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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】分解処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/08 20060101AFI20240116BHJP
   H05H 1/34 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B01J19/08 E
H05H1/34
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022171053
(22)【出願日】2022-10-26
(62)【分割の表示】P 2020555633の分割
【原出願日】2019-11-08
(65)【公開番号】P2023017815
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2018210462
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516005636
【氏名又は名称】株式会社HELIX
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100174528
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 晋朗
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】矢口 博文
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-121599(JP,A)
【文献】特開2008-055414(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0168466(US,A1)
【文献】特開2015-063752(JP,A)
【文献】特開平05-084579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/08
H05H 1/00- 1/54
B05B 7/22
C23C 4/00
B09B 1/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
渦水流の内部にアーク放電を通過させて水プラズマを噴射する水プラズマ発生装置と、
前記水プラズマのジェット気流に分解対象物を供給する供給装置とを備え、前記水プラズマによって前記分解対象物を分解処理する分解処理装置であって、
前記水プラズマ発生装置は、内部で前記渦水流を形成して噴射口から前記水プラズマを噴射するするチャンバと、前記チャンバ内の前記渦水流を通過するアーク放電を発生させる陽極及び陰極とを備え、前記陽極は前記チャンバの外側における前記噴射口の近傍位置に設けられ、
前記供給装置は、前記水プラズマの噴射方向に延びる筒状に形成されて内部に該水プラズマが導入される本体部と、前記本体部を冷却する冷却部と、前記本体部に接続され、前記本体部の内部に前記分解対象物を供給する材料供給路とを備え、前記チャンバから離れた該チャンバの外部に設けられ、
前記本体部にて前記水プラズマが導入される内周面は、前記噴射口から離れるに従って前記本体部の中心軸線に近付くテーパ面によって形成され
前記本体部は、内周面を形成する内側筒部と、外周面を形成する外側筒部とを備えた二重筒状に形成され、
前記冷却部は、前記材料供給路の外周側との間に空間を形成しつつ覆うように設けられた接続管と、冷却水が流れる冷却空間とを備え、
前記冷却空間は、前記本体部と、前記材料供給路における前記本体部との接続箇所とに亘る領域に連通して形成され、且つ、前記接続管と前記材料供給路との間の空間と、前記内側筒部と前記外側筒部との間の空間とが連通して形成されることを特徴とする分解処理装置。
【請求項2】
前記材料供給路における前記本体部側の端部には、該材料供給路から該本体部へ供給される前記分解対象物が流通する供給口形成体が着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項に記載の分解処理装置。
【請求項3】
前記供給口形成体の外周面に雄ねじ部が形成され、前記材料供給路の内周面には前記雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が形成されていることを特徴とする請求項に記載の分解処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極と陽極との間で発生するアーク放電により水プラズマを噴射して分解対象物を分解処理する分解処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水プラズマを利用して廃棄物を処理する装置として、特許文献1に記載された装置が知られている。特許文献1の装置では、プラズマ安定化媒体として水を用い、アーク放電により発生される水プラズマジェット気流に焼却灰を供給して当該焼却灰を溶解している。特許文献1では、水プラズマジェット気流が水プラズマバーナの噴射口より放出され、噴射口から所定距離離れた位置には、水プラズマジェット気流の上方から焼却灰を供給する供給手段が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3408779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、水プラズマジェット気流が超高速となる上に開放した空間に噴射されるので、供給した焼却灰が水プラズマジェット気流から離れて飛散し易くなる、という問題がある。このため、焼却灰が水プラズマジェット気流の熱で十分に分解処理できなくなって分解能力が低下するため、当該分解能力について改善の余地があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、水プラズマによる分解処理の効率化を図ることができる分解処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の分解処理装置は、渦水流の内部にアーク放電を通過させて水プラズマを噴射する水プラズマ発生装置と、前記水プラズマのジェット気流に分解対象物を供給する供給装置とを備え、前記水プラズマによって前記分解対象物を分解処理する分解処理装置であって、前記水プラズマ発生装置は、内部で前記渦水流を形成して噴射口から前記水プラズマを噴射するするチャンバと、前記チャンバ内の前記渦水流を通過するアーク放電を発生させる陽極及び陰極とを備え、前記陽極は前記チャンバの外側における前記噴射口の近傍位置に設けられ、前記供給装置は、前記水プラズマの噴射方向に延びる筒状に形成されて内部に該水プラズマが導入される本体部と、前記本体部を冷却する冷却部と、前記本体部に接続され、前記本体部の内部に前記分解対象物を供給する材料供給路とを備え、前記チャンバから離れた該チャンバの外部に設けられ、前記本体部にて前記水プラズマが導入される内周面は、前記噴射口から離れるに従って前記本体部の中心軸線に近付くテーパ面によって形成され、前記本体部は、内周面を形成する内側筒部と、外周面を形成する外側筒部とを備えた二重筒状に形成され、前記冷却部は、前記材料供給路の外周側との間に空間を形成しつつ覆うように設けられた接続管と、冷却水が流れる冷却空間とを備え、前記冷却空間は、前記本体部と、前記材料供給路における前記本体部との接続箇所とに亘る領域に連通して形成され、且つ、前記接続管と前記材料供給路との間の空間と、前記内側筒部と前記外側筒部との間の空間とが連通して形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、陽極がチャンバの外側に設けられる水プラズマ発生装置を用いるにあたり、供給装置における筒状の本体部の内部に対し、水プラズマを導入しつつ分解対象物を供給することができる。従って、囲われた空間となる本体部の内部にて、分解対象物を極めて高温で飛散しないように分解処理することができる。これにより、分解対象物の分解の確実性が高まり、当該分解を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態に係る分解処理装置の側面図である。
図2】収容体及び供給装置を一部断面視した側面図である。
図3図3Aは、収容体及び供給装置を後方から見た図であり、図3Bは、収容体を前方から見た図である。
図4】供給装置の概略斜視図である。
図5図4のA-A線断面図である。
図6図4のB-B線断面図である。
図7】チャンバの側断面図である。
図8】チャンバの平面断面図である。
図9】チャンバの縦断面図である。
図10】有害廃棄物の分解処理の説明図である。
図11】第2の実施の形態に係る供給装置を側断面視した概略斜視図である。
図12】第2の実施の形態に係る供給装置の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態に係る各構成は、以下に示す構成に限定されず、適宜変更が可能である。また、以下の図においては、説明の便宜上、一部の構成を省略することがある。
【0010】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る分解処理装置の側面図である。なお、以下の説明において、特に明示しない限り、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」は、各図において矢印で示した方向を基準として用いる。但し、以下の各実施の形態での各構成の向きは、一例にすぎず、任意の向きに変更することができる。
【0011】
図1は、第1の実施の形態の分解処理装置を一部側断面した説明図である。図1に示すように、分解処理装置10は、水プラズマ発生装置11と、カバー部材12と、供給装置13とを備えて構成されている。
【0012】
水プラズマ発生装置11は、スタンド15を介して所定の高さ位置に支持されている。水プラズマ発生装置11は、前後に延びる陰極16と、陰極16の前端側が挿入されるチャンバ17と、チャンバ17の外側であって斜め下前方に設けられる鉄製円板状の陽極18と、陽極18を支持する陽極支持部19とを備えて構成されている。
【0013】
陰極16は、炭素からなる丸棒によって形成され、送りねじ軸機構21を介して前後方向に変位してチャンバ17への挿入量を調整可能となっている。チャンバ17は、陽極支持部19の上方に支持板22を介して支持されている。陽極支持部19の後端には、前後に延びる延長筒体23が連結され、延長筒体23の後端にはモータ24が設けられている。モータ24の駆動力は、延長筒体23及び陽極支持部19を通じて陽極18に伝達され、陽極18が回転可能に設けられている。
【0014】
チャンバ17には、供給ポンプ26を介して冷却水が供給され、また、高圧ポンプ27を介してプラズマ用水が供給される。プラズマ用水の一部は、チャンバ17の前端側から水プラズマとして噴射される。チャンバ17に供給された冷却水と、噴射されなかったプラズマ用水とは、真空ポンプ28を介して吸引される。陽極支持部19においても、陽極18の内部を流す冷却水が供給ポンプ26を介して供給され、陽極18にて吸熱を行った冷却水が真空ポンプ28を介して吸引される。チャンバ17の詳細な構成については後述する。
【0015】
水プラズマ発生装置11の前方には壁体30が配置され、この壁体30によって水プラズマ発生装置11が設置される空間と、水プラズマによってガス化した対象物を処理する処理空間31との間での気密性を維持している。処理空間31では、図示省略したが、例えば、シャワー装置により高アルカリ性水を噴射し、ガス化した酸性ガスを中和させている。壁体30には、筒状のカバー部材12が貫通して設けられている。
【0016】
カバー部材12は、水プラズマ発生装置11の前方に配置され、水プラズマ発生装置11から噴射される水プラズマのジェット気流を覆うように設けられる。壁体30におけるカバー部材12の貫通部分は全溶接され、壁体30によってカバー部材12が保持されるとともに、それらの間での気密性が保たれる。
【0017】
カバー部材12は、円筒状に形成される筒本体部33と、筒本体部33の後端側(水プラズマ発生装置11側)に形成される後方開口形成部34と、筒本体部33の前端側(水プラズマ発生装置11と反対側)に形成される前方開口形成部35とを備えている。筒本体部33の軸線方向は、水プラズマ発生装置11から離れるに従って低くなるように傾斜している。
【0018】
図2は、収容体及び供給装置を一部断面視した側面図である。図2に示すように、カバー部材12を構成する筒本体部33、後方開口形成部34及び前方開口形成部35は、二重構造となっており、その厚み内に冷却水が流れる単一の空間36を形成している。この空間36には、冷却水用の供給路38と排出路39とが連通している。供給路38は、筒本体部33の前方下端側に設けられ、排出路39は、後方開口形成部34の上端側に形成されている。カバー部材12では、図示しないポンプを介して供給路38から冷却水が供給され、空間36内に導入される。そして、空間36において供給路38から排出路39に流れる冷却水によって、水プラズマによって発生した熱が吸収され、カバー部材12の冷却作用が得られる。
【0019】
図3Aは、収容体及び供給装置を後方から見た図であり、図3Bは、収容体を前方から見た図である。図3Aに示すように、後方開口形成部34に形成される開口34aは、供給装置13の一部を収容し得るよう、供給装置13の形状に対応した開口形状に形成されている。図3Bに示すように、前方開口形成部35に形成される開口35aは、前方開口形成部35の上半部領域に形成されて下端部が水平方向に沿って延在している。従って、図1に示すように、カバー部材12内における前方開口形成部35と筒本体部33との下側コーナー部に貯留空間41が形成される。この貯留空間41には、水プラズマによって分解処理されなかった有害廃棄物が貯留され、前方開口形成部35の下部を貫通する通路42を介して排出される。
【0020】
図4は、供給装置の概略斜視図である。供給装置13は、前後方向に延びる筒状に形成された本体部45と、本体部45に接続されて該本体部45の内部に粒状や粉状、液状の有害廃棄物(分解対象物)を供給する材料供給路46とを備えている。また、供給装置13は、本体部45と材料供給路46の一部とを冷却する冷却部47を備えている。
【0021】
図5は、図4のA-A線断面図である。図5に示すように、本体部45は、内周面を形成する内側筒部50と、外周面を形成する外側筒部51とを備えた二重筒状に形成されている。内側筒部50の前後両端側は、当該前後両端から中央に向かうに従って本体部45の中心軸線に近付くテーパ面50aによって形成されている。テーパ面50aは、本体部45の中心軸線に向かって膨らむように湾曲した形状に形成されている。
【0022】
図6は、図4のB-B線断面図である。図6に示すように、材料供給路46は上下方向に延びる円筒状に形成されており、上端部が本体部45の外側筒部51を貫通して内側筒部50の内部に開口しつつ連通している。材料供給路46の上端部は、長円若しくは楕円形状となって前後方向に細長くなるように開口している(図5参照)。材料供給路46の上端部と内側筒部50との連通部分は全溶接され、それらの間での気密性、液密性が保たれる。
【0023】
材料供給路46の下端部は、不図示の配管等を介して送出装置53(図2参照)に接続されており、送出装置53から粒状や粉状、液状の有害廃棄物が材料供給路46に送出される。材料供給路46に送出された有害廃棄物は、材料供給路46の上端部から本体部45の内部に供給されるようになる。なお、材料供給路46には、不図示の循環手段を介してカバー部材12の通路42(図2参照)から排出された有害廃棄物も再度投入される。
【0024】
図4に戻り、冷却部47は、材料供給路46の上端側が貫通される接続管55と、接続管55に連通して左右方向に延びる供給管56と、本体部45における外側筒部51の前側に連通する排出管57とを備えている。
【0025】
排出管57は、1本の管部材を2箇所位置で略直角方向に屈曲させた形状に設けられている。言い換えると、排出管57は、一端部(左端部)が本体部45に接続されて左右方向延びる横行部57aと、横行部57aの他端部(右端部)から後方に延出する後退部57bと、後退部57bの後端部から下方に延出する垂下部57cとを備えている。横行部57aは、一端部(左端部)が本体部45の外側筒部51の前方外周部における上部位置に開口しつつ連通している。横行部57aの一端部と外側筒部51との連通部分は全溶接され、それらの間での液密性が保たれる。
【0026】
図6に示すように、接続管55は、材料供給路46の上部における外周側との間に隙間を空けつつ覆うように設けられている。そして、接続管55と材料供給路46との間の空間は、本体部45における内側筒部50と外側筒部51との間の空間に連通しており、これらの空間が冷却水が流れる冷却空間59とされる。従って、冷却部47は、該冷却空間59と、冷却空間59を形成する内側筒部50及び外側筒部51とを含んで構成される。冷却空間59は、本体部45と、材料供給路46における本体部45との接続箇所つまり材料供給路46の上部領域とに亘る領域に形成される。
【0027】
接続管55の上端部と外側筒部51との連通部分は全溶接され、それらの間での液密性が保たれる。また、接続管55の下端部は、材料供給路46の外周面との間で閉塞性を保つように溶接等によって接続される。
【0028】
供給管56は、一端部(右端部)が接続管55の下端側外周部に開口しつつ連通している。供給管56の一端部と接続管55との連通部分は全溶接され、それらの間での液密性が保たれる。
【0029】
冷却部47においては、図示しないポンプを介して供給管56から冷却水が供給され、冷却空間59内に導入される。そして、供給管56から冷却空間59を通じて排出管57に冷却水が流れるようになる。この冷却水の流れにより、本体部45と材料供給路46の上部領域とにおいて、水プラズマによる熱が吸収され、それらについての冷却作用が得られる。
【0030】
図2及び図3に戻り、供給装置13は、カバー部材12における後方開口形成部34の後面に支持部60を介して支持されている。ここで、供給装置13の接続管55及び垂下部57c(図2では不図示)は、上下方向にそれぞれ延出し、且つ、それらの前端の前後位置が同一とされる(図5参照)。従って、接続管55及び垂下部57cの前端を後方開口形成部34の後面にそれぞれ線接触するよう配置でき、この状態で支持部60により支持することで供給装置13を前後方向にて位置決め可能となる。
【0031】
支持部60は、左右に延びる板状の押さえ部材61と、押さえ部材61の延出方向両側に設けられた締結部材62とを備えている。締結部材62はボルト等によって構成され、押さえ部材61を貫通して後方開口形成部34に螺合可能に設けられる。押さえ部材61は、供給装置13の接続管55及び垂下部57cの後端に当接し、この当接した状態で締結部材62を締め付け操作することで、後方開口形成部34との間に接続管55及び垂下部57cを挟み込んで供給装置13を支持する。一方、この状態から、締結部材62の締め付けを解除することで、押さえ部材61及び供給装置13を後方開口形成部34から離脱して供給装置13をカバー部材12から取り外すことができる。つまり、支持部60によって、カバー部材12に供給装置13を着脱自在に支持することが可能となる。
【0032】
次いで、チャンバ17の内部構造について図7ないし図9を参照して説明する。図7は、チャンバの側断面図、図8は、チャンバの平面断面図、図9は、チャンバの縦断面図である。
【0033】
図7及び図8に示すように、水プラズマ発生装置11を構成するチャンバ17は、前後方向に延びる円筒内周面を形成するチャンバ本体70と、チャンバ本体70の前方に装着された前壁部71とを備え、それらの内側に水プラズマを発生させるための内部空間72を形成している。前壁部71には内部空間72に連通する開口が形成され、この開口を前方から塞ぐように噴射口形成板74が取り付けられている。噴射口形成板74には水プラズマを噴射する噴射口75が形成されている。
【0034】
チャンバ本体70の内部には、前方寄りの位置に周方向に延びるリブ70aが形成され、このリブ70aより前側にプラズマ用水供給路77が形成されている。また、前壁部71には、その開口内に流れ込むプラズマ用水を排出するプラズマ用水排出路78が形成されている。プラズマ用水供給路77には、高圧ポンプ27から高圧なプラズマ用水が供給され、プラズマ用水排出路78からは真空ポンプ28の負圧によってプラズマ用水が吸引される。
【0035】
チャンバ本体70のリブ70aより後側には冷却水供給路80及び冷却水排出路81(図8では不図示)が形成されている。冷却水供給路80には、供給ポンプ26から冷却水が供給され、冷却水排出路81からは真空ポンプ28の負圧によって冷却水が吸引される。プラズマ用水供給路77、冷却水供給路80及び冷却水排出路81は、円筒内周面となる丸穴状に形成されている。
【0036】
図9に示すように、プラズマ用水供給路77は、縦断面視で円形となる内部空間72の下部で連通して左右方向に延出している。具体的には、内部空間72の下部接線方向にプラズマ用水供給路77が延在している。これにより、プラズマ用水供給路77から流れ込むプラズマ用水が内部空間72の周方向に沿って滑らかに流れる。
【0037】
水プラズマ発生装置11は、チャンバ17内に収容される概略筒状の渦水流発生器90を備えている。渦水流発生器90は、内部空間72と中心軸線位置C1が一致するように配置されている。なお、この中心軸線位置C1は、上述した噴射口75の中心軸線位置と一致する。縦断面視で内部空間72は、その内周面と渦水流発生器90の外周面との間で円状の空間を形成し、上述のように内部空間72に流れ込んだプラズマ用水は、円状の空間を旋回するように流れる。
【0038】
渦水流発生器90には、内外で連通するように貫通する複数の通路91が形成されている。通路91は、渦水流発生器90の周方向に等角度毎(本実施の形態では120°毎)に形成されている。また、通路91は、前後方向に所定間隔毎に形成されている(図7及び図8参照)。各通路91は、渦水流発生器90の厚さ方向に対して傾斜する方向に延出している。具体的には、各通路91は、連通位置における渦水流発生器90の内周接線方向に延在している。また、通路91の外部から内部にプラズマ用水が流れる方向と、渦水流発生器90の外部でプラズマ用水が旋回して流れる方向とでなす角度θは鋭角となっている。
【0039】
上記のように通路91を形成したので、渦水流発生器90の外部でチャンバ本体70の内周面に沿って流れるプラズマ用水は、通路91を通過して渦水流発生器90の内部に流れ込む。そして、プラズマ用水が渦水流発生器90の内周面に沿って滑らかに流れるようになり、縦断面視で中心軸線位置C1に空洞を形成するように円状に旋回する渦水流が形成される。そして、渦水流に形成された空洞の内部を通過するよう、陽極18と陰極16との間でアーク放電AR(図10参照)が発生するようになる。
【0040】
水プラズマ発生装置11は、チャンバ17内において、渦水流発生器90の後方に更に種々の構成を備えている。かかる構成によって、渦水流発生器90の位置決め、陰極16の冷却、保持及び移動制御、陰極16への電力供給等が実施されるが、ここでは説明を省略する。
【0041】
続いて、本実施の形態の分解処理装置10による有害廃棄物の分解処理方法について、図10を参照して説明する。図10は、有害廃棄物の分解処理の説明図である。ここで、図10に示すように、陽極18は、その上端がチャンバ17の外側における噴射口75の斜め下前方の近傍に位置するように設けられる。また、供給装置13は、チャンバ17の外部となる前方に離れて設けられ、本体部45の中心軸線位置と噴射口75の中心軸線位置とが、略同一直線状に並ぶように配置されている。
【0042】
上述したように空洞を備えた渦水流が形成された状態で、陰極16及び陽極18に直流電力が供給されると、それらの間にアーク放電ARが発生される。このとき、アーク放電ARは渦水流の空洞を通過するように発生される。このアーク放電ARの発生によって、渦水流を形成するプラズマ用水が解離、電離されて高エネルギーとなる水プラズマのジェット気流Jが噴射口75から噴射される。
【0043】
噴射口75から噴射される水プラズマのジェット気流Jは極めて高温で超高速な流体となり、チャンバ17の噴射口75前方に配置される本体部45の内部に導入される。このとき、水プラズマのジェット気流Jの噴射方向は前後方向に沿う方向となり、筒状の本体部45も前後方向に沿って延びるので、ジェット気流Jが本体部45内に良好に導入される。また、供給装置13では、材料供給路46を通じて本体部45内に有害廃棄物が供給される。そして、本体部45の内部に導入された水プラズマのジェット気流Jによって、本体部45内に供給された有害廃棄物が分解される。
【0044】
ここで、有害廃棄物としては、PCB、硫酸ピッチ、アスベスト、フロン、ハロン、タイヤ、各種ゴミ等を例示することができ、粒状や粉状、液状として供給装置13を介して供給される。このような有害廃棄物を投入しても、無害化した廃棄物に分解することができる。
【0045】
有害廃棄物の分解処理中において、カバー部材12(図2参照)が加熱されることとなるが、その厚み内に冷却水を通過させることで冷却して利用することができる。また、供給装置13における本体部45及び材料供給路46にあっても、水プラズマのジェット気流J中或いは該ジェット気流Jに接近して位置するために多大なエネルギーを受けて加熱される。しかし、かかる加熱した部分に冷却部47の冷却空間59を形成し、該冷却空間59に冷却水を通過させて冷却できるので、加熱されることによる損傷を効果的に抑制することができる。
【0046】
上記第1の実施の形態によれば、チャンバ17から噴射される水プラズマによって有害廃棄物を分解するにあたり、筒状の本体部45内に水プラズマを導入しつつ有害廃棄物を供給することができる。これにより、本体部45で囲われた空間で供給した有害廃棄物の飛散を防ぐことができ、且つ、水プラズマの特に高温となる部分に有害廃棄物を供給して好条件で分解処理を行うことができる。その結果、供給した有害廃棄物をガス化した廃棄物に効率良く分解でき、該分解の確実性も高めることができる。
【0047】
また、供給装置13は支持部60を介してカバー部材12に着脱自在に支持されるので、カバー部材12を利用して供給装置13を簡単な構造で位置決めでき、また、供給装置13の交換等を容易に行うことができる。これにより、本体部45の径寸法や長さ、材料供給路46の径寸法が異なる供給装置13を複数用意することで、有害廃棄物等の種々の条件に対応することが可能となる。
【0048】
更に、本体部45にて水プラズマが導入される内周面にテーパ面50aを形成したので、水プラズマのジェット気流Jを本体部45の中心軸線位置側に導くようにすることができ、これによっても、有害廃棄物を効率良く分解することができる。
【0049】
また、材料供給路46における本体部45への開口形状を水プラズマの噴射方向に細長くしたので、水プラズマの中心位置に有害廃棄物を集中して投入でき、有害廃棄物を高温でより良く分解処理できるようになる。なお、かかる開口形状は、前後方向に細長い長円若しくは楕円形状に限定されるものでなく、有害廃棄物を分解できる限りにおいて、円形や正方形、長方形状としたり、左右方向に細長い形状としてもよい。
【0050】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について図11及び図12を参照して説明する。なお、以下の説明において、第1の実施の形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いる場合があり、説明を省略若しくは簡略にする場合がある。
【0051】
図11は、第2の実施の形態に係る供給装置を側断面視した概略斜視図である。図12は、第2の実施の形態に係る供給装置の側断面図である。図11及び図12に示すように、第2の実施の形態では、第1の実施の形態に対し、材料供給路46の上端部に供給口形成体100が着脱自在に設けられている。なお、図11及び図12においては、供給管56の図示を省略している。
【0052】
供給口形成体100は、六角穴付止めねじを加工した形状に設けられる。供給口形成体100は、上部に六角穴101aが形成されて中心軸線が上下方向に向けられた軸部101と、軸部101の外周面に形成される雄ねじ部102(ねじの凹凸は図示省略)とを備えている。
【0053】
軸部101の下端部には、下方に向かって次第に広がるテーパ状の凹み部103が形成されている。そして凹み部103の上端と六角穴101aの底部との間にて軸部101の中心軸線が重なる位置には、有害廃棄物(分解対象物)が流通する流路104が形成される。第2の実施の形態では、流路104は丸穴状に形成されている。
【0054】
材料供給路46の上端部(本体部45側の端部)における内周面には、雄ねじ部102に螺合する雌ねじ部106(ねじの凹凸は図示省略)が形成されている。雌ねじ部106の上下方向長さは、雄ねじ部102(軸部101)の上下方向長さと概略同一に形成され、雌ねじ部106の下端側には軸部101の下端部が着座する段部107が形成されている。よって、軸部101の下端が段部107に当接するまでねじ込んだ状態で、内側筒部50の内周面及び材料供給路46の上端から供給口形成体100がはみ出さないように設けられる。
【0055】
段部107に形成された溝には、リング状の弾性体108が設けられている。弾性体108に軸部101の下端が圧接されることで、供給口形成体100と材料供給路46との気密性、液密性が良好に保たれ、雄ねじ部102及び雌ねじ部106の間での緩み防止を図ることができる。
【0056】
上記第2の実施の形態によれば、六角穴101aに工具を差し込んで回転操作することで、材料供給路46に螺合される供給口形成体100を着脱自在とすることができ、供給口形成体100を容易に交換することができる。これにより、有害廃棄物の分解処理にて流路104や供給口形成体100が継時的に汚れるような場合でも、他の供給口形成体100の交換にて対応でき、メンテナンスの容易化を図ることができる。
【0057】
また、流路104の開口形状や開口サイズが異なる供給口形成体100を複数用意することで、種々の流路104を選択することができる。これにより、流路104を通じた有害廃棄物の供給量や供給態様を調整し、様々な有害廃棄物を効率良く確実に分解することができる。流路104の開口形状としては、前後方向や左右方向に細長い長円若しくは楕円形状や正方形、長方形状とすることが例示できる。
【0058】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、方向などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0059】
例えば、上記各実施の形態では、供給装置13にて本体部45の下方から材料供給路46を介して分解対象物を供給したが、本体部45の上方に材料供給路46を設けて上方から分解対象物を供給してもよい。
【0060】
また、供給装置13を支持する構造は、チャンバ17との位置関係を上述のように位置決めできる限りにおいて変更してもよい。但し、カバー部材12に支持部60を介して支持した方が、構成の簡略化を図ることができる点で有利となる。
【0061】
また、水プラズマ発生装置11によって分解処理する対象物は、上記した有害廃棄物に限られるものでなく、特に有害でないものを分解処理の対象物としてもよい。
【0062】
また、水プラズマ発生装置11は、廃棄物処理に利用することに限定されるものでなく、溶射等の水プラズマを利用した任意の処理に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、水プラズマ発生装置から噴射された水プラズマによって分解対象物を効率良く分解処理することができる、という効果を得る。
【0064】
本出願は、2018年11月8日出願の特願2018-210462に基づく。この内容は、全てここに含めておく。
【符号の説明】
【0065】
10 分解処理装置
11 水プラズマ発生装置
12 カバー部材
13 供給装置
16 陰極
17 チャンバ
18 陽極
45 本体部
46 材料供給路
47 冷却部
50a テーパ面
59 冷却空間
60 支持部
75 噴射口
AR アーク放電
図1
図2
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図10
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図12