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特許7420392リハビリテーション支援装置、その方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】リハビリテーション支援装置、その方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
A61H1/02 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021094699
(22)【出願日】2021-06-04
(62)【分割の表示】P 2020077811の分割
【原出願日】2020-04-24
(65)【公開番号】P2021171659
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】517147593
【氏名又は名称】株式会社mediVR
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】原 正彦
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特許第6531338(JP,B1)
【文献】特開2019-076302(JP,A)
【文献】特開2019-076290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの3次元的なリハビリテーション動作を検出する検出部と、
検出した前記リハビリテーション動作に応じて動くアバターオブジェクトと前記ユーザに視認させる目標オブジェクトとを3次元仮想空間内に生成し、ディスプレイに表示させる表示制御部と、
前記目標オブジェクトの発生を報知する報知部と、
前記目標オブジェクトの発生の報知から、所定時間の経過後に前記目標オブジェクトを発生させる認知負荷制御部と、
を備え、
前記認知負荷制御部は、前記目標オブジェクトの発生を報知するトリガーオブジェクトの種類、数大きさ、及び位置の少なくともいずれか一つを調整することで、前記ユーザが記憶保持すべき情報の複雑性がより増した認知的負荷を与えるリハビリテーション支援装置。
【請求項2】
前記認知負荷制御部は、前記所定時間を変更することにより、前記認知的な負荷を制御する請求項1に記載のリハビリテーション支援装置。
【請求項3】
前記認知負荷制御部は、前記目標オブジェクト以外の背景画像を前記ディスプレイに表示させることにより、前記ユーザに対して認知的な負荷を与える請求項1に記載のリハビリテーション支援装置。
【請求項4】
前記認知負荷制御部は、前記背景画像の少なくとも一部を時間と共に変化させることにより、前記ユーザに対して認知的な負荷を与える請求項3に記載のリハビリテーション支援装置。
【請求項5】
前記認知負荷制御部は、少なくとも2個の前記目標オブジェクトを前記3次元仮想空間内に同時に存在させることにより、前記ユーザに対して認知的な負荷を与える請求項1乃至4のいずれか1項に記載のリハビリテーション支援装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記3次元仮想空間内において前記目標オブジェクトを上下方向に移動させ、
前記認知負荷制御部は、前記3次元仮想空間内において少なくとも2個の前記目標オブジェクトを左右方向に異なる位置に発生させることにより、前記ユーザに対して認知的な負荷を与える請求項1乃至5のいずれか1項に記載のリハビリテーション支援装置。
【請求項7】
前記リハビリテーション動作により、前記目標オブジェクトが表わす3次元的な目標位置に対して、前記アバターオブジェクトがタイミング良く到達したか否か、および前記所定時間によって、前記ユーザの認知能力を評価する評価部をさらに備えた請求項1乃至6のいずれか1に記載のリハビリテーション支援装置。
【請求項8】
検出部が、ユーザの3次元的なリハビリテーション動作を検出する検出ステップと、
表示制御部が、検出した前記リハビリテーション動作に応じて動くアバターオブジェクトと前記ユーザに視認させる目標オブジェクトとを3次元仮想空間内に生成し、ディスプレイに表示させる表示制御ステップと、
報知部が、前記目標オブジェクトの発生を報知する報知ステップと、
認知負荷制御部が、前記目標オブジェクトの発生の報知から、所定時間経過後に前記目標オブジェクトを発生させることにより、前記ユーザに対して認知的な負荷を与える認知負荷制御ステップと、
を含み、
前記認知負荷制御ステップでは、前記目標オブジェクトの発生を報知するトリガーオブジェクトの種類、数大きさ、及び位置の少なくともいずれか一つを調整することで、前記ユーザが記憶保持すべき情報の複雑性がより増した認知的負荷を与えるリハビリテーション支援方法。
【請求項9】
ユーザの3次元的なリハビリテーション動作を検出する検出ステップと、
検出した前記リハビリテーション動作に応じて動くアバターオブジェクトと前記ユーザに視認させる目標オブジェクトとを3次元仮想空間内に生成し、ヘッドマウントディスプレイに表示させる表示制御ステップと、
前記目標オブジェクトの発生を報知する報知ステップと、
前記目標オブジェクトの発生の報知から、所定時間経過後に前記目標オブジェクトを発生させることにより、前記ユーザに対して認知的な負荷を与える認知負荷制御ステップと、
をコンピュータに実行させるリハビリテーション支援プログラムであって、
前記認知負荷制御ステップでは、前記目標オブジェクトの発生を報知するトリガーオブジェクトの種類、数大きさ、及び位置の少なくともいずれか一つを調整することで、前記ユーザが記憶保持すべき情報の複雑性がより増した認知的負荷を与えるリハビリテーション支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リハビリテーション支援装置、その方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、リハビリテーションを支援するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-228957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、リハビリテーションにおいて、ユーザの認知機能に与える負荷を制御することができなかった。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る装置は、
ユーザの3次元的なリハビリテーション動作を検出する検出部と、
検出した前記リハビリテーション動作に応じて動くアバターオブジェクトと前記ユーザに視認させる目標オブジェクトとを3次元仮想空間内に生成し、ディスプレイに表示させる表示制御部と、
前記目標オブジェクトの発生を報知する報知部と、
前記目標オブジェクトの発生の報知から、所定時間の経過後に前記目標オブジェクトを発生させる認知負荷制御部と、
を備え、
前記認知負荷制御部は、前記目標オブジェクトの発生を報知するトリガーオブジェクトの種類、数大きさ、及び位置の少なくともいずれか一つを調整することで、前記ユーザが記憶保持すべき情報の複雑性がより増した認知的な負荷を与えるリハビリテーション支援装置である。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る方法は、
検出部が、ユーザの3次元的なリハビリテーション動作を検出する検出ステップと、
表示制御部が、検出した前記リハビリテーション動作に応じて動くアバターオブジェクトと前記ユーザに視認させる目標オブジェクトとを3次元仮想空間内に生成し、ディスプレイに表示させる表示制御ステップと、
報知部が、前記目標オブジェクトの発生を報知する報知ステップと、
認知負荷制御部が、前記目標オブジェクトの発生の報知から、所定時間経過後に前記目標オブジェクトを発生させることにより、前記ユーザに対して認知的な負荷を与える認知負荷制御ステップと、
を含み、
前記認知負荷制御ステップでは、前記目標オブジェクトの発生を報知するトリガーオブジェクトの種類、数大きさ、及び位置の少なくともいずれか一つを調整することで、前記ユーザが記憶保持すべき情報の複雑性がより増した認知的負荷を与えるリハビリテーション支援方法である。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るプログラムは、
ユーザの3次元的なリハビリテーション動作を検出する検出ステップと、
検出した前記リハビリテーション動作に応じて動くアバターオブジェクトと前記ユーザに視認させる目標オブジェクトとを3次元仮想空間内に生成し、ヘッドマウントディスプレイに表示させる表示制御ステップと、
前記目標オブジェクトの発生を報知する報知ステップと、
前記目標オブジェクトの発生の報知から、所定時間経過後に前記目標オブジェクトを発生させることにより、前記ユーザに対して認知的な負荷を与える認知負荷制御ステップと、
をコンピュータに実行させるリハビリテーション支援プログラムであって、
前記認知負荷制御ステップでは、前記目標オブジェクトの発生を報知するトリガーオブジェクトの種類、数大きさ、及び位置の少なくともいずれか一つを調整することで、前記ユーザが記憶保持すべき情報の複雑性がより増した認知的負荷を与えるリハビリテーション支援プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リハビリテーションにおいて、ユーザの認知機能に与える負荷を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るリハビリテーション支援装置の構成を示すブロック図である。
図2A】第2実施形態に係るリハビリテーション支援装置の構成を示すブロック図である。
図2B】第2実施形態に係るリハビリテーション支援装置のタスクデータベースを表す図である。
図3】第2実施形態に係るリハビリテーション支援装置の表示画面例を示す図である。
図4】第2実施形態に係るリハビリテーション支援装置の表示画面例を示す図である。
図5】第2実施形態に係るリハビリテーション支援装置の表示画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としてのリハビリテーション支援装置100について、図1を用いて説明する。
【0013】
リハビリテーション支援装置100は、検出部101と、表示制御部102と、報知部103と、認知負荷制御部104とを備える。
【0014】
検出部101は、ヘッドマウントディスプレイ120を装着したユーザ130の頭の向きおよび3次元的なリハビリテーション動作を検出する。
【0015】
表示制御部102は、検出したリハビリテーション動作に応じて動くアバターオブジェクト151とユーザ130に視認させる目標オブジェクト152とを3次元仮想空間150内に生成する。そして、検出部101で検出したユーザ130の頭の向きに応じて、ヘッドマウントディスプレイ120に表示させる。
【0016】
報知部103は、目標オブジェクト152の発生を報知する。例えば、図1では、報知画像153として、目標オブジェクト122の発生位置を報知するためのレーダスクリーン画像を表示する。レーダスクリーン画像は、目標オブジェクト152の位置が、仮想空間内の基準方向(ここでは椅子にまっすぐに腰掛けたユーザの正面方向となるように初期設定されている)に対して、相対的にどちらの方向であるかを示す。レーダスクリーン画像は、さらに、ユーザ130の頭の向きが、基準方向に対して相対的にどちらの方向であるかを示す。
【0017】
認知負荷制御部104は、目標オブジェクト152の発生の報知のタイミングから、所定時間経過後に目標オブジェクト152を発生させることにより、ユーザ130に対して認知的な負荷を与える。
【0018】
以上、本実施形態によれば、ユーザは、目標オブジェクトが発生することを報知されてから、実際に目標オブジェクトが発生するまでの時間、自分が行なうべきリハビリテーション動作を継続的に記憶保持しなければならず、ユーザに対して脳が情報処理すべき認知負荷を定量的に調整、コントロールして与えることが可能になる。例えば、報知画像や報知音声に含まれる情報の種類や数、大きさ、空間的な広がりや位置、量等を調整することで、記憶保持すべき情報の複雑性がより増した認知負荷を与えることも可能である。
【0019】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係るリハビリテーション支援システム200について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態に係るリハビリテーション支援システム200の構成を説明するための図である。
【0020】
図2に示すように、リハビリテーション支援システム200は、リハビリテーション支援装置210と、2つのベースステーション231、232と、ヘッドマウントディスプレイ233と、2つのコントローラ234、235とを備える。ユーザ220は、椅子221に座りながら、ヘッドマウントディスプレイ233の表示に合わせて、上半身をねじったり、手を伸ばしたりすることでリハビリテーション動作を行なう。本実施形態では、椅子に座って行なうリハビリテーションを前提に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、立って行なっても、歩きながら行っても、あるいは走りながら、またはその他特定の動作を行いながら行ってもよい。また、コントローラは足や体幹等、手以外の体の部位に保持、装着してもよい。
【0021】
2つのベースステーション231、232は、ヘッドマウントディスプレイ233の動きおよびコントローラ234、235の動きを検知して、リハビリテーション支援装置210に送る。リハビリテーション支援装置210は、ユーザ220のリハビリテーション動作を評価しつつ、ヘッドマウントディスプレイ233の表示制御を行なう。なお、ヘッドマウントディスプレイ233としては、非透過タイプでも、ビデオシースルータイプでも、オプティカルシースルータイプでも構わない。本実施形態ではVR(Virtual Reality)の仮想空間をユーザに提示するが、AR(Augmented Reality:拡張現実)のように、現実空間と仮想空間とを重畳表示してもよいし、MR(Mixed Reality:複合現実)のように、仮想空間に現実情報を反映させてもよい。
【0022】
本実施形態では、ユーザの手や頭の位置または動作を検出するためのセンサの一例として、ユーザ220が手に持つコントローラ234、235や、ベースステーション231、232を示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。ユーザの手の位置または動作を画像認識処理により検出するためのカメラ(深度センサを含む)や、温度によりユーザの手の位置を検出するためのセンサや、ユーザの腕に装着させる腕時計型のウェアラブル端末などや、モーションキャプチャなども、本発明に適用可能である。
【0023】
リハビリテーション支援装置210は、動作検出部211と表示制御部212、213と評価部214と更新部215、タスクセットデータベース216と操作部217とを備える。
【0024】
動作検出部211は、ユーザ220が手に持つコントローラ234、235の位置をベースステーション231、232を介して取得し、ユーザ220の手の位置の変化によりユーザ220のリハビリテーション動作を検出する。
【0025】
表示制御部212は、検出したリハビリテーション動作に応じて動くアバターオブジェクト241と、リハビリテーション動作の目標を示す目標オブジェクト242と、を仮想空間内に生成する。そして、それらのアバターオブジェクト241および目標オブジェクト242の画像を、動作検出部211が検出したヘッドマウントディスプレイ233の向きおよび位置に応じて、表示画面240に表示させる。アバターオブジェクト241および目標オブジェクト242の画像は、背景画像243に重畳表示される。ここでは、アバターオブジェクト241は、コントローラ234、235と同じ形状をしているがこれに限定されるものではなく、さらに左右で大きさや形状、色を変えたりしてもよい。アバターオブジェクト241は、コントローラ234、235の動きに合わせて表示画面240中を動く。コントローラ234、235には1つ以上のボタンが用意されており、ボタンを操作することにより各種設定などを行うことができるように構成されている。背景画像243は、地平線244と、地表面画像245とを含んだ仮想空間から切り出したものである。
【0026】
表示制御部212は、目標オブジェクト242を、ユーザ220の頭上方向から下方に向けて降下してきているように、表示位置および大きさを徐々に変えて表示する。ユーザ220は、コントローラ234、235を動かして、画面中のアバターオブジェクト241を、目標オブジェクト242に近づける。なお、目標オブジェクトの移動方向は例えば床面方向から頭上方向へ上昇していくように表示させてもよく、上下方向の動きに加えて奥行き方向の移動を伴ってもよい。
【0027】
アバターオブジェクト241に含まれるセンサオブジェクト(ここでは不図示)と目標オブジェクト242との最短距離が所定範囲内になると、目標達成となり、目標オブジェクト242は消滅する。このとき、アバターオブジェクト241に含まれるセンサオブジェクトと目標オブジェクト242との最短距離が第1閾値以下になれば目標の完全達成として「あっぱれ」と表示すると同時に対応する音声を出力してフィードバックする。同時にコントローラ234,235を振動させてもよい。
【0028】
一方、アバターオブジェクト241に含まれるセンサオブジェクトと目標オブジェクト242との最短距離が第1閾値以上第2閾値以下であれば、目標の達成として「おみごと」と表示すると同時に対応する音声を出力してフィードバックする。同時にコントローラ234,235を振動させてもよい。
【0029】
このようにコントローラ234、235を動かすユーザ220の動作がリハビリテーション動作であり、ユーザ220が行なうべき1回のリハビリテーション動作を促す目標オブジェクトの表示をタスクと呼ぶ。1つのタスクを表わす情報(タスクデータ)として、目標オブジェクトの出現方向、形状、出現位置(ユーザからの距離)、出現間隔(時間間隔)、落下または上昇等の移動速度、大きさ、色、左右どちらのコントローラで取得すべきか、同時に出現する目標オブジェクトの数、センサオブジェクトの大きさなどが含まれる。
【0030】
すなわち、表示制御部212は、タスクデータに応じてユーザ220から目標オブジェクト242の落下位置までの奥行き方向の距離を変更(例えば3段階)することもできる。例えば、ユーザ220の直ぐそばに落下させたり、ユーザ220が大きく前のめりにならないと届かない位置に落下させたり、と変更することができる。これにより、ユーザに与える運動負荷を制御することができる。
【0031】
表示制御部213は、レーダスクリーン画像250をヘッドマウントディスプレイ233の表示画面240に表示させる。レーダスクリーン画像250は、目標オブジェクト152の発生を報知するための報知画像である。レーダスクリーン画像250は、発生する目標オブジェクト242の位置が、仮想空間内の基準方向(ここでは椅子にまっすぐに腰掛けたユーザの正面方向となるように初期設定されている)に対して、相対的にどちらの方向であるかを報知する。レーダスクリーン画像250は、さらに、発生する目標オブジェクト242の位置が、ユーザ220からどの程度離れているかも報知する。なお、報知画像はレーダースクリーン画像に限定されず、文字や矢印、記号やイラスト、光や色の種類、強弱、点滅等によって報知されてもよい。また、報知方法は画像に限定されず、音声、振動または音声、振動、画像のいずれかの組み合わせによって行われてもよい。
【0032】
表示制御部213は、ユーザ220の頭の向きにかかわらず、レーダスクリーン画像250をヘッドマウントディスプレイ233の表示画面240の中央部分(例えば-50度~50度の範囲内)に表示させる。ただし表示部分は中央に限定されず、例えば画面の四隅や上端、下端、左端、右端の任意の場所でも構わない。
【0033】
レーダスクリーン画像250は、上方から見たユーザの頭を表わす頭画像251と、頭画像251の周囲を複数のブロックに分割したブロック画像252と、ユーザの視野領域を示す視野領域画像としての扇型画像253と、を含む。目標オブジェクトの位置を示す目標位置画像は、ブロック画像252のどのブロックが着色または点滅、点灯されるかによって示される。これにより、ユーザ220は、自分が向いている方向に対して左側に目標オブジェクトがあるのか、右側に目標オブジェクトがあるのかを、知ることができる。なお、本実施形態では、ブロック画像252が固定されて、扇型画像253が動く構成としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、扇型画像253や頭画像251を固定しつつ、ブロック画像252を頭の向きに応じて動かしてもよい。具体的には頭が左に向けば、ブロック画像252が右に回転する構成でもよい。
【0034】
評価部214は、ユーザ220が達成したタスクの量および質に応じて、ユーザのリハビリテーション動作を評価し、ポイントを加算する。ここで達成したタスクの質とは、「あっぱれ」か「おみごと」か、つまり、どこまで目標オブジェクトにアバターオブジェクトを近づけることができたかに依存する。評価部214は、達成したタスクに対して、それぞれ、異なるポイント(遠いオブジェクトには高いポイント、近いオブジェクトには低いポイント)を付与する。
【0035】
更新部215は、積算されたポイントに応じて、目標課題を更新する。例えば、課題達成率(目標達成数/課題数)などを用いて目標課題を更新してもよい。
【0036】
タスクセットデータベース216は、複数のタスクのセットを格納している。タスクセットデータベース216は、そのような複数のタスクをどのような順番でユーザに提供するかを決めるタスクセットを格納している。
【0037】
例えば、病院毎のテンプレートとしてタスクセットを格納してもよいし、実行したタスクセットの履歴をユーザごとに格納してもよい。リハビリテーション支援装置210は、インターネットを介して他のリハビリテーション支援装置と通信可能に構成されていてもよく、その場合、1つのタスクセットを、同じユーザが複数の場所で実行することもできるし、様々なテンプレートを離れた複数のユーザ同士で共有することもできる。
【0038】
操作部217は、表示制御部212および表示制御部213での表示制御を操作するために設けられている。
【0039】
認知負荷制御部218は、目標オブジェクト242の発生を報知したタイミングから、所定時間経過後に目標オブジェクト242を発生させることにより、ユーザ220に対して認知的な負荷を与える。つまり、ユーザは、目標オブジェクトが発生することを知ってから、実際に目標オブジェクトが発生するまでの時間、自分が行なうべき動作を継続的に記憶保持しなければならず、この「記憶の要求」が、ユーザにとっての認知負荷となる。認知負荷制御部218は、目標オブジェクト242の発生を報知したタイミングから、目標オブジェクト152を発生させるタイミングまでの所定時間を変更することにより、認知的な負荷を制御してもよい。
【0040】
またさらに、認知負荷制御部218は、「目標オブジェクト152を発生させるタイミングまで」ではなく、「目標オブジェクト152がユーザ220の届く範囲に接近するまで」の時間を変更することにより、認知的な負荷を制御してもよい。
【0041】
認知負荷制御部218は、目標オブジェクト242以外の背景画像243をヘッドマウントディスプレイ233に表示させることにより、ユーザ220に対して認知的な負荷を与えてもよい。
【0042】
図2Bは、タスクセットデータベース216に記憶されたタスクテーブル260を示す図である。タスクテーブル260には、タスクIDに紐付けて、時間(タスクの発生タイミング)221、タスク間隔222、タスク位置223、タスク角度224、タスク距離(強度)225が記憶されている。さらにタスクテーブル260には、タスクIDに紐付けて、目標オブジェクトのスピード226、パーフェクト判定(あっぱれ評価)の基準227、グッド判定(おみごと評価)の基準228、センサオブジェクトの大きさ229などが記憶されている。これらに加えて、タスクごとに、タスク発生報知からタスク発生までのディレイタイム(所定時間)を設定してもよい。
【0043】
図3図5は、本実施形態にかかる表示画面240における表示の一例を示す図である。図3図4では、畑を表す背景画像301において、目標オブジェクト出現のトリガーとなるトリガーオブジェクト302として、農家を表す人の画像が表示されている。つまり、表示制御部213は、目標オブジェクト152の発生を報知するための報知画像として、トリガーオブジェクト302を表示する。
【0044】
トリガーオブジェクト302が、芋の形をした目標オブジェクト303を上方に投げてから所定時間後に、図4のように画面上から大きな芋の形をした目標オブジェクト403が出現する。落下してきた目標オブジェクト403を、ザルの形をしたアバターオブジェクト402を動かして受け止めることで、タスク達成となる。左右のアバターオブジェクト402は、コントローラ234、235の動きに連動して画面上を移動する。
【0045】
認知負荷制御部218は、トリガーオブジェクト302が目標オブジェクト303を上方に投げて、目標オブジェクト303の発生を報知したタイミングから、所定時間経過後に目標オブジェクト403を発生させることにより、ユーザ220に対して認知的な負荷を与える。なお、トリガーオブジェクト302の動きと連動させて、レーダーチャート型の報知画像でも同様のタイミングで目標オブジェクトの発生を報知したり、音声による報知を組み合わせたりしてもよい。
【0046】
このように、認知負荷制御部218は、図2のような地平線のみの背景ではなく、図3図4のような、情報量の多い背景画像を表示することで、ユーザに対して認知的な負荷を与える。つまり、目標オブジェクト401が出現したことおよび目標オブジェクト401が落下してくるであろう位置の記憶を困難にさせて、より実生活で必要な認知負荷に近い負荷をリハビリテーションのユーザに与える。
【0047】
特に認知負荷制御部218は、背景画像301の少なくとも一部を時間と共に変化させることにより、ユーザ220に対して認知的な負荷を与える。図3の例では、例えば、背景画像301の中で、雲304を移動させたり、草木305を揺らしたり、あるいは、目標オブジェクトと関係のない動物(不図示)を登場させたりしてもよい。これにより、ユーザ220に対して、目標オブジェクト303に対する集中を妨げて、より目標オブジェクト303が落下してくるであろう位置の記憶を困難にさせることができる。より専門的には、背景画像にタスクとは無関係の情報を表示することにより、目標オブジェクトに集中し難い環境を用意し、注意障害(より具体的には選択性注意障害、配分性注意障害、転換性注意障害、持続性注意障害)を意図的に惹起することで記憶を困難にさせて、認知負荷をコントロールしていると言える。
【0048】
図5は、本実施形態にかかる表示画面240における表示の他の例を示す図である。図5では、森のような背景画像501中に、猿を表したトリガーオブジェクト502と、りんごを表した目標オブジェクト503とが表示されている。猿を表したトリガーオブジェクト502が、りんごを表した目標オブジェクト503を木から落として、ユーザに近づいてきた目標オブジェクト503を、ザルを表したアバターオブジェクト504を動かして受け止めることでタスク達成となる。ここでも、認知負荷制御部218は、トリガーオブジェクト502が木を揺らして、目標オブジェクト503の発生を報知したタイミングから、所定時間経過後に目標オブジェクト503の落下を開始させることにより、注意障害を惹起しながらユーザ220に対して認知的な負荷を与える。
【0049】
さらに、認知負荷制御部218は、少なくとも2個の目標オブジェクト503を3次元仮想空間内に同時に存在させて、表示画面240に表示させることにより、ユーザ220に対してより認知的に強い負荷を与えることができる。言い換えれば、認知負荷制御部218は、3次元仮想空間内において少なくとも2個の目標オブジェクト503を左右方向に異なる位置に発生させる。つまり、ユーザ220は、トリガーオブジェクト502がどの位置で木を揺らしたかを、複数箇所について記憶しておかなければならないため、認知的により強い負荷を与えたことになる。
【0050】
特に、目標オブジェクト503の移動方向(図5では落下方向)に対して異なる方向(図5では左右方向)の複数の位置に少なくとも2個の目標オブジェクト503を発生させたので、より一層の認知負荷を与えることができる。つまり、ユーザ220は上下方向の移動と、左右方向の発生位置の違いと、さらには奥行方向の落下位置の違いも考慮してコントローラ234,235を移動させなければならず、空間認知能力も試されていることになる。このように、タスクの所定時間の変更に加えて、トリガーオブジェクトを含む報知画像や報知音声に含まれる情報の種類や数、大きさ、空間的な広がりや位置、量等を調整することで、記憶保持すべき情報の複雑性、すなわちユーザに対して脳が情報処理すべき認知負荷を定量的に調整、コントロールすることが可能となる。
【0051】
評価部214は、目標オブジェクトが表わす3次元的な目標位置に対して、アバターオブジェクトがタイミング良く到達したか否か、および、目標オブジェクトの発生報知から発生までの時間間隔と数、および背景画像の注意障害の程度等によって、ユーザの認知能力を評価する。
【0052】
以上、本実施形態によれば、リハビリテーションにおいて、ユーザの認知機能に与える負荷を効果的に制御することができる。具体的には、ユーザは、何かを記憶しなさいと言われて記憶するのではなく、ボールや芋やりんごを受け取るという、非常にハードルの低い課題の中で、ごく自然に記憶力および認知処理能力を試されることになるため、心理的な負担が小さくリハビリテーションに対する拒否や拒絶反応、失敗に伴う抑うつ反応が生じにくい。本実施形態にかかるリハビリテーション動作によって、運動能力とともに記憶力や認知処理能力、空間認知能力、注意機能(障害)を含むいわゆる認知機能や高次脳機能(障害)を回復させ、日常生活を快適に送ることができるように導くことができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、ヘッドマウントディスプレイを用いたが、眼鏡型のディスプレイであればよい。また、ヘッドマウントディスプレイの代わりに、ホログラムや、大きなテレビ型のディスプレイをユーザ周辺に配置して、ユーザにリハビリテーション動作を促してもよい。
【0054】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0055】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるサーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5