(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】信号分析装置、信号分析方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20240116BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20240116BHJP
G06F 18/2113 20230101ALI20240116BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
G06F18/2113
(21)【出願番号】P 2022508689
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2020011871
(87)【国際公開番号】W WO2021186597
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 玲史
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/138073(WO,A1)
【文献】特開平11-143529(JP,A)
【文献】国際公開第2008/114863(WO,A1)
【文献】特開2015-156578(JP,A)
【文献】特開2010-156152(JP,A)
【文献】特開2015-176285(JP,A)
【文献】特開平07-241895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
G01H 17/00
G06F 18/2113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列信号に含まれるイベントを識別する識別手段と、
識別された複数の前記イベントの種類の間でランキングを生成するランキング生成手段とを備え、
識別された前記イベントの種類ごとの評価値を算出する評価値算出手段をさらに備え、
前記評価値算出手段は、時系列信号の一定期間のデータと、同じ一定期間に相当する
識別された前記イベントの種類ごとのレファレンスデータとの間の相互相関関数の最大値を、前記時系列信号の一定期間の前記データの自己相関関数の最大値で割ることによって、前記時系列信号の一定期間の前記データが、
識別された前記
イベントの種類ごとのレファレンスデータとどれぐらい適合しているかを示す適合度を、前記評価値として算出し、
前記ランキング生成手段は、前記イベントの種類ごとの前記評価値の大きさに基づいて、識別された複数の前記イベントの種類の間で前記ランキングを生成する
信号分析装置。
【請求項2】
前記ランキング生成手段は、識別された複数の前記イベントの種類の間で、識別数のランキングを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の信号分析装置。
【請求項3】
前記識別手段によって、一定数以上の前記イベントが識別された後、前記ランキング生成手段は、前記ランキングに基づく情報を出力する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の信号分析装置。
【請求項4】
前記評価値算出手段は、前記イベントの種類ごとに、前記時系列信号に前記イベントが出現した時間の累積を、前記評価値として算出する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の信号分析装置。
【請求項5】
前記評価値算出手段は、前記イベントの種類ごとに、前記時系列信号から前記イベントが識別された回数を、前記評価値として算出する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の信号分析装置。
【請求項6】
前記評価値算出手段は、前記イベントの種類ごとに、前記識別手段による識別結果の信頼度に基づいて、前記評価値を算出する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の信号分析装置。
【請求項7】
前記ランキング生成手段は、所定の入力操作に基づいて、前記ランキングから、特定のイベントの種類を除外する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の信号分析装置。
【請求項8】
時系列信号に含まれるイベントを識別し、
識別された複数の前記イベントの種類の間でランキングを生成する
ことを含み、
識別された前記イベントの種類ごとの評価値を算出することをさらに含み、
前記評価値を算出するとき、時系列信号の一定期間のデータと、同じ一定期間に相当する
識別された前記イベントの種類ごとのレファレンスデータとの間の相互相関関数の最大値を、前記時系列信号の一定期間の前記データの自己相関関数の最大値で割ることによって、前記時系列信号の一定期間の前記データが、
識別された前記
イベントの種類ごとのレファレンスデータとどれぐらい適合しているかを示す適合度を、前記評価値として算出し、
前記ランキングを生成するとき、前記イベントの種類ごとの前記評価値の大きさに基づいて、識別された複数の前記イベントの種類の間で前記ランキングを生成する信号分析方法。
【請求項9】
時系列信号に含まれるイベントを識別することと、
識別された複数の前記イベントの種類の間でランキングを生成することと
をコンピュータに実行させ、
識別された前記イベントの種類ごとの評価値を算出することをさらにコンピュータに実行させ、
前記評価値を算出させるとき、時系列信号の一定期間のデータと、同じ一定期間に相当する
識別された前記イベントの種類ごとのレファレンスデータとの間の相互相関関数の最大値を、前記時系列信号の一定期間の前記データの自己相関関数の最大値で割ることによって、前記時系列信号の一定期間の前記データが、
識別された前記
イベントの種類ごとのレファレンスデータとどれぐらい適合しているかを示す適合度を、前記評価値として算出させ、
前記ランキングを生成させるとき、前記イベントの種類ごとの前記評価値の大きさに基づいて、識別された複数の前記イベントの種類の間で前記ランキングを生成させる
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号分析装置、信号分析方法、および記録媒体に関し、特に、時系列信号を分析する信号分析装置、信号分析方法、および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道運行の安全性の維持および車両状態の管理のために、鉄道車両の定期検査が行われている。異常発生時には、随時、検査員が現地に向かい、点検を実施する。関連する技術では、対象物の異常を速やかに発見することを目的として、対象物に搭載されている各種機器および部品の状態を、センサを用いて監視する。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の関連する技術は、鉄道車両(検査の対象物の一例である)の所定位置に設置したマイクロフォンによって、音響データを集音する。特許文献1には、音響データをフーリエ変換した後、フーリエ変換されたデータに対し周波数解析を行うことによって、鉄道車両が発生する異常音を検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6061782号公報
【文献】特開2002-139377号公報
【文献】特開2013-142870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の関連する技術は、時系列信号から検出された異常音を識別することができない。そのため、専門の検査員が、鉄道車両に乗車して、鉄道車両内で実際に音を聞くことで、知見及び経験に基づいて、異常音を識別することによって、鉄道車両に発生した異常の原因を特定している。しかしながら、異常音によっては、乗務員あるいは新人の検査員は、十分な経験および知見を持たないため、実際の音を聞くことができたとしても、異常の原因を正確に特定することが困難である場合がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、時系列信号の状態を判定することを助けるための情報を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係わる信号分析装置は、時系列信号に含まれるイベントを識別する識別手段と、識別された複数の前記イベントの種類の間でランキングを生成するランキング生成手段とを備えている。
【0008】
本発明の一態様に係わる信号分析方法は、時系列信号に含まれるイベントを識別し、識別された複数の前記イベントの種類の間でランキングを生成することを含む。
【0009】
本発明の一態様に係わる記録媒体は、時系列信号に含まれるイベントを識別することと、識別された複数の前記イベントの種類の間でランキングを生成することとをコンピュータに実行させるためのプログラムを格納している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、時系列信号の状態を判定することを助けるための情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1に係わる信号分析装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】時系列信号に含まれるさまざまな異常音の一例を示す図である。
【
図3】実施形態2に係わる信号分析装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態2に係わる信号分析装置がディスプレイに表示させる画面の一例である。
【
図5】実施形態2に係わる信号分析装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態2に係わる信号分析装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態1~2に係わる信号分析装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
図1~
図2を参照して、実施形態1について説明する。
【0013】
(信号分析装置100)
図1を参照して、本実施形態1に係わる信号分析装置100の構成を説明する。
図1は、信号分析装置100の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、信号分析装置100は、識別部120およびランキング生成部140を備えている。
【0014】
識別部120は、時系列信号に含まれるイベントを識別する。識別部120は、識別手段の一例である。本実施形態1では、イベントが、鉄道車両の走行に伴う異常音である場合を説明する。しかしながら、イベントは異常音に限定されない。別の実施形態3において説明するように、他の例では、イベントは、座席のねじ弛みに伴う振動であってもよいし、配電盤内の機器の異常に伴う電流波形であってもよい。
【0015】
具体的には、識別部120は、まず、時系列信号を取得する。例えば、鉄道車両(検査の対象物の一例である)が運行されている間、識別部120は、鉄道車両に設置された集音設備(例えばマイクロフォン)から、時系列信号を取得する。あるいは、識別部120は、鉄道車両の検査を実施する時に、リアルタイムでない時系列信号を取得してもよい。たとえば、識別部120は、図示しない記録媒体に既に記録されている時系列信号を再生する。
【0016】
次に、識別部120は、一定期間の音響区間ごとに時系列信号を区切ることにより、時系列信号を、複数の時系列信号に分割する。識別部120は、一定期間の時系列信号を識別器に入力する。識別部120は、異常音(イベントの一例である)の特徴をあらかじめ学習した識別器を用いて、時系列信号の一定期間に含まれる異常音を識別する。識別器は、識別部120から一定期間の時系列信号が入力されるごとに、一定期間の時系列信号に含まれる異常音を識別する。異常音の特徴とは、例えば、異常音の振幅、異常音の基本周波数成分、異常音のメル周波数ケプストラム係数(MFCC;Mel-Frequency Cepstrum Coefficients)、および、スペクトル包絡のうち、少なくともいずれか1つである。
【0017】
図2は、鉄道車両内において取得される時系列信号(
図2では、「鉄道車両内音」と示す)の一定期間に含まれるさまざまな異常音の一例を示す。
図2は、3種類の異常音の例として、鉄道車両の座席のビス弛みに基づく異常音、鉄道車両内の圧力値上昇に基づく異常音、および、鉄道車両に対し設置された空調装置の不調に基づく異常音を示す。識別部120が取得する時系列信号では、これらの鉄道車両内音が、図示しない鉄道車両の走行音に重畳している。
図2に示す異常音は、乗務員および検査員にとって、興味のある重要な音である。一方、アナウンス音、および、缶を開ける音は、乗務員および検査員にとって、興味のある音ではないから、本実施形態1の定義における「異常音」ではない。
【0018】
異常音とは、鉄道車両(検査の対象物の一例である)の故障、破損またはその他の不具合に関係する音を意味する。言い換えると、異常音は、鉄道車両に何らかの異常が生じているときに、鉄道車両が発する音である。
【0019】
識別部120は、異常音の識別結果を、ランキング生成部140へ出力する。加えて、識別部120は、異常音の識別結果を、外部機器またはネットワークにも出力してもよい。
【0020】
ランキング生成部140は、複数の異常音の種類の間でランキングを生成する。ランキング生成部140は、ランキング生成手段の一例である。例えば、ランキング生成部140は、異常音の種類ごとに、異常音が識別された回数(識別数)を計測し、複数の異常音の種類の間における識別数のランキングを生成する。
【0021】
上述した識別部120によって、一定数以上の異常音が識別された後、ランキング生成部140は、識別数のランキングに基づく情報を出力してもよい。例えば、ランキング生成部140は、複数の異常音の種類の間における識別数の比率である識別率を、グラフとして、表示装置に表示させる。これにより、表示されたグラフを見たユーザは、時系列信号の状態を判定し、異常音の原因を特定または推定することができる。
【0022】
(変形例)
一変形例において、識別部120は、時系列信号の一定期間のデータと、異常音の種類ごとのレファレンスデータ(音響モデルとも呼ぶ)との間で、適合度を算出する。適合度は、時系列信号の一定期間のデータが、レファレンスデータとどれぐらい適合しているか(あるいは類似しているか)を示す比率または値である。適合度は、実施形態2において説明する評価値として用いられてもよい。
【0023】
例えば、識別部120は、時系列信号の一定期間のデータと、同じ一定期間に相当するレファレンスデータとの間の相互相関関数の最大値を、時系列信号の一定期間のデータの自己相関関数の最大値で割ることによって、上述の適合度を得る。
【0024】
本変形例に係る識別部120は、各レファレンスデータに関し、それぞれの適合度を算出することによって、適合度が最も高くなるレファレンスデータを特定する。そして、最も高い適合度が閾値を超える場合、識別部120は、時系列信号の一定期間のデータが、特定したレファレンスデータによって示される種類の異常音であると判定する。
【0025】
(本実施形態の効果)
本実施形態の構成によれば、識別部120は、時系列信号に含まれる異常音を識別する。ランキング生成部140は、複数の異常音の種類の間でランキングを生成する。
【0026】
したがって、信号分析装置100は、ランキング生成部140が生成したランキングでのランキング結果に基づいて、時系列信号の状態を判定することを助けるための情報を提供することができる。
【0027】
〔実施形態2〕
図3~
図6を参照して、実施形態2について説明する。
【0028】
(信号分析装置200)
図3を参照して、本実施形態2に係わる信号分析装置200の構成を説明する。
図3は、信号分析装置200の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、信号分析装置200は、識別部120及びランキング生成部140を備えている。加えて、信号分析装置200は、評価値算出部130をさらに備えている。
【0029】
評価値算出部130は、識別された異常音の種類ごとの評価値を算出する。評価値算出部130は、評価値算出手段の一例である。具体的には、評価値算出部130は、異常音の種類ごとに、時系列信号に異常音が出現した時間の累積を、評価値として算出してもよい。なお、時系列信号に異常音が複数回出現した場合、評価値算出部130は、それぞれの異常音が出現した時間を全て足し合わせることによって、評価値を算出する。
【0030】
あるいは、評価値算出部130は、識別部120による識別結果の確からしさを示す信頼度(スコアとも呼ぶ)に基づいて、異常音の種類ごとに、評価値を算出してもよい。異常音の識別結果の確からしさが高い(低い)ほど、スコアも高く(低く)なる。一例では、評価値算出部130は、所定の期間内に得られたスコアの総和または最大値を評価値とする。
【0031】
あるいは、評価値算出部130は、前記実施形態1の変形例において説明した適合度を、識別部120から評価値として取得してもよい。この場合の評価値は、異常音のデータと、識別結果が示す異常音の種類ごとのレファレンスデータとがどれぐらい適合しているのかを表す。識別部120は、このようにして算出した評価値のデータを、ランキング生成部140へ出力する。
【0032】
ランキング生成部140は、異常音の種類ごとの評価値の大きさに基づいて、複数の異常音の種類の間における識別数のランキングを生成する。異常音の識別数は評価値の一例である。
【0033】
ランキング生成部140は、識別部120が識別した異常音の種類のうち、評価値が大きい順に、いくつか(例えば3-5つ)の異常音の種類を抽出する。例えば、識別部120によって、一定数以上の異常音が識別されるまで、ランキング生成部140は、時系列信号から、それぞれの異常音の識別数を計測する。あるいは、ランキング生成部140は、識別部120が識別した全ての異常音の種類について、識別数を計測してもよい。
【0034】
次に、ランキング生成部140は、複数の異常音の種類の間における識別数のランキングを生成する。
【0035】
一例では、識別部120によって、一定数以上の異常音が識別された後、ランキング生成部140は、ランキングに基づく情報を出力する。ランキング生成部140は、異常音の種類ごとの識別率を示すグラフを、ディスプレイ800に表示させてもよい。または、識別部120は、異常音の識別結果を、識別率を示すグラフとともに、ディスプレイ800に表示させてもよい。
【0036】
図4は、本実施形態2に係わる信号分析装置200がディスプレイ800に表示させる画面の一例である。
【0037】
図4の(1)は、複数の異常音の種類の間における識別数のランキングを示す。ここでは、「ビス弛みに基づく異常音」、「圧力値上昇に基づく異常音」、および「空調装置の不調に基づく異常音」の3つを、異常音の例に挙げる。
図4の(1)には、「ビス弛みに基づく異常音」、「圧力値上昇に基づく異常音」、および「空調装置の不調に基づく異常音」が、それぞれ、「ビス弛み」「圧力値上昇」、および「空調装置」と示されている。上述したように、識別率とは、複数の異常音の種類の間における異常音の識別数の比率を意味する。
図4の(1)に示す例では、異常音の識別率は、それぞれ、「ビス弛み」(50%)、「圧力値上昇」(38%)、「空調装置」(13%)である。ただし、パーセンテージの値は、小数点以下第一位で四捨五入しているため、合計がちょうど100%ではない場合がある。
【0038】
図4の(2)は、識別部120による異常音の識別結果を示している。より詳細には、
図4の(2)では、時系列信号に異音が出現し始めた時刻(開始)と、識別された異常音の種類と、時系列信号から異常音が消えた時刻(終了)とがログ欄に表示されている。なお、
図4の(2)において、「Atsu」は「圧力値上昇」を意味する。また、「Bisu」は「ビス弛み」を意味する。
【0039】
ここで説明する例では、時系列信号に異常音が出現した回数を評価値算出部130が計測する。他の例では、評価値算出部130は、異常音の種類ごとに、時系列信号に異常音が出現した時間の累積を、評価値として算出してもよい。信号分析装置200は、ユーザが評価値の算出方法を設定または変更することが可能であってよい。評価値算出部130は、算出した評価値のデータを、ランキング生成部140へ出力する。
【0040】
ランキング生成部140は、評価値算出部130から、評価値のデータを受信する。ランキング生成部140は、異常音の種類ごとの評価値を用いて、複数の異常音の種類の間でランキングを生成することができる。ランキング生成部140は、所定の入力操作に基づいて、ランキングから、特定の異常音の種類を除外してもよい。
【0041】
例えば、ランキング生成部140は、
図4の左側に示す「Detect Event」のボックスに対して、異常音の種類を選択(チェック)する入力操作を受け付ける。その後、ランキング生成部140は、
図4の(1)に示すグラフから、選択されない異常音の種類を除外して、残りの異常音の種類の間における識別数のランキングを生成する。そして、ランキング生成部140は、生成した識別数のランキングに基づいて、異常音の種類ごとの識別率を再び算出し、ディスプレイ800に識別率のグラフを表示させる。
【0042】
(信号分析装置200の動作)
図5および
図6を参照して、本実施形態2に係わる信号分析装置200の動作を説明する。
図5および
図6は、信号分析装置200の各部が実行する一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【0043】
図5に示すように、信号分析装置200の識別部120は、鉄道車両に設置されたマイクロフォンから、時系列信号を読み込む(S1)。
【0044】
次に、識別部120は、異常音の種類ごとに、異常音の特徴をあらかじめ学習した識別器を用いて、時系列信号に含まれる異常音を識別する(S2)。
【0045】
具体的には、ステップS2において、識別部120は、異常音のデータと、予め取得された異常音の種類ごとのレファレンスデータとを照合することによって、異常音を識別する。
【0046】
識別部120は、異常音の識別結果を外部機器またはネットワークに出力する(S3)。例えば、識別部120は、異常音の識別結果をディスプレイ800(
図4)に表示させる。
【0047】
続いて、識別部120は、異常音の種類が複数あるかどうかを判定する(S4)。異常音の種類がただ1つである場合(S4でno)、フローはステップS5へ進む。
【0048】
一方、異常音の種類が複数ある場合(S4でyes)、識別部120は、異常音の識別結果を、ランキング生成部140へ出力する。この場合、フローは、
図6に示すステップSS1へ進む(
図5のAへ)。
【0049】
図6に示すように、まず、ランキング生成部140は、異常音の種類ごとに、異常音が識別された回数(識別数)を計測する(SS1)。識別部120によって、一定数以上の異常音がまだ識別されていない場合(SS2でno)、フローは、
図5のステップS5へ進む(
図6のBへ)。
【0050】
一方、識別部120によって、一定数以上の異常音が識別された場合(SS2でyes)、ランキング生成部140は、複数の異常音の種類の間における識別数のランキングを生成する(SS3)。
【0051】
ランキング生成部140は、複数の異常音の種類の間における異常音の識別数の比率である識別率を算出する(SS4)。
【0052】
ランキング生成部140は、算出した識別率を示すグラフ(
図4参照)を出力する(SS5)。その後、フローは、
図5のステップS5へ進む(
図6のBへ)。
【0053】
図6に示すステップSS5に続いて、
図5に示すステップS5において、ユーザが終了ボタンを押下した場合(S5でyes)、フローは終了する。一方、ユーザが終了ボタンをまだ押下していない場合(S5でno)、フローはステップS1へ戻る。
【0054】
以上で、本実施形態2に係わる信号分析装置200の動作に関する説明を終了する。なお、本実施形態2では、検査の対象物が鉄道車両である場合を説明したが、本発明の適用例は、鉄道車両に限定されない。別の例では、検査の対象物は、自動車、バス、船舶、及び飛行機などの交通手段であってもよいし、発電施設、ボイラー室、機械室、あるいは上下水道管であってもよい。より一般的に、本実施形態2に係わる信号分析装置200は、時系列信号を分析することによって、検査の対象物の状態を判定または推定するために利用することができる。
【0055】
(本実施形態の効果)
本実施形態の構成によれば、識別部120は、時系列信号に含まれる異常音を識別する。ランキング生成部140は、複数の異常音の種類の間でランキングを生成する。
【0056】
信号分析装置200は、複数の異常音の種類の間でのランキング結果に基づいて、時系列信号の状態を判定することを助けるための情報を提供することができる。
【0057】
さらに、本実施形態の構成によれば、評価値算出部130は、識別された異常音の種類ごとの評価値を算出する。そのため、ランキング生成部140は、異常音の種類ごとの評価値に基づいて、複数の異常音の種類の間におけるランキングを生成することができる。例えば、ランキング生成部140は、本実施形態2において説明したように、複数の異常音の種類の間における識別数のランキングを生成する。
【0058】
〔実施形態3〕
図1および
図3を参照して、実施形態3について説明する。本実施形態3に係わる信号分析装置の構成は、前記実施形態1で説明した信号分析装置100(
図1)、あるいは、前記実施形態2で説明した信号分析装置200(
図3)と同様である。
【0059】
本実施形態3において、信号分析装置(100または200)は、複数の異常音の代わりに、複数の振動または電流波形(以下では、振動/電流波形と記載する)について、時系列信号の状態を判定することを助けるための情報を提供する。本実施形態3において、識別部120は、時系列信号に含まれる振動/電流波形を識別する。ランキング生成部140は、複数の振動/電流波形の種類の間でランキングを生成する。ランキング生成部140は、振動/電流波形の種類ごとの識別率を示すグラフを、ディスプレイ800に表示させてもよい。または、識別部120は、振動/電流波形の識別結果を、識別率を示すグラフとともに、ディスプレイ800に表示させてもよい。
【0060】
一例では、鉄道車両(対象物の一例である)の座席付近に、振動センサが設置される。識別部120は、予め、座席を固定するネジの弛みによる座席の振動の特徴を識別器に学習させる。識別部120は、振動センサから、時系列信号を受信し、識別器に時系列信号を入力する。識別器は、時系列信号に含まれる振動を識別した結果を出力する。識別部120は、振動の識別結果をランキング生成部140へ出力する。振動の識別結果は、複数の振動の種類、および、それぞれの振動が識別された回数(識別数)を示す情報を含む。ランキング生成部140は、振動の識別結果に基づいて、複数の振動の種類の間でランキングを生成する。ランキング生成部140は、振動の識別結果を、識別率を示すグラフとともに、ディスプレイ800に表示させる。
【0061】
他の一例において、配電盤内の機器に、電流センサが設置される。識別部120は、予め、機器の異常に伴う電流波形の特徴を識別器に学習させる。識別部120は、電流センサから、時系列信号を受信し、識別器に時系列信号を入力する。識別器は、時系列信号に含まれる電流波形を識別した結果を出力する。識別部120は、電流波形の識別結果をランキング生成部140へ出力する。電流波形の識別結果は、複数の電流波形の種類、および、それぞれの電流波形が識別された回数(識別数)を示す情報を含む。本例において、ランキング生成部140が実行する処理の流れは、上述した例と同様である。
【0062】
(ハードウェア構成について)
前記実施形態1~3で説明した信号分析装置100または200の各構成要素は、機能単位のブロックを示している。これらの構成要素の一部又は全部は、例えば
図7に示すような情報処理装置900により実現される。
図7は、情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0063】
図7に示すように、情報処理装置900は、一例として、以下のような構成を含む。
【0064】
・CPU(Central Processing Unit)901
・ROM(Read Only Memory)902
・RAM(Random Access Memory)903
・RAM903にロードされるプログラム904
・プログラム904を格納する記憶装置905
・記録媒体906の読み書きを行うドライブ装置907
・通信ネットワーク909と接続する通信インタフェース908
・データの入出力を行う入出力インタフェース910
・各構成要素を接続するバス911
前記実施形態1~3で説明した信号分析装置の各構成要素は、これらの機能を実現するプログラム904をCPU901が読み込んで実行することで実現される。各構成要素の機能を実現するプログラム904は、例えば、予め記憶装置905やROM902に格納されており、必要に応じてCPU901がRAM903にロードして実行される。なお、プログラム904は、通信ネットワーク909を介してCPU901に供給されてもよいし、予め記録媒体906に格納されており、ドライブ装置907が当該プログラムを読み出してCPU901に供給してもよい。
【0065】
(本実施形態の効果)
本実施形態の構成によれば、前記実施形態1~3において説明した信号分析装置100または200が、ハードウェアとして実現される。したがって、前記実施形態において説明した効果と同様の効果を奏することができる。
【0066】
以上、実施形態(及び実施例)を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態(及び実施例)に限定されるものではない。上記実施形態(及び実施例)の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0067】
100 信号分析装置
120 識別部
130 評価値算出部
140 ランキング生成部
200 信号分析装置