶核剤とが分散した分散液であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法である。
請求項5に記載の発明は、前記分散液は、液中に、前記結晶性ポリエステル樹脂と前記非晶性ポリエステル樹脂とが混合した混合樹脂粒子と、前記非晶性ポリエステル樹脂の粒子が分散した分散液である請求項1乃至4の何れかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、加熱溶融後であり且つ50℃以上60℃以下で熱処理が行われる前の30℃における静電荷像現像用トナーの損失弾性率と貯蔵弾性率との比を、加熱溶融後であり且つ50℃以上60℃以下で熱処理が行われた後の30℃における静電荷像現像用トナーの損失弾性率と貯蔵弾性率との比で除した値が、2よりも小さく又は6よりも大きくなるように結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂との混合比が定められる場合に比べて、記録媒体に形成された画像が欠けにくい静電荷像現像用トナーを提供できる。
請求項2の発明によれば、加熱溶融後であり且つ50℃以上60℃以下で熱処理が行われる前の30℃における静電荷像現像用トナーの損失弾性率と貯蔵弾性率との比が0.7よりも小さく又は1.5よりも大きい場合に比べて、記録媒体に形成された画像を欠けにくくすることができる。
請求項3の発明によれば、加熱溶融後の静電荷像現像用トナーをより粘性的な状態からより弾性的な状態に変化させることができる。
請求項4の発明によれば、分散液が、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂と結晶核剤とが分散した分散液ではない場合に比べて、静電荷像現像用トナー中の結晶性ポリエステル樹脂の含有量を少なくせずに、加熱溶融後であり且つ50℃以上60℃以下で熱処理が行われる前の30℃における静電荷像現像用トナーの損失弾性率と貯蔵弾性率との比を、加熱溶融後であり且つ50℃以上60℃以下で熱処理が行われた後の30℃における静電荷像現像用トナーの損失弾性率と貯蔵弾性率との比で除した値が、2以上6以下になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】画像形成システムの構成の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定するものではない。またその要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。さらに使用する図面は本実施形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0012】
<画像形成システム500の全体構成>
図1は、本実施の形態が適用される画像形成システム500の構成を示した図である。
図1に示す画像形成システム500は、記録媒体の一例としての用紙Pにカラー画像を形成するプリンタや複写機等の画像形成装置1と、画像形成装置1により画像形成が行われた用紙Pに対して綴じ等の後処理を行う後処理装置2とを備える。
【0013】
画像形成装置1には、各色画像データに基づいて画像形成を行う4つの画像形成ユニット100Y、100M、100C、100K(「画像形成ユニット100」とも総称する)が設けられている。
各画像形成ユニット100には、像保持体の一例としての感光体ドラム107と、感光体ドラム107を帯電する帯電手段の一例としての帯電ロール108とが設けられている。また、各画像形成ユニット100には、帯電ロール108により帯電された感光体ドラム107を露光する露光手段の一例としての露光器101と、露光器101により感光体ドラム107上に形成された静電潜像を現像する現像器109とが設けられている。
【0014】
また、画像形成装置1には、各画像形成ユニット100にて形成された各色の静電荷像現像用トナー(以下、トナーと称する)像が多重転写される中間転写ベルト102が設けられている。また、画像形成装置1には、各画像形成ユニット100にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト102に順次転写(一次転写)する一次転写ロール103、中間転写ベルト102上に転写された各色トナー像を用紙Pに一括転写(二次転写)する二次転写ロール104、二次転写された各色トナー像を用紙P上に定着する定着手段の一例としての定着器105が設けられている。なお、中間転写ベルト102、一次転写ロール103、および二次転写ロール104は、感光体ドラム107に形成された画像を用紙Pに転写する転写手段として捉えられる。
さらに、画像形成装置1には、各画像形成ユニット100の現像器109に供給されるトナーを収容するトナーカートリッジ120が設けられている。またさらに、画像形成装置1には、プログラム制御されたCPUにより構成され、画像形成装置1の動作を制御する本体制御部106が設けられている。
【0015】
画像形成装置1の各画像形成ユニット100では、感光体ドラム107への帯電工程、露光器101からの走査露光による感光体ドラム107での静電潜像形成工程、形成された静電潜像への各色トナーの現像工程等を経て、各色のトナー像が形成される。
各画像形成ユニット100に形成された各色トナー像は、一次転写ロール103により中間転写ベルト102上に順次静電転写(一次転写)される。そして、各色トナー像は、中間転写ベルト102の移動に伴って二次転写ロール104の設置位置へ搬送される。
【0016】
一方、画像形成装置1には、異なるサイズや異なる紙種の複数の用紙Pが、それぞれ用紙収容部110A~110Dに収容されている。
そして、用紙Pへの画像形成時には、例えば、ピックアップロール111により用紙収容部110Aから用紙Pが取り出され、搬送ロール112によって1枚ずつレジストロール113の位置まで搬送される。
【0017】
そして、中間転写ベルト102上の各色トナー像が、二次転写ロール104の配置位置に搬送されるタイミングに合わせて、レジストロール113から用紙Pが供給される。
これにより、各色トナー像は、二次転写ロール104により形成された転写電界の作用によって用紙P上に一括して静電転写(二次転写)される。
【0018】
その後、各色トナー像が二次転写された用紙Pは、中間転写ベルト102から剥離されて定着器105に搬送される。定着器105では、熱および圧力による定着処理により各色トナー像が用紙P上に定着され、画像が形成される。
そして、画像が形成された用紙Pは、搬送ロール114によって画像形成装置1の用紙排出部Tから排出され後処理装置2へ供給される。
後処理装置2は、画像形成装置1の用紙排出部Tの下流側に配置され、画像が形成された用紙Pに対して折り曲げや綴じ等の後処理を行う。用紙Pは、後処理が施された後、排出トレイ130に排出される。
【0019】
<トナーの構成>
次に、トナーの構成について説明する。
トナーには、加熱溶融する樹脂からなる結着樹脂と、着色剤と、離型剤とが含まれている。
本実施形態で用いられるトナーは、加熱溶融後において粘弾性を有する粘弾性体である。
【0020】
(結着樹脂)
結着樹脂とは、トナーを用紙に結着させるための樹脂である。より具体的には、結着樹脂とは、定着処理の際に用紙に粘着することで、加熱溶融したトナーを用紙に結着させる樹脂である。
本実施形態で用いられる結着樹脂としては、特に限られるものではないが、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂などのビニル系樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、ビニル系樹脂と非ビニル系樹脂との混合物、または、上記の樹脂のうち二種以上の樹脂の共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等が挙げられる。また、これらの中でも、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
結着樹脂として、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
また、結着樹脂には、結晶性樹脂と、非晶性樹脂とが含まれている。
【0021】
(結晶性樹脂)
本実施形態では、結晶性樹脂は、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)において、比較的急勾配の吸熱ピークを有する。より具体的には、10℃/分の昇温速度でDSC測定を行った場合に、吸熱ピークの半値幅が10℃以内となる。
結晶性樹脂は、特定の温度において粘度が大きく低下する。トナーに結晶性樹脂と非晶性樹脂とが含まれている場合、非晶性樹脂が含まれている一方で結晶性樹脂が含まれていない場合よりも、より低い温度で低粘度下し、低い温度における定着性能(低温定着性)が向上する。
【0022】
一方で結晶性樹脂は、トナーの弾性の向上に寄与する。
トナーに含まれる結晶性樹脂と非晶性樹脂とが相溶している場合、定着時の加熱された条件下ではトナーの粘性が強いが、定着後は冷却されるにしたがって結晶性樹脂と非晶性樹脂との相分離が進み、トナーの弾性が強くなる。
【0023】
本実施形態では、結晶性樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂を好適に使用することができる。結晶性ポリエステル樹脂は、結着樹脂を100質量部としたときに、2質量部以上40質量部以下含むことが好ましく、2質量部以上20質量部以下含むことがより好ましい。
【0024】
結晶性ポリエステル樹脂は、融解温度が50℃以上100℃以下であることが好ましく、55℃以上90℃以下であることがより好ましく、60℃以上85℃以下であることがさらに好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度が50℃以上である場合、画像が形成された用紙の保管時に用紙上のトナーが溶融しにくくなる。
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度が100℃以下である場合、トナーの低温定着性が向上する。
なお、融解温度は、DSCにより得られたDSC曲線から、JIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の「融解温度の求め方」に記載の「融解ピーク温度」に基づいて求められる。
結晶性ポリエステル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が、6000以上35000以下であることが好ましい。
【0025】
本実施形態で用いられる結晶性ポリエステル樹脂としては、特に限られるものではないが、多価カルボン酸と多価アルコールとを重縮合することで生成する重縮合体を好適に使用することができる。なお、結晶性ポリエステル樹脂として、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
本実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂として、芳香族化合物を含む重合性単量体よりも、直鎖状の脂肪族化合物を含む重合性単量体を用いて生成する重縮合体を使用することが好ましい。直鎖状の脂肪族化合物を含む重合性単量体を用いて生成する重縮合体では、結晶構造が形成されやすくなる。
【0026】
本実施形態で用いられる多価カルボン酸としては、特に限られるものではないが、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸など)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸等の二塩基酸など)、これらの無水物又はこれらの低級(例えば、炭素数が1以上5以下の)アルキルエステルなどが挙げられる。
【0027】
多価カルボン酸として、ジカルボン酸とともに架橋構造又は分岐構造を有する3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、芳香族カルボン酸(1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸など)やこれらの無水物、又はこれらの低級(例えば、炭素数が1以上5以下の)アルキルエステルなどが挙げられる。さらに、多価カルボン酸として、ジカルボン酸とともに、スルホン酸基を有するジカルボン酸や、エチレン性二重結合を有するジカルボン酸を併用してもよい。
多価カルボン酸として、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0028】
本実施形態で用いられる多価アルコールとしては、特に限られるものではないが、脂肪族ジオール(主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型ジオール)が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールを用いることが好ましい。
【0029】
多価アルコールとして、ジオールとともに、架橋構造又は分岐構造を有する3価以上のアルコールを併用してもよい。3価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
多価アルコールとして、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。多価アルコールとして二種以上を併用する場合、全ての多価アルコールに対する脂肪族ジオールの物質量の割合を80%以上とすることが好ましく、90%以上とすることがより好ましい。
【0030】
(非晶性樹脂)
非晶性樹脂とは、DSCにおいて比較的緩やかな吸熱ピークを有する樹脂である。より具体的には、非晶性樹脂とは、10℃/分の昇温速度でDSCを行った場合に、吸熱ピークの半値幅が10℃を超える樹脂である。
本実施形態では、非晶性樹脂として、非晶性ポリエステル樹脂を好適に使用することができる。
【0031】
非晶性ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が、50℃以上80℃以下であることが好ましく、50℃以上65℃以下であることがより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、DSCにより得られたDSC曲線から、JIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の「ガラス転移温度の求め方」に記載の「補外ガラス転移開始温度」に基づいて求められる。
【0032】
非晶性ポリエステル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂は、数平均分子量(Mn)が、2000以上100000以下であることが好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂は、分子量分布(Mw/Mn)が、1.5以上100以下であることが好ましく、2以上60以下であることがより好ましい。
【0033】
なお、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)により測定する。測定装置として東ソー株式会社製のHLC(登録商標)-8120GPC、TSKgel(登録商標) SuperHM-M(15cm)を使用し、THF溶媒下で、GPCによる分子量測定が行われる。この測定結果から、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を用いて、重量平均分子量および数平均分子量が算出される。
【0034】
本実施形態で用いられる非晶性ポリエステル樹脂としては、特に限られるものではないが、多価カルボン酸と多価アルコールとを重縮合することで生成する重縮合体を使用することができる。
非晶性ポリエステル樹脂として、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0035】
本実施形態で用いられる多価カルボン酸としては、特に限られるものではないが、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸など)、脂環式ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸など)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)、これらの無水物又はこれらの低級(例えば、炭素数が1以上5以下の)アルキルエステルなどが挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸を使用することが好ましい。
【0036】
多価カルボン酸として、ジカルボン酸とともに架橋構造又は分岐構造を有する3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば、炭素数が1以上5以下の)アルキルエステルなどが挙げられる。
多価カルボン酸として、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0037】
本実施形態で用いられる多価アルコールとしては、特に限られるものではないが、脂肪族ジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなど)、脂環式ジオール(シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなど)、芳香族ジオール(ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物など)が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジオールおよび脂環式ジオールが好ましく、芳香族ジオールがより好ましい。
【0038】
多価アルコールとして、ジオールとともに、架橋構造又は分岐構造を有する3価以上のアルコールを併用してもよい。3価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
多価アルコールとして、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0039】
(結晶核剤)
トナーには、結晶核剤が含まれていてもよい。
結晶核剤は、結晶性樹脂と結合することで結晶性樹脂と非晶性樹脂との相分離を促進させる。結晶核剤と結晶性樹脂との距離が近くなるにしたがって、結晶性樹脂と非晶性樹脂との相分離が促進される。
本実施形態で用いられる結晶核剤としては、特に限定されないが、安息香酸金属塩(安息香酸ナトリウムなど)、ステアリン酸金属塩(ステアリン酸ナトリウムなど)、リン酸エステル金属塩(ナトリウムビス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフェートなど)、シュウ酸金属塩(シュウ酸カルシウムなど)、ソルビトール系化合物(ジベンジリデンソルビトールなど)、カーボンブラック、金属酸化物(シリカなど)、カオリン、タルクなどが挙げられる。これらの中でも、金属塩化合物を用いることがより好ましい。
【0040】
(着色剤)
着色剤としては、顔料または染料を使用することができる。
本実施形態で用いられる顔料としては、特に限定されないが、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウォッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどが挙げられる。
本実施形態で用いられる染料としては、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などが挙げられる。
【0041】
着色剤は、表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。
着色剤は、トナーを100質量部としたときに、1質量部以上30質量部以下含まれていることが好ましく、3質量部以上15質量部以下含まれていることがより好ましい。
【0042】
(離型剤)
本実施形態で用いられる離型剤としては、特に限定されないが、炭化水素系ワックス、天然ワックス(カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックスなど)、合成又は鉱物・石油系ワックス(モンタンワックスなど)、エステル系ワックスなどが挙げられる。
【0043】
離型剤は、融解温度が、50℃以上110℃以下であることが好ましく、60℃以上100℃以下であることがより好ましい。
なお、融解温度は、DSCにより得られたDSC曲線から、JIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の「融解温度の求め方」に記載の「融解ピーク温度」に基づいて求められる。
離型剤は、トナーを100質量部としたときに、1質量部以上20質量部以下含まれていることが好ましく、5質量部以上15質量部以下含まれていることがより好ましい。
【0044】
<トナーの特性>
本実施形態で用いられるトナーは、加熱溶融後において、粘弾性が変化する。具体的には、トナーが加熱溶融した直後では、トナーに含まれる結晶性樹脂と非晶性樹脂とが相溶しており、この状態ではトナーの粘性が強いが、その後トナーの温度が低下し結晶性樹脂と非晶性樹脂との相分離が進行するにしたがって、トナーの弾性がより強くなる。
トナーは、加熱溶融後において、結晶性樹脂と非晶性樹脂との相分離が過度に遅くならず且つ過度に速くならない範囲で進行することで、粘性および弾性が過度に遅くならず且つ過度に速くならない速さの範囲で変化することが好ましい。
【0045】
トナーの加熱溶融後において結晶性樹脂と非晶性樹脂との相分離の進行が過度に遅いと、トナーの弾性への変化が過度に遅くなり、加熱溶融後もトナーの弾性が強くならずに粘性が強い状態が続く場合がある。トナーの粘性が強い場合、このトナーは、接触したものに移りやすくなる。
そのため、例えば、画像形成装置1(
図1参照)において一の用紙Pに定着処理が行われ一の用紙Pが排出トレイ130に排出されてもこの一の用紙P上のトナーの粘性が強く、一の用紙Pの上に積載される他の用紙Pに、一の用紙P上のトナーが移るおそれがある。
【0046】
トナーの加熱溶融後において結晶性樹脂と非晶性樹脂との相分離の進行が過度に速いと、トナーの弾性への変化が過度に速くなり、加熱溶融後すぐにトナーの弾性が強くなることがある。トナーの弾性が過度に強くなると、トナーの脆性も強くなることがある。
そのため、例えば、画像形成装置1(
図1参照)において用紙Pに定着処理が行われた後、後処理装置2による後処理としてこの用紙Pを折り曲げる際に、用紙Pの折り曲がり部に形成された画像が欠けるおそれがある。より具体的には、用紙Pに曲げ応力が加わると用紙Pとともにこの用紙Pに形成された画像も曲がるが、トナーの脆性が大きい場合、画像が曲がり切らずに欠けるおそれがある。
【0047】
また、トナーは、加熱溶融後に50℃以上60℃以下の温度で熱処理が行われた場合に、熱処理前よりも熱処理後の方が、粘性および弾性が過度に遅くならず且つ過度に速くならない速さの範囲で速く変化することが好ましい。
50℃以上60℃以下の温度とは、例えば、画像形成装置1(
図1参照)における用紙Pの定着処理後、後処理装置2により用紙Pに後処理が施される際や、後処理後に用紙Pが排出トレイ130まで搬送される際に用紙Pが存在する環境下における温度である。この温度環境下でトナーの粘性および弾性が過度に遅くならず且つ過度に速くならない速さの範囲で変化することにより、上述した後処理装置2による用紙Pの折り曲げ時や、用紙Pの排出トレイ130への排出後にこの用紙P上の画像が欠けることが抑制される。
【0048】
また、トナーは、加熱溶融後に50℃以上60℃以下の温度で熱処理がなされた場合に、加熱溶融後且つ熱処理前の損失係数tanδ1を熱処理後の損失係数tanδ2で除した値(tanδ1/tanδ2)が、2以上6以下であることが好ましく、2.2以上5.1以下であることがより好ましく、3以上5以下であることがさらに好ましい。
【0049】
ここで、損失係数tanδとは、トナーの粘弾性を表す指標であり、トナーの損失弾性率を貯蔵弾性率で除した値(損失弾性率と貯蔵弾性率との比)である。損失係数tanδが大きいほど、トナーの粘性が強い。また、熱処理前の損失係数tanδ1を熱処理後の損失係数tanδ2で除した値(tanδ1/tanδ2)が大きいほど、トナーがより粘性的な状態からより弾性的な状態に変化する速度が大きい。
なお、以下では、加熱溶融後且つ熱処理前のトナーの損失係数tanδ1を熱処理後のトナーの損失係数tanδ2で除した値を、損失係数比(tanδ1/tanδ2)と称する。
【0050】
トナーの加熱溶融後に50℃以上60℃以下の温度で熱処理がなされた場合において、損失係数比(tanδ1/tanδ2)が2よりも小さいと、加熱溶融後のトナーの弾性の変化速度が過度に小さくなる。この場合、加熱溶融後もトナーの弾性が強くならずに粘性が強い状態が続きやすい。そのため、前述のトナーの移りがより発生しやすい。
トナーの加熱溶融後に50℃以上60℃以下の温度で熱処理がなされた場合において、損失係数比(tanδ1/tanδ2)が6よりも大きいと、加熱溶融後のトナーの弾性の変化速度が過度に大きくなる。この場合、加熱溶融後すぐにトナーの弾性が強くなるとともにトナーの脆性も強くなりやすい。そのため、画像の欠けが発生しやすくなる。
【0051】
また、熱処理前におけるトナーの損失係数tanδ1は、0.7以上1.5以下であることが好ましく、0.8以上1.1以下であることがより好ましい。
熱処理前におけるトナーの損失係数tanδ1が0.7よりも小さいと、熱処理前であってもトナーの弾性が強く、熱処理後にトナーの弾性がさらに強くなるとともにトナーの脆性も強くなりやすい。
熱処理前におけるトナーの損失係数tanδ1が1.5よりも大きいと、熱処理前におけるトナーの粘性が過度に強く、熱処理を行ってもトナーの粘性が強い状態が続きやすい。
熱処理前におけるトナーの損失係数tanδ1が0.8以上1.1以下であると、トナーの加熱溶融後において前述のトナーの移りや画像の欠けが発生しにくくなる。
【0052】
また、トナーの加熱溶融後においてトナーの粘性および弾性が過度に速くならず且つ過度に遅くならない速さの範囲で変化するように、トナーに含まれる結晶性樹脂と非晶性樹脂との混合比が定められることが好ましい。言い換えると、トナーに含まれる結晶性樹脂と非晶性樹脂との混合比は、損失係数比(tanδ1/tanδ2)が2以上6以下になるように定められることが好ましい。
【0053】
トナー中の結晶性樹脂の含有量が過度に少ない場合、トナーの加熱溶融後において結晶性樹脂と非晶性樹脂との相分離が進行し難くなり、損失係数比(tanδ1/tanδ2)が2よりも小さくなりやすい。また、前述した低温定着性が低下しやすい。
結晶性樹脂の含有量が過度に多い場合、トナーの加熱溶融後において結晶性樹脂と非晶性樹脂との相分離の進行が過度に速くなり、損失係数比(tanδ1/tanδ2)が6よりも大きくなりやすい。
【0054】
また、結晶核剤を用いてトナーを製造する場合、一の溶液中に、結晶性樹脂と、非晶性樹脂と、結晶核剤とが分散した分散液(以下、混合分散液と称する)を用いてトナーを製造することが好ましい。
【0055】
結晶性樹脂が分散した分散液とは別に結晶核剤を用いてトナーを製造する場合、トナー中において、結晶性樹脂と、非晶性樹脂と、結晶核剤とがそれぞれ偏在しやすくなる。この場合、トナーの加熱溶融後において結晶性樹脂と非晶性樹脂との相分離が進行しにくくなる。そのため、トナー中の結晶核剤および結晶性樹脂の含有量を多くしても、トナーの損失係数比(tanδ1/tanδ2)が2よりも大きくなりにくい場合がある。
結晶性樹脂と結合した結晶核剤を用いる場合、結晶性樹脂と非晶性樹脂との相分離が著しく促進され、トナーの損失係数比(tanδ1/tanδ2)が6よりも大きくなりやすい。
【0056】
混合分散液を用いてトナーを製造する場合、トナー中において、結晶性樹脂、非晶性樹脂および結晶核剤は、互いに近過ぎず且つ遠過ぎない位置に存在するようになる。この場合、結晶性樹脂と非晶性樹脂との相分離は進行するものの、結晶核剤を用いない場合に比べて相分離の進行は遅くなる。したがって、混合分散液を用いてトナーを製造する場合、トナー中の結晶性樹脂の含有量を増やしても、損失係数比(tanδ1/tanδ2)が6より大きくなりにくくなる。
この場合、トナーの低温定着性が向上するとともに、加熱溶融後においてトナーの粘性および弾性が過度に速く又は過度に遅くならない速さの範囲で変化する。
【0057】
また、結着樹脂に結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とが含まれる場合、この結晶性ポリエステル樹脂のSP値と非晶性ポリエステル樹脂のSP値との差の絶対値は、0.5以上1.0以下であることが好ましい。
ここで、SP値とは、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂との溶解度を表す指標である。SP値は、下式(1)で定義される。
【0058】
【0059】
式(1)において、ΔEは凝集エネルギー(cal/mol)を表し、Vはモル体積(cm3/mol)を表し、Δeiはi番目の原子又は原子団の蒸発エネルギー(cal/原子又は原子団)を表し、Δviはi番目の原子又は原子団のモル体積(cm3/原子又は原子団)を表し、iは1以上の整数を表す。
【0060】
結晶性ポリエステル樹脂のSP値と非晶性ポリエステル樹脂のSP値との差の絶対値が0.5以上である場合、画像が形成された用紙の保管時に用紙上のトナーが溶融しにくくなる。
結晶性ポリエステル樹脂のSP値と非晶性ポリエステル樹脂のSP値との差の絶対値が1.0以下である場合、トナーの低温定着性が向上する。
【0061】
<トナーの製造方法>
続いて、トナーの製造方法について説明する。
まず、結晶性樹脂粒子と非晶性樹脂粒子と結晶核剤粒子とが分散した混合樹脂粒子分散液、着色剤粒子が分散した着色剤粒子分散液、および離型剤粒子が分散した離型剤粒子分散液を準備する(分散液準備工程)。
【0062】
次に、混合樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液とを混合してトナー原料液を調製する。
続いて、トナー原料液中で、結晶性樹脂粒子と、非晶性樹脂粒子と、結晶核剤粒子と、着色剤粒子と、離型剤粒子とをヘテロ凝集させ、結晶性樹脂粒子と、非晶性樹脂粒子と、結晶核剤粒子と、着色剤粒子と、離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する(凝集工程)。
具体的には、トナー原料液に凝集剤を添加するとともに混合液のpHを酸性に調整し、樹脂粒子のガラス転移温度に加熱することで、トナー原料液中で分散した粒子を凝集させて凝集粒子を形成する。
【0063】
次に、凝集粒子が形成された溶液を樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱することで、凝集粒子を融合させ、トナー粒子を形成する(形成工程)。
以上の工程により、結晶性樹脂と、非晶性樹脂と、結晶核材とが分散したトナーが得られる。このトナーによれば、50℃以上60℃以下で熱処理を行った場合におけるトナーの損失係数比(tanδ1/tanδ2)が2以上6以下となる。そのため、トナーの加熱溶融後、50℃以上60℃以下の温度により熱処理を行った場合に、トナーの粘弾性の変化速度を、過度に粘性が強い状態や脆性が強い状態にならない速さの範囲に定められる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。本発明は、その要旨を越えない限りこれらの実施例により限定するものではない。
【0065】
トナーを作製し、評価を行った。なお実施条件および評価結果を下記表1に示す。
〔非晶性ポリエステル樹脂の調製〕
まず、非晶性ポリエステル樹脂を調製するために、以下のモノマーを準備した。
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2.2モル付加物 :230質量部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2.2モル付加物 :367質量部
・テレフタル酸ジメチル :163質量部
・フマル酸ジメチル :12質量部
・ドデセニルコハク酸無水物 :227質量部
・トリメリット酸無水物 :20質量部
【0066】
次に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2.2モル付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2.2モル付加物、テレフタル酸ジメチル、およびドデセニルコハク酸無水物を容器に投入するとともに、ジオクタン酸スズを2.55質量部投入した。続いて、窒素ガス気流下において、235℃で投入した試料を6時間反応させた後、フマル酸ジメチルとトリメリット酸無水物とを投入して200℃で1時間反応させた。さらに、5時間かけて温度を220℃まで昇温し、10kPaの圧力下でモノマーを重合し、透明性のある淡黄色の非晶性ポリエステル樹脂を得た。
調製した非晶性ポリエステル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が35000、数平均分子量(Mn)が8000、ガラス転移温度(Tg)が59℃であった。
【0067】
〔結晶性ポリエステル樹脂の調製〕
まず、結晶性ポリエステル樹脂を調整するために、以下のモノマーを準備した。
・1,10-ドデカン二酸 :225質量部
・1,6-ヘキサンジオール :118質量部
【0068】
次に、上記二つのモノマーを容器に投入し、容器中の空気を乾燥窒素ガスで置換した後、チタンテトラブトキサイドを0.86質量部投入した。続いて、窒素ガス気流下において、170℃で3時間攪拌した。さらに、1時間かけて温度を210℃まで昇温し、容器内を3kPaまで減圧して13時間攪拌し、結晶性ポリエステル樹脂を得た。
調製した結晶性ポリエステル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が25000、数平均分子量(Mn)が10500、酸価が10.1mgKOH/g、DSCにより算出された融解温度が73.6℃であった。
【0069】
〔混合樹脂粒子分散液(1)の調整〕
まず、上記の非晶性ポリエステル樹脂75質量部と、結晶性ポリエステル樹脂25質量部と、結晶核剤としての株式会社ADEKA製の「NA-05」5質量部とを、株式会社ユーロテック製のキャビトロンCD1010を高温高圧型に改良した分散器を用いて分散した。
【0070】
次に、分散器に投入した試料の質量パーセント濃度が1/5になるまでイオン交換水を投入し、アンモニアを用いてpHを8.5に調整し、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5Kg/cm2、140℃の条件で分散器を運転し、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂と、結晶核材との混合液を調製した。
調製した混合液における樹脂粒子の体積平均粒径は、130nmであった。この混合液にイオン交換水を加え、固形分量が20%になるように調整した混合樹脂粒子分散液(1)を得た。
【0071】
〔混合樹脂粒子分散液(2)の調整〕
非晶性ポリエステル樹脂を85質量部、結晶性ポリエステル樹脂を15質量部、NA-05を2.4質量部とした以外は、混合樹脂粒子分散液(1)の調製方法と同様の方法により、混合樹脂粒子分散液(2)を調製した。
【0072】
〔混合樹脂粒子分散液(3)の調整〕
非晶性ポリエステル樹脂を80質量部、結晶性ポリエステル樹脂を20質量部、NA-05を2.2質量部とした以外は、混合樹脂粒子分散液(1)の調製方法と同様の方法により、混合樹脂粒子分散液(3)を調製した。
【0073】
〔混合樹脂粒子分散液(4)の調整〕
非晶性ポリエステル樹脂を75質量部、結晶性ポリエステル樹脂を25質量部、NA-05を5.5質量部とした以外は、混合樹脂粒子分散液(1)の調製方法と同様の方法により、混合樹脂粒子分散液(4)を調製した。
【0074】
〔非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の調製〕
非晶性ポリエステル樹脂を100質量部として、結晶性ポリエステル樹脂およびNA-05を用いない以外は、混合樹脂粒子分散液(1)の調製方法と同様の方法により、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を調製した。
【0075】
〔結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の調製〕
結晶性ポリエステル樹脂を100質量部として、非晶性ポリエステル樹脂およびNA-05を用いない以外は、混合樹脂粒子分散液(1)の調製方法と同様の方法により、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を調製した。
【0076】
〔黒顔料分散液の調製〕
まず、黒顔料分散液を調製するために、以下の試料を準備した。
・カーボンブラック(キャボットコーポレーション製のRegal330):250質量部
・アニオン系界面活性剤(第一工業製薬株式会社製のネオゲン(登録商標)SC):33質量部
・イオン交換水 :750質量部
【0077】
次に、イオン交換水280質量部とアニオン系界面活性剤33質量部とを容器に投入した。界面活性剤を溶解させた後、Regal330を250質量部投入し、撹拌機を用いて濡れていない顔料がなくなるまで攪拌するとともに脱泡させた。脱泡後、残りのイオン交換水を加え、ホモジナイザー(IKAジャパン株式会社製のウルトラタラックス(登録商標)T50)を用いて5000回転で10分間攪拌してRegal330を分散した後、撹拌機で1日間攪拌し脱泡させた。脱泡後、再度ウルトラタラックスT50を用いて、6000rpmで10分間攪拌してRegal330を分散した後、撹拌機で1日間攪拌し脱泡させた。
【0078】
続いて、高圧衝撃式分散機アルティマイザー(株式会社スギノマシン製のHJP30006)を用いて、240MPaの圧力でRegal330を分散し混合液を得た。得られた混合液を72時間放置して沈殿物を除去し、イオン交換水を加え、固形分濃度が15%になるように調整した黒顔料分散液を得た。
得られた黒顔料分散液中の粒子の体積平均粒径は、135nmであった。
【0079】
〔離型剤分散液の調製〕
まず、離型剤分散液を調製するために、以下の試料を準備した。
・ポリエチレン系ワックス(ベーカーペトロライト社製のポリワックス(登録商標)725):270質量部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬株式会社製のネオゲンRK):13.5質量部
・イオン交換水 :21.6質量部
【0080】
次に、上記の三つの試料を混合し、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製のゴーリンホモジナイザー)を用いてポリワックスを溶解し、5MPaの圧力で120分間ポリワックスの分散処理を行った後、40MPaで360分間分散処理し混合液を得た。得られた混合液を冷却し、イオン交換水を加えて固形分濃度が20.0%になるように調整した離型剤分散液を得た。
得られた離型剤分散液中の粒子の体積平均粒径は、225nmであった。
【0081】
〔トナーの作製〕
(実施例1)
本実施例のトナーを作製するために、以下の試料を準備した。
・混合樹脂粒子分散液(1) :811質量部
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液 :349質量部
・結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液 :90質量部
・黒顔料分散液 :160質量部
・離型剤分散液 :60質量部
・イオン交換水 :600質量部
・アニオン性界面活性剤(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製のDowfax(登録商標)2A1):2.9質量部
【0082】
次に、容器に上記の試料を全て投入し、濃度1.0%の硝酸を添加してpHを3.0に調整した後、ウルトラタラックスT50を用いて回転速度3000rpmで攪拌して分散処理を行いながら、濃度2%の硫酸アルミニウム水溶液を100質量部添加した。その後、回転速度を5000rpmに上げて5分間攪拌した。
続いて、0.2℃/分の昇温速度で40℃まで昇温した後に、0.05℃/分の昇温速度で53℃まで昇温して第1凝集粒子を形成するとともに、10分ごとにマルチサイザー2(ベックマン・コールター社製)により粒径を測定した。第1凝集粒子の体積平均粒径が5.0μmになったところで温度を維持し、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液70質量部を5分間かけて投入した。
【0083】
次に、容器内の溶液を50℃で30分間保持した後、濃度20%のEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を8質量部添加した。さらに、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加え、容器内の溶液のpHを9.0に調整した。
続いて、溶液のpHを9.0に維持しながら、1℃/分の昇温速度で90℃まで昇温し、光学顕微鏡および電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて粒子の合一を確認したところで、容器内の溶液を冷却水で30℃まで冷却した。
【0084】
次に、目開き15μmのナイロンメッシュに冷却後のトナースラリーを通過させて粗大粉を除去し、ナイロンメッシュを通過したトナースラリーをアスピレータにより減圧濾過した。濾紙上に残った固形分を粉砕し、30℃のイオン交換水に投入して30分間攪拌混合した後、再びアスピレータを用いて減圧濾過し、濾液の電気伝導度を測定した。濾液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、固形分を洗浄した。
洗浄した固形分を湿式乾式整粒機(コーミル)で粉砕し、オーブンにより35℃で36時間真空乾燥してトナー粒子を得た。このトナー粒子は、体積平均粒径が6.0μmであった。
【0085】
続いて、トナー粒子100質量部に対して、体積平均粒径が20nmの疎水性シリカ1.5質量部を加え、ミキサーを用いて周速33m/sで3分間混合した。
以上の工程により本実施例のトナーを作製した。
【0086】
(実施例2~10)
実施例1に対し、表1に示すように変更を行った以外は、実施例1と同様にしてトナーを作製した。
【0087】
(比較例1~3)
実施例1に対し、表1に示すように変更を行った以外は、実施例1と同様にしてトナーを作製した。
つまり比較例1では、トナーの作製にあたり結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を用いていない。
また、比較例2、3では、トナーの作製にあたり混合樹脂粒子分散液を用いていない。
【0088】
〔熱処理前における損失係数tanδ1の測定方法〕
実施例1~10および比較例1~3のトナーについて、熱処理前における損失係数tanδ1を測定した。
具体的には、まず、トナーを130℃のホットプレート上で円柱状に溶融成型した後、30℃まで降温した。次に、回転平板型レオメータ(レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー株式会社製のRDA 2RHIOSシステム Ver.4.3.2)を用いて、昇温速度1℃/min、周波数1rad/sec、歪み20%以下として、測定保証値範囲内の検出トルクにより、貯蔵弾性率および損失弾性率を測定した。得られた測定値から、熱処理前における損失係数tanδ1を算出した。
【0089】
〔熱処理後における損失係数tanδ2の測定方法〕
実施例1~10および比較例1~3のトナーについて、熱処理後における損失係数tanδ2を測定した。
具体的には、まず、トナーを130℃のホットプレート上で円柱状に溶融成型した後、50℃まで降温して2時間保持した。次に、ホットプレートを30℃まで降温し、熱処理前における損失係数tanδ1の測定方法と同様の方法により、貯蔵弾性率および損失弾性率を測定した。得られた測定値から、熱処理後における損失係数tanδ2を算出した。
【0090】
実施例1~10および比較例1~3のトナーについての評価として、低温定着性の評価、折り曲げ画像強度の評価、耐摩擦性の評価、耐熱性の評価を行った。なお、何れの評価も、用紙に画像を形成してから24時間以内に行った。
【0091】
【0092】
〔用紙への画像形成〕
実施例1~10および比較例1~3のトナーを用いて、用紙への画像形成を行った。
具体的には、富士ゼロックス株式会社製のApeosPort-V C7775の改造機における現像器にトナーを充填し、用紙へのトナーの積載量を1.0mg/cm2として設定した。また、用紙の先端部と後端部とに画像濃度が100%のベタ画像および画像濃度が30%のハーフトーン画像を形成し、定着器の温度を140℃に設定して定着処理を行った。
【0093】
用紙としては、富士ゼロックス株式会社製のPremierTCF(80g/m2)、OKプリンス(104g/m2)、OKトップコート(104g/m2)の三種類を用いた。これらの用紙のうち、表面が最も粗いものはPremierTCFであり、表面が最も平滑であるものはOKトップコートである。
以下の評価ごとに、温度が15℃、湿度が10%の低温低湿環境下、および温度が25℃、湿度が50%の通常環境下において、上記した三種類の用紙を1000枚ずつ出力した。
【0094】
〔低温定着性の評価〕
実施例1~10および比較例1~3のトナーについての低温定着性を評価した。
具体的には、用紙の先端部および後端部に形成されたベタ画像を目視で観察し、画像の欠陥の具合を評価した。なお、評価基準は以下の通りである。以下の評価基準のうち、◎、○および△の評価を合格とし、×の評価を不合格とした。
◎:画像の欠陥は全く確認されなかった
○:画像の欠陥がごく僅かに確認されたが、使用上問題ない
△:画像の欠陥が僅かに確認された
×:画像の欠陥が確認された
なお、坪量が大きく厚い用紙ほど、定着処理にて画像に与えられる熱が用紙に分散しやすくなるため、低温定着性が低下しやすくなる。また、表面が粗い用紙ほど、用紙上のトナーに熱が均一に伝わりにくくなるため、低温定着性が低下しやすくなる。
【0095】
〔折り曲げ画像強度の評価〕
実施例1~10および比較例1~3のトナーについて折り曲げ画像強度を評価した。
具体的には、用紙のうちベタ画像が形成された部分を山折りし、山折りした用紙の上から10g/cm2の圧力を1分間かけた。その後、山折りを開き、折れた部分をガーゼでなぞるように拭いたときの画像の欠陥の具合を評価した。なお、評価基準は以下の通りである。以下の評価基準のうち、◎、○および△の評価を合格とし、×の評価を不合格とした。
◎:画像の欠陥は全く確認されなかった
○:画像の欠陥がごく僅かに確認されたが、使用上問題ない
△:ひび割れ状(幅が500μm以下)の画像の欠陥が確認された
×:ひび割れ状(幅が500μmを超える)の画像の欠陥が確認された
【0096】
画像形成システム500(
図1参照)では、後処理装置2により用紙の折り処理を行う際に、用紙のうち画像が形成された部分を折り曲げることがある。また、折り処理後に用紙を搬送する際に、搬送ロール(不図示)が用紙のうち画像が形成された部分を通ることがある。
そこで、用紙のうち画像が形成された部分を折り曲げさらに折り曲げた部分をガーゼで拭いたときの画像の欠陥の評価を、用紙の折り処理および搬送処理を行った場合における画像の強度の評価とした。
【0097】
〔評価結果〕
低温定着性の評価結果を表2に示す。
表2に示すように、実施例1~10のトナーについては、いずれの環境下およびいずれの用紙で評価されたものも全て合格であった。
また、比較例2、3のトナーについては、いずれの環境下およびいずれの用紙で評価されたものも全て合格であった。
【0098】
その一方で、比較例1のトナーについては、低温低湿環境下でOKトップコートの用紙に形成された画像の欠陥が確認された。
これについて、比較例1では、トナーの作製にあたり結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を用いていないために低温定着性が低くなったものと考えられる。
【0099】
【0100】
折り曲げ画像強度の評価結果を表3に示す。
表3に示すように、実施例1~10のトナーについては、いずれの環境下およびいずれの用紙で評価されたものも全て合格であった。
また、比較例1のトナーについては、いずれの環境下およびいずれの用紙で評価されたものも全て合格であった。
【0101】
その一方で、比較例2、3のトナーについては、低温低湿環境下でOKプリンスの用紙に、ひび割れ状(幅が500μmを超える)の画像の欠陥が確認された。
これについて、比較例2、3では、トナーの作製にあたり結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を用いた一方で混合樹脂粒子分散液を用いていないため、トナーの損失係数比(tanδ1/tanδ2)が6よりも大きい。そのため、トナーの弾性が強くなるとともに脆性が強くなり、用紙上の画像が曲げ応力を受けてひび割れたものと考えられる。
【0102】
【0103】
実施例1~10および比較例1~3の結果により、トナーの損失係数比(tanδ1/tanδ2)を2以上6以下にすることで、加熱溶融後にトナーの粘弾性が変化する速度を、過度に遅くならず且つ過度に速くならない範囲に定めることが必要であると確認された。
【符号の説明】
【0104】
1…画像形成装置、2…後処理装置、120…トナーカートリッジ、500…画像処理システム