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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】試験用シートおよび計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/00 20060101AFI20240116BHJP
   G01L 1/24 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G01L1/00 B
G01L1/24 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023529535
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2022010158
(87)【国際公開番号】W WO2022270029
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2021102939
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金丸 訓明
(72)【発明者】
【氏名】篠山 智生
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-151544(JP,A)
【文献】特開2017-90069(JP,A)
【文献】特開2016-180637(JP,A)
【文献】特開2018-90693(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0267107(US,A1)
【文献】特開2014-65813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00- 1/26
G01L 5/00- 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
応力またはひずみの計測において荷重が印加される対象物に貼付される試験用シートであって、
高分子材料を含む基材層と、
前記基材層上に形成された、応力発光材料を含む応力発光層と、を備え、
前記基材層は、前記応力発光層より厚い、試験用シート。
【請求項2】
前記試験用シートを前記対象物に接着させる粘着層をさらに備え、
前記基材層は、前記粘着層上に形成されている、請求項1に記載の試験用シート。
【請求項3】
前記粘着層と前記基材層との間に形成された、帯電防止層をさらに備える、請求項2に記載の試験用シート。
【請求項4】
応力またはひずみの計測において荷重が印加される対象物に貼付される試験用シートであって、
帯電防止層と、
前記帯電防止層上に形成された、高分子材料を含む基材層と、
前記基材層上に形成された、応力発光材料を含む応力発光層と、を備える、試験用シート。
【請求項5】
前記試験用シートを前記対象物に接着させる粘着層をさらに備え、
前記基材層は、前記粘着層上に形成されている、請求項4に記載の試験用シート。
【請求項6】
前記帯電防止層は、前記粘着層と前記基材層との間に形成されている、請求項5に記載の試験用シート。
【請求項7】
前記粘着層は、再剥離性粘着剤によって構成される、請求項2、請求項3、請求項5、または請求項6に記載の試験用シート。
【請求項8】
前記応力発光層は、10μm以下の厚みを有する、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の試験用シート。
【請求項9】
対象物における応力またはひずみを計測する方法であって、
前記対象物に貼付された1以上の試験用シートに励起光を照射するステップを備え、
前記1以上の試験用シートのそれぞれは、
高分子材料を含む基材層と、
前記基材層上に形成された、応力発光材料を有する応力発光層と、を含み、
励起光を照射された前記1以上の試験用シートのそれぞれの撮像画像を取得するステップと、
前記1以上の試験用シートのそれぞれの撮像画像から、前記1以上の試験用シートについての発光強度を特定するステップと、を備える計測方法。
【請求項10】
前記基材層は、前記応力発光層より厚い、請求項9に記載の計測方法。
【請求項11】
前記1以上の試験用シートのそれぞれは、前記基材層に対して、前記応力発光層を形成された側とは反対側に配置された帯電防止層をさらに含む、請求項9または請求項10に記載の計測方法。
【請求項12】
前記1以上の試験用シートのそれぞれは、前記基材層に対して、前記応力発光層を形成された側とは反対側に配置された、粘着層をさらに備える、請求項9~請求項11のいずれか1項に記載の計測方法。
【請求項13】
前記粘着層は、再剥離性粘着剤によって構成される、請求項12に記載の計測方法。
【請求項14】
前記応力発光層は、10μm以下の厚みを有する、請求項9~請求項13のいずれか1項に記載の計測方法。
【請求項15】
前記1以上の試験用シートは、同一のシートから分離された複数の試験用シートを含み、
前記複数の試験用シートは、前記対象物の複数の場所のそれぞれに貼付される、請求項9~請求項13のいずれか1項に記載の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物における応力またはひずみの計測に利用される試験用シートおよび計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
応力発光材料の輝度を計測することにより、応力発光材料を塗布された対象物の応力またはひずみを試験する技術が知られている(例えば、特開2015-75477号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
応力発光材料は、エネルギー状態が高められるとエネルギーを放出して発光する材料である。応力発光材料は、外部から機械的な力が与えられると、内部に生じる応力に応じて発光する。その発光強度は、生じた応力と相関がある。
【0004】
このことから、上記試験では、対象物に荷重を印加し、対象物に塗布された応力発光材料を撮像装置で撮像し、撮像された画像から応力発光材料の発光強度を計測し、計測された発光強度から応力発光材料の応力が特定される。
【0005】
応力発光材料に含有される応力発光材料は、それ自体では接着能を持たない。このため、上述試験に用いるためには、応力発光材料を接着性を有する母材と混合したうえでサンプルに固定する必要がある。このような応力発光材料の固定方法としては、たとえば、特許文献1に記載されるように、スプレー缶に充填された応力発光材料をサンプルに吹き付けて塗装する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-75477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記試験において、応答性を向上させるための技術、すなわち、同じ応力に対してより高い輝度の光を得るための技術が求められている。
【0008】
本発明は、係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、対象物の応力またはひずみの計測において応答性を高めるための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のある局面に従う試験用シートは、応力またはひずみの計測において荷重が印加される対象物に貼付される試験用シートであって、高分子材料を含む基材層と、基材層上に形成された、応力発光材料を含む応力発光層と、を備え、基材層は、応力発光層より厚い。
【0010】
本開示の他の局面に従う試験用シートは、応力またはひずみの計測において荷重が印加される対象物に貼付される試験用シートであって、帯電防止層と、帯電防止層上に形成された、高分子材料を含む基材層と、基材層上に形成された、応力発光材料を含む応力発光層と、を備える。
【0011】
本開示のさらに他の局面に従う試験用シートは、応力またはひずみの計測において荷重が印加される対象物に貼付される試験用シートであって、試験用シートを対象物に接着させる粘着層と、粘着層上に形成された、高分子材料を含む基材層と、基材層上に形成された、応力発光材料を含む応力発光層と、を備える。
【0012】
本開示の別の局面に従う計測方法は、対象物における応力またはひずみを計測する方法であって、部材に貼付された1以上の試験用シートに励起光を照射するステップを備え、1以上の試験用シートのそれぞれは、高分子材料を含む基材層と、基材層上に形成された、応力発光材料を有する応力発光層と、を含み、励起光を照射された1以上の試験用シートのそれぞれの撮像画像を取得するステップと、1以上の試験用シートのそれぞれの撮像画像から、1以上の試験用シートについての発光強度を特定するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示のある局面に従うと、基材層が応力発光層より厚いことにより、応力発光層の応力に対する発光の応答性が高められる。
【0014】
本開示の他の局面に従うと、基材層と対象物との間に帯電防止層が位置することにより、応力発光層の応力に対する発光の応答性が高められる。
【0015】
本開示のさらに他の局面に従うと、試験用シートを対象物に貼付する際に、別途接着剤を準備する必要がなくなる。
【0016】
本開示の別の局面に従うと、応力に対する発光の応答性が高められた応力発光層を有する試験用シートが利用され、これにより、対象物における応力がより正確に計測され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態において利用される計測装置100の構成例を示す図である。
図2】試験用シート90の構成の一例を示す図である。
図3】サンプル1の素材としてSUS304が採用されたときの光量の計測結果の一例を示す図である。
図4】サンプル1の素材としてA1050が採用されたときの光量の計測結果の一例を示す図である。
図5】サンプル1の素材としてA6061が採用されたときの光量の計測結果の一例を示す図である。
図6】サンプル1の素材としてSUS430が採用されたときの光量の計測結果の一例を示す図である。
図7】計測装置100において、サンプル1の応力またはひずみの計測のために実行される処理(計測工程)のフローチャートである。
図8】計測においてサンプルの複数箇所に試験用シートが貼付される場面を模式的に示す図である。
図9図8の3枚の試験用シート90X,90Y,90Zを準備する工程の一例を示す図である。
図10】FEMによる応力解析の結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、本開示の実施の形態について、試薬などの分量、温度、および濃度などの数値が開示されているが、この数値は、開示されている値のみならず、該開示されている値の近傍も含むものとする。
【0019】
<計測装置>
図1は、本実施の形態において利用される計測装置100の構成例を示す図である。図1の例では、サンプル1には、応力発光材料を含む試験用シート90が貼付され、計測装置100は、サンプル1に引張荷重を加えたときの応力発光材料の発光を計測する。サンプル1は、応力またはひずみの計測対象である「対象物」の一例である。なお、図1の例は、サンプル1に関する応力またはひずみの計測の一例である。応力またはひずみの計測方法は、図1に示された計測装置100によるものに限定されない。
【0020】
計測装置100は、ホルダ40と、光源50と、カメラ60と、第1ドライバ45と、第2ドライバ62と、第3ドライバ52と、コントローラ70とを備える。
【0021】
ホルダ40は、サンプル1の少なくとも2点に接触することにより、サンプル1を支持するように構成される。図1の例では、ホルダ40は、サンプル1の互いに対向する2つの端部(第1の端部1cおよび第2の端部1d)を支持するように構成される。具体的には、ホルダ40は、固定壁42と、移動壁41と、接続部材43,44とを有する。図1では、ホルダ40を載置した状態において、幅方向をX軸方向とし、奥行き方向をY軸方向とし、高さ方向をZ軸方向とする。
【0022】
固定壁42および移動壁41は、X軸方向に互いに対向するように設置される。固定壁42はホルダ40の底面に固定される。一方、移動壁41は、第1ドライバ45から外力を受けて、Z軸方向(紙面上下方向)に移動することが可能に構成される。
【0023】
サンプル1の第1の端部1cは、接続部材44によって固定壁42に接続されている。サンプル1の第2の端部1dは、接続部材43によって移動壁41に接続されている。計測装置100では、固定壁42と移動壁41の間のZ軸方向における距離を長くすることにより、サンプル1に引張荷重が印加される。第1ドライバ45は、ホルダ40に接続され、移動壁41を移動させることにより、第1の端部1cおよび第2の端部1dの相対位置を変更可能に構成される。
【0024】
サンプル1には、カメラ60と対向する面に、試験用シート90が貼付されている。光源50は、サンプル1のZ軸方向の上方に配置されており、試験用シート90に対して励起光を照射するように構成される。
【0025】
励起光を受けて、試験用シート90の応力発光材料は発光状態に遷移する。励起光は、たとえば、紫外線または近赤外線である。図1では、サンプル1(試験用シート90)に対して2方向から励起光を照射する構成が例示されているが、光源50は、1方向または3方向以上から、サンプル1(試験用シート90)に対して励起光を照射する構成としてもよい。
【0026】
第3ドライバ52は、光源50を駆動するための電力を供給する。第3ドライバ52は、コントローラ70から受ける指令に応じて光源50に供給する電力を制御することにより、光源50から照射される励起光の光量および励起光の照射時間などの条件を制御することができる。
【0027】
カメラ60は、サンプル1のZ軸方向の上方に、サンプル1上の試験用シート90の少なくとも一部を撮像視野に含むように配置される。具体的には、カメラ60は、フォーカス位置がサンプル1上の試験用シート90の少なくとも1点に位置するように配置される。
【0028】
カメラ60は、レンズなどの光学系および撮像素子を含む。撮像素子は、たとえばCCD(Charge Coupled Device)センサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどにより実現される。撮像素子は、光学系を介して、撮像対象から入射される光を電気信号に変換することによって撮像画像を生成する。撮像画像のデータ(画像データ)はコントローラ70へ送信される。
【0029】
第2ドライバ62は、コントローラ70から受ける指令に応じて、カメラ60のフォーカス位置を変更させる。第2ドライバ62は、カメラ60をZ軸方向に沿って移動させることにより、カメラ60のフォーカス位置を調整してもよい。一実現例では、第2ドライバ62は、カメラ60をZ軸方向に移動させる送りねじを回転させるモータと、モータを駆動するモータドライバとを有する。送りねじがモータによって回転駆動されることにより、カメラ60は、Z軸向の所定範囲内の指定された位置に位置決めされる。また、第2ドライバ62は、カメラ60の位置を示す位置情報をコントローラ70へ送信する。
【0030】
コントローラ70は、計測装置100全体を制御する。コントローラ70は、主な構成要素として、プロセッサ701と、メモリ702と、入出力インターフェイス(I/F)703と、通信I/F704とを有する。これらの各部は、図示しないバスを介して互いに通信可能に接続される。
【0031】
プロセッサ701は、1以上の、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)などの演算処理装置によって実現されてもよい。プロセッサ701は、メモリ702に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、計測装置100の各部の動作を制御する。具体的には、プロセッサ701は、当該プログラムを実行することによって、後述する計測装置100の処理の各々を実現する。
【0032】
メモリ702は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)およびフラッシュメモリなどの不揮発性メモリによって実現される。メモリ702は、プロセッサ701によって実行されるプログラム、またはプロセッサ701によって用いられるデータなどを記憶する。
【0033】
入出力I/F703は、プロセッサ701が、第1ドライバ45、第3ドライバ52、カメラ60、および第2ドライバ62との間で各種データをやり取りするためのインターフェイスである。
【0034】
通信I/F704は、計測装置100と他の装置との間で各種データをやり取りするための通信インターフェイスであり、アダプタまたはコネクタなどによって実現される。なお、通信方式は、無線LAN(Local Area Network)などによる無線通信方式であってもよいし、USB(Universal Serial Bus)などを利用した有線通信方式であってもよい。
【0035】
コントローラ70には、ディスプレイ71および操作部72が接続される。ディスプレイ71は、画像を表示可能な液晶パネルなどで構成される。操作部72は、計測装置100に対するユーザの操作入力を受け付ける。操作部72は、典型的には、タッチパネル、キーボード、マウスなどで構成される。
【0036】
コントローラ70は、第1ドライバ45、第3ドライバ52、カメラ60および第2ドライバ62と通信接続されている。コントローラ70と、第1ドライバ45、第3ドライバ52、カメラ60および第2ドライバ62との間の通信は、無線通信で実現されてもよいし、有線通信で実現されてもよい。
【0037】
<試験用シート>
図2は、試験用シート90の構成の一例を示す図である。図2の例では、試験用シート90は、粘着層94と、粘着層94上に形成された帯電防止層93と、帯電防止層93上に形成された基材層92と、基材層92上に形成された応力発光層91とを含む。試験用シート90は、粘着層94によって、サンプル1上に貼付される。試験用シート90は、たとえば、光学フィルム用表面保護材(日東電工株式会社製「E-MASK_RP301」)におけるポリエステル系フィルムの表面に応力発光層91がスクリーン印刷されることによって作製される。
【0038】
図2には、図1に示されたのと同じ3軸(X軸,Y軸,Z軸)が示される。図2の例では、粘着層94、帯電防止層93、基材層92、および、応力発光層91は、XZ平面において同じ寸法を有し、互いに密着するように、Y軸方向に重ねられている。
【0039】
なお、本明細書において「第1の層の上に形成された第2の層」との記載は、第1の層と第2の層との間の位置関係として広義に解釈されてもよい。すなわち、当該記載は、第1の層と第2の層とが、Z軸方向において、少なくとも互いの一部が重なるように配置されていることを含み得る。また、当該記載は、第1の層と第2の層との間の少なくとも一部に、他の物質が配置されることも含み得る。さらには、当該記載は、第1の層と第2の層との間に、第3の層が配置されることも含み得る。すなわち、図2の例は、基材層92は、粘着層94上に形成されているとも解釈され得る。
【0040】
(1)粘着層
粘着層94は、試験用シート90をサンプル1に接着させるあらゆる材料によって構成され得る。粘着層94が再剥離性粘着剤によって構成された場合、試験用シート90は、試験においてサンプル1に貼付された後、跡を残すことなくサンプル1から剥がされ得る。これにより、試験後のサンプル1に汚れを残さないだけでなく、試験中に試験用シート90の貼付位置を変更する際にも、試験中のサンプル1に汚れを残すことなく貼付位置が変更され得る。再剥離性粘着剤は、たとえばポリウレタンからなる粘着剤であってもよいが、これに限定されない。
【0041】
試験用シート90が粘着層94を含むことにより、試験用シート90をサンプル1に貼付するために別途接着剤を準備する必要がなくなる。ただし、試験用シート90は、粘着層94を含むことを必須としない。試験用シート90が粘着層94を含まない場合、試験用シート90は、別途準備された接着剤によって、サンプル1に貼付され得る。
【0042】
(2)帯電防止層
帯電防止層93は、試験用シート90における帯電防止の目的で配置され、帯電防止剤として一般的に利用される材料によっても構成され得る。
【0043】
試験用シート90が帯電防止層93を含むことにより、基材層92の帯電が抑制され、これにより、同じ応力を加えられたときの応力発光層91の発光強度が高められ得る。ただし、試験用シート90は、帯電防止層93を含むことを必須としない。すなわち、試験用シート90は、基材層92がサンプルに接着されることによってサンプル1に接着されることもあり得る。また、試験用シート90は、粘着層94が基材層92と密着するように構成される場合もあり得る。
【0044】
(3)基材層
基材層92は、種々の高分子材料(PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、ポリエステル、等)によって構成される。基材層92は、応力発光層91より厚いことが好ましい。基材層92の厚みは、たとえば10~70μmであることが好ましく、30~60μmがさらに好ましい。本明細書において「厚み」とは、サンプルの表面に垂直な方向における寸法をいう。
【0045】
(4)応力発光層
応力発光層91は、応力発光材料を含む。応力発光層91の厚みは、発光が、応力発光層91自体の応力ではなくサンプル1の応力を反映するために、10μm以下が好ましく、3~7μm程度がさらに好ましい。
【0046】
応力発光材料は、無機結晶(母材)の骨格中に発光中心となる元素を固溶したものであり、代表的なものに、ユーロピウムをドープしたアルミン酸ストロンチウムがある。その他、遷移金属または希土類をドープした硫化亜鉛、チタン酸バリウム・カルシウム、アルミン酸カルシウム・イットリウムなどがある。本実施の形態では、応力発光材料は公知のものを用いることができる。
【0047】
応力発光材料は、例えば、アルミン酸ストロンチウム、硫化亜鉛、スズ酸ストロンチウム、ニオブ酸リチウムからなる群から選択された物質を母体材料とする。母体材料は、Eu,Nd,Zr,Ho,Sc,Y,La,Ce,Pr,Pm,Sm,Er,Dy,Gd,Tm,Yb,Lu,Tbからなる群から選ばれた少なくともいずれか1つの元素のイオンで賦活される。
【0048】
一実現例では、応力発光層91は、基材層92表面に、応力発光材料を印刷することによって形成される。一実現例では、印刷には、まず、固体粒子である顔料(応力発光材料)をビヒクルと称する粘着性マトリックスと溶媒の混合物に分散させることによって、素材を準備する。
【0049】
より具体的には、当該素材を、メッシュなどのスクリーン上でスクイーズし、スクリーン空隙に当該素材を充填させることで、一種のステッカーが仮形成させる。そして、再度スクリーンを介し被印刷物上で上記素材をスクイーズすることで、上記ステッカーを被印刷物に転写される。この手法は塗装に対して、規定厚のスクリーンに充填されたペイントが転写されるので、簡便に均一な膜厚形成が可能であるし、スクリーンの厚さを変えることで印刷物の膜厚が制御され得る。
【0050】
応力発光層91の形成において、応力発光材料(固体粒子)は、サブミクロンオーダーの粒子径になるまで細粒化されていてもよい。応力発光材料の粉砕は、公知の粉砕装置を用いて行なうことができ、その種類は特に限定されるものではない。ただし、応力発光材料は耐水性が低く、かつ加熱により変質して応力発光強度が低下する可能性がある。そのため、粒子同士を高速で衝突させてサブミクロンオーダーに粉砕することができる粉砕装置を用いることが好ましい。
【0051】
例えば、湿式微粉砕機(装置名:ラボスター、アシザワ・ファインテック株式会社製)が用いられ得る。この湿式微粉砕機は、ビーズ状の粉砕メディアが収容されたチャンバ内でロータを回転させ、チャンバ内でスラリー状のサンプルを循環させてメディアと衝突させることにより、サンプルを粉砕するものである。
【0052】
あるいは、微粉砕機(装置名:ナノジェットマイザー、株式会社アイシンナノテクノロジーズ製)が用いられ得る。この微粉砕機は、ミル内部に高圧ジェット気流による同心円の旋回渦を形成することにより粒子を加速する。加速された粒子同士の衝突によって粒子をナノレベルに粉砕することができる。このとき、ジュールトムソン効果(気圧自由膨張時の温度低下効果)により、被粉砕物の温度上昇を抑制することができる。
【0053】
なお、粉砕の条件は特に限定されることなく、粉砕前の応力発光材料の粒径および粒度分布などが考慮されて設定されればよい。
【0054】
溶媒は、被膜形成性樹脂を含有する。被膜形成性樹脂としては、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、放射線効果性樹脂などを用いることができる。例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、オルガノシリケート、オルガノチネタートなどが挙げられる。溶媒は少なくとも、応力発光材料を励起させるための励起光および、応力発光材料から放射される蛍光を透過可能なものが用いられる。
【0055】
なお、溶媒には、必要に応じて、溶剤、分散剤、充填剤、増粘剤、レベリング剤、硬化剤、顔料、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤を含む光安定剤、難燃剤、硬化用触媒、殺菌剤および抗菌剤などの塗料添加剤を含有させることができる。
【0056】
一実現例では、応力発光材料を溶媒に分散させたスラリー状態で解砕することにより、応力発光材料と溶媒とが混合される。解砕の方法には特に制限はないが、例えば、ローラミル、ボールミルなどを用いたものが採用され得る。
【0057】
応力発光層91における応力発光材料の含有量は、応力発光体に求められる可撓性を阻害しない範囲で適宜調整され得る。例えば、被膜形成樹脂を主成分とする溶媒に対して、応力発光材料を150PHR(溶媒100部に対して応力発光材料150部、すなわち60重量%)とすることができる。
【0058】
応力発光層91における応力発光材料の配合率は20重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらにより好ましい。応力発光材料の配合率が20重量%未満になると、応力発光層91における応力発光材料の粒子の粒間隔が大きくなり、応力発光層91に加えられた応力が溶媒中に逃げ、これにより、応力発光能が低下することが懸念されるからである。
【0059】
<サンプルの素材の変化への対応>
本実施の形態の試験用シート90は、複数種類の素材のサンプルに対して、応力発光層がサンプル上に直接形成される場合よりも優れた応答性を有する。このことを、図3図6を参照して以下に説明する。
【0060】
図3図6には、JIS規格に従った4種類の素材(SUS304,A1050,A6061,および,SUS430)のそれぞれについての光量の計測結果が示される。より具体的には、図3は、サンプル1の素材としてSUS304が採用されたときの光量の計測結果の一例を示す図である。図4は、サンプル1の素材としてA1050が採用されたときの光量の計測結果の一例を示す図である。図5は、サンプル1の素材としてA6061が採用されたときの光量の計測結果の一例を示す図である。図6は、サンプル1の素材としてSUS430が採用されたときの光量の計測結果の一例を示す図である。
【0061】
(1)図3
図3では、線L11~L13のそれぞれは、本実施の形態に従った試験用シート90の光量の計測結果を表す。図3において、線L14~L16のそれぞれは、比較例を表す。縦軸は、検出された光量を表し、横軸は、時間を表す。
【0062】
より具体的には、線L11~L13は、応力発光層91と基材層92とを含む試験用シート90がサンプル1に固定された状態で計測された。線L11~L13は、同一の試験用シート90について3回行われた計測の結果を表す。
【0063】
試験用シート90として、応力発光層91と基材層92とを含むフィルムから切り出された、80.0mm×12.5mmの短冊状のシートが準備された。試験用シート90は、基材層92として、厚み100μmのPENフィルムを含んでいた。試験用シート90は、また、応力発光層91として、堺化学工業製ML-032に追加の粉砕加工を加えることによって得られた微細粒子が応力発光材料として含まれる、厚み5μmの応力発光膜を有していた。試験用シート90の基材層92は、瞬間接着剤(株式会社共和電業製CC-33A)で、サンプル1に接着された。これにより、試験用シート90は、サンプル1の一面に貼付された。
【0064】
線L14~L16は、サンプル1において試験用シート90が貼付された面とは反対の面に直接形成された、応力発光層について計測された。線L14~L16は、同一の応力発光層について3回行われた計測の結果を表す。
【0065】
比較例である応力発光層は、スクリーン印刷により形成された。応力発光層の厚みは5μmであった。
【0066】
線L11~L13および線L14~L16のそれぞれは、サンプル1に対して、5mm/minで、最大1.6kNまで引張強度を上昇させたときの結果である。サンプル1は、SUS304の試験片(JIS Z2241 金属材料引張試験方法 13B号試験片、厚み0.5mm)であった。
【0067】
線L13で示される計測結果は、最大150ユニット程度の光量を含む。また、線L11,L12のそれぞれで示される計測結果も、線L13と同程度の最大光量を含む。
【0068】
一方、線L16で示される計測結果は、最大20ユニット程度の光量を含む。また、線L14,L15のそれぞれで示される計測結果も、線L16と同程度の最大光量を含む。
【0069】
すなわち、線L11~L13で示される計測結果は、線L14~L16で示される計測結果に対して、7倍程度の最大光量を有すると言える。したがって、線L11~L13で示された本実施の形態に従った応力発光層は、線L14~線16で示された比較例の応力発光層よりも、発光の応答性が高いと言える。
【0070】
(2)図4
図4では、線L21,L22のそれぞれは、本実施の形態に従った試験用シート90の光量の計測結果を表す。図4において、線L24は、比較例を表す。図3の計測結果に対して、図4の計測結果は、サンプル1としてA1050の試験片(JIS Z2241 金属材料引張試験方法 13B号試験片、厚み1.0mm)が利用されたこと、および、最大引張強度が1.4kNであったこと以外は、同じ条件で取得された。
【0071】
線L21で示される計測結果は、最大110ユニット程度の光量を含む。また、線L22で示される計測結果も、線L21と同程度の最大光量を含む。
【0072】
一方、線L24で示される計測結果は、最大80ユニット程度の光量を含む。
すなわち、線L21,L22で示される計測結果は、線L24で示される計測結果に対して、1.5倍程度の最大光量を有すると言える。したがって、線L21,22で示された本実施の形態に従った応力発光層は、線L24で示された比較例の応力発光層よりも、発光の応答性が高いと言える。
【0073】
(3)図5
図5では、線L31~L33のそれぞれは、本実施の形態に従った試験用シート90の光量の計測結果を表す。図5において、線L34は、比較例を表す。図3の計測結果に対して、図5の計測結果は、サンプル1としてA6061の試験片(JIS Z2241 金属材料引張試験方法 13B号試験片、厚み1.0mm)が利用されたこと、および、最大引張強度の値以外は、同じ条件で取得された。なお、図5の例では、線L31~L33については、最大1.6kNの引張強度が印加された。線L34については、最大3.5kNの引張強度が印加された。
【0074】
線L33で示される計測結果は、最大350ユニット程度の光量を含む。また、線L31,32のそれぞれで示される計測結果も、線L33と同程度の最大光量を含む。
【0075】
一方、線L34で示される計測結果は、最大200ユニット程度の光量を含む。
すなわち、線L31~L33で示される計測結果は、線L34で示される計測結果に対して、1.75倍程度の最大光量を有すると言える。したがって、線L31~33で示された本実施の形態に従った応力発光層は、線L34で示された比較例の応力発光層よりも、発光の応答性が高いと言える。
【0076】
(4)図6
図6では、線L31~L33のそれぞれは、本実施の形態に従った試験用シート90の光量の計測結果を表す。図6において、線L34は、比較例を表す。図3の計測結果に対して、図6の計測結果は、サンプル1としてSUS430の試験片(JIS Z2241 金属材料引張試験方法 13B号試験片、厚み0.5mm)が利用されたこと、および、最大引張強度の値以外は、同じ条件で取得された。なお、図6の例では、線L41~L43については、最大1.6kNの引張強度が印加された。線L34については、最大1.65kNの引張強度が印加された。
【0077】
線L43で示される計測結果は、最大140ユニット程度の光量を含む。また、線L42で示される計測結果も、線L43と同程度の最大光量を含む。線L41で示される計測結果は、線L42,L43よりも大きい最大光量(190ユニット程度)を有する。
【0078】
一方、線L44で示される計測結果は、最大40ユニット程度の光量を含む。
すなわち、線L42,43で示される計測結果は、線L44で示される計測結果に対して、3.5倍程度の最大光量を有すると言える。また、線L41で示される計測結果は、線L44で示される計測結果に対して、4.75倍程度の最大光量を有すると言える。したがって、線L41~43で示された本実施の形態に従った応力発光層は、線L44で示された比較例の応力発光層よりも、発光の応答性が高いと言える。
【0079】
(5)図3図6のまとめ
図3図6を参照して説明されたように、本実施の形態に従った試験用シート90は、比較例として示されたサンプル1に直接応力発光層を形成する場合よりも、発光の応答性が高いと言える。なお、本実施の形態の試験用シート90が比較例に対して高い応答性を有するのは、図3図6を参照して説明された種類のサンプルに限定されない。
【0080】
<計測処理>
(1)処理の流れ
図7は、計測装置100において、サンプル1の応力またはひずみの計測のために実行される処理(計測工程)のフローチャートである。図7に示すように、計測工程(S70)は、サンプルをセットする工程(S71)と、励起光を照射する工程(S72)と、荷重を印加する工程(S73)と、応力発光を撮像する工程(S74)と、発光強度を特定する工程(S75)と、結果を出力する工程(S76)とを主に含む。
【0081】
まず、サンプルをセットする工程(S71)が実施される。この工程(S71)では、サンプル1がホルダ40にセットされる。サンプル1は、試験用シート90が貼付された面が光源50およびカメラ60に対向するように、セットされる。
【0082】
次に、励起光を照射する工程(S72)が実施される。この工程(S72)では、コントローラ70は、サンプル1に貼付された試験用シート90に対して、光源50から励起光を照射する。これにより、試験用シート90の応力発光層91における応力発光材料が、励起状態に移行する。
【0083】
ユーザは、S71において、サンプル1をセットし、所与のスイッチを操作してもよい。コントローラ70は、上記所与のスイッチを操作されたことに応じて、S72を実行してもよい。
【0084】
次に、荷重を印加する工程(S73)が実施される。この工程(S73)では、コントローラ70は、第1ドライバ45が有するアクチュエータ46を駆動してホルダ40の移動壁41を移動させて、サンプル1に引張荷重を印加する。
【0085】
次に、応力発光を撮像する工程(S74)が実施される。この工程(S74)では、コントローラ70は、カメラ60に、サンプル1上の試験用シート90を撮像させる。
【0086】
工程(S74)では、コントローラ70は、カメラ60のフォーカス位置がサンプル1上の試験用シート90の少なくとも1点に維持されるように、第1ドライバ45および第2ドライバ62の少なくとも一方を制御してもよい。このような制御の一態様として、コントローラ70は、カメラ60のフォーカス位置を試験用シート90の少なくとも1点に維持するように、第2ドライバ62を制御してもよい。具体的には、第2ドライバ62は、コントローラ70から受ける指令に従って、サンプル1の所定領域の移動に応じて、カメラ60を移動させることにより、カメラ60のフォーカス位置を試験用シート90の少なくとも1点に維持するように構成されていてもよい。
【0087】
次に、発光強度を特定する工程(S75)が実施される。この工程(S75)では、コントローラ70は、カメラ60の撮像による画像データに公知の画像処理を施すことにより、サンプル1の試験用シート90における発光強度の分布を特定する。一例では、試験用シート90の各部分において、引張荷重の印加において計測された最大光量の分布が特定される。
【0088】
次に、結果を出力する工程(S76)が実施される。この工程(S76)では、コントローラ70は、ステップS75において特定された発光強度の分布を、計測結果として、他の機器に向けて出力する。一実現例では、コントローラ70は、当該分布をディスプレイ71に向けて出力する。これにより、ユーザは、ディスプレイ71に表示される発光強度の分布を視認し得る。
【0089】
(2)複数箇所についての計測
図8は、計測においてサンプルの複数箇所に試験用シートが貼付される場面を模式的に示す図である。図8の例では、サンプル1Aは、その表面において3次元構造を有する。図8の例では、サンプル1Aの表面の3箇所のそれぞれに試験用シート(試験用シート90X,90Y,90Z)が貼付されている。
【0090】
計測装置100は、試験用シート90X,90Y,90Zのそれぞれに対し、励起光を照射し、撮像し、発光強度の分布を出力することができる。
【0091】
図9は、図8の3枚の試験用シート90X,90Y,90Zを準備する工程の一例を示す図である。図9では、1枚のシート90Aから3枚の試験用シート90X,90Y,90Zが切り出されている。すなわち、図9の例では、図8において単一のサンプル1Aの複数の箇所のそれぞれの貼付される複数の試験用シート90X,90Y,90Zとして、単一のシート90Aから切り出されたものが利用される。単一のシートから切り出された複数の試験用シート90X,90Y,90Zでは、それらの光学的特性が均一化されている可能性が高い。したがって、図9の例では、単一のサンプル1Aの複数箇所のそれぞれについての計測が、光学的特性が均一化された複数の試験用シート90X,90Y,90Zを利用して実施されることになる。
【0092】
なお、サンプル1Aにおいて試験用シート90X,90Y,90Zを貼付する位置を予測するために、FEM(有限要素法)等の手法が利用されてもよい。
【0093】
図10は、FEMによる応力解析の結果の一例を示す図である。図10では、左側に、サンプル1が示され、領域AR10として、サンプル1の一部が示されている。図10では、右側に、画像AR20として、領域AR10に対するFEMによる応力解析の結果が示されている。なお、領域AR10には穴1Xが形成されている。画像AR20は、穴1Xに対応する円AR200を含む。
【0094】
画像AR20は、領域AR10のそれぞれの部分に対して生じることが予測される応力の大きさを、ハッチングの種類によって示す。図10の例では、画像AR20は、4つの領域AR211~214と2つの領域AR221とでは、互いに異なる種類のハッチングを含み、これにより、4つの領域AR211~214と2つの領域AR221とでは、互いに異なる大きさの応力が生じることが予測されることを示されている。
【0095】
ユーザは、あるサンプルについて計測装置100を利用して応力またはひずみに関する計測を実施しようとする前に、当該サンプルについて、FEM解析を実施してもよい。そして、ユーザは、当該FEM解析を利用して、当該サンプルのどの場所を計測対象とするかを、すなわち、当該サンプルのどの場所に試験用シートを貼付するかを、決定してもよい。
【0096】
一実現例では、ユーザは、大きい応力が生じると予測された位置に、試験用シートを貼付して計測を実施してもよい。他の実現例では、ユーザは、生じると予測された応力の大きさが互いに同じ(または近い)とされた複数の場所のそれぞれに試験用シートを貼付してもよい。
【0097】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0098】
(第1項) 一態様に係る試験用シートは、応力またはひずみの計測において荷重が印加される対象物に貼付される試験用シートであって、高分子材料を含む基材層と、基材層上に形成された、応力発光材料を含む応力発光層と、を備え、基材層は、応力発光層より厚い、試験用シートであってもよい。
【0099】
第1項に記載の試験用シートによれば、基材層が応力発光層より厚いことにより、応力発光層の応力に対する発光の応答性が高められる。
【0100】
(第2項) 一態様に係る試験用シートは、応力またはひずみの計測において荷重が印加される対象物に貼付される試験用シートであって、帯電防止層と、帯電防止層上に形成された、高分子材料を含む基材層と、基材層上に形成された、応力発光材料を含む応力発光層と、を備える、試験用シートであってもよい。
【0101】
第2項に記載の試験用シートによれば、基材層と対象物との間に帯電防止層が位置することにより、応力発光層の応力に対する発光の応答性が高められる。
【0102】
(第3項) 一態様に係る試験用シートは、応力またはひずみの計測において荷重が印加される対象物に貼付される試験用シートであって、試験用シートを対象物に接着させる粘着層と、粘着層上に形成された、高分子材料を含む基材層と、基材層上に形成された、応力発光材料を含む応力発光層と、を備える、試験用シートであってもよい。
【0103】
第3項に記載の試験用シートによれば、試験用シートを対象物に貼付する際に、別途接着剤を準備する必要がなくなる。
【0104】
(第4項) 第3項に記載の試験用シートにおいて、粘着層と基材層との間に形成された、帯電防止層をさらに備えてもよい。
【0105】
第4項に記載の試験用シートによれば、基材層と対象物との間に帯電防止層が位置することにより、応力発光層の応力に対する発光の応答性が高められる。
【0106】
(第5項) 第3項または第4項に記載の試験用シートにおいて、粘着層は、再剥離性粘着剤によって構成されてもよい。
【0107】
第5項に記載の試験用シートによれば、試験用シートは、跡を残すことなく、対象物から剥がされ得る。
【0108】
(第6項) 第1項~第5項のいずれか1項に記載の試験用シートにおいて、応力発光層は、10μm以下の厚みを有していてもよい。
【0109】
第6項に記載の試験用シートによれば、応力発光層の発光がより確実に対象物における応力またはひずみを反映する。
【0110】
(第7項) 一態様に係る計測方法は、対象物における応力またはひずみを計測する方法であって、対象物に貼付された1以上の試験用シートに励起光を照射するステップを備え、1以上の試験用シートのそれぞれは、高分子材料を含む基材層と、基材層上に形成された、応力発光材料を有する応力発光層と、を含み、励起光を照射された1以上の試験用シートのそれぞれの撮像画像を取得するステップと、1以上の試験用シートのそれぞれの撮像画像から、1以上の試験用シートについての発光強度を特定するステップと、を備える計測方法であってもよい。
【0111】
第7項に記載の計測方法によれば、応力に対する発光の応答性が高められた応力発光層を有する試験用シートが利用され、これにより、対象物における応力がより正確に計測され得る。
【0112】
(第8項) 第7項に記載の計測方法において、基材層は、応力発光層より厚くてもよい。
【0113】
第8項に記載の計測方法によれば、基材層が応力発光層より厚いことにより、応力発光層の応力に対する発光の応答性が高められる。
【0114】
(第9項) 第7項または第8項に記載の計測方法において、1以上の試験用シートのそれぞれは、基材層に対して、応力発光層を形成された側とは反対側に配置された帯電防止層をさらに含んでいてもよい。
【0115】
第9項に記載の計測方法によれば、基材層と対象物との間に帯電防止層が位置することにより、応力発光層の応力に対する発光の応答性が高められる。
【0116】
(第10項) 第7項~第9項のいずれか1項に記載の計測方法において、1以上の試験用シートのそれぞれは、基材層に対して、応力発光層を形成された側とは反対側に配置された、粘着層をさらに備えていてもよい。
【0117】
第10項に記載の計測方法によれば、試験用シートを対象物に貼付する際に、別途接着剤を準備する必要がなくなる。
【0118】
(第11項) 第10項に記載の計測方法において、粘着層は、再剥離性粘着剤によって構成されてもよい。
【0119】
第11項に記載の計測方法によれば、試験用シートは、跡を残すことなく、対象物から剥がされ得る。
【0120】
(第12項) 第7項~第11項のいずれか1項に記載の計測方法において、応力発光層は、10μm以下の厚みを有していてもよい。
【0121】
第12項に記載の計測方法によれば、応力発光層の発光がより確実に対象物における応力またはひずみを反映する。
【0122】
(第13項) 第7項~第12項のいずれか1項に記載の計測方法において、1以上の試験用シートは、同一のシートから分離された複数の試験用シートを含んでいてもよく、複数の試験用シートは、対象物の複数の場所のそれぞれに貼付されてもよい。
【0123】
第13項に記載の計測方法によれば、対象物の複数の場所の応力またはひずみが、同一のシートから分離されることによって均一した光学特性を有する複数の試験用シートを利用して計測され得る。
【0124】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態中の各技術は、単独でも、また、必要に応じて実施の形態中の他の技術と可能な限り組み合わされても、実施され得ることが意図される。
【符号の説明】
【0125】
1,1A サンプル、1X 穴、1c 第1の端部、1d 第2の端部、40 ホルダ、41 移動壁、42 固定壁、43,44 接続部材、46 アクチュエータ、50 光源、60 カメラ、90,90X,90Y,90Z 試験用シート、90A シート、91 応力発光層、92 基材層、93 帯電防止層、94 粘着層、100 計測装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10