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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】アンテナモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20240116BHJP
   H01P 1/26 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01P1/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022508157
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2021006459
(87)【国際公開番号】W WO2021187010
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2020045421
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】上田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】荒川 遥香
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-516944(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0256835(US,A1)
【文献】国際公開第2019/150892(WO,A1)
【文献】特開2001-007609(JP,A)
【文献】特開2003-037435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H01P 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポート、第2ポート、第3ポート、及び第4ポートを備えた分配合成回路と、
前記第1ポート、前記第2ポート、前記第3ポート、及び前記第4ポートにそれぞれ接続された第1伝送線路、第2伝送線路、第3伝送線路、及び第4伝送線路と、
前記第1ポートに、前記第1伝送線路を介して接続されて、前記第1伝送線路を介して前記第1ポートに対して高周波信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う第1高周波回路と、
前記第3ポート及び前記第4ポートに、それぞれ前記第3伝送線路及び前記第4伝送線路を介して接続された少なくとも1つの第1放射素子と
を有し、
前記分配合成回路は、前記第1ポートに入力された高周波信号を前記第3ポート及び前記第4ポートに分配して出力し、前記第1放射素子で反射して前記第3ポート及び前記第4ポートに入力される高周波信号を合成して、前記第2ポートに出力し、
前記第2伝送線路は、前記第1伝送線路、前記第3伝送線路、及び前記第4伝送線路のいずれの伝送線路より長く、
前記分配合成回路、前記第1伝送線路、前記第2伝送線路、前記第3伝送線路、及び前記第4伝送線路は、共通の基板に設けられており、
さらに、
前記基板に設けられた少なくとも1つの第2放射素子と、
前記第2放射素子のそれぞれに対して高周波信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う第2高周波回路と、
前記基板に設けられ、前記第2高周波回路と前記第2放射素子のそれぞれとの間に接続された第5伝送線路と
を有し、
前記第2伝送線路は、前記第5伝送線路より長いアンテナモジュール。
【請求項2】
前記第2伝送線路の表面粗さが、前記第1伝送線路、前記第3伝送線路、及び前記第4伝送線路の表面粗さより大きい請求項に記載のアンテナモジュール。
【請求項3】
平面視において前記第2伝送線路と重なる領域に配置されている誘電体材料の少なくとも一部の誘電正接が、前記第1伝送線路、前記第3伝送線路、及び前記第4伝送線路と重なる領域に配置されている誘電体材料の誘電正接より大きい請求項1または2に記載のアンテナモジュール。
【請求項4】
前記第1高周波回路は、20GHz以上の高周波信号を前記第1放射素子に供給する請求項1乃至のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項5】
前記第2伝送線路には、チップ抵抗素子が接続されていない請求項1乃至のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項6】
第1ポート、第2ポート、第3ポート、及び第4ポートを備えた分配合成回路と、
前記第1ポート、前記第2ポート、前記第3ポート、及び前記第4ポートにそれぞれ接続された第1伝送線路、第2伝送線路、第3伝送線路、及び第4伝送線路と、
前記第1ポートに、前記第1伝送線路を介して接続されて、前記第1伝送線路を介して前記第1ポートに対して高周波信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う第1高周波回路と、
前記第3ポート及び前記第4ポートのそれぞれに接続された2つの外部接続用の第1端子と
を有し、
前記分配合成回路は、前記第1ポートに入力された高周波信号を前記第3ポート及び前記第4ポートに分配して出力し、前記外部接続用の第1端子に接続された放射素子で反射して前記第3ポート及び前記第4ポートに入力される高周波信号を合成して、前記第2ポートに出力し、
前記第2伝送線路は、前記第1伝送線路、前記第3伝送線路、及び前記第4伝送線路のいずれの伝送線路より長く、
前記分配合成回路、前記第1伝送線路、前記第2伝送線路、前記第3伝送線路、及び前記第4伝送線路は、共通の基板に設けられており、
さらに、
前記基板に設けられた少なくとも1つの外部接続用の第2端子と、
前記外部接続用の第2端子のそれぞれに対して高周波信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う第2高周波回路と、
前記基板に設けられ、前記第2高周波回路と前記外部接続用の第2端子のそれぞれとの間に接続された第5伝送線路と
を有し、
前記第2伝送線路は、前記第5伝送線路より長いアンテナモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
矩形状のパッチアンテナとハイブリッド回路とを組み合わせて円偏波を放射する円偏波パッチアンテナが知られている(特許文献1参照)。ハイブリッド回路は、1/4波長の電気長を持つ4本の伝送路をブリッジ状に組み合わせたものである。ハイブリッド回路は、入力ポートに入力された信号を、2つの出力ポートから90°の位相差で二分配して出力する。ハイブリッド回路は、信号の入出力に関わらないアイソレーションポートを有する。このアイソレーションポートは、抵抗素子で終端される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-221965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パッチアンテナで反射されてハイブリッド回路に戻る高周波信号は、ハイブリッド回路で合成されてアイソレーションポートに出力される。アイソレーションポートに出力された高周波信号が反射されてアイソレーションポートに再入力すると、再入力された高周波信号が2つの出力ポートからパッチアンテナに再入力される。2つの出力ポートからパッチアンテナに再入力される高周波信号の位相関係は、入力ポートから入力されて2つの出力ポートからパッチアンテナに供給される高周波信号の位相関係とは異なる。このため、パッチアンテナから放射される円偏波の真円度(軸比)が低下してしまう。一般的に、アイソレーションポートに出力された信号が反射してアイソレーションポートに再入力されないように、アイソレーションポートに無反射終端抵抗が接続される。
【0005】
パッチアンテナから放射される電波の周波数帯が20GHz以上の準ミリ波帯、ミリ波帯になると、チップ抵抗素子等で無反射終端を実現することが困難である。
【0006】
本発明の目的は、準ミリ波帯、ミリ波帯等においても、放射素子への不要な高周波信号の再入力を抑制することができるアンテナモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、
第1ポート、第2ポート、第3ポート、及び第4ポートを備えた分配合成回路と、
前記第1ポート、前記第2ポート、前記第3ポート、及び前記第4ポートにそれぞれ接続された第1伝送線路、第2伝送線路、第3伝送線路、及び第4伝送線路と、
前記第1ポートに、前記第1伝送線路を介して接続されて、前記第1伝送線路を介して前記第1ポートに対して高周波信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う第1高周波回路と、
前記第3ポート及び前記第4ポートに、それぞれ前記第3伝送線路及び前記第4伝送線路を介して接続された少なくとも1つの第1放射素子と
を有し、
前記分配合成回路は、前記第1ポートに入力された高周波信号を前記第3ポート及び前記第4ポートに分配して出力し、前記第1放射素子で反射して前記第3ポート及び前記第4ポートに入力される高周波信号を合成して、前記第2ポートに出力し、
前記第2伝送線路は、前記第1伝送線路、前記第3伝送線路、及び前記第4伝送線路のいずれの伝送線路より長く、
前記分配合成回路、前記第1伝送線路、前記第2伝送線路、前記第3伝送線路、及び前記第4伝送線路は、共通の基板に設けられており、
さらに、
前記基板に設けられた少なくとも1つの第2放射素子と、
前記第2放射素子のそれぞれに対して高周波信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う第2高周波回路と、
前記基板に設けられ、前記第2高周波回路と前記第2放射素子のそれぞれとの間に接続された第5伝送線路と
を有し、
前記第2伝送線路は、前記第5伝送線路より長いアンテナモジュールが提供される。
【0008】
本発明の他の観点によると、
第1ポート、第2ポート、第3ポート、及び第4ポートを備えた分配合成回路と、
前記第1ポート、前記第2ポート、前記第3ポート、及び前記第4ポートにそれぞれ接続された第1伝送線路、第2伝送線路、第3伝送線路、及び第4伝送線路と、
前記第1ポートに、前記第1伝送線路を介して接続されて、前記第1伝送線路を介して前記第1ポートに対して高周波信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う第1高周波回路と、
前記第3ポート及び前記第4ポートのそれぞれに接続された2つの外部接続用の第1端子と
を有し、
前記分配合成回路は、前記第1ポートに入力された高周波信号を前記第3ポート及び前記第4ポートに分配して出力し、前記外部接続用の第1端子に接続された放射素子で反射して前記第3ポート及び前記第4ポートに入力される高周波信号を合成して、前記第2ポートに出力し、
前記第2伝送線路は、前記第1伝送線路、前記第3伝送線路、及び前記第4伝送線路のいずれの伝送線路より長く、
前記分配合成回路、前記第1伝送線路、前記第2伝送線路、前記第3伝送線路、及び前記第4伝送線路は、共通の基板に設けられており、
さらに、
前記基板に設けられた少なくとも1つの外部接続用の第2端子と、
前記外部接続用の第2端子のそれぞれに対して高周波信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う第2高周波回路と、
前記基板に設けられ、前記第2高周波回路と前記外部接続用の第2端子のそれぞれとの間に接続された第5伝送線路と
を有し、
前記第2伝送線路は、前記第5伝送線路より長いアンテナモジュールが提供される。
【発明の効果】
【0009】
第2伝送線路を長くすると、第2伝送線路を往復する高周波信号の減衰量が大きくなる。このため、放射素子で反射され、第2ポートに出力された不要な高周波信号が第2伝送線路を往復して放射素子に再入力するときの信号レベルが小さくなる。その結果、放射素子への不要な高周波信号の再入力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施例によるアンテナモジュールの平面図である。
図2図2は、図1の一点鎖線2-2における断面図である。
図3図3は、第2実施例によるアンテナモジュールの平面図である。
図4図4は、第3実施例によるアンテナモジュールの第1伝送線路及び第2伝送線路の断面図である。
図5図5は、第4実施例によるアンテナモジュールの平面図である。
図6図6は、第5実施例によるアンテナモジュールの平面図である。
図7図7は、第6実施例によるアンテナモジュールを構成する伝送線路、放射素子等の厚さ方向に関する位置関係を示す図である。
図8図8は、第7実施例によるアンテナモジュールを構成する伝送線路、放射素子等の厚さ方向に関する位置関係を示す図である。
図9図9は、第8実施例によるアンテナモジュールを構成する伝送線路、放射素子等の厚さ方向に関する位置関係を示す図である。
図10図10は、第9実施例によるアンテナモジュールを構成する伝送線路、放射素子等の厚さ方向に関する位置関係を示す図である。
図11図11A及び図11Bは、第10実施例によるアンテナモジュールを構成する伝送線路、放射素子等の厚さ方向に関する位置関係、及び外部の第1放射素子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施例]
図1及び図2を参照して、第1実施例によるアンテナモジュールについて説明する。
図1は、第1実施例によるアンテナモジュール10の平面図である。第1実施例によるアンテナモジュール10は、基板40に設けられた分配合成回路20、第1伝送線路21、第2伝送線路22、第3伝送線路23、第4伝送線路24、及び基板40に実装された第1放射素子31、高周波回路素子50を有する。
【0012】
分配合成回路20は、第1ポートP1、第2ポートP2、第3ポートP3、及び第4ポートP4を備えた90°ハイブリッド回路であり、ブリッジ回路を構成する4本の伝送線路を含んでいる。高周波回路素子50は、第1伝送線路21を介して分配合成回路20の第1ポートP1に接続されている。高周波回路素子50は第1高周波回路を含んでおり、第1高周波回路は、第1ポートP1への高周波信号の送信、及び第1ポートP1からの高周波信号の受信の少なくとも一方を行う。
【0013】
分配合成回路20の第2ポートP2に、第2伝送線路22が接続されている。第3ポートP3が、第3伝送線路23を介して第1放射素子31の給電点32Aに接続され、第4ポートP4が、第4伝送線路24を介して第1放射素子31の他の給電点32Bに接続されている。第1伝送線路21、第2伝送線路22、第3伝送線路23、及び第4伝送線路24の特性インピーダンスは同一であり、例えば50Ωである。
【0014】
分配合成回路20の4本の伝送線路のうち、第1ポートP1と第2ポートP2とを接続する伝送線路、及び第3ポートP3と第4ポートP4とを接続する伝送線路の特性インピーダンスは、第1伝送線路21等の特性インピーダンスと同一である。第1ポートP1と第3ポートP3とを接続する伝送線路、及び第2ポートP2と第4ポートP4とを接続する伝送線路の特性インピーダンスは、第1伝送線路21等の特性インピーダンスの1/21/2である。また、分配合成回路20の4本の伝送線路の、第1放射素子31の共振周波数における電気長は、波長の1/4である。
【0015】
第1放射素子31は、導体板または導体膜で形成されており、基板40に設けられたグランド導体(図2のグランド導体42)とともにパッチアンテナとして動作する。2つの給電点32A、32Bのそれぞれと、第1放射素子の中心とを結ぶ2本の仮想直線は直角に交わる。第1放射素子31は、例えば20GHz以上の準ミリ波帯またはミリ波帯の周波数で共振する。
【0016】
以下、このアンテナモジュールの送信動作について説明する。
分配合成回路20は、第1ポートP1に入力された高周波信号を第3ポートP3及び第4ポートP4に分配して、90°の位相差をつけて出力する。より詳細には、第3ポートP3に出力する高周波信号に対して第4ポートP4に出力する高周波信号の位相を90°遅らせる。第3伝送線路23と第4伝送線路24との電気長は等しい。このため、第1放射素子の2つの給電点32A、32Bに、90°の位相差を持つ高周波信号が供給される。これにより、第1放射素子31から円偏波の電波が放射される。
【0017】
次に、このアンテナモジュールの受信動作について説明する。
第1放射素子31で受信された円偏波が高周波信号に変換される。分配合成回路20は、第3伝送線路23と第4伝送線路24とを介して第3ポートP3及び第4ポートP4に入力される高周波信号を合成して第1ポートP1から出力する。より詳細には、第3ポートP3に入力される高周波信号に対して第4ポートP4に入力される高周波信号が90°遅れている場合、両者を合成して第1ポートP1から出力する。第1放射素子31が、この位相関係に相当する旋回方向を持つ円偏波を受信すると、受信信号が第1ポートP1から出力され、第1伝送線路21を介して高周波回路素子50に入力される。
【0018】
また、第1放射素子31に入力された高周波信号の一部は、第1放射素子31で反射して第3ポートP3及び第4ポートP4に入力される。この高周波信号の、第3ポートP3における位相は、第4ポートP4における位相より90°進んでいる。この位相関係を持つ高周波信号は、分配合成回路20で合成されて、第2ポートP2に出力される。
【0019】
第2伝送線路22は、第1伝送線路21、第3伝送線路23、及び第4伝送線路24のいずれよりも長い。例えば、第2伝送線路22は、平面視においてメアンダ形状を有する。第2伝送線路22には、チップ抵抗素子等の集中定数回路素子が接続されていない。また、第2ポートP2から見て第2伝送線路22の終端は開放されている。なお、第2伝送線路22の終端をグランド導体に短絡させてもよい。
【0020】
図2は、図1の一点鎖線2-2における断面図である。誘電体からなる基板40の表面に第4伝送線路24、及びグランド導体42が配置されている。さらに、基板40の内層にグランド導体41が配置されている。表面のグランド導体42は、複数のビア導体43を介して内層のグランド導体41に接続されている。
【0021】
図2に示した断面図には現れていないが、基板40の表面には、図1に示した第1伝送線路21、第2伝送線路22、第3伝送線路23、分配合成回路20等が配置されている。第1伝送線路21、第2伝送線路22、第3伝送線路23、及び第4伝送線路24は、内層のグランド導体41とともに、マイクロストリップ線路を構成する。基板40に高周波回路素子50(図1)が実装されている。高周波回路素子50には、例えば高周波集積回路素子(RFIC)、高周波集積回路素子を含むモジュールとしてのシステムインパッケージ(SiP)等が用いられる。
【0022】
第4伝送線路24及びグランド導体42等が、保護膜45で覆われている。第1放射素子31は、誘電体ブロック35を介して保護膜45の上に固着されている。平面視において、第1放射素子31はグランド導体42に包含される。第1放射素子31から延びる給電部材33が、第4伝送線路24の先端に、ハンダ34等によって接続されている。第1放射素子31と給電部材33とは、例えば1枚の金属板を打ち抜き加工することにより形成される。なお、給電部材33と第4伝送線路24とを、容量性結合または誘導性結合により結合させてもよい。第1放射素子31とグランド導体42とが、パッチアンテナとして動作する。
【0023】
なお、基板40の表面に配置した導体パターンを第1放射素子31とし、この第1放射素子31と内層のグランド導体41とでパッチアンテナを構成してもよい。
【0024】
次に、第1実施例の優れた効果について説明する。
第1実施例では、第1放射素子31で反射されて第3伝送線路23及び第4伝送線路24を伝送される高周波信号が分配合成回路20で合成されて、第2ポートP2から出力される。第2ポートP2から出力された高周波信号は、第2伝送線路22を伝送され、第2伝送線路22の終端で反射され、第2ポートP2に戻る。
【0025】
第2ポートP2に戻った高周波信号は、第3ポートP3と第4ポートP4とに分配されて、第1放射素子の給電点32A、32Bに再入力される。給電点32A、32Bに再入力される2つの高周波信号の位相関係は、高周波回路素子50から給電点32A、32Bにそれぞれ供給される2つの高周波信号の位相関係と逆である。例えば、高周波回路素子50から供給される高周波信号においては、給電点32Bの位相が給電点32Aの位相より90°遅れており、第1放射素子に再入力される高周波信号においては、給電点32Bの位相が給電点32Aの位相より90°進んでいる。このため、第1放射素子31に再入力される高周波信号は、第1放射素子から放射される円偏波の真円度(軸比)を低下させてしまう。
【0026】
第1実施例では、第2伝送線路22が、第1伝送線路21、第3伝送線路23、及び第4伝送線路24のいずれよりも長いため、第2ポートP2から出力された高周波信号は、第2伝送線路22を往復して第2ポートP2に戻るまでに大きく減衰する。このため、第1放射素子に再入力される高周波信号による円偏波の真円度の低下を抑制することができる。
【0027】
なお、第2ポートP2を、伝送線路の特性インピーダンスと等しいインピーダンスを持つチップ抵抗素子等で終端しても、20GHz以上の準ミリ波帯やミリ波帯の高周波信号に対しては十分な無反射終端を実現することはできない。第1実施例では、第2ポートP2をチップ抵抗素子等で終端するのではなく、第2伝送線路22で終端している。このため、準ミリ波帯やミリ波帯の高周波信号に対しても、第2伝送線路22を往復する高周波信号射波を十分減衰させることが可能な無反射終端が実現される。
【0028】
第1放射素子31から放射される円偏波の十分な真円度を維持するために、高周波信号が第2伝送線路22を往復したときの減衰量が10dB以上になるように第2伝送線路22の長さを設定するとよい。
【0029】
次に、第1実施例の変形例について説明する。
第1実施例では、分配合成回路20として90°ハイブリッド回路を用いたが、第1ポートP1に入力される高周波信号を第3ポートP3と第4ポートP4とに分配し、第3ポートP3及び第4ポートP4から再入力される高周波信号を合成して第2ポートP2から出力する機能を持つ他の構成の分配合成回路を用いてもよい。
【0030】
第1実施例では、第2伝送線路22をメアンダ形状することにより、その長さを長くしているが、その他の形状にしてもよい。例えば、基板40(図2)の空き領域の形状に応じて、第2伝送線路22を配置すればよい。
【0031】
第1実施例では、第2伝送線路22にチップ抵抗素子等の集中定数回路素子を接続せず、その終端を開放または短絡としているが、第2伝送線路22に抵抗素子、インダクタ素子、容量素子等の表面実装受動部品を接続して終端してもよい。準ミリ波帯やミリ波帯において表面実装受動部品が十分な無反射終端として機能しなくても、第2伝送線路22を伝送される高周波信号が十分減衰するため、第1放射素子31への高周波信号の再入力を抑制する効果が維持される。
【0032】
第1実施例では、第1伝送線路21、第2伝送線路22、第3伝送線路23、及び第4伝送線路24としてマイクロストリップ線路を用いたが、他の構造の伝送線路、例えばストリップ線路等を用いてもよい。
【0033】
[第2実施例]
次に、図3を参照して第2実施例によるアンテナモジュールについて説明する。以下、第1実施例によるアンテナモジュール10(図1図2)と共通の構成については説明を省略する。
【0034】
図3は、第2実施例によるアンテナモジュール10の平面図である。第1実施例では、基板40の表面に1つの第1放射素子31が設けられているが、第2実施例では、第1放射素子31の他に複数の第2放射素子36が設けられている。複数の第2放射素子36はそれぞれ基板40に設けられた複数の第5伝送線路25を介して高周波回路素子50に接続されている。高周波回路素子50は第2高周波回路を含んでおり、第2高周波回路は、第2放射素子36のそれぞれに対して高周波信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う。第2伝送線路22は、複数の第5伝送線路25のいずれよりも長い。さらに、第1実施例と同様に、第2伝送線路22は、第1伝送線路21、第3伝送線路23、及び第4伝送線路24のいずれよりも長い。
【0035】
次に、第2実施例の優れた効果について説明する。
第2実施例においても、第2伝送線路22を、基板40に設けられている他の伝送線路より長くしているため、第2伝送線路22を往復する高周波信号を大きく減衰させることができる。これにより、第1放射素子31へ再入力される高周波信号の信号レベルが小さくなるため、第1放射素子31から放射される円偏波の真円度の低下を抑制することができる。また、第2実施例では、第5伝送線路25を第2伝送線路22に比べて相対的に短くしているため、第2放射素子36と高周波回路素子50との間で送受信される高周波信号の減衰を抑制することができる。
【0036】
次に、第2実施例の変形例について説明する。
第2実施例では、第1放射素子31に対して高周波信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う第1高周波回路と、第2放射素子36に対して高周波信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う第2高周波回路とを、一つの高周波回路素子50で実現している。この変形例として、第1高周波回路と第2高周波回路とを、異なる高周波回路素子で実現してもよい。
【0037】
[第3実施例]
次に、図4を参照して第3実施例によるアンテナモジュールについて説明する。以下、第1実施例によるアンテナモジュール10(図1図2)と共通の構成については説明を省略する。
【0038】
図4は、第3実施例によるアンテナモジュール10の第1伝送線路21及び第2伝送線路22の断面図である。基板40の表面に第1伝送線路21及び第2伝送線路22が配置されており、内層にグランド導体41が配置されている。第1伝送線路21及び第2伝送線路22は保護膜45で覆われている。
【0039】
第2伝送線路22の表面粗さが、第1伝送線路21の表面粗さより大きい。なお、第3伝送線路23、及び第4伝送線路24(図1)の表面粗さは、第1伝送線路21の表面粗さとほぼ同一である。表面粗さを定義するパラメータとして、例えば、算術平均粗さRa、二乗平均平方根高さRq等(例えば、JIS B 0601-2001、ISO4287-1997)を採用することができる。例えば、第2伝送線路22が配置された領域以外の領域をマスクして、プラズマ処理、ウェットエッチング処理、ブラスト処理等を行うことにより、第2伝送線路22の表面を、他の伝送線路の表面より粗くすることができる。
【0040】
次に、第3実施例の優れた効果について説明する。
第2伝送線路22の表面が、第1伝送線路21、第3伝送線路23、及び第4伝送線路24の表面よりも粗いため、第2伝送線路22の単位長さ当たりの伝送損失が、他の伝送線路の単位長さ当たりの伝送損失より大きい。このため、第1実施例の場合と比べて第2伝送線路22を短くしても、第2伝送線路22を往復する高周波信号を十分減衰させることができる。第2伝送線路22を短くすることができるため、基板40の表面において第2伝送線路22が占める領域を小さくすることが可能になる。
【0041】
[第4実施例]
次に、図5を参照して第4実施例によるアンテナモジュールについて説明する。以下、第1実施例によるアンテナモジュール10(図1図2)と共通の構成については説明を省略する。
【0042】
図5は、第4実施例によるアンテナモジュール10の平面図である。第1実施例では、基板40(図1)が、均一な誘電体材料で形成されている。これに対して第4実施例では、基板40のうち、平面視において第2伝送線路22と重なる領域40Aの誘電正接(tanδ)が、他の領域40Bの誘電正接より大きい。図5において、誘電正接が相対的に大きな領域40Aに、相対的に濃い右下がりのハッチングを付し、他の領域40Bに、相対的に淡い右上がりのハッチングを付している。ここで、「誘電正接」は、第1放射素子31の共振周波数における誘電正接を意味する。また、誘電体材料の誘電正接の測定には、例えば、共振器法、同軸プローブ法、反射伝送法(Sパラメータ法)等(JIS R 1660-1:2004等)を適用することができる。反射伝送法(Sパラメータ法)で誘電正接を測定する場合には、同軸・導波管法、フリースペース法のいずれかを適用することができる。
【0043】
例えば、基板40としてガラス繊維含有基板を用い、ガラス繊維の含有量を異ならせることにより、2つの領域40A、40Bの誘電正接を異ならせることができる。または、2つの領域40A、40Bの誘電体材料を異ならせてもよい。第2伝送線路22の近傍の基板40の誘電率が、他の伝送線路の近傍の誘電率と異なる場合には、第2伝送線路22の幅を他の伝送線路の幅と異ならせることにより、第2伝送線路22の特性インピーダンスを他の伝送線路の特性インピーダンスと等しくすることが好ましい。
【0044】
次に、第4実施例の優れた効果について説明する。
第2伝送線路22の近傍に配置された誘電体材料の誘電正接が、他の領域の誘電体材料の誘電正接より大きいため、第2伝送線路22の単位長さ当たりの伝送損失が、第1伝送線路21、第3伝送線路23、及び第4伝送線路24の単位長さ当たりの伝送損失より大きい。このため、第1実施例の場合と比べて第2伝送線路22を短くしても、第2伝送線路22を往復する高周波信号を十分減衰させることができる。第2伝送線路22を短くすることができるため、基板40の表面において第2伝送線路22が占める領域を小さくすることが可能になる。
【0045】
次に、第4実施例の変形例について説明する。
第4実施例では、平面視において誘電正接が相対的に大きい領域40Aに第2伝送線路22のほぼ全体が包含されているが、必ずしも第2伝送線路22の全体を領域40Aに包含させる必要はない。例えば、第2伝送線路22の一部が、平面視において領域40Aからはみ出していてもよい。すなわち、平面視において第2伝送線路22と重なる領域の少なくとも一部の誘電正接が、他の領域の誘電正接より大きければよい。この場合にも、第2伝送線路22を往復する高周波信号の減衰量が大きくなる。
【0046】
[第5実施例]
次に、図6を参照して第5実施例によるアンテナモジュールについて説明する。以下、第1実施例によるアンテナモジュール10(図1図2)と共通の構成については説明を省略する。
【0047】
図6は、第5実施例によるアンテナモジュール10の平面図である。第1実施例(図1)では、第3伝送線路23及び第4伝送線路24が、それぞれ1つの第1放射素子31の異なる給電点32A、32Bに接続されている。これに対して第5実施例では、第3伝送線路23が放射素子31Aの給電点37Aに接続され、第4伝送線路24が他の放射素子31Bの給電点37Bに接続されている。
【0048】
放射素子31A及び放射素子31Bは、相互に直交する偏波面を持つ直線偏波を放射する。一方の放射素子31Aの給電点37Aと、他方の放射素子31Bの給電点37Bとに供給される高周波信号の位相は、相互に90°異なっている。このため、2つの放射素子31A、31Bからそれぞれ放射された直線偏波が合成されて円偏波になる。
【0049】
次に、第5実施例の優れた効果について説明する。
第5実施例においても、第2伝送線路22が他の伝送線路に比べて長いため、第1実施例と同様に、円偏波の真円度の低下を抑制することができるという優れた効果が得られる。
【0050】
[第6実施例]
次に、図7を参照して第6実施例によるアンテナモジュールについて説明する。以下、第1実施例によるアンテナモジュール10(図1図2)と共通の構成については説明を省略する。
【0051】
図7は、第6実施例によるアンテナモジュール10を構成する伝送線路、放射素子等の厚さ方向に関する位置関係を示す図である。図7は、導体部分の電気的な接続に着目して図示したものであり、アンテナモジュール10の特定の断面の構造を表しているわけではない。
【0052】
第1実施例では、第1放射素子31が誘電体ブロック35を介して基板40に固着されている。これに対して第6実施例では、第1放射素子31が、基板40の一方の表面(以下、上面という。)に設けられた導体膜で構成されている。また、第1実施例では、第1伝送線路21、第2伝送線路22、第3伝送線路23、第4伝送線路24、及び分配合成回路20が、基板40の表面に配置されている。これに対して第6実施例では、これらの伝送線路及び分配合成回路20が、基板40の内層に配置されている。図7では、第1伝送線路21、第2伝送線路22、第3伝送線路23、及び分配合成回路20を示している。
【0053】
基板40内に、2層の導体層、及び3層のグランド導体46を含む。第3伝送線路23及び分配合成回路20が、上側の導体層に配置されており、第1伝送線路21及び第2伝送線路22が下側の導体層に配置されている。各導体層が、グランド導体46で厚さ方向に挟まれている。
【0054】
第1放射素子31は、最も上側のグランド導体46を貫通するビア導体47Aを介して第3伝送線路23に接続されている。第3伝送線路23が、分配合成回路20の第3ポートP3に接続されている。第1伝送線路21は、グランド導体46を貫通するビア導体47Bを介して分配合成回路20の第1ポートP1に接続されている。第2伝送線路22は、グランド導体46を貫通するビア導体47Cを介して分配合成回路20の第2ポートP2に接続されている。
【0055】
平面視において第2伝送線路22を取り囲むように、複数のグランドビア導体48が配置されている。複数のグランドビア導体48は、第2伝送線路22の上下にそれぞれ配置された2つのグランド導体46に接続されている。
【0056】
次に、第6実施例の優れた効果について説明する。
第6実施例では、誘電体ブロック35(図2)を介することなく、第1放射素子31が基板40の上面に形成されるため、部品点数を削減することができる。また、配線長が長い第2伝送線路22は、ノイズ源になりやすい。第6実施例では、第2伝送線路22の上下のグランド導体46、及び平面視において第2伝送線路22を取り囲む複数のグランドビア導体48によって第2伝送線路22がシールドされる。このため、第2伝送線路22から発生するノイズの影響を低減させることができる。例えば、第1放射素子31の放射パターンの乱れ、電源へのノイズの重畳、相互干渉による発振等を抑制することができる。
【0057】
また、第6実施例では、第1放射素子31に接続される第3伝送線路23等が内層に配置されており第1放射素子31と内層の伝送線路との間に、グランド導体46が配置されている。このため、第1放射素子31と内層の伝送線路との電磁気的な干渉を抑制することができる。
【0058】
次に、第6実施例の変形例について説明する。
第6実施例では、第2伝送線路22の上下にグランド導体46を配置し、平面視において複数のグランドビア導体48で取り囲んでいる。すなわち、第2伝送線路22が三次元的に全方向から取り囲まれているが、必ずしも全方向から取り囲む必要はない。ノイズ源との干渉を避けたい要素と第2伝送線路22との間に、グランド導体46またはグランドビア導体48を配置して、両者の結合を弱める構成としてもよい。ノイズ源との干渉を避けたい要素として、例えば集積回路素子、電源ライン、高周波伝送線路、放射素子、放射素子の給電線等が挙げられる。
【0059】
[第7実施例]
次に、図8を参照して第7実施例によるアンテナモジュールについて説明する。以下、第6実施例によるアンテナモジュール10(図7)と共通の構成については説明を省略する。
【0060】
図8は、第7実施例によるアンテナモジュール10を構成する伝送線路、放射素子等の厚さ方向に関する位置関係を示す図である。図8は、導体部分の電気的な接続に着目して図示したものであり、アンテナモジュール10の特定の断面の構造を表しているわけではない。
【0061】
第6実施例(図7)では、第2伝送線路22の全域が下側の導体層に配置されており、第2伝送線路22の一方の端部が、ビア導体47Cを介して分配合成回路20の第2ポートP2に接続されている。これに対して第7実施例では、第2伝送線路22が、上側の導体層と下側の導体層との2層分散して配置されている。第2伝送線路22の上側の導体層に配置された部分と下側の導体層に配置された部分とが、ビア導体47Dにより相互に接続されている。第2伝送線路22の上側の導体層に配置された部分の端部が、分配合成回路20の第2ポートP2に接続されている。
【0062】
次に、第7実施例の優れた効果について説明する。
第7実施例においては、第2伝送線路22の異なる導体層に配置された部分同士を、平面視において重ねて配置することができる。このため、第2伝送線路22が占める領域の面積を小さくすることが可能である。また、第2伝送線路22の下側の導体層に配置された部分は、第6実施例の第2伝送線路22(図7)と同様に、グランド導体46及びグランドビア導体48で囲まれているため、第2伝送線路22の下側の導体層に配置された部分から発生するノイズの影響を低減させることができる。
【0063】
次に、第7実施例の変形例について説明する。
第7実施例では、第2伝送線路22を2つの導体層に分散させて配置しているが、3層以上の複数の導体層に分散させて配置してもよい。
【0064】
[第8実施例]
次に、図9を参照して第8実施例によるアンテナモジュールについて説明する。以下、第7実施例によるアンテナモジュール10(図8)と共通の構成については説明を省略する。
【0065】
図9は、第8実施例によるアンテナモジュール10を構成する伝送線路、放射素子等の厚さ方向に関する位置関係を示す図である。図9は、導体部分の電気的な接続に着目して図示したものであり、アンテナモジュール10の特定の断面の構造を表しているわけではない。
【0066】
第7実施例(図8)では、上側の導体層に配置された分配合成回路20、第2伝送線路22、第3伝送線路23等と上面の第1放射素子31との間にグランド導体46が配置され、下側の導体層に配置された第1伝送線路21、第2伝送線路22等の下側にもグランド導体46が配置されている。これに対して第8実施例では、これらのグランド導体が配置されていない。上側の導体層に配置された分配合成回路20、第2伝送線路22、第3伝送線路23等と、下側の導体層に配置された第1伝送線路21、第2伝送線路22等との間には、グランド導体46が配置されている。
【0067】
図8では、基板40の上面に第1放射素子31以外の放射素子や伝送線路を図示しておらず、基板40の下面に実装される高周波回路素子50(図1)を図示していない。これに対して図9では、基板40の上面に配置された放射素子または伝送線路等の導体パターン51、基板40の下面に実装された高周波回路素子50を図示している。
【0068】
上側の導体層に配置された第2伝送線路22から、グランド導体46まで及び基板40の上面に配置された導体パターン51までの厚さ方向の間隔を、それぞれGa、Gbと表記する。下側の導体層に配置された第2伝送線路22から、グランド導体46まで及び基板40の下面までの厚さ方向の間隔を、それぞれGc、Gdと表記する。第8実施例では、Ga<Gb、Gc<Gdの関係が成立する。
【0069】
次に、第8実施例の優れた効果について説明する。
第8実施例では、Ga<Gb、Gc<Gdの関係が成立するため、上側の導体層に配置された第2伝送線路22の下面とグランド導体46の上面との間の空間、及び下側の導体層に配置された第2伝送線路22の上面とグランド導体46の下面との間の空間に、電力が集中する。このため、ノイズ源となる第2伝送線路22と導体パターン51との間、及び第2伝送線路22と高周波回路素子50との間の干渉が抑制される。その結果、導体パターン51及び高周波回路素子50が、第2伝送線路22からのノイズの影響を受けにくくなるという優れた効果が得られる。
【0070】
[第9実施例]
次に、図10を参照して第9実施例によるアンテナモジュールについて説明する。以下、第1実施例によるアンテナモジュール10(図1図2)と共通の構成については説明を省略する。
【0071】
図10は、第9実施例によるアンテナモジュール10を構成する伝送線路、放射素子等の厚さ方向に関する位置関係を示す図である。図10は、導体部分の電気的な接続に着目して図示したものであり、アンテナモジュール10の特定の断面の構造を表しているわけではない。
【0072】
第1実施例(図2)では、第1伝送線路21、第2伝送線路22、第3伝送線路23、第4伝送線路24、分配合成回路20等が、基板40の上面に配置されている。これに対して第9実施例では、これらの伝送線路及び分配合成回路20等が基板40の内層に配置されている。基板40の内層の伝送線路及び分配合成回路20の構成は、例えば、第6実施例(図7)によるアンテナモジュールのこれらの構成と同一である。
【0073】
基板40の上面に、外部接続用の端子38及びグランド導体46が配置されている。外部接続用の端子38は、ビア導体47Eを介して内層の第3伝送線路23に接続されている。第1放射素子31を保持する誘電体ブロック35が、基板40の上面のグランド導体46の上に配置されている。第1放射素子31の給電点32Aが外部接続用の端子38に接続されている。図10には示されていないが、第1放射素子31の他の給電点32B(図1)も、他の外部接続用の端子及びビア導体を介して、第4伝送線路24に接続されている。
【0074】
次に、第9実施例の優れた効果について説明する。
第9実施例では、第1放射素子31と、基板40の内層の伝送線路等との間にグランド導体46が配置されている。このため、第1放射素子31と、基板40の内層の伝送線路との間の結合が低減され、第1放射素子31の放射特性の低下が抑制される。
【0075】
[第10実施例]
次に、図11A及び図11Bを参照して第10実施例によるアンテナモジュールについて説明する。以下、第9実施例によるアンテナモジュール10(図10)と共通の構成については説明を省略する。
【0076】
図11A及び図11Bは、第10実施例によるアンテナモジュール10を構成する伝送線路、放射素子等の厚さ方向に関する位置関係、及び外部の第1放射素子31を示す図である。図11A及び図11Bは、導体部分の電気的な接続に着目して図示したものであり、アンテナモジュール10の特定の断面の構造を表しているわけではない。
【0077】
第9実施例(図10)では、アンテナモジュール10が第1放射素子31を含んでいる。これに対して第10実施例によるアンテナモジュール10には第1放射素子31が設けられておらず、外部に設けられる第1放射素子31に接続するために外部接続用の端子38が設けられている。
【0078】
図11Aに示した例では、アンテナモジュール10を収容する筐体60の内側の表面に第1放射素子31が設けられている。図11Bに示した例では、筐体60に第1放射素子31が埋め込まれている。第1放射素子31とアンテナモジュール10の外部接続用の端子38とが、導体柱61によって接続される。導体柱61として、例えばポゴピン等を用いることができる。
【0079】
次に、第10実施例の優れた効果について説明する。
第10実施例では、アンテナモジュール10の外部の所望の位置に第1放射素子31を配置することができる。このため、第1放射素子31を配置する位置の自由度が高まるという優れた効果が得られる。
【0080】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0081】
10 アンテナモジュール
20 分配合成回路
21 第1伝送線路
22 第2伝送線路
23 第3伝送線路
24 第4伝送線路
25 第5伝送線路
31 第1放射素子
31A、31B 放射素子
32A、32B 給電点
33 給電部材
34 ハンダ
35 誘電体ブロック
36 第2放射素子
37A、37B 給電点
38 外部接続用の端子
40 基板
40A 誘電正接が大きい領域
40B 誘電正接が小さい領域
41、42 グランド導体
43 ビア導体
45 保護膜
46 グランド導体
47A、47B、47C、47D、47E ビア導体
48 グランドビア導体
50 高周波回路素子
51 放射素子、伝送線路等の導体パターン
60 筐体
61 導体柱
P1 第1ポート
P2 第2ポート
P3 第3ポート
P4 第4ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11