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特許7420253インク加熱装置、インク供給装置及び画像形成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】インク加熱装置、インク供給装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20240116BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B41J2/17
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022535272
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2021024907
(87)【国際公開番号】W WO2022009762
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2020116597
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】与田 純也
(72)【発明者】
【氏名】上野 哲也
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-218820(JP,A)
【文献】特開2011-198485(JP,A)
【文献】特開2015-205418(JP,A)
【文献】特開2011-224909(JP,A)
【文献】米国特許第05805856(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01ー2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを加熱するヒーターと、前記ヒーターと電源との間に設けられた自動復帰型のバイメタルスイッチと、を備えるヒーター回路と、
前記バイメタルスイッチと前記電源との間に設けられたリレーと、
前記ヒーター回路の状態に応じて前記リレーを開閉させる制御部と、を備え、
前記ヒーター回路は、前記バイメタルスイッチの通電が検知されたことを示す検知信号を出力する検知部を備え、
前記制御部は、前記検知信号が停止した状態が所定時間以上継続した場合にリレーを開かせることを特徴とするインク加熱装置。
【請求項2】
操作を受け付ける操作部を備え、
前記制御部は、前記リレーを開かせた後、所定の操作が前記操作部により受け付けられた場合に前記リレーを閉じさせることを特徴とする請求項に記載のインク加熱装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記検知信号が停止した状態が所定時間未満継続した場合に前記リレーを開かせないことを特徴とする請求項に記載のインク加熱装置。
【請求項4】
複数の前記ヒーター回路を備え、
前記制御部は、いずれか1つの前記ヒーター回路において前記検知信号が停止した状態が所定時間以上継続した場合に前記リレーを開かせることを特徴とする請求項に記載のインク加熱装置。
【請求項5】
前記制御部は、全ての前記ヒーター回路からの前記検知信号が共に停止した場合に前記リレーを開かせないことを特徴とする請求項に記載のインク加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に供給されるインクを加熱するインク加熱装置、インク加熱装置を備えるインク供給装置、及び、インク供給装置とインクジェット記録装置とを備える画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置には、記録ヘッドにインクを供給するインクコンテナが装着されるが、インクを大量に消費する場合を想定して、大容量のインクコンテナを備えたインク供給装置がオプションとして提供されている。
【0003】
良好な画質を実現するためには、インクの粘度を適正な範囲に保つ必要があるが、室温が低いためにインクの粘度が増大する場合がある。そのため、インク供給装置にはインクを加熱する手段が設けられている。インクを加熱する手段の一例として、チューブとヒーターとを備えたヒーターユニットが知られている。チューブの一端部が大容量のインクコンテナに接続され、他端部がインクジェット記録装置のインク供給路に接続され、インクコンテナから送り出されるインクがヒーターで加熱され、インクジェット記録装置に供給される。
【0004】
ところで、インクが適正な温度まで加熱されるまでは画像形成が開始できないため、待ち時間が生じる。そこで、待ち時間の短縮を目的として、インクを急速に加熱するシステムが提供されている。ところが、急速加熱では大電流を使用するため、過昇温が発生するおそれがある。そこで、従来、過昇温を防止する技術が検討されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、ヒーター制御信号がオフであってかつヒーター状態信号が第1の設定時間以上オンであることを検出する第1の検出手段と、第1の検出手段による検出後、第2の設定時間後にヒーター制御信号がオフであってかつヒーター状態信号がオンである状態を再度検出した場合に異常として検出する第2の検出手段を具え、第2の検出手段の検出に基づいてヒーターへの電源を強制オフすることが提案されている。また、特許文献2では、ゼロクロスタイミングにおける交流電源の電圧変化率が許容値以上か否かを検出し、電圧変化率が許容値以上である場合、交流電源から発熱手段への通電を禁止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-191539号公報
【文献】特開2011-113807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1、2で提案された構成は、装置から出力される情報を用いて制御部が装置の異常を判定し、異常と判定した場合に加熱を停止させるものであるから、過昇温の発生から加熱の停止までに時間差が生じ、過昇温が発生した場合に即座に加熱を停止させることができない。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮し、過昇温発生から加熱停止までの時間を短縮することのできるインク加熱装置、インク供給装置及び画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係るインク加熱装置は、インクを加熱するヒーターと、前記ヒーターと電源との間に設けられた自動復帰型のバイメタルスイッチと、を備えるヒーター回路と、前記バイメタルスイッチと前記電源との間に設けられたリレーと、前記ヒーター回路の状態に応じて前記リレーを開閉させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るインク供給装置は、前記インクを収容するインクコンテナと、前記インクコンテナから送り出された前記インクを加熱する前記のいずれかのインク加熱装置と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る画像形成システムは、前記のインク供給装置と、シート状の記録媒体を搬送する搬送ユニットと、前記搬送ユニットにより搬送される前記記録媒体に前記インク供給装置から供給された前記インクを吐出するインクジェットヘッドと、を備えるインクジェット記録装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、過昇温発生から加熱停止までの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るプリンターとインク供給装置の外観を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るプリンターの内部構成を模式的に示す正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るインクを供給する経路を模式的に示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るインク供給装置の内部を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係るヒーターユニットの断面を模式的に示す図である。
図6A】本発明の一実施形態に係るヒーターの斜視図である。
図6B】本発明の一実施形態に係るチューブの斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係るインク加熱装置の回路図である。
図8】本発明の一実施形態に係るヒーター回路の回路図である。
図9】本発明の一実施形態に係る検知信号のタイミング図である。
図10】本発明の一実施形態に係るインク加熱装置の動作を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る画像形成システム3について説明する。
【0015】
まず、画像形成システム3の全体の構成について説明する。画像形成システム3は、インク供給装置2とプリンター1(インクジェット記録装置の一例)とを含む。図1は、インク供給装置2とプリンター1の外観を示す斜視図である。図2は、プリンター1の内部構成を模式的に示す正面図である。図3は、インクの供給経路を模式的に示す図である。以下、図1におけるFr側(図2における紙面手前側)をインク供給装置2及びプリンター1の正面側(前側)とし、左右の向きはインク供給装置2及びプリンター1を正面から見た方向を基準として説明する。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0016】
プリンター1は、普通紙、コート紙等のシートS(シート状の記録媒体の一例)にインクを吐出することで画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置である。インク供給装置2は、プリンター1の後方に設けられ、プリンター1にインクを供給する。
【0017】
プリンター1は、各種機器が収容される箱形の本体ハウジング10を備える。本体ハウジング10内の下部にはシートSが収容される引き出し可能な給紙カセット15が設けられ、本体ハウジング10の右側面にはシートSが手差しで積載される手差しトレイ25が設けられている。手差しトレイ25の上方には、画像形成済みのシートSが積載される排出トレイ17が設けられ、本体ハウジング10の左側面の上部には、プリンター1の左側に隣接する後処理装置(図示省略)にシートSを搬送するための排出口19が形成されている。
【0018】
本体ハウジング10内の中央部には、シートSにインクを吐出する1つ以上のインクジェットヘッドを備えるヘッドユニット34Y、34Bk、34C、34M(ヘッドユニット34と総称する)が設けられ、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクを吐出する。ヘッドユニット34の下方には、画像が形成されるシートSを搬送ベルト45に吸着させて搬送する搬送ユニット40が設けられ、搬送ユニット40の左方には、画像形成済みのシートSを搬送しながら乾燥させる乾燥ユニット48が設けられている。本体ハウジング10内の左下部には、インクが充填されたインクコンテナ51が収容されている。
つまり、本実施形態の記録装置は、いわゆるラインプリンタである。他の実施形態として、インクジェットヘッドを搭載したキャリッジを、記録媒体に対して往復させる走査と、走査の方向と交差する方向に記録媒体を移動させる搬送とを交互に行う、いわゆるシリアルプリンタがある。
【0019】
搬送ユニット40の右方には、給紙カセット15から搬送ユニット40に至る第1搬送路21と、手差しトレイ25から第1搬送路21に合流する手差し搬送路27が設けられている。乾燥ユニット48の左方には、乾燥ユニット48から排出口19に至る第2搬送路22が設けられている。ヘッドユニット34の上方には、第2搬送路22から分岐して排出トレイ17に至る第3搬送路23と、第3搬送路23から分岐して第1搬送路21に合流する第4搬送路24と、が設けられている。第2搬送路22と第3搬送路23との分岐点、及び、第3搬送路23と第4搬送路24との分岐点には、シートSの搬送を案内する案内部材が設けられている(図示省略)。
【0020】
次に、プリンター1の画像形成動作の概要について説明する。プリンター1に画像形成ジョブが入力されると、シートSが、給紙カセット15又は手差しトレイ25から送り出され、第1搬送路21に沿ってY1方向に搬送される。シートSは、搬送ユニット40の搬送ベルト45に吸着されて搬送される。そして、ヘッドユニット34からシートSにインク滴が吐出されることでシートSに画像が形成される。画像が形成されたシートSは、乾燥ユニット48によりインクの乾燥が促進され、第2搬送路22、第3搬送路23に沿って搬送され、排出トレイ17に排出される。
【0021】
[インク供給経路]
次に、インクの供給経路について説明する。図3では、1色のインクに対応する構成が示されているが、本実施形態では4色のインクを用いるため、同様の構成が4系統設けられている。プリンター1は、インクコンテナ51が装着されるコンテナ装着部52と、インクコンテナ51からインクを吸引するポンプ53と、ポンプ53に吸引されるインクを濾過するフィルター54と、ポンプ53から送り出されたインクを貯留するサブタンク55と、サブタンク55に貯留されたインクをヘッドユニット34に送り出すポンプ(図示省略)と、を備える。インクコンテナ51とフィルター54とポンプ53とサブタンク55は、メインチューブ56で接続されている。中継チューブ57の一端部はプリンター1の本体ハウジング10の背面に設けられたカップリング58に接続されている。インク供給装置2を使用する場合には、メインチューブ56の上流側の端部がインクコンテナ51に代えて中継チューブ57の他端部に付け替えられる。
【0022】
[インク供給装置]
次に、インク供給装置2について説明する。図4は、インク供給装置2の内部を示す斜視図である。図5は、ヒーターユニット71の断面を模式的に示す図である。図6Aは、ヒーター75の斜視図である。図6Bは、チューブ72の斜視図である。
【0023】
インク供給装置2は、インクを収容するインクコンテナ61と、インクコンテナ61から送り出されたインクを加熱するインク加熱装置7と、を備える。インク加熱装置7は、インクを加熱するヒーター75と、ヒーター75と交流電源Aとの間に設けられた自動復帰型のバイメタルスイッチ92と、を備えるヒーター回路91と、バイメタルスイッチ92と交流電源Aとの間に設けられたリレー5と、ヒーター回路91の状態に応じてリレー5を開閉させる制御部4と、を備える。
【0024】
[インクコンテナ]
インク供給装置2(図4参照)は、インクコンテナ61が装着されるコンテナ装着部62を備える。インクコンテナ61は、プリンター1の内部に装着されるインクコンテナ51よりも大きな容積を有する。本実施形態では4色のインクを用いるため、4つのインクコンテナ61が設けられ、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクが充填されている。なお、予備のインクコンテナ61が収容される予備コンテナ収容部63が備えられていてもよい。
【0025】
[ヒーターユニット]
インクコンテナ61の各々に対して1つのヒーターユニット71が設けられている。
【0026】
[チューブ]
チューブ72(図3、6B参照)は、ステンレス鋼等で形成された管であり、規則的に蛇行した形状で設けられている。チューブ72は、アルミニウム等で形成された2枚の支持板73によって前後方向に挟持されている。チューブ72の一端部は、中継チューブ74によってインクコンテナ61に接続されている。チューブ72の他端部は、中継チューブ74によってプリンター1のカップリング58に接続されている。
【0027】
[ヒーター]
ヒーター75(図6A参照)は、例えば電熱線をシリコーン樹脂で被覆したコードヒーターであり、支持板73を介してチューブ72の前後にチューブ72に沿うように設けられている。ヒーター75には、給電線76が接続される。図6Aの例では、チューブ72の前後にそれぞれ5個、合計10個のヒーター75が並列に設けられているが、ヒーター75の数は1つ以上いくつでもよい。
【0028】
[筐体]
筐体80(図5参照)は、ヒーター75とチューブ72を収容する。筐体80は、左右方向、上下方向、前後方向の3方向のうち、前後方向の寸法が左右方向及び上下方向の寸法に比べて小さい中空の板状に形成されている。
【0029】
[フレーム]
フレーム64(図4参照)は、直方体の稜を形成する稜部64Eと、直方体の底を形成する底板部64Bと、内部の空間を前後に仕切る隔壁部64Pと、を備え、フレーム64の外側に側板と天板が装着されることでハウジング65が形成される。4つのヒーターユニット71が隔壁部64Pよりも前側に、4つのインクコンテナ61が隔壁部64Pよりも後側に収容される。4つのヒーターユニット71は、前後方向に横並びに積層され、フレーム64に固定される。
【0030】
[電気的構成]
次に、インク供給装置2が備えるインク加熱装置7の電気的構成について説明する。図7は、インク加熱装置7の回路図である。図8は、ヒーター回路91の回路図である。図9は、検知信号のタイミング図である。
【0031】
インク加熱装置7(図7参照)は、ヒーター回路91と、ヒーター回路91と交流電源Aとの間に設けられたリレー5と、リレー5を制御する制御部4と、操作を受け付ける操作部6と、を備える。インクの色毎に少なくとも1個のヒーター回路91が設けられている。図7の例では、便宜上、インクの色(Y、Bk、C、M)毎に1個のヒーター回路91が図示されているが、図6Aに示されるようにインクの色毎に複数のヒーター75が並列に設けられている場合には、ヒーター回路91の数もインクの色毎に複数である。
【0032】
ヒーター回路91(図8参照)は、インクを加熱するヒーター75と、ヒーター75とリレー5との間に設けられた自動復帰型のバイメタルスイッチ92と、バイメタルスイッチ92の通電が検知されたことを示す検知信号を出力する検知部93と、ヒーター75を駆動する駆動素子94と、を備える。リレー5は、バイメタルスイッチ92と交流電源Aとの間に設けられている。制御部4は、検知部93から出力される検知信号の状態に応じてリレー5を制御する。
【0033】
自動復帰型のバイメタルスイッチ92は、ヒーター75の温度が閾値(例えば75℃)以上である場合に開き、ヒーター75の温度が閾値未満である場合に閉じる。
【0034】
検知部93は、バイメタルスイッチ92に通電している場合に検知信号を出力し、バイメタルスイッチ92に通電していない場合に検知信号の出力を停止する。検知信号は、例えば、交流電圧が0Vとなるタイミングを示すゼロクロス信号である(図9(a)参照)。
【0035】
駆動素子94は、例えばトライアックであり、制御部4から供給されるリモート信号に応じて電圧のデューティー比を変化させる。
【0036】
制御部4は、論理回路が集積された集積回路である。制御部4は、リモート信号により駆動素子94が出力する電圧のデューティー比を変化させることでヒーター75の温度を制御する。なお、制御部4は、プロセッサーとソフトウェアとの協働によるものでもよい。
【0037】
また、制御部4は、検知部93から出力される検知信号の状態に応じてリレー5を制御する。具体的には、制御部4は、検知信号が停止した状態が所定時間以上継続した場合にリレー5を開かせる。一方、制御部4は、検知信号が停止した状態が所定時間未満継続した場合にリレー5を開かせない。
【0038】
また、制御部4は、いずれか1つのヒーター回路91において検知信号が停止した状態が所定時間以上継続した場合にリレー5を開かせる。一方、制御部4は、全てのヒーター回路91からの検知信号が共に停止した場合にリレー5を開かせない。
【0039】
検知信号が停止するのは、ヒーター75の温度が所定値以上となってバイメタルスイッチ92が開いた場合である。例えば、制御部4や駆動素子94等の故障によりヒーター75が過昇温した場合にバイメタルスイッチ92が開く。制御部4や駆動素子94の故障は、恒久的な故障である場合が多いため、過昇温が長時間続くおそれがある。
【0040】
検知信号は、恒久的な故障以外の原因によっても停止することがある。例えば、駆動素子94がトライアックの場合、パルス状の電圧の立ち上がり時にオーバーシュートが発生することがあり、その場合、瞬間的な過昇温が発生することがある。あるいは、近隣で大きな電力が使用された場合の電圧降下や瞬断の回復時の突入電流、落雷時のサージ電流等によっても、瞬間的な過昇温が発生し得る。このような事象によっても、バイメタルスイッチ92が開くことで検知信号が停止する。
【0041】
なお、停電や、誤って電源コードが引き抜かれたことで交流電源Aからの給電が停止した場合には、ヒーター75の加熱が停止するため、バイメタルスイッチ92は開かないが、バイメタルスイッチ92の通電が停止するため、検知信号も停止する。
【0042】
操作部6は、例えば、タクタイルスイッチであり、ハウジング65の上部に設けられている。制御部4は、リレー5を開かせた後、タクタイルスイッチを押す操作(所定の操作の一例)が受け付けられた場合に、リレー5を閉じさせる。
【0043】
[インク加熱装置の動作]
次に、インク加熱装置7の動作について説明する。図10は、インク加熱装置7の動作を示す流れ図である。最初に、制御部4は、全てのヒーター回路91からの検知信号が共に停止したか否かを判定する(ステップS01)。全てのヒーター回路91からの検知信号が共に停止したと判定した場合には(ステップS01:YES)、制御部4は、ステップS01の処理を繰り返す。一方、全てのヒーター回路91からの検知信号が共に停止していないと判定した場合には(ステップS01:NO)、制御部4は、いずれか1つのヒーター回路91からの検知信号が停止したか否かを判定する(ステップS03)。いずれか1つのヒーター回路91からの検知信号が停止したと判定した場合には(ステップS03:YES)、制御部4は、計時を開始する(ステップS05)。一方、いずれのヒーター回路91からの検知信号も停止していないと判定した場合には(ステップS03:NO)、制御部4は、ステップS01の処理を繰り返す。
【0044】
ステップS05において計時を開始したならば、制御部4は、計時された時間Tが所定時間T0以上であるか否かを判定する(ステップS07)。図9(c)、(d)に示されるように、計時された時間Tが所定時間T0以上である場合には(ステップS07:YES)、制御部4は、リレー5に制御信号を送ることでリレー5を開かせる(ステップS11)。一方、図9(b)に示されるように、時間Tが所定時間T0未満である場合には(ステップS07:NO)、制御部4は、停止した検知信号の出力が再開したか否かを判定する(ステップS09)。停止した検知信号の出力が再開した場合には(ステップS09:YES)、制御部4は、ステップS01の処理を繰り返す。一方、停止した検知信号の出力が再開していない場合には(ステップS09:NO)、制御部4は、ステップS07の処理を繰り返す。
【0045】
ステップS11においてリレー5を開かせたならば、制御部4は、所定の操作が操作部6によって受け付けられたか否かを判定する(ステップS13)。所定の操作が操作部6によって受け付けられたと判定した場合には(ステップS13:YES)、制御部4は、リレー5に制御信号を送ることでリレー5を閉じさせる(ステップS15)。一方、所定の操作が操作部6によって受け付けられなかったと判定した場合には(ステップS13:NO)、制御部4は、ステップS13の処理を繰り返す。
【0046】
以上説明した本実施形態に係るインク加熱装置7によれば、過昇温が発生した場合にバイメタルスイッチ92が開くことでヒーター75への給電が停止されるから、過昇温発生から加熱停止までの時間を短縮することができる。
【0047】
また、本実施形態に係るインク加熱装置7によれば、検知信号が停止した状態が所定時間以上継続した場合にリレー5を開かせるから、恒久的な故障の可能性が高い場合に、バイメタルスイッチ92が復帰しても加熱が再開されない。
【0048】
また、本実施形態に係るインク加熱装置7によれば、リレー5を開かせた後、所定の操作が操作部6により受け付けられた場合にリレー5を閉じさせるから、人間が安全を確認してから加熱を再開させることができる。
【0049】
また、本実施形態に係るインク加熱装置7によれば、検知信号が停止した状態が所定時間未満継続した場合にリレー5を開かせないから、恒久的な故障の可能性が低い場合にバイメタルスイッチ92の復帰により加熱を再開させることができる。また、前述の瞬間的な過昇温に反応しないようにバイメタルスイッチ92の閾値を高くすると高温にさらされる頻度が高くなって安全性が低下するおそれがあるが、本実施形態では瞬間的な過昇温でバイメタルスイッチ92が開いてもリレー5を開かせないから、バイメタルスイッチ92の閾値を高くする必要がない。よって、安全性の低下を回避することができる。
【0050】
また、本実施形態に係るインク加熱装置7によれば、いずれか1つのヒーター回路91において検知信号が停止した状態が所定時間以上継続した場合にリレー5を開かせるから、恒久的な故障の可能性が高い場合に、バイメタルスイッチ92が復帰しても加熱が再開されない。
【0051】
また、本実施形態に係るインク加熱装置7によれば、全てのヒーター回路91からの検知信号が共に停止した場合にリレー5を開かせないから、交流電源Aからの給電が停止した場合にリレー5を開かせる処理を省くことができる。
【0052】
上記実施形態が以下のように変形されてもよい。
【0053】
上記実施形態では、駆動素子94がトライアックである例が示されたが、駆動素子94は、ソリッドステートリレー等でもよい。
【0054】
上記実施形態では、検知信号がゼロクロス信号である例が示されたが、検知信号は、電圧が検知されたことを示す電圧検知信号や、電流が検知されたことを示す電流検知信号等でもよい。
【0055】
上記実施形態では、検知信号が停止した状態が所定時間以上継続した場合にリレー5を開かせる例が示されたが、検知信号が停止した状態が所定時間未満継続する事象が反復して発生した場合にもリレー5を開かせるように構成されてもよい。この構成によれば、インク供給装置2の安全性をさらに高めることができる。
【0056】
上記実施形態では、操作部6がインク供給装置2のハウジング65に設けられている例が示されたが、プリンター1の操作パネルを用いて所定の操作を行うように構成されてもよい。この構成によれば、インクの加熱を再開させる操作が容易になる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10