(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
H10N 30/30 20230101AFI20240116BHJP
H10N 30/04 20230101ALI20240116BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20240116BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20240116BHJP
H10N 30/87 20230101ALI20240116BHJP
H10N 30/88 20230101ALI20240116BHJP
【FI】
H10N30/30
H10N30/04
H10N30/853
H10N30/20
H10N30/87
H10N30/88
(21)【出願番号】P 2022518605
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2021002409
(87)【国際公開番号】W WO2021220566
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2020080440
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 青司
(72)【発明者】
【氏名】池内 伸介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝之
(72)【発明者】
【氏名】リウック マッティ
(72)【発明者】
【氏名】リトコネン ヴィッレ-ペッカ
(72)【発明者】
【氏名】ブロムクビスト アンッシ
(72)【発明者】
【氏名】カーヤカリ ヴィレ
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0100033(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0110132(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0053393(US,A1)
【文献】特開2015-108633(JP,A)
【文献】特開2011-004129(JP,A)
【文献】特表2014-515214(JP,A)
【文献】特開2017-022576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/30
H10N 30/04
H10N 30/853
H10N 30/20
H10N 30/87
H10N 30/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の基部と、
前記基部に接続された固定端部と、該固定端部とは反対側に位置する先端部とを有し、前記固定端部から前記先端部に向かって延在する複数の梁部と、
前記複数の梁部のうち前記基部の周方向に互いに隣り合う一対の梁部を接続する接続部とを備え、
前記複数の梁部の各々は、複数の層を含む圧電振動部であり、
前記一対の梁部の間には、前記一対の梁部の互いに隣り合う一対の端縁の一部によって形成されるスリットと、該スリットに間隔をあけつつ前記一対の梁部の各々の前記先端部に隣接して位置し、前記一対の端縁の他の一部によって形成される開口部とが設けられており、
前記接続部は、前記一対の梁部の間を折返すように設けられており、
前記接続部は、前記スリットに沿って延在して前記一対の梁部の一方に接続された第1連結部と、前記スリットに沿って延在して前記一対の梁部の他方に接続された第2連結部と、前記スリットと前記開口部との間に位置して前記第1連結部および前記第2連結部の各々と接続された橋渡し部とを含み、
前記複数の梁部の各々は、互いに交差する方向に延在する前記スリットに挟まれて位置しつつ前記接続部を介して前記周方向に互いに接続されて
おり、
前記スリットに間隔をあけて前記第1連結部および前記第2連結部の各々に沿って延在しつつ前記開口部と連通した外周スリットがさらに設けられている、圧電デバイス。
【請求項2】
前記複数の層は、
単結晶圧電体で構成された圧電体層と、
前記複数の層の積層方向において前記圧電体層の一方側に配置された第1電極層と、
前記圧電体層を挟んで前記第1電極層の少なくとも一部と対向するように前記圧電体層の他方側に配置された第2電極層とを有し、
前記単結晶圧電体の分極軸を、前記積層方向に直交する仮想平面上に前記積層方向から投影したときの仮想軸の軸方向は、前記複数の梁部のいずれにおいても同一方向に延在しており、かつ、前記積層方向から見て、前記複数の梁部の各々の延在方向と交差している、請求項
1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記積層方向から見て、前記仮想軸の軸方向は、前記複数の梁部の各々の延在方向とのなす角が、40度以上50度以下、または、130度以上140度以下である、請求項
2に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記圧電体層は、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、または、タンタル酸リチウム(LiTaO
3)で構成されている、請求項
2または請求項
3に記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記複数の梁部として、4つの梁部を備え、
前記4つの梁部の前記固定端部は、前記積層方向から見て、正方形状に位置しており、
前記積層方向から見て、前記4つの梁部の前記固定端部のうちの向かい合う固定端部同士の最短距離の寸法に対する、前記第1連結部および前記第2連結部の各々の延出長さの寸法の比率は、32%以下である、請求項
2から請求項
4のいずれか1項に記載の圧電デバイス。
【請求項6】
前記第1連結部および前記第2連結部の各々の最小幅の寸法は、前記第1連結部および前記第2連結部の各々の前記積層方向における厚さの寸法より大きい、請求項
2から請求項
5のいずれか1項に記載の圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電デバイスの構成を開示した文献として、米国特許出願公開第2019/0110132号明細書(特許文献1)がある。特許文献1に記載された圧電デバイスは、複数のプレートと、複数のスプリングとを含んでいる。複数のスプリングの各々は、2つの隣接するプレートを互いに接続する。複数のスプリングの各々は、2つの隣接するプレートの間のギャップを互いの間に挟む第1スプリングアームおよび第2スプリングアームを含む。第1スプリングアームおよび第2スプリングアームの各々は、プレートのエッチングされた部分を囲む部分を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2019/0110132号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された圧電デバイスにおいては、スプリングの根元部分が梁部であるプレートの固定端側とは反対側の先端に配置されている。スプリングの根元部には、応力集中が発生するため、プレートの先端で互いに交差する2つの端縁の各々にスプリングが配置されて2つのスプリングの根元部同士が接近している場合、当該根元部同士の間に亀裂が発生して励振特性が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされてものであって、複数の梁部の各々において応力集中箇所を互いに離間させることにより励振特性の低下を抑制することができる、圧電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく圧電デバイスは、環状の基部と、複数の梁部と、接続部とを備える。複数の梁部は、基部に接続された固定端部と、固定端部とは反対側に位置する先端部とを有し、固定端部から先端部に向かって延在する。接続部は、複数の梁部のうち基部の周方向に互いに隣り合う一対の梁部を接続する。複数の梁部の各々は、複数の層を含む圧電振動部である。上記一対の梁部の間には、スリットと開口部とが設けられている。スリットは、上記一対の梁部の互いに隣り合う一対の端縁の一部によって形成される。開口部は、スリットに間隔をあけつつ上記一対の梁部の各々の先端部に隣接して位置し、上記一対の端縁の他の一部によって形成される。接続部は、上記一対の梁部の間を折返すように設けられている。接続部は、第1連結部と、第2連結部と、橋渡し部とを含む。第1連結部は、スリットに沿って延在して一対の梁部の一方に接続されている。第2連結部は、スリットに沿って延在して一対の梁部の他方に接続されている。橋渡し部は、スリットと開口部との間に位置して第1連結部および第2連結部の各々と接続されている。複数の梁部の各々は、互いに交差する方向に延在するスリットに挟まれて位置しつつ接続部を介して上記周方向に互いに接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の梁部の各々において応力集中箇所を互いに離間させることにより圧電デバイスの励振特性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの平面図である。
【
図2】
図1の圧電デバイスをII-II線矢印方向から見た断面図である。
【
図3】
図1のIII部を拡大して示す部分平面図である。
【
図4】本発明の実施形態1の第1変形例に係る圧電デバイスの部分平面図である。
【
図5】本発明の実施形態1の第2変形例に係る圧電デバイスの平面図である。
【
図6】
図5に示した圧電デバイスをVI-VI線矢印方向から見た部分断面図である。
【
図7】本発明の実施形態1の第3変形例に係る圧電デバイスの平面図である。
【
図8】
図7に示した圧電デバイスをVIII-VIII線矢印方向から見た部分断面図である。
【
図9】
図7に示した圧電デバイスをIX-IX線矢印方向から見た部分断面図である。
【
図10】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの梁部の一部を模式的に示した断面図である。
【
図11】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの、駆動時における梁部の一部を模式的に示した断面図である。
【
図12】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスについて、基本振動モードで振動している状態をシミュレーションによって示した斜視図である。
【
図13】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において
、圧電単結晶基板に第2電極層を設けた状態を示す断面図である。
【
図14】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、第1支持部を設けた状態を示す断面図である。
【
図15】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、第1支持部に、積層体を接合させた状態を示す断面図である。
【
図16】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、圧電単結晶基板を削って圧電体層を形成した状態を示す断面図である。
【
図17】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、圧電体層に、第1電極層を設けた状態を示す断面図である。
【
図18】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、溝部および凹部を設けた状態を示す断面図である。
【
図19】本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、第1接続電極層および第2
接続電極層を設けた状態を示
す断面図である。
【
図20】本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの平面図である。
【
図21】
図20の圧電デバイスをXXI-XXI線矢印方向から見た断面図である。
【
図22】本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの接続部の構成を示す部分平面図である。
【
図23】シミュレーション解析結果を示すグラフである。
【
図24】本発明の実施形態2の第1変形例に係る圧電デバイスの接続部の形状を示す部分平面図である。
【
図25】本発明の実施形態2の第2変形例に係る圧電デバイスの接続部の形状を示す部分平面図である。
【
図26】本発明の実施形態2の第3変形例に係る圧電デバイスの接続部の形状を示す部分平面図である。
【
図27】本発明の実施形態2の第4変形例に係る圧電デバイスの接続部の形状を示す部分平面図である。
【
図28】本発明の実施形態2の第5変形例に係る圧電デバイスの接続部の形状を示す部分平面図である。
【
図29】本発明の実施形態2の第6変形例に係る圧電デバイスの接続部の形状を示す部分平面図である。
【
図30】本発明の実施形態2の第7変形例に係る圧電デバイスの接続部の形状を示す部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態に係る圧電デバイスについて図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0010】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの平面図である。
図2は、
図1の圧電デバイスをII-II線矢印方向から見た断面図である。
図3は、
図1のIII部を拡大して示す部分平面図である。
【0011】
図1から
図3に示すように、本発明の実施形態1に係る圧電デバイス100は、環状の基部110と、複数の梁部120と、接続部130とを備えている。本実施形態に係る圧電デバイス100は、複数の梁部120の各々が屈曲振動可能であり、超音波トランスデューサとして用いることができる。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施形態1に係る圧電デバイス100は、複数の梁部120として、4つの梁部120と、接続部130として、4つの接続部130とを備えている。4つの梁部120の各々は、同一の平面内に沿って位置している。4つの梁部120の各々は、環状の基部110の中心に向かって延出し、かつ、基部110の周方向に互いに隣り合っている。4つの接続部130は、4つの梁部120のうち互いに隣り合う梁部120同士の間に1つずつ配置されて隣り合う一対の梁部120を接続している。
【0013】
本実施形態においては、4つの梁部120は、基部110の中心に関して互いに回転対称となるように構成されている。4つの接続部130も、基部110の中心に関して互いに回転対象となるように構成されている。
【0014】
基部110は、複数の梁部120の各々の固定端部121と接続されている。基部110は、後述する複数の層の積層方向から見て、環状の形状を有しており、具体的には、矩形環状の形状を有している。なお、基部110を上記積層方向から見たときの形状は、環状であれば特に限定されない。基部110は、上記積層方向から見て、外周側面が多角形状または円形状であってもよく、内周側面が多角形状または円形状であってもよい。
【0015】
図2に示すように、複数の梁部120の各々は、複数の層10を含む圧電振動部である。なお、
図1においては、複数の層10の各層については図示していない。複数の層10の構成の詳細については後述する。
【0016】
図1に示すように、複数の梁部120の各々は、固定端部121と、先端部122とを有している。固定端部121は、基部110に接続されている。複数の梁部120の各々の固定端部121は、同一の仮想平面内に位置している。複数の梁部120の各々の固定端部121は、上記積層方向から見たときに環状の基部110の内周面に接続されている。複数の梁部120の各々の固定端部121は、上記積層方向から見て上記内周面上において互いに隣り合うように位置している。本実施形態においては、複数の梁部120の各々の固定端部121は、上記積層方向から見たときに、基部110の矩形環状の内周面の複数の辺の各々と1対1で対応するように位置している。
【0017】
本実施形態において、複数の梁部120の各々の先端部122は、上記積層方向から見て環状の基部110の中心近傍に位置している。複数の梁部120の各々は、固定端部121から先端部122に向かって延在している。すなわち、複数の梁部120の各々の延在方向において、先端部122は、固定端部121とは反対側の端部に位置している。本実施形態において、複数の梁部120の各々は、圧電デバイス100が駆動していない状態において、同一の仮想平面に沿うように延在している。
【0018】
図1に示すように、複数の梁部120の各々は、上記積層方向から見たときに、先細の外形を有している。具体的には、複数の梁部120の各々は、上記積層方向から見て、略三角形状の外形を有している。複数の梁部120の各々の延在方向は、固定端部121の中心と先端部122とを結ぶ方向である。
【0019】
本実施形態において、複数の梁部120の各々の延在方向の長さは、屈曲振動を容易にするという観点から、複数の梁部120の各々の上記積層方向における厚さの寸法の少なくとも5倍以上であることが好ましい。なお、
図2においては、複数の梁部120の各々の厚さは、模式的に示している。
【0020】
図1および
図3に示すように、複数の梁部120のうち基部110の周方向に互いに隣り合う一対の梁部120の間には、スリット141と開口部142とが設けられている。本実施形態においては、外周スリット143がさらに設けられている。
【0021】
スリット141は、一対の梁部120の互いに隣り合う一対の端縁の一部によって形成されている。上記積層方向から見て、スリット141は、複数の梁部120の各々の略三角形状の外形のうちの固定端部121から先端部122に向かって延在する2辺に沿って位置している。
【0022】
開口部142は、スリット141に間隔をあけつつ一対の梁部120の各々の先端部122に隣接して位置し、一対の梁部120の互いに隣り合う一対の端縁の他の一部によって形成されている。上記積層方向から見て、開口部142は、スリット141の延長線上に位置している。上記積層方向から見て、開口部142は、環状の基部110の中心上に位置している。
【0023】
外周スリット143は、スリット141に間隔をあけて後述する第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々に沿って延在しつつ開口部142と連通している。具体的には、外周スリット143は、接続部130を互いの間に挟んで並行に延在する2本のスリットで構成されている。
【0024】
上記積層方向から見たときのスリット141および外周スリット143の各々の幅は、10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。
【0025】
図1および
図3に示すように、接続部130は、複数の梁部120のうち基部110の周方向に互いに隣り合う一対の梁部120を接続する。接続部130は、一対の梁部120の間を折返すように設けられている。
【0026】
接続部130は、第1端部133Aと、第2端部133Bとを有している。接続部130は、第1端部133Aにおいて、一対の梁部120の一方と接続している。接続部130は、第2端部133Bにおいて、一対の梁部120の他方と接続している。第2端部133Bは、一対の梁部120が並んでいる方向に第1端部133Aと隙間をあけて並んでいる。本実施形態においては、接続部130は、第1端部133Aを1つのみ有し、かつ、第2端部133Bを1つのみ有している。
【0027】
具体的には、接続部130は、第1連結部132Aと、第2連結部132Bと、橋渡し部131とを含む。第1連結部132Aは、スリット141に沿って延在して一対の梁部120の一方に接続されている。第2連結部132Bは、スリット141に沿って延在して一対の梁部120の他方に接続されている。
【0028】
橋渡し部131は、スリット141と開口部142との間に位置して第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々と接続されている。橋渡し部131は、互いに隣り合う第1連結部132Aおよび第2連結部132Bが並んでいる方向に沿うように、延在している。
【0029】
第1連結部132Aは、橋渡し部131における一対の梁部120の一方側に位置する部分に接続されている。第2連結部132Bは、橋渡し部131における一対の梁部120の他方側に位置する部分に接続されている。
【0030】
本実施形態においては、上記積層方向から見たときに、橋渡し部131、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々が矩形状の外形を有しているが、橋渡し部131、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の外形形状は特に限定されない。上記積層方向から見たときに、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の外形は、略楕円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。橋渡し部131、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々において、上記積層方向に延びる側面が、上記積層方向から見て湾曲していてもよい。
【0031】
図3に示すように、本実施形態において、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の長さLの寸法は、互いに略同一である。第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法は、互いに略同一である。第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の長さLの寸法は、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法より大きい。第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の長さLの寸法は、橋渡し部131から基部110の中心までの最短長さbの寸法より大きい。第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の長さLの寸法は、橋渡し部131の最大幅aの寸法より大きい。橋渡し部131の最大幅aの寸法は、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法より大きい。
【0032】
第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の長さLの寸法が小さいほど、一対の梁部120が互いに強固に接続され、一対の梁部120の振動ばらつきが小さくなる。第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の長さLの寸法が大きくなるほど、一対の梁部120の各々の振動の共振周波数が高くなることを抑制できる。第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法が大きいほど、一対の梁部120が互いに強固に接続される。橋渡し部131から基部110の中心までの最短長さbの寸法が小さいほど、一対の梁部120が互いに強固に接続されるとともに、圧電デバイス100の励振時に開口部142を通過する空気の量を低減できるため、圧電デバイス100の損失を低減することができる。橋渡し部131の最大幅aの寸法は、接続部130が振動した際の接続部130の共振周波数に影響する。
【0033】
本実施形態において、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の長さLの寸法は、たとえば10μm以上200μm以下である。第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法は、たとえば10μmである。橋渡し部131から基部110の中心までの最短長さbの寸法は、たとえば25μmである。橋渡し部131の最大幅aの寸法は、たとえば15μmである。
【0034】
ここで、接続部の形状が異なる本発明の実施形態1の第1変形例に係る圧電デバイスについて説明する。
【0035】
図4は、本発明の実施形態1の第1変形例に係る圧電デバイスの部分平面図である。
図4においては、
図3に示した本発明の実施形態1に係る圧電デバイス100と同様の部分を示している。
【0036】
図4に示すように、本発明の実施形態1の第1変形例に係る圧電デバイス100aにおいては、橋渡し部131の開口部142と接している側面が湾曲している。このように橋渡し部131の上記側面が湾曲していることにより、接続部130における内部応力を低減することができる。
【0037】
また、圧電デバイス100aにおいては、第1連結部132Aの幅が第1端部133Aに近づくにつれて広くなる部分を有するように、かつ、第2連結部132Bの幅が第2端部133Bに近づくにつれて広くなる部分を有するように、外周スリット143の開口部142側とは反対側の端部が互いに離れるように湾曲している。
【0038】
次に、複数の層10について説明する。
図2に示すように、本実施形態においては、複数の層10は、圧電体層11と、第1電極層12と、第2電極層13とを有している。
【0039】
圧電体層11は、単結晶圧電体で構成されている。圧電体層11のカット方位は、所望のデバイス特性を発現するように適宜選択される。本実施形態において、圧電体層11は単結晶基板を薄化したものであり、単結晶基板は具体的には回転Yカット基板である。回転Yカット基板のカット方位は具体的には30°である。圧電体層11の厚さは、たとえば0.3μm以上5.0μm以下である。単結晶圧電体は、分極軸を有している。分極軸の軸方向の詳細については後述する。
【0040】
圧電体層11を構成する材料は、圧電デバイス100が所望のデバイス特性を発現するように適宜選択される。本実施形態においては、圧電体層11は、無機材料で構成されている。具体的には、圧電体層11は、ニオブ酸アルカリ系の化合物またはタンタル酸アルカリ系の化合物で構成されている。本実施形態においては、ニオブ酸アルカリ系の化合物またはタンタル酸アルカリ系の化合物に含まれるアルカリ金属は、リチウム、ナトリウムおよびカリウムの少なくとも1つからなる。本実施形態において、圧電体層11は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、または、タンタル酸リチウム(LiTaO3)で構成されている。
【0041】
図2に示すように、第1電極層12は、複数の層10の積層方向において圧電体層11の一方側に配置されている。第2電極層13は、圧電体層11を挟んで第1電極層12の少なくとも一部と対向するように圧電体層11の他方側に配置されている。
【0042】
本実施形態においては、第1電極層12と圧電体層11との間、および、第2電極層13と圧電体層11との間、および、第2電極層13と圧電体層11との間の各々には、図示しない密着層が配置されている。また、複数の梁部120の各々において、第1電極層12および第2電極層13の各々は、スリット141、開口部142および外周スリット143の各々に面しないように設けられている。
【0043】
本実施形態において、第1電極層12および第2電極層13の各々はPtで構成されている。第1電極層12および第2電極層13の各々は、Alなどの他の材料で構成されていてもよい。密着層は、Tiで構成されている。密着層は、NiCrなど他の材料で構成されていてもよい。第1電極層12、第2電極層13および上記密着層の各々は、エピタキシャル成長膜であってもよい。圧電体層11がニオブ酸リチウム(LiNbO3)で構成されている場合には、密着層を構成する材料が第1電極層12または第2電極層13に拡散することを抑制するという観点から、密着層は、NiCrで構成されることが好ましい。これにより、圧電デバイス100の信頼性が向上する。
【0044】
本実施形態においては、第1電極層12および第2電極層13の各々の厚さは、たとえば0.05μm以上0.2μm以下である。密着層の厚さは、たとえば0.005μm以上0.05μm以下である。
【0045】
複数の層10は、支持層14をさらに含んでいる。支持層14は、圧電体層11の第1電極層12側とは反対側、および、第2電極層13の圧電体層11側とは反対側に配置されている。支持層14は、第1支持部14aと、第1支持部14aの圧電体層11側とは反対側に積層された第2支持部14bとを有している。本実施形態において、第1支持部14aは、SiO2で構成され、第2支持部14bは、単結晶Siで構成されている。本実施形態において、支持層14の厚さは、複数の梁部120の屈曲振動の観点から、圧電体層11より厚いことが好ましい。なお、複数の梁部120の屈曲振動のメカニズムについては後述する。
【0046】
また、
図2に示すように、本実施形態においては、接続部130は、複数の梁部120の各々を構成する複数の層10が積層方向に対する直交方向に連続することで構成されている。ただし、本実施形態においては、接続部130における複数の層10は、第1電極層12と第2電極層13とを含んでいない。
【0047】
さらに、基部110を構成する部材について説明する。
図2に示すように、本実施形態においては、基部110は、複数の梁部120と同様の複数の層10を含んでいる。基部110の複数の層10は、複数の梁部120の複数の層10が連続することで構成されている。具体的には、基部110を構成する圧電体層11、第1電極層12、第2電極層13および支持層14は、複数の梁部120を構成する圧電体層11、第1電極層12、第2電極層13および支持層14にそれぞれ連続するように構成されている。そして、基部110は、基板層15と、第1接続電極層20と、第2接続電極層30とをさらに含んでいる。
【0048】
基板層15は、環状の基部110の中心軸の軸方向において、支持層14の圧電体層11側とは反対側に接続されている。基板層15は、第1基板層15aと、上記中心軸の軸方向において第1基板層15aの支持層14側とは反対側に積層された第2基板層15bとを含んでいる。本実施形態において、第1基板層15aは、SiO2で構成されており、第2基板層15bは、単結晶Siで構成されている。
【0049】
図2に示すように,第1接続電極層20は、図示しない密着層を介して、第1電極層12に電気的に接続されつつ外部に露出している。具体的には、第1接続電極層20は、基部110における第2電極層13の支持層14側とは反対側に配置されている。
【0050】
第1接続電極層20および第2接続電極層30の各々の厚さは、たとえば0.1μm以上1.0μm以下である。第1接続電極層20と接続している密着層および第2接続電極層30の各々と接続している密着層の厚さはたとえば0.005μm以上0.1μm以下である。
【0051】
本実施形態において、第1接続電極層20および第2接続電極層30の各々は、Auで構成されている。第1接続電極層20および第2接続電極層30は、Alなどの他の導電材料で構成されていてもよい。第1接続電極層20と接続している密着層および第2接続電極層30と接続している密着層の各々は、たとえばTiで構成されている。これらの密着層はNiCrで構成されていてもよい。
【0052】
図2に示すように、本実施形態に係る圧電デバイス100には、上記積層方向において、圧電体層11側とは反対側に開口する、穴部101が形成されている。本実施形態において、穴部101は、基部110、複数の梁部120、複数の接続部130およびスリット141、開口部142および外周スリット143によって囲まれた空間である。
【0053】
ここで、圧電体層11を構成する単結晶圧電体の分極軸の軸方向について説明する。単結晶圧電体の分極軸を上記積層方向に直交する仮想平面上に上記積層方向から投影したときの仮想軸の軸方向は、複数の梁部120のいずれにおいても同一方向に延在しており、かつ、上記積層方向から見て、複数のスリット141の各々の延在方向とのなす角が45度または135度でないことが好ましい。
【0054】
より具体的には、本実施形態においては、上記仮想軸の軸方向は、上記積層方向から見て、複数のスリット141の各々の延在方向とのなす角が、0度以上5度以下、85度以上95度以下、または、175度以上180度未満であることがより好ましい。
【0055】
また、上記積層方向から見て、複数の梁部120の各々の延在方向と、上記積層方向から見たときの上記仮想軸の軸方向とのなす角は、40度以上50度以下、または、130度以上140度以下であることがより好ましい。本実施形態に係る圧電デバイス100における上記仮想軸の軸方向は、いずれのスリット141および橋渡し部131に対しても、上記の関係が成り立っていることが好ましい。上記仮想軸に関する各角度について、好適な範囲があることの理由については後述する。
【0056】
本実施形態においては、上記仮想軸の軸方向は、特定の方向を向いているが、上記仮想軸の軸方向は特に限定されない。
【0057】
また、本実施形態においては、単結晶圧電体が分極軸を有しているため、複数の梁部120に熱応力が発生することで、複数の梁部120の各々が上記積層方向に対する直交方向から見て反っている場合がある。複数の梁部120の各々が反っている変形例について、以下に説明する。
【0058】
図5は、本発明の実施形態1の第2変形例に係る圧電デバイスの平面図である。
図6は、
図5に示した圧電デバイスをVI-VI線矢印方向から見た部分断面図である。
【0059】
図5に示すように、本発明の実施形態1の第2変形例に係る圧電デバイス100bにおいては、上記積層方向から見て、上記仮想軸の軸方向と、複数のスリット141の各々とのなす角は、45度である。
【0060】
このため、本変形例においては、上記積層方向から見たときの上記仮想軸の軸方向における、接続部130の中央から、一対の梁部120のうち一方の梁部120の反対側の端部までの長さL1と、接続部130の中央から、一対の梁部120のうち他方の梁部120の反対側の端部までの長さL2とが、互いに異なっている。また、上記積層方向から見たときの上記仮想軸の軸方向における、一対の梁部120のうちの一方の梁部120の、接続部130の中央側とは反対側に位置する端部は、固定端部121でない。一方で、上記積層方向から見たときの上記仮想軸の軸方向における、上記積層方向から見たときの上記仮想軸の軸方向における、他方の梁部120の、接続部130の中央側とは反対側に位置する端部は固定端部121である。このため、複数の梁部120に熱応力がかかった場合は、接続部130近傍においては、一対の梁部120がそれぞれ異なる態様で反ることとなる。
【0061】
本変形例に係る圧電デバイス100bにおいては、複数の梁部120に上述した熱応力が加わっている。結果として、
図6に示すように、圧電デバイス100bが駆動していない状態において、接続部130の中央近傍における、一対の梁部120の各々の端部は、上記積層方向において互いに異なる位置に位置している。
【0062】
図7は、本発明の実施形態1の第3変形例に係る圧電デバイスの平面図である。
図8は、
図7に示した圧電デバイスをVIII-VIII線矢印方向から見た部分断面図である。
図9は、
図7に示した圧電デバイスをIX-IX線矢印方向から見た部分断面図である。
【0063】
図7に示すように、本発明の実施形態1の第3変形例に係る圧電デバイス100cにおいては、上記積層方向から見て、単結晶圧電体の上記仮想軸の軸方向と、複数のスリット141の各々とのなす角は、0度または90度である。
【0064】
このため、本変形例においては、上記積層方向から見たときの上記仮想軸の軸方向における、接続部130の中央から、一対の梁部120のうち一方の梁部120の反対側の端部までの長さL1と、接続部130の中央から、一対の梁部120のうち他方の梁部120の反対側の端部までの長さL2とが、互いに同一である。また、上記積層方向から見たときの上記仮想軸の軸方向において、一対の梁部120のうちの一方の梁部120における接続部130の中央近傍の端部から固定端部121までの距離は、他方の梁部120における、接続部130の中央近傍の端部から固定端部121までの距離と、互いに同一である。
【0065】
さらに、本変形例に係る圧電デバイス100cにおいては、複数の梁部120に熱応力が加わることで複数の梁部120の各々が反っている。結果としては、
図8に示すように、圧電デバイス100cが駆動していない状態において、接続部130の中央近傍における一対の梁部120の接続部130の中央側の端部が、上記積層方向において互いに略同一の位置に位置している。このように、本変形例においては、複数の梁部120の各々が熱応力により反った場合においても、接続部130、特に、橋渡し部131が破損することを抑制することができる。
【0066】
上記のように、本発明の実施形態1の第2変形例に係る圧電デバイス100bと第3変形例に係る圧電デバイス100cとを対比することにより、上記積層方向から見て上記仮想軸の軸方向と、複数のスリット141の各々の延在方向とのなす角が、45度または135度である状態から、0度または90度に近づくほど、一対の梁部120の熱応力による変位の差が大きくなることを抑制できることがわかる。
【0067】
なお、
図9に示すように、本発明の実施形態1の第3変形例に係る圧電デバイス100cにおいては、一対の梁部120の各々を、スリット141側から見たときに、一対の梁部120の各々が上記積層方向のいずれか一方向に傾いている。
【0068】
本発明の実施形態1に係る圧電デバイス100は、複数の梁部120の各々が屈曲振動可能に構成されている。ここで、複数の梁部120の屈曲振動のメカニズムについて説明する。
【0069】
図10は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの梁部の一部を模式的に示した断面図である。
図11は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの、駆動時における梁部の一部を模式的に示した断面図である。なお、
図10および
図11において第1電極層および第2電極層は図示していない。
【0070】
図10および
図11に示すように、本実施形態においては、複数の梁部120において、圧電体層11が上記積層方向に直交する面内方向に伸縮可能な伸縮層として機能し、圧電体層11以外の層が、拘束層として機能する。本実施形態においては、主に支持層14が拘束層として機能する。このように、拘束層が、伸縮層に対して、伸縮層の伸縮方向の直交方向に積層されている。なお、複数の梁部120は、伸縮層が面内方向に伸びたときに面内方向に縮み、伸縮層が面内方向に縮んだときに面内方向に伸びることができる逆方向伸縮層を、拘束層の代わりに含んでいてもよい。
【0071】
そして、伸縮層である圧電体層11が上記面内方向に伸縮しようとすると、拘束層の主要部分である支持層14は、圧電体層11との接合面において圧電体層11の伸縮を拘束する。また、本実施形態では、複数の梁部120の各々において、伸縮層である圧電体層11が、複数の梁部120の各々の応力中立面Nの一方側にのみ位置している。拘束層を主に構成する支持層14の重心の位置は、応力中立面Nの他方側に位置している。これにより、
図10および
図11に示すように、伸縮層である圧電体層11が上記面内方向に伸縮したときには、複数の梁部120の各々が上記面内方向に対して直交方向に屈曲する。なお、複数の梁部120の各々が屈曲したときの複数の梁部120の各々の変位量は、応力中立面Nと圧電体層11との離間距離が長くなるほど大きくなる。また、上記変位量は、圧電体層11が伸縮しようとする応力が大きくなるほど、大きくなる。このようにして、複数の梁部120の各々は、上記面内方向の直交方向において、固定端部121を起点として屈曲振動する。
【0072】
さらに、本実施形態に係る圧電デバイス100においては、接続部130が設けられていることにより、基本振動モードでの振動が生じやすく、連成振動モードでの振動の発生が抑制される。基本振動モードとは、複数の梁部120の各々が屈曲振動するときの位相が揃っており、複数の梁部120全体が上下いずれか一方に変位するモードである。一方、連成振動モードとは、複数の梁部120の各々が屈曲振動するときに、複数の梁部120の少なくとも1つの位相が他の梁部120の位相と揃っていないモードである。
【0073】
図12は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスについて、基本振動モードで振動している状態をシミュレーションによって示した斜視図である。具体的には、
図12においては、複数の梁部120の各々が第1電極層12側に変位している状態の圧電デバイス100を示している。また、
図12においては、複数の梁部120の各々が第1電極層12側に変位する変位量が大きくなるほど色が薄くなっている。なお、
図12においては複数の層10を構成する各層は図示していない。
【0074】
図12に示すように、複数の梁部120の各々について、互いに隣り合う一対の梁部120が接続部130により互いに接続しているため、連成振動モードの発生が抑制されている。
【0075】
さらに、本実施形態に係る圧電デバイス100の接続部130においては、第1端部133Aおよび第2端部133Bの各々が、一対の梁部120の固定端部121より先端部122の近くに位置している。これにより、複数の梁部120の各々は、比較的強固に互いに接続されるため、複数の梁部120の各々の振動の位相がより揃いやすくなる。また、本実施形態に係る圧電デバイス100の接続部130は、橋渡し部131を含んでおり、接続部130は、一対の梁部120の間を折り返しつつ接続する。このため、接続部130は、複数の梁部120が振動する際に、第1連結部132Aと第2連結部132Bとが板ばねのように機能して、接続部130が一対の梁部120を互いに接続しつつ、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bが橋渡し部131を介して直列に接続され、接続部130の板バネとしての長さが長くなることで、その接続力が強固になりすぎることを抑制することができる。
【0076】
本実施形態に係る圧電デバイス100は、基本振動モードでの振動が生じやすく、連成振動モードの発生が抑制されているため、特に超音波トランスデューサとして用いたときのデバイス特性が向上している。以下、本実施形態に係る圧電デバイス100を超音波トランスデューサとして用いたときの圧電デバイス100の機能作用について説明する。
【0077】
まず、圧電デバイス100によって超音波を発生させる場合には、
図2に示す、第1接続電極層20と、第2接続電極層30との間に電圧を印加する。そして、第1接続電極層20に接続された第1電極層12と、第2接続電極層30に接続された第2電極層13との間に電圧が印加される。さらに、複数の梁部120の各々においても、圧電体層11を介して互いに対向する第1電極層12と第2電極層13との間に電圧が印加される。そうすると、圧電体層11は、上記積層方向に直交する面内方向に沿って伸縮するため、上述のメカニズムにより、複数の梁部120の各々が上記積層方向に沿って屈曲振動する。これにより、圧電デバイス100の複数の梁部120の周辺の媒質に力が加えられ、さらに媒質が振動することにより、超音波が発生する。
【0078】
また、本実施形態に係る圧電デバイス100において、複数の梁部120の各々は固有の機械的な共振周波数を有している。そのため、印加した電圧が正弦波電圧であり、かつ、正弦波電圧の周波数が上記共振周波数の値に近い場合には、複数の梁部120の各々が屈曲したときの変位量が大きくなる。
【0079】
圧電デバイス100によって超音波を検知する場合には、超音波によって複数の梁部120の各々の周辺の媒質が振動し、当該周辺の媒質から複数の梁部120の各々に力が加えられ、複数の梁部120の各々が屈曲振動する。複数の梁部120の各々が屈曲振動すると、圧電体層11に応力が加わる。圧電体層11に応力が加わることで、圧電体層11中に電荷が誘起される。圧電体層11に誘起された電荷によって、圧電体層11を介して対向する第1電極層12と第2電極層13との間に電位差が発生する。この電位差を、第1電極層12に接続された第1接続電極層20と、第2電極層13に接続された第2接続電極層30とで検知する。これにより、圧電デバイス100において超音波を検知することができる。
【0080】
また、検知の対象となる超音波が特定の周波数成分を多く含み、かつ、この周波数成分が上記共振周波数の値に近い場合には、複数の梁部120の各々が屈曲振動するときの変位量が大きくなる。当該変位量が大きくなることで、上記電位差が大きくなる。
【0081】
このように、本実施形態に係る圧電デバイス100を超音波トランスデューサとして用いる場合には、複数の梁部120の共振周波数の設計が重要となる。複数の梁部120の各々の延在方向の長さ、上記中心軸の軸方向における厚さおよび当該軸方向から見たときの固定端部121の長さ、および、複数の梁部120を構成する材料の密度および弾性率によって、上記共振周波数は変化する。また、複数の梁部の各々が互いに同一の共振周波数を有していることが好ましい。たとえば、複数の梁部120の各々の上記厚さが互いに異なる場合には、複数の梁部120の各々の延在方向の長さを調整することで、複数の梁部120の各々が互いに同一の共振周波数を有するようにする。
【0082】
たとえば、
図1から
図3に示す本発明の実施形態1に係る圧電デバイス100において、複数の梁部120の各々の共振周波数を40kHz近傍に設計する場合は、複数の梁部120の各々について、圧電体層11の構成材料をニオブ酸リチウム、圧電体層11の厚さを1μm、第1電極層12および第2電極層13の各々の厚さを0.1μm、第1支持部14aの厚さを0.8μm、第2支持部14bの厚さを1.4μm、複数の梁部120の各々の固定端部121から先端部122までの最短距離を400μm、上記積層方向から見たときの固定端部121の長さを800μmにすればよい。
【0083】
なお、本実施形態に係る圧電デバイス100は、上述の構成を有する接続部130を備えていることにより、基本振動モードでの振動が発生しやすく、連成振動モードの発生が抑制されている。このため、圧電デバイス100を超音波トランスデューサとして用いる場合においては、共振周波数と同一の周波数成分を有する超音波を検知する際にも、複数の梁部120の各々の振動の位相が異なることが抑制される。ひいては、複数の梁部120の各々の振動の位相が異なることで、複数の梁部120の各々の圧電体層11で発生した電荷が、第1電極層12または第2電極層13で打ち消し合うことが抑制される。
【0084】
このように、圧電デバイス100においては、超音波トランスデューサとしてのデバイス特性が向上している。
【0085】
以下、本発明の実施形態1に係る圧電デバイス100の製造方法について説明する。
図13は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において
、圧電単結晶基板に第2電極層を設けた状態を示す断面図である。
図13および以下に示す
図14から
図19においては、
図2と同様の断面視にて図示している。
【0086】
図13に示すように、まず、圧電単結晶基板11aの下面に図示しない密着層を設けた後、密着層の圧電単結晶基板11a側とは反対側に第2電極層13を設ける。第2電極層13は、蒸着リフトオフ法により、所望のパターンを有するように形成する。第2電極層13は、スパッタリングにより圧電単結晶基板11aの下面の全面にわたって積層した後に、エッチング法により所望のパターンを形成することで形成してもよい。第2電極層13および密着層は、エピタキシャル成長させてもよい。
【0087】
図14は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、第1支持部を設けた状態を示す断面図である。
図14に示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition)法またはPVD(Physical Vapor Deposition)法などにより、圧電単結晶基板11aおよび第2電極層13の各々の下面に、第1支持部14aを設ける。第1支持部14aを設けた直後においては、第1支持部14aの下面のうち第1支持部14aの第2電極層13側とは反対側に位置する部分が盛り上がっている。このため、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)などにより第1支持部14aの下面を削って、平坦化する。
【0088】
図15は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、第1支持部に、積層体を接合させた状態を示す断面図である。
図15に示すように、表面活性化接合または原子拡散接合により、第2支持部14bと基板層15とからなる積層体16を、第1支持部14aの下面に接合する。本実施形態において、積層体16は、SOI(Silicon on Insulator)基板である。なお、第2支持部14bの上面を予めCMPなどにより平坦化しておくことにより、圧電デバイス100の歩留まりが向上する。また、第2支持部14bが低抵抗なSiで構成されている場合、第2支持部14bを下部電極層として機能させることが可能となり、この場合、第2電極層13の形成および第1支持部14aの下面のCMPを不要とすることができる。
【0089】
図16は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、圧電単結晶基板を削って圧電体層を形成した状態を示す断面図である。
図15および
図16に示すように、圧電単結晶基板11aの上面をグラインダで研削することにより、薄くする。薄くした圧電単結晶基板11aの上面を、CMPなどによりさらに研磨することで、圧電単結晶基板11aを圧電体層11に成形する。
【0090】
なお、圧電単結晶基板11aの上面側に、予めイオンを注入することにより、剥離層を形成し、上記剥離層を剥離することで、圧電単結晶基板11aを圧電体層11に成形してもよい。また、上記剥離層を剥離した後の圧電単結晶基板11aの上面を、CMPなどによりさらに研磨することで、圧電単結晶基板11aを圧電体層11に成形してもよい。
【0091】
図17は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、圧電体層に、第1電極層を設けた状態を示す断面図である。
図17に示すように、圧電体層11の上面に図示しない密着層を設けた後、密着層の圧電体層11側とは反対側に第1電極層12を設ける。第1電極層12は、蒸着リフトオフ法により、所望のパターンを有するように形成する。第1電極層12は、スパッタリングにより圧電体層11の上面の全面にわたって積層した後に、エッチング法により所望のパターンを形成することで形成してもよい。第1電極層12および密着層は、エピタキシャル成長させてもよい。
【0092】
図18は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、溝部および凹部を設けた状態を示す断面図である。
図18に示すように、上記積層方向から見て圧電デバイス100の基部110より内側の領域に相当する領域において、RIE(Reactive Ion Etching)などでドライエッチングすることにより、圧電体層11および第1支持部14aにスリットを形成する。上記スリットは、フッ硝酸などを用いてウェットエッチングすることにより形成してもよい。さらに、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)によって、上記スリットが基板層15の上面まで達するように、上記スリットに露出した第2支持部14bを、エッチングする。これにより、
図1および
図2に示した圧電デバイス100におけるスリット141、開口部142および外周スリット143に相当する、
図18に示した溝部17が形成される。
【0093】
さらに、
図18に示すように、圧電デバイス100の基部110に相当する部分においては、上記ドライエッチングまたは上記ウェットエッチングにより、第2電極層13の一部が露出するように、圧電体層11をエッチングする。これにより、凹部18が形成される。
【0094】
図19は、本発明の実施形態1に係る圧電デバイスの製造方法において、第1接続電極層および第2
接続電極層を設けた状態を示
す断面図である。そして、
図19に示すように、基部110に相当する部分においては、第1電極層12および第2電極層13の各々に図示しない密着層を設けた後、蒸着リフトオフ法により、各密着層の上面に第1接続電極層20および第2接続電極層30を設ける。第1接続電極層20および第2接続電極層30は、スパッタリングにより圧電体層11、第1電極層12および露出した第2電極層13の全面にわたって積層した後に、エッチング法により所望のパターンを形成することで形成してもよい。
【0095】
最後に、基板層15のうち第2基板層15bの一部をDRIEにより除去した後、第1基板層15aの一部をRIEにより除去する。これにより、
図2に示すように、穴部101が設けられるとともに、複数の梁部120および接続部130が形成される。
【0096】
上記の工程により、
図1から
図3に示すような本発明の実施形態1に係る圧電デバイス100が製造される。
【0097】
上記のように、本発明の実施形態1に係る圧電デバイス100においては、接続部130は、一対の梁部120の間を折返すように設けられている。接続部130は、第1連結部132Aと、第2連結部132Bと、橋渡し部131とを含む。第1連結部132Aは、スリット141に沿って延在して一対の梁部120の一方に接続されている。第2連結部132Bは、スリット141に沿って延在して一対の梁部120の他方に接続されている。橋渡し部131は、スリット141と開口部142との間に位置して第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々と接続されている。複数の梁部120の各々は、互いに交差する方向に延在するスリット141に挟まれて位置しつつ接続部130を介して環状の基部110の周方向に互いに接続されている。
【0098】
この構成によって、複数の梁部120の各々において、応力集中箇所である、第1端部133A同士または第2端部133B同士を互いに離間させることができ、圧電デバイス100の励振特性の低下を抑制することができる。
【0099】
また、本発明の実施形態1の第1変形例に係る圧電デバイス100aのように、外周スリット143の開口部142側とは反対側の端部が互いに離れるように湾曲している場合においても、特許文献1に記載された圧電デバイスにおいてプレートの先端で互いに交差する2つの端縁の各々にスプリングが配置されて2つのスプリングの根元部同士が接近している場合に比較して、複数の梁部120の各々における応力集中箇所である、外周スリット143の開口部142側とは反対側の端部に隣接している部分の第1端部133A同士または第2端部133B同士を互いに離間させることができ、圧電デバイス100aの励振特性の低下を抑制することができる。
【0100】
本実施形態においては、スリット141に間隔をあけて第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々に沿って延在しつつ開口部142と連通した外周スリット143がさらに設けられている。
【0101】
これにより、橋渡し部131の形成が容易になるとともに、複数の梁部120の振動時において、接続部130、特に橋渡し部131の動作が一対の梁部120によって阻害されることを抑制できる。
【0102】
本実施形態においては、複数の層10は、圧電体層11と、第1電極層12と、第2電極層13とを有している。圧電体層11は、単結晶圧電体で構成されている。第1電極層12は、複数の層10の積層方向において圧電体層11の一方側に配置されている。第2電極層13は、圧電体層11を挟んで第1電極層12の少なくとも一部と対向するように圧電体層11の他方側に配置されている。単結晶圧電体の分極軸を上記積層方向に直交する仮想平面上に上記積層方向から投影したときの仮想軸の軸方向は、複数の梁部120のいずれにおいても同一方向に延在しており、かつ、上記積層方向から見て、複数の梁部120の各々の延在方向と交差している。
【0103】
これにより、圧電体層11が分極軸を有する単結晶圧電体で構成される圧電デバイス100において、仮に一対の梁部120の各々に熱応力が生じた場合であっても、接続部130に生じる応力分布の偏りを低減して接続部130の破損を抑制することができる。
【0104】
本発明の実施形態1に係る圧電デバイス100においては、上記積層方向から見て、複数の梁部120の各々の延在方向と、上記仮想軸の軸方向とのなす角は、いずれも、40度以上50度以下、または、130度以上140度以下である。
【0105】
これにより、仮に複数の梁部120に熱応力が生じた場合においても、複数の梁部120の各々が、延在方向にかけて略同一の応力分布を有するため、複数の梁部120の各々の反り方も略同一となる。ひいては、圧電デバイス100のデバイス特性の低下を抑制できる。
【0106】
本実施形態においては、圧電体層11は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、または、タンタル酸リチウム(LiTaO3)で構成されている。
【0107】
これにより、圧電体層11の圧電特性を向上できるため、圧電デバイス100のデバイス特性を向上できる。
【0108】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係る圧電デバイスについて説明する。本発明の実施形態2に係る圧電デバイスは、第1連結部および第2連結部の各々の延出長さ、最小幅および厚さの寸法関係を規定した点が、本発明の実施形態1に係る圧電デバイス100と異なっている。このため、本発明の実施形態1に係る圧電デバイス100と同様の構成については説明を繰り返さない。
【0109】
図20は、本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの平面図である。
図21は、
図20の圧電デバイスをXXI-XXI線矢印方向から見た断面図である。
図22は、本発明の実施形態2に係る圧電デバイスの接続部の構成を示す部分平面図である。
図21においては、見やすくするために、各層を厚く記載している。
【0110】
図20から
図22に示すように、本発明の実施形態2に係る圧電デバイス200は、基部110と、4つの梁部120と、4つの接続部230とを備えている。4つの梁部120の固定端部121は、上記積層方向から見て、正方形状に位置している。
図20に示す、上記積層方向から見て、4つの梁部120の固定端部121のうちの向かい合う固定端部121同士の最短距離Mの寸法は、向かい合う固定端部121同士のうちの一方の固定端部121を有する梁部120における固定端部121と先端部122とを最短で通過する直線に沿って測定される寸法である。
【0111】
接続部230は、4つの梁部120のうち互いに隣り合う一対の梁部120同士を接続する。接続部230は、橋渡し部131と、第1連結部132Aと、第2連結部132Bとを有している。
【0112】
本実施形態においては、第1連結部132A、第2連結部132Bおよび橋渡し部131の各々は、一定の幅を有しつつ直線状に延在している。第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法は、橋渡し部131の最大幅aの寸法と同一である。
【0113】
圧電デバイス200において、接続部230による梁部120同士を接続する力が弱くなりすぎると、連成振動モードが発生しやすくなる。この発生しやすさは、連成振動モードの共振周波数と、基本振動モードの共振周波数とによって定量化することができる。これらの共振周波数が離れているほど、連成振動モードは発生しにくい状態となる。
【0114】
ここで、連成振動モードの共振周波数は、4つの梁部120と接続部230との面外方向の曲げ剛性の比率により変化する。梁部120および接続部230の各々において、曲げ剛性は、厚さと長さならびに構成材料の硬さおよび密度などのパラメータに主に依存する。
【0115】
4つの梁部120と接続部230とは、梁部120は第1電極層12を含み、接続部230は第1電極層12を含まない点で互いに異なるものの、略同じ積層構造を有するため、厚さ、硬さおよび密度については略同じであり、互いの長さの違いによって上記曲げ剛性の比率が大きく変化する。すなわち、固定端部121同士の最短距離Mの寸法に対する、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の延出長さLの寸法の比率を調整することによって、連成振動モードの共振周波数を変化させることができる。
【0116】
一般的に、本実施形態のような薄い梁部120の屈曲振動を利用する音響デバイスにおいては、空気抵抗による負荷によって共振時のQ値が10程度に抑えられる。これにより、たとえば、共振周波数から±5%ずれた周波数で圧電デバイス200が用いられた場合でも、共振時の半分以上のエネルギーを圧電デバイス200に入力できるため、使用可能帯域を広くすることができる。特に、圧電デバイス200をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)加工によって大量に製造した場合は、MEMSの加工精度により±5%程度の共振周波数のばらつきが生ずることがあるが、上記のように使用可能帯域が広い圧電デバイス200においては、圧電デバイス200の特性が大きくばらつくことを抑制することができる。
【0117】
しかしながら、上記の使用可能帯域内に連成振動モードの共振周波数が存在する場合、圧電デバイス200に入力されたエネルギーは、基本振動モードではなく連成振動モードの振動エネルギーとして吸収される。この場合、圧電デバイス200の変換効率が低下するとともに、連成振動モードのQ値は高いため、圧電デバイス200の駆動停止後の残響が長くなる。
【0118】
この問題点に鑑みると、連成振動モードの共振周波数を、基本振動モードの共振周波数に対して、5%以上高くすることが好ましい。そこで、固定端部121同士の最短距離Mの寸法に対する、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の延出長さLの寸法の比率と、4つの梁部120の各々における1次共振周波数に対する2次共振周波数と1次共振周波数と差の割合との関係について、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法を変えてシミュレーション解析を行なった。上記の1次共振周波数は、基本振動モードの共振周波数に相当し、上記の2次共振周波数は、連成振動モードの共振周波数に相当する。
【0119】
シミュレーション解析条件として、本実施形態に係る圧電デバイス200において、固定端部121同士の最短距離Mの寸法を800μm、圧電体層11の厚さの寸法を1μm、支持層14の厚さを2μmとした。すなわち、
図21に示す厚さTの寸法を3μmとした。この厚さTは、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の上記積層方向における厚さに相当する。第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法を、6μm、10μmおよび15μmの3種類とした。
【0120】
図23は、シミュレーション解析結果を示すグラフである。
図23においては、縦軸に、4つの梁部120の各々における1次共振周波数fr1に対する2次共振周波数fr2と1次共振周波数fr1と差の割合(%)、横軸に、固定端部121同士の最短距離Mの寸法に対する、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の延出長さLの寸法の比率(%)を示している。また、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法が、6μmのデータを実線、10μmのデータを1点鎖線、15μmのデータを点線で示している。さらに、4つの梁部の各々における1次共振周波数fr1に対する2次共振周波数fr2と1次共振周波数fr1と差の割合が5%である基準線を点線で示している。
【0121】
図23に示すように、固定端部121同士の最短距離Mの寸法に対する、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の延出長さLの寸法の比率〔(L/M)×100(%)〕が大きくなるにしたがって、4つの梁部120の各々における1次共振周波数fr1に対する2次共振周波数fr2と1次共振周波数fr1と差の割合〔(fr2-fr1)/fr
1×100(%)〕が低下する傾向が認められた。
【0122】
第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法が6μm、10μmおよび15μmのいずれにおいても、固定端部121同士の最短距離Mの寸法に対する、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の延出長さLの寸法の比率〔(L/M)×100(%)〕が32%以下の範囲において、4つの梁部120の各々における1次共振周波数fr1に対する2次共振周波数fr2と1次共振周波数fr1と差の割合〔(fr2-fr1)/fr1×100(%)〕が5%以上となった。
【0123】
そこで、本実施形態においては、上記積層方向から見て、4つの梁部120の固定端部121のうちの向かい合う固定端部121同士の最短距離Mの寸法に対する、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の延出長さLの寸法の比率は、32%以下である。これにより、連成振動モードを生じにくくして、圧電デバイス200の変換効率の低下、および、圧電デバイス200の駆動停止後の残響が長くなることを、抑制することができる。
【0124】
上述のとおり、連成振動モードの共振周波数は、4つの梁部120と接続部230との面外方向の曲げ剛性の比率により変化する。仮に、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法が、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の上記積層方向における厚さTの寸法より小さい場合、4つの梁部120および接続部230の面内方向の曲げ剛性が面外方向の曲げ剛性より低くなる。この場合、連成振動モードの共振周波数が基本振動モードの共振周波数に近くなり、〔(fr2-fr1)/fr1×100(%)〕を5%以上確保することが難しくなる場合がある。
【0125】
そこで、本実施形態においては、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法は、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の上記積層方向における厚さTの寸法より大きい。これにより、連成振動モードを生じにくくして、圧電デバイス200の変換効率の低下、および、圧電デバイス200の駆動停止後の残響が長くなることを、抑制することができる。
【0126】
なお、上記のパラメータによる限定が適用可能な接続部230の形状は上記に限られない。ここで、上記のパラメータによる限定が適用可能な変形例に係る接続部の形状について説明する。以下の変形例の説明においては、本発明の実施形態2に係る圧電デバイス200の接続部230と同一である構成については説明を繰り返さない。
【0127】
図24は、本発明の実施形態2の第1変形例に係る圧電デバイスの接続部の形状を示す部分平面図である。
図24に示すように、本発明の実施形態2の第1変形例においては、接続部230aの橋渡し部131は、スリット141の先端を中心として半径がaの半円状の形状を有している。第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法は、橋渡し部131の最大幅aの寸法と同一である。
【0128】
図25は、本発明の実施形態2の第2変形例に係る圧電デバイスの接続部の形状を示す部分平面図である。
図25に示すように、本発明の実施形態2の第2変形例においては、接続部230bの第1連結部132A、第2連結部132Bおよび橋渡し部131の各々は、一定の幅を有しつつ直線状に延在している。第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法は、橋渡し部131の最大幅aの寸法より小さい。なお、橋渡し部131の最大幅aの寸法は、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの2倍の寸法以下である。
【0129】
図26は、本発明の実施形態2の第3変形例に係る圧電デバイスの接続部の形状を示す部分平面図である。
図26に示すように、本発明の実施形態2の第3変形例においては、接続部230cの橋渡し部131は、スリット141の先端を中心として半径がaの半円状の形状を有している。第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法は、橋渡し部131の最大幅aの寸法より小さい。なお、橋渡し部131の最大幅aの寸法は、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの2倍の寸法以下である。
【0130】
図27は、本発明の実施形態2の第4変形例に係る圧電デバイスの接続部の形状を示す部分平面図である。
図27に示すように、本発明の実施形態2の第4変形例においては、接続部230dの第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの橋渡し部側の部分ならびに橋渡し部131の各々は、スリット141の先端を中心とする1辺の長さが2aの仮想正方形に沿う形状を有している。第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法は、橋渡し部131の最大幅aの寸法より小さい。なお、橋渡し部131の最大幅aの寸法は、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの2倍の寸法以下である。
【0131】
図28は、本発明の実施形態2の第5変形例に係る圧電デバイスの接続部の形状を示す部分平面図である。
図28に示すように、本発明の実施形態2の第5変形例においては、接続部230eの第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの橋渡し部側の部分ならびに橋渡し部131の各々は、スリット141の先端を中心とする半径がaの仮想円に沿う形状を有している。第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法は、橋渡し部131の最大幅aの寸法より小さい。なお、橋渡し部131の最大幅aの寸法は、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの2倍の寸法以下である。
【0132】
図29は、本発明の実施形態2の第6変形例に係る圧電デバイスの接続部の形状を示す部分平面図である。
図29に示すように、本発明の実施形態2の第6変形例においては、スリット141の先端に、直径rの円形の開口141rが形成されている。直径rの寸法は、スリット141の幅の寸法より大きく、かつ、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法以下である。接続部230fの第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの橋渡し部側の部分ならびに橋渡し部131の各々は、開口141rの中心を中心とする1辺の長さが(2a+r)の仮想正方形に沿う形状を有している。第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法は、橋渡し部131の最大幅aの寸法以下である。なお、橋渡し部131の最大幅aの寸法は、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの2倍の寸法以下である。
【0133】
図30は、本発明の実施形態2の第7変形例に係る圧電デバイスの接続部の形状を示す部分平面図である。
図30に示すように、本発明の実施形態2の第
7変形例においては、スリット141の先端に、直径rの円形の開口141rが形成されている。直径rの寸法は、スリット141の幅の寸法より大きく、かつ、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法以下である。接続部230gの第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの橋渡し部側の部分ならびに橋渡し部131の各々は、開口141rの中心を中心とする半径が(a+r/2)の仮想円に沿う形状を有している。第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの寸法は、橋渡し部131の最大幅aの寸法以下である。なお、橋渡し部131の最大幅aの寸法は、第1連結部132Aおよび第2連結部132Bの各々の最小幅Wの2倍の寸法以下である。
【0134】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0135】
10 複数の層、11 圧電体層、11a 圧電単結晶基板、12 第1電極層、13 第2電極層、14 支持層、14a 第1支持部、14b 第2支持部、15 基板層、15a 第1基板層、15b 第2基板層、16 積層体、17 溝部、18 凹部、20 第1接続電極層、30 第2接続電極層、100,100a,100b,100c,200 圧電デバイス、101 穴部、110 基部、120 梁部、121 固定端部、122先端部、130,230,230a,230b,230c,230d,230e,230f,230g 接続部、131 橋渡し部、132A 第1連結部、132B 第2連結部、133A 第1端部、133B 第2端部、141 スリット、141r 開口、142 開口部、143 外周スリット。