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特許7420338シミュレーション方法、プログラム、および、シミュレーション装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】シミュレーション方法、プログラム、および、シミュレーション装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/38 20180101AFI20240116BHJP
   H04W 16/18 20090101ALI20240116BHJP
   H04W 24/02 20090101ALI20240116BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20240116BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H04W4/38
H04W16/18
H04W24/02
H04W84/18
H04M11/00 301
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019156571
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021034996
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519314478
【氏名又は名称】株式会社Jij
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】若原 達朗
(72)【発明者】
【氏名】瑞慶覧 長空
(72)【発明者】
【氏名】山城 悠
【審査官】伊藤 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106452920(CN,A)
【文献】特許第6487583(JP,B1)
【文献】特開2013-141132(JP,A)
【文献】特開2016-144087(JP,A)
【文献】HARMATOS, J. et al.,Planning of Tree-Topology UMTS Terrestrial Access Networks,11th IEEE International Symposium on Personal Indoor and Mobile Radio Communications. PIMRC 2000. Proceedings,2000年09月18日,pp.353-357,Internet<URL:https://ieeexplore.ieee.org/abstract/document/881447>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
H04M 11/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広域通信と多段中継無線の2段階で構成された通信システムについて、広域端末の最適な配置をシミュレーションするシミュレーション方法であって、
多段中継無線機を備える通信機能付き計測器は、所定の地域内に複数設置され、他の通信機能付き計測器を経由して計測値をリレー伝送し、
前記広域端末は、複数の前記通信機能付き計測器のうちの1つに接続し、前記広域通信に使用されるものであり、
前記通信機能付き計測器の位置情報と、前記通信機能付き計測器が他の通信機能付き計測器に接続するための情報を示す接続情報と、に基づいて、通信機能付き計測器ごとに、自装置からNホップ(Nは1以上の整数)で接続可能な通信機能付き計測器の数を示す次数を取得し、前記次数に基づいて前記広域端末の設置場所となる通信機能付き計測器を選択し、前記広域端末の配置パターンを暫定的に決定する暫定ステップと、
前記暫定ステップにて暫定的に決定された前記配置パターンにおける前記広域端末の設置場所を変えずに、前記広域端末の数を減らして、前記広域端末の配置を最適化する最適化ステップと、を行い、
さらに、前記暫定ステップと前記最適化ステップとを繰り返す繰り返しステップを行い、
前記繰り返しステップにて繰り返す各暫定ステップでは、先行の暫定ステップと異なる前記通信機能付き計測器の組み合わせで配置パターンを暫定的に決定し、
さらにまた、前記最適化ステップ及び前記繰り返しステップにより実行された前記最適化ステップにより最適化された前記広域端末の設置場所の中から、前記広域端末の設置台数が最小となる広域端末の設置場所を抽出し、前記所定の地域内における最適な広域端末の設置場所として決定する決定ステップを行うこと、
を特徴とするシミュレーション方法。
【請求項2】
請求項1に記載するシミュレーション方法において、
前記暫定ステップは、貪欲法を用いたアルゴリズムで、前記広域端末の設置台数を最小とする最適化問題を解くことにより、前記広域端末の設置場所を暫定的に決定し、
前記最適化ステップは、前記暫定ステップにて暫定的に決定した前記広域端末の設置場所をアニーリングの手法を用いて変更し、前記広域端末の設置場所の組合せを最適化すること、
を特徴とするシミュレーション方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載するシミュレーション方法において、
前記通信機能付き計測器は、スマートメータであること、
を特徴とするシミュレーション方法。
【請求項4】
広域通信と多段中継無線の2段階で構成された通信システムについて、広域端末の最適な配置をシミュレーションする処理を、コンピュータに行わせるプログラムであって、
多段中継無線機を備える通信機能付き計測器は、所定の地域内に複数設置され、他の通信機能付き計測器を経由して計測値をリレー伝送し、
前記広域端末は、複数の前記通信機能付き計測器のうちの1つに接続し、前記広域通信に使用されるものであり、
前記コンピュータに、
前記通信機能付き計測器の位置情報と、前記通信機能付き計測器が他の通信機能付き計測器に接続するための情報を示す接続情報と、に基づいて、通信機能付き計測器ごとに、自装置からNホップ(Nは1以上の整数)で接続可能な通信機能付き計測器の数を示す次数を取得し、前記次数に基づいて前記広域端末の設置場所となる通信機能付き計測器を選択し、前記複数の広域端末の配置パターンを暫定的に決定する暫定処理と、
前記暫定処理にて暫定的に決定された前記配置パターンにおける前記広域端末の設置場所を変えずに、前記広域端末の数を減らして、前記広域端末の配置を最適化する最適化処理と、を実行させ、
さらに、前記コンピュータに、
記暫定処理と前記最適化処理とを繰り返す繰り返し処理を実行させ、
前記繰り返し処理にて繰り返す各暫定処理では、先行の暫定処理と異なる前記通信機能付き計測器の組み合わせで配置パターンを暫定的に決定し、
さらにまた、前記コンピュータに、
前記最適化処理及び前記繰り返し処理により実行された前記最適化処理により最適化された前記広域端末の設置場所の中から、前記広域端末の設置台数が最小となる広域端末の設置場所を抽出し、前記所定の地域内における最適な広域端末の設置場所として決定する決定処理を実行させること、
を特徴とするプログラム。
【請求項5】
広域通信と多段中継無線の2段階で構成された通信システムについて、広域端末の最適な配置をシミュレーションするシミュレーション装置であって
多段中継無線機を備える通信機能付き計測器は、所定の地域内に複数設置され、他の通信機能付き計測器を経由して計測値をリレー伝送し、
前記広域端末は、複数の前記通信機能付き計測器のうちの1つに接続し、前記広域通信に使用されるものであり、
前記通信機能付き計測器の位置情報と、前記通信機能付き計測器が他の通信機能付き計測器に接続するための情報を示す接続情報と、に基づいて、通信機能付き計測器ごとに、自装置からNホップ(Nは1以上の整数)で接続可能な通信機能付き計測器の数を示す次数を取得し、前記次数に基づいて前記広域端末の設置場所となる通信機能付き計測器を選択し、前記広域端末の配置パターンを暫定的に決定する暫定処理と、
前記暫定処理にて暫定的に決定された前記配置パターンにおける前記広域端末の設置場所を変えずに、前記広域端末の数を減らして、前記広域端末の配置を最適化する
最適化処理と、を実行し、
さらに、前記暫定処理と前記最適化処理とを繰り返す繰り返し処理を実行し、
前記繰り返し処理にて繰り返す各暫定処理では、先行の暫定処理と異なる前記通信機能付き計測器の組み合わせで配置パターンを暫定的に決定し、
さらにまた、前記最適化処理及び前記繰り返し処理により実行された前記最適化処理により最適化された前記広域端末の設置場所の中から、前記広域端末の設置台数が最小となる広域端末の設置場所を抽出し、前記所定の地域内における最適な広域端末の設置場所として決定する決定処理を実行すること、
を特徴とするシミュレーション装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信機能付き計測器に設置される多段中継無線機により構成される多段中継無線ネットワークと、多段中継無線ネットワークの1つの多段中継無線機につながる広域端末が設置される広域通信部と、を有する通信システムにおける広域端末の設置場所のシミュレーション方法、広域端末の設置場所のシミュレーションをシミュレーション装置に実行させるためのプログラム、および、シミュレーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、広域通信と多段中継無線の2段階で構成されるネットワークシステムにて、確実かつ安価にシステムを構築することを目的に、広域通信に使用される広域端末の位置をシミュレータ上で指定するネットワーク構成やそのコストを提示するものは存在する。また、ホップ数が小さくなるような親機設置場所の探索方法も存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、広域通信と自営マルチホップ無線を組み合わせたシステムにおいて、ネットワーク構築を支援するシミュレータに関する内容が開示されている。また、特許文献1には、広域端末の設置場所を自動選択するためのロジックが開示されている。
【0004】
例えば、特許文献2には、ガスメータの数が多く最適化問題を解くことが出来ない場合、最適化問題が解けるレベルに問題規模を縮小することができるシミュレーション方法に関する内容が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6186141号公報
【文献】特許第6487583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には次のような問題があった。すなわち、広域通信と多段中継無線の2段階で構成されるネットワークシステムにおいて、多段中継無線機の台数やホップ数の制約から、所定の地域内における全てのノード(通信機能付き計測器)をカバーするために広域端末を複数設置しなければならない場合において、最適な広域端末の設置場所を計算するための工夫については、特許文献1に開示されていない。具体的には、特許文献1に記載される発明は、全体端末のうち、最も評価値が高いものから順次広域端末として設定していくという手順に留まり、広域端末の数を抑制できる最適な広域端末の設置場所を演算するものではない。
【0007】
特許文献2は、広域端末の設置場所を計算するときに、所定の地域内を複数のエリアネットワークで分割することにより、問題規模を縮小する技術を開示する。しかし、特許文献2の手法は、多段中継無線機の技術的な制約を満たすように、最適な広域端末の設置場所を最適化する上で、問題規模が十分に縮小されておらず、改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、多段中継無線機の技術制約を満たしながら、最適な広域端末の設置場所を演算できる広域端末の設置場所のシミュレーション方法、プログラム、および、シミュレーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、次のような構成を有している。(1)通信機能付き計測器に設置される多段中継無線機により構成される多段中継無線ネットワークと、前記多段中継無線ネットワークの1つの前記多段中継無線機に接続される広域端末が設置される広域通信部と、を備える通信システムにおける広域端末の設置場所のシミュレーション方法において、所定の地域内における最適な前記広域端末の設置場所を計算するときに、前記通信機能付き計測器に設置される前記多段中継無線機を示すノードの位置情報と、前記ノードが他のノードに接続するための情報を示す接続情報と、に基づいて、前記所定の地域に設置される前記ノードの中から、前記広域端末の設置場所を暫定的に決定する暫定ステップと、前記暫定ステップにて暫定的に決定された前記広域端末の設置場所を最適化する最適化ステップと、前記暫定ステップにて暫定的に決定された前記広域端末の設置場所と異なるパターンで、前記暫定ステップと前記最適化ステップとを繰り返し実行する繰り返しステップと、前記最適化ステップ及び前記繰り返しステップにより実行された前記最適化ステップにより最適化された前記広域端末の設置場所の中から、前記広域端末の設置台数が最小となる広域端末の設置場所を抽出し、前記所定の地域内における最適な広域端末の設置場所として決定する決定ステップと、を行うこと、を特徴とする。
【0010】
この態様によれば、ノードの位置情報と接続情報に基づいて、所定の地域内に設置される全てのノードの中から、広域端末の設置場所となるノードを暫定的に決定し、暫定的に決定された広域端末の設置場所を最適化する。最適な広域端末の設置場所を計算するときの計算対象は、暫定ステップにおいて暫定的に決定されたノードに絞られる。そのため、例えば、多段中継無線機のホップ数の制約に基づいて所定の地域内をホップ数に基づいてエリアネットワークで分割する場合より、問題規模が小さくなり、多段中継無線機の技術的な制約を満たすように、最適な広域端末の設置場所を求めることが可能になる。もっとも、最適化ステップにて最適化された広域端末の設置場所は、暫定ステップで暫定的に決定された広域端末の設置場所に拘束される。そのため、暫定ステップと最適化ステップを各1回行い、1パターンについてのみ広域端末の設置場所を最適化するのでは、広域端末の設置台数を十分に減らせていない可能性がある。そこで、暫定ステップにおける暫定的な広域端末の設置場所と異なるパターンで、暫定ステップと最適化ステップとを繰り返し行い、パターン毎に広域端末の設置場所を最適化する。このようにしてパターン毎に最適化された広域端末の設置場所の中から、広域端末の設置台数が最小となる広域端末の設置場所を抽出し、所定の地域内における最適な広域端末の設置場所として決定する。これにより、ノード(多段中継無線機)の技術的な制約を満たしながら、少ない台数で所定の地域に設置されるノード(多段中継無線機)を全てカバーできるように、最適な広域端末の設置場所を演算することができる。
【0011】
(2)(1)に記載する広域端末の設置場所のシミュレーション方法において、前記暫定ステップは、貪欲法を用いたアルゴリズムで、前記広域端末の設置台数を最小とする最適化問題を解くことにより、前記広域端末の設置場所を暫定的に決定し、前記最適化ステップは、前記暫定ステップにて暫定的に決定した前記広域端末の設置場所をアニーリングの手法を用いて変更し、前記広域端末の設置場所となるノードの組合せを最適化すること、が好ましい。
【0012】
この態様によれば、貪欲法とアニーリングの手法を用いて、最適な広域端末の設置場所を演算することにより、例えば、所定の地域に設置されるノードの数が1万台以上と多い場合でも、シミュレーションを高速で行うことができる。
【0013】
(3)(1)又は(2)に記載する広域端末の設置場所のシミュレーション方法において、「E_cost」が前記広域端末の数を示し、「E_pe,cover」が前記所定の地域内の全てのノードはどこかの広域端末とつながっているという条件に対応した式を示し、「E_pe,capa」が一つの広域端末に接続するノードの数の制限条件に対応した式を示し、「E_pe,path」があるノードが前記広域端末へ情報を中継して送るとき、当該送信経路途中の前記通信機能付き計測器も同じ広域端末へ接続されている条件に対応した式を示すとするとき、全体の値「E」を求める数理モデルは、
【数1】
…(数式1)
であり、
前記最適化ステップは、暫定的に決定された前記広域端末の設置場所以外に前記広域端末を設置しないとした上で、前記数理モデルの第1項「E_cost」の値が最小となるように、暫定的に決定された前記広域端末の設置場所を最適化すること、が好ましい。
【0014】
上記態様によれば、所定の地域内のノード(多段中継無線機)を全てカバーするカバー制約を満たさない場合、又は、1つの広域端末に接続するノードの数を制限する接続容量制約を満たさない場合、又は、通信機能付き計測器が計測データをリレー伝送する場合に、ノードと通信機能付き計測器とが同じ広域端末31に接続される連結性制約を満たさない場合、数式1に示す数理モデルの第2項、第3項、第4項の値が高くなり、数理モデルの解が大きくなる。よって、各項の値を小さくするように、暫定的に決定した広域端末の設置場所を変更することにより、広域端末の設置台数を減らしつつ、広域端末の設置場所を最適化することができる。
【0015】
(4)(1)乃至(3)の何れか1つに記載する広域端末の設置場所のシミュレーション方法において、前記通信機能付き計測器は、スマートメータであること、が好ましい。
【0016】
上記態様によれば、多段中継無線機の技術的な制約を満たしながら、少ない台数の広域無線端末で所定の地域内にあるスマートメータをカバーすることができる。
【0017】
(5)通信機能付き計測器に設置される多段中継無線機により構成される多段中継無線ネットワークと、前記多段中継無線ネットワークの1つの前記多段中継無線機に接続される広域端末が設置される広域通信部と、を備える通信システムにおける広域端末の設置場所のシミュレーションを、コンピュータに行わせるプログラムにおいて、所定の地域内における最適な前記広域端末の設置場所を計算するときに、前記コンピュータに、前記通信機能付き計測器に設置される前記多段中継無線機を示すノードの位置情報と、前記ノードが他のノードに接続するための情報を示す接続情報と、に基づいて、前記所定の地域に設置される前記ノードの中から、前記広域端末の設置場所を暫定的に決定する暫定処理と、前記暫定処理にて暫定的に決定された前記広域端末の設置場所を最適化する最適化ステップと、前記暫定処理にて暫定的に決定された前記広域端末の設置場所と異なるパターンで、前記暫定処理と前記最適化処理とを繰り返し実行する繰り返し処理と、前記最適化処理及び前記繰り返し処理により実行された前記最適化処理により最適化された前記広域端末の設置場所の中から、前記広域端末の設置台数が最小となる広域端末の設置場所を抽出し、前記所定の地域内における最適な広域端末の設置場所として決定する決定処理と、を実行させること、を特徴とする。
【0018】
(6)通信機能付き計測器に設置される多段中継無線機により構成される多段中継無線ネットワークと、前記多段中継無線ネットワークの1つの前記多段中継無線機に接続される広域端末が設置される広域通信部と、を備える通信システムにおける前記広域端末の設置場所のシミュレーションを行うシミュレーション装置において、所定の地域内における最適な前記広域端末の設置場所を計算するときに、前記通信機能付き計測器に設置される前記多段中継無線機を示すノードの位置情報と、前記ノードが他のノードに接続するための情報を示す接続情報と、に基づいて、前記所定の地域に設置される前記ノードの中から、前記広域端末の設置場所を暫定的に決定する暫定処理と、前記暫定処理にて暫定的に決定された前記広域端末の設置場所を最適化する最適化処理と、前記暫定処理にて暫定的に決定された前記広域端末の設置場所と異なるパターンで、前記暫定処理と前記最適化処理とを繰り返し実行する繰り返し処理と、前記最適化処理及び前記繰り返し処理により実行された前記最適化処理により最適化された前記広域端末の設置場所の中から、前記広域端末の設置台数が最小となる広域端末の設置場所を抽出し、前記所定の地域内における最適な広域端末の設置場所として決定する決定処理と、を実行すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、多段中継無線機の技術制約を満たしながら、最適な広域端末の設置場所を演算できる広域端末の設置場所のシミュレーション方法、プログラム、および、シミュレーション装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態のスマートメータ用通信システムの概要図である。
図2】多段中継無線機の電気的構成の一例を示す説明図である。
図3】広域端末の電気的構成の一例を示す説明図である。
図4】シミュレーション装置の電気的構成の一例を説明する説明図である。
図5】多段中継無線機の配置例を示す図である。
図6】データテーブルの例である。
図7】シミュレーション処理の制御手順の一例を示すフローチャートである。
図8】暫定配置算出方法を説明する説明図である。
図9】暫定配置算出方法を説明する説明図である。
図10】暫定配置算出方法を説明する説明図である。
図11】暫定配置算出方法を説明する説明図である。
図12】暫定配置算出方法を説明する説明図である。
図13】暫定配置の最適化方法を説明する説明図である。
図14】異なるパターンでの暫定配置算出方法を説明する説明図である。
図15】異なるパターンでの暫定配置算出方法を説明する説明図である。
図16】異なるパターンでの暫定配置算出方法を説明する説明図である。
図17】異なるパターンでの暫定配置算出方法を説明する説明図である。
図18】数理モデルの作成を説明する説明図である。
図19】数理モデルの作成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の広域端末の設置場所のシミュレーション方法、プログラム、及び、シミュレーション装置の実施形態について説明する。本実施形態では、スマートメータの計測値を通信するスマートメータ用通信システムにおいて、広域通信を行うために広域端末が使用される。
【0022】
<スマートメータ用通信システムの概要について>
そこで、まず、スマートメータ用通信システム1の概要について説明する。図1は、本実施形態のスマートメータ用通信システム1の概要図である。スマートメータ用通信システム1は、多段中継無線ネットワーク11と、広域通信部12で構成される。スマートメータ用通信システム1は「通信システム」の一例である。
【0023】
多段中継無線ネットワーク11においては、多段中継無線機21が各需要家22のスマートメータ23に設置されている。このようにして、多段中継無線ネットワーク11は、スマートメータ23に設置される複数の多段中継無線機21により構成されている。多段中継無線機21は、スマートメータ23の計測値のデータを、複数の多段中継無線機21を経由しながらリレー伝送する近距離通信型の無線機である。多段中継無線機21を用いた近距離通信には、通信費用が発生しない。多段中継無線機21については後述する。
【0024】
需要家22は、例えばガスの需要を受ける家庭である。また、スマートメータ23は、ガスメータ内に通信機能を持たせたガス量計である。スマートメータ23は、「通信機能付き計測器」の一例である。
【0025】
広域通信部12は、広域端末31と中継所32とセンター33により構成されている。広域端末31は、広域通信ができる端末であって、多段中継無線ネットワーク11内の1つの多段中継無線機21につながっている。この広域端末31を用いた広域通信は、携帯電話のように通信費用が発生する。広域端末31については後述する。中継所32は、広域端末31とセンター33との間の通信を中継するものである。センター33は、広域端末31から中継所32を介して通信により送られるスマートメータ23の計測値のデータを受け取る場所である。
【0026】
<多段中継無線機について>
図2は、多段中継無線機21の電気的構成の一例を示す説明図である。多段中継無線機21は、CPU221と小型メモリ222とを含むコントローラ211を備え、そのコントローラ211にスマートメータ通信部212と近距離通信部213が接続されている。
【0027】
スマートメータ通信部212は、スマートメータ23との通信を制御するハードウェアを含む。近距離通信部213は、通信費用が発生しない帯域を利用して他の多段中継無線機21と無線通信を行うハードウェアを含む。例えば、多段中継無線機21は、920MHzの帯域を利用して通信を行う。多段中継無線機21は、近距離通信部213を用いて無線通信を行うことができる距離(通信可能距離)が制限されている。例えば、通信可能距離は半径25m圏内である。
【0028】
小型メモリ222は、各種プログラムやデータを記憶している。例えば、小型メモリ222は、多段中継無線機21を識別する情報であるノードIDや、多段中継無線機21の位置を示す位置情報や、多段中継無線機21が多段中継無線ネットワーク11内の他の多段中継無線機21と通信を行う際のホップ数などを記憶している。また、小型メモリ222は、CPU221がプログラムを実行する際にデータを一時的に記憶する領域としても用いられる。多段中継無線機21は、コストダウンのため、容量が小さい小型メモリ222を使用している。
【0029】
CPU221は、小型メモリ222に記憶されているプログラムを実行し、多段中継無線機21の動作を制御する。例えば、CPU221は、スマートメータ通信部212を用いてスマートメータ23から計測値のデータを取得し、小型メモリ222に記憶する。また、CPU221は、近距離通信部213を用いて他の多段中継無線機21から計測値のデータを受信した場合に、小型メモリ222に記憶した計測値のデータを、受信したデータに付加し、次の多段中継無線機21に転送する。
【0030】
このような多段中継無線機21は、中継段数が多くなるほど、受信データの容量が大きくなる。その一方で、多段中継無線機21は、メモリ容量が小さい小型メモリ222を使用している。よって、多段中継無線機21は中継段数が制限される。例えば、中継段数は最大15段に制約される(以下「中継距離制約」とする)。
【0031】
<広域端末について>
図3は、広域端末31の電気的構成の一例を示す説明図である。広域端末31は、CPU321とメモリ322とを含むコントローラ311を備え、そのコントローラ311に近距離通信部312と遠距離通信部313が接続されている。
【0032】
近距離通信部312は、多段中継無線機21との無線通信を制御するハードウェアを含む。なお、広域端末31は、有線を用いて多段中継無線機21に通信可能に接続されてもよい。遠距離通信部313は、インターネットなどの広域通信網に接続され、通信距離の制約を受けずに通信できる。近距離通信部312を用いた通信には通信費用が発生しないが、遠距離通信部313を用いた通信には通信費用が発生する。
【0033】
メモリ322は、各種プログラムやデータを記憶している。また、メモリ322は、CPU321がプログラムを実行する際にデータを一時的に記憶する領域としても用いられる。メモリ322は、多段中継無線機21の小型メモリ222よりメモリ容量が大きく、値段が高い。
【0034】
CPU321は、メモリ322に記憶されているプログラムを実行し、多段中継無線機21の動作を制御する。例えば、CPU321は、近距離通信部312を用いて、多段中継無線ネットワーク11内の1つの多段中継無線機21に接続し、多段中継無線ネットワーク11を構成する多段中継無線機21から、スマートメータ23によって計測された計測値のデータを受信する。また、CPU321は、その受信した計測値のデータを集約し、遠距離通信部313を用いてセンター33に送信する。
【0035】
広域端末31は、メモリ322の容量に制限がある。そのため、多段中継無線機21は、設置台数が制限される。例えば、設置台数は最大50台に制約される(以下「接続容量制約」とする)。
【0036】
<最適な広域端末の設置場所の計算について>
このようなスマートメータ用通信システム1においては、その背景として、導入コストを抑えるために、広域端末31の設置台数を減らす必要がある。そこで、多段中継無線機21の技術的な制約を満たしながら、少ない台数の広域端末31で所定の地域内における全てのスマートメータ23をカバーするような最適な広域端末31の設置場所の検討が必要になる。
【0037】
このような最適な広域端末31の設置場所は、接続容量制約と中継距離制約を数式でモデル化し、ノードの位置座標データをもとに最適化問題を解くことで求めることが可能である。ここで、「ノード」は、スマートメータ23に設置される無線機を示し、特に本形態では、多段中継無線機21を示す。しかし、この手法では、問題規模が大きいと解くことが困難になる。
【0038】
例えば、所定の地域におけるスマートメータ23の全設置台数が多数(例えば1万件以上)である場合には、ノード数が多い。そのため、ノードの位置座標データをもとに最適化問題を解くことは困難である。そこで、所定の地域内を、多段中継無線機21が1ホップで通信可能な距離でつながる範囲であるエリアネットワークに分割することで、問題規模を小さくする手法が考えられる。
【0039】
しかし、所定の地域における広域端末31の設置場所を決める場合、以下の技術的な制約(1)~(4)がある。
(1)マルチホップ通信を利用して情報を送信する際に中継できる多段中継無線機21の台数(中継段数)の制約。つまり、上述した中継距離制約。
(2)広域端末31が情報を受け取ることのできる多段中継無線機21の台数の制約。つまり、上述した接続容量制約。
(3)ある多段中継無線機21から広域端末31へ情報を中継して送るとき、経由する多段中継無線機21が設置されるスマートメータ23の情報も、同じ広域端末31に送信される制約、つまり、構築されるネットワークは連結グラフとなる制約(以下「連結性制約」とする)。
(4)所定の地域10内の全ての多段中継無線機21がどこかの広域端末31に情報を送ることができなければならない制約(以下「カバー制約」とする)。
【0040】
上述した所定の地域内をエリアネットワークに分割する手法は、上記技術的な制約(1)~(4)を満たすように、最適な広域端末31の設置場所を計算する最適化問題を解くレベルまで、問題規模が十分に縮小されていない。そのため、広域端末31の設置場所を計算する手法には改善の余地がある。そこで、本形態では、広域端末の設置場所を暫定的に決め、暫定的に決めた広域端末31の設置場所以外に広域端末31を設置しないとすることにより、最適化問題の解候補を減らし、問題規模を小さくする手法を提案する。本形態の手法を適用したシミュレーションプログラム122及びシミュレーション装置100について、以下説明する。
【0041】
<シミュレーション装置の電気的構成について>
図4は、シミュレーション装置100の電気的構成の一例を説明する説明図である。シミュレーション装置100は、周知のパーソナルコンピュータであって、CPU111と、ROM112と、RAM113と、不揮発性メモリ114と、を含むコントローラ110を備えている。さらに、シミュレーション装置100は、表示部115と、操作部116と、通信部117と、を備え、これらがコントローラ110に電気的に接続されている。CPU111は、「コンピュータ」の一例である。
【0042】
ROM112には、シミュレーション装置100を起動するための起動プログラム等が記憶されている。RAM113は、各種の処理が実行される際の作業領域として、あるいは、データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。不揮発性メモリ114は、例えば、HDD、フラッシュメモリであり、各種のプログラム、各種のデータ、各種設定などを記憶する領域として利用される。CPU111は、ROM112や不揮発性メモリ114から読み出したプログラムに従って、また、ユーザの操作に基づいて、各種の処理を実行する。
【0043】
表示部115は、情報の表示を行うハードウェアを含む。また、操作部116は、例えば、キーボード、マウスであり、ユーザによる操作を受け付けるハードウェアを含む。シミュレーション装置100は、表示部115と操作部116との組に代えて、入力機能と出力機能との両方を備えるタッチパネルを備えていても良い。通信部117は、センター33に設置されたセンターサーバなどの外部装置との通信を行うハードウェアを含む。
【0044】
不揮発性メモリ114には、シミュレーションプログラム122を含む、各種プログラムが記憶されている。また、不揮発性メモリ114には、データテーブル123を含む、各種データが記憶されている。
【0045】
シミュレーションプログラム122は、所定の地域における最適な広域端末31の設置場所のシミュレーションを実行するプログラムである。シミュレーションプログラム122は「プログラム」の一例である。シミュレーションプログラム122は、例えば、CD-ROMなどの記憶媒体からインストールされてもよいし、シミュレーションプログラム122を提供する提供会社が管理するサーバからダウンロードされてもよい。データテーブル123は、所定の地域における最適な広域端末31の設置場所をシミュレーションする際に使用するデータを記憶している。
【0046】
図5は、多段中継無線機21の配置例を示す図である。図中白丸は多段中継無線機21(ノード)を示す。換言すると、図中白丸は、スマートメータ23の設置場所を示す。なお、図5は、地図を簡略化し、ノード数を少なく記載している。シミュレーション対象となる所定の地域10には、多数の多段中継無線機21が分散して設置されている。例えば、マンションにおいては、多段中継無線機21が、平面だけでなく、高さ方向にも分散して設置されている。
【0047】
図6は、データテーブル123の例である。データテーブル123は、ノードID401と、位置情報402と、接続情報403を関連付けて、1つのレコードとして記憶している。ノードID401は、ノード(多段中継無線機21)を識別する情報である。位置情報402は、スマートメータ23に設置されるノード(多段中継無線機21)の位置を示す情報である。本形態において、位置情報402は、X軸とY軸とZ軸で示される位置座標データである。
【0048】
接続情報403は、ノード(多段中継無線機21)が他のノード(他の多段中継無線機21)に接続するための情報を示す。本形態において、接続情報403は、ホップ数(中継段数)毎に、通信可能な多段中継無線機21のノードIDを記憶している。なお、データテーブル123に記憶されるデータは、例えば、操作部116を用いて入力されてもよいし、スマートメータ23又は多段中継無線機21を管理する管理会社が運営するサーバから通信部117を用いてダウンロードすることにより入力されてもよいし、多段中継無線機21の小型メモリ222から個別に取得してもよい。
【0049】
<シミュレーション処理の制御手順について>
図7は、シミュレーション処理の制御手順の一例を示すフローチャートである。本形態のシミュレーション装置100は、シミュレーションプログラム122を起動させる操作を受け付けると、CPU111がシミュレーションプログラム122を実行し、図7に示すシミュレーション処理を実行する。本形態のシミュレーション処理は、パラメータの数を減らすために、貪欲法によって構成したアルゴリズムで広域端末31の設置場所を一旦解いた後、得られた解のみを後述する数式1に示す数理モデルの最適化変数だとして他変数を固定することで、解候補を減らし、問題規模を小さくする。なお、貪欲法は、ある指標を使ってその指標のみを頼りに、指標が最大もしくは最小となる解から採用していくことによってアルゴリズムを構築する方法である。
【0050】
シミュレーションプログラム122を起動させたCPU111は、まず、広域端末31の設置場所を暫定的に演算する(S101)。すなわち、CPU111は、位置情報402と接続情報403とに基づいて、所定の地域10内に設置されるノード(多段中継無線機21)の中から、広域端末31の設置場所を暫定的に決定する。より具体的には、CPU111は、貪欲法を用いたアルゴリズムで、広域端末31の設置台数を最小とする最適化問題を解くことにより、広域端末31の設置場所を暫定的に決める。S101の処理は「暫定ステップ」「暫定処理」の一例である。
【0051】
S101の処理について、図8図13の説明図を参照して具体的に説明する。なお、シミュレーション処理は、例えば、1万台以上のノード(多段中継無線機21)の中から広域端末31の設置場所を求めるが、ここでは、図8図13に基づいて、広域端末31の設置場所を暫定的に決定するアルゴリズムを概念的に説明する。なお、図中のノードA~Iは、それぞれ、図6に示すデータテーブル123において、ノードID「A~I」を付与されたノード(多段中継無線機21)を示す。図面上、1ホップで通信可能なノードは辺で繋がれ、1ホップで通信できないノードは辺で繋がれていない。また、図10図11のうち、薄い色で記載されている丸や辺はグラフから取り除かれたものを示す。
【0052】
図8に示すように、CPU111は、全てのノードについて、Nホップで接続可能なノードの数(以下「次数」とする)を計算する。図8において、各ノードA~Iの近くに記載する数字は、各ノードA~Iの次数を示している。本形態では、通信の失敗を回避するために、Nポップを1ホップとする。例えば、図6に示すように、ノードAが1ホップで接続可能なノードは、ノードBだけであるので、図8に示すように、ノードAの次数は「1」となる。また例えば、図6に示すように、ノードEが1ホップで接続可能なノードは、ノードBとノードDとノードFとノードGの4個であるので、図8に示すように、ノードEの次数は「4」となる。これと同様にして、ノードB~D、ノードF~Iについても次数をそれぞれ計算する。
【0053】
全てのノードA~Iについて次数を計算したら、CPU111は、次数が最大となるノードに広域端末31を設置するものとする。次数が最大となるノードが複数ある場合には、その中の1台を選択する。選択は、ユーザが操作部116を用いて手動により行ってもよいし、シミュレーションプログラム122のアルゴリズムに基づいて自動で行ってもよい。
【0054】
そして、CPU111は、広域端末31を設置するノードから最短距離で通信できるノードを決める。つまり、広域端末31を設置するノードが1ホップで通信可能なノードを選択する。この選択は、中継距離制約(上述した制約(1)、本形態では最大15段)もしくは接続容量制約(上述した制約(2)、本形態では最大50台)の何れか一方を満たさなくなるまで行う。
【0055】
そして、広域端末31の設置先として選択されたノードと、当該ノードから最短距離で通信できるノード(当該ノードが1ホップで通信可能なノード)として選択されたノードと、それらが繋がっているエッジをグラフから取り除く。
【0056】
例えば、図9に示すように、ノードA~Iのうち、次数の最大値は「4」である。次数が「4」となるノードは、ノードEとノードFである。そこで、ノードE,Fの何れか1つを広域端末31として選択する。ここでは、ノードEが広域端末31として選択されたものとする。図中点線で囲まれているように、選択したノードEと1ホップで接続しているのは、ノードBとノードDとノードFとノードGである。そこで、図10に示すように、ノードA~Iを連結するグラフから、ノードBとノードDとノードEとノードFとノードGとそれらを繋ぐエッジ(辺)を全て取り除く。
【0057】
そして、CPU111は、残ったノードに対して、全てのノードを接続し終えるまで、上記の処理を繰り返し行う。広域端末31の数を減らすために、出来るだけ1つの広域端末31が通信する多段中継無線機21の数を多くするように配置するということにすると、多段中継無線機21が密集しているところに広域端末31を設置するという指標が素直な配置になる。よって、どこに広域端末31を配置するかとして生成されたグラフのうち、次数が大きい順に各ノードに広域端末31を配置する。
【0058】
すなわち、図10に示すように、CPU111は、残った全てのノードA,C,H,Iについて、次数を求める。例えば、図6に示すデータテーブル123では、ノードAが1ホップで接続可能なノードは、ノードBである。しかし、図10に示すように、ノードBは、先の処理において既に取り除かれている。そのため、ノードAが1ホップで接続可能なノードは存在しない。よって、ノードAの次数は「0」となる。これと同様にして、ノードCの次数は「0」となる。また例えば、図6に示すデータテーブル123では、ノードHが1ホップで接続可能なノードは、ノードFとノードGとノードIである。しかし、図10に示すように、ノードFとノードGは、先の処理で既に取り除かれている。そのため、ノードHが1ホップで接続可能なノードは、ノードIのみとなる。そのため、ノードHの次数は「1」となる。なお、ノードIは、1ホップで接続可能なノードがまだ取り除かれていないので、図6に示すデータテーブル123に基づいて次数を「1」と求めることができる。
【0059】
図10に示すように、残ったノードの中で次数が最大となるのは、ノードHとノードIである。そこで、ノードHとノードIの何れか1台を広域端末31として選択する。ここでは、ノードHが広域端末31として選択されたものとする。そこで、図11に示すように、選択されたノードHと、ノードHに接続するノードIと、それらを繋ぐエッジ(辺)を、全て取り除く。
【0060】
すると、図11に示すように、ノードA、Cが残る。残っている全てのノードA,Cは、次数が「0」で同じである。そこで、ノードA,Cをそれぞれ、広域端末として選択する。この場合、上記処理を繰り返してノードA,Cを順次広域端末31として選択してもよいし、1回の処理でそれぞれ広域端末として選択してもよい。
【0061】
S101の処理を行うことにより、CPU111は、図12に示すように、ノードEを広域端末31としてノードBとノードDとノードFとノードGが接続する連結グラフM1と、ノードHを広域端末31としてノードIが接続する連結グラフM2と、ノードAを広域端末31とする連結グラフM3と、ノードCを広域端末31とする連結グラフM4と、が暫定的に作成される。よって、S101の処理が実行されることにより、ノード(多段中継無線機21)の通信可能距離(本形態では半径25m圏内)の制約、制約(1)(中継距離制約、本形態では最大15段)と、制約(2)(接続容量制約、本形態では最大50台)と、制約(4)(カバー制約)を満たすように、広域端末31の設置場所が大雑把に求められる。
【0062】
図7に戻り、CPU111は、S101にて暫定的に決定した広域端末31の設置場所を、最適化する(S102)。S102の処理は「最適化ステップ」「最適化処理」の一例である。S102において、CPU111は、S101にて暫定的に決定した広域端末31の設置場所をアニーリングの手法を用いて変更し、広域端末31の設置場所となるノード(多段中継無線機21)の組合せを最適化する。より具体的には、CPU111は、S101にて暫定的に決定した広域端末31の設置場所以外に広域端末31を設置しないとした上で、シミュレーションプログラム122に記憶されている数式1に示す数理モデルを用いて、暫定的に決定した広域端末31の設置場所を最適化する。
【0063】
【数2】
…(数式1)
【0064】
「E_cost」は、広域端末31の数を示す。「E_pe,cover」は、所定の地域10内のすべてのノード(多段中継無線機21)はどこかの広域端末31とつながっているという条件(制約(4)、カバー制約)に対応した式を示す。「E_pe,capa」は、一つの広域端末31に接続するノード(多段中継無線機21)の数の制限条件(制約(2)、接続容量制約)に対応した式を示す。「E_pe,path」は、あるノード(多段中継無線機21)が広域端末31へ情報を中継して送るとき、その経路途中のスマートメータ23も同じ広域端末31へ接続されている条件(制約(3)、連結性制約)に対応した式を示す。
【0065】
上記数式1に示す数理モデルは、以上の式を全て足し合わせたうえで、全体の値を最小にする変数の組み合わせを求めるものである。実際に最小化したいのは第一項であるが、第二項以降の、条件と対応している式については、条件を破ると値が大きくなるような式の構造になっている。つまり、数式1に示す数理モデルを解くことにより、暫定的に決定された広域端末31の設置場所が、制約(2)(3)(4)を満たすように、広域端末31の設置場所が変更される。従って、S101にて暫定的に決定された広域端末31の設置場所以外に広域端末31を設置しないとした上で、「E_cost」が最小化するような答えを求めると、上述した制約(1)~(4)の全てが満たされたような変数の組み合わせになっている、という構造になる。なお、数理モデルの詳細は、後述する。
【0066】
S102の処理を図で考えると、図13に示すようになる。図13は、暫定配置の最適化方法を説明する説明図である。図13(a)に示すように、次数が最大となる広域端末31について、近くから順にノードを接続していくことは、当該広域端末31から同心円状に多段中継無線機21を選択していくことに対応している。つまり、S101において、全てのノードを取り除くまで処理を続けることは、広域端末31として選択したノードを中心とする同心円状に多段中継無線ネットワークXが構築されることを意味する。
【0067】
同心円状に多段中継無線機21を選択した場合、「取りこぼし」となるノードN、つまり、同心円状の多段中継無線ネットワークXに含まれないノードNが生まれる。このノードNは、S101では広域端末31として選択され、多段中継無線機21と接続しない余分な広域端末31となる。
【0068】
そこで、S101で求めた広域端末31の暫定的な設置場所を再度最適化することで、「取りこぼし」を生じさせない広域端末31の最適な設置場所を求めることができ、広域端末31の設置場所を最適化することができる。つまり、図13(b)に示すように、同心円状の多段中継無線ネットワークXに含まれないノードNを、他の広域端末31に接続するノードに繋ぎ換える計算を行い、広域端末31の数を減らす。計算には、数式1に示す数理モデルが用いられる。これにより、S101にて暫定的に決定された広域端末31の位置を変えずに、S101にて取りこぼされたノードNが何れかのノードに接続されるように、連結グラフが変更され、多段中継無線ネットワークYがS101にて構築された同心円状の多段中継無線ネットワークXから変更される。そのため、S102の処理にて、ノードNが広域端末31から多段中継無線機21の変更されるので、広域端末31の数を減らすことができる。
【0069】
例えば、図12において、ノードAは、他の多段中継無線機21と接続せず、「取りこぼし」となるノードNである。そこで、ノードAをノードBに繋ぎ換え、広域端末31として選択されたノードEに間接的に接続することにより、ノードEを広域端末31の設置場所とする連結グラフM1にノードAを含める。これにより、ノードAが広域端末31の設置場所ではなくなり、余分な広域端末31を1台減らすことができる。
【0070】
図7に戻り、CPU111は、S101にて暫定的に決定した広域端末31の設置場所のパターンと、S102にて解いた数理モデルの解と、S102にて最適化された広域端末31の設置場所と、を関連付けてRAM113に記憶する(S103)。
【0071】
そして、CPU111は、異なるパターンで広域端末31を設置可能か否かを判断する(S104)。つまり、CPU111は、RAM113に記憶されている暫定的に決定された広域端末31の設置場所のパターンと異なるパターンで、広域端末31を設置できるか否かを判断する。
【0072】
図14図17は、異なるパターンでの暫定配置算出方法を説明する説明図である。例えば図14に示すように、ノードA~Iのうち、1ホップで通信可能なホップの数が最多の「4」となるノードは、ノードEの他に、ノードFがある。よって、ノードFを広域端末31として選択するパターンを作成できる。
【0073】
この場合(S104:YES)、CPU111は、異なるパターンについて、S101~S103の処理を実行する。すなわち、CPU111は、ノードFが広域端末31として選択されると、図15の図中点線で囲む部分に示すように、ノードFと、ノードFに1ホップで接続するノードDとノードEとノードGとノードHと、それらを接続するエッジ(辺)を、グラフから取り除く。そして、残ったノードAとノードBとノードCとノードIについて次数を求め、次数が最大となるノードを広域端末として1台選択する。ここでは、ノードBが選択されるものとする。そこで、CPU111は、図16に示すように、ノードBと、ノードBに接続するノードAを、グラフから取り除く。残ったノードCとノードIは、接続可能なノードがないので、広域端末31として選択される。これにより、CPU111は、図17に示すように、図12とは異なる態様で最適な広域端末31の設置場所を演算する。そして、CPU111は、図17に示す広域端末31の暫定的な設置場所に対して、数式1に示す数理モデルを用いて最適化を行う。
【0074】
図7に戻り、CPU111は、異なるパターンを作成できなくなるまで、S101~S104の処理を実行し、パターン毎に数理モデルの最適解と広域端末31の設置場所を関連付けて記憶する(S104:YES)。なお、S104の判断が「YES」である場合に実行されるS101~S103の処理は、「繰り返しステップ」「繰り返し処理」の一例である。
【0075】
CPU111は、異なるパターンを作成できなくなると(S104:NO)、最適な広域端末31の設置場所を決定する(S105)。すなわち、CPU111は、広域端末31の設置台数が最小となる広域端末31の設置場所をRAM113から抽出し、抽出した広域端末31の設置場所を、所定の地域10内における最適な広域端末31の設置場所として決定する。なお、S105の処理は「決定ステップ」「決定処理」の一例である。
【0076】
そして、CPU111は、S105にて決定した広域端末31の設置場所を、シミュレーション結果として出力する(S106)。出力は、表示部115に表示することで行ってもよいし、シミュレーション装置100に接続される図示しない印刷装置にシミュレーション結果を印刷させることにより行ってもよい。
【0077】
発明者らは、S101~S106の処理を全て行うプログラム(実施例)と、S102~S105の処理を行わないプログラム(比較例)を、PCに実行させ、各手法の効果を確認した。ノード数は、10939個とした。その結果、比較例は、広域端末31の設置台数が1054個であったのに対して、実施例は、広域端末31の設置台数が898個であった。よって、実施例は、比較例に対して、広域端末31の設置台数を10%~20%縮小でき、スマートメータ用通信システム1の導入コストを安くすることができる。
【0078】
<数理モデルについて>
続いて、上述した数理モデルについて説明する。以下の説明において、多段中継無線機21は、X軸、Y軸、Z軸にて特定される各座標に配置されていて、半径25m圏内の他の多段中継無線機21と通信を行うことができるものとする。このとき、各多段中継無線機21をノード(∈V)とし、通信ができる端末同士をエッジ(∈E)で繋いだ無向グラフG=(V,E)を作る。広域端末の設置場所の最適化問題は、このグラフに対して以下のように定式化できる。
以下では、qi∈{0,1},(i∈V)はあるノードiにある広域端末31を置く(1)、置かない(0)を表す2値変数である。また、xik∈{0,1},(k∈Vi,k≠i)はノードiにある広域端末31がノードkのどの端末と繋がっている(又はカバーしている)ということを示す。ここで、Viはノードiからの距離L内にある(中継数L以内で通信可能な)ノードの集合である。広域端末31の設置場所の最適化問題は広域端末31をどこに置くかqiと各広域端末31がどこをカバーするかxikという変数の整数計画問題として、以下の数式2、数式3、数式4、数式5のように解くことができる。
【0079】
【数3】
…(数式2)
【0080】
【数4】
…(数式3)
【0081】
【数5】
…(数式4)
【0082】
【数6】
…(数式5)
【0083】
ここで、数式3に示す式は「カバー制約」(上述した制約(4))、数式4に示す式は「接続容量制約」(上述した制約(2))、数式5に示す式は「連結性制約」(上述した制約(3))を表す。
【0084】
本発明者らは 上記数式2、数式3、数式4、数式5を2値変数2次最適化問題(Quadratic Unconstrained Binary Optimization)、略してQUBOと呼ばれる問題に定式化にして解くことを提案する(QUBOは物理で用いられるIsingモデルというモデルと等価であることが知られている)。制約無し問題に定式化するためには各制約式をコスト関数に埋め込むペナルティ法を用いる。ペナルティでは制約を満たさなかった場合にコスト関数の値が上がるようなペナルティ項を導入して制約を満たす実行可能解を探す手法である。また、導入するペナルティ項も2値変数2次式で定式化しなければならない。以下、QUBOへの定式化を説明する。
【0085】
上記数式3の制約を実現するペナルティ項は、以下の数式6と定式化される。
【0086】
【数7】
…(数式6)
【0087】
ここでa=1とすると、Epe,cover=0の変数の組み合わせが上記数式3に示す式の制約を満たす組み合わせとなる。次に広域端末31への接続数に関する上記数式4に示す式を実現するペナルティ項は、以下の数式7に示す式となる。
【0088】
【数8】
…(数式7)
【0089】
さらにカバーされるノードにはそれをカバーしている広域端末31までのカバーされているノードによる経路があることを示す上記数式5に示す式を実現するペナルティ項を作らなければならないが、愚直に考えると高次の項が出てしまうので、いくつかの手順でより厳しい制約を考えることで、上記数式5に示す式を満たすようなペナルティ項を考える。
【0090】
まず、愚直に考えると、上記数式5に示す式を実現するペナルティは、以下の数式8に示すように定式化できる。
【0091】
【数9】
…(数式8)
【0092】
しかし、これでは2次式ではないため、そのまま用いることができない。ノードkからノードiまでの任意の経路を考えると、定式化が難しいので、経路を限定する。最適解を考える際はほとんどの場合、経路は回りこまず、取りうる最短経路のみを考慮すればよいと考えられるため、上記数式5に示す式において考える経路を|Pik|≦Lではなく、ノードkとノードiの中の最短経路のみを考える(図18)。
【0093】
図18は、数理モデルの作成を説明する説明図である。実線に囲まれた領域R1がノードiによってカバーされている領域で、点線に囲まれた領域R2がノードjによってカバーされている領域である。図18(a)は、カバーされている領域R1が他の領域R2に回りこんでいる場合で、図18(b)は、そうでない場合である。上記数式5に示す式において考える経路を最短距離のみを考慮するという仮定は、最適解は図18(a)ではなく、図18(b)のようになることに対応する。
【0094】
ここで、ノードiから最短距離lで到達できるノード集合をVi lと標記することにする。すると、最短経路のみを考慮した「連結性制約」(上述した制約(3))は、ノードiからノードkまでの最短経路がlの時、Vi l-1のうちノードkと直接繋がっているノードm∈Vi l-1∩Vi lのうち一つでもxim=1となっていれば良い(図19)。
【0095】
図19は、数理モデルの作成を説明する説明図である。黒丸が広域端末31を置くノードiとし、白丸が着目するノードkだとする。ノードiからノードkまでの最短経路の長さは「3」である。一点鎖線に囲まれたノードがノードiから距離「2」のノード部分集合Vi 2である。この時、xik=1である時、点線で囲まれている部分(m∈Vi 2∩Vi 1)のうち、xim=1となるノードmが一つでも存在し、他部分集合Vi l',l’<lにおいても同様の制約が満たされている時、最短経路でのノードkからノードiまでのxil=1,∀i∈Pikとなる経路Pikが存在する。
【0096】
最短経路のみを考慮した「連結性制約」(上述した制約(4))を実現するペナルティ項は、以下の数式9に示す式となる。
【0097】
【数10】
…(数式9)
【0098】
しかし、これでもまだ高次の項が出るため、QUBOになっていない。シンプルに2次式にするために上記数式9に示す式の積を和に変更し、以下の数式10に示す式とする。
【0099】
【数11】
…(数式10)
【0100】
ここで、min|Pik|は取り得る経路の内、最短経路の長さである。この定式化だと、ノードiからノードkへの考えられる全ての最短経路においてxi*=1となっていなくてはならない(本当の制約は1つでもそのような経路があればよい)。制約がより厳しくなったことで、ペナルティのQUBO定式化が上記数式10に示す式によってできたが、これはノードiがカバーする領域R1への制限になっていることに注意する。
【0101】
また、本案件における両者での会議で以下の議論による定式化の提案があったことにも言及しておく。この和による定式化は次のようなペナルティ関数の定式化であると見なすことができる。i→kの最短経路集合のうち、どこか一つの経路でもxi*=1となっているための条件は、以下の数式11に示す式である。
【0102】
【数12】
…(数式11)
【0103】
この不等式制約を作るペナルティ項は、以下の数式12に示す式となる。
【0104】
【数13】
…(数式12)
【0105】
以上のような通常の数理最適化による提案が発明者の会議によって提案された。しかし、このようなmax関数はアニーイングマシンに乗せるQUBOでは表現できない。そこで、以下の数式12に示す式のmax関数の中に注目し、xik=1としてくくる。すると、以下の数式13に示す式のように書くことができる。
【0106】
【数14】
…(数式13)
【0107】
このような表現を用いればmax関数を用いず2次式でペナルティを表すことができる。しかし、数式13に示す式の表現も、数式10に示す式と同様にi→kの最短経路すべてにおいてxi*=1となっている状態がペナルティ項が最小の状態なのでより強い制限になっている。そういった意味で、数式13に示す式と数式10に示す式とは等価であり、数式13に示す式は数式10に示す式の第一項を規格化した形とみることもできる。今回は、数式13に示す式と数式10に示す式のどちらも数値実験を行ったが、数式10に示す式の方が良い性能を示したので、数式10に示す式を採用する。
【0108】
以上のペナルティ項の構築により、最小化するコストと、制約を表すペナルティ項を加えたQUBOは、上記数式2、数式6、数式7、数式10を使って、上記数式1のように書ける。
【0109】
以上説明した広域端末の設置場所のシミュレーション方法によれば、ノード(多段中継無線機21)の位置情報と接続情報に基づいて、所定の地域10内に設置される全てのノード(多段中継無線機21)の中から、広域端末31の設置場所となるノードを暫定的に決定し、暫定的に決定された広域端末31の設置場所を最適化する。最適な広域端末31の設置場所を計算するときの計算対象は、暫定ステップ(S101)において暫定的に決定されたノードに絞られる。そのため、例えば、多段中継無線機21のホップ数の制約に基づいて所定の地域10内をホップ数に基づいてエリアネットワークで分割する場合より、問題規模が小さくなり、多段中継無線機21の技術的な制約を満たすように、最適な広域端末31の設置場所を求めることが可能になる。もっとも、最適化ステップ(S102)にて最適化された広域端末31の設置場所は、暫定ステップ(S101)で暫定的に決定された広域端末31の設置場所に拘束される。そのため、暫定ステップ(S101)と最適化ステップ(S102)を各1回行い、1パターンについてのみ広域端末31の設置場所を最適化するのでは、広域端末31の設置台数を十分に減らせていない可能性がある。そこで、暫定ステップ(S101)における暫定的な広域端末31の設置場所と異なるパターンで、暫定ステップ(S101)と最適化ステップ(S102)とを繰り返し行い、パターン毎に広域端末31の設置場所を最適化する。このようにしてパターン毎に最適化された広域端末の設置場所の中から、広域端末31の設置台数が最小となる広域端末31の設置場所を抽出し、所定の地域10内における最適な広域端末31の設置場所として決定する。これにより、ノード(多段中継無線機21)の技術的な制約を満たしながら、少ない台数で所定の地域10に設置されるノード(多段中継無線機21)を全てカバーできるように、最適な広域端末31の設置場所を演算することができる。
【0110】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【0111】
上記形態では、多段中継無線機21と広域端末31を別体としたが、広域端末31と多段中継無線機21を一体に設けてもよい。
【0112】
S101の処理が貪欲法を用いず、S102の処理がアニーリングの手法を用いなくてもよい。但し、S101にて貪欲法を用い、S102の処理にてアニーリングの手法を用いて、最適な広域端末31の設置場所を演算することにより、例えば、所定の地域10に設置されるノードの数が1万台以上と多い場合でも、シミュレーションを高速で行うことができる。
【0113】
S102の処理では、数式1に示す数理モデルを用いずに最適化問題を解くことにより、最適な広域端末31の設置場所を演算してもよい。但し、数式1に示す数理モデルを用いて最適化問題を解く場合、所定の地域10内のノード(多段中継無線機21)を全てカバーするカバー制約を満たさない場合、又は、1つの広域端末31に接続するノード(多段中継無線機21)の数を制限する接続容量制約を満たさない場合、又は、スマートメータ23が計測データをリレー伝送する場合に、ノード(多段中継無線機21)とスマートメータ23とが同じ広域端末31に接続される連結性制約を満たさない場合、数式1に示す数理モデルの第2項、第3項、第4項の値が高くなり、数理モデルの解が大きくなる。よって、数式1に示す数理モデルの各項の値を小さくするように、暫定的に決定した広域端末31の設置場所を変更することにより、広域端末31の設置台数を減らしつつ、広域端末31の設置場所を最適化することができる。
【0114】
例えば、スマートメータは、電力使用量を計測するメータ内に通信機能を持たせた電力計であってもよい。また、通信機能付き計測器の計測対象は、ガスや電力などの使用量に限らず、CO、歩数、体重などを計測するものであってもよい。
【0115】
例えば、図7に示すS101~S104の処理は、同一条件のノードがあった場合、随時確率的に(ランダムに)分岐パターンを選択し(暫定ステップの一例)、そのパターンに対して最適化計算を実施し(最適化ステップの一例)、これらの処理を繰り返し行うようにしてもよい(繰り返し処理の一例)。そして、例えば、特定時間が経過した場合に、繰り返し処理を終了し、S105の処理を実行するようにしてもよい。特定時間は、シミュレーションプログラム122に予め記憶された時間でもよいし、オペレータが操作部116を用いて入力した時間であってもよい。また、オペレータが操作部116を操作してS101~S104の処理を終了させ、S105の処理を実行するようにしてもよい。
【0116】
図7に示す処理において、異なるパターンで広域端末を設置可能な場合でも(S104:YES)、特定時間が経過した場合や、オペレータが操作部116を用いて処理を終了させた場合に、S105の処理に進むようにしてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 スマートメータ用通信システム
10 所定の地域
11 多段中継無線ネットワーク
12 広域通信部
21 多段中継無線機
31 広域端末
100 シミュレーション装置
111 CPU
122 シミュレーションプログラム
402 位置情報
403 接続情報
図1
図2
図3
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図5
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図9
図10
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