(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】TSN通信システム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/44 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
H04L12/44 300
(21)【出願番号】P 2022090804
(22)【出願日】2022-06-03
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】594124029
【氏名又は名称】株式会社インタフェース
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】峠田 達雄
(72)【発明者】
【氏名】蔵田 光彦
【審査官】中川 幸洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-175012(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03799374(EP,A1)
【文献】特開2020-048045(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0060142(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間依存ネットワーキング(TSN)機能を使用したTSNスイッチと、外部から共通してアクセス可能なメモリ領域を有した共有メモリと、前記TSNスイッチを制御するとともに前記共有メモリへのアクセスを制御するCPUコアと、を有したTSNエンドコントローラを備えたTSN通信システムにおいて、
前記TSNエンドコントローラに内蔵し、又は外部接続したWi-Fiモジュールと、
前記TSNエンドコントローラに前記Wi-Fiモジュールを介してWi-Fi接続したIO機器と、を備え、
前記CPUコアのOSのリアルタイムパッケージ機能を用いて前記TSN機能の時刻合わせを有効に設定し、
前記TSNスイッチに含まれる制御用レジスタを、前記TSNエンドコントローラから出力されるパケットデータが所定のタイミングで前記TSNスイッチを通過するように設定し、
前記CPUコアは、IO機器から送信されるパケットのヘッダ部の情報に基づいて共有メモリへのアクセスか否かをフィルタリングし、前記フィルタリングにより前記共有メモリへのアクセスであることが確認できたとき前記パケットのデータ部の先頭部分の識別情報に基づいて前記共有メモリへのアクセスを許可するようにTSNスイッチを制御し、
前記1つ又は複数のTSNエンドコントローラが前記Wi-Fiモジュールを介して複数又は1つの前記IO機器とWi-Fi接続され、
TSN機能のフィルタリングとWi-Fiのパブリック機能又はサブスクライバ機能とを組み合わせ使用することを特徴としたTSN通信システム。
【請求項2】
1つのTSNエンドコントローラが、主系及び従系の有線により複数のTSNスイッチコントローラとネットワーク接続され、
前記複数のTSNスイッチコントローラが、主系及び従系のWi-Fi無線により複数のIO機器とネットワーク接続され、
CPUコアは、主系のネットワークで異常が発生したときに従系のネットワークに切り替えるようにTSNスイッチを制御することを特徴とした請求項1に記載のTSN通信システム。
【請求項3】
1つのTSNエンドコントローラが、主系及び従系の有線とWi-Fi無線により複数のTSNスイッチコントローラとネットワーク接続され、
前記複数のTSNスイッチコントローラが、主系及び従系の有線により複数のIO機器とネットワーク接続され、
CPUコアは、主系のネットワークで異常が発生したときに従系のネットワークに切り替えるようにTSNスイッチを制御することを特徴とした請求項1に記載のTSN通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共有メモリを搭載したTSNエンドコントローラを使用したTSN通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のパーソナルコンピュータ(PC)やサーバーの機器間でデータを共有するための共有メモリは、各機器からリード/ライトが可能なハードウェアのメモリが使用される。この種のメモリのメモリリソースに受信情報のパケットを格納する際に、メモリリソースを効率的に活用するために、スイッチングによりパケットを選別することが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、一般に複数の機器間でデータを共有させるために、機器に共有メモリを持たせた場合、PCやサーバーの起動順番に制約があり、起動する順番が適切でないと共有メモリが使用できない。そして、ネットワーク、特に、イーサネット(登録商標)接続で共有メモリを実現する場合は、共有メモリへのアクセスやデータ更新の時間が保証されず、共有メモリ専用のネットワークが必要であった。
【0004】
そこで、本出願人は、外部からアクセス可能な共有メモリを搭載したコントローラに、時間依存ネットワーキング(TSN)技術を使用するTSNスイッチを搭載することにより、同期性が保証され、リアルタイム性が担保でき、PCやサーバーの起動順番の制約を持たない共有メモリを実現し、さらには、セキュリティ、信頼性が担保された共有メモリを実現した、TSNエンドコントローラ及びそれを備えたネットワークシステムを提案した(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-42915号公報
【文献】特許第6960011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなTSNエンドコントローラを備えたネットワークシステムにあっては、共有メモリ専用の有線ネットワークが必要であり、有線接続の場合、ロボットのアクチュエータやケーブルの制限で物理的な接続が困難なことがある。そこで、Wi-Fi等の無線ネットワークを使用したい。このときに、無線機能(Wi-Fi)にはリアルタイム性が保証されていないために、無線機能(Wi-Fi)を使用してTSNエンドコントローラやPCを繋いだだけでは、データ転送をしても共有メモリへのアクセスやデータ更新の時間が保証されない。
【0007】
本発明は、上記問題を解消するものであり、TSN機能を使用してWi-Fiの無線通信部分でもリアルタイム性が保証され、有線・Wi-Fiとも共有メモリへのアクセスやデータ更新の時間が保証されるTSN通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、請求項の発明は、 時間依存ネットワーキング(TSN)機能を使用したTSNスイッチと、外部から共通してアクセス可能なメモリ領域を有した共有メモリと、前記TSNスイッチを制御するとともに前記共有メモリへのアクセスを制御するCPUコアと、を有したTSNエンドコントローラを備えたTSN通信システムにおいて、
前記TSNエンドコントローラに内蔵し、又は外部接続したWi-Fiモジュールと、
前記TSNエンドコントローラに前記Wi-Fiモジュールを介してWi-Fi接続したIO機器と、を備え、
前記CPUコアのOSのリアルタイムパッケージ機能を用いて前記TSN機能の時刻合わせを有効に設定し、
前記TSNスイッチに含まれる制御用レジスタを、前記TSNエンドコントローラから出力されるパケットデータが所定のタイミングで前記TSNスイッチを通過するように設定し、
前記CPUコアは、IO機器から送信されるパケットのヘッダ部の情報に基づいて共有メモリへのアクセスか否かをフィルタリングし、前記フィルタリングにより前記共有メモリへのアクセスであることが確認できたとき前記パケットのデータ部の先頭部分の識別情報に基づいて前記共有メモリへのアクセスを許可するようにTSNスイッチを制御し、
前記1つ又は複数のTSNエンドコントローラが前記Wi-Fiモジュールを介して複数又は1つの前記IO機器とWi-Fi接続され、
TSN機能のフィルタリングとWi-Fiのパブリック機能又はサブスクライバ機能とを組み合わせ使用することを特徴としたものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、1つのTSNエンドコントローラが、主系及び従系の有線により複数のTSNスイッチコントローラとネットワーク接続され、
前記複数のTSNスイッチコントローラが、主系及び従系のWi-Fi無線により複数のIO機器とネットワーク接続され、
CPUコアは、主系のネットワークで異常が発生したときに従系のネットワークに切り替えるようにTSNスイッチを制御することを特徴としたものである。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、1つのTSNエンドコントローラが、主系及び従系の有線とWi-Fi無線により複数のTSNスイッチコントローラとネットワーク接続され、
前記複数のTSNスイッチコントローラが、主系及び従系の有線により複数のIO機器とネットワーク接続され、
CPUコアは、主系のネットワークで異常が発生したときに従系のネットワークに切り替えるようにTSNスイッチを制御することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、TSNエンドコントローラとWi-Fi接続したIO機器(PCやサーバー)との間の時間合わせを設定することで、Wi-Fiの無線通信部分でもリアルタイム性が保証され、Wi-Fiの無線接続機能が有効となり、有線・Wi-Fiとも共有メモリへのアクセスやデータ更新の時間が保証され、イーサネット接続の共有メモリが実現できる。そして、フィルタリング機能によりセキュリティが担保され、更新機器の選択や制限を図れ、IO機器(外部装置・センサなど)のデジタル/アナログ信号入力値取得と、デジタル/アナログ信号出力制御を設定した時間で制御可能となる。また、Wi-Fi機能とPub/Sub機能を組み合わせて、1対n、m対1、m対nなどの接続構成でも、アクセス時間が保証され、共有メモリの情報更新や、接続したIO機器の制御のリアルタイム性が保証される。
【0016】
請求項2,3の発明によれば、有線と無線の両方で冗長接続にも対応し、冗長接続をし
た主系のネットワークで障害発生時に、従系のネットワークに切り替えが可能となり、ネ
ットワークの断線時もデータロス無しで転送を継続可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の前提となるTSNエンドコントローラのブロック構成図。
【
図2】上記TSNエンドコントローラのIO機器との接続を示す構成図。
【
図3】上記TSNエンドコントローラの共有メモリのメモリ領域設定を示す図。
【
図4】上記TSNエンドコントローラの共有メモリへのIO機器からのデータ送信動作を示す図。
【
図5】上記TSNエンドコントローラの共有メモリへIO機器からアクセスを可能とするTSNスイッチのフィルタリングを説明する図。
【
図6】上記TSNエンドコントローラとIO機器とが経路冗長接続されているネットワークシステムにおいて障害が発生した場合の動作を説明する図。
【
図7】上記TSNエンドコントローラを使用したデジタル/アナログ信号取得のための構成を示す図。
【
図8】上記TSNエンドコントローラとIO機器とが経路冗長接続されているネットワークシステムにおいてデジタル/アナログ信号取得のための構成を示す図。
【
図9】上記TSNエンドコントローラを使用した、装置のデジタル/アナログ制御のための構成を示す図。
【
図10】上記TSNエンドコントローラとIO機器とが経路冗長接続されているネットワークシステムでの装置をデジタル/アナログ制御するための構成を示す図。
【
図11】上記TSNエンドコントローラを使用した、装置のデジタル/アナログ同期制御のための構成を示す図。
【
図12A】本発明の実施形態に係るTSN通信システムを構築する主なハードウェアのWi-Fi機能内蔵構成を示す図。
【
図12B】本発明の実施形態に係るTSN通信システムを構築する主なハードウェアのWi-Fi機能を外部接続した構成を示す図。
【
図13】上記TSN通信システムにおける外部のIO機器との接続例を示す図。
【
図14】(a)(b)(c)は上記TSN通信システムにおいてWi-Fi機能とPub/Sub機能を組み合わせた接続例を示す図。
【
図15A】上記TSN通信システムのWi-Fi冗長接続例における障害発生の前後を示す図。
【
図15B】上記TSN通信システムの有線とWi-Fiの冗長接続例における障害発生の前後を示す図。
【
図16】上記TSN通信システムにおいて装置・センサからのデジタル/アナログ信号を取得する接続例を示す図。
【
図17】上記TSN通信システムにおいて装置・センサからのデジタル/アナログ信号を取得する経路冗長接続例を示す図。
【
図18】上記TSN通信システムにおいて装置をデジタル/アナログ制御する接続例を示す図。
【
図19】上記TSN通信システムにおいて装置をデジタル/アナログ制御する経路冗長接続例を示す図。
【
図20】上記TSN通信システムにおいて装置に同期信号を出力する接続例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(本発明の前提)
以下、本発明の前提となるTSNエンドコントローラを備えたネットワークシステムについて図面を参照して説明する。
図1は、時間依存ネットワーキング(TSN)技術を使用したTSNエンドコントローラ1を示す。TSNエンドコントローラ1は、TSNに対応したポート2と、アナログ信号とデジタル信号を相互変換するPHYデバイス3と、TSNスイッチ4と、CPUコア5と、共有メモリ6と、を備える。TSNスイッチ4及びCPUコア5は、FPGA7に搭載されている。ポート2は、ネットワーク、例えばイーサネット(登録商標)に接続される。PHYデバイス3は、ポート2に接続され、TSNスイッチ4はPHYデバイス3に接続され、CPUコア5はTSNスイッチ4に接続されている。共有メモリ6は、ネットワークを介して外部から共通してアクセス可能なメモリ領域を有している。
【0019】
TSNスイッチ4は、システム間でデータをインサーネット・ネットワーク経由で送信するためのプロトコルを規定するTSNに対応した機能スイッチである。TSNは、ネットワーク全体で時刻を同期化する時刻同期機能、リアルタイムデータ送信を可能とする(アクセス時間保証)機能、スケジューリング(時刻合わせ)機能、ゲート制御機能、割り込み機能等を備えている(IEEE802.1AS-Rev、IEEE802.1Qav、IEEE802.1Qbv、IEEE802.1Qbu、IEEE802.3br)。TSNスイッチ4をTSNのプロトコルに従い制御し、かつ共有メモリ6にアクセスするためのプログラムをFPGA7(CPUコア5)に格納している。
【0020】
このようなTSNスイッチ4を、外部からアクセス可能な共有メモリ6を搭載したTSNエンドコントローラ1に搭載することにより、外部端末であるPCやサーバー等のIO機器の起動順番の制約を持たない共有メモリ6を実現でき、同期性が保証され、リアルタイム性が担保できる。すなわち、イーサネット(登録商標)接続された共有メモリ6へのアクセスやデータ更新の時間が保証され、外部端末のPCやサーバーは起動順番の制約がなくなる。
【0021】
図2は、TSNエンドコントローラ1のIO機器11との接続を示す。IO機器11は、パーソナルコンピュータPC(A)、PC(B)、サーバー(C)、サーバー(D)等で成り、TSNエンドコントローラ1のポート2にインサーネットのネットワーク12により接続される。このようなネットワーク構成とすることで、共有メモリ6へのアクセスやデータ更新の時間が保証され、フィルタリング機能によりセキュリティを担保することができる。その結果、共有メモリ6は、IO機器11の起動順番の制約のないメモリとなる。
【0022】
また、TSNスイッチ4に搭載した共有メモリ6は、TSN技術で時刻同期、リアルタイムデータ伝送、経路冗長接続が可能となる。TSNスイッチ4に搭載した共有メモリ6は、OSに依存せず、Linux(登録商標)、Windows、マイコンなどから簡単にアクセスできる。TSNスイッチ4へは、TSN対応PCも、TSN非対応PCも接続できる。PCとTSNスイッチ4間の高精度なリアルタイム制御は、TSN対応PC(Apollo Lakeなど)のみ使用可能である。PCからTSNスイッチ4の共有メモリ6しか接続できない設定を設けてもよく、一般通信を遮断することでセキュリティ強化が行える。
【0023】
図3は、TSNエンドコントローラ1の共有メモリ6のメモリ領域設定を示す。ここには、VLAN(Virtual LAN)を使用したアクセス権の設定例を示す。メモリの領域毎に、読み込みのみ(RO)、書き込みのみ(WO)、読み書き両方(W/R)、読み書き禁止(WI)の4パターンを設定可能とした。
【0024】
図4は、TSNエンドコントローラ1の共有メモリ6へのIO機器11からのデータ送信動作を示す。IO機器11としてのPC(A)、PC(B)、PC(C)、PC(D)から送信されるパケット21~24、31~34について、TSNスイッチ4の時刻同期下の各機器からのアクセスタイミングと、スイッチのゲート設定時間制御とにより、他のデータ転送中でも、時間間隔を保証し、共有メモリ6へリアルタイムでのデータ送信を可能とする。
【0025】
図5は、共有メモリ6へアクセスする際のTSNスイッチ4のフィルタリングを説明する図である。フィルタリングは、(1)パケット40のヘッダ部41の情報を使用したフィルタリング機能と、(2)パケット40のデータ部42の先頭部分43の情報を使用したフィルタリング機能とで行い、共有メモリ6へのアクセスを制限する(IEEE802.1Qci)。これにより、許可された接続先から許可されたアクセスのパケット40のみ共有メモリ6へアクセスが可能となる。
【0026】
(1)のフィルタリングは、リアルタイム性を確保するため、パケット40のヘッダ部41の情報でフィルタリングし、接続先の確認とパケットの転送を可能とする。ここに、MACアドレス、プライオリティ、カウント数、VLANなどを使用する。TSNスイッチ4のVLANは、MACアドレスの接続許可/禁止を認証し、MACアドレスが認証されないと、VLAN(グループ)に接続できない。
(2)のフィルタリングは、(1)のフィルタリングで、搭載されている共有メモリ6へのアクセスであることを確認すれば、データ部42の先頭部分43に予め取り決めをしたフォーマットのデータが有るかを見てフィルタリングする。
【0027】
フィルタリングは、CPUコア5がTSNスイッチ4を制御することで成される。すなわち、CPUコア5は、TSNスイッチ4をして、IO機器11から送信されるパケット40のヘッダ部41の情報に基づいて共有メモリ6へのアクセスか否かをフィルタリングし、フィルタリングにより共有メモリ6へのアクセスであることが確認できたときパケット40のデータ部42の先頭部分43の識別情報に基づいて共有メモリ6へのアクセスを許可する
【0028】
図6は、TSNエンドコントローラ1とIO機器11とが経路冗長接続15されているネットワークシステムにおいて障害が発生する前と後のネットワーク切り替えを示す。TSNエンドコントローラ1は、
図1に示したものと同等であり、ポート2等の図示を省いている(以下、同様)。ここに、TSNエンドコントローラ1とIO機器11とは、冗長接続のための主系ネットワーク51(実線で示す)及び従系ネットワーク52(破線で示す)を介して接続されている。TSNエンドコントローラ1のCPUコア5は、主系ネットワーク51で異常が発生したときに従系ネットワーク52に切り替えるようにTSNスイッチ4を制御する。主系ネットワーク51及び従系ネットワーク52に、TSNスイッチコントローラ13,14を介在させている。TSNスイッチコントローラ13,14は、TSNスイッチ4よりも機能は少なくてよく(共有メモリとのIOの機能を有していない)、ASIC(マイコン)を内蔵し、FPGAに搭載され、時刻同期、スケジューリング、冗長接続の機能を有していればよい。
【0029】
障害発生時のネットワーク切り替えは、TSNスイッチ4及びTSNスイッチコントローラ13,14が動作することにより成される。請求項では、これら両者を含めてTSNスイッチと称している。
図6の上図において、TSNスイッチコントローラ13を経由していた主系ネットワーク51で障害が発生した場合、TSNスイッチはネットワークを切り替えて、
図6の下図のTSNスイッチコントローラ14を経由する、障害発生前は従系であったネットワークを主系ネットワーク51とする。こうして、TSN技術を利用することで、冗長接続をした主系のネットワークで異常が発生した場合に、パケットをロスすることなく従系のネットワークに切り替えが可能となる。このため、線路冗長接続15に対応してネットワークの断線時、障害発生時もパケットロス無しでデータ転送継続が可能なシステムの構築が可能となる(IEEE802.1CB)。
【0030】
ここで、主系及び従系のネットワーク切り替えの例を説明する。通常、送信元からパケット及びその複製パケットをそれぞれ主系及び従系を経て送信し、送信先で主系からのパケットが正常であればそのまま受信し、従系からの複製パケットは破棄する。送信先で主系からのパケットを受信できなかったときは、従系経由で受信したパケットを受信する。一方、送信先で主系からのパケットが異常であることを検出したときは、従系からの複製パケットを受信し、データ転送を継続する。
【0031】
図7は、TSNエンドコントローラ1を使用したデジタル/アナログ信号取得(DI/AD入力機能)のための構成を示す。ここに、デジタル/アナログ信号を取得する装置・センサ16がTSNエンドコントローラ1に接続され(実際にはポートを介して接続される。以下同様)、TSNエンドコントローラ1は、ネットワーク12を介してIO機器11に接続されている。TSNエンドコントローラ1は装置・センサ16からデジタル/アナログ信号を設定した時間間隔で取得し共有メモリ6に書き込み、IO機器11は、共有メモリ6にアクセスしてデジタル/アナログ信号入力値を取得できる。
【0032】
上記により、共有メモリ6にイーサネット(登録商標)経由でリアルタイムにアクセスできる利点を活かし、TSNスイッチ4の共有メモリ6を利用したデジタル/アナログ信号の制御回路を実装し、時刻同期/リアルタイム/優先度設定/経路冗長接続が可能なイーサネット(登録商標)接続のIOを実現できる。また、デジタル/アナログ信号伝送遅延(DELAY)とジッタを設定可能である。また、経路を冗長接続することで、障害発生時でもデジタル/アナログ信号入力値を、設定した時間間隔で取得可能となる。
【0033】
図8は、TSNエンドコントローラ1とIO機器11とが経路冗長接続15されているネットワークシステムにおいてデジタル/アナログ信号取得のための構成を示す。これは、
図6に示した、IO機器11と経路冗長接続15されたTSNエンドコントローラ1に、デジタル/アナログ信号を取得する装置・センサ16を接続したものである。このように経路を冗長接続することで、障害発生時でも、IO機器11は、TSNエンドコントローラ1を経由して装置・センサ16のデジタル/アナログ信号入力値を、設定した時間間隔で取得可能となる。
【0034】
図9は、TSNエンドコントローラ1に接続された装置17をデジタル/アナログ(DO/DA出力機能)制御するための構成を示す。この構成により、TSNエンドコントローラ1の共有メモリ6を使用したIO制御デジタル/アナログ制御を用いて、IO機器11から装置17のデジタル/アナログ制御がリアルタイムで可能となる。
【0035】
図10は、TSNエンドコントローラ1とIO機器11とが経路冗長接続15されているネットワークシステムでの装置17をデジタル/アナログ制御するための構成を示す。この構成により、TSNエンドコントローラ1の共有メモリ6を使用したIO制御デジタル/アナログ制御を用いて、IO機器11から、装置17のデジタル/アナログ制御がリアルタイムで可能となる。また、経路を冗長接続することで、障害発生時でも制御継続が可能となる。
【0036】
図11は、TSNエンドコントローラ1を使用した、装置17のデジタル/アナログ同期制御のための構成を示す。TSNエンドコントローラ1から同期制御用の同期信号(PPS)を出力する。この構成により、デジタル制御、アナログ制御信号の出力とは別に、IO機器11から、TSNエンドコントローラ1の共有メモリ6を使用した制御同期信号(PPS)を出力可能で、装置17の制御を同期させることができる。
【0037】
(本発明の実施形態)
以下、
図12乃至
図20を参照して、本発明の実施形態に係るTSN通信システムについて説明する。
図12は、TSN通信システム100の主なハードウェア構成を示す。TSN通信システム100は、上述したTSNエンドコントローラ1を備え、このTSNエンドコントローラ1にWi-Fiモジュール61を内蔵し、又は外部接続している。TSNエンドコントローラ1は、時間依存ネットワーキング(TSN)技術を使用したTSNスイッチ4と、外部から共通してアクセス可能なメモリ領域を有した共有メモリ6と、TSNスイッチ4を制御するとともに共有メモリ6へのアクセスを制御するCPUコア5と、を有する。CPUコア5とTSNスイッチ4はFPGA7に搭載されている。
【0038】
図12Aは、Wi-Fi機能を内蔵した例を示す。Wi-Fiモジュール61は、TSNエンドコントローラ1のCPUコア5に接続されている。Wi-Fiモジュール61のポート2はWi-Fiポート62となり、このWi-Fiポート62に外部のIO機器(PCやサーバー、図示なし)がWi-Fi接続される。TSNエンドコントローラ1のポート2は、TSN対応のインサーネットポート12Pとなり、外部のIO機器が接続される。
【0039】
図12Bは、Wi-Fi機能を外部接続した例を示す。TSN通信システム100は、TSNエンドコントローラ1とWi-Fi外部接続装置63を備える。Wi-Fi外部接続装置63は、CPUコア64、Wi-Fiモジュール61及びLANコントローラ65を備え、LANコントローラ65のポート2はTSN対応のインサーネットポート12Pとなり、このインサーネットポート12Pを介してTSNエンドコントローラ1に接続される。Wi-Fiモジュール61のポート2はWi-Fiポート62となり、このWi-Fiポート62に外部のIO機器がWi-Fi接続される。
【0040】
図13は、
図12Aに示したTSN通信システム100の場合のIO機器との接続例を示す。Wi-Fiポート62には、Wi-Fiアプリケーション66を通してIO機器11(PC E)が接続される。インサーネットポート12Pには、インサーネットのネットワーク12を介してLANコントローラを有しているIO機器11(PC A, PC B, Server C, Server D)が接続される。ここに、TSN通信システム100として、TSNエンドコントローラ1とIO機器11とがWi-Fi接続され、Wi-Fiで接続した機器同士のリアルタイム性を確保する必要がある。そのために、1)無線機能(Wi-Fi)で接続したTSNエンドコントローラ1やPC等のIO機器11の時刻合わせに加えて、2)TSNスイッチ4を介して送信するデータ(パケット)を時刻によるゲート制御(タイムシェアリング)して無線機能(Wi-Fi)に流すパケットを時間で管理することが必要である。
【0041】
1)は、CPUコア5のOSのリアルタイムパッケージの機能(プログラム)を実行して、ネットワーク接続されたデバイス間で合わせた時刻をシステムに反映することで達成される。2)は、TSNスイッチ4に含まれる制御用レジスタを、TSNエンドコントローラ1から出力されるパケットデータが所定のタイミングでTSNスイッチ4を通過するように設定することで達成される。接続先のPCに搭載されているLANのコントローラを設定しても構わない。システム全体の時刻を合わせることで、データ出力や通過を時刻でコントロールできるようになり、全体のリアルタイム性が確保され、Wi-Fiに接続した経路に対しても、送信するパケットのリアルタイム性(設定した時間内にパケット送信できる)が確保できるようになる。
【0042】
このようにWi-Fiで接続したTSN通信システム100においては、機器間でのWi-Fi送信データは、TSN技術により設定したタイミング・間隔でデータ送信されることになり、システム全体としてのリアルタイム性が保証される。詳細には、無線機能(Wi-Fi)で接続した状態でTSNの時刻同期機能を使用して、無線(Wi-Fi)で接続した機器間(無線部分の伝搬遅延も考慮された)の時刻を合わせることが可能であり、リアルタイムデータ送信機能については、データ送信のデータ出力のタイミングは、TSN技術で設定できるので、無線機能(Wi-Fi)を介しても(Wi-Fiにその機能が無くても)、データを送信するタイミングにリアルタイム性(一定時間内に処理を完了させる)をもたせることが可能となる。
【0043】
また、有線ではケーブル配線の物理的な制約で接続できない箇所があっても、Wi-Fiの無線技術を使用することで、システム全体の省配線化と軽量化が可能となり、また、複数の周波数を使用したデータ転送をすることで、転送速度と信頼性の向上も図れる。
【0044】
図14(a)(b)(c)は、各種Wi-Fi接続(無線にはwを付している)のTSN通信システム100を示す。TSNエンドコントローラ1、Wi-Fiモジュール61は、
図12と同じ構成を有する(図示は簡略化)。
図14(a)は、Wi-Fi Direct機能(1対1接続)を利用したTSN通信システム100を示す。この構成においてTSNのフィルタリングにより、接続先をホワイトリストで設定したものだけに特定することができる。
【0045】
図14(b)は、Wi-Fi機能とPublisher機能を組み合わせた接続例を示す。
図14(c)は、Wi-Fi機能とSubscriber機能を組み合わせた接続例を示す。このようにWi-Fi機能とPub(Publisher)機能との組み合わせで、複数のSub(Subscriber)に同時にデータ送信可能となり、Wi-Fi機能とSub(Subscriber)機能との組み合わせで、複数のPub(Publisher)に同時にデータ送信可能となり、m対1、1対n接続の構成においても、1台又は複数台の共有メモリ6の情報更新や接続したIO機器11(PC E他)の制御のリアルタイム性が保証される。換言すると、無線機能(Wi-Fi)がサポートしている接続方法とTSNのフィルタリング機能を組みわせることで、複数台の共有メモリの同時更新と、接続先が制限できるのでセキュリティが担保できる。
【0046】
図15Aは、TSN通信システム100のWi-Fi冗長接続例における障害発生の前後を示す。TSN技術を利用することで、線路冗長接続15をした主系・無線のネットワークで異常が発生した場合に、パケットをロスすることなく従系・無線のネットワークに切り替えが可能となる。有線・無線とも、実線が使用状態、破線が不使用状態の線を示している。
【0047】
図15Bは、TSN通信システム100の有線とWi-Fiの冗長接続例における障害発生の前後を示す。Wi-Fiと有線でバックアップ経路を用意することで、有線、又は、Wi-Fiのネットワークで異常が発生した場合に、パケットをロスすることなく従系のネットワークに切り替えが可能となる。
【0048】
図16は、装置・センサ16からデジタル/アナログ信号を取得する接続例を示す。共有メモリを使用したIO制御によるデジタル/アナログ入力を行う場合に、Wi-FiとTSN技術を組み合わせることで、IO機器11は、有線接続が困難な場所に配置した装置・センサ16などのデジタル/アナログ信号の入力値を、設定した時間間隔で取得可能となる。
【0049】
図17は、装置・センサ16からのデジタル/アナログ信号を取得する経路冗長接続例を示す。共有メモリを使用したIO制御によるデジタル/アナログ入力を行う場合に、Wi-FiとTSN技術を組み合わせることで、IO機器11は、有線接続が困難な場所に配置した装置・センサ16などのデジタル/アナログ信号入力値を、設定した時間間隔で取得可能となる。経路を冗長接続することで、障害発生時でもデジタル/アナログ信号入力値を、設定した時間間隔で取得可能となる。
【0050】
図18は、装置17をデジタル/アナログ制御する接続例を示す。共有メモリを使用したIO制御によりデジタル/アナログ制御を行う場合に、Wi-FiとTSN技術を組み合わせることで、IO機器11は、有線接続が困難な場所に配置した装置17などをデジタル/アナログ制御する。制御がリアルタイムで可能となる。
【0051】
図19は、装置17をデジタル/アナログ制御する経路冗長接続例を示す。共有メモリを使用したIO制御によりデジタル/アナログ制御を行う場合に、Wi-FiとTSN技術を組み合わせることで、IO機器11は、有線接続が困難な場所に配置した装置17などをデジタル/アナログ制御する。制御がリアルタイムで可能となる。経路を冗長接続することで、障害発生時でも制御継続が可能となる。
【0052】
図20は、装置17に同期信号を出力する接続例を示す。共有メモリを使用したIO制御において、Wi-FiとTSN技術を組み合わせることで、IO機器11は、有線接続が困難な場所に配置した装置17などをデジタル制御し、アナログ制御信号の出力とは別に、同期制御用の同期信号(PPS)を出力し、各装置の制御を同期させることができる。
【0053】
本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。TSNの時刻同期とリアルタイムデータ送信機能を、Wi-Fi機能に合わせて設定されれば、Wi-FiがTSN技術にサポートされ、Wi-Fi無線により複数周波数のチャネルを使用した冗長接続も可能となり、転送速度と信頼性が向上する。
【符号の説明】
【0054】
1 TSNエンドコントローラ
2 ポート
3 PHYデバイス
4 TSNスイッチ
5 CPUコア
6 共有メモリ
7 FPGA
11 IO機器
12 ネットワーク
12P インサーネットポート
13 TSNスイッチコントローラ
14 TSNスイッチコントローラ
15 経路冗長接続
16 装置・センサ
17 装置
21~24、31~34 パケット
40 パケット
41 ヘッダ部
42 データ部
43 先頭部分
51 主系ネットワーク
52 従系ネットワーク
61 Wi-Fiモジュール
62 Wi-Fiポート
63 Wi-Fi外部接続装置
64 CPUコア
65 LANコントローラ
66 Wi-Fiアプリケーション
100 TSN通信システム