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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】熱成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/26 20060101AFI20240116BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B29C51/26
B29C51/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023084742
(22)【出願日】2023-05-23
【審査請求日】2023-10-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304050369
【氏名又は名称】株式会社浅野研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高井 章伍
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-138390(JP,A)
【文献】特開2016-221686(JP,A)
【文献】特開2017-065221(JP,A)
【文献】特開2020-196204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00,51/10,51/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のシートを加熱するシート加熱手段と、前記シートの金型賦形又は基材への被覆接着に用いる金型と、成形時に前記シートの上部に配置される第1チャンバ及び下部に配置される第2チャンバを備える熱成形装置において、
前記第1チャンバと前記第2チャンバの内側に形成される作業室の内圧を保持するためのシール部と、
前記第1チャンバに固定され前記シートの上面を押さえる第1枠体と、
前記第2チャンバに固定され前記シートを支持する第2枠体と、を備え、
前記第1枠体と前記第2枠体は、前記シール部とは別部材として設けられ、
前記シートが前記第2枠体に支持された状態で前記第1チャンバと前記第2チャンバが閉じられることで、前記シートの上面に前記第1枠体が当接して前記シートを押さえ保持するので、前記シール部のメンテナンスと前記第1枠体又は前記第2枠体の交換を、別に行うことが可能となること
を特徴とする熱成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱成形装置において、
前記シール部は、前記第1チャンバの開口部をなす第1チャンバ端面、及び前記第2チャンバの開口部をなす第2チャンバ端面のそれぞれの外周に配設されてなり、
前記第1枠体は、前記第1チャンバ端面であって前記シール部の内側に着脱可能に固定され、
前記第2枠体は、前記第2チャンバ端面であって前記シール部の内側に着脱可能に固定され、
前記第1チャンバと前記第2チャンバが閉じられることで、前記シール部が機能して形成される前記作業室が、前記第2枠体と前記シートによって第1室と第2室に仕切られること、
を特徴とする熱成形装置。
【請求項3】
請求項1に記載の熱形成装置において、
前記金型を昇降させる金型昇降台を備え、
前記シール部は、前記第1チャンバの開口部をなす第1チャンバ端面の外周、及び前記金型昇降台の上面に配設されてなり、
前記第1枠体は、前記第1チャンバ端面であって前記シール部の内側に着脱可能に固定され、
前記第2枠体は、前記第2チャンバの開口部をなす第2チャンバ端面に固定された外周枠部の内側に着脱可能に固定され、
前記第1チャンバと前記第2チャンバが閉じられ前記金型昇降台が上昇して前記外周枠部と前記第2枠体の下面に当接することで、前記第1チャンバと前記第2チャンバの内側に形成される前記作業室が、前記第2枠体と前記外周枠部と前記シート及び前記金型昇降台によって、第1室と第2室に仕切られること、
を特徴とする熱成形装置。
【請求項4】
求項2に記載の熱成形装置において、
前記シール部が、
前記第1チャンバ端面に着脱可能に固定される第1シール部材と、
前記第2チャンバ端面に着脱可能に固定される第2シール部材よりなること、
を特徴とする熱成形装置
【請求項5】
請求項4に記載の熱成形装置において、
前記第2枠体は、第2シール部材に固定されていること、
を特徴とする熱成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製シート材の熱成形における技術に関し、具体的には樹脂製シート材を輻射式加熱装置で加熱して成形するにあたって、段取り替え(作業内容や製品の種類を変更する際に行われる作業)に必要な時間を短縮する技術である。
【背景技術】
【0002】
熱成形機は、加熱して軟化した樹脂製シート材を成形し、食品容器やブリスターパックを作るのに用いられる。また、自動車部品や家電、工業用トレーなど様々なプラスチック製品を作るのに利用されている。そして近年、熱成形機を用いて模様を転写したり、成形基材に外表面に接着したりといった用途にも、位置精度を求められる成形にも使われている。
【0003】
特許文献1には、絵付け装置に関する技術が公開されている。第1チャンバ部材の開口端面を成す第1フランジと、第2チャンバ部材の開口端面を成す第2フランジとを突き合わせることによって閉じられた作業室を形成すると共に、第1フランジと第2フランジとの間にフィルムを介在させることによって、作業室を第1チャンバ部材側となる第1室と、第2チャンバ部材側となる第2室との2つに仕切る。作業室に存する空気を吸引した後、第2室の内圧を第1室に対して正圧にすることによって、第1チャンバ部材内に配されたワークにフィルムを被覆させる。この絵付け装置は、第1フランジを第1チャンバ部材に対して着脱自在とし、且つ第2フランジを第2チャンバ部材に対して着脱自在として、ワークの嵩に応じて交換可能としている。
【0004】
したがって、第1チャンバ部材の開口端面と第1フランジの当接面にはシールパッキンが設けられ、第2チャンバ部材の開口端面と第2フランジの当接面にもシールパッキンが設けられて気密性を保持している。また、第1フランジとフィルムの当接面にシール部材が設けられ、第2フランジに保持されるフィルムに第1フランジを押しつけることで、第1フランジと第2フランジとの間の気密性を担保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3203881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載される技術では、第1フランジと第2フランジが当接することで第1チャンバ部材と第2チャンバ部材の形成する作業室の気密性を付与する構成となっているため、第1フランジ及び第2フランジはそれぞれ気密性を担保する構成を有している必要がある。このため、第1フランジ及び第2フランジは、何れも加工コストが高い部品となり、交換した場合には気密性のチェックをしっかり行う必要がある。
【0007】
しかしながら、気密性を保持するための部品を複数用意し、これを交換する作業を成形品が変わる毎に行うことは、作業者の負担になる上、交換時間を要するという問題がある。また、複数の第1フランジ及び第2フランジを用意することはコスト的にもデメリットとなるし、管理面でのデメリットにも繋がる。
【0008】
そこで、樹脂製シート材を用いて加熱成形する場合に、シート保持を行う部材と気密性保持を行う部材が別に設けられた熱成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による熱成形装置は、以下のような特徴を有する。
【0010】
(1)樹脂製のシートを加熱するシート加熱手段と、前記シートの金型賦形又は基材への被覆接着に用いる金型と、成形時に前記シートの上部に配置される第1チャンバ及び下部に配置される第2チャンバを備える熱成形装置において、
前記第1チャンバと前記第2チャンバの内側に形成される作業室の内圧を保持するためのシール部と、
前記第1チャンバ端面側に固定され前記シートの上面を押さえる第1枠体と、
前記第2チャンバ端面側に固定され前記シートを支持する第2枠体と、を備え、
前記シートが前記第2枠体に支持された状態で前記第1チャンバと前記第2チャンバが閉じられることで、前記シートの上面に前記第1枠体が当接して前記シートを押さえ保持すること、
を特徴とする。
【0011】
上記(1)に記載の態様により、熱成形装置に備えられるシートを保持するための第1枠体及び第2枠体は、第1チャンバ端面及び第2チャンバ端面に第1チャンバ及び第2チャンバとは別部材として取り付けられて固定され、必要に応じて交換可能な構成となっている。また、第1枠体及び第2枠体とは別にシール部が設けられる構成となっている。したがって、第1枠体及び第2枠体の交換と、シール部のメンテナンスは別に行うことができる。
【0012】
そうすると、第1チャンバと第2チャンバが形成する作業室の圧力維持を担当するシール部が、シートの種類や金型の変更によって左右されない。つまり、第1枠体及び第2枠体の交換によって、シール部分の調整を行う必要がなくなるので、交換作業の時間短縮に貢献することができる。実際に、成形に用いられるシートや金型を交換した場合や、第1枠体及び第2枠体の損耗によって交換をする機会は、シール部分の調整の機会と別になることが多いため、交換作業の簡素化などにも繋がる。
【0013】
(2)(1)に記載の熱成形装置において、
前記シール部は、前記第1チャンバの開口部をなす第1チャンバ端面、及び前記第2チャンバの開口部をなす第2チャンバ端面のそれぞれの外周に配設されてなり、
前記第1枠体は、前記第1チャンバ端面であって前記シール部の内側に着脱可能に固定され、
前記第2枠体は、前記第2チャンバ端面であって前記シール部の内側に着脱可能に固定され、
前記第1チャンバと前記第2チャンバが閉じられることで、前記シール部が機能して形成される前記作業室が、前記第2枠体と前記シートによって第1室と第2室に仕切られること、
が好ましい。
【0014】
上記(2)に記載の態様により、第2枠体とシートによって第1チャンバと第2チャンバの内部に形成される作業室が第1室と第2室に仕切る構成になっているので、第1枠体の構造を単純化することが可能になる。これは、第2枠体とシートが、作業室を仕切る機能を果たすため、第1枠体の方にはその機能が求められないからである。したがって、例えば、第1枠体の構成として、第1フランジ端面に渡される桟状の部材にシートの外周を押さえるための額縁状の部材が備えられる構造などが考えられ、気密性の維持を必要としない単純な構成で足りるため、結果的に装置のコストを下げることができる。
【0015】
(3)(1)に記載の熱成形装置において、
前記金型を昇降させる金型昇降台を備え、
前記シール部は、前記第1チャンバの開口部をなす第1チャンバ端面、及び前記第2チャンバの開口部をなす第2チャンバ端面のそれぞれの外周に配設されてなり、
前記第1枠体は、前記第1チャンバ端面であって前記シール部の内側に着脱可能に固定され、
前記第2枠体は、前記第2チャンバ端面であって前記シール部の内側に着脱可能に固定され、
前記第1チャンバと前記第2チャンバが閉じられ前記金型昇降台が上昇して前記外周枠部と前記第2枠体の下面に当接することで、前記第1チャンバと前記第2チャンバの内側に形成される作業室が、前記第2枠体と前記シートによって、第1室と第2室に仕切られること、
が好ましい。
【0016】
上記(3)に記載の態様により、第2枠体とシートとで第1室と第2室に区切る構成になっているので、第1枠体だけでなく第2枠体の構造も単純化することができる。これは、金型昇降台が第2枠体の下面に当接することで、第1室と第2室の差圧を金型昇降台が受ける構造となるためである。この結果、第1枠体だけでなく第2枠体も簡易な構造の採用が可能となり、第1枠体と第2枠体にかかるコストを下げることができて、装置コストを下げることに貢献することができる。
【0017】
(4)(1)に記載の熱成形装置において、
前記金型を昇降させる金型昇降台を備え、
前記シール部は、前記第1チャンバの開口部をなす第1チャンバ端面の外周、及び前記金型昇降台の上面に配設されてなり、
前記第1枠体は、前記第1チャンバ端面であって前記シール部の内側に着脱可能に固定され、
前記第2枠体は、前記第2チャンバ端面に固定された外周枠部の内側に着脱可能に固定され、
前記第1チャンバと前記第2チャンバが閉じられ前記金型昇降台が上昇して前記外周枠部と前記第2枠体の下面に当接することで、前記第1チャンバと前記第2チャンバの内側に形成される作業室が、前記第2枠体と前記外周枠部と前記シート及び前記金型昇降台によって、第1室と第2室に仕切られること、
が好ましい。
【0018】
上記(4)に記載の態様により、第2枠体と外周枠部とシート、それに金型昇降台とで第1室と第2室に仕切る構成になっているので、第1枠体だけでなく第2枠体の構造も単純化することが可能となる。これは、金型昇降台が第2枠体の下面に当接することで、第1室と第2室の差圧を金型昇降台が受ける構造となるためである。この結果、第1枠体だけでなく第2枠体も簡易な構造の採用が可能となる。これは(3)に記載の態様と類似しているが、第1室と第2室の仕切る機能を金型昇降台にも持たせることで、更に第2枠体のコストを下げることが可能になる。そして、装置コストを下げることに貢献することができる。
【0019】
(5)(1)乃至(3)の何れかに記載の熱成形装置において、
前記シール部が、
前記第1チャンバ端面に着脱可能に固定される第1シール部材と、
前記第2チャンバ端面に着脱可能に固定される第2シール部材よりなること、
が好ましい。
【0020】
上記(5)に記載の態様により、シール部が第1シール部材と第2シール部材よりなり、それぞれ第1フランジ及び第2フランジに着脱可能に固定されている構成となっていることから、第1シール部材及び第2シール部材が消耗した場合に交換可能である。シール部材を第1チャンバ及び第2チャンバと別の部材にしたことで、シール機能の低下によって必要になるメンテナンスをシール部材の交換という方法で簡易化することができ、したがって、装置のランニングコストを抑えることが可能である。
【0021】
(6)樹脂製のシートを加熱するシート加熱手段と、前記シートの金型賦形又は基材への被覆接着に用いる金型と、成形時に前記シートの上部に配置される第1チャンバ及び下部に配置される第2チャンバを備える熱成形装置において、
前記第1チャンバの開口部をなす第1チャンバ端面に、
前記第1チャンバ及び前記第2チャンバの内圧を保持するために、着脱可能に固定される第1シール部材と、
該第1シール部材の内側に着脱可能に固定される前記シートの上面を押さえる第1枠体を備え、
前記第2チャンバの開口部をなす第2チャンバ端面に、
前記第1チャンバ及び前記第2チャンバの内圧を保持するために着脱可能に固定され、前記第1シール部材と対応する第2シール部材が備えられ、
該第2シール部材に前記シートを支持する第2枠体が着脱可能に固定され、
前記シートが前記第2枠体に支持された状態で前記第1チャンバと前記第2チャンバが閉じられることで、前記シートの上面に前記第1枠体が当接して前記シートを押さえられること、
を特徴とする。
【0022】
上記(6)に記載の態様により、(1)と同様の効果が得られる。つまり、第1チャンバと第2チャンバが形成する作業室の圧力維持を担当するシール部が、シートの種類や金型の変更によって左右されない。その結果、第1枠体及び第2枠体の交換作業をする際に、シール部分の調整を行う必要がなくなるので、交換作業の時間短縮に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態の、熱成形装置の概略構成についての説明図である。
図2】第1実施形態の、第1枠体の平面図である。
図3】第1実施形態の、第2枠体の平面図である。
図4】第1実施形態の、熱成形装置へシートを投入する様子を示す説明図である。
図5】第1実施形態の、熱成形装置へシートを配置した様子を示す説明図である。
図6】第1実施形態の、熱成形装置がシートを挟み込む様子を示す説明図である。
図7】第2実施形態の、熱成形装置の概略構成についての説明図である。
図8】第3実施形態の、熱成形装置の概略構成についての説明図である。
図9】第3実施形態の、熱成形装置の成形時における説明図である。
図10】第3実施形態の、下側枠体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
まず、本発明に係る第1の実施形態の熱成形装置100の構成の概略について説明をする。図1は、第1実施形態の、熱成形装置100の概略構成について説明する説明図である。熱成形装置100は、第1チャンバ101、第2チャンバ102、加熱手段110、及び金型200を有している。第1チャンバ101と第2チャンバ102で、成形対象となる樹脂製シートSを保持し、上側に配置された加熱手段110で加熱しながら成形をする構成の熱成形装置100である。
【0025】
熱成形装置100の、第1チャンバ101及び第2チャンバ102には、それぞれ図示しないコンプレッサーや真空ポンプが接続され、コンプレッサーや真空ポンプを作動させることで第1チャンバ101及び第2チャンバ102内の圧力調整を行うことができる。第1チャンバ101は下方に開口し、第2チャンバ102は上方に開口し、第1チャンバ101と第2チャンバ102を昇降させることで樹脂製シートSを挟み込むことのできる構造とすることで、樹脂製シートSを保持する。
【0026】
樹脂製シートSは、矩形にカットされた熱可塑性樹脂よりなるシート材を採用している。なお、JISの規格によればフィルムとは、厚さが250μm未満のプラスチックの膜状のものと定義され、シートとは厚さが250μm以上のプラスチックの薄い板状のものを指すが、本実施形態では樹脂製シートSとしてシートという文言を使用するものの、厚みを限定する意図はない。このため、薄手のフィルム又は厚手のシートの何れにも本発明を適用することを妨げない。
【0027】
加熱手段110は、樹脂製シートSの上方に配置されて、樹脂製シートSを上側から加熱する目的で用いられる輻射式加熱を行うヒーター111群であり、複数のヒーター111がタイル状に並べられてなる。加熱手段110は、図示しない昇降装置に保持されており、第1チャンバ101内を任意の高さに加熱手段110を移動可能な構成となっている。また、それぞれのヒーター111は、任意に出力調整することができる。金型200は、図示しない任意の高さに移動可能な昇降機構を備えた下側昇降台210に保持されており樹脂製シートSの成形に用いる。
【0028】
図2に、第1枠体の平面図を示す。図3に、第2枠体の平面図を示す。第1枠体120は、第1チャンバ101の端面101aに着脱可能に固定される。図2に示される様に、第1枠体120は井桁状に形成されており、第1チャンバ101の端面101aに渡される桟121と、横木122よりなる。桟121と横木122より囲まれる四角部分が樹脂製シートSに当接する部分となる。桟121の両端には端面101aに固定されるため孔が設けられ、後述する位置決め機能を有する固定具P1が挿通されて固定される。
【0029】
第2枠体130は、第2チャンバ102の端面102aに着脱可能に固定される。図3に示される様に、第2枠体130は平板状に形成されてその中央に窓部132が設けられている。第2枠体130の位置決め及び固定は固定具P3によって行われる。この窓部132は金型200を用いて成形するにあたって金型200が通過する為に設けられている。保持枠131は第2枠体130に固定され、樹脂製シートSを保持する機能を有している。そして、第2枠体130と第1枠体120が当接することで樹脂製シートSが挟まれて保持される。
【0030】
第2枠体130の外周部分には固定具P2が挿通される固定用孔135が設けられている。シール溝102bは図3に示すように第2枠体130の外周に当接する位置に、第2チャンバ102の端面102a上に形成されている。なお、シール溝102bは第2枠体130の側に設けても良いが、第2枠体130の機械加工を必要とするため、交換品となる第2枠体130のコストアップ要因となるため、シール溝102bは第2チャンバ102側に設ける方が望ましい。
【0031】
第1チャンバ101の端面101aには、第1枠体120が固定される外側に、第1シール部材140が固定具P4に位置決めされて設けられている。第2チャンバ102の端面102aには、第2枠体130が固定される外側に、第2シール部材150が設けられている。第1シール部材140は、第1チャンバ101の外周に切れ目無く配置されており、第2シール部材150は、同様にして第2チャンバ102の外周に切れ目無く配置されている。また、図示していないが第1シール部材140と第1チャンバ101の端面101aの間には、気密性が維持できるようにシール材が設けられており、第2シール部材150と第2チャンバ102の端面102aの間には、気密性が維持できるようにシール材が設けられている。
【0032】
第1シール部材140と第2シール部材150の間には、パッキン155が設けられ、第1チャンバ101と第2チャンバ102が閉じられた状態では、パッキン155が潰されることで、第1チャンバ101と第2チャンバ102で囲われる作業空間50の気密性を維持する様に作用する。また、第1シール部材140と第1チャンバ101の端面101aの間、及び第2シール部材150と第2チャンバ102の端面102aの間に設けられる図示しないシール材も同様に作用して、作業空間50の気密性が保たれる。
【0033】
次に、樹脂製シートSの成形する手順について説明を行う。成形時における樹脂製シートSの保持の様子は図1図4乃至図6で示しており、樹脂製シートSの保持は、図4図5図6、そして図1の順に行われる。
【0034】
まず、図4に示すように、第1チャンバ101を上昇させた状態で、樹脂製シートSを熱成形装置100の外部から投入する。この場合、図示はしていないが事前に樹脂製シートSを加熱していても良いし、搬送機械を用いて樹脂製シートSを投入しても良い。
【0035】
次に、図5に示すように、第2枠体130の上に樹脂製シートSが配置され、その状態で第1チャンバ101を第2チャンバ102に近づける。そして、図6に示すように第1シール部材140と第2シール部材150が当接するにあたって、パッキン155を潰すような形となり、作業空間50の気密を確保する。この状態で、図1に示すように、樹脂製シートSは第1枠体120と第2枠体130に挟持される。この状態において、第2枠体130とそれに保持される樹脂製シートSによって、作業空間50は第1室10及び第2室20に分けられる。
【0036】
この後、加熱手段110によって樹脂製シートSが加熱され、下側昇降台210に保持された金型200によって樹脂製シートSの成形が行われる。成形を行う際には、第1室10側は正圧に、第2室20側は負圧にして、圧空・真空成形を行うことで、より精度の高い成形を実現している。
【0037】
第1実施形態の熱成形装置100は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0038】
まずシール部を構成する第1シール部材140及び第2シール部材150と、樹脂製シートSを押さえる第1枠体120と第2枠体130が別々に第1チャンバ101及び第2チャンバ102に取り付けられているので、段取り替えなどに伴う第1枠体120と第2枠体130の変更の際に、第1シール部材140及び第2シール部材150の交換を必要とせず、調整が容易になる為に交換及び調整の時間を短縮することが可能となる。
【0039】
これは、樹脂製シートSを加熱するシート加熱手段(加熱手段110)と、樹脂製シートSの金型賦形又は基材への被覆接着に用いる金型200と、成形時に樹脂製シートSの上部に配置される第1チャンバ101及び下部に配置される第2チャンバ102を備える熱成形装置100において、第1チャンバ101の開口部をなす第1チャンバ端面101aと、第2チャンバ102の開口部をなす第2チャンバ端面102aとに配設される、第1チャンバ101及び第2チャンバ102の内圧を保持するためのシール部(第1シール部材140及び第2シール部材150)と、第1チャンバ端面101a備えられた第1シール部材140より内側に固定され樹脂製シートSの上面を押さえる第1枠体120と、第2チャンバ端面102aに備えられた第2シール部材150より内側に固定され樹脂製シートSを支持する第2枠体130と、を備えている。
【0040】
そして、樹脂製シートSが第2枠体130に支持された状態で第1チャンバ101と第2チャンバ102が閉じられることで、樹脂製シートSの上面に第1枠体120が当接して樹脂製シートS押さえられること、を特徴とするからである。これによって、第1チャンバ101と第2チャンバ102の気密性は、第1枠体120と第2枠体130の交換に左右されなくなる。
【0041】
これは、第1チャンバ101と第2チャンバ102の気密性を担保する構成が、シール部(第1シール部材140及び第2シール部材150)によるものであり、第1枠体120と第2枠体130の交換の際に取り外す必要がない。このために、第1枠体120と第2枠体130の交換が行われても、気密性は交換されていない第1シール部材140及び第2シール部材150によって担保される。つまり、第1枠体120と第2枠体130の交換の際に、第1チャンバ101と第2チャンバ102の気密性のチェックなどを必要としなくなるため、結果的に交換に必要な作業時間の短縮に繋がる。また、作業内容が単純化するため、作業員にかかる負荷を軽減させる効果も期待出来る。
【0042】
第1枠体120と第2枠体130の交換は、熱成形装置100の段取り替えをする場合に、金型200の交換に応じて行われる。第1枠体120又は第2枠体130の交換は、金型200と樹脂製シートSとの関係で、金型200に対して樹脂製シートSが大きすぎる場合には、ロス(廃棄されるシートの量)を増やしてしまう結果になるため好ましくない。したがって、段取り替えの際に第1枠体120及び第2枠体130の交換が生じることがあるが、その度に第1チャンバ101と第2チャンバ102の気密性のチェックの必要が出てくると、確認手順が増え、作業が複雑となる。しかし、第1実施形態に示した様に、シール部(第1シール部材140及び第2シール部材150)と、第1枠体120及び第2枠体130を別体とすることで、交換作業の単純化と時間短縮を実現できる。
【0043】
また、第1チャンバ101と第2チャンバ102の気密性を維持するために、第1シール部材140又は第2シール部材150だけを交換するケースも考えられる。気密性を維持するために機械加工で作られる部品と弾性体を組み合わせて使う必要があるため、コストの高い部品となる。したがって、定期的に弾性体のチェックなど必要性があり、そうした場合にも、第1シール部材140又は第2シール部材150、或いはその他のシール材の性能をチェックして必要があれば取り替えることが可能である。
【0044】
また、第1シール部材140又は第2シール部材150によって、第1チャンバ101と第2チャンバ102の気密性を維持する構造にしていることから、第1枠体120の構造を単純化することが可能となる。第2枠体130は、樹脂製シートSを第1枠体120によって押さえた状態で、作業空間50を第1室10と第2室20に分割する機能を要求される。このため、第2枠体130は第1室10と第2室20との差圧に耐えられる板厚で形成されていれば良く、その窓部132を覆う形になる樹脂製シートSが差圧による変形をすることとなる。なお、第1チャンバ101と第2チャンバ102が閉じて、状態で、第2枠体130の下面を下側昇降台210が受ける構造とすれば、第2枠体130の厚みを薄くしても下側昇降台210が差圧発生による荷重を受けるので、第2枠体130の構造の簡易化に繋がる。
【0045】
一方、第1枠体120は、桟121と横木122よりなる簡素な構造体としている。これは、第1室10を圧空した場合に第1枠体120に対する影響を受けにくくする目的があるが、第1枠体120は気密性を担保することを要求されない簡素な構造で良いため、結果的に熱成形装置100のコスト削減に貢献することが出来る。
【0046】
(第2実施形態)
次に本発明の第2の実施形態について説明する。第2実施形態の熱成形装置100は、第1実施形態の熱成形装置100とその構成が殆ど同じであるが、第2シール部材150の形状が異なる。以下、その構成について説明を行うが、第1実施形態と同じ機能を果たすものに関しては同じ符号を付して説明している。
【0047】
図7に、第2実施形態の、熱成形装置の概略構成についての説明図を示す。第1実施形態の第2シール部材150との違いは、第2シール部材150に第2枠体130が固定される構造を採用している点である。第2シール部材150の形状は、第2チャンバ102の端面102aと当接する面が多くなっており、第2枠体130は第1シール部材140が当接する側に取り付けられる構造となっている。
【0048】
この結果、第2実施形態では第1実施形態と異なり、第2シール部材150の交換を行う際には、第2枠体130を一緒に交換する必要があるが、第2シール部材150の交換頻度は第2枠体130の交換頻度に比べて高くないため、第1実施形態と同様の効果、つまり、段取り替えなどに伴う第1枠体120と第2枠体130の変更の際に、第1シール部材140及び第2シール部材150の交換を必要とせず、調整が容易になる為に交換及び調整の時間を短縮することが可能となる。
【0049】
(第3実施形態)
次に本発明の第3の実施形態について説明する。第3実施形態の熱成形装置100は、第1実施形態の熱成形装置100とその構成が類似しているが、第2枠体130に対応する第2枠体245の構造及び下側昇降台210の構造が異なる。以下、その構成について説明を行うが、第1実施形態と同じ構造で、同じ機能を果たすものに関しては同じ符号を付して説明している。
【0050】
図8に、第3実施形態の、熱成形装置の概略構成についての説明図を示す。図9に、熱成形装置の成形時における説明図を示す。図10に、下側枠体の平面図を示す。第1チャンバ101及び第1枠体120の構成は第1実施形態と同じなので説明を割愛するが、第2チャンバ102の端面102a側の構成は第1実施形態と異なる。端面102zには、下部枠体240が当接するように配置される。端面102aには固定具P4が設けられて、下部枠体240を位置決め及び保持している。また、シール溝102bが設けられて機密性の保持に寄与している。
【0051】
下部枠体240は、図10に示すように、外周枠部241とその内周に配置される第2枠体245よりなり、第2枠体245は、横木246及び桟247よりなり、桟247が外周枠部241に取り外し可能に固定されることで第2枠体245が保持され、第1枠体120と第2枠体245が樹脂製シートSを挟んで保持する構成となっている。
【0052】
また、金型200を昇降する下側昇降台210の上面に、外周溝210aと内周溝210bが設けられている。外周溝210aにはシール材が備えられ、第2枠体245の下面に下側昇降台210が当接した時に、外周枠部241側と下側昇降台210との間の機密性を確保する。また、内周溝210bにはシール材が備えられ、第2枠体245の下面に下側昇降台210が当接した時に第2枠体245と下側昇降台210との間の機密性を確保する。
【0053】
この結果、第3実施形態では第1実施形態と異なり、作業空間50を第1室10及び第2室20に分けるのは、下部枠体240とそれに保持される樹脂製シートS、そして下側昇降台210が機能して行われる。つまり、第2枠体245と第1枠体120とで樹脂製シートSが保持された状態で、更に下側昇降台210が下部枠体240の下面に当接する形で、作業空間50を第1室10と第2室20に分けられる。こうすることで、第1室10に正圧が、第2室20に負圧がかかった場合にも、下部枠体240の下面に下側昇降台210が当接していることでその荷重を負担するために、第2枠体245の構造強度が低くても良い。したがって、第2枠体245の制作コストを下げることが可能となる。
【0054】
また、第1実施形態と同様に、機密性を担保する第1シール部材140及び下側昇降台210の交換をせずに、第1枠体120と第2枠体245の交換を可能とするため、作業空間50の機密性を担保するための調整を必要とせずに段取り替えをすることができる。
【0055】
以上、本発明に係る熱成形装置100に関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、第1枠体120、第2枠体130の形状などを適宜変更することを妨げない。ただし、第2枠体130の機能として、樹脂製シートSを保持した状態で、作業空間50を第1室10及び第2室20に区切る機能を持たせる必要がある。また、加熱手段110は輻射式加熱を行うヒーター111群を用いているが、熱板など他の加熱手段を用いることを妨げない。
【0056】
また、第1実施形態乃至第3実施形態では何れも第1チャンバ101を第2チャンバ102に近接させる旨説明しているが、特に限定されるものではなく、第2チャンバ102を第1チャンバ101に近接させても良いし、両方を動かして近接させても良い。
【符号の説明】
【0057】
S 樹脂製シート
100 熱成形装置
101 第1チャンバ
101a 端面
102 第2チャンバ
102a 端面
110 加熱手段
111 ヒーター
200 金型
【要約】
【課題】樹脂製シート材を用いて加熱成形する場合に、シート保持を行う部材と気密性保持を行う部材が別に設けられた熱成形装置を提供する。
【解決手段】樹脂製シートSを加熱する加熱手段110と、樹脂製シートSの金型賦形又は基材への被覆接着に用いる金型200と、第1チャンバ101及び第2チャンバ102を備える熱成形装置100において、第1チャンバ101の開口部をなす第1チャンバ端面101aと、第2チャンバ102の開口部をなす第2チャンバ端面102aとに配設される、第1チャンバ101及び第2チャンバ102の内圧を保持するためのシール部と、第1チャンバ端面101a備えられた第1シール部材140より内側に固定され樹脂製シートSの上面を押さえる第1枠体120と、第2チャンバ端面102aに備えられた第2シール部材150より内側に固定され樹脂製シートSを支持する第2枠体130とを備える。
【選択図】図1
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