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特許7420416トポロジカルフォトニック結晶共振器、及びそのレーザにおける利用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】トポロジカルフォトニック結晶共振器、及びそのレーザにおける利用
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/11 20210101AFI20240116BHJP
【FI】
H01S5/11
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022524599
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 CN2019113621
(87)【国際公開番号】W WO2021081697
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502134971
【氏名又は名称】中国科学院物理研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】陸凌
(72)【発明者】
【氏名】楊樂臣
(72)【発明者】
【氏名】高曉梅
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/185749(WO,A1)
【文献】特開2016-156971(JP,A)
【文献】特表2015-523726(JP,A)
【文献】特開2010-056446(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0080579(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106353853(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
G02B 6/12-6/14
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフォトニック結晶スーパーセルを含む二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器であって、
前記複数のフォトニック結晶スーパーセルは、前記二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心の周り渦状の構造変化を示し
前記複数のフォトニック結晶スーパーセルが前記渦状の構造変化を示すように変調される前に、前記複数のフォトニック結晶スーパーセルは平衡位置にあり、前記平衡位置にある前記複数のフォトニック結晶スーパーセルのエネルギーバンド構造はディラック点を含み、
前記複数のフォトニック結晶スーパーセルが前記渦状の構造変化を示すように変調されると、前記複数のフォトニック結晶スーパーセルのエネルギーバンド構造のディラック点が破壊されてバンドギャップを開き、
前記二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心の周りの渦状の構造変化を示す複数のフォトニック結晶スーパーセルは、前記複数のフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの平衡位置に対して協調的に移動及び/又は回転される前記複数のフォトニック結晶スーパーセル内の1種類以上の副格子を含み、移動された前記副格子の0から2πまでの連続的な位相回転はすべて、前記フォトニック結晶スーパーセルが前記平衡位置にあるときの前記エネルギーバンド構造内のディラック点を破壊することができる、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器。
【請求項2】
前記複数のフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの平衡位置に対して協調的に移動及び/又は回転される前記複数のフォトニック結晶スーパーセル内の1種類以上の副格子は、具体的には、
任意の空間点にある前記二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心を含み、前記複数のフォトニック結晶スーパーセルは、前記共振器中心に対する前記フォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの距離及び角度に応じて、前記フォトニック結晶スーパーセル内の1種類以上の副格子が前記フォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの平衡位置に対して変位ベクトルを移動させる変化形態で、前記渦状の構造変化を示し、前記変位ベクトルの振幅及び位相は共に、前記共振器中心に対する前記副格子の位置の関数であり、それぞれの副格子の変位ベクトルの位相は一定の位相差を有し、前記変位ベクトルの振幅は、前記共振器の半径方向に沿ってゼロから最大振幅まで変化し、前記変位ベクトルの位相は、前記共振器中心の周りの円ごとに2πの整数倍の増分で前記共振器の角度方向に沿って連続的又は離散的に変化し、正又は負である前記整数は巻き数である、請求項に記載の二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器。
【請求項3】
前記渦状の構造変化のパラメータは、前記変位ベクトルの空間分布関数、前記巻き数、前記共振器の最大振幅、サイズ及び形状、前記共振器中心の位置、材料の屈折率、材料の充填率、前記スーパーセルのサイズ及び単純格子のサイズ、前記共振器の動作波長及び周波数、前記スーパーセルの形状、前記スーパーセルのエネルギーバンド構造内のディラック点の数及び前記スーパーセルが平衡位置にあるときのブリュアン帯域内のディラック点の位置、前記スーパーセル内の単純格子の数及び形状、前記単純格子内の副格子の数及び形状、及び前記共振器の端におけるフォトニック結晶の切断形状からなる群の1つ以上を含む、請求項に記載の二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器。
【請求項4】
記スーパーセルは3つの四角形単純格子から構成される六角形スーパーセルであり、それぞれの四角形単純格子は2つの副格子を含み、前記スーパーセルが平衡位置にあるとき、ハニカム格子が形成されかつ前記単純格子のエネルギーバンド構造におけるブリュアン帯域の端にある2つのディラック点が前記スーパーセルのブリュアン帯域の中心に折り返されて二重ディラック点を形成し、前記渦状の構造変化において、前記スーパーセル内の同じ種類の3つの副格子が120度の位相差と正又は負の巻き数を有するように回転される、請求項に記載の二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器。
【請求項5】
複数のフォトニック結晶スーパーセルを含む二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器を有するレーザであって、
前記複数のフォトニック結晶スーパーセルは、前記二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心の周り渦状の構造変化を示し
前記複数のフォトニック結晶スーパーセルが前記渦状の構造変化を示すように変調される前に、前記複数のフォトニック結晶スーパーセルは平衡位置にあり、前記平衡位置にある前記複数のフォトニック結晶スーパーセルのエネルギーバンド構造はディラック点を含み、
前記複数のフォトニック結晶スーパーセルが前記渦状の構造変化を有するように変調されると、前記複数のフォトニック結晶スーパーセルのエネルギーバンド構造のディラック点が破壊されてバンドギャップが開き、
前記二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心の周りの渦状の構造変化を示す複数のフォトニック結晶スーパーセルは、前記複数のフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの平衡位置に対して協調的に移動及び/又は回転される前記複数のフォトニック結晶スーパーセル内の1種類以上の副格子を含み、移動された前記副格子の0から2πまでの連続的な位相回転はすべて、前記フォトニック結晶スーパーセルが前記平衡位置にあるときの前記エネルギーバンド構造内のディラック点を破壊することができる、レーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の技術分野に関し、より具体的には、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器、その設計方法、及びレーザにおける利用に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザは、高効率、長寿命、小型、広い波長範囲、容易な集積化及び変調能力などの利点を有し、光通信、光処理、医療、軍事などの分野で広く使用されている。しかしながら、従来の半導体レーザは、単一のデバイスに対して、広い利得スペクトル、多くのモード、大きな発散角、及び低出力を有する。
【0003】
単一モード半導体レーザは、光通信、分光法、計測及びセンシングの分野における標準光源である。均一な一次元ブラッググレーチング分布帰還型レーザ(DFB)は、狭い線幅及び安定した波長などの利点により、長距離ファイバネットワークで広く使用されている。しかしながら、それは2つの競合するバンド端モードを有するので、安定した中間ギャップモードがブラッグ波長で動作することを実現するために、共振器の設計に1/4波長の位相シフトを導入する必要がある。垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)も同じ一次元欠陥モードを使用して単一縦モード出力を選択し、近距離無線通信、マウス、レーザプリンタ及び顔認識などの用途で広く使用されている。
【0004】
近年開発された二次元フォトニック結晶面発光レーザは、より大きな面積、ハイパワー、及び低ビーム発散角など、1次元設計に比べて複数の利点を有する。しかしながら、周期的に構造化された二次元フォトニック結晶面発光レーザは、高い品質係数を有する少なくとも2つのバンド端モードの競合出力も有する。したがって、単一モードの二次元フォトニック結晶共振器、特にロバストな中間ギャップ単一モード用の二次元共振器を設計する緊急の必要性があり、この二次元共振器は、二次元分布帰還型レーザ用にはそれが提案されてからずっと存在せず、単一の安定したレーザモードのために、通常、レーザが高出力、広い同調範囲、狭い線幅、及びハイパワーを有することを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記要件の少なくとも1つの態様を満たすために、本開示は、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器、その設計方法、及びレーザにおける利用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様では、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器が提供される。二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器は、複数のフォトニック結晶スーパーセルを含む。複数のフォトニック結晶スーパーセルは、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器(キャビティ)中心の周りに渦状の構造変化を有し、複数のフォトニック結晶スーパーセルのバンド構造は、渦状の構造変化の平衡位置においてディラック点を有する。
【0007】
本開示の一実施形態によれば、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心の周りに渦状の構造変化を有する複数のフォトニック結晶スーパーセルは、複数のフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの平衡位置に対して協調的に移動及び回転されるフォトニック結晶スーパーセル内の1種類以上の副格子を含み、移動された副格子の0から2πまでの連続的な位相回転は、フォトニック結晶スーパーセルが平衡位置にあるときのバンド構造内のディラック点を破壊することができる。
【0008】
本出願の一実施形態によれば、複数のフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの平衡位置に対して協調的に移動及び回転されるフォトニック結晶スーパーセル内の1種類以上の副格子は、具体的には、任意の空間点にある二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心を含み、複数のフォトニック結晶スーパーセルは、共振器中心に対するフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの距離及び角度に応じて、フォトニック結晶スーパーセル内の1種類以上の副格子がフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの平衡位置に対して変位ベクトルを移動させる変化形態で、渦状の構造変化を有し、変位ベクトルの振幅及び位相は共に、共振器中心に対する副格子の位置の関数であり、それぞれの副格子の変位ベクトルの位相は一定の位相差を有し、変位ベクトルの振幅は、共振器の半径方向に沿ってゼロから最大振幅まで変化し、変位ベクトルの位相は、共振器中心の周りの円ごとに2πの整数倍の増分で共振器の角度方向に沿って連続的又は離散的に変化し、正又は負であるこの整数は巻き数である。
【0009】
本開示の一実施形態によれば、渦状の構造変化のパラメータは、変位ベクトルの空間分布関数、巻き数、共振器の最大振幅、サイズ及び形状、共振器中心の位置、材料の屈折率、材料の充填率、スーパーセルのサイズ及び単純格子のサイズ、共振器の動作波長及び周波数、スーパーセルの形状、スーパーセルのバンド構造内のディラック点の数及びスーパーセルが平衡位置にあるときのブリュアン帯域内のディラック点の位置、スーパーセル内の単純格子の数及び形状、単純格子内の副格子の数及び形状、及び共振器の端におけるフォトニック結晶の切断形状からなる群の1つ以上を含む。
【0010】
本開示の一実施形態によれば、多角形スーパーセルは、3つの四角形単純格子から構成される六角形スーパーセルであり、それぞれの四角形単純格子は、2つの副格子を含み、スーパーセルが平衡位置にあるとき、ハニカム格子が形成されかつ単純格子のバンド構造におけるブリュアン帯域の端にある2つのディラック点がスーパーセルのブリュアン帯域の中心に折り返されて二重ディラック点を形成し、渦状の構造変化において、スーパーセル内の同じ種類の3つの副格子が、120度の位相差と正又は負の巻き数を有するように回転される。
【0011】
本開示の別の態様において、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の設計方法が提供される。設計方法は、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心の周りの複数のフォトニック結晶スーパーセルに対して渦状の空間位置変調を行うことを含み、複数のフォトニック結晶スーパーセルのバンド構造は、渦状の空間位置変調の平衡位置においてディラック点を有する。
【0012】
本開示の一実施形態によれば、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心の周りの複数のフォトニック結晶スーパーセルに対して渦状の空間位置変調を行うステップは、複数のフォトニック結晶スーパーセル内の1種類以上の副格子に対してフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの平衡位置に対する協調的な移動及び回転を行うことを含み、移動された副格子の位相の0から2πまでの連続した回転はすべて、フォトニック結晶スーパーセルが平衡位置にあるときのバンド構造内のディラック点を破壊することができる。
【0013】
本開示の一実施形態によれば、複数のフォトニック結晶スーパーセル内の1種類以上の副格子に対してフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの平衡位置に対する協調的な移動及び回転を行うステップは、具体的には、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心として任意の点を選択することと、共振器中心に対するフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの距離及び角度に応じて、複数のフォトニック結晶スーパーセル内の1種類以上の副格子がフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの平衡位置から変位ベクトルを移動させる形で、フォトニック結晶スーパーセルに対して渦状の空間位置変調を行うこととを含み、変位ベクトルの振幅及び位相は、共振器中心に対する副格子の位置の関数であり、それぞれの副格子に対する変位ベクトルの位相は一定の位相差を有し、変位ベクトルの振幅は、共振器の半径方向に沿ってゼロから最大振幅まで変化し、変位ベクトルの位相は、共振器中心の周りの円ごとに2πの整数倍の増分で共振器の角度方向に沿って連続的又は離散的に変化し、正又は負である整数は巻き数である。
【0014】
本開示の別の態様では、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器が提供され、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器は、異なる屈折率を有する複数の材料層を含み、異なる屈折率を有する複数の材料層のうちのいずれか1つ以上の層が、上記の二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器を採用し、又は異なる屈折率を有する複数の材料層のうちのいずれか1つ以上の層が、上記の設計方法を用いて得られた二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器を採用する。
【0015】
本開示の一実施形態によれば、異なる屈折率を有する材料は、半導体材料、有機発光材料、空気、ガス、金属、又は絶縁体であり、半導体材料は、III-V族、II-VI族、又はIV族のいずれかの一元素材料又は化合物材料を含み、III-V族、II-VI族又はIV族のいずれかの一元素材料又は化合物材料は、Si、Ge、GaN、GaP、GaAs、InGaP、InGaAs、AlGaAs、AlGaN、GaAsP、InAs、InAlGaN、InSb、InP、又はInGaAsPからなる群から選択される1つ以上を含む。
【0016】
本開示の他の態様では、上記の二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器、又は上記の設計方法を用いて得られた二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器を有するレーザがさらに提供される。
【0017】
本開示の実施形態によれば、本開示によって提供される二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器は、他のタイプの共振器よりも優れた、独立して制御可能なモード数、モードフィールド面積、放射結合、及び遠視野放射を有する新規な集積可能な光共振器である。この二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器は、位相シフト分布帰還型レーザ及び垂直共振器型面発光レーザの二次元帰還構造へのアップグレードである。これは、サイズが数ミクロンから数ミリメートルまで連続的に調整可能な大きなモードフィールド直径を有する単一の中間ギャップモードを提供する。
【0018】
本開示によって提供される二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器は、現在のフォトニック結晶面発光レーザの半導体材料プラットフォームに適合することができる。この共振器を用いて作成した面発光レーザには次の利点がある。1.独自の単一モードレーザ発光を提供することができる。2.より大きな自由スペクトル範囲を有する。3.現在のフォトニック結晶面発光レーザでは、六方格子は正方格子よりもコヒーレントな面内帰還を生成する。実際には、バンド端モードの数を減らし、多モードレーザを抑制するために、正方格子が六方格子よりも好ましいが、これは、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器ではもはや問題ではない。4.共振器の設計と上記の利点は、処理エラーに対してトポロジカルにロバストであることである。5.フォトニック結晶面発光レーザ製品での二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の利用は、動作安定性、再現性及びレーザ輝度を改善し、ハイパワー、狭い線幅及び広い同調範囲のレーザ出力を実現することができる。
【0019】
本開示によって提供される二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器は、大きなモードフィールド面積、大きな自由スペクトル範囲、狭いビーム発散角、任意のモード縮退及び複数の基板材料との適合性などの特性を有し、面発光レーザに利用することができ、大面積及び高エネルギーの出力中にレーザが単一横モード及び単一縦モードでもなお安定して動作できることを確実にする。
【0020】
本開示によって提供される二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器は、構造寸法を変化させることによって、無線帯域、マイクロ波帯域、テラヘルツ帯域、赤外線帯域、可視帯域及び紫外線帯域に関して、任意の波長及び周波数で動作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本開示の上記及び他の目的、特徴及び利点は、添付の図面に関連して本開示の実施形態の以下の説明からより明らかになるであろう。
【0022】
図1】キラリティーが保護対称性である、本開示の一実施形態による4バンド二次元ボソニックディラックハミルトニアンの対称性解析を概略的に示す。
【0023】
図2図2a~図2dは、本開示の一実施形態による二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器のための構造設計を概略的に示す。
【0024】
図3図3a~図3cは、本開示の一実施形態による二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器のためのエアクラッドシリコン構造の三次元計算結果を概略的に示す。
【0025】
図4図4a~図4cは、本開示の一実施形態による二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心の3つの選択肢の概略図を概略的に示す。
【0026】
図5図5aは、本開示の一実施形態による二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の概略構造図である。
【0027】
図5bは、本開示の一実施形態による二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の断面図である。
【0028】
図5cは、本開示の一実施形態による二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器のための平面構造の概略図である。
【0029】
図5dは、図5cに示される二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器における六角形スーパーセル構造の概略図である。
【0030】
図6図6a~6cは、本開示の一実施形態による二次元シミュレーション計算解析による渦サイズにわたる二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の特性の変化規則を示し、ここで、図6aは、共振器スペクトル及びモードフィールドの分布特性を示し、図6bは、モードフィールド直径と渦直径、自由スペクトル範囲(FSR)、及び遠視野半角の比例関係特性を示し、図6cは、αが異なる場合の近視野特性と遠視野特性を示す。
【0031】
図7図7a~図7bは、本開示の一実施形態による共振器モード周波数の不変性の概略図である。
【0032】
図8】本開示の一実施形態によるすべての共振器モードのモード特性の詳細な情報を示す。
【0033】
図9】本開示の一実施形態による基板の屈折率に対する共振器の品質係数Qの変化規則の概略図である。
【0034】
図10図10a~図10bは、本開示の一実施形態による、α=4の場合の二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の実験的解析結果を示す。図10aは、R=0μm、m0=50nm、及びω=+1の場合の共振器の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。図10bは、2R=50μm及びm0=50nmの場合の異なる巻き数の共振器モードの共振器スペクトル及び遠視野分布を示し、6つのモードのすべての品質係数は、5×103から1×104の間である。図10cは、ディラック質量m0と渦サイズRに対応する単一渦共振器(ω=+1)の品質係数Qと共振波長(λ)との間の変化関係を示す。図10dは、ω=+1及びm0=50nmの場合の渦のサイズにわたる共振器スペクトルの変化条件を示す。
【0035】
図11図11aは、本開示の一実施形態による二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器を有するレーザの概略構造図である。
【0036】
図11bは、図11aに示されるレーザの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を説明する。しかしながら、これらの説明は単なる例示であり、本開示の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。以下の詳細な説明では、説明を容易にするために、本開示の実施形態を包括的な理解をもたらすべく多くの具体的な詳細が示されている。しかしながら、これらの具体的な詳細なしに1つ以上の実施形態を実施できることは明らかである。また、以下の説明では、本開示の概念を不必要に曖昧にすることを避けるために、周知の構造及び技術の説明を省略している。
【0038】
本明細書で使用される用語は、本開示を限定することを意図するのではなく、特定の実施形態を説明するためだけのものである。本明細書で使用される用語「備える」、「含む」、「含有する」及び「有する」は、記載された特徴、ステップ、動作及び/又は構成要素の存在を示すが、1つ以上の他の特徴、ステップ、動作又は構成要素の存在又は追加を除外するものではない。
【0039】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、当業者によって一般に理解される意味を有する。本明細書で使用される用語は、本明細書の文脈と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、理想化された方法又は過度に厳格な方法で解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0040】
本開示の実施形態は、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器、その設計方法、及びレーザにおけるその利用を提供する。ここで最初に、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の実現原理を紹介する。
【0041】
分布帰還型レーザ(DFB)及び垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)は、応用分野における主要な半導体レーザであり、二種類の光共振器は、一次元格子のトポロジー欠陥を伴う単一中間ギャップモードを有する。本開示は、Jackiw-Rossiゼロモードに類似したディラック渦質量を有するハニカムフォトニック結晶を使用し、トポロジカル共振器の設計を二次元に拡張して、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器を得る。ディラック渦共振器とも呼ばれるこの二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器は、拡張可能なモード領域、大きな自由スペクトル範囲、狭いビーム発散角、任意のモード縮退、及び複数の基板材料との適合性などの特性を有し、大面積及び高エネルギーの出力中にレーザが絶対単一モード(単一横モード及び単一縦モード)でもなお安定して動作できることを確実にするために面発光半導体レーザに使用することができる。本開示は、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器が、数桁の大きさで調整可能なモードフィールド面積、任意のモード縮退、ロバストのための大きな自由スペクトル範囲、及び低発散ベクトルビーム出力を有し、高屈折率基板と適合性があることを理論的に予測し、実験的に証明する。この種のトポロジー共振器により、フォトニック結晶面発光レーザ(PCSEL)は、大面積及びハイパワーの出力条件下で単一横モードと単一縦モードでもなお安定して動作することができる。
【0042】
二次元中間ギャップ欠陥共振器を設計するために、本開示は最初に、位相シフト分布帰還型レーザ及び垂直共振器面発光レーザの中間ギャップモードが実際にはトポロジカルであり、これは一次元Jackiw-Rebbbiゼロモード及びSu-Schrieffer-Heeger(SSH)のエッジ状態と数学的に等価であることを認識する。このトポロジー概念は、二次元Jackiw-Rossiゼロモード、及び2π範囲全体をカバーする質量バンドギャップφ0を有する連続スーパーセルライブラリを使用し、渦質量を有するディラックフォトニック結晶を実現する二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の設計を導く。実験ではシリコンオンインシュレータ(SOI)を用いて、ディラック渦共振器とも呼ばれる二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器を作製した。
【0043】
凝縮物質中の無質量ディラックフェルミオンは、エネルギーと運動量が線形関係にあり、伝導帯と価電子帯が運動量空間の特定の点でエネルギーが縮退している準粒子のクラスである。固体中の無質量ディラックフェルミオンのディラック点、すなわち伝導帯と価電子帯のエネルギー縮退点は、通常、対称性によって保護されている。
【0044】
ディラック渦共振器の中間ギャップモードは光子領域に渦質量を有する二次元ディラックの式のゼロモード解であり、次の式1のディラックハミルトンは5つのアンチトランザクション項を含み、ここでσi及びTiはパウリ行列を表す。二次元では、最初の2つの項は4×4の質量に依存しないディラックハミルトニアンであり、後の3つの項は時間反転不変量である質量項である。詳細な対称解析については、図1を参照してください。
【0045】
H(k)=(σxkxzky)Tz+m1Tx+m2Ty+m′σyTz (式1)
【0046】
m’が0の場合、対称性保護はカイラル対称性S=σyz(SHS-1=-H)であり、残りの2つの質量項は平面内でω回巻くことができる複素数[m=m1+jm2]、すなわちm(r)∝exp[jωarg(r)]を形成し、ここでrは空間座標、j2=-1、ωはディラック質量の巻き数であり、ωの大きさ及び符号により中間ギャップモードの数とキラリティーが決定する。
【0047】
有限周波数を有する実際のフォトニック系では、Sはわずかな対称性の破れを有し、m’は完全にはゼロではないため、ディラックスペクトルは完全には上下対称ではなく、ωトポロジカルモードは厳密には周波数が縮退していない。
【0048】
本開示では、波長1.55μmの二次元フォトニック結晶Jackiw-Rossi中間ギャップモードが、厚さ220nm(0.46a)のシリコン膜上に設計されている。エアクラッドシリコン構造を最初に設計し、誘電体基板の場合を評価する。計算効率を改善するために、すべてのモデルは上下対称(Zミラー)であるため、モードフィールドはミラー対称性に従って分類できる。
【0049】
図2a~図2dは、本開示の一実施形態による二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の構造設計を概略的に示す。図2aは、一般化ケクレ変調によって摂動された六角形のハニカムスーパーセルを示しており、ここで、r=0.32a、aは、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の格子定数であり、rは、スーパーセル内の単純格子三角形の外接円半径である。図2bは、乱されていないスーパーセルの二重ディラックコーンのバンド構造を示す。図2cは、φ0が0から2πまでの範囲の角度のときにバンド構造が壊れる場合を示す。図2dは、m0を超えるバンドギャップサイズの変化条件を示しており、挿入図はφ0=π/3で二重ディラック点のバンドが壊れた場合である。
【0050】
図2aは、本開示の一実施形態による二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器を構成する六角形スーパーセルを示しており、スーパーセルは3つの四角形単純格子から構成され、黒及び灰色で塗りつぶされた部分は単純格子の副格子である。本開示では、シリコン薄膜材料が好ましく、副格子は、好ましくは三角形の空気孔構造である。スーパーセルにおいて、当初はブリュアン帯域の境界に位置したディラック点(光円錐の下の±K点)がブリュアン帯域の中心のディラック点(光円錐の上のΓ点)に折り返され、二重ディラック点を形成する。図2bは、本開示の一実施形態による二重ディラック点バンド図である。黒と灰色の副格子は、シリコン膜の空気細孔構造を表す。円形構造と比較して、三角形構造の空気細孔はディラック点の周波数非依存性を改善することができる。本開示は、2π渦質量を生成し、二重ディラック点バンド構造を壊すために、スーパーセルに一般化ケクレ変調を施す。
【0051】
図2aのスーパーセルの3つの灰色の副格子は、同じ振幅m0及び対応する位相φ0をそれぞれの平衡位置から移動させた。本開示で設計された共振器構造では、ゼロでないm0及び[0、2π]の範囲内の位相φ0の任意の値の場合、バンドギャップは常に開いており、m0=0の場合、バンドギャップは渦の中心で閉じている。図2cは、本開示の一実施形態による質量バンドギャップの計算結果を示す。スーパーセルの対称性により、図2cの質量バンドギャップはπ/3の角度周期を有し、バンドギャップはφ0=π/3のときに最も小さい。図2dは、本開示の一実施形態によるm0を超えるバンドギャップサイズの変化条件を示しており、この2π質量バンドギャップの最大値は6%であり、m0が増加するにつれてバンドギャップは最終的に閉じ、挿入部分は、φ0=π/3のときに二重ディラック点バンドが壊れる場合を示している。式1において、変調ベクトル
【数1】
は、混合したディラック質量m=m1+jm2と同じ物理的意味を有するので、本開示では同じ記号を使用する。
【0052】
図3aは、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器及び質量ポテンシャル井戸関数の図を示す。図3bは、m0=0.1aのトポロジカルモードの近視野(Hz)を示しており、ここで品質係数Q=317、モード体積V=4.0(λ0/n)3、遠視野半角は4.3°であり、中央領域の拡大図は電界分布である。図3cは、電界Exのフーリエ成分を示す。
【0053】
図3aは、本開示の一実施形態による二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の構造設計の概略図である。本開示の共振器設計は、2π範囲全体をカバーする質量バンドギャップφ0を有する連続スーパーセルライブラリを採用する。この共振器設計では、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心として任意の点が選択され、複数のフォトニック結晶スーパーセルは、共振器中心に対するフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの距離及び角度に応じて、フォトニック結晶スーパーセル内の1種類以上の副格子がフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの平衡位置に対して変位ベクトルmを移動させる変化形態で、渦状の構造変化を有し、変位ベクトルの振幅|m|及び位相φ=Arg(m)は共に、共振器中心に対する副格子の位置の関数であり、それぞれの副格子の変位ベクトルの位相は一定の位相差を有し、変位ベクトルの振幅は、共振器の半径方向に沿ってゼロから最大振幅m0まで変化し、変位ベクトルの位相は、共振器中心の周りの円ごとに2πの整数倍の増分で共振器の角度方向に沿って連続的又は離散的に変化し、正又は負であるこの整数は巻き数であり、このようにしてディラック渦共振器としても知られる二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器が形成される。
【0054】
本開示の二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の中間ギャップモードでは、その面内電場は空間渦であり、これは図3bの計算結果によって十分に証明され、図3cの電場のフーリエ成分(Ex)は光円錐に対するその運動量分布を示す。
【0055】
共振器渦質量m(r-r0)の設計は大きな自由度を有する。本開示は、式2を使用してそれを表し、それは4つのパラメータ(ω、m0、R、α)によって決定することができる。質量ポテンシャル井戸関数tanh(x)|x→+∞=+1及びtanh(xα)|x→0=xαは、中心のゼロ質量|m(r=r0)|=0から境界の最大質量|m(r>>r0)|=m0までの説明を示す。
【0056】
【数2】
【0057】
式2において、1番目のパラメータωは渦の巻き数であり、正又は負の整数である。|ω|の値は中間ギャップモードの数を決定し、モードフィールド面積は一般に|ω|が増加するにつれて増加する。ωが正であるか負であるかはモードフィールドのキラリティーを表し、副格子におけるモードフィールドの分布条件を決定する。二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器のトポロジカルモードは、共振器の単純格子の1つの副格子にのみ存在する。ωの符号が変更されると、別の副格子に存在する。図3bにおいて、磁場(Hz)及び電場(Ex,y)のピーク値は、左を指す三角形内にあり、共振器の設計及び作製に多くの自由度を提供する。
【0058】
2番目のパラメータm0は最大ディラック質量であり、図3aの質量ポテンシャル井戸の深さを表す。図2aにおいて、m0は共振器内の副格子の移動の最大振幅を表し(対応する位相はφ0である)、また、二重ディラック点が光円錐に結合するときの放射結合強度でもあるため、共振器の品質係数Qはm0が増加するにつれて低下する。(r-r0)は、座標r0に対する二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器スーパーセル内のそれぞれの副格子の位置ベクトルであり、(r>>r0)のときに最大ディラック質量m0が得られる。
【0059】
3番目のパラメータRは、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の渦半径であり、その値はR≧0であり得る。渦サイズR=0のとき、モードフィールドのサイズはゼロでない。このような場合、十分なモードフィールドの閉じ込めを確実にするために、渦の周囲に包囲層があり、本開示では、渦の外側に50周期の包囲層が好ましい。
【0060】
4番目のパラメータαは、形状係数、ポテンシャル井戸の形状を制御する正の指数であり、0から+∞の範囲であり得る。αはまた、共振器モードの近視野の包絡線と放射パターンを制御する。共振器モードフィールドのサイズは、必ずしも渦のサイズのように急速に増加するとは限らず、αの値にも左右される。
【0061】
形状係数αは、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器のサイズ特性を制御する。これらの特性のバランスを取るために、本開示の実施形態では、α=4が好ましい。共振器パラメータωが+1又は-1に設定される場合、単一トポロジカルモードを実現することができ、本開示では、ω=+1は任意選択である。大きな自由スペクトル範囲(FSR)を得るために、本開示では大きな質量バンドギャップm0=0.1aを選択することができる。
【0062】
本開示の二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心は、任意の空間点にあり得る。本開示は、共振器中心の3つの異なる条件を示し、それらは、共振器中心がそれぞれ単純格子の任意の1つの副格子及び頂点に位置することを示し、それぞれ図4のa、b、及びcに対応する。ここで、図4のa、b、及びcは、本開示の一実施形態による二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心の3つの選択肢の概略図を概略的に示しており、3つの選択肢はすべて、共振器にC3v対称性を提供する。副格子が平衡位置(m0=0)にあるとき、共振器はC6v対称性を有するので、ω関連の対称渦中心が選択されると、本開示の共振器(m0≠0)は、常にC3v対称性を維持することができる。
【0063】
上記の内容に基づいて、本開示の一実施形態は、複数のフォトニック結晶スーパーセルを含む二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器であって、複数のフォトニック結晶スーパーセルは、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心を取り囲む渦状の構造変化を有し、複数のフォトニック結晶スーパーセルのバンド構造は、渦状の構造変化の平衡位置においてディラック点を有する、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器を提供する。
【0064】
二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心を取り囲む渦状の構造変化を有する複数のフォトニック結晶スーパーセルは、複数のフォトニック結晶スーパーセル内の1種類以上の副格子のフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの平衡位置に対する協調的な移動及び回転を含み、移動した副格子の0から2πまでの連続的な位相回転は、フォトニック結晶スーパーセルが平衡位置にあるときのフォトニック結晶スーパーセルのバンド構造のディラック点を破壊することができる。
【0065】
複数のフォトニック結晶スーパーセル内の1種類以上の副格子のフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの平衡位置に対する協調的な移動及び回転は、具体的には、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心が任意の空間点にあることと、複数のフォトニック結晶スーパーセルが、共振器中心に対するフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの距離及び角度に応じて、フォトニック結晶スーパーセル内の1種類以上の副格子がフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの平衡位置に対して変位ベクトルを移動させる変化形態で、渦状の構造変化を有することとを含み、変位ベクトルの振幅及び位相は共に、共振器中心に対する副格子の位置の関数であり、それぞれの副格子の変位ベクトルの位相は一定の位相差を有し、変位ベクトルの振幅は、共振器の半径方向に沿ってゼロから最大振幅まで変化し、変位ベクトルの位相は、共振器中心の周りの円ごとに2πの整数倍の増分で共振器の角度方向に沿って連続的又は離散的に変化し、この整数は、正又は負にかかわらず、巻き数である。このようにして、ディラック渦共振器とも呼ばれる二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器が形成される。
【0066】
フォトニック結晶スーパーセルは、二重のディラック点を有し、一般化ケクレ変調を用いて変調される。一般化ケクレ変調は、1種類又はすべての副格子の協調的な回転及び移動を含み、2πのディラック質量をもたらし、二重ディラック点バンドを破壊する。この一般化ケクレ変調によって変調されるパラメータは、変位ベクトルの空間分布関数、巻き数、最大振幅、共振器のサイズ及び形状、共振器中心の位置、材料の屈折率、材料の充填率、スーパーセル及び単純格子のサイズ、共振器の動作波長及び周波数、スーパーセルの形状、スーパーセルが平衡位置にあるときのスーパーセルのバンド構造内のディラック点の数及びブリュアン帯域内のディラック点の位置、スーパーセル内の単純格子の数及び形状、単純格子内の副格子の数及び形状、及び共振器の端におけるフォトニック結晶の切断形態からなる群の1つ以上を含む。
【0067】
フォトニック結晶スーパーセルは、平面最密構造を有する多角形スーパーセルであり、多角形スーパーセルの形状は、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形などの形状である。多角形スーパーセルが六角形スーパーセルである場合、六角形スーパーセルは3つの四角形単純格子から構成され、それぞれの四角形単純格子は2つの副格子を含む。スーパーセルが平衡位置にあるとき、ハニカム格子が形成され、単純格子のバンド構造におけるブリュアン帯域の端にある2つのディラック点が、スーパーセルのブリュアン帯域の中心に折り返され、二重ディラック点を形成する。渦状の構造変化は、単純格子内の1つの副格子の平衡位置の周りの回転を含むが、スーパーセル内の同じ種類の3つの副格子は互いに120度の位相差を有するように回転し、0から2πまでの連続的な位相回転はすべて、スーパーセルが平衡位置にあるときのスーパーセルのバンド構造内の二重ディラック点を破壊することができる。二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心は任意の点であることができ、副格子は、円、三角形、又は任意の他の規則的又は不規則な形状及びパターンを有することができる。
【0068】
本開示の別の実施形態はまた、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の設計方法を提供する。方法は、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心を取り囲む複数のフォトニック結晶スーパーセルに対して渦状の空間位置変調を行うことを含み、複数のフォトニック結晶スーパーセルのバンド構造は、渦状の空間位置変調の平衡位置においてディラック点を有する。
【0069】
二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の設計方法において、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心を取り囲む複数のフォトニック結晶スーパーセルに対する渦状の空間位置変調は、複数のフォトニック結晶スーパーセル内の1種類以上の副格子のフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの平衡位置に対する協調的な移動及び回転であり、移動された副格子の0から2πまでの連続した位相回転はすべて、フォトニック結晶スーパーセルが平衡位置にあるときのバンド構造内のディラック点を破壊することができる。
【0070】
二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の設計方法において、複数のフォトニック結晶スーパーセル内の1種類以上の副格子のフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの平衡位置に対する協調的な移動及び回転を行うステップは、具体的には、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心として任意の点を選択することと、共振器中心に対するフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの距離及び角度に応じて、フォトニック結晶スーパーセル内の1種類以上の副格子がフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの平衡位置に対して変位ベクトルを移動させる形で、フォトニック結晶スーパーセルに対して渦状の空間位置変調を行うこととを含み、変位ベクトルの振幅及び位相は、共振器中心に対する副格子の位置の関数であり、それぞれの副格子の変位ベクトルの位相は一定の位相差を有し、変位ベクトルの振幅は、共振器の半径方向に沿ってゼロから最大振幅まで変化し、変位ベクトルの位相は、共振器中心の周りの円ごとに2πの整数倍の増分で共振器の角度方向に沿って連続的又は離散的に変化し、この任意の正又は負の整数は巻き数であり、このようにしてディラック渦共振器とも呼ばれる二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器が形成される。
【0071】
本開示の別の実施形態はまた、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器のための上記設計方法を用いて作製された二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器を提供する。作製された二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器は、それぞれが異なる屈折率を有する複数の材料層を含み、異なる屈折率を有する複数の材料層のうちのいずれか1つ以上の層が、上記の二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器を採用し、又は異なる屈折率を有する複数の材料層のうちのいずれか1つ以上の層が、上記の設計方法を用いて得られた二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器を採用する。
【0072】
図5aは、本開示の一実施形態による二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の概略構造図である。図5aに示すように、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器は、異なる屈折率を有する複数の材料層を含み、異なる屈折率を有する複数の材料層のうちのいずれか1つ以上の層が、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器のための上記の設計方法を用いて作製される。図5aに示す実施形態では、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器は、第1の材料1、第2の材料2、第3の材料3、及び第4の材料4から構成されるサンドイッチ構造であり、第2の材料2及び第3の材料3は中間層において互いに入れ子にされ、第1の材料1及び第4の材料4はそれぞれ中間層の上側及び下側に位置する。第1の材料1、第2の材料2、第3の材料3、及び第4の材料4は、半導体材料、有機材料、空気、ガス、金属又は絶縁体などの異なる屈折率を有する材料を採用し、これらは、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の構成及び支持に使用される。半導体材料は、Si、Ge、GaN、GaP、GaAs、InGaP、InGaAs、AlGaAs、AlGaN、GaAsP、InAs、InAlGaN、InSb、InP、又はInGaAsPからなる群から選択される1つ以上などの、III-V族、II-VI族又はIV族の任意の一元素材料又は化合物材料を含むことができる。
【0073】
本開示の一実施形態では、第2の材料2及び第3の材料3は、同じ層、すなわちサンドイッチ構造の中間層に位置する。図5bに示すように、第2の材料2は半導体材料を採用することができ、第3の材料3は空気を採用することができ、すなわち、第2の材料2をエッチングすることによって空隙が形成される。第2の材料2が半導体材料を採用する場合、第3の材料3が第2の材料2の屈折率とは異なる屈折率を有する誘電体材料を採用することもでき、すなわち、図5bに示す空隙は、第2の材料2の屈折率とは異なる屈折率を有する半導体材料で満たされている。
【0074】
上記実施形態では、第2の材料2は半導体材料を採用し、第3の材料3は空気を採用するか、又は第2の材料2と第3の材料3は異なる屈折率を有する半導体材料を採用する。この場合、中間層の上側及び下側に位置する第1の材料1及び第4の材料4は、いずれも半導体材料を採用することができ、いずれも空気を採用することもでき、又は第1の材料1及び第4の材料4の一方が半導体材料を採用し、他方が空気を採用する。
【0075】
上記実施形態では、第2の材料2をエッチングして空隙を形成する場合、空隙の深さは第2の材料2の厚さを超えない。実際の適用では、空隙の深さは、第2の材料2の厚さを超えることができ、第1の材料1又は第4の材料4に延びることができる。
【0076】
本開示の他の実施形態では、第2の材料2は空気を採用することができ、第3の材料3は半導体材料を採用することができ、この条件下で、中間層の上側及び下側にそれぞれ位置する第1の材料1及び第4の材料4は共に、半導体材料/半導体材料を同時に採用することができ、又は第1の材料1及び第4の材料4の一方が半導体材料を採用し、他方が空気を採用する。
【0077】
本開示で提供される二次元トポロジカル光共振器は、拡張可能なモード領域、大きな自由スペクトル範囲(FSR)、狭いビーム発散角、任意のモード縮退、及び様々な基板材料との適合性などの特性を有し、これらはハイパワー単一モードレーザに必要である。これらの利点は、大面積及び高エネルギー出力の出力中にレーザが単一横モード及び単一縦モードでもなお安定して動作できることを確実にするために面発光レーザに良好に適用することができる。
【0078】
図5cは、本開示の一実施形態による二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の平面構造の概略図である。二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の平面構造は、複数の六角形スーパーセルから構成され、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の共振器中心として任意の点が選択される。渦状の空間変調は、共振器中心に対するフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの距離及び角度に応じて、フォトニック結晶スーパーセル内の1種類以上の副格子がフォトニック結晶スーパーセルのそれぞれの平衡位置から変位ベクトルmを移動させる変調形態で、フォトニック結晶スーパーセルに対して行われ、変位ベクトルの振幅|m|及び位相φ=Arg(m)はすべて、共振器中心に対する副格子の位置の関数であり、それぞれの副格子の変位ベクトルの位相は一定の位相差を有し、変位ベクトルの振幅は、共振器の半径方向に沿ってゼロから最大振幅m0まで変化し、変位ベクトルの位相は、共振器中心の周りの円ごとに2πの整数倍の増分で共振器の角度方向に沿って連続的又は離散的に変化し、この任意の正又は負の整数は巻き数であり、このようにしてディラック渦共振器とも呼ばれる二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器が形成される。
【0079】
図5dは、3つの四角形単純格子から構成される六角形スーパーセル構造の概略図である。四角形単純格子のそれぞれは2つの副格子を含み、2つの副格子のうちの一方(図では薄い灰色で塗りつぶされている)が、振幅|m|及び対応する位相φを個々の平衡位置から移動させる。副格子は、第2の材料2に異なる誘電体材料(空気を含む)を充填することにより形成され、副格子の形状は、円形、三角形、又はその他の規則的又は不規則な形状及びパターンであり得るが、これらの構造に限定されない。
【0080】
本開示の二次元トポロジカルフォトニック構造は、設計自由度が大きく、共振器中心の空気孔のサイズを調整することによってすべての渦サイズに対して一定の周波数を有することができ、これは図7の計算結果によって最もよく証明されている。図7aに示すように、カイラル対称性がないために、小さいサイズの共振器のトポロジカルモードは一般に、バンドギャップの中央には現れない。大きいサイズの共振器のトポロジカルモードの周波数は、常にディラック点周波数に収束する。この時点では共振器中心ゾーンが変調されていないディラック格子に近く、したがって元のディラックスペクトルに対応しているからである。共振器内の副格子のサイズを調整することによって、小さいサイズの共振器のトポロジカルモードをバンドギャップの中心に調整することもできる。図7bに示すように、中央領域の副格子のサイズを大きくすることによって、共振器のトポロジカルモードの周波数はすべてディラック点周波数に収束する。Rが増加すると、これらの高次非トポロジカル共振器モードはバンドギャップの上又は下に位置するバルクモードから生じる。構造はC3v対称性を有するため、高次モードは二重項モードと一重項モードとを有する。図6aは、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の単一モードの近視野マップ及び遠視野マップである。すべてのモードフィールドの詳細な情報が、図8に示されており、右の挿入図は、2R=100aを有するトポロジカルに成形された偏光状態を示しており、これらのトポロジカルモードは、現在のレーザ共振器によって正確に必要とされる最大かつ最も均一なモードフィールド領域と最小の遠視野発散を有する。
【0081】
二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器のモードフィールドの直径(L)は、渦直径(2R)の増加と共に増加し、大モードフィールドの直径LはRα/(α+1)に比例し、これは図6bの計算結果によって証明されている。ゼロモードの波動関数ψ0(r)は質量関数、
【数3】
の動径積分によって決まり、これは式2の質量定義に従っている。制限されたαの場合、トポロジカルモードフィールドのサイズは、Rが増加するにつれてサブリニアに増加し、それはα=∞での理想的な線形増加率である。
【0082】
本開示の二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器は、図6aに示すように、単一モード動作に不可欠な、ロバストで大きな自由スペクトル範囲(FSR)を有する。線形ディラックバンド端の自由スペクトル範囲(∝L-1)は二次バンド端の自由スペクトル範囲(∝L-2)よりもはるかに大きく、大モードの場合、この利点は非常に明白である。本開示の二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器は、大きな自由スペクトル範囲(FSR)に対して同じL-1の利点を有し、このスケーリング比率は、任意の系統的パラメータの乱れに対してトポロジカルにロバストである。図6bからの計算結果は、本開示の二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器のこれらの特性を見事に証明した。大モードの場合、モードフィールド直径LはRα/(α+1)に比例し、自由スペクトル範囲の大きさはL-1に比例し、遠視野角はL-1に比例する。
【0083】
本開示の二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の単一モードの遠視野はベクトル光ビームであり、遠視野はレイリー・ゾンマーフェルト回折理論を用いて近視野を積分することによって得られる。大モードフィールドでは、ビーム角はモードフィールド直径に反比例する。本開示では、渦直径が200aを超えると遠視野半角が1°未満となり、これは狭光ビームレーザの作製に良好に適用することができる。
【0084】
実用的なデバイスとして、本開示の二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器は、熱放散、電気伝導及び機械的支持のための基板などの様々な基板上で動作することができる。図9では、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器は、均質な基板上に配置され、2つの異なるコア導波路構造、シリコン-空気(Si-Air)及びフォトニック結晶面発光レーザ(PCSEL)に関して品質係数Qと基板屈折率(nsub)との関係が計算されるが、共振器の品質係数Qの値は、渦サイズが増加するにつれてさらに増加し得る。
【0085】
シリコン-空気(Si-Air)構造では、基板上にシリコン膜が配置され、共振器の品質係数Qの値は(べき乗則に基づく)nsubの増加に伴って徐々に減少し、臨界屈折率nc sub=2.6に達すると品質係数Qの値は指数関数的に減少し(図9の円点線)、この時、nc subの値はシリカ、サファイア、窒化ガリウムなどの一般的な基板材料をカバーしている。nc sub=3の場合、これは、フォトニック結晶面発光レーザ(PCSEL)で現在使用されているGaAs/AlGaAs材料系(図9の四角線)に適合し、面発光レーザにおける本開示の二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の応用可能性も十分に示している。
【0086】
本開示における二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器のスペクトル及びモードフィールドなどの特性を検証するために、電子ビームリソグラフィー及びドライエッチングの方法を利用することにより、フォトニック結晶共振器は絶縁基板のシリコン(SOI)膜上に作製される。フォトニック結晶共振器の最下層にあるシリカは、機械的安定性を提供するために使用される。本実施形態の実験では、α=4であり、格子定数は490nmであることが好ましい。
【0087】
図10aは、上面図及び断面透視図を含む二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の走査型電子顕微鏡画像である。図10bは、異なる巻き数ω=+1、2、3を有する共振器に対する測定結果を示す。図10bのスペクトル画像は、トポロジカルモードの数が巻き数の値と等しく、トポロジカルモードの遠視野実験結果がシミュレーション計算結果とよく一致することを明らかにしている。実験的測定は、交差偏光反射率測定装置を用いて行われる。さらに、図10bでは、放射パターンは水平偏光フィールド分布であり、ゼロ強度の放射状の線の数は、これらのベクトルビームのトポロジカル電荷(大きさ)に等しい。
【0088】
図10cは、最大のディラック質量(m0)及び渦直径(2R)に対する品質係数Qと波長(λ)の変化関係を示す。いずれの場合も、品質係数Qは、モードフィールドの面積が増加するにつれて増加し、モードフィールドの面積は、ディラック質量のバンドギャップが減少し、渦直径が増加するにつれて増加する。
【0089】
図10dは、渦直径が変化するにつれて二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器のスペクトルが変化する条件を示しており、実験結果は図6aのシミュレーション計算結果と一致している。本開示のこの実施形態では、渦直径が約30μmに増加すると、トポロジカルモードの波長はディラック波長に収束する。高次モードも解析され、2R=50μmのときの全スペクトルがプロットされている。さらに、単一モードの場合の偏光遠視野が測定され、実験結果はシミュレーション計算結果とよく一致している。
【0090】
本開示で提供される二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器に基づいて、レーザにおける二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器の利用がさらに詳細に記載されており、レーザは、面発光レーザであることができ、上記の二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器又は上記の設計方法によって得られる二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器を有する。
【0091】
図11aは、本開示の一実施形態による、二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器を有するレーザの構造概略図であり、図11bは、図11aに示されるレーザの断面図である。レーザは、下部電極1と、下部基板層2と、活性層3と、フォトニック結晶層4と、上部基板層5と、上部電極6とを下から上に連続して含み、フォトニック結晶層4は、活性層3の上、下、又は中にあることができる。下部電極及び上部電極は、主に活性層への電荷注入に使用され、下部電極1はまた、レーザエネルギーを上方に反射してレーザ光を一方向に出力することができる。上部基板層及び下部基板層は共に、基板材料と、緩衝材と、分布ブラッグ反射(DBR)材料とを含む。本開示によって提供される構造は、GaAs、InP、GaNなどの現在流通しているレーザに一般に使用される材料系に利用可能であり、活性層3は、レーザ出力を形成するために光利得を生成するための複数の量子井戸又は量子ドットを選択する。活性層3に異なる誘電体材料(空気を含む)を充填することにより、屈折率が変化した空間配置(フォトニック結晶層4)、及び図11a及び11bに示すフォトニック結晶構造は、本開示の配置方法だけである。フォトニック結晶共振器は、光子を光利得で共振器に制限し、共振器は光信号を選択的に拡大してレーザ発振を形成し、それによって高性能のレーザ出力を実現する。
【0092】
本開示の二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器は、ハイパワー単一モードレーザに必要な、大きなモードフィールド面積、大きな自由スペクトル範囲(FSR)、狭いビーム発散角、任意のモード縮退、及び様々な基板材料適合性などの特性を有する。これらの利点は、レーザが大面積及び高エネルギー出力の下で単一横モード及び単一縦モードでもなお安定して動作できることを確実にするために面発光レーザに良好に適用することができる。図6からの計算結果は、本開示の二次元トポロジカルフォトニック結晶共振器がこれらの特性を有することを明らかにした。
【0093】
本開示の様々な実施形態及び/又は特許請求の範囲に記載された特徴は、そのような組み合わせ又は組み込みが本開示に明示的に記載されていない場合でも、様々な組み合わせ及び/又は組み込みを行うことができることが当業者によって理解されるであろう。特に、本開示の様々な実施形態及び/又は特許請求の範囲に記載された特徴は、本開示の主旨及び教示から逸脱することなく、多くの方法で組み合わせ又は組み込むことができる。これらの組み合わせ及び/又は組み込みのすべてが本開示の範囲に含まれる。
【0094】
本開示の実施形態は、上述されている。しかしながら、これらの実施形態は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を制限するものではない。様々な実施形態が上述されているが、これは、様々な実施形態の手段が併用できないことを意味するものではない。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって制限される。当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の範囲内にある複数の代替案及び修正を行うことができる。
【0095】
上述の特定の実施形態は、本開示の目的、技術的解決策、及び有益な効果をさらに詳細に説明しており、上述のものは、本開示の特定の実施形態にすぎず、本開示を制限するために使用されないことを理解されたい。本開示の主旨及び原理の範囲内のあらゆる修正、均等物、改良はすべて、本開示の保護範囲に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b