(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】検知装置、検知方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20240116BHJP
【FI】
G06Q50/26
(21)【出願番号】P 2022510330
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014040
(87)【国際公開番号】W WO2021192227
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】則松 香威
【審査官】渡邉 加寿磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-62255(JP,A)
【文献】特開2013-238920(JP,A)
【文献】特開2006-236010(JP,A)
【文献】特開2003-6383(JP,A)
【文献】特開2010-9180(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0046287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理サーバに記録された就労者情報に含まれる就労ビザの申請時に提出された外国人就労者の認証情報と、入国時に取得された外国人就労者の認証情報とを照合する照合手段と、
前記就労者情報において照合された認証情報と関連付けられ
ている前記外国人就労者の雇用元情報に基づいて、前記外国人就労者が潜在的不法滞在者であるか否かを判定する判定手段と、
を有
し、
前記判定手段は、前記雇用元情報が、前記管理サーバに記録された雇用元の信用リストに存在するか否かに基づいて、前記外国人就労者が潜在的不法滞在者であるか否かを判定する、検知装置。
【請求項2】
前記判定手段による判定結果に基づいて、前記外国人就労者の入国審査を行う入国審査官を決定する決定手段を有し、
前記決定手段は、決定した前記入国審査官の入国審査ブースを、入国審査場に設置された案内端末に通知する、請求項
1に記載の検知装置。
【請求項3】
前記判定手段は、判定結果を入国審査官が利用する入国審査端末に送信する、請求項
1に記載の検知装置。
【請求項4】
前記認証情報は、生体情報またはパスポート情報である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の検知装置。
【請求項5】
コンピュータにより、
管理サーバに記録された就労者情報に含まれる就労ビザの申請時に提出された外国人就労者の認証情報と、入国時に取得された外国人就労者の認証情報とを照合し、
前記就労者情報において照合された認証情報と関連付けられ
ている前記外国人就労者の雇用元情報
が、前記管理サーバに記録された雇用元の信用リストに存在するか否かに基づいて、前記外国人就労者が潜在的不法滞在者であるか否かを判定する、検知方法。
【請求項6】
コンピュータを、
管理サーバに記録された就労者情報に含まれる就労ビザの申請時に提出された外国人就労者の認証情報と、入国時に取得された外国人就労者の認証情報とを照合する照合手段と、
前記就労者情報において照合された認証情報と関連付けられ
ている前記外国人就労者の雇用元情報に基づいて、前記外国人就労者が潜在的不法滞在者であるか否かを判定する判定手段と、
を有
し、
前記判定手段は、前記雇用元情報が、前記管理サーバに記録された雇用元の信用リストに存在するか否かに基づいて、前記外国人就労者が潜在的不法滞在者であるか否かを判定する、検知装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜在的不法滞在者を検知する検知装置、これを用いた検知方法に関し、これらを実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不法滞在者の問題が顕著化してきている。とりわけ、不法滞在者に労働を強要する強制労働の問題が深刻な状況にある。このような不法滞在者を発生させないために、近い将来に不法滞在者となり得る外国人就労者(以下、「潜在的不法滞在者」ともいう。)を検出し、入国を阻止することが重要である。
【0003】
例えば特許文献1には、外国人を受け入れる企業や専門学校等の受入機関の評価をファクターとして外国人の出入国及び残留審査を支援する出入国審査支援システムが開示されている。具体的には、外国人受入機関の評価基準情報、受入機関の外国人採用の不許可事例、違法行為を行った受入機関及び不法外国人数、及び、事件処分情報に基づいて、受入機関毎の評価レベルが算出される。そして、評価レベルが所定レベル以下の機関情報が機関ブラックリスト情報に記録され、機関ブラックリスト情報に基づいて特定された受入機関に対する要注意メッセージがクライアントコンピュータへ出力される。これにより、受入機関の評価をファクターとして外国人の出入国及び残留審査を支援する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば日本国のように、労働に関する行政機関(厚生労働省)と国民の出入国を管理する行政機関(法務省)とが異なる場合もある。このような場合、行政機関間での情報連携が適切に行われなければ、潜在的不法滞在者を入国前に検知することは難しい。また、インバウンドにより入国者が増加する状況において、すべての人に対して均一に入国審査を行うのは現実的ではなく、効率よく入国審査を行うことも求められる。
【0006】
本発明の目的の一例は、適切な情報連携によって潜在的不法滞在者の入国を防止することの可能な、検知装置、検知方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一側面によれば、
就労ビザの申請時に提出された外国人就労者の認証情報と、入国時に取得された外国人就労者の認証情報とを照合する照合部と、
照合された認証情報と関連付けられた外国人就労者の雇用元情報に基づいて、外国人就労者が潜在的不法滞在者であるか否かを判定する判定部と、
を有する、検知装置が提供される。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明の一側面によれば、
就労ビザの申請時に提出された外国人就労者の認証情報と、入国時に取得された外国人就労者の認証情報とを照合し、
照合された認証情報と関連付けられた外国人就労者の雇用元情報に基づいて、外国人就労者が潜在的不法滞在者であるか否かを判定する、検知方法が提供される。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明の一側面によれば、
コンピュータを、
就労ビザの申請時に提出された外国人就労者の認証情報と、入国時に取得された外国人就労者の認証情報とを照合する照合部と、
照合された認証情報と関連付けられた外国人就労者の雇用元情報に基づいて、外国人就労者が潜在的不法滞在者であるか否かを判定する判定部と、
を有する、検知装置として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、適切な情報連携によって潜在的不法滞在者の入国を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る検知装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係る検知装置による処理の概要を示す説明図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係る検知装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、雇用元DBに記録されている雇用元の信用リストの一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、同実施形態に係る検知方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、同実施形態に係る検知装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1.概要]
まず、
図1に基づいて、本発明の一実施形態に係る検知装置100の構成及び機能を説明する。
図1は、本実施形態に係る検知装置100の一構成例を示すブロック図である。
【0013】
本実施形態に係る検知装置100は、潜在的不法滞在者の入国を防止するための装置である。本実施形態に係る検知装置100は、外国人就労者を雇用する雇用元情報に基づいて、入国しようとする外国人就労者が近い将来に不法滞在者となり得るか否かを判定する。例えば、過去に不法滞在者に労働を強要したり、不法滞在者の斡旋を行ったり、不法滞在者と知りながら雇用したりした雇用元は、繰り返し不当滞在者を雇用することがあり得る。本実施形態に係る検知装置100は、外国人就労者が雇用される雇用元が信用できる会社であるか否かに基づき、潜在的不法滞在者となり得る可能性が高い人物を特定する。
【0014】
より詳細には、検知装置100は、
図1に示すように、照合部110と、判定部120とを有する。照合部110は、就労ビザの申請時に提出された外国人就労者の認証情報と、入国時に取得された外国人就労者の認証情報とを照合する。判定部120は、照合された認証情報と関連付けられた外国人就労者の雇用元情報に基づいて、外国人就労者が潜在的不法滞在者であるか否かを判定する。
【0015】
これにより、検知装置100は、外国人就労者が入国する前に、潜在的不法滞在者となり得る可能性が高いか否かを判定することができる。その結果、潜在的不法滞在者となり得る可能性が高い人物については、入国審査を厳格に実施する等の対応が可能となり、潜在的不法滞在者の入国を未然に防止することができる。また、潜在的不法滞在者となり得る可能性が低い人物に対しては、入国審査を厳密に実施する必要が低いと判定することができる。したがって、潜在的不法滞在者の可能性に応じて入国審査を厳密に実施すべきか否かを判断することができ、効率よく入国審査を実施することも可能となる。
【0016】
[2.装置構成]
図2~
図4に基づいて、本実施形態に係る検知装置100の構成及びその機能について説明する。
図2は、本実施形態に係る検知装置100による処理の概要を示す説明図である。
図3は、本実施形態に係る検知装置100の一構成例を示すブロック図である。
図4は、雇用元DB23に記録されている雇用元の信用リストの一例を示す説明図である。
【0017】
本実施形態に係る検知装置100は、外国人就労者P1の入国前に、当該外国人就労者P1が潜在的不法滞在者となり得る可能性が高いか否かを判定する。検知装置100は、ネットワーク5を介して、就労サーバ10、管理サーバ20、入国審査場の案内端末30、入国審査端末40等と接続されている。
【0018】
図2に示すように、外国人労働者P1が入国するにあたり、外国人を雇用する会社等である雇用元P2は、予め、労働に関する行政機関に対して外国人就労者P1の就労ビザを申請する。就労ビザの申請には外国人就労者P1のパスポートを提出する必要がある。就労ビザの申請に関する審査が終了すると、雇用元情報である雇用元P2を特定するためのID(以下、「雇用元ID」ともいう。)と外国人就労者P1の生体情報と関連付けられ、就労者情報として、行政機関の就労サーバ10に格納される。なお、就労者情報には、パスポート番号等、就労ビザの申請時に提出された各種情報も含まれ、外国人就労者P1の生体情報と関連付けられている。
【0019】
就労サーバ10に格納される外国人就労者P1の生体情報は、例えば、パスポートあるいは就労ビザ申請用の顔写真、パスポートのICチップに記録された指紋、虹彩、静脈等の情報であってもよい。就労サーバ10は、管理サーバ20に対して就労者情報を提供する。
【0020】
また、管理サーバ20には、雇用元の信用リストが記録される。雇用元の信用リストは、信用度の低い雇用元のリスト(以下、「ブラックリスト」ともいう。)であってもよく、信用度の高い雇用元のリスト(以下、「ホワイトリスト」ともいう。)であってもよい。検知装置100は、ネットワーク5を介して接続された管理サーバ20の各種情報と、渡航先にて取得された外国人就労者の生体情報とに基づいて、外国人就労者が潜在的不法滞在者となり得る可能性を判定する。
【0021】
検知装置100による判定結果は、例えば、入国審査を厳密に実施する必要性を判定するために利用することができる。外国人就労者が潜在的不法滞在者である可能性が高いと判定されれば、入国審査を厳密に実施する必要があるため、当該外国人就労者を、入国審査の経験の長いベテランの入国審査官が対応する入国審査ブースに案内するのが望ましい。また、外国人就労者が潜在的不法滞在者である可能性が低いと判定されれば、入国審査を厳密に実施する必要性は低いため、当該外国人就労者は、自動審査の入国審査ゲートあるいは経験の浅い入国審査官が対応する入国審査ブースに案内してもよい。
【0022】
このように、検知装置100による判定結果に基づき、潜在的不法滞在者である可能性に応じて、外国人就労者を適切な入国審査ゲートあるいは入国審査ブースに振り分けることが可能となる。外国人就労者の振り分けは、例えば、
図2に示すように、入国審査場に設置された案内端末30を用いて外国人就労者を誘導することにより行ってもよい。あるいは、検知装置100の判定結果を入国審査ブースに設置された入国審査端末41~43に通知し、潜在的不法滞在者である可能性に応じて、入国審査官が入国審査の厳密さを変化させるようにしてもよい。
【0023】
検知装置100を用いることで、潜在的不法滞在者の入国を未然に防止することができるとともに、潜在的不法滞在者の可能性に応じて入国審査を厳密に実施すべきか否かを判断することができ、効率よく入国審査を実施することも可能となる。
【0024】
図3に、本実施形態に係る検知装置100を用いて構築される潜在的不法滞在者を検知する検知システムの構成と、検知装置100の一構成例を示す。検知システムは、
図3に示すように、検知装置100が、就労サーバ10、管理サーバ20、案内端末30、入国審査端末40等とネットワーク5を介して接続されて構成されている。
【0025】
就労サーバ10は、労働に関する行政機関により管理されているサーバであり、外国人就労者の就労ビザに関する就労者情報を記録している。外国人を雇用する会社等である雇用元が労働に関する行政機関(例えば、厚生労働省)に対して外国人就労者の就労ビザを申請すると、雇用元の雇用元IDと外国人就労者の生体情報とが関連付けられ、就労ビザの申請時に提示した情報とともに就労サーバ10に格納される。就労サーバ10は、所定のタイミング(例えば、外国人就労者の渡航前、等)で、管理サーバ20に対して就労者情報を提供する。
【0026】
管理サーバ20は、就労サーバ10から受信した就労者情報、及び、雇用元の信用リストを記録する。
図3に示すように、管理サーバ20は、例えば、就労者情報を記録する就労者情報データベース(DB)21と、雇用元の信用リストを記録する雇用元データベース(DB)23とを有する。
【0027】
就労者情報DB21は、外国人就労者毎に、就労サーバ10から受信した就労者情報を記録する。すなわち、就労者情報DB21には、就労ビザの申請時に提示した情報、雇用元ID、及び、外国人就労者の生体情報が記録されている。生体情報が顔画像である場合、顔画像そのものが記録されていてもよく、顔の重要部分(眼、鼻、口等)の画像が記録されていてもよく、顔の重要部分から抽出された特徴量が記録されていてもよい。
【0028】
雇用元データベース23には、雇用元の信用リストが記録される。雇用元の信用リストは、過去に不法滞在者に労働を強要したり、不法滞在者の斡旋を行ったり、不法滞在者と知りながら雇用したりした雇用元のブラックリストであってもよい。あるいは、雇用元の信用リストは、過去の実績から優良雇用者と認定されている、あるいは、信用ある組織、団体に加入している等、信用度の高い雇用元のホワイトリストであってもよい。なお、雇用元データベース23は、ブラックリスト及びホワイトリストを記録していてもよい。雇用元の信用リストは、例えば労働に関する行政機関等から提供される。雇用元DB23には、例えば
図4に示すように、雇用元に固有の雇用元ID23aに会社名23b等が関連付けて記録されている。管理サーバ20に記録された情報は、検知装置100により利用される。
【0029】
案内端末30及び入国審査端末40は、目的地の入国審査場に設置されている装置である。
図2にて説明したように、案内端末30は、外国人就労者を含む渡航者を入国審査ブースあるいは入国審査ゲートに案内するための装置である。入国審査端末40は、入国審査ブースに設置されており、入国審査官にて利用される。なお、入国審査ゲートは、渡航者の入国審査を実施する装置である。案内端末30及び入国審査端末40は、ネットワーク5を介して検知装置100から情報を受信可能に構成されている。
【0030】
検知装置100は、
図3に示すように、照合部110と、判定部120と、決定部130と、記憶部140とを有する。
【0031】
照合部110は、
図1にて説明したように、就労ビザの申請時に提出された外国人就労者の認証情報と、入国時に取得された外国人就労者の認証情報とを照合する。認証情報は、パスポート情報または生体情報等がある。認証情報としてパスポート情報を用いる場合には、パスポート番号等、外国人就労者を特定可能な情報が用いられる。渡航先において入国時に取得される渡航者の認証情報が顔画像である場合には、パスポートの顔写真を用いてもよい。
【0032】
外国人就労者の渡航先には、例えば渡航者が入国審査場に到着するまでの通路等に、認証情報取得装置が設置される。あるいは、目的地の入国審査場に設置された案内端末30に、認証情報取得装置の機能も保持させてもよい。認証情報取得装置は、具体的には、パスポートからパスポート情報を取得するパスポートリーダーや、顔画像を取得する撮像装置等である。認証情報として顔画像を用いれば、外国人就労者が例えば飛行機を降りて入国審査場に到着するまでの移動中に、撮像装置により外国人就労者の顔画像を取得することが可能である。これにより、外国人就労者は自ら情報を提示する必要もなく、また、検知装置100は、外国人就労者が入国審査場に到着するまでに検知処理を終えることができる。その結果、外国人就労者の入国審査をスムーズに進めることができる。
【0033】
照合部110は、認証情報取得装置により取得された外国人就労者の認証情報と、就労ビザの申請時に提出された外国人就労者の認証情報とを照合し、管理サーバ20の就労者情報DB21に記録された就労者情報から該当する人物を特定する。すなわち、照合部110は、パスポート番号あるいは生体情報の照合を行い、渡航先にて取得された外国人就労者の認証情報が一致する人物を就労者情報DB21から特定する。
【0034】
例えば、顔画像を用いて照合を行う場合、照合部110は、渡航先で取得された顔画像から特徴量を抽出する。そして、照合部110は、抽出した特徴量と、管理サーバ20の就労者情報DB21に記録されている顔画像から抽出された特徴量とを照合し、特徴量が一致する人物を特定する。照合部110は、照合結果を判定部120へ出力する。
【0035】
判定部120は、
図1にて説明したように、照合された認証情報と関連付けられた外国人就労者の雇用元情報に基づいて、外国人就労者が潜在的不法滞在者であるか否かを判定する。判定部120は、照合部110から入力された照合結果から、就労者情報DB21において外国人就労者の認証情報と関連付けられた雇用元情報を特定する。そして、判定部120は、特定した雇用元情報に基づき、外国人就労者の雇用元が雇用元の信用リストに記載されているか否かを判定する。例えば、判定部120は、就労者情報DB21に記録されている外国人就労の生体情報と関連付けられた雇用元IDを取得し、当該雇用元IDが雇用元DB23に記録された信用リストに記載されているか否かを判定する。
【0036】
例えば、雇用元の信用リストがブラックリストである場合、判定部120は、外国人就労者の雇用元が信用リストに記載されていれば、当該外国人就労者が潜在的不法滞在者である可能性が高いと判定する。一方、判定部120は、外国人就労者の雇用元が信用リストに記載されていなければ、当該外国人就労者が潜在的不法滞在者である可能性は低いと判定する。また、例えば、雇用元の信用リストがホワイトリストである場合には、判定部120は、外国人就労者の雇用元が信用リストに記載されていれば、当該外国人就労者が潜在的不法滞在者である可能性は低いと判定する。一方、判定部120は、外国人就労者の雇用元が信用リストに記載されていなければ、当該外国人就労者が潜在的不法滞在者である可能性が高いと判定する。
【0037】
なお、雇用元の信用リストとして、ブラックリスト及びホワイトリストの両方を用いてもよい。この場合、判定部120は、例えば、ブラックリスト及びホワイトリストのいずれにも記載されていない雇用元の外国人就労者を、潜在的不法滞在者である可能性が高いと判定してもよい。例えば新規の雇用元に関しては、雇用元に関する情報が十分蓄積されておらず、雇用元への評価が難しい。このため、このような雇用元は、ブラックリスト及びホワイトリストのいずれにも記載されない可能性が高い。そこで、このような雇用元に雇用される外国人就労者に対しては、念のため厳しく入国審査を実施するようにするために、判定部120は、ブラックリスト及びホワイトリストのいずれにも記載されていない雇用元の外国人就労者を、潜在的不法滞在者である可能性が高いと判定してもよい。
【0038】
判定部120は、判定結果を、外国人就労者の認証情報とともに、ネットワーク5を介して入国審査端末40へ出力してもよい。このとき、判定部120は、外国人就労者の氏名等、就労者情報に含まれる情報も、入国審査端末40に出力してもよい。判定部120から判定結果が入力された入国審査端末40を利用する入国審査官は、判定結果に基づいて、外国人就労者の入国審査を厳密に実施する必要があるかを判断することができる。
【0039】
また、判定部120は、判定結果を、外国人就労者の認証情報とともに、ネットワーク5を介して入国審査ゲートへ出力してもよい。判定結果が入力された入国審査ゲートは、潜在的不法滞在者である可能性に応じて外国人就労者の入国審査の厳密さを変化させるようにしてもよく、潜在的不法滞在者である可能性の高い人物の入国審査を拒否するようにしてもよい。また、判定結果が入力された入国審査ゲートは、判定部120による判定結果に応じて、ゲートに設けられたパトランプの色を変化させるようにしてもよい。あるいは、判定部120は、判定結果を、決定部130へ出力してもよい。
【0040】
決定部130は、判定部120による判定結果に基づいて、外国人就労者を審査する入国審査ゲートあるいは入国審査ブースを決定する。決定部130は、判定部120による判定の結果、外国人就労者が潜在的不法滞在者である可能性が高い場合には、有人の入国審査ゲートあるいは入国審査の経験の長いベテランの入国審査官が対応する入国審査ブースに案内することを決定する。一方、決定部130は、外国人就労者が潜在的不法滞在者である可能性が低い場合には、入国審査を厳密に実施する必要性は低いため、自動審査の入国審査ゲートあるいは経験の浅い入国審査官が対応する入国審査ブースに案内するようにしてもよい。
【0041】
決定部130は、決定した結果を、ネットワーク5を介して案内端末30へ出力する。案内端末30は、入国審査場に到着した外国人就労者を、決定部130により決定された入国審査ゲートあるいは入国審査ブースへ案内する。
【0042】
記憶部140は、検知装置100により実施される処理において必要となる各種情報を記憶する。記憶部140は、例えば、入国審査ゲート及び入国審査官が入国審査を行う入国審査ブースに関する情報を記憶する。具体的には、記憶部140は、入国審査を厳密に実施することの可能な、有人の入国審査ゲートや、ベテランの入国審査官が入国審査を行っている入国審査ブース、入国審査端末を記録している。これらの情報は、任意のタイミングで更新可能である。記憶部140に記録された情報は、検知装置100を構成する各機能部により参照可能である。
【0043】
[3.検知方法]
以下、
図5に基づいて、本実施形態に係る検知方法について説明する。
図5は、本実施形態に係る検知方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態に係る検知方法は、検知装置100を動作させることによって実施される。
図5では、一例として、信用度の低い雇用元を記載したブラックリストを用いた検知処理について説明する。ブラックリストに記載された雇用元は、繰り返し、不法滞在者に労働を強要したり、不法滞在者の斡旋を行ったり、不法滞在者と知りながら雇用したりし得る。本実施形態に係る検知装置100は、外国人就労者の雇用元情報に基づき、潜在的不法滞在者の可能性が高い人物を特定する。
【0044】
(S100:就労者情報の取得)
具体的に説明すると、
図5に示すように、予め、管理サーバ20に、外国人就労者の就労者情報、及び、雇用元の信用リストが記録される(S100)。管理サーバ20は、就労サーバ10から受信した就労者情報を記録するとともに、労働に関する行政機関等から提供された雇用元の信用リストを記録する。これらの情報は、外国人就労者が渡航先に到着する前に取得される。
【0045】
(S110:認証情報取得)
次いで、渡航先において入国時に外国人就労者の認証情報が取得される(S110)。認証情報は、例えばパスポート情報、生体情報等であり、渡航先の入国審査場等に設置された認証情報取得装置により取得される。認証情報取得装置により取得された外国人就労者の認証情報は、照合部110へ出力される。
【0046】
(S120、S130:認証情報の照合)
ステップS110にて外国人就労者の認証情報が取得されると、照合部110は、就労ビザの申請時に提出された外国人就労者の認証情報と、入国時に取得された外国人就労者の認証情報とを照合する(S120)。例えば、顔画像を用いて照合を行う場合、照合部110は、渡航先で取得された顔画像から特徴量を抽出する。そして、照合部110は、抽出した特徴量と、管理サーバ20の就労者情報DB21に記録されている顔画像から抽出された特徴量とを照合し、特徴量が一致する人物を特定する。このように、ステップS120の処理により、管理サーバ20の就労者情報DB21に記録された就労者情報から、該当する人物が特定される。就労者情報DB21から認証情報が一致する人物を特定できなかった場合には、判定部120は、照合結果を、案内端末30あるいは入国審査端末40へ出力し(S130)、
図5に示す処理を終了してもよい。
【0047】
(S140-S160:雇用元の信用確認)
一方、ステップS120にて、就労者情報DB21から外国人就労者の認証情報が一致する人物を特定すると、判定部120は、当該外国人就労者の雇用元の信用確認処理を実施する(S140)。すなわち、判定部120は、就労者情報に記録されている雇用元情報から、外国人就労者の雇用元が信用リストに記載されているか否かを判定する。
【0048】
判定部120は、外国人就労者の雇用元が信用リストに記載されている場合、当該外国人就労者が潜在的不法滞在者である可能性が高いと判定する(S150)。一方、判定部120は、外国人就労者の雇用元が信用リストに記載されていない場合、当該外国人就労者が潜在的不法滞在者である可能性は低いと判定する(S160)。
【0049】
(S170:判定結果出力)
その後、判定部120は、ステップS150またはS160の判定結果を、外国人就労者の認証情報とともに、ネットワーク5を介して入国審査端末40へ出力する(S170)。判定部120から判定結果を受信した入国審査端末40を利用する入国審査官は、判定結果に基づいて、当該外国人就労者の入国審査を厳密に実施する必要があるかを判断することができる。
【0050】
あるいは、判定部120は、ステップS150またはS160の判定結果を、決定部130へ出力してもよい。決定部130は、判定部120による判定結果に基づいて、外国人就労者を審査する入国審査ゲートあるいは入国審査ブースを決定する。そして、決定部130は、決定した結果を、ネットワーク5を介して案内端末30へ出力する。案内端末30は、外国人就労者を、決定部130により決定された入国審査ゲートあるいは入国審査ブースへ案内する。
【0051】
このように、雇用元の信用に基づき、外国人就労者が潜在的不法滞在者であるか否かを判定することができる。なお、
図5の例では、雇用元のブラックリストを用いて検知処理を実施したが、雇用元の信用リストとして、雇用元のホワイトリストを用いて検知処理を実施してもよい。この場合、上記ステップS140にて外国人就労者の雇用元が信用リストに記載されていると判定された場合には、判定部120は、当該外国人就労者が潜在的不法滞在者である可能性が低いと判定する。一方、判定部120は、外国人就労者の雇用元が信用リストに記載されていないと判定した場合、当該外国人就労者が潜在的不法滞在者である可能性が高いと判定する。
【0052】
また、雇用元の信用リストとして、ブラックリスト及びホワイトリストの両方を用いてもよい。この場合、判定部120は、ブラックリスト及びホワイトリストのいずれにも記載されていない雇用元で就労する外国人就労者を、潜在的不法滞在者である可能性が高いと判定してもよい。
【0053】
以上、本実施形態に係る検知装置100及びこれを用いた検知方法について説明した。本実施形態によれば、検知装置100は、照合部110により、就労ビザの申請時に提出された外国人就労者の認証情報と、入国時に取得された外国人就労者の認証情報とを照合する。そして、判定部120により、照合された認証情報と関連付けられた外国人就労者の雇用元情報に基づいて、外国人就労者が潜在的不法滞在者であるか否かを判定する。
【0054】
これにより、検知装置100は、外国人就労者が入国する前に潜在的不法滞在者の可能性が高いか否かを判定することができる。その結果、潜在的不法滞在者の可能性が高い人物については、入国審査を厳格に実施する等の対応が可能となり、潜在的不法滞在者の入国を未然に防止することができる。また、潜在的不法滞在者の可能性が低い人物に対しては、入国審査を厳密に実施する必要が低いと判定することができる。したがって、潜在的不法滞在者の可能性に応じて入国審査を厳密に実施すべきか否かを判断することができ、効率よく入国審査を実施することもできる。
【0055】
[4.プログラム]
本実施形態に係るプログラムは、コンピュータを、
図1または
図3に示す機能部として実行させるプログラムであればよい。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施形態に係る検知装置100と検知方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのプロセッサは、検知装置100の照合部110、判定部120、さらには決定部130として機能し、処理を行う。
【0056】
また、本実施形態では、記憶部140は、コンピュータに備えられたハードディスク等の記憶装置に、これらを構成するデータファイルを格納することによって実現されていてもよいし、別のコンピュータの記憶装置によって実現されていてもよい。コンピュータとしては、汎用のPCの他に、スマートフォン、タブレット型端末装置が挙げられる。
【0057】
さらに、本実施形態に係るプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されてもよい。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、照合部110、判定部120、決定部130のいずれかとして機能してもよい。
【0058】
[5.物理構成]
上記実施形態に係るプログラムを実行することによって、検知装置100を実現するコンピュータの物理構成について、
図6を用いて説明する。
図6は、本実施形態に係る検知装置100を実現するコンピュータ900の一例を示すブロック図である。
【0059】
図6に示すように、コンピュータ900は、CPU(Central Processing Unit)901と、メインメモリ902と、記憶装置903と、入力インターフェイス904と、表示コントローラ905と、データリーダ/ライタ906と、通信インターフェイス907とを備える。これらの各部は、バス911を介して、互いにデータ通信可能に接続される。
【0060】
また、コンピュータ900は、CPU901に加えて、又はCPU901に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を備えていてもよい。この態様では、GPU又はFPGAが、上記実施形態におけるプログラムを実行することができる。
【0061】
CPU901は、記憶装置903に格納された、コード群で構成された実施の形態におけるプログラムをメインメモリ902に展開し、各コードを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ902は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。
【0062】
また、上記実施形態に係るプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体910に格納された状態で提供される。なお、上記実施形態におけるプログラムは、通信インターフェイス907を介して接続されたインターネット上で流通するものであってもよい。
【0063】
また、記憶装置903の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス904は、CPU901と、キーボード及びマウスといった入力機器908との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ905は、ディスプレイ装置909と接続され、ディスプレイ装置909での表示を制御する。
【0064】
データリーダ/ライタ906は、CPU901と記録媒体910との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体910からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ900における処理結果の記録媒体910への書き込みを実行する。通信インターフェイス907は、CPU901と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0065】
また、記録媒体910の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体が挙げられる。
【0066】
なお、上記実施形態に係る検知装置100は、プログラムがインストールされたコンピュータではなく、各部に対応したハードウェアを用いることによっても実現可能である。さらに、検知装置100は、一部がプログラムで実現され、残りの部分がハードウェアで実現されていてもよい。
【0067】
上述した実施の形態の一部又は全部は、以下に記載する(付記1)~(付記15)によって表現することができるが、以下の記載に限定されるものではない。
【0068】
(付記1)
就労ビザの申請時に提出された外国人就労者の認証情報と、入国時に取得された外国人就労者の認証情報とを照合する照合部と、
照合された認証情報と関連付けられた前記外国人就労者の雇用元情報に基づいて、前記外国人就労者が潜在的不法滞在者であるか否かを判定する判定部と、
を有する、検知装置。
【0069】
(付記2)
前記判定部は、前記雇用元情報が、雇用元の信用リストに存在するか否かに基づいて、前記外国人就労者が潜在的不法滞在者であるか否かを判定する、付記1に記載の検知装置。
【0070】
(付記3)
前記判定部による判定結果に基づいて、前記外国人就労者の入国審査を行う入国審査官を決定する決定部を有し、
前記決定部は、決定した前記入国審査官の入国審査ブースを、入国審査場に設置された案内端末に通知する、付記1または2に記載の検知装置。
【0071】
(付記4)
前記判定部は、判定結果を入国審査官が利用する入国審査端末に送信する、付記1または2に記載の検知装置。
【0072】
(付記5)
前記認証情報は、生体情報またはパスポート情報である、付記1~4のいずれか1項に記載の検知装置。
【0073】
(付記6)
就労ビザの申請時に提出された外国人就労者の認証情報と、入国時に取得された外国人就労者の認証情報とを照合し、
照合された認証情報と関連付けられた前記外国人就労者の雇用元情報に基づいて、前記外国人就労者が潜在的不法滞在者であるか否かを判定する、検知方法。
【0074】
(付記7)
前記雇用元情報が、雇用元の信用リストに存在するか否かに基づいて、前記外国人就労者が潜在的不法滞在者であるか否かを判定する、付記6に記載の検知方法。
【0075】
(付記8)
判定結果に基づいて、前記外国人就労者の入国審査を行う入国審査官を決定し、
決定した前記入国審査官の入国審査ブースを、入国審査場に設置された案内端末に通知する、付記6または7に記載の検知方法。
【0076】
(付記9)
判定結果を入国審査官が利用する入国審査端末に送信する、付記6または7に記載の検知方法。
【0077】
(付記10)
前記認証情報は、生体情報またはパスポート情報である、付記6~9のいずれか1項に記載の検知方法。
【0078】
(付記11)
コンピュータを、
就労ビザの申請時に提出された外国人就労者の認証情報と、入国時に取得された外国人就労者の認証情報とを照合する照合部と、
照合された認証情報と関連付けられた前記外国人就労者の雇用元情報に基づいて、前記外国人就労者が潜在的不法滞在者であるか否かを判定する判定部と、
を有する、検知装置として機能させるためのプログラム。
【0079】
(付記12)
前記判定部は、前記雇用元情報が、雇用元の信用リストに存在するか否かに基づいて、前記外国人就労者が潜在的不法滞在者であるか否かを判定する、付記11に記載のプログラム。
【0080】
(付記13)
コンピュータを、前記判定部による判定結果に基づいて、前記外国人就労者の入国審査を行う入国審査官を決定する決定部をさらに有する検知装置として機能させ、
前記決定部は、決定した前記入国審査官の入国審査ブースを、入国審査場に設置された案内端末に通知する、付記11または12に記載のプログラム。
【0081】
(付記14)
前記判定部は、判定結果を入国審査官が利用する入国審査端末に送信する、付記11または12に記載のプログラム。
【0082】
(付記15)
前記認証情報は、生体情報またはパスポート情報である、付記11~14のいずれか1項に記載のプログラム。
【0083】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上のように本発明によれば、潜在的不法滞在者の可能性の高い渡航者を検知することができる。本発明は、外国人就労者の入国審査に有用である。
【符号の説明】
【0085】
10 就労サーバ
20 管理サーバ
21 就労者情報データベース
23 雇用元データベース
30 案内端末
40(41~43) 入国審査端末
100 検知装置
110 照合部
120 判定部
130 決定部
140 記憶部
900 コンピュータ
901 CPU
902 メインメモリ
903 記憶装置
904 入力インターフェイス
905 表示コントローラ
906 データリーダ/ライタ
907 通信インターフェイス
908 入力機器
909 ディスプレイ装置
910 記録媒体
911 バス