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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】フィルタ装置およびマルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/09 20060101AFI20240116BHJP
   H03H 7/42 20060101ALI20240116BHJP
   H03H 7/46 20060101ALI20240116BHJP
   H01P 5/10 20060101ALI20240116BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20240116BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H03H7/09 Z
H03H7/42
H03H7/46 A
H01P5/10 A
H01F27/00 S
H01F17/00 C
H01F27/00 T
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022533766
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2021021022
(87)【国際公開番号】W WO2022004257
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2020114051
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】寺本 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】小川 圭介
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-124880(JP,A)
【文献】特開2011-147090(JP,A)
【文献】特開2012-120149(JP,A)
【文献】特開2013-138410(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0238568(US,A1)
【文献】国際公開第2012/127952(WO,A1)
【文献】特開2012-109949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 5/00- 7/13
H03H 7/30- 7/54
H01P 5/10
H01F 27/00
H01F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層を積層した積層体と、
不平衡端子と、
第1平衡端子および第2平衡端子と、
前記不平衡端子に接続された第1共振回路と、
前記第1平衡端子および前記第2平衡端子に接続され、前記第1共振回路と電磁界結合する第2共振回路と
結合電極とを備え、
前記第1共振回路は、前記不平衡端子と基準電位との間に第1インダクタおよび第1キャパシタが並列に接続された第1共振器を含み、
前記第2共振回路は、前記第1平衡端子と前記第2平衡端子との間に接続された第2インダクタと、前記第1平衡端子と前記第2平衡端子との間に直列に接続された第2キャパシタおよび第3キャパシタとを有する第2共振器を含み、
前記複数の誘電体層は第1層を含み、
前記第1インダクタは、前記第1層に設けられた第1配線電極と、前記第1配線電極に接続され前記積層体の積層方向に延在する第1導電体および第2導電体とによって構成されており、
前記第2インダクタは、前記第1層に設けられた第2配線電極と、前記第2配線電極に接続され前記積層体の積層方向に延在する第3導電体および第4導電体とによって構成されており、
前記第2配線電極の線路長は、前記第1配線電極の線路長よりも長く、
前記結合電極は、前記第1配線電極と前記第2配線電極との間の容量結合を構成する、フィルタ装置。
【請求項2】
前記第2インダクタの線路長は、前記第1インダクタの線路長よりも長い、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記第2配線電極は、前記積層体の積層方向から平面視した場合に、前記第3導電体および前記第4導電体との接続点から、前記第1共振回路に対して遠ざかる方向に延伸する経路を有する、請求項に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記第2配線電極は、前記積層体の積層方向から平面視した場合に、前記第3導電体および前記第4導電体との接続点から、前記第1共振回路に向かう方向に延伸する経路を有する、請求項に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記第3導電体と前記第4導電体との間隔は、前記第1導電体と前記第2導電体との間隔よりも広い、請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記第3導電体および前記第4導電体の長さは等しく、
前記フィルタ装置は、前記第2配線電極における中央部に接続された給電端子をさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
数の誘電体層を積層した積層体と、
不平衡端子と、
第1平衡端子および第2平衡端子と、
前記不平衡端子に接続された第1共振回路と、
前記第1平衡端子および前記第2平衡端子に接続され、前記第1共振回路と電磁界結合する第2共振回路と、
結合電極とを備え、
前記第1共振回路は、前記不平衡端子と基準電位との間に第1インダクタおよび第1キャパシタが並列に接続された第1共振器を含み、
前記第2共振回路は、前記第1平衡端子と前記第2平衡端子との間に接続された第2インダクタと、前記第1平衡端子と前記第2平衡端子との間に直列に接続された第2キャパシタおよび第3キャパシタとを有する第2共振器を含み、
前記複数の誘電体層は第1層を含み、
前記第1インダクタは、前記第1層に設けられた第1配線電極と、前記第1配線電極に接続され前記積層体の積層方向に延在する第1導電体および第2導電体とによって構成されており、
前記第2インダクタは、前記第1層に設けられた第2配線電極と、前記第2配線電極に接続され前記積層体の積層方向に延在する第3導電体および第4導電体とによって構成されており、
前記結合電極は、前記第1配線電極と前記第2配線電極との間の容量結合を構成するフィルタ装置。
【請求項8】
前記第1導電体および前記第2導電体は、前記積層体の側面に設けられた側面電極により構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項9】
前記第3導電体および前記第4導電体は、前記積層体の側面に設けられた側面電極により構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項10】
前記第1導電体~前記第4導電体は、ビアによって構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項11】
前記第1共振回路および前記第2共振回路の各々は、少なくとも1つのLC並列共振器を含み
記少なくとも1つのLC並列共振器は、前記積層体の積層方向に延在する導電体を含み、
前記少なくとも1つのLC並列共振器のうちの少なくとも1つにおける前記導電体は、前記積層体の側面に設けられた側面電極により構成される、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項12】
前記第2キャパシタと前記第3キャパシタとの間の接続ノードは、基準電位に接続される、請求項1~11のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項13】
前記結合電極は、前記積層体の積層方向から平面視した場合に、前記第1配線電極の少なくとも一部、および、前記第2配線電極の少なくとも一部と重なる位置に配置される、請求項または請求項に記載のフィルタ装置。
【請求項14】
第1端子と、
前記第1端子にインダクタを介して接続された第1フィルタ装置と、
前記第1端子にキャパシタを介して接続された第2フィルタ装置とを備え、
前記第1フィルタ装置および前記第2フィルタ装置の少なくとも1つは、請求項1~13のいずれか1項に記載のフィルタ装置により形成される、マルチプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルタ装置およびマルチプレクサに関し、より特定的には、積層型のフィルタ装置を小型化するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
不平衡信号と平衡信号とを相互変換するために、バランスフィルタ(バラン:Balun)が用いられる。平衡信号は、振幅が等しく互いの位相が反転した一対の信号であり、一般的に通信システムにおけるIC内の差動増幅回路などに用いられている。一方、不平衡信号は、接地電位に対する電位の変化を伝送する伝送方式に用いられる信号であり、マイクロストリップラインあるいはアンテナの入出力の信号が該当する。
【0003】
バランスフィルタにおいて、不平衡端子に接続された共振器と、平衡端子に接続された共振器とを電磁界結合させて信号を伝達する構成を有するものがある。特開2012-109949号公報(特許文献1)、特開2007-208395号公報(特許文献2)、および特開2012-120149号公報(特許文献3)には、上記のようなバランスフィルタのいくつかの構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-109949号公報
【文献】特開2007-208395号公報
【文献】特開2012-120149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バランスフィルタに用いられる共振器として、当該共振器に接続される平衡端子あるいは不平衡端子がインダクタを介して基準電位に接続される構成(以下、「短絡型共振器」とも称する。)、および、平衡端子あるいは不平衡端子がキャパシタを介して基準電位に接続される構成(以下、「開放型共振器」とも称する。)が採用される。伝達する信号の波長をλとした場合、一般的に、短絡型共振器においては線路長がλ/4に設定され、開放型共振器においては線路長がλ/2に設定される。
【0006】
上述の特開2012-109949号公報(特許文献1)のバランスフィルタにおいては、不平衡端子側および平衡端子側の双方の共振器が短絡型共振器で形成されている。一方、特開2007-208395号公報(特許文献2)および特開2012-120149号公報(特許文献3)においては、双方の共振器が開放型共振器で形成されている。
【0007】
開放型共振器においては、必要とされる線路長がλ/2(半波長)であるため、特に平衡端子側の共振器として用いる場合には180°の位相差が容易に実現できるため優れたバランス特性を得られるという利点がある。また、一般的に、開放型共振器の方が短絡型共振器よりも高いQ値を得られることが知られており、通過特性および減衰特性には有利である。
【0008】
一方、短絡型共振器においては、必要となる線路長が開放型共振器に比べて短いため、フィルタ全体の小型化には有利である。
【0009】
バランスフィルタは、たとえば、携帯電話あるいはスマートフォンに代表される携帯端末に用いられる場合がある。これらの通信装置においては、通信品質の向上とともに、さらなる小型化,薄型化のニーズが高く、それに伴って、バランスフィルタなどの部品についても小型化,低背化が求められている。
【0010】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、バランスフィルタにおいて、フィルタ特性の低下を抑制しつつ小型化を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係るフィルタ装置は、不平衡端子と、第1平衡端子および第2平衡端子と、第1共振回路および第2共振回路とを備える。第1共振回路は、不平衡端子に接続される。第2共振回路は、第1平衡端子および第2平衡端子に接続され、第1共振回路と電磁界結合する。第1共振回路は、不平衡端子と基準電位との間に第1インダクタおよび第1キャパシタが並列に接続された第1共振器を含む。第2共振回路は、第1平衡端子と第2平衡端子との間に接続された第2インダクタと、第1平衡端子と第2平衡端子との間に直列に接続された第2キャパシタおよび第3キャパシタとを有する第2共振器を含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係るフィルタ装置においては、不平衡線路と平衡線路との間で信号を変換するバランスフィルタにおいて、不平衡端子に接続される第1共振回路は、インダクタの一方端が基準電位に直接接続される短絡型共振器で形成されている。一方で、平衡端子に接続される第2共振回路は、非接地のインダクタが2つの平衡端子間に接続される開放型共振器で形成されている。平衡線路側(出力側)に開放型共振器を用いることによって良好なバランス特性を得ることができる。また、出力側以外に短絡型共振器を用いることによって小型化を図ることができる。したがって、バランスフィルタにおいて、フィルタ特性の低下を抑制しつつ小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に従うフィルタ装置が適用されるフロントエンド回路を備えた通信装置のブロック図である。
図2図1のフィルタ装置の等価回路図である。
図3図2のフィルタ装置の外形斜視図である。
図4図3において誘電体を省略した内部構造を示す図である。
図5図3のフィルタ装置の分解斜視図である。
図6】実施の形態1のフィルタ装置の特性を説明するための図である。
図7】変形例1のフィルタ装置の内部構造を示す図である。
図8】変形例2のフィルタ装置の内部構造を示す図である。
図9】変形例3のフィルタ装置の内部構造を示す図である。
図10】変形例4のフィルタ装置の内部構造を示す図である。
図11】参考例のフィルタ装置の内部構造を示す図である。
図12】変形例5のフィルタ装置の内部構造を示す図である。
図13】変形例6のフィルタ装置の等価回路図である。
図14】変形例7のフィルタ装置の等価回路図である。
図15】実施の形態2に従うダイプレクサの等価回路図である。
図16図15のダイプレクサの外形斜視図である。
図17図16のダイプレクサの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0015】
[実施の形態1]
(通信装置の概要)
図1は、実施の形態1に従うフィルタ装置100が適用されるフロントエンド回路10を備えた通信装置1のブロック図である。図1を参照して、通信装置1は、フロントエンド回路10に加えて、アンテナANTと、信号処理回路であるRFIC20とを備える。
【0016】
RFIC20は、送信側線路TXに対して送信信号である高周波信号を出力し、出力された高周波信号はフロントエンド回路10を介してアンテナANTから電波として放射される。また、アンテナANTで受信された電波が受信信号である高周波信号として受信側線路RXからRFIC20に入力され、RFIC20は当該受信信号を処理して後段の回路へ伝達する。
【0017】
フロントエンド回路10は、フィルタ装置100に加えて、スイッチSWと、フィルタFLT1,FLT2と、パワーアンプPAと、低雑音アンプLNAとを含む。スイッチSWは、アンテナANTにおける電波の送信と受信とを切換えるために用いられる。スイッチSWは、共通端子TCと、2つの選択端子TA,TBとを含む。共通端子TCはアンテナANTに接続される。選択端子TAは、フィルタFLT1およびパワーアンプPAを介して送信側線路TXに接続される。選択端子TBは、フィルタFLT2、低雑音アンプLNAおよびフィルタ装置100を介して、受信側線路RXに接続される。
【0018】
アンテナANTから電波を放射する場合には、スイッチSWの共通端子TCは選択端子TAに接続される。一方、アンテナANTで電波を受信する場合には、スイッチSWの共通端子TCは選択端子TBに接続される。
【0019】
パワーアンプPAは、RFIC20から伝達された送信信号である高周波信号を増幅し、フィルタFLT1に出力する。フィルタFLT1は、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、あるいはバンドパスフィルタで構成されており、パワーアンプPAで増幅された高周波信号における所望の周波数帯域の信号を通過させる。フィルタFLT1を通過した高周波信号は、スイッチSWを経由してアンテナANTから電波として放射される。
【0020】
フィルタFLT2は、上記のフィルタFLT1と同様にローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、あるいはバンドパスフィルタで構成されており、アンテナANTで受信された受信信号である高周波信号の中から所望の周波数帯域の信号を通過させる。フィルタFLT2を通過した高周波信号は、低雑音アンプLNAにより低雑音で増幅され、フィルタ装置100へ伝達される。
【0021】
フィルタ装置100は、不平衡信号を平衡信号に変換するためのバランスフィルタ(バラン)である。平衡信号は振幅が等しく互いの位相が反転した一対の信号であり、不平衡信号は接地電位に対する電位の変化を伝送する伝送方式に用いられる信号である。一般的に、アンテナに接続される線路は不平衡線路である。一方で、RFIC20のようなIC回路では、平衡信号により処理が行われる。そのため、不平衡信号で伝達されたアンテナANTからの受信信号は、フィルタ装置100を用いて、RFIC20における処理に適した平衡信号に変換される。
【0022】
(フィルタ装置の構成)
次に、図2図5を用いてフィルタ装置100の詳細について説明する。図2はフィルタ装置100の等価回路図であり、図3はフィルタ装置100の外形斜視図である。図4は、図3における誘電体を省略した内部構造を示す図である。また、図5は、フィルタ装置100の分解斜視図である。図3図5においては、誘電体層の法線方向(積層方向)をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な平面をXY平面とする。なお、図4および後述する図7図12の内部構造を示す図においては、積層方向の縮尺が部分的に誇張されている。
【0023】
図2の等価回路を参照して、フィルタ装置100は、入力側の不平衡端子T1および出力側の平衡端子T2,T3と、不平衡端子T1に接続された共振回路110(第1共振回路)と、平衡端子T2,T3に接続された共振回路120(第2共振回路)とを備える。共振回路110,120の各々は、少なくとも1つのLC並列共振器を含んで構成される。図2の例においては、共振回路110には3つの共振器RC11,RC12,RC13が含まれており、共振回路120には1つの共振器RC21が含まれている。
【0024】
共振器RC11,RC12,RC13の各々は、キャパシタおよびインダクタが並列に接続されたLC並列共振器である。共振器RC11は、並列接続されたキャパシタC11およびインダクタL11を有しており、一方の接続ノードが基準電位(接地電位)に接続され、他方の接続ノードが不平衡端子T1に接続されている。すなわち、共振器RC11は、不平衡端子T1と基準電位との間にキャパシタC11およびインダクタL11が並列に接続された構成を有している。
【0025】
共振器RC12は、並列接続されたキャパシタC12およびインダクタL12を有しており、一方の接続ノードが基準電位(接地電位)に接続され、他方の接続ノードがキャパシタC15を介して不平衡端子T1に接続されている。
【0026】
共振器RC13は、並列接続されたキャパシタC13およびインダクタL13を有しており、一方の接続ノードが基準電位(接地電位)に接続されている。なお、共振器RC13においては、キャパシタC13およびインダクタL13の他方の接続ノードはどこにも接続されておらず、開放されている。
【0027】
このように、共振回路110に含まれる各共振器は、インダクタが基準電位に直接接続された「短絡型共振器」である。共振器RC11および共振器RC12、ならびに、共振器RC12および共振器RC13は電磁界結合している。また、共振器RC11および共振器RC12は、キャパシタC15により容量結合している。共振器RC11,RC12,RC13の共振周波数を調整することによって、共振回路110はバンドパスフィルタとして機能する。
【0028】
共振回路120に含まれる共振器RC21は、インダクタL21およびキャパシタC21A,C21Bを有する。インダクタL21は、平衡端子T2,T3の間に接続される。また、キャパシタC21A,C21Bは、平衡端子T2,T3の間に直列接続される。すなわち、直列接続されたキャパシタC21A,C21Bと、インダクタL21とが、平衡端子T2,T3の間に並列に接続されている。キャパシタC21AとキャパシタC21Bとの間の接続ノードは、基準電位に接続される。
【0029】
共振器RC21においては、平衡端子T2,T3はキャパシタC21A,C21Bをそれぞれ介して基準電位と接続されており、インダクタL21は基準電位には直接接続されていない。すなわち、共振器RC21は、「開放型共振器」である。
【0030】
共振器RC13および共振器RC21は電磁界結合しており、不平衡端子T1に入力された信号は、当該電磁界結合によって共振器RC21に伝達される。共振器RC21は、基準電位に対して、平衡端子T2に接続される回路、および、平衡端子T3に接続される回路が対称構造となっているため、平衡端子T2,T3からは、互いに位相が反転した同じ振幅の信号が出力される。
【0031】
図3図5を参照して、フィルタ装置100は、複数の誘電体層(第1層LY1~第5層LY5)が積層された誘電体基板(積層体)130を備え、略直方体の外形を有している。誘電体基板130の外表面には、上面131、側面133~136および下面132にわたって延在する、略C型形状の複数の外部電極(側面電極)が設けられている。外部電極は、外部機器との接続に用いられるとともに、誘電体基板130の各層に設けられた電極間の接続にも用いられる。外部電極は、不平衡端子T1、平衡端子T2,T3、および基準電位に接続するための接地電極GND(基準電位端子)を含む。不平衡端子T1は、側面136に設けられており、平衡端子T2,T3は側面134,133にそれぞれ設けられている。接地電極GNDは、側面133,134,135に設けられている。誘電体基板130の上面131には、方向を表わす方向性マークDMが付されている。
【0032】
不平衡端子T1は、第3層LY3に設けられた平板電極C0に接続されている。平板電極C0は、積層方向(Z軸方向)に第2層LY2から第4層LY4まで延在するビアV1Aに接続されている。ビアV1Aは、第2層LY2において配線電極LP1に接続されており、第4層LY4において平板電極C1に接続されている。配線電極LP1は、図4および図5に示されるように、第2層LY2においてY軸方向に延在しており、ビアV1に接続されている。
【0033】
ビアV1は、積層方向に第2層LY2から第5層LY5まで延在しており、第5層LY5において平板電極CGに接続されている。平板電極CGは、誘電体基板130の外表面に形成された接地電極GNDに接続されている。
【0034】
ビアV1,V1Aおよび配線電極LP1によって、図2におけるインダクタL11が構成される。また、第4層LY4の平板電極C1と第5層LY5の平板電極CGとは互いに対向しており、平板電極C1および平板電極CGによって、図2におけるキャパシタC11が構成される。したがって、ビアV1,V1A、配線電極LP1および平板電極C1,CGによって、図2における共振器RC11が構成される。
【0035】
第2層LY2に設けられた配線電極LP2、第2層LY2から第4層LY4まで積層方向に延在するビアV2A、および第2層LY2から第5層LY5まで積層方向に延在するビアV2によって、図2におけるインダクタL12が構成される。第4層LY4においてビアV2Aに接続される平板電極C2は、第5層LY5に形成される平板電極CGに対向しており、平板電極C2および平板電極CGによって、図2におけるキャパシタC12が構成される。すなわち、ビアV2,V2A、配線電極LP2および平板電極C2,CGによって、図2における共振器RC12が構成される。なお、不平衡端子T1に接続された第3層LY3の平板電極C0は、第4層LY4に設けられた平板電極C2と対向しており、平板電極C0および平板電極C2によって、図2におけるキャパシタC15が構成される。
【0036】
第2層LY2に設けられた配線電極LP3、第2層LY2から第4層LY4まで積層方向に延在するビアV3A、および第2層LY2から第5層LY5まで積層方向に延在するビアV3によって、図2におけるインダクタL13が構成される。第4層LY4においてビアV3Aに接続される平板電極C3は、第5層LY5に設けられる平板電極CGに対向しており、平板電極C3および平板電極CGによって、図2におけるキャパシタC13が構成される。すなわち、ビアV3,V3A、配線電極LP3および平板電極C3,CGによって、図2における共振器RC13が構成される。
【0037】
第2層LY2において、配線電極LP1,LP2,LP3は、X軸方向に離間して配列されている。また、ビアV1,V1Aの間、ビアV2,V2A間の間、およびビアV3,V3A間の間は、ほぼ同じ間隔とされている。インダクタL11,L12,L13は、X軸に沿った同じ巻回軸の周りに巻回されており、互いに電磁界結合している。
【0038】
共振回路120の共振器RC21は、配線電極LP4、平板電極C4,C5,CGおよびビアV4,V5によって構成される。配線電極LP4は、共振回路110における配線電極LP1,LP2,LP3と同じ第2層LY2に設けられている。配線電極LP4は、誘電体基板130の積層方向に平面視した場合に、略C字形状を有しており、当該C字形状の開放端が共振回路110に向くように配置されている。言い換えれば、配線電極LP4の開放端がX軸の負方向を向くように配置されている。共振器RC21においては、短絡型共振器である共振器RC13との線路長の差を調整するための配線電極LP4が、ビアV4,V5との接続点から、短絡型共振器である共振器RC13に対して遠ざかる方向に延伸する経路を有している。なお、配線電極LP4の形状は略C字形状には限られず、V字形状、U字形状、あるいはミアンダ形状であってもよい。
【0039】
配線電極LP4の開放端の2つの端部には、積層方向に第4層LY4まで延在するビアV4,V5がそれぞれ接続されている。ビアV4は第4層LY4に設けられた平板電極C4に接続されており、ビアV5は第4層LY4に設けられた平板電極C5に接続されている。配線電極LP4およびビアV4,V5によって、図2におけるインダクタL21が構成される。
【0040】
平板電極C4は平衡端子T2に接続されており、平板電極C5は平衡端子T3に接続されている。平板電極C4,C5は、第5層LY5に設けられた平板電極CGに対向している。平板電極C4と平板電極CGとによって、図2におけるキャパシタC21Aが構成される。また、平板電極C5と平板電極CGとによって、図2におけるキャパシタC21Bが構成される。
【0041】
ビアV4とV5との間隔は、共振器RC13のビアV3とV3Aとの間隔とほぼ同じ間隔に設定される。インダクタL21は、共振回路110におけるインダクタL11,L12,L13と同じ、X軸に沿った巻回軸の周りに巻回されている。そのため、共振器RC13と共振器RC21とは電磁界結合しており、これによって不平衡端子T1に供給された信号が、共振器RC11,RC12,RC13を介して共振器RC21に伝達される。
【0042】
ここで、伝達対象の信号の波長をλとした場合に、短絡型共振器である共振器RC11,RC12,RC13に必要とされる線路長(すなわち、インダクタの線路長)はλ/4である。一方、開放型共振器である共振器RC21に必要とされる線路長はλ/2である。各共振器において、積層方向に設けられるビアの長さはほぼ同じとなるため、共振器RC21と共振器RC11,RC12,RC13との線路長の差は、第2層LY2に設けられる配線電極LP4の線路長で調整される。
【0043】
このように、短絡型共振器(共振器RC11,RC12,RC13)および開放型共振器(共振器RC21)のインダクタの一部にビアが用いられ、短絡型共振器のビアの長さと開放型共振器のビアの長さがほぼ同じであることによって、開放型共振器を備える構成であっても、フィルタ装置の高さ方向の寸法を抑制してフィルタ装置の小型化を図ることができる。また、各共振器において、ビアによってインダクタが構成されることによって、誘電体層の面内にプリントコイルによってインダクタが構成される場合と比較してQ値を高くすることができるので、フィルタ特性の劣化を抑制することができる。さらに、出力側の共振器RC21にλ/2の線路長の開放型共振器が用いられることによって、平衡端子T2,T3から出力される信号の位相差を180°に容易に設定することができるので、良好なバランス特性を実現することが可能となる。
【0044】
図6は、実施の形態1のフィルタ装置100の特性を説明するための図である。図6においては、左側のグラフ(図6(a))にはバランス変換後の挿入損失(Insertion Loss:IL)および反射損失(Return Loss:RL)が示され、中央のグラフ(図6(b))には平衡端子T2,T3から出力される信号の振幅バランス(Amplitude Balance:AB)が示され、右側のグラフ(図6(c))には平衡端子T2,T3から出力される信号の位相偏差(Phase Difference:PD)が示されている。なお、図6において、フィルタ装置100の対象とする通過帯域は、3.2GHz~4.0GHzである。
【0045】
図6(a)を参照して、実線LN10は不平衡端子T1から平衡端子T2,T3への挿入損失を示しており、破線LN11は不平衡端子T1における反射損失を示しており、一点鎖線LN12は平衡端子T2,T3のディファレンシャルモードにおける反射損失を示している。
【0046】
挿入損失については、対象通過帯域を通して、仕様範囲の3.5dB以下を達成することができている。また、反射損失についても、対象通過帯域を通して、仕様範囲の10dB以下が達成されている。
【0047】
図6(b)の振幅バランスについては、平衡端子T3から出力される信号の振幅と、平衡端子T2から出力される信号の振幅の差がdB値で示されている。図6(b)の実線LN20に示されるように、対象通過帯域において、振幅バランスは-0.10dB~0.32dBとなっており、仕様範囲の±1.0dB以内が達成されている。
【0048】
図6(c)の位相偏差は、平衡端子T2から出力される信号の位相と、平衡端子T3から出力される信号の位相の差を示している。図6(c)の実線LN30に示されるように、位相偏差は、対象通過帯域において-2.0°~-1.3°となっており、仕様範囲の±10°以内が達成されている。
【0049】
以上のように、実施の形態1のフィルタ装置100においては、所望のフィルタ特性およびバランス特性を達成しつつ、装置全体の小型化を実現されている。
【0050】
なお、実施の形態1における「共振器RC11」および「共振器RC21」は、本開示における「第1共振器」および「第2共振器」にそれぞれ対応する。実施の形態1における共振器RC11の「インダクタL11」および「キャパシタC11」は、本開示おける「第1インダクタ」および「第1キャパシタ」にそれぞれ対応する。実施の形態1における共振器RC21の「インダクタL21」は本開示の「第2インダクタ」に対応し、「キャパシタC21A」および「キャパシタC21B」は本開示の「第2キャパシタ」および「第3キャパシタ」にそれぞれ対応する。実施の形態1における「ビアV1」および「ビアV1A」は、本開示における「第1導電体」および「第2導電体」にそれぞれ対応する。実施の形態1における「ビアV4」および「ビアV5」は、本開示における「第3導電体」および「第4導電体」にそれぞれ対応する。実施の形態1における「配線電極LP1」および「配線電極LP4」は、本開示における「第1配線電極」および「第2配線電極」にそれぞれ対応する。
【0051】
<変形例>
(変形例1)
図7は、変形例1のフィルタ装置100Aの内部構造を示す図である。フィルタ装置100Aにおいては、実施の形態1のフィルタ装置100において、共振回路120のインダクタL21を構成する配線電極LP4が配線電極LP4Aに置き換わった構成となっている。フィルタ装置100Aにおいて、フィルタ装置100と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0052】
図7を参照して、フィルタ装置100Aにおける配線電極LP4Aは、実施の形態1の配線電極LP4と同様に略C字形状を有しているが、開放端の方向が反対になっており、配線電極LP4Aの開放端がX軸の正方向を向くように配置されている。言い換えれば、配線電極LP4Aは、ビアV4,V5との接続点から、共振回路110に向かう方向に延伸する経路を有している。なお、この配置に伴って、ビアV4,V5の位置が、フィルタ装置100に比べてX軸の正方向に若干移動した位置に変更されている。
【0053】
なお、配線電極LP4Aの形状は略C字形状には限られず、V字形状、U字形状、あるいはミアンダ形状であってもよい。
【0054】
このように、平衡端子に接続される共振回路において、短絡型共振器との線路長を調整するための開放型共振器の平板電極を、短絡型共振器に近づく方向に延伸させるようにしてもよい。
【0055】
(変形例2)
上述のように、開放型共振器の線路長は、短絡型共振器の線路長よりも長くすることが必要となる。しかしながら、フィルタ装置全体のサイズの制約等から、開放型共振器に必要とされる線路長が確保できない場合が生じ得る。
【0056】
変形例2においては、開放型共振器に必要とされる線路長が十分に確保できない場合に、短絡型共振器と開放型共振器とが容量結合することによって、経路長の不足を補償する構成について説明する。
【0057】
図8は、変形例2のフィルタ装置100Bの内部構造を示す図である。図8を参照して、フィルタ装置100Bにおいては、共振器RC21の配線電極LP4が配線電極LP4Bに置き換えられるとともに、共振器RC13の配線電極LP3と共振器RC21の配線電極LP4Bとに対向する平板電極C6が追加された構成となっている。言い換えると、平板電極C6は、積層体の積層方向から平面視した場合に、配線電極LP3の少なくとも一部、および、配線電極LP4Bの少なくとも一部と重なる位置に配置されている。フィルタ装置100Bにおいて、フィルタ装置100と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0058】
図8を参照して、フィルタ装置100Bにおいては、共振器RC21の配線電極LP4Bは、共振器RC13の配線電極LP3と同様にY軸方向に延伸しており、その線路長も配線電極LP3とほぼ同じである。実施の形態1のフィルタ装置100においては、開放型共振器である共振器RC21の線路長は配線電極LP4の長さによって調整されていたが、図8のような構成の場合、配線電極とビアのみでは、開放型共振器である共振器RC21に必要とされるλ/2の線路長が確保できない可能性がある。たとえば、フィルタ装置のX軸方向の寸法が制限されるような場合に、このような状態となり得る。
【0059】
フィルタ装置100Bにおいては、平板電極C6によって共振器RC21の配線電極LP4Bと共振器RC13の配線電極LP3とは同程度の長さで結合しつつ、不足する線路長については、共振器RC21における基準電位との間の容量成分の調整によって共振周波数が調整されている。しかしながら、このような状態で共振器RC13と共振器RC21とを結合させると、特に配線電極、平板電極およびビアが配置される領域が狭い場合には、共振器間の磁気結合が強くなってしまう場合が生じ得る。このような場合には、図8に示されるように、平板電極C6によって配線電極LP4Bと配線電極LP3との間の容量結合が付加されることによって共振器間の磁気結合が調整される。なお、配線電極間の容量結合が付加される際、平板電極C6は、共振器RC21の線路長の中央部に配置されることが好ましい。共振器RC21の線路長の中央部においては流れる電流がゼロとなるため、このような位置に平板電極C6が配置されることによって、共振器RC21におけるバランス特性を保持することができる。
【0060】
以上のように、短絡型共振器と開放型共振器とが容量結合することによって、開放型共振器の線路長を短くすることができるので、フィルタ装置のさらなる小型化を実現することが可能となる。
【0061】
なお、変形例2における「平板電極C6」は、本開示における「結合電極」に対応する。
【0062】
(変形例3)
図9は、変形例3のフィルタ装置100Cの内部構造を示す図である。フィルタ装置100Cにおいては、平衡端子T2,T3に接続される共振回路120のインダクタL21を構成するビアV4,V5の間隔D2が、不平衡端子T1に接続される共振回路110のインダクタL13を構成するビアV3,V3Aの間隔D1よりも広い(D1<D2)。
【0063】
共振器RC13と共振器RC21との電磁界結合において、共振器RC13のビアV3と共振器RC21のビアV5とが結合し、共振器RC13のビアV3Aと共振器RC21のビアV4とが結合する。このとき、共振器RC21のビアの間隔D2が共振器RC13のビアの間隔D1よりも狭い場合、共振器RC13のビアV3が共振器RC21のビアV4とも結合し、共振器RC13のビアV3Aが共振器RC21のビアV5とも結合する可能性がある。ビアV3に流れる電流の方向とビアV4に流れる電流の方向は逆であるため、ビアV4がビアV3およびビアV3Aの双方と結合すると、伝達される信号の一部が相殺されてしまい、挿入損失の増加につながるおそれがある。
【0064】
変形例3のフィルタ装置100Cのように、共振器RC21のビアの間隔D2が共振器RC13のビアの間隔D1よりも広いことによって、ビアV4とビアV3との結合、および、ビアV5とビアV3Aとの結合が低減されるので、挿入損失の増加を抑制することが可能となる。また、インダクタL21の空芯径が大きくなりインダクタL21のインダクタンスを大きくすることができるので、共振器RC21のQ値を高めて通過特性を向上させることができる。
【0065】
なお、図9において、インダクタL21を構成する配線電極LP4Cが略V字形状となっているが、実施の形態1と同様に略C字形状であってもよい。
【0066】
(変形例4)
変形例4においては、平衡端子に接続される開放型共振器から外部機器へ直流電源を供給することが可能なフィルタ装置の構成について説明する。
【0067】
図10は、変形例4のフィルタ装置100Dの内部構造を示す図である。フィルタ装置100Dにおいては、開放型共振器である共振器RC21における線路長の中央部に、直流電源供給用の給電端子が設けられる。より具体的には、共振器RC21においては、ビアV4,V5の長さが等しいため、配線電極LP4Dの中央部に給電端子TDFが接続されている。給電端子TDFは、誘電体基板130の外表面に設けられた給電用の外部電極(図示せず)に接続されており、当該外部電極に他の機器が接続されることにより、接続された機器に対して直流電源が供給される。
【0068】
開放型共振器において、線路長の中央(すなわち、インダクタL21の中央)は基準電位に対して所定の電位を有し、かつ流れる電流がゼロの位置となる。そのため、線路長の中央から電源を供給しても、平衡端子T2,T3から出力される信号(すなわち、平衡端子T2,T3から出力される電流)への影響は生じない。
【0069】
したがって、開放型共振器の線路長の中央部に電源供給用端子が設けられることによって、フィルタ装置の特性に影響を与えることなく、フィルタ装置を直流電源としても利用することができる。
【0070】
なお、図10においては、図9の変形例3と同様に、短絡型共振器のビアの間隔よりも開放型共振器のビアの間隔が広いが、図4および図5で示したフィルタ装置のように、開放型共振器のビアの間隔と短絡型共振器のビアの間隔とが同じであってもよい。
【0071】
また、開放型共振器の線路長の中央を流れる電流がゼロであるため、図11に示した参考例のフィルタ装置100Eのように、共振器RC21の線路長の中央部がビアV6によって平板電極CGに接続されても、フィルタ装置の特性に対する影響は生じない。
【0072】
(変形例5)
上記の実施の形態1および各変形例においては、層間接続用の導電体として、誘電体層を貫通するビアが用いられる構成について説明した。変形例5においては、層間接続用の導電体として、誘電体基板の側面に設けられた側面電極を利用する構成について説明する。
【0073】
図12は、変形例5のフィルタ装置100Fの内部構造を示す図である。フィルタ装置100Fにおいては、共振回路120の共振器RC21における配線電極LP4Dと平板電極C4,C5とを接続する導電体として、誘電体基板130の側面に設けられた側面電極が用いられている。より具体的には、側面電極として平衡端子T2,T3が用いられている。
【0074】
上述のように、開放型共振器は短絡型共振器よりも長い線路長が必要になるが、側面電極を利用することによって導電体の間隔を広くとることができるので、開放型共振器(共振器RC21)の線路長を長くすることができる。また、電極間隔が広くなるため、変形例3で説明したように、各側面電極が共振器RC13のビアV3,V3Aの双方と結合する状態を抑制することができるので、挿入損失を低減することができる。さらに、配線電極LP4Dと側面電極とで構成されるインダクタL21の空芯径が大きくなり、インダクタL21のインダクタンスを大きくすることができる。これによって、共振器RC21のQ値が高められるので、通過特性を向上させることができる。
【0075】
なお、図12においては、共振回路120側の共振器RC21における導電体が側面電極で構成される例について説明したが、それに代えてあるいは加えて、共振回路110側の共振器における導電体を側面電極で構成してもよい。また、各共振回路が複数の共振器を有する場合には、当該複数の共振器のうちの一部の共振器における導電体を側面電極で構成してもよい。
【0076】
(変形例6)
実施の形態1のフィルタ装置100においては、不平衡端子T1に接続される共振回路110が、3つの共振器RC11,RC12,RC13を含む構成について説明したが、各共振回路に含まれる共振器の数は、共振回路120のように1つであってもよい。
【0077】
図13は、変形例6のフィルタ装置100Gの等価回路図である。フィルタ装置100Gにおいては、フィルタ装置100における共振回路110が共振回路110Aに置き換わった構成となっている。フィルタ装置100Gにおいて、フィルタ装置100と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0078】
図13を参照して、共振回路110Aは、インダクタL11およびキャパシタC11で構成される1つの共振器RC11によって構成されている。すなわち、フィルタ装置100Gは、フィルタ装置100における共振器RC12,RC13が除かれた構成となっている。上述のように、フィルタ装置100において不平衡端子T1側の共振回路110は、3つの共振器が用いられることでバンドパスフィルタとして機能しているが、所望の通過帯域が異なれば、変形例6のフィルタ装置100Gのように、単独の共振器で共振回路が構成されてもよい。
【0079】
このような構成においても、入力側の不平衡端子に接続された共振回路に短絡型共振器が用いられ、出力側の平衡端子に接続された共振回路に開放型共振器が用いられることによって、低損失かつ良好なバランス特性を達成しつつ、装置の小型化を実現することができる。
【0080】
(変形例7)
変形例7においては、平衡端子T2,T3に接続される共振回路が、複数の共振器によって構成される構成について説明する。
【0081】
図14は、変形例7のフィルタ装置100Hの等価回路図である。フィルタ装置100Hにおいては、フィルタ装置100における共振回路120が共振回路120Aに置き換わった構成となっている。フィルタ装置100Hにおいて、フィルタ装置100と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0082】
図14を参照して、フィルタ装置100Hにおいては、共振回路120Aが、2つの共振器RC21,RC22を含んで構成されている。共振器RC21は、実施の形態1における共振回路120と同様に、平衡端子T2,T3に接続されている。
【0083】
共振器RC22は、インダクタL22と、キャパシタC22A,C22Bとを含む。キャパシタC22AおよびキャパシタC22Bは直列に接続されており、直列接続されたキャパシタC22A,C22Bが、インダクタL22と並列に接続されている。キャパシタC22AとキャパシタC22Bとの間の接続ノードは、基準電位に接続されている。すなわち、共振器RC22においては、インダクタL22がキャパシタC22A,C22Bを介して基準電位に接続される開放型共振器に対応する。
【0084】
共振器RC22は、共振器RC21と、共振回路110の共振器RC13との間に配置される。不平衡端子T1に供給された信号は、共振器RC11,RC12,RC13を通過し、共振器RC13と共振器RC22との間の電磁界結合により共振器RC22に伝達される。共振器RC22に伝達された信号は、電磁界結合により共振器RC22から共振器RC21へとさらに伝達されて、平衡端子T2,T3から出力される。
【0085】
このように、平衡端子に接続される共振回路が複数の共振器によって構成される場合であっても、入力側の不平衡端子に接続された共振回路に短絡型共振器が用いられ、出力側の平衡端子に接続された共振回路に開放型共振器が用いられることによって、低損失かつ良好なバランス特性を達成しつつ、装置の小型化を実現することができる。
【0086】
[実施の形態2]
実施の形態2においては、複数のフィルタ装置で構成されるマルチプレクサにおいて、少なくとも1つのフィルタ装置に実施の形態1のフィルタ装置の構成が適用される例について説明する。
【0087】
図15は、実施の形態2に従うダイプレクサ200の等価回路図である。図15においては、マルチプレクサとして2つのフィルタ装置を含むダイプレクサの例について説明するが、マルチプレクサは3つ以上のフィルタ装置が含まれていてもよい。
【0088】
図15を参照して、ダイプレクサ200は、周波数帯域の異なる2つのフィルタ装置210,220を備える。フィルタ装置210は、ローパスフィルタとして機能するインダクタL50を介して、不平衡端子T11に接続される。また、フィルタ装置220は、ハイパスフィルタとして機能するキャパシタC70を介して不平衡端子T11に接続される。不平衡端子T11は、たとえば、図示しないアンテナに接続される。フィルタ装置210は、たとえば2GHz帯(2.4~2.5GHz)の信号を通過するように構成される。また、フィルタ装置220は、フィルタ装置210よりも高い、たとえば5~7GHz帯(5.15~7.125GHz)の信号を通過するように構成される。
【0089】
フィルタ装置210は、不平衡端子T11に接続される共振回路211と、平衡端子T12A,T13Aに接続される共振回路212とを含む。共振回路211は、3段の共振器RC51,RC52,RC53により構成されている。共振器RC51,RC52,RC53の各々は、インダクタおよびキャパシタが並列接続された短絡型共振器である。
【0090】
共振器RC51は、並列接続されたインダクタL51およびキャパシタC51を有している。共振器RC51の一方の接続ノードは基準電位に接続され、他方の接続ノードはインダクタL50に接続されている。共振器RC52は、並列接続されたインダクタL52およびキャパシタC52を有している。共振器RC52の一方の接続ノードは基準電位に接続され、他方の接続ノードはキャパシタC55を介してインダクタL50に接続されている。共振器RC53は、並列接続されたインダクタL53およびキャパシタC53を有している。共振器RC53の一方の接続ノードは基準電位に接続され、他方の接続ノードはキャパシタC55,C56を介してインダクタL50に接続されている。
【0091】
共振回路212は、共振器RC61を含む。共振器RC61は、インダクタL61およびキャパシタC61A,C61Bを有する。インダクタL61は、平衡端子T12A,T13Aの間に接続される。また、キャパシタC61A,C61Bは、平衡端子T12A,T13Aの間に直列接続される。すなわち、直列接続されたキャパシタC61A,C61Bと、インダクタL61とが、平衡端子T12A,T13Aの間に並列に接続されている。キャパシタC61AとキャパシタC61Bとの間の接続ノードは基準電位に接続される。すなわち、共振器RC61は開放型共振器である。
【0092】
同様に、フィルタ装置220は、不平衡端子T11に接続される共振回路221と、平衡端子T12B,T13Bに接続される共振回路222とを含む。共振回路221は、3段の共振器RC71,RC72,RC73により構成されている。共振器RC71,RC72,RC73の各々は、インダクタおよびキャパシタが並列接続された短絡型共振器である。
【0093】
共振器RC71は、並列接続されたインダクタL71およびキャパシタC71を有している。共振器RC71の一方の接続ノードは基準電位に接続され、他方の接続ノードはキャパシタC70に接続されている。共振器RC72は、並列接続されたインダクタL72およびキャパシタC72を有している。共振器RC72の一方の接続ノードは基準電位に接続され、他方の接続ノードはキャパシタC75を介してキャパシタC70に接続されている。共振器RC73は、並列接続されたインダクタL73およびキャパシタC73を有している。共振器RC73の一方の接続ノードは基準電位に接続され、他方の接続ノードはキャパシタC75,C76を介してキャパシタC70に接続されている。
【0094】
共振回路222は、共振器RC81を含む。共振器RC81は、インダクタL81およびキャパシタC81A,C81Bを有する。インダクタL81は、平衡端子T12B,T13Bの間に接続される。また、キャパシタC81A,C81Bは、平衡端子T12B,T13Bの間に直列接続される。すなわち、直列接続されたキャパシタC81A,C81Bと、インダクタL81とが、平衡端子T12B,T13Bの間に並列に接続されている。キャパシタC81AとキャパシタC81Bとの間の接続ノードは基準電位に接続される。すなわち、共振器RC81は開放型共振器である。
【0095】
このように、フィルタ装置210およびフィルタ装置220の各々は、共振器RC52と共振器RC53との接続、および、共振器RC72と共振器RC73との接続を除いて、実施の形態1で説明したフィルタ装置100と同様の構成を有している。
【0096】
図16図15のダイプレクサ200の外形斜視図である、図17はダイプレクサ200の分解斜視図である。図16および図17を参照して、ダイプレクサ200は、複数の誘電体層(第11層LY11~第24層LY24)が積層された誘電体基板(積層体)230を備え、略直方体の外形を有している。誘電体基板230の外表面には、上面、側面および下面にわたって延在する、略C型形状の複数の外部電極が設けられている。外部電極は、外部機器との接続に用いられるとともに、誘電体基板230の各層の配線パターン間の接続にも用いられる。外部電極は、不平衡端子T11、平衡端子T12A,T12B,T13A,T13B、および基準電位に接続するための接地電極GNDを含む。誘電体基板230の上面には、方向を表わす方向性マークDM1が付されている。
【0097】
ダイプレクサ200においては、図17の左側の部分にフィルタ装置210が設けられており、図17の右側部分にフィルタ装置220が設けられている。以下、誘電体基板230におけるフィルタ装置210,220の構造の詳細について説明する。
【0098】
まず、低周波数帯域側のフィルタ装置210について説明する。不平衡端子T11は、第13層LY13に設けられた配線電極L1Aに接続されている。配線電極L1Aは、第14層LY14に設けられた配線電極L1Bおよび第15層LY15に設けられた配線電極L1Cと直列に接続される。配線電極L1A,L1B,L1Cは、図15におけるインダクタL50を構成している。
【0099】
配線電極L1Cの一方端は、第11層LY11から第21層LY21まで積層方向(Z軸方向)に延在するビアV11Aに接続されている。ビアV11Aは、第11層LY11において配線電極LP1Xに接続されている。また、ビアV11Aは、第19層LY19において平板電極C6Xに接続され、第21層LY21において平板電極C1Xに接続されている。配線電極LP1Xは、第11層LY11においてY軸方向に延在しており、ビアV11に接続されている。
【0100】
ビアV11は、積層方向に第11層LY11から第22層LY22まで延在しており、第22層LY22において平板電極CG1に接続されている。平板電極CG1は、誘電体基板230の外表面に設けられた接地電極GNDに接続されている。
【0101】
ビアV11,V11Aおよび配線電極LP1Xによって、図15におけるインダクタL51が構成される。また、第21層LY21の平板電極C1Xと第22層LY22の平板電極CG1とは互いに対向しており、平板電極C1Xおよび平板電極CG1によって、図15におけるキャパシタC51が構成される。したがって、ビアV11,V11A、配線電極LP1Xおよび平板電極C1X,CG1によって、図15における共振器RC51が構成される。
【0102】
第11層LY11に設けられた配線電極LP2X、第11層LY11から第20層LY20まで積層方向に延在するビアV12A、および第11層LY11から第22層LY22まで積層方向に延在するビアV12によって、図15におけるインダクタL52が構成される。第20層LY20においてビアV12Aに接続される平板電極C2Xは、第22層LY22に設けられる平板電極CG1に対向しており、平板電極C2Xおよび平板電極CG1によって、図15におけるキャパシタC52が構成される。すなわち、ビアV12,V12A、配線電極LP2Xおよび平板電極C2X,CG1によって、図15における共振器RC52が構成される。なお、ビアV11Aに接続された第19層LY19の平板電極C6Xの一部は、第18層LY18においてビアV12Aに接続された平板電極C7X、および、第20層LY20の平板電極C2Xと対向しており、平板電極C2X,C6X,C7Xによって図15におけるキャパシタC55が構成される。
【0103】
第11層LY11に設けられた配線電極LP3X、第11層LY11から第20層LY20まで積層方向に延在するビアV13A、および第11層LY11から第22層LY22まで積層方向に延在するビアV13によって、図15におけるインダクタL53が構成される。第20層LY20においてビアV13Aに接続される平板電極C3Xは、第22層LY22に設けられる平板電極CG1に対向しており、平板電極C3Xおよび平板電極CG1によって、図15におけるキャパシタC53が構成される。すなわち、ビアV13,V13A、配線電極LP3Xおよび平板電極C3X,CG1によって、図15における共振器RC53が構成される。なお、第20層LY20に設けられた平板電極C3Xおよび第18層LY18に設けられた平板電極C7Xは、第17層LY17に設けられた平板電極C8Xと部分的に対向しており、平板電極C3X,C7X,C8Xによって図15におけるキャパシタC56が構成される。
【0104】
共振回路212の共振器RC61は、配線電極LP4X、平板電極C4X,C5X,CG1,CG2およびビアV14,V14Aによって構成される。配線電極LP4Xは、共振回路211における配線電極LP1X,LP2X,LP3Xと同じ第11層LY11に設けられている。配線電極LP4Xは、第11層LY11から第23層LY23まで積層方向に延在するビアV14,V14Aに接続されている。配線電極LP4XおよびビアV14,V14Aによって、図15におけるインダクタL61が構成される。
【0105】
ビアV14およびビアV14Aは、第23層LY23において平板電極C5Xおよび平板電極C4Xにそれぞれ接続されている。平板電極C4Xは平衡端子T12Aに接続されており、平板電極C5Xは平衡端子T13Aに接続されている。平板電極C4X,C5Xは、第22層LY22に設けられた平板電極CG1および第24層LY24に設けられた平板電極CG2に対向しており、図15におけるキャパシタC61A,C61Bをそれぞれ構成する。平板電極CG2は、第24層LY24において接地電極GNDに接続されている。
【0106】
共振器RC51,RC52,RC53,RC61における各インダクタは、共通の巻回軸の周りに巻回されている。そのため、不平衡端子T11に供給された高周波信号は、各共振器間に生じる電磁界結合により伝達されて、平衡端子T12A,T13Aから出力される。
【0107】
次に、高周波数帯域側のフィルタ装置220について説明する。第18層LY18に設けられた平板電極C0Aは、不平衡端子T11に接続されている。平板電極C0Aは、第17層LY17に設けられた平板電極C0Bに対向している。平板電極C0Aおよび平板電極C0Bによって、図15におけるキャパシタC70が構成される。
【0108】
平板電極C0Bは、第11層LY11から第18層LY18まで積層方向に延在するビアV21によって、第11層LY11に設けられた配線電極LP1Yの一方端に接続されている。配線電極LP1Yの他方端は、第11層LY11から第22層LY22まで積層方向に延在するビアV21Aによって、第22層LY22の平板電極CG1に接続されている。すなわち、配線電極LP1YおよびビアV21,V21Aによって、図15のインダクタL71が構成される。第16層LY16においてビアV21に接続される平板電極C1Yは、第22層LY22に設けられる平板電極CG1に対向しており、平板電極C1Yおよび平板電極CG1によって、図15におけるキャパシタC71が構成される。すなわち、ビアV21,V21A、配線電極LP1Y、平板電極C1Y,CG1によって、図15における共振器RC71が構成される。
【0109】
第11層LY11に設けられた配線電極LP2Y、第11層LY11から第17層LY17まで積層方向に延在するビアV22A、および第11層LY11から第22層LY22まで積層方向に延在するビアV22によって、図15におけるインダクタL72が構成される。第17層LY17においてビアV22Aに接続される平板電極C2Yは、第22層LY22に設けられる平板電極CG1に対向しており、平板電極C2Yおよび平板電極CG1によって、図15におけるキャパシタC72が構成される。すなわち、ビアV22,V22A、配線電極LP2Y、平板電極C2Y,CG1によって、図15における共振器RC72が構成される。なお、図15における共振器RC71と共振器RC72との間のキャパシタC75は、配線電極LP1YおよびビアV21,V21Aによって構成されるインダクタL71と、配線電極LP2YおよびビアV22,V22Aによって構成されるインダクタL72との間の寄生容量によって構成される。
【0110】
第11層LY11に設けられた配線電極LP3Y、第11層LY11から第17層LY17まで積層方向に延在するビアV23、および第11層LY11から第22層LY22まで積層方向に延在するビアV23Aによって、図15におけるインダクタL73が構成される。第17層LY17においてビアV23に接続される平板電極C3Yは、第22層LY22に設けられる平板電極CG1に対向しており、平板電極C3Yおよび平板電極CG1によって、図15におけるキャパシタC73が構成される。すなわち、ビアV23,V23A、配線電極LP3Y、平板電極C3Y,CG1によって、図15における共振器RC73が構成される。なお、図15における共振器RC72と共振器RC73との間のキャパシタC76は、配線電極LP2YおよびビアV22,V22Aによって構成されるインダクタL72と、配線電極LP3YおよびビアV23,V23Aによって構成されるインダクタL73との間の寄生容量によって構成される。
【0111】
共振回路222の共振器RC81は、配線電極LP4Y、平板電極C4Y,C5Y,CG1およびビアV24,V24Aによって構成される。配線電極LP4Yは、共振回路221における配線電極LP1Y,LP2Y,LP3Yと同じ第11層LY11に設けられている。配線電極LP4Yは、第11層LY11から第20層LY20まで積層方向に延在するビアV24,V24Aに接続されている。配線電極LP4YおよびビアV24,V24Aによって、図15におけるインダクタL81が構成される。
【0112】
ビアV24およびビアV24Aは、第20層LY20において平板電極C5Yおよび平板電極C4Yにそれぞれ接続されている。平板電極C4Yは平衡端子T12Bに接続されており、平板電極C5Yは平衡端子T13Bに接続されている。平板電極C4Y,C5Yは、第22層LY22に設けられた平板電極CG1に対向しており、図15におけるキャパシタC81A,C81Bをそれぞれ構成する。
【0113】
また、第12層LY12に設けられた平板電極C6Yは、共振器RC81の配線電極LP4Yおよび共振器RC73の配線電極LP3Yに対向しており、平板電極C6Yによって、配線電極LP4Yおよび配線電極LP3Yが容量結合する。上述の変形例2で説明したように、平板電極C6Yを用いた容量結合により、共振器RC73の線路長と共振器RC81の線路長との差が調整されている。
【0114】
共振器RC71,RC72,RC73,RC81における各インダクタは、共通の巻回軸の周りに巻回されている。そのため、不平衡端子T11に供給された高周波信号は、各共振器間に生じる電磁界結合により伝達されて、平衡端子T12B,T13Bから出力される。
【0115】
以上のように、2つ以上のフィルタ装置を含むマルチプレクサにおいて、少なくとも1つのフィルタ装置として実施の形態1および各変形例で説明したフィルタ装置を適用することによって、フィルタ特性の低下を抑制しつつ小型化を実現することができる。
【0116】
なお、フィルタ装置210の共振回路211においては、基準電位に接続されるビアV11,V12,V13が同じ側に配置されており、各共振器に流れる電流の方向は同じである。一方、フィルタ装置220の共振回路221においては、基準電位に接続されるビアが、ビアV21A,V22,V23Aと交互に配置されており、共振器RC72に流れる電流の向きが共振器RC71,RC73に流れる電流の向きが逆になっている。基準電位に接続されるビアの配置については、対象となる周波数帯域幅に応じて適宜設定される。
【0117】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0118】
1 通信装置、10 フロントエンド回路、20 RFIC、100,100A~100H,210,220 フィルタ装置、110,110A,120,120A,211,212,221,222 共振回路、130,230 誘電体基板、200 ダイプレクサ、ANT アンテナ、C0~C6,C0A,C0B,C1X~C8X,C1Y~C6Y,CG,CG1,CG2 平板電極、C11~C13,C15,C21A,C21B,C22A,C22B,C51~C53,C55,C56,C61A,C61B,C70~C73,C75,C76,C81A,C81B キャパシタ、DM,DM1 方向性マーク、FLT1,FLT2 フィルタ、GND 接地電極、L1A~L1C,LP1~LP4,LP1X~LP4X,LP1Y~LP4Y,LP4A~LP4D 配線電極、L11~L13,L21,L22,L50~L53,L61,L71~L73,L81 インダクタ、LNA 低雑音アンプ、LY1~LY5,LY11~LY24 誘電体層、PA パワーアンプ、RC11~RC13,RC21,RC22,RC51~RC53,RC61,RC71~RC73,RC81 共振器、RX 受信側線路、SW スイッチ、T1,T11 不平衡端子、T2,T3,T12A,T12B,T13A,T13B 平衡端子、TA 選択端子、TC 共通端子、TDF 給電端子、TX 送信側線路、V1~V6,V1A~V3A,V11~V14,V11A~V14A,V21~V24,V21A~V24ビア。
図1
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