(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】トルク検出装置用ヨーク部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
G01L3/10 305
(21)【出願番号】P 2023062277
(22)【出願日】2023-04-06
(62)【分割の表示】P 2019217022の分割
【原出願日】2019-11-29
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼坂 成時
(72)【発明者】
【氏名】田中 健
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊朗
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-41036(JP,A)
【文献】特開2013-250227(JP,A)
【文献】特開2016-206091(JP,A)
【文献】特開2018-197750(JP,A)
【文献】特開2014-219247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/00- 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の第1ヨーク部(310)と第2ヨーク部(320)とが対向して配置されると共に、前記第1ヨーク部および前記第2ヨーク部が保持部材(340)で一体化されたトルク検出装置用ヨーク部材の製造方法であって、
リング状の第1リング板部(311)と、前記第1リング板部の内縁部側に等間隔で配置され、前記第1リング板部の面方向に対する法線方向に突出した複数の第1歯部(312)と、を有する前記第1ヨーク部を用意することと、
リング状の第2リング板部(321)と、前記第2リング板部の内縁部側に等間隔で配置され、前記第2リング板部の面方向に対する法線方向に突出した複数の第2歯部(322)と、を有する前記第2ヨーク部を用意することと、
前記第1ヨーク部および前記第2ヨーク部が配置される成形型(100)を用意することと、
前記成形型に、前記第1ヨーク部の第1歯部と前記第2ヨーク部の第2歯部とが前記第1リング板部の周方向に交互に配置されつつ、前記第1ヨーク部と前記第2ヨーク部との間に所定の間隔が維持されるように、前記第1ヨーク部および前記第2ヨーク部を配置することと、
前記成形型内に溶融樹脂を流し込んで固化することにより、前記第1ヨーク部および前記第2ヨーク部を一体的に保持する前記保持部材を形成することと、を行い、
前記第1ヨーク部を用意することでは、前記保持部材の外面から露出する部分に凹部(313、314)が形成されたものを用意し、
前記第2ヨーク部を用意することでは、前記保持部材の外面から露出する部分に凹部(323、324)が形成されたものを用意し、
前記保持部材を形成することでは、前記第1ヨーク部の凹部および前記第2ヨーク部の凹部にも当該保持部材が配置されるように、前記保持部材を形成するトルク検出装置用ヨーク部材の製造方法。
【請求項2】
前記第1ヨーク部を用意することでは、前記第1歯部の内面側に前記凹部が形成されたものを用意し、
前記第2ヨーク部を用意することでは、前記第2歯部の内面側に前記凹部が形成されたものを用意し、
前記保持部材を形成することでは、前記第1歯部の凹部および前記第2歯部の凹部にも当該保持部材が配置されるように、前記保持部材を形成する請求項1に記載のトルク検出装置用ヨーク部材の製造方法。
【請求項3】
前記成形型を用意することでは、前記保持部材の内周面を形作るための中芯部(111)を有するものを用意し、
前記成形型内に前記第1ヨーク部および前記第2ヨーク部を配置することでは、前記第1ヨーク部の第1歯部が前記中芯部を押圧した状態となると共に、前記第2ヨーク部の第2歯部が前記中芯部を押圧した状態となるように、前記第1ヨーク部および前記第2ヨーク部を配置し、
前記保持部材を形成することでは、前記第1ヨーク部の第1歯部における内面(312a)、および前記第2ヨーク部の第2歯部における内面(322a)が露出するように、前記保持部材を形成する請求項2に記載のトルク検出装置用ヨーク部材の製造方法。
【請求項4】
前記第1ヨーク部を用意することでは、前記第1リング板部のうちの前記第2ヨーク部と対向する一面(311a)側に前記凹部が形成されたものを用意し、
前記第2ヨーク部を用意することでは、前記第2リング板部のうちの前記第1ヨーク部と対向する一面(321a)側に前記凹部が形成されたものを用意し、
前記保持部材を形成することでは、前記第1リング板部の凹部および前記第2リング板部の凹部にも当該保持部材が配置されるように、前記保持部材を形成する請求項1ないし3のいずれか1つに記載のトルク検出装置用ヨーク部材の製造方法。
【請求項5】
一対の第1ヨーク部(310)と第2ヨーク部(320)とが対向して配置されると共に、前記第1ヨーク部および前記第2ヨーク部が保持部材(340)で一体化されたトルク検出装置用ヨーク部材であって、
リング状の第1リング板部(311)と、前記第1リング板部の内縁部側に等間隔で配置され、前記第1リング板部の面方向に対する法線方向に突出した複数の第1歯部(312)と、を有する前記第1ヨーク部と、
リング状の第2リング板部(321)と、前記第2リング板部の内縁部側に等間隔で配置され、前記第2リング板部の面方向に対する法線方向に突出した複数の第2歯部(322)と、を有する前記第2ヨーク部と、
前記第1ヨーク部および前記第2ヨーク部を一体的に保持する前記保持部材と、を備え、
前記第1ヨーク部および前記第2ヨーク部は、前記第1歯部と前記第2歯部とが前記第1リング板部の周方向に交互に配置されつつ、前記第1ヨーク部と前記第2ヨーク部との間に所定の間隔が維持されるように配置されており、
前記第1ヨーク部は、前記保持部材の外面(340a、340b)から露出する部分に凹部(313、314)が形成されており、
前記第2ヨーク部は、前記保持部材の外面から露出する部分に凹部(323、324)が形成されており、
前記保持部材は、前記第1ヨーク部の凹部および前記第2ヨーク部の凹部にも配置されているトルク検出装置用ヨーク部材。
【請求項6】
前記第1ヨーク部の凹部は、前記第1歯部の内面側に形成されており、
前記第2ヨーク部の凹部は、前記第2歯部の内面側に形成されている請求項5に記載のトルク検出装置用ヨーク部材。
【請求項7】
前記第1ヨーク部の凹部は、前記第1歯部における突出方向の先端部側に形成されており、
前記第2ヨーク部の凹部は、前記第2歯部における突出方向の先端部側に形成されている請求項6に記載のトルク検出装置用ヨーク部材。
【請求項8】
前記第1ヨーク部の凹部は、前記第1リング板部のうちの前記第2ヨーク部と対向する一面(311a)側に形成されており、
前記第2ヨーク部の凹部は、前記第2リング板部のうちの前記第1ヨーク部と対向する一面(321a)側に形成されている請求項5ないし7のいずれか1つに記載のトルク検出装置用ヨーク部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク検出装置に用いられるトルク検出装置用ヨーク部材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、多極磁石とヨーク部材との相対的回転によって生ずる磁束の変化を磁気センサで検出し、磁気センサの出力信号に基づいて、トーションバーに加わるトルクを検出するトルク検出装置が提案されている。ヨーク部材は、一対のヨーク部を備え、一対のヨーク部は、それぞれリング板部と、リング板部の内縁部側に形成された歯部とを備えた構成とされている。そして、ヨーク部材は、各ヨーク部に形成された歯部が交互に並ぶように対向して配置された状態で、樹脂で構成される円筒状の保持部材によって保持されている。このようなヨーク部材の製造方法として、例えば、特許文献1には、以下の製造方法が提案されている。
【0003】
すなわち、この製造方法では、まず、各ヨーク部として、それぞれのリング板部に貫通孔が形成されたものを用意する。そして、成形型内に形成されているピンに対し、各ヨーク部の貫通孔が挿入されるようにして固定する。なお、各ヨーク部の貫通孔には、共通のピンが挿入される。これにより、各ヨーク部の位置ずれが抑制される。その後、成形型内に溶融樹脂を流し込んで固化することにより、各ヨーク部を保持する保持部材を構成することで上記ヨーク部材が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記製造方法では、各ヨーク部のリング板部に形成された貫通孔に共通のピンを挿入するため、ピンの突出方向の長さが長くなり易い。このため、金型内に溶融樹脂を流しこんだ際、成形圧によってピンが変形する可能性がある。つまり、上記製造方法では、経時的に製造精度が低下することにより、ヨーク部材の信頼性が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、信頼性が低下することを抑制できるトルク検出装置用ヨーク部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1では、一対の第1ヨーク部(310)と第2ヨーク部(320)とが対向して配置されると共に、第1ヨーク部および第2ヨーク部が保持部材(340)で一体化されたトルク検出装置用ヨーク部材の製造方法であって、リング状の第1リング板部(311)と、第1リング板部の内縁部側に等間隔で配置され、第1リング板部の面方向に対する法線方向に突出した複数の第1歯部(312)と、を有する第1ヨーク部を用意することと、リング状の第2リング板部(321)と、第2リング板部の内縁部側に等間隔で配置され、第2リング板部の面方向に対する法線方向に突出した複数の第2歯部(322)と、を有する第2ヨーク部を用意することと、第1ヨーク部および第2ヨーク部が配置される成形型(100)を用意することと、成形型に、第1ヨーク部の第1歯部と第2ヨーク部の第2歯部とが中間型130第1リング板部の周方向に交互に配置されつつ、第1ヨーク部と第2ヨーク部との間に所定の間隔が維持されるように、第1ヨーク部および第2ヨーク部を配置することと、成形型内に溶融樹脂を流し込んで固化することにより、第1ヨーク部および第2ヨーク部を一体的に保持する保持部材を形成することと、を行う。そして、第1ヨーク部を用意することでは、保持部材の外面から露出する部分に凹部(313、314)が形成されたものを用意し、第2ヨーク部を用意することでは、保持部材の外面から露出する部分に凹部(323、324)が形成されたものを用意し、保持部材を形成することでは、第1ヨーク部の凹部および第2ヨーク部の凹部にも当該保持部材が配置されるように、保持部材を形成する。
【0008】
これによれば、第1、第2ヨーク部の凹部内にも保持部材が配置されたトルク検出装置用ヨーク部材が製造される。このため、第1、第2ヨーク部が保持部材から浮き出ることを凹部内に配置された保持部材によって抑制できる。したがって、トルク検出装置用ヨーク部材の信頼性が低下することを抑制できる。
【0009】
また、請求項5は、一対の第1ヨーク部(310)と第2ヨーク部(320)とが対向して配置されると共に、第1ヨーク部および第2ヨーク部が保持部材(340)で一体化されたトルク検出装置用ヨーク部材であって、リング状の第1リング板部(311)と、第1リング板部の内縁部側に等間隔で配置され、第1リング板部の面方向に対する法線方向に突出した複数の第1歯部(312)と、を有する第1ヨーク部と、リング状の第2リング板部(321)と、第2リング板部の内縁部側に等間隔で配置され、第2リング板部の面方向に対する法線方向に突出した複数の第2歯部(322)と、を有する第2ヨーク部と、第1ヨーク部および第2ヨーク部を一体的に保持する保持部材と、を備えている。そして、中間型130第1ヨーク部および中間型130第2ヨーク部は、中間型130第1歯部と中間型130第2歯部とが中間型130第1リング板部の周方向に交互に配置されつつ、中間型130第1ヨーク部と中間型130第2ヨーク部との間に所定の間隔が維持されるように配置されており、第1ヨーク部は、保持部材の外面(340a、340b)から露出する部分に凹部(313、314)が形成されており、第2ヨーク部は、保持部材の外面から露出する部分に凹部(323、324)が形成されており、保持部材は、第1ヨーク部の凹部および第2ヨーク部の凹部にも配置されている。
【0010】
このようなトルク検出装置用ヨーク部材は、第1、第2ヨーク部の凹部内に保持部材を配置することで製造される。このため、第1、第2ヨーク部が保持部材から浮き出ることを凹部内に配置された保持部材によって抑制できる。したがって、トルク検出装置用ヨーク部材の信頼性が低下することを抑制できる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態におけるトルク検出装置を搭載した電動パワーステアリング装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示されたトルク検出装置の分解斜視図である。
【
図3】
図2に示されたトルク検出装置の組み付け状態における、多極磁石およびヨーク部材を拡大した斜視図である。
【
図4B】
図4A中のIVB-IVB線に沿ったヨーク部材の断面図である。
【
図5A】
図3に示された多極磁石、第1ヨーク部、および第2ヨーク部の相対回転状態を示す側面図である。
【
図5B】
図3に示された多極磁石、第1ヨーク部、および第2ヨーク部の相対回転状態を示す側面図である。
【
図5C】
図3に示された多極磁石、第1ヨーク部、および第2ヨーク部の相対回転状態を示す側面図である。
【
図7】
図6中のVII-VII線に沿った断面図である。
【
図8】磁気センサを収容壁に取り付けてトルク検出装置を構成した模式図である。
【
図9A】ヨーク部材の製造工程を示す斜視図である。
【
図9B】
図9Aに続くヨーク部材の製造工程を示す斜視図である。
【
図9C】
図9Bに続くヨーク部材の製造工程を示す斜視図である。
【
図9D】
図9Cに続くヨーク部材の製造工程を示す斜視図である。
【
図9E】
図9Dに続くヨーク部材の製造工程を示す斜視図である。
【
図9F】
図9Eに続くヨーク部材の製造工程を示す斜視図である。
【
図12】第1実施形態の変形例における第2ヨーク部の斜視図である。
【
図13A】第2実施形態におけるヨーク部材の断面図である。
【
図14】第2実施形態における成形型内に第1ヨーク部、第2ヨーク部が配置された断面図である。
【
図15】第3実施形態における第1、第2ヨーク部の第1、第2歯部近傍の断面図である。
【
図16】第3実施形態における漏れ磁束を説明するための図である。
【
図17A】第3実施形態の変形例における第1、第2ヨーク部の第1、第2歯部近傍の断面図である。
【
図17B】第3実施形態の変形例における第1、第2ヨーク部の第1、第2歯部近傍の断面図である。
【
図18】第4実施形態における第1、第2ヨーク部の第1、第2リング板部近傍の断面図である。
【
図19A】第4実施形態の変形例における第1、第2ヨーク部の第1、第2リング板部近傍の断面図である。
【
図19B】第4実施形態の変形例における第1、第2ヨーク部の第1、第2リング板部近傍の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、トルク検出装置用ヨーク部材を用いてトルク検出装置を構成し、当該トルク検出装置を用いて電動パワーステアリング装置を構成した例について説明する。なお、本実施形態では、いわゆるコラムタイプの電動パワーステアリング装置について説明する。
【0015】
電動パワーステアリング装置1は、
図1に示されるように、ステアリングホイール5と、電動モータ6と、ステアリングギア機構7と、リンク機構8と、トルク検出装置10とを備えている。そして、電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール5の操作状態に応じて電動モータ6を駆動し、電動モータ6の駆動力をステアリングギア機構7に伝達する。これにより、電動パワーステアリング装置1は、リンク機構8を介して車輪Tの向きを変更するための操舵力をアシストする。
【0016】
トルク検出装置10は、ステアリングホイール5の操作状態に応じた検出信号(例えば、電圧)を出力するように、ステアリングホイール5とステアリングギア機構7との間に設けられている。具体的には、トルク検出装置10は、第1シャフト11と第2シャフト12との連結部分に配置されている。第1シャフト11は、ステアリングホイール5と共に回転するように、図示しない連結機構を介してステアリングホイール5と連結されている。第2シャフト12は、図示しない連結機構を介してステアリングギア機構7と連結されている。
【0017】
第1シャフト11と第2シャフト12とは、トーションバー13を介して、回転中心軸C上にて同軸的に連結されている。そして、トルク検出装置10は、回転中心軸Cを中心とした第1シャフト11と第2シャフト12との相対回転に起因してトーションバー13に発生する捩りトルクに対応した検出信号を出力するように構成されている。なお、トーションバー13は、後述する
図2に示されているように、第1シャフト11および第2シャフト12に対して固定ピン14で固定されている。
【0018】
次に、本実施形態におけるトルク検出装置10の基本的な構成について、
図2を参照しつつ説明する。なお、説明の便宜上、以下の各図では、Z軸が回転中心軸Cと平行となる右手系XYZ直交座標系を適宜設定する。この際、Z軸と平行な方向を軸方向とも称する。なお、回転中心軸Cは、多くの場合、車高方向と平行とはならない。
【0019】
トルク検出装置10は、多極磁石20を備えている。多極磁石20は、第1シャフト11と第2シャフト12との相対回転に伴って回転中心軸Cを中心として回転するように、トーションバー13と同軸的に配置されている。具体的には、多極磁石20は、円筒状に形成されており、第1シャフト11の下端部に固定されている。この多極磁石20は、回転中心軸Cを囲む周方向に交互に磁極が反転するように構成されている。
【0020】
なお、周方向は、典型的には、回転中心軸CとXY平面との交点を中心としてXY平面内に形成される円の円周方向である。また、多極磁石20は、本実施形態では、N極とS極とが各8極、計16極が22.5°間隔で配置されている。
【0021】
多極磁石20の径方向外側には、
図2および
図3に示されるように、多極磁石20と対向するように配置される第1ヨーク部310および第2ヨーク部320を有する略円筒状のヨーク部材30が配置されている。以下、本実施形態のヨーク部材30の構成について、
図2、
図3、
図4A~
図4Dを参照しつつ具体的に説明する。なお、
図2および
図3では、ヨーク部材30における後述する保持部材340等を省略して示している。また、
図2中のヨーク部材30では、後述する位置決め孔部311cおよび位置決め凹部321cを省略して示してある。
【0022】
ヨーク部材30は、一対の第1ヨーク部310および第2ヨーク部320と、固定用カラー330と、これらを一体的に保持する保持部材340とを有している。
【0023】
第1ヨーク部310は、軟磁性体材料を用いて構成されており、第1リング板部311と、複数の第1歯部312とを有している。具体的には、第1リング板部311は、一面311aおよび他面311bを有する平板状かつリング状に形成されている。すなわち、第1リング板部311には、中心部に円形の開口部が形成されている。複数の第1歯部312は、第1リング板部311の内縁部側において、当該第1リング板部311の一面311a側に突出すると共に、周方向に等間隔で配列されている。なお、以下では、第1歯部312のうちの開口部側の面を第1歯部312の内面312aともいう。
【0024】
また、第1ヨーク部310には、第1リング板部311の内縁部と外縁部との間の中間部に、位置決め孔部311cが形成されている。本実施形態では、位置決め孔部311cは、第1リング板部311を当該第1リング板部311の厚み方向に沿って貫通する貫通孔とされ、2つ形成されている。そして、各位置決め孔部311cは、第1リング板部311の周方向に180°異なる位置に形成されている。また、本実施形態では、各位置決め孔部311cは、第1リング板部311のうちの径方向における第1歯部312の裏側となる部分と異なる部分に形成されている。
【0025】
なお、第1リング板部311のうちの径方向における第1歯部312の裏側とは、第1リング板部311のうちの、第1歯部312を通過する第1リング板部311の径方向に沿った仮想線と交差する部分のことである。また、位置決め孔部311cは、後述する下型110の位置決めピン114に対応する大きさとされている。本実施形態では、位置決め孔部311cが第1リング板部側固定部に相当している。
【0026】
同様に、第2ヨーク部320は、軟磁性体材料を用いて構成されており、第2リング板部321と、複数の第2歯部322とを有している。具体的には、第2リング板部321は、一面321aおよび他面321bを有する平板状かつリング状に形成されている。すなわち、第2リング板部321には、中心部に円形の開口部が形成されている。複数の第2歯部322は、第2リング板部321の内縁部側において、当該第2リング板部321の一面321a側に突出すると共に、周方向に等間隔で配列されている。なお、以下では、第2歯部322のうちの開口部側の面を第2歯部322の内面322aともいう。
【0027】
また、第2ヨーク部320には、第2リング板部321の外縁部に、位置決め凹部321cが形成されている。本実施形態では、位置決め凹部321cは、第2リング板部321の径方向に沿って形成された切り欠きとされ、2つ形成されている。そして、各位置決め凹部321cは、第2リング板部321の周方向に180°異なる位置に形成されている。また、本実施形態では、各位置決め凹部321cは、第2リング板部321のうちの径方向における第2歯部322の裏側となる部分に形成されている。
【0028】
なお、第2リング板部321のうちの径方向における第2歯部322の裏側とは、第2リング板部321のうちの、第2歯部322を通過する第2リング板部321の径方向に沿った仮想線と交差する部分のことである。また、この位置決め凹部321cは、後述する中間型130の位置決め凸部135に対応する大きさとされている。本実施形態では、位置決め凹部321cが第2リング板部側固定部に相当している。
【0029】
そして、第1ヨーク部310と第2ヨーク部320とは、互いの一面311a、321aが対向するように配置されている。詳しくは、第1ヨーク部310と第2ヨーク部320とは、第1歯部312と第2歯部322とが周方向に交互に配置されつつ、所定の間隔を有するように対向して配置されている。すなわち、第1ヨーク部310と第2ヨーク部320とは、第1リング板部311と第2リング板部321とが軸方向に沿って対向するように配置されている。換言すれば、第1リング板部311と第2リング板部321とは、軸方向から視た際に重なるように配置されている。
【0030】
この際、本実施形態では、第1ヨーク部310と第2ヨーク部320とは、第1ヨーク部310と第2ヨーク部320の配列方向(以下では、単に配列方向ともいう)から視た際、第1リング板部311に形成された位置決め孔部311cと第2リング板部321に形成された位置決め凹部321cとが異なる位置となるように配置されている。本実施形態では、第1ヨーク部310と第2ヨーク部320とは、配列方向から視た際、位置決め孔部311cと位置決め凹部321cとが周方向に約90°ずつ異なる位置となるように配置される。なお、第1ヨーク部310と第2ヨーク部320との配列方向から視るとは、言い換えると、軸方向から視るということもできる。
【0031】
固定用カラー330は、後述するように、第2シャフト12に固定されるリング状の部材であり、第2ヨーク部320を挟んで第1ヨーク部310と反対側に配置されている。
【0032】
保持部材340は、第1ヨーク部310、第2ヨーク部320、固定用カラー330を一体的に保持する部材であり、熱可塑性樹脂等を用いて構成されている。具体的には、保持部材340は、内周面340aおよび外周面340bを有する略円筒状とされ、内周面340a側から第1歯部312の内面312aおよび第2歯部322の内面322aが露出するように形成されている。また、保持部材340には、外周面340bに、第1リング板部311の一面311aおよび第2リング板部321の一面321aを露出させる溝部341が形成されている。つまり、保持部材340には、外周面340bのうちの第1リング板部311と第2リング板部321との間に位置する部分に溝部341が形成されている。なお、本実施形態では、第1歯部312の内面312aおよび第2歯部322の内面322aが保持部材340の内周面340aから露出する例について説明するが、第1歯部312の内面312aおよび第2歯部322の内面322aが保持部材340の内周面340aから露出していなくてもよい。
【0033】
以上が本実施形態におけるヨーク部材30の構成である。そして、このようなヨーク部材30は、第1ヨーク部310および第2ヨーク部320が多極磁石20と径方向において対向するように、第2シャフト12の上端部に形成されている図示しない連結部に固定用カラー330が固定されることで配置される。つまり、ヨーク部材30は、第1ヨーク部310が多極磁石20の軸方向における一端部(すなわち、上端部)を囲むように配置され、第2ヨーク部320が多極磁石20の軸方向における他端部(すなわち、下端部)を囲むように配置される。このため、第1ヨーク部310および第2ヨーク部320は、回転中心軸Cを中心とする円形の開口部が形成され、回転中心軸Cに沿って第1歯部312または第2歯部322を有する構成とされているともいえる。
【0034】
そして、ヨーク部材30は、第2シャフト12と一体的に回転することにより、多極磁石20に対して相対的に回転可能となっている。これにより、第1ヨーク部310および第2ヨーク部320は、多極磁石20が発生する磁界内に磁気回路を形成する。なお、本実施形態では、軸方向が第1ヨーク部310と第2ヨーク部320との配列方向に相当している。
【0035】
ここで、トーションバー13に対して捩りトルクが作用していない組み付け状態においては、多極磁石20、第1ヨーク部310、および第2ヨーク部320は、
図3および
図5Aに示されているように、周方向について中立状態に位相合わせされている。中立状態は、全ての第1歯部312および第2歯部322の周方向における中心位置が、N極とS極との境界と一致する状態である。そして、第1ヨーク部310および第2ヨーク部320は、第1、第2シャフト11、12との相対回転に起因してトーションバー13に捩りトルクが発生すると、
図5Bおよび
図5Cに示されているように位相が中立状態からずれる。これにより、第1ヨーク部310および第2ヨーク部320は、位相ずれ量に応じた磁束密度Bを発生させる。なお、
図5A~
図5Cでは、第1ヨーク部310に形成される位置決め孔部311cおよび第2ヨーク部320に形成される位置決め凹部321c等を省略して示してある。
【0036】
そして、トルク検出装置10は、
図2に示されるように、第1ヨーク部310および第2ヨーク部320と近接するように、磁気検出素子70および第1、第2磁束誘導部材81、82を有する磁気センサ40が配置されることで構成される。磁気センサ40は、第1、第2ヨーク部310、320にて発生する磁束に対応した検出信号、つまり、トーションバー13に発生する捩りトルクに対応した検出信号を出力するように構成されている。以下、本実施形態の磁気センサ40の構成について、
図6、
図7を参照しつつ説明する。なお、
図6、
図7中の右手系XYZ直交座標系は、
図2中の右手系XYZ直交座標系に対応している。また、
図6では、後述する被覆材90を省略して示している。
【0037】
本実施形態の磁気センサ40は、
図6および
図7に示されるように、センサハウジング50と、回路基板60と、磁気検出素子70と、第1、第2磁束誘導部材81、82とを有する構成とされている。
【0038】
センサハウジング50は、y軸方向に延設された柱状の主部51と、フランジ部52とを備えている。なお、以下では、センサハウジング50および主部51において、
図6中の紙面下側を一端部側、
図6中の紙面上側を他端部側とも称する。そして、後述の
図8では、センサハウジング50および主部51において、第1、第2ヨーク部310、320側に位置する端部を一端部側とも称し、当該一端部側と反対側の端部を他端部側とも称する。
【0039】
主部51は、本実施形態では、絶縁性の合成樹脂が型成型されることによって構成されている。そして、主部51には、一端部側に、収容凹部53が形成されている。この収容凹部53は、回路基板60を収容するものであり、回路基板60の外形に対応した形状とされている。本実施形態では、後述するように、回路基板60が平面矩形状とされているため、収容凹部53も平面矩形状とされている。そして、収容凹部53には、側面に凸部54が形成されている。
【0040】
主部51のうちの他端部側は、外部機器との電気的に接続されるコネクタ部55とされ、コネクタ部55に開口部55aが形成されている。なお、外部機器は、例えば、ECU(Electronic Control Unitの略)等である。
【0041】
さらに、主部51には、複数本のターミナル56がインサート成型等によって一体化されている。具体的には、各ターミナル56は、一端部が収容凹部53から露出すると共に他端部が開口部55aから露出するように、主部51に備えられている。そして、ターミナル56のうちの収容凹部53から露出する一端部は、後述する回路基板60に形成された挿通孔61に挿通され、回路基板60と電気的、機械的に接続される。ターミナル56のうちの開口部55aから露出する他端部は、外部機器と電気的に接続される。
【0042】
フランジ部52は、主部51よりも剛性の高い金属材料で構成されており、略中央部に貫通孔57が形成された枠状とされている。なお、フランジ部52を構成する金属材料は、鉄または鉄を主成分とする合金、あるいはアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金等が用いられる。そして、フランジ部52は、主部51が貫通孔57を貫通するように当該主部51に備えられている。本実施形態では、フランジ部52は、主部51のうちの収容凹部53が形成された部分よりも他端部側に備えられている。なお、フランジ部52は、例えば、インサート成型されることで主部51と一体化される。また、フランジ部52は、例えば、貫通孔57に主部51が挿入された後に接着剤等によって主部51に固定される。
【0043】
また、フランジ部52には、外縁部に、y軸方向に沿って貫通する固定孔58が形成されている。
【0044】
回路基板60は、一面60aおよび他面60bを有する平面矩形状とされ、ターミナル56の一端部が挿入される挿通孔61が形成されている。また、回路基板60は、収容凹部53に形成された凸部54に対応する凹部62が形成されている。さらに、回路基板60は、後述する第2磁束誘導部材82の延設部82bが挿入される開口部63が形成されている。
【0045】
磁気検出素子70は、第1ヨーク部310と第2ヨーク部320とによって形成される磁気回路の磁束に対応した検出信号を出力するものである。そして、本実施形態では、磁気検出素子70は、回路基板60の一面60a側において、x軸方向に沿って2つ配置されている。本実施形態では、このように磁気検出素子70を2つ備えることにより、一方が故障等によって使用不可となったとしても、磁界の検出を継続できるようになっている。
【0046】
各磁気検出素子70は、内部にホール素子等の磁気感応素子等を封止して構成されており、平面略矩形状に形成された本体部と、本体部に備えられた複数の端子部を有している。そして、各磁気検出素子70は、回路基板60の面方向に対する法線方向から視たとき、本体部が開口部63と重複するように、回路基板60に実装されている。
【0047】
そして、上記のように磁気検出素子70が実装された回路基板60は、主部51に形成された収容凹部53に配置されている。具体的には、回路基板60は、他面60bが収容凹部53の底面と対向し、開口部63がセンサハウジング50の一端部側に位置するように配置されている。また、回路基板60は、凹部62が収容凹部53に形成された凸部54と嵌合しつつ、ターミナル56が挿通孔61に挿通されるように、収容凹部53に配置されている。そして、回路基板60は、ターミナル56とはんだ等で電気的、機械的に接続されることにより、収容凹部53に固定されている。なお、凸部54を熱かしめすること等により、回路基板60とセンサハウジング50との機械的な接続強度を向上させるようにしてもよい。
【0048】
第1磁束誘導部材81および第2磁束誘導部材82は、軟磁性体材料を用いて構成されている。本実施形態では、第1磁束誘導部材81は、
図2に示されるように、x軸方向を長手方向とする長方形帯状の本体部81aと、長手方向と交差する方向に延設されつつ折り曲げられた延設部81bとを有する構成とされている。同様に、第2磁束誘導部材82は、x軸方向を長手方向とする長方形帯状の本体部82aと、長手方向と交差する方向に延設されつつ折り曲げられた延設部82bとを有する構成とされている。
【0049】
なお、第1、第2磁束誘導部材81、82における延設部81b、82bは、磁気検出素子70に対応する数だけ備えられている。つまり、本実施形態では、磁気検出素子70が2つ備えられるため、第1、第2磁束誘導部材81、82には、それぞれ2つの延設部81b、82bが備えられている。
【0050】
そして、本実施形態では、第1磁束誘導部材81は、本体部81aが収容凹部53の側面に接着剤等によって固定されている。また、第1磁束誘導部材81は、延設部81bにおける本体部81a側と反対側の端部(以下では、先端部とも称する)が磁気検出素子70における本体部と対向しつつ、近接するように折り曲げられている。
【0051】
第2磁束誘導部材82は、第1磁束誘導部材81と軸方向において対向するように、本体部82aが収容凹部53の底面に接着剤等を介して固定されている。また、第2磁束誘導部材82は、延設部82bにおける本体部82a側と反対側の端部(以下では、先端部とも称する)が磁気検出素子70における本体部と対向しつつ、近接するように折り曲げられ、当該先端部が開口部63内に挿入されている。つまり、第2磁束誘導部材82は、少なくとも一部が開口部63に挿入されるように、収容凹部53に配置されている。
【0052】
これにより、磁気センサ40は、第1磁束誘導部材81と第2磁束誘導部材82との間に磁気検出素子70が配置された構成とされる。つまり、磁気センサ40は、第2磁束誘導部材82、磁気検出素子70、第1磁束誘導部材81を共通のセンサハウジング50に固定した状態で構成されている。このため、本実施形態の磁気センサ40は、磁気検出素子70を搭載する部材と第1、第2磁束誘導部材81、82を搭載する部材とを別々に備え、これらが一体化される場合と比較して、磁気検出素子70と第1、第2磁束誘導部材81、82との位置関係がずれることを抑制できる。
【0053】
なお、第1磁束誘導部材81の延設部81bにおける先端部、および第2磁束誘導部材82の延設部82bにおける先端部は、磁気検出素子70と離れて配置されてもよいし、磁気検出素子70と当接していてもよい。また、第1磁束誘導部材81および第2磁束誘導部材82は、本体部81a、82aがセンサハウジング50の一端部側に配置され、延設部81b、82bが本体部81a、82aからセンサハウジング50の他端部側に向かって延びるように配置されている。
【0054】
そして、収容凹部53には、回路基板60、磁気検出素子70、および第1、第2磁束誘導部材81、82を一体的に被覆しつつ固定する防水性の被覆材90が配置されている。これにより、回路基板60等が水に晒されることが抑制されると共に、磁気検出素子70、第1、第2磁束誘導部材81、82の位置関係が変化することが抑制される。なお、このような被覆材90は、例えば、エポキシ樹脂によって構成される。
【0055】
以上が本実施形態における磁気センサ40の構成である。そして、磁気センサ40は、トルク検出装置10を構成する場合には、上記のように、第1ヨーク部310および第2ヨーク部320側にセンサハウジング50の一端部側が向けられて配置される。
【0056】
具体的には、
図8に示されるように、多極磁石20およびヨーク部材30は、収容壁W内に収容されている。なお、
図8では、理解をし易くするため、ヨーク部材30のうちの第1ヨーク部310および第2ヨーク部320を示すと共に、第1ヨーク部310および第2ヨーク部320を簡略化して示し、N極、トーションバー13、および第1歯部312にハッチングを施している。また、収容壁Wは、本実施形態では、
図1に示された電動パワーステアリング装置1におけるケーシングを構成する壁材であって、第1シャフト11または第2シャフト12を回転可能に支持しつつ覆うように形成されたものである。そして、収容壁Wには、貫通孔である取付孔W1が形成されている。
【0057】
磁気センサ40は、センサハウジング50における一端部側が取付孔W1から収容壁Wの内部に挿入されるように、収容壁Wに固定されている。具体的には、磁気センサ40は、フランジ部52の下端面が取付孔W1の周囲における収容壁Wの外壁面(すなわち、
図8における上側の表面)に当接するように配置される。なお、フランジ部52における下端面とは、フランジ部52のうちのセンサハウジング50における一端部側の面のことである。そして、磁気センサ40は、図示しないボルト等が固定孔58を通じて収容壁Wに固定されることにより、収容壁Wに固定される。
【0058】
また、磁気センサ40は、第1磁束誘導部材81が第1ヨーク部310と磁気結合されると共に、第2磁束誘導部材82が第2ヨーク部320と磁気結合されるように配置される。本実施形態では、磁気センサ40は、軸方向において、第1磁束誘導部材81が第1ヨーク部310の第1リング板部311と対向すると共に、第2磁束誘導部材82が第2ヨーク部320の第2リング板部321と対向するように配置される。つまり、磁気センサ40は、第1磁束誘導部材81および第2磁束誘導部材82がヨーク部材30に形成された溝部341内に位置するように配置される。すなわち、本実施形態では、ヨーク部材30には、このように第1磁束誘導部材81および第2磁束誘導部材82を配置するために、外周面340bに溝部341が形成されている。
【0059】
そして、上記のように、トーションバー13に捩りトルクが発生すると、当該捩りに応じた磁束が第1、第2ヨーク部310、320の間に発生し、当該磁束が第1、第2磁束誘導部材81、82を通じて磁気検出素子70に誘導される。このため、磁気検出素子70から磁束に応じた検出信号が出力される。
【0060】
以上が本実施形態におけるトルク検出装置10の構成である。次に、上記トルク検出装置におけるヨーク部材30の製造方法について、
図9A~
図9F、
図10A、
図10B、
図11A~
図11Eを参照しつつ説明する。なお、
図10Aは、
図9A中のXA-XA線に沿った断面図に相当しており、
図10Bは、
図9A中のXB-XB線に沿った断面図に相当している。但し、
図10Aおよび
図10Bでは、後述する中間型130が下型110の上面110a上に位置している断面図を示している。
【0061】
まず、第1リング板部311および第1歯部312を有し、第1リング板部311に位置決め孔部311cが形成された第1ヨーク部310を用意する。同様に、第2リング板部321および第2歯部322を有し、第2リング板部321に位置決め凹部321cが形成された第2ヨーク部320を用意する。なお、このような第1ヨーク部310および第2ヨーク部320は、切削や鍛造等の加工が行われることで用意される。
【0062】
また、
図9A、
図10A、
図10Bに示されるように、ヨーク部材30の保持部材340を構成する成形型100を用意する。本実施形態では、成形型100は、保持部材340の軸方向に分離可能な下型110および上型120と、下型110と上型120との間に配置され、保持部材340の径方向に分離可能とされた中間型130とを有する構成とされている。なお、本実施形態では、下型110が第1型に相当し、中間型130が第2型に相当している。
【0063】
下型110は、上面110aの中央部に当該上面110aの法線方向に突出した円柱状の中芯部111を備えている。中芯部111は、成形対称となる保持部材340の内径を形作るものであり、保持部材340の内径と略等しい外径を有している。また、中芯部111は、当該中芯部111の先端部に、固定用カラー330を嵌め込むための嵌合用段差部112が周方向に配設されている。
【0064】
さらに、下型110の上面110aには、中芯部111を中心とした円状の窪み部113が形成されている。具体的には、窪み部113は、第1リング板部311の外径に対応する形状とされた第1窪み部113aと、第1窪み部113aの底面からさらに掘り下げられ、第1窪み部113aよりも径が小さくされた第2窪み部113bとから構成されている。そして、第1窪み部113aの底面には、特に
図10Aに示されるように、位置決めピン114が形成されている。
【0065】
位置決めピン114は、第1リング板部311に形成された位置決め孔部311cに対応して形成されており、2つ形成されると共に周方向に180°異なる位置に形成されている。なお、本実施形態では、位置決めピン114は、突出高さが第1リング板部311の厚さ以下とされている。また、本実施形態では、位置決めピン114が第1型側固定部に相当している。
【0066】
中間型130は、保持部材340の径方向に分離可能とされた第1中間型131および第2中間型132とを有する構成のスライド型とされている。そして、第1中間型131および第2中間型132は、スライドさせて中間型130を構成した際、中間型130の中心に保持部材340の外径と一致する孔部133が構成されるように、互いに対向する面に半円状の孔型133a、133bが形成されている。つまり、第1中間型131および第2中間型132は、半円型の割型とされている。なお、中間型130は、保持部材340の軸方向に沿った方向の長さ(すなわち、厚さ)が中芯部111よりも短くされている。つまり、下型110の上面110a上に中間型130が配置された際、中芯部111は中間型130よりも突出した状態となる。
【0067】
また、中間型130の上面130aには、孔部133を中心とし、第2リング板部321の外径に対応する形状とされた窪み部134が形成されている。そして、窪み部134の側面には、特に
図9Aおよび
図10Bに示されるように、位置決め凸部135が形成されている。
【0068】
位置決め凸部135は、第2リング板部321に形成された位置決め凹部321cに対応して形成されており、2つ形成されると共に周方向に180°異なる位置に形成されている。より詳しくは、本実施形態では、下型110と中間型130との配列方向から視たとき、下型110に形成された位置決めピン114と、中間型130に形成された位置決め凸部135とは、周方向に約90°ずつ異なる位置となるように形成されている。なお、本実施形態では、位置決め凸部135が第2型側固定部に相当している。
【0069】
上型120は、下面120aに、中芯部111の先端部側を挿入可能な凹部121が形成されている。また、上型120には、特に図示しないが、溶融樹脂を注入するための注入ゲートやランナー等が形成されている。
【0070】
以上が本実施形態における成形型100の構成である。そして、
図9Bおよび
図11Aに示されるように、下型110の第1窪み部113aに、第1ヨーク部310の他面311bが第1窪み部113aの底面と対向するように、第1ヨーク部310を配置する。具体的には、第1リング板部311に形成された位置決め孔部311cを位置決めピン114に嵌合させつつ、第1歯部312が中芯部111と当接するように、第1ヨーク部310を配置する。これにより、第1ヨーク部310は、周方向への移動が抑制された状態で下型110に配置される。
【0071】
なお、本実施形態では、位置決めピン114は、高さが第1リング板部311の厚さ以下とされている。このため、第1ヨーク部310を第1窪み部113aに配置した際、位置決めピン114は、第1リング板部311から突出せず、第1リング板部311内に収容された状態となる。
【0072】
次に、
図9Cおよび
図11Bに示されるように、第1中間型131および第2中間型132をスライドさせて下型110の上面110a上に配置する。これにより、中間型130の孔部133と、下型110の中芯部111との間に保持部材340の内径および外径に相当する円筒状の空間が構成される。
【0073】
なお、下型110の上面110a上に中間型130を配置した際、中間型130は、第1ヨーク部310の第1リング板部311上にも配置される。つまり、第1リング板部311は、下型110と中間型130とによって挟み込まれており、後述する保持部材340を構成する際、保持部材340を構成する溶融樹脂が流れ込まないようになっている。すなわち、第1リング板部311は、後述する保持部材340を構成する際、保持部材340から露出するように配置されている。
【0074】
また、第1中間型131および第2中間型132は、機械的にスライドすることで下型110の上面110a上に配置される。このため、下型110の上面110a上に中間型130が配置される際、中間型130と下型110との位置関係は変化しない。つまり、下型110に形成された位置決めピン114と、中間型130に形成された位置決め凸部135との位置関係は、経時的に変化しない。
【0075】
そして、
図9Dおよび
図11Cに示されるように、中間型130の窪み部134に、第2ヨーク部320の一面321aが窪み部134の底面と対向するように、第2ヨーク部320を配置する。具体的には、第2ヨーク部320の第2歯部322と第1ヨーク部310の第1歯部312とが周方向に交互に配置されつつ、第1ヨーク部310との間に所定の間隔が維持されるように、第2ヨーク部320を配置する。また、第2リング板部321に形成された位置決め凹部321cを位置決め凸部135に嵌合させつつ、第2歯部322が中芯部111と当接するように、第2ヨーク部320を配置する。これにより、第2ヨーク部320は、周方向への移動が抑制された状態で中間型130に配置される。
【0076】
続いて、
図9Eおよび
図11Dに示されるように、中芯部111の先端に形成された嵌合用段差部112に、固定用カラー330を嵌め込む。
【0077】
次に、
図9Fおよび
図11Eに示されるように、中間型130の上面130aと下面120aが当接するように上型120を配置し、上型120と下型110との間に中間型130が挟持されるように型締めする。
【0078】
その後は、特に図示しないが、下型110、中間型130、上型120と、中芯部111との間に構成される円筒状の空間に、上型120から溶融樹脂を注入して固化する。これにより、第1ヨーク部310、第2ヨーク部320、固定用カラー330が保持部材340によって一体化された示すヨーク部材30が構成される。
【0079】
この際、第1ヨーク部310を固定する位置決めピン114および第2ヨーク部320を固定する位置決め凸部135は、別々に形成されている。このため、第1ヨーク部310を固定する位置決めピン114、および第2ヨーク部320を固定する位置決め凸部135を必要以上に大きくする必要がない。したがって、保持部材340を構成する際、第1ヨーク部310を固定する位置決めピン114および第2ヨーク部320を固定する位置決め凸部135が変形する等の不具合が発生することを抑制できる。
【0080】
以上説明したように、本実施形態では、第1ヨーク部310および第2ヨーク部320を成形型100に配置する際、第1ヨーク部310を下型110に形成された位置決めピン114によって固定していると共に、第2ヨーク部320を中間型130に形成された位置決め凸部135によって固定している。つまり、第1ヨーク部310を固定する位置決めピン114、および第2ヨーク部320を固定する位置決め凸部135を必要以上に大きくする必要がない。このため、保持部材340を構成する際、第1ヨーク部310を固定する位置決めピン114および第2ヨーク部320を固定する位置決め凸部135が変形する等の不具合が発生することを抑制できる。したがって、経時的に製造精度が低下することを抑制でき、ヨーク部材30の信頼性が低下することを抑制できる。
【0081】
また、本実施形態では、第1ヨーク部310および第2ヨーク部320は、配列方向から視た際、位置決め孔部311cと位置決め凹部321cとが異なる位置となるように配置されている。このため、配列方向から視た際に位置決め孔部311cと位置決め凹部321cとが重複している場合と比較して、第1、第2リング板部311、321から第1、第2磁束誘導部材81、82に誘導される磁束がばらつくことを抑制できる。
【0082】
さらに、本実施形態では、第1リング板部311の中間部に位置決め孔部311cが形成され、第2リング板部321の外縁部に位置決め凹部321cが形成されている。つまり、第1、第2リング板部311、321の一方の外縁部のみにリング板部側固定部が形成されている。ここで、上記では、トルク検出装置10として、第1リング板部311と第2リング板部321との間に第1、第2磁束誘導部材81、82が配置されている例を説明した。しかしながら、トルク検出装置10は、第1、第2リング板部311、321の径方向で第1、第2リング板部311、321と対向するように第1、第2磁束誘導部材81、82が配置されて構成される場合もある。この場合、第1、第2リング板部311、321の両方の外縁部にリング板部側固定部が形成されると、第1、第2リング板部311、321と第1、第2磁束誘導部材81、82との間隔が変化する部分が増加し、出力変動が発生し易くなる。このため、外縁部にリング板部側固定部を形成する場合には、第1、第2リング板部311、321の一方とすることにより、出力変動が発生することを抑制できる。
【0083】
また、第2リング板部321には、外縁部に位置決め凹部321cが形成されている。このように、外縁部に位置決め凹部321cを形成する場合には、中間部に孔部を形成する場合と比較して、加工性等により、大きさを小さくし易い。このため、第2リング板部321の外縁部に位置決め凹部321cを形成することにより、通過する磁束が減少することを抑制でき、検出感度が低下することを抑制できる。
【0084】
また、本実施形態では、第2リング板部321には、径方向における第2歯部322の裏側となる部分に位置決め凹部321cが形成されている。このため、例えば、径方向における第2歯部322の裏側となる部分と異なる部分に位置決め凹部321cが形成されている場合と比較して、磁束経路を確保し易くできる。なお、上記では、第1リング板部311では、位置決め孔部311cが径方向における第1歯部312の裏側となる部分と異なる部分に形成されている構成を説明したが、第1リング板部311においても、位置決め孔部311cを径方向における第1歯部312の裏側となる部分に形成するようにしてもよい。
【0085】
(第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態の変形例について説明する。上記第1実施形態において、第1ヨーク部310に形成される位置決め孔部311cの数、および第2ヨーク部320に形成される位置決め凹部321cの数は適宜変更可能である。そして、第1ヨーク部310に形成される位置決め孔部311cの数、および第2ヨーク部320に形成される位置決め凹部321cの数を変更する場合には、これらに合わせて、下型110に形成される位置決めピン114の数、および中間型130に形成される位置決め凸部135の数を変更すればよい。
【0086】
但し、第1ヨーク部310に位置決め孔部311cを形成することにより、第1ヨーク部310を通過し得る磁束が減少する。同様に、第2ヨーク部320に位置決め凹部321cを形成することにより、第2ヨーク部320を通過し得る磁束が減少する。このため、第1ヨーク部310を下型110に配置した際の固定性との兼ね合いより、位置決め孔部311cは上記第1実施形態のように、2つ形成されると共に、周方向に180°異なる位置に形成されることが好ましい。同様に、第2ヨーク部320を中間型130に配置した際の固定性との兼ね合いより、位置決め凹部321cは、2つ形成されると共に、周方向に180°異なる位置に形成されることが好ましい。
【0087】
また、上記第1実施形態において、位置決め孔部311cは、第1リング板部311を貫通しない孔部とされていてもよい。さらに、上記第1実施形態において、位置決めピン114は、第1ヨーク部310が下型110に配置された際に第1リング板部311を貫通して突出する長さとされていてもよい。なお、位置決めピン114が第1リング板部311から突出する場合には、下型110の上面110a上に中間型130を配置した際に位置決めピン114を収容するための収容部を中間型130に形成する必要がある。
【0088】
さらに、上記第1実施形態において、第1リング板部311には、位置決め孔部311cの代わりに、第2リング板部321に形成された位置決め凹部321cと同様に、外縁部側に位置決め凹部が形成されていてもよい。この場合、下型110は、中間型130と同様の位置決め凸部が第1窪み部113aの側面に形成された構成とすればよい。
【0089】
また、上記第1実施形態において、第2リング板部321には、位置決め凹部321cを形成する代わりに、
図12に示されるように、外縁部に当該外縁部が面取りされた面取り部321dが形成されていてもよい。この場合、中間型130には、窪み部134の側面に面取り部321dと合致するための中間型側固定部が形成されていればよい。つまり、第2リング板部321に形成される第2リング板部側固定部の構成と中間型130に形成される中間型側固定部の構成は、第2リング板部321が中間型130に固定されるのであれば適宜変更可能である。同様に、第1リング板部311に形成される第1リング板部側固定部の構成と、下型110に形成される下型側固定部の構成は、第1リング板部311が下型110に固定されるのであれば適宜変更可能である
【0090】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、ヨーク部材30の構成を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0091】
本実施形態のヨーク部材30は、
図13Aおよび
図13Bに示されるように、第1ヨーク部310のうちの第1リング板部311の内縁部側であって、第1歯部312の間に位置する部分に、位置決め凹部311dが形成されている。本実施形態では、位置決め凹部311dは、第1リング板部311の径方向に沿って形成された切り欠きとされ、2つ形成されている。そして、各位置決め凹部311dは、第1リング板部311の周方向に180°異なる位置に形成されている。
【0092】
なお、本実施形態の第1ヨーク部310には、位置決め孔部311cは形成されていない。そして、第1ヨーク部310および第2ヨーク部320は、第1実施形態と同様に、軸方向から視た際、第1リング板部311に形成された位置決め凹部311dと第2リング板部321に形成された位置決め凹部321cとが周方向に約90°ずつ異なる位置となるように配置される。
【0093】
また、保持部材340には、内周面340aに第1リング板部311の位置決め凹部311dを露出させる溝部342が形成された状態となっている。
【0094】
次に、本実施形態のヨーク部材30の製造方法について、
図14を参照しつつ説明する。なお、
図14は、
図9F中のXIE-XIE線に沿った断面図である。
【0095】
本実施形態では、下型110として、中芯部111に、位置決め凹部311dに対応する位置決め凸部111aが形成されたものを用意する。なお、本実施形態では、下型110には、位置決めピン114が形成されていない。
【0096】
そして、上記
図9Bの第1ヨーク部310を下型110に配置する際には、第1リング板部311の位置決め凹部311dを位置決め凸部111aに嵌合させつつ、第1ヨーク部310を配置する。これにより、成形型100内に溶融樹脂を流し込んだ際、位置決め凸部111aが形成されている部分には溶融樹脂が流れ込まない。このため、上記のように、保持部材340の内周面340a側に、第1リング板部311の位置決め凹部311dを露出させる溝部342が形成されたヨーク部材30が構成される。
【0097】
このように、第1リング板部311の内縁部側に位置決め凹部311dを形成しても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0098】
(第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態の変形例について説明する。上記第2実施形態では、第1リング板部311の内縁部側に位置決め凹部311dを形成する例について説明したが、第2リング板部321の内縁部側に位置決め凹部を形成するようにしてもよい。また、上記第2実施形態を上記1実施形態と適宜組み合わせてもよい。すなわち、第1リング板部311には、内縁部側、外縁部側、内縁部と外縁部との間の中間部のいずれかに第1リング板部側固定部として機能する部分が構成されていればよい。また、第2リング板部321には、内縁部側、外縁部側、内縁部と外縁部との間の中間部のいずれかに第2リング板部側固定部として機能する部分が構成されていればよい。
【0099】
そして、第1リング板部311の中間部に第1リング側固定部を形成した場合には、上記のように、下型110の位置決めピン114を当該第1リング板部側固定部のみと嵌合するようにすることにより、位置決めピン114が変形することを抑制できる。
【0100】
また、第1リング板部311の内縁部または外縁部に第1リング側固定部を形成した場合には、中間部に第1リング側固定部としての孔部を形成する場合と比較して、加工性等により、第1リング板部側固定部の大きさを小さくし易い。このため、第1リング板部311の内縁部または外縁部に第1リング板部側固定部を形成することにより、通過する磁束が減少することを抑制でき、検出感度が低下することを抑制できる。
【0101】
さらに、第1リング板部311の外縁部に第1リング板部側固定部を形成し、第2リング板部321の内縁部または中間部に第2リング板部側固定部を形成した場合には、次のトルク検出装置10を構成した場合、出力変動を抑制し易くできる。すなわち、第1、第2リング板部311、321の径方向で第1、第2リング板部311、321と対向するように第1、第2磁束誘導部材81、82を配置してトルク検出装置10を構成した場合、第1、第2リング板部311、321の外縁部に第1、第2リング板部側固定部を形成した場合と比較して、第1、第2リング板部311、321と第1、第2磁束誘導部材81、82との間隔が変化する部分が増加することを抑制でき、出力変動を抑制し易くできる。
【0102】
また、第1リング板部311の外縁部に第1リング板部側固定部を形成すると共に、第2リング板部321の外縁部に第2リング板部側固定部を形成した場合には、次のトルク検出装置10を構成した場合、出力変動の影響を小さくできる。すなわち、本実施形態のように、第1リング板部311と第2リング板部321との間に第1、第2磁束誘導部材81、82を配置してトルク検出装置10を構成した場合に、出力変動の影響を小さくできる。
【0103】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、ヨーク部材30の構成を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0104】
まず、上記のようなヨーク部材30は、保持部材340と、第1ヨーク部310および第2ヨーク部320の熱膨張係数の差に起因する熱応力により、第1歯部312および第2歯部322が保持部材340の内周面340a側から浮き出る可能性がある。このため、トルク検出装置10を構成した場合、第1歯部312および第2歯部322と多極磁石20との間隔が変化することにより、感度が変化してしまう可能性がある。
【0105】
したがって、本実施形態では、
図15に示されるように、第1、第2ヨーク部310、320には、第1、第2歯部312、322の内面312a、322aに凹部313、323が形成されている。本実施形態では、凹部313、323は、第1、第2歯部312、322における突出方向の先端部に形成されており、プレスにより、内面312a、322aが外面側にずらされた形状となっている。そして、保持部材340は、当該凹部313、323にも入り込んだ状態となっている。
【0106】
なお、第1、第2歯部312、322における外面とは、内面312a、322aと反対側の面のことである。また、本実施形態では、第1、第2歯部312、322の内面312a、322aが保持部材340の内周面340aから露出しており、内周面340aが保持部材340の外面に相当する。
【0107】
本実施形態では、このように保持部材340が配置されているため、第1、第2歯部312、322が保持部材340から浮き出ることが凹部313、323内に配置されている保持部材340によって抑制される。つまり、本実施形態では、保持部材340のうちの凹部313、323内に配置されている部分は、第1、第2歯部312、322の変位を抑制するストッパとしての機能を発揮する。
【0108】
次に、このようなヨーク部材30の製造方法について説明する。
【0109】
本実施形態では、第1ヨーク部310を用意する際、第1歯部312に凹部313が形成されたものを用意する。また、本実施形態では、第1ヨーク部310を用意する際、第1歯部312が第1リング板部311の開口部側へのスプリングバックが発生している状態のものを用意する。
【0110】
同様に、第2ヨーク部320を用意する際、第2歯部322に凹部323が形成されたものを用意する。また、第2ヨーク部320を用意する際、第2歯部322が第2リング板部321の開口部側へのスプリングバックが発生している状態のものを用意する。
【0111】
そして、上記
図9Bにて、第1ヨーク部310を下型110に配置する際、第1歯部312にスプリングバックが発生している状態としているため、第1歯部312の内面312aのうちの凹部313が形成されている部分と異なる部分が中芯部111を押圧した状態とする。
【0112】
また、上記
図9Dにて、第2ヨーク部320を中間型130に配置する際、第2歯部322にスプリングバックが発生している状態としているため、第2歯部322の内面322aのうちの凹部323が形成されている部分と異なる部分が中芯部111を押圧した状態とする。
【0113】
そして、成形型100内に溶融樹脂を流し込んで保持部材340を構成する際、凹部313、323内にも溶融樹脂が流れ込むようにする。これにより、凹部313、323内にも保持部材340が配置された上記ヨーク部材30が構成される。
【0114】
そして、成形型100からヨーク部材30を取り出した後は、第1、第2歯部312、322に形成された凹部313、323内に保持部材340が配置されているため、第1、第2歯部312、322が保持部材340の内周面340aから浮き出ることが抑制される。
【0115】
また、本実施形態では、第1、第2ヨーク部310、320は、第1、第2歯部312、322が中芯部111を押圧する状態で配置されるようにしている。このため、中芯部111と、第1、第2歯部312、322の凹部313、323が形成されていない部分との間に、保持部材340を構成する溶融樹脂が入り込むことを抑制できる。特に、本実施形態のように、保持部材340の外周面340bに溝部341を形成する場合には、第1、第2歯部312、322が配置される部分の溶融樹脂が流れる流路が狭くなるために成形圧が高くなり易いが、第1、第2歯部312、322が中芯部111を押圧する状態とすることにより、第1、第2歯部312、322と中芯部111との間に保持部材340を構成する溶融樹脂が入り込むことを抑制できる。
【0116】
このため、ヨーク部材30を構成した際、第1、第2歯部312、322の内面312a、322aのうちの凹部313、323が形成されていない部分が保持部材340にて被覆されることも抑制できる。したがって、トルク検出装置10を構成した際、多極磁石20からの磁束が保持部材340によって阻害されることを抑制でき、感度が低下することも抑制できる。なお、このように第1、第2歯部312、322を中芯部111で押圧する状態としても、上記のように、凹部313、323内に保持部材340が配置されることにより、第1、第2歯部312、322がスプリングバックによって保持部材340の内周面340aから露出することが抑制される。
【0117】
以上説明したように、本実施形態では、第1、第2歯部312、322に凹部313、323が形成されており、凹部313、323内にも保持部材340が配置されている。このため、第1、第2歯部312、322が保持部材340から浮き出ることを抑制でき、感度が変化することを抑制できる。
【0118】
また、本実施形態のヨーク部材30では、第1、第2歯部312、322の先端部に凹部313、323が形成されているため、漏れ磁束を低減することで感度の向上を図ることもできる。すなわち、ヨーク部材30は、上記のように多極磁石20と共に磁気回路を構成する。そして、
図16に示されるように、第2歯部322の先端部と第1リング板部311とが近接して配置されている。また、特に図示しないが、第1歯部312の先端部と第2リング板部321とも近接して配置される。このため、これらの間で漏れ磁束が発生し得る。
【0119】
しかしながら、本実施形態では、第1歯部312および第2歯部322の先端部に凹部313、323が形成されているため、当該先端部の断面積が小さく部分で磁気抵抗が増加する。したがって、第1歯部312の先端部を介して第2リング板部321への漏れ磁束が発生し難くなると共に、第2歯部322の先端部を介して第1リング板部311への漏れ磁束が発生し難くなる。これにより、感度の向上を図ることができる。
【0120】
さらに、本実施形態では、第1、第2ヨーク部310、320を成形型100内に配置する際には、第1、第2歯部312、322が中芯部111を押圧する状態としている。このため、ヨーク部材30を構成した際、第1、第2歯部312、322の内面312a、322aのうちの凹部313、323が形成されていない部分が保持部材340にて被覆されることを抑制できる。したがって、トルク検出装置10を構成した際、感度が低下することを抑制できる。
【0121】
(第3実施形態の変形例)
上記第3実施形態の変形例について説明する。上記第3実施形態において、第1、第2歯部312、322の内面312a、322aに形成される凹部313、323の構成は適宜変更可能である。例えば、
図17Aに示されるように、凹部313、323は、第1、第2歯部312、322の外面がずれないように形成されていてもよい。また、
図17Bに示されるように、凹部313、323は、第1、第2歯部312、322における先端部が面取りされた形状とされていてもよい。
【0122】
また、第1、第2歯部312、322の内面312a、322aに形成される凹部313、323は、凹部313、323内に保持部材340が配置されるのであれば、形成される場所は適宜変更可能である。例えば、凹部313、323は、第1、第2歯部312、322の内面312a、322aにおける根本部側に形成されていてもよいし、第1、第2歯部312、322の内面312a、322aにおける根本部と先端部との間の中間部に形成されていてもよい。
【0123】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、ヨーク部材30の構成を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0124】
まず、上記のようなヨーク部材30は、保持部材340と、第1ヨーク部310および第2ヨーク部320の熱膨張係数の差に起因する熱応力により、第1リング板部311および第2リング板部321が保持部材340から浮き出る可能性がある。このため、トルク検出装置10を構成した場合には、第1リング板部311および第2リング板部321と、第1、第2磁束誘導部材81、82との間隔が変動することにより、感度が変化してしまう可能性がある。
【0125】
したがって、本実施形態では、ヨーク部材30は、
図18に示されるように、第1、第2リング板部311、321の内縁部のうちの第1、第2歯部312、322が配置される部分の間の部分に凹部314、324が形成されている。本実施形態では、凹部314、324は、プレスにより、内縁部において、一面311a、321aが他面311b、321b側にずらされた形状となっている。そして、保持部材340は、当該凹部314にも入り込んだ状態となっている。
【0126】
なお、凹部314、324は、第1、第2リング板部311、321の内縁部のうちの第1、第2歯部312、322が配置される部分の間の全体に形成されていてもよいし、一部に形成されていてもよい。また、本実施形態では、第1、第2リング板部311、321の一面311a、321aが保持部材340の外周面340b(すなわち、溝部341)から露出しており、外周面340bが保持部材340の外面に相当する。
【0127】
本実施形態では、このように保持部材340が配置されているため、第1、第2リング板部311、321が保持部材340から浮き出ることが保持部材340によって抑制される。つまり、本実施形態では、保持部材340のうちの凹部314、324内に配置されている部分は、第1、第2リング板部311、321の変位を抑制するストッパとしての機能を発揮する。
【0128】
次に、このようなヨーク部材30の製造方法について説明する。
【0129】
本実施形態では、第1ヨーク部310を用意する際、第1リング板部311に凹部314が形成されたものを用意する。また、第2ヨーク部320を用意する際、第2リング板部321に凹部324が形成されたものを用意する。
【0130】
そして、成形型100内に溶融樹脂を流し込んで保持部材340を構成する際、凹部314、324内にも溶融樹脂が流れ込むようにする。これにより、凹部314、324内にも保持部材340が配置された上記ヨーク部材30が構成される。
【0131】
そして、成形型100からヨーク部材30を取り出した後は、第1、第2リング板部311、321に形成された凹部314、324内に保持部材340が配置されているため、第1、第2リング板部311、321が保持部材340から浮き出ることが抑制される。
【0132】
以上説明したように、本実施形態では、第1、第2リング板部311、321に凹部314、324が形成されており、凹部314、324内にも保持部材340が配置されている。このため、第1、第2リング板部311、321が保持部材340から浮き出ることを抑制でき、感度が変化することを抑制できる。
【0133】
(第4実施形態の変形例)
上記第4実施形態の変形例について説明する。上記第4実施形態において、第1、第2リング板部311、321の一面311a、321aに形成される凹部314、324の構成は適宜変更可能である。例えば、
図19Aに示されるように、凹部314、324は、第1、第2リング板部311、321の外面がずれないように形成されていてもよい。また、
図19Bに示されるように、凹部314、324は、第1、第2リング板部311、321における内縁部が面取りされた形状とされていてもよい。
【0134】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0135】
例えば、上記各実施形態では、コラムタイプの電動パワーステアリング装置1を例に挙げて説明した。しかしながら、上記各実施形態は、ラックタイプの電動パワーステアリング装置1にも適用できる。
【0136】
また、上記各実施形態において、各方向は、実施形態の説明の便宜上設定したものである。このため、回転中心軸Cは、多くの場合、車高方向と交差する方向となる。
【0137】
さらに、上記各実施形態において、第1、第2ヨーク部310、320の間に発生する磁束が磁束誘導部材81、82を通じて磁気検出素子70に誘導されるのであれば、磁束誘導部材81、82の構成等は適宜変更可能である。例えば、磁束誘導部材は、第1、第2ヨーク部310、320を囲みつつ、第1、第2ヨーク部310、320の径方向で第1、第2ヨーク部310、320と対向するリング状とされていてもよく、センサハウジング50とは別体として備えられていてもよい。この場合、第1、第2ヨーク部310、320の径方向に磁束誘導部材が配置されるため、保持部材340には、外周面340bに溝部341が形成されていなくてもよい。
【0138】
そして、上記各実施形態において、回路基板60をセンサハウジング50に搭載しないようにし、磁気検出素子70を直接センサハウジング50に配置するようにしてもよい。また、上記各実施形態において、回路基板60には、開口部63が形成されていなくてもよい。
【0139】
また、上記第3、第4実施形態において、第1、第2ヨーク部310、320には、成形型100に配置された際に位置ずれを抑制する第1、第2リング板部側固定部が形成されていなくてもよい。この場合、下型110には第1型側固定部が形成されていなくてもよく、中間型130には第2型側固定部が形成されていなくてもよい。
【0140】
また、上記各実施形態を組み合わせることもできる。例えば、上記第1、2実施形態を上記第3、第4実施形態に適宜組み合わせ、第1、第2リング板部311、321に形成される第1、第2リング側固定部の形状、場所、数等を適宜変更してもよい。また、上記第3実施形態を上記第4実施形態に組み合わせ、第1、第2歯部312、322に凹部313、323を形成すると共に、第1、第2リング板部311、321に凹部314、324を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0141】
30 ヨーク部材
310 第1ヨーク部
311 第1リング板部
312 第1歯部
312a 内面
320 第2ヨーク部
321 第2リング板部
322 第2歯部
322a 内面
340 保持部材