(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】海上コンテナ管理方法、プログラム及び海上コンテナ管理システム
(51)【国際特許分類】
B65G 63/00 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
B65G63/00 J
(21)【出願番号】P 2023554873
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2022039795
【審査請求日】2023-09-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506255979
【氏名又は名称】株式会社シスコム
(74)【代理人】
【識別番号】100180921
【氏名又は名称】峰 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】岩永 満宏
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-181885(JP,A)
【文献】特開2009-220952(JP,A)
【文献】特開2006-335507(JP,A)
【文献】特開2018-167940(JP,A)
【文献】特開平09-050484(JP,A)
【文献】特開平06-227790(JP,A)
【文献】特許第6332887(JP,B2)
【文献】特開2017-114673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上コンテナに対する作業を管理する海上コンテナ管理システムを用いた海上コンテナ管理方法であって、
前記海上コンテナ管理システムは、
前記海上コンテナに対して作業を行う第1作業車に設置されて第1信号を無線により発信する第1送信機と、
前記海上コンテナに対して作業を行う第2作業車が有して無線信号を受信する第2受信機とを備え、
前記第1送信機が、前記第2受信機に対して前記第1信号を無線により発信する第1送信ステップと、
前記第2受信機が、前記第1信号を受信する第2受信ステップと、
前記第2作業車が、前記第2受信ステップを契機として前記海上コンテナに対する作業を開始する第2作業開始ステップとを含
み、
前記第1送信機は、他の作業車に設置された送信機と重複しない固有番号を有しており、
前記第1送信ステップにおいて、前記第1送信機が発信する前記第1信号には、前記固有番号が含まれていて、
前記海上コンテナ管理システムは、受信した情報が正しいか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記判定部が、前記第1信号に含まれた前記固有番号が適切であるか否かを判定する判定ステップをさらに含む、海上コンテナ管理方法。
【請求項2】
前記海上コンテナ管理システムは、前記海上コンテナのコンテナ番号と前記固有番号とを対応させた作業フローリストを記憶する作業フロー記憶部をさらに備え、
前記判定ステップより前に、前記コンテナ番号を取得するコンテナ番号取得ステップをさらに含み、
前記判定ステップにおいて、前記判定部は、前記作業フローリストに基づいて判定する、請求項
1記載の海上コンテナ管理方法。
【請求項3】
前記海上コンテナ管理システムは、前記第2作業車が有して前記海上コンテナ管理システムに第2信号を送信可能な第2送信機をさらに備え、
前記第2受信ステップより後に、前記第2送信機が、前記海上コンテナ管理システムに前記第2信号を送信する第2送信ステップをさらに含む、請求項1記載の海上コンテナ管理方法。
【請求項4】
前記海上コンテナ管理システムは、前記第2作業車を制御する第2制御部をさらに備え、
前記第2作業開始ステップにおいて、前記第2制御部は、
前記第2作業車を制御して、前記海上コンテナに対する作業を開始させるか、又は、
前記第2作業車が有する第2表示部を制御して、作業対象である前記海上コンテナの情報を表示させる、請求項1記載の海上コンテナ管理方法。
【請求項5】
前記海上コンテナ管理システムは、
前記第2作業車の位置情報をリアルタイムに受信する第2GPS受信部と、
前記第2作業車の位置が適切か否かを判定する位置判定部とをさらに備え、
前記位置判定部が、前記第2GPS受信部が受信した信号に基づいて、前記第2作業車の位置が適切か否かを判定する位置判定ステップをさらに含む、請求項1記載の海上コンテナ管理方法。
【請求項6】
前記海上コンテナ管理システムは、
前記位置情報を受信する第1基地局と、
前記位置情報を補正する位置補正部とをさらに備え、
前記位置補正部が、前記第1基地局が受信した第1基地局信号を用いて前記第2作業車の位置についての情報を補正する位置補正ステップをさらに含む、請求項
5記載の海上コンテナ管理方法。
【請求項7】
前記海上コンテナ管理システムは、前記第1基地局とは別に、前記位置情報を受信する第2基地局をさらに備え、
前記位置補正ステップにおいて、前記位置補正部が、前記第1基地局信号に加え、前記第2基地局が受信した第2基地局信号も用いて前記第2作業車の位置についての情報を補正する、請求項
6記載の海上コンテナ管理方法。
【請求項8】
前記第1基地局は、前記第2作業車が存在するコンテナターミナルの敷地内に設置されている、請求項
6記載の海上コンテナ管理方法。
【請求項9】
前記海上コンテナ管理システムは、前記第1作業車を制御する第1制御部をさらに備え、
前記第1送信ステップの前に、前記第1制御部が、前記第1作業車を制御して、前記第1作業車の前方に走る作業車と一定以上の距離を保持させると共に、前記第1作業車の前方を走る作業車を追い越させない、第1走行制御ステップをさらに含む、請求項1記載の海上コンテナ管理方法。
【請求項10】
前記第1走行制御ステップにおいて、前記第1制御部が、前記第1作業車を制御して、一方通行の道路のみを走行させる、請求項
9記載の海上コンテナ管理方法。
【請求項11】
海上コンテナに対する作業を管理する海上コンテナ管理システムを用いた海上コンテナ管理方法であって、
前記海上コンテナ管理システムは、
前記海上コンテナに対して作業を行う第1作業車に設置されて第1信号を無線により発信する第1送信機と、
前記海上コンテナに対して作業を行う第2作業車が有して無線信号を受信する第2受信機とを備え、
前記第1送信機が、前記第2受信機に対して前記第1信号を無線により発信する第1送信ステップと、
前記第2受信機が、前記第1信号を受信する第2受信ステップと、
前記第2作業車が、前記第2受信ステップを契機として前記海上コンテナに対する作業を開始する第2作業開始ステップとを含み、
前記第1送信機は、ETC車載器であり、
前記第2受信機は、DSRCアンテナである
、海上コンテナ管理方法。
【請求項12】
前記海上コンテナ管理システムが有するコンピュータに、請求項1記載の海上コンテナ管理方法を実行させるプログラム。
【請求項13】
海上コンテナに対する作業を管理する海上コンテナ管理システムであって、
前記海上コンテナに対して作業を行う第1作業車に設置されて第1信号を無線により発信する第1送信機と、
前記海上コンテナに対して作業を行う第2作業車が有して無線信号を受信する第2受信機と、
前記第2作業車を制御する第2制御部とを備え、
前記第2制御部は、前記第2受信機が前記第1信号を受信したことを契機として、
前記第2作業車を制御して、前記海上コンテナに対する作業を開始さ
せ、
前記第1送信機は、他の作業車に設置された送信機と重複しない固有番号を有しており、
前記第1送信機が発信する前記第1信号には、前記固有番号が含まれていて、
前記海上コンテナ管理システムは、受信した情報が正しいか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記判定部が、前記第1信号に含まれた前記固有番号が適切であるか否かを判定する、海上コンテナ管理システム。
【請求項14】
海上コンテナに対する作業を管理する海上コンテナ管理システムであって、
前記海上コンテナに対して作業を行う第1作業車に設置されて第1信号を無線により発信する第1送信機と、
前記海上コンテナに対して作業を行う第2作業車が有して無線信号を受信する第2受信機と、
前記第2作業車を制御する第2制御部とを備え、
前記第2制御部は、前記第2受信機が前記第1信号を受信したことを契機として、
前記第2作業車を制御して、前記海上コンテナに対する作業を開始さ
せ、
前記第1送信機は、ETC車載器であり、
前記第2受信機は、DSRCアンテナである、海上コンテナ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上コンテナ管理方法、プログラム及び海上コンテナ管理システムに関し、特に、海上コンテナに対する作業車による作業を管理する海上コンテナ管理方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、港湾ゲート内では、シャーシ、ストラドルキャリア、ガントリークレーン等の作業車が作業対象とする海上コンテナやその作業順序が、海上コンテナ管理システムにより管理されている。
【0003】
海上コンテナ管理システムは、海上コンテナに付された海上コンテナ番号により海上コンテナを特定している。港湾ゲート内では、作業車がこれから作業する海上コンテナが正しい海上コンテナであるか否かを作業員が海上コンテナ番号を目視にて確認している。
【0004】
本発明者は、ETCシステムをゲート通過の際に利用することにより、ヒューマンエラーを低減させることが可能な海上コンテナ管理システムを提案してきた(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6202284号
【文献】特許第6332887号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、正しい海上コンテナであるか否かを人がコンテナ番号を確認することによってチェックする場合、コンテナ番号の読み違えがあり得る。また、1つの海上コンテナが2つ以上の海上コンテナを組み合わせて修理されたものであるいわゆるニコイチであることに起因して、上面と側面とで記載された海上コンテナ番号が異なる場合もあり得る。このような場合、異なる海上コンテナでチェックが行われるヒューマンエラーが起きるリスクがある。
【0007】
また、従来の海上コンテナ管理システムは、仮に海上コンテナが紛失したり作業車が故障した場合のような突発的なことが発生した際、現場の状況を把握して海上コンテナ管理システムにて作業順序の入れ替えを行うまでの間は現場がストップしてしまいかねない。
【0008】
そこで、本発明は、人がコンテナ番号を確認する際のヒューマンエラーのリスクを低減すると共に、突発的な事態にも柔軟に対応可能な海上コンテナ作業管理方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点は、海上コンテナに対する作業を管理する海上コンテナ管理システムを用いた海上コンテナ管理方法であって、前記海上コンテナ管理システムは、前記海上コンテナに対して作業を行う第1作業車に設置されて第1信号を無線により発信する第1送信機と、前記海上コンテナに対して作業を行う第2作業車が有して無線信号を受信する第2受信機とを備え、前記第1送信機が、前記第2受信機に対して前記第1信号を無線により発信する第1送信ステップと、前記第2受信機が、前記第1信号を受信する第2受信ステップと、前記第2作業車が、前記第2受信ステップを契機として前記海上コンテナに対する作業を開始する第2作業開始ステップとを含む、海上コンテナ管理方法である。
【0010】
本発明の第2の観点は、第1の観点の海上コンテナ管理方法であって、前記第1送信機は、他の作業車に設置された送信機と重複しない固有番号を有しており、前記第1送信ステップにおいて、前記第1送信機が発信する前記第1信号には、前記固有番号が含まれている
【0011】
本発明の第3の観点は、第2の観点の海上コンテナ管理方法であって、前記海上コンテナ管理システムは、受信した情報が正しいか否かを判定する判定部をさらに備え、前記判定部が、前記第1信号に含まれた前記固有番号が適切であるか否かを判定する判定ステップをさらに含む。
【0012】
本発明の第4の観点は、第3の観点の海上コンテナ管理方法であって、前記海上コンテナ管理システムは、前記海上コンテナのコンテナ番号と前記固有番号とを対応させた作業フローリストを記憶する作業フロー記憶部をさらに備え、
前記判定ステップより前に、前記コンテナ番号を取得するコンテナ番号取得ステップをさらに含み、前記判定ステップにおいて、前記判定部は、前記作業フローリストに基づいて判定する。
【0013】
本発明の第5の観点は、第1から第4のいずれかの観点の海上コンテナ管理方法であって、前記海上コンテナ管理システムは、前記第2作業車が有して前記海上コンテナ管理システムに第2信号を送信可能な第2送信機をさらに備え、
前記第2受信ステップより後に、前記第2送信機が、前記海上コンテナ管理システムに前記第2信号を送信する第2送信ステップをさらに含む。
【0014】
本発明の第6の観点は、第1から第5のいずれかの観点の海上コンテナ管理方法であって、前記海上コンテナ管理システムは、前記第2作業車が有して前記海上コンテナ管理システムに第2信号を送信可能な第2送信機をさらに備え、前記第2受信ステップより後に、前記第2送信機が、前記海上コンテナ管理システムに前記第2信号を送信する第2送信ステップをさらに含む。
【0015】
本発明の第7の観点は、第1から第6のいずれかの観点の海上コンテナ管理方法であって、前記海上コンテナ管理システムは、前記第2作業車の位置情報をリアルタイムに受信する第2GPS受信部と、前記第2作業車の位置が適切か否かを判定する位置判定部とをさらに備え、前記位置判定部が、前記第2GPS受信部が受信した信号に基づいて、前記第2作業車の位置が適切か否かを判定する位置判定ステップをさらに含む。
【0016】
本発明の第8の観点は、第7の観点の海上コンテナ管理方法であって、前記海上コンテナ管理システムは、前記位置情報を受信する第1基地局と、前記位置情報を補正する位置補正部とをさらに備え、前記位置補正部が、前記第1基地局が受信した第1基地局信号を用いて前記第2作業車の位置についての情報を補正する位置補正ステップをさらに含む。
【0017】
本発明の第9の観点は、第8の観点の海上コンテナ管理方法であって、前記海上コンテナ管理システムは、前記第1基地局とは別に、前記位置情報を受信する第2基地局をさらに備え、前記位置補正ステップにおいて、前記位置補正部が、前記第1基地局信号に加え、前記第2基地局が受信した第2基地局信号も用いて前記第2作業車の位置についての情報を補正する。
【0018】
本発明の第10の観点は、第8の観点の海上コンテナ管理方法であって、前記第1基地局は、前記第2作業車が存在するコンテナターミナルの敷地内に設置されている。
【0019】
本発明の第11の観点は、第1から第10のいずれかの観点の海上コンテナ管理方法であって、前記第1送信機は、ETC車載器であり、前記第2受信機は、DSRCアンテナである。
【0020】
本発明の第12の観点は、第1から第11のいずれかの観点の海上コンテナ管理方法であって、前記海上コンテナ管理システムは、前記第1作業車を制御する第1制御部を備え、前記第1送信ステップの前に、前記第1制御部が、前記第1作業車を制御して、前記第1作業車の前方に走る作業車と一定以上の距離を保持させると共に、前記第1作業車の前方を走る作業車を追い越させない、第1走行制御ステップをさらに含む。
【0021】
本発明の第13の観点は、第12の観点の海上コンテナ管理方法であって、前記第2走行制御ステップにおいて、前記第2制御部が、前記第2作業車を制御して、一方通行の道路のみを走行させる。
【0022】
本発明の第14の観点は、前記海上コンテナ管理システムが有するコンピュータに、第1から第13のいずれかの観点の海上コンテナ管理方法を実行させるプログラムである。
【0023】
本発明の第15の観点は、海上コンテナに対する作業を管理する海上コンテナ管理システムであって、前記海上コンテナに対して作業を行う第1作業車に設置されて第1信号を無線により発信する第1送信機と、前記海上コンテナに対して作業を行う第2作業車が有して無線信号を受信する第2受信機と、前記第2作業車を制御する第2制御部とを備え、前記第2制御部は、前記第2受信機が前記第1信号を受信したことを契機として、前記第2作業車を制御して、前記海上コンテナに対する作業を開始させるか、又は、前記第2作業車が有する第2表示部を制御して、作業対象である前記海上コンテナの情報を表示させる、海上コンテナ管理システムである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の各観点によれば、人の確認を要さずに海上コンテナに対する作業を第1作業車及び第2作業車が連携して自律的に進めることが可能となる。そのため、海上コンテナに記載されているコンテナ番号の読み間違いや伝達ミスといったヒューマンエラーを排除して迅速かつ正確に作業することが容易となる。
【0025】
また、仮に何らかのエラーがシステム側に発生したとしても、第1作業車と第2作業車はお互いに通信を行って海上コンテナを引き渡すことが可能である。そのため、システムの復旧を待たずに作業を継続して、突発的な事態にも柔軟に対応可能な海上コンテナ管理方法等を提供可能となる。
【0026】
さらに、中央管理部が全ての指示を各作業車に伝達する中央集約的なシステムとは違い、作業車同士が直接通信する分散的なシステムであるため、作業車が増えても中央管理部の負担の増大を抑制することが容易となる。
【0027】
ここで、海上コンテナの識別をコンテナ番号に基づかずにチェックする場合、第1作業車と第2作業車がお互いに海上コンテナを引き渡すべき作業車を取り違えるリスクが生じ得る。
【0028】
そこで、本発明の第2の観点によれば、第1作業車に設置された第1送信機の固有番号により第1作業車が適切な作業車であることが特定可能となる。そのため、コンテナ番号に基づくことなくターミナル内の海上コンテナの引き渡しを正確に行うことが可能となる。
【0029】
さらに、本発明の第3の観点によれば、第1作業車が適切な作業車であるか速やかにかつ正確に判定可能となる。
【0030】
さらに、本発明の第4の観点によれば、作業車が適切であっても作業対象である海上コンテナが間違っている場合に、間違いを検出することが容易となる。
【0031】
また、本発明の第5の観点によれば、第1作業車及び第2作業車の間の直接通信によって進捗している作業の状況をシステム側で把握することが可能となる。
【0032】
また、本発明の第6の観点によれば、第1作業車と第2作業車の直接の通信により、システムを介することなく自律的にかつ正確に作業を進めることが容易となる。
【0033】
さらに、第6又は第15の観点によれば、第2作業車が自動制御される場合は第2作業ステップを選択し、第2作業車が運転者に制御される場合は第2作業表示ステップを選択することが可能となる。
【0034】
また、本発明の第7の観点によれば、適切な作業車同士で海上コンテナに対する作業をさらに確実なものとすることが可能となる。
【0035】
さらに、本発明の第8の観点によれば、ズレが生じることが知られているGPSによる作業車の位置情報を補正することが可能となる。このようなコンテナターミナル内における作業車の位置情報の誤差の補正は、従来あまり重要視されてこなかった。しかし、本願発明者は、コンテナターミナル内の作業の高度な自動化のためには、重要として着眼した。
【0036】
さらに、本発明の第9の観点によれば、作業車の平面上の位置情報のズレに加えて、3次元的なズレをも補正することが可能となる。これにより、地震による地面の隆起や陥没といった3次元的なズレが基地局に生じた時にも、継続して適切な位置情報の補正を行うことが可能となる。
【0037】
さらに、本発明の第10の観点によれば、基地局が作業車の近くに設置されている。このため、地震による地層のズレがどこかで生じたとしても、高い確率で基地局の位置情報を更新することなく、継続して作業車の位置情報の補正を行うことが可能となる。
【0038】
ここで、花火等の危険物を積載した海上コンテナの船積又は船揚は、ホットデリバリーと呼ばれ、海上コンテナがコンテナヤードに蔵置されることなく、外来トラックがゲートから直接にガントリークレーンに誘導される。
【0039】
そこで、本発明の第11の観点によれば、コンテナヤード内の専用のトラックでなくとも、トラックとガントリークレーンと直接の通信である第1送信ステップ及び第2受信ステップを実現可能となる。また、ETCシステムを採用することにより、海上コンテナ管理システムの全体の費用を抑えることが容易となる。
【0040】
なお、ETCは公道を走る車両に取り付けられるものである。本願発明のようにコンテナヤード内のみを走行する車両にETC装置やDSRCアンテナを備えることは通常行われていなかった。特に、本願発明のように車両間で通信を行うことを契機として作業を行うことを目的としてETCシステムを利用することは本願発明者の独自の技術的思想である。
【0041】
さらに、本発明の第12の観点によれば、第1制御部が第1作業車を自律的に運転したとしても、第1作業車が他の作業車とぶつかるリスクを大幅に下げることが可能となる。そのため、第1作業車の自律的な走行速度を可能な限り上げて、全体の作業速度を速めることが可能となる。
【0042】
さらに、本発明の第13の観点によれば、第1制御部が第1作業車を自律的に運転したとしても、第1作業車同士の正面衝突を回避することが可能となる。そのため、第1作業車の自律的な走行速度を上げて、全体の作業速度を速めることがさらに容易となる。
【0043】
なお、第1作業車をコンテナヤード内を走行するシャーシと捉え、かつ、第2作業車をストラドルキャリア、トランステナー又はガントリークレーンと捉えると、本発明の各観点は、ストラドルキャリア方式だけでなくトランステナー方式にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本実施例に係る海上コンテナ管理システム1の概要を例示するブロック図である。
【
図2】本実施例に係る海上コンテナ管理システム1の運用例を例示する図である。
【
図3】本実施例に係る海上コンテナ管理システム1を用いた海上コンテナ管理方法の概要を例示するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明の実施例は、以下に記載する内容に限定されるものではない。
【実施例1】
【0046】
図1は、本実施例に係る海上コンテナ管理システム1の概要を例示するブロック図である。
【0047】
図1を参照して、海上コンテナ管理システム1(本願請求項における「海上コンテナ管理システム」の一例)は、シャーシ3と、中央管理部5と、ゲート7と、トランスファーポイント(TP)9と、ストラドルキャリア11(本願請求項における「第1作業車」の一例)と、ガントリークレーン13(本願請求項における「第2作業車」の一例)とを備える。以下、本実施例では、シャーシ3がコンテナヤードに海上コンテナ15(本願請求項における「海上コンテナ」の一例)を運搬してきたとする。
【0048】
シャーシ3は、海上コンテナ15を運搬する作業車である。シャーシ3は、シャーシ制御部31と、シャーシETC装置33と、シャーシ通信部35とを有する。シャーシ制御部31は、シャーシ3を制御する。シャーシETC装置33は、シャーシ3が有するETC装置である。シャーシ通信部35は、中央管理部5と通信する。
【0049】
中央管理部5は、海上コンテナ15に関する作業全体を管理する。中央管理部5は、中央制御部51と、中央通信部53と、中央記憶部55(本願請求項における「作業フロー記憶部」の一例)と、中央判定部57とを有する。中央制御部51は、中央管理部5を制御する。中央通信部53は、コンテナヤード内の各通信部と通信を行う。中央記憶部55は、海上コンテナ15に関する作業フローリストと進行状況とを記憶する。作業フローリストには、海上コンテナのコンテナ番号とETC装置に固有の固有番号とを対応させて記録されている。中央判定部57は、ガントリークレーン13が特定の海上コンテナ15を船積みしてよいか否かを判定する。
【0050】
ゲート7は、シャーシ3のコンテナヤードへの進入時にシャーシ3及び海上コンテナ15のチェックを行う。ゲート7は、ゲート通信部71と、ゲートアンテナ73とを有する。ゲート通信部71は、中央管理部5と通信する。ゲートアンテナ73は、ゲートに設置されたDSRCアンテナである。
【0051】
TP9は、シャーシ3が運搬してきた海上コンテナ15を置くための箇所である。TP9は、TP通信部91及びTPアンテナ93とを有する。TP通信部91は、中央管理部5と通信する。TPアンテナ93は、TPに設置されたDSRCアンテナである。
【0052】
ストラドルキャリア11は、海上コンテナ15をTP9からガントリークレーン13まで運搬する。ストラドルキャリア11は、キャリア制御部111(本願請求項における「第1制御部」の他の例)と、キャリア決定部113と、キャリアETC115(本願請求項における「第1送信機」及び「ETC車載器」の一例)と、キャリア通信部117とを有する。キャリア制御部111は、ストラドルキャリア11を制御する。キャリア決定部113は、ストラドルキャリア11が作業を行う対象とする海上コンテナ15を決定する。キャリアETC115は、ストラドルキャリア11が有するETC装置である。キャリア通信部117は、中央管理部5と通信する。なお、キャリア決定部113は、キャリア制御部111の一部であってもよい。
【0053】
ガントリークレーン13は、海上コンテナを船積みする。ガントリークレーン13は、クレーン制御部131と、クレーンアンテナ133(本願請求項における「第2受信機」及び「DSRCアンテナ」の一例)と、クレーン通信部135と、クレーン表示部137とを有する。クレーン制御部131は、ガントリークレーン13を制御する。クレーンアンテナ133は、ガントリークレーン13が有するDSRCアンテナである。クレーン通信部135は、中央管理部5と通信する。クレーン表示部137は、ガントリークレーン13の運転者に対して、ガントリークレーン13の作業対象とする海上コンテナの情報を表示する。
【0054】
図2は、本実施例に係る海上コンテナ管理システム1の運用例を例示する図である。
【0055】
図2を参照して、海上コンテナ15は、シャーシ3によってゲート7を通過してコンテナヤード内のTP9に運搬される。TP9に置かれた海上コンテナ15をストラドルキャリア11がガントリークレーン13の付近の所定の箇所まで運搬する。ガントリークレーン13の付近に置かれた海上コンテナ15は、ガントリークレーン13が船21に積み込む。
【0056】
また、中央通信部53は、シャーシ通信部35、ゲート通信部71、TP通信部91、キャリア通信部117、及び、クレーン通信部135と随時無線で通信を行う。
【0057】
図3は、本実施例に係る海上コンテナ管理システム1を用いた海上コンテナ管理方法の概要を例示するフロー図である。
【0058】
まず、海貨業者は、荷主の依頼により、コンテナ番号、コンテナ種別、シャーシ車両番号、荷物、仕向け地等の情報を登録し、海コン業者に海上コンテナのターミナル搬入(輸出)又はターミナル搬出(輸入)を依頼する。海コン業者は、必要な情報がそろうと、シャーシと運転手を確定して手配する。海上コンテナ管理システム1には、海上コンテナ番号、シャーシ車両番号、作業フロー等が対応する形で記録された作業フローリストが記録される(本願請求項に記載の「コンテナ番号取得ステップ」の一例)。海コン業者の配車係は、運転手に対し、指示書又はSNS等の通知手段で通知する。通知を受けた運転手は、シャーシを運転してゲートに向かう。
【0059】
図3を参照して、船積みすべき海上コンテナ15を搭載したシャーシ3が、コンテナヤードに到着し、ゲート7でチェックを受ける(ステップS01)。ゲート通信部71は、中央管理部5に海上コンテナのコンテナ番号を含む通信であるゲ管通信を行う。ゲート7を通過したシャーシ3は、海上コンテナ15を指定されたTP9に運搬する。この際、シャーシ3が有するシャーシETC33が、TP9に設置されたTPアンテナ93に対してコンテナ番号を含む通信であるシャT通信を行う(ステップS02)。TP9に設置されたTP通信部91は、中央管理部5に対してコンテナ番号を含む通信であるT管通信を行う(ステップT01)。この通信により中央管理部5は、どのコンテナ番号を有する海上コンテナ15がTP9に到着したかを把握する。中央管理部5は、T管通信を受けて更新した情報を中央記憶部55に記憶させる(ステップA01)。シャーシ3は、海上コンテナ15を指定されたTP9に置く作業を完了する(ステップS03)。シャーシ3は、TP9からゲート7に移動してコンテナヤードから退出する(ステップS04)。
【0060】
中央管理部5は、ストラドルキャリア11に対してTP9に海上コンテナ15を搭載しに移動指示を含む管ス通信を行う(ステップA02)。管ス通信により、どのコンテナ番号を有する海上コンテナ15をどこに取りに行くべきかがストラドルキャリア11に指示される。ストラドルキャリア11は、管ス通信を受けて、TP9に海上コンテナ15を取りに行く(ステップC01)。
【0061】
TP9に到着したストラドルキャリア11は、どの海上コンテナ15を搭載して運搬する作業を実行するかを決定する(ステップC02)。ここで、基本的には、中央管理部5に指示されたコンテナ番号の海上コンテナ15を搭載する。ただし、キャリア制御部111は、キャリア決定部113が近くにある海上コンテナ15を持っていく方が早いと判断した場合、ストラドルキャリア11を制御して、近くにある海上コンテナ15を搭載して運搬することもある。
【0062】
このように、本実施例の海上コンテナ管理システム1においては、キャリア制御部111が、中央管理部5の指示とは異なる順序で海上コンテナ15の搭載及び運搬を実行することが許されている。そのため、柔軟かつ迅速な海上コンテナ15の管理が可能となる。
【0063】
ガントリークレーン13の近くにストラドルキャリア11が到着する(ステップC03)と、ストラドルキャリア11が有するキャリアETC115は、ガントリークレーンが有するクレーンアンテナ133に対して、中央管理部5を経由しない直接的な通信であって、キャリアETC115に固有の番号であるキャリアETC番号(本願請求項における「固有番号」の一例)を含むキャリア信号(本願請求項における「第1信号」の一例)を含む通信であるスガ通信を行う(ステップC04)。ステップC04は、本願請求項における「第1送信ステップ」及び「第2受信ステップ」の一例である。スガ通信を受信したクレーン通信部135は、中央管理部5に対して、キャリアETC番号を含む通信であるガ管通信を行う(ステップG01)。ステップG01は、本願請求項における「第2送信ステップ」の一例である。ストラドルキャリア11は、ガントリークレーン13の付近の所定箇所に海上コンテナ15を置くと、ガントリークレーン13から離れて次の指示を待つ。
【0064】
中央管理部5は、ガ管通信を受けて、更新した情報を中央記憶部55に記憶させる(ステップA03)。また、中央管理部5が有する中央判定部57(本願請求項における「判定部」の一例)は、受信したキャリアETC番号に対応するコンテナ番号を有する海上コンテナ15が、ガントリークレーン13により船積みされる作業に適切なタイミングであるか否かを作業フローリストに基づいて判定する(ステップA04)。ステップA04は、本願請求項における「判定ステップ」の一例である。中央管理部5は、判定結果を踏まえて更新した情報を中央記憶部55に記憶させる(ステップA05)。また、中央管理部5は、ガントリークレーン13に対して、判定結果を含む通信である管ガ通信を行う(ステップA06)。
【0065】
適切なタイミングであるとする判定結果を含む管ガ通信を受信したガントリークレーン13は、ストラドルキャリア11が運搬してきた海上コンテナ15に対して、作業を実行する(ステップG02)。すなわち、ガントリークレーン13は、スガ通信をトリガー(契機)として、中央管理部との通信を経て海上コンテナに対する作業を実行する(本願請求項における「第2作業開始ステップ」の一例)。
【0066】
他方、適切なタイミングでないとする判定結果を含む管ガ通信を受信したガントリークレーン13は、ストラドルキャリア11が運搬してきた海上コンテナ15に対して作業を実行しない。また、中央管理部5及びストラドルキャリア11に対して作業を実行する旨を含むガ管通信及びガス通信をそれぞれ行う。ガ管通信を受けた中央管理部5は、特に状況に変化がないため情報を更新しない。ガス通信を受けたストラドルキャリア11は、海上コンテナ15を近くの所定の場所に置き、ガントリークレーン13から離れた場所で次の指示を待つ。なお、
図3には、適切なタイミングであったことを前提とするフローを記載した。
【0067】
中央管理部5は、管理すべき海上コンテナ15がなくなるまで上記ステップを繰り返し、管理すべき海上コンテナ15がなくなればフローを終了する。
【実施例2】
【0068】
次に、仮に突発的に海上コンテナ15が紛失してしまったとする。完全に中央集約的な海上コンテナ管理システムを採用している場合、作業対象となる海上コンテナが存在しないため、作業を担当する作業車から中央管理部にレスポンスを返せない事態となる。そのため、それ以降の作業が実行できずにシステム全体が止まってしまうこととなる。
【0069】
しかし、本実施例の海上コンテナ管理システム1は、自律分散的な設計でシステムが構築されている。そのため、海上コンテナ15に対して作業するはずだった作業車が一台動かなくなることは想定されるとしても、他の作業車は、それぞれ自律的に作業を続行することが可能である。すなわち、イレギュラーに強い海上コンテナ管理システム1が実現可能である。
【0070】
さらに、自律分散的な海上コンテナ管理システム1においては、例えば走行範囲が広いストラドルキャリア11を自律的に運転させる場合に、事故のリスクを下げることが重要となる。
【0071】
そこで、キャリア制御部111は、ストラドルキャリア11を制御して、ストラドルキャリア11の前方を走る他の作業車と一定以上の距離を保持させる。また、キャリア制御部111は、ストラドルキャリア11を制御して、ストラドルキャリア11の前方を走る他の作業車を追い越させない。これらのキャリア制御部111によるストラドルキャリア11の制御は、本願請求項に記載の「第1走行制御ステップ」の一例である。これにより、キャリア制御部111が、ストラドルキャリア11を制御して、自立運転を行ったとしても、ストラドルキャリア11が他の作業車とぶつかるリスクを大幅に下げることが可能となる。そのため、ストラドルキャリア11の自律的な走行速度を可能な限り上げて、全体の作業速度を速めることが可能となる。
【0072】
また、キャリア制御部111は、ストラドルキャリア11を制御して、一方通行の道路のみを運転させる。すなわち、ストラドルキャリア11に他の作業車と対面走行させないように運転させる。これにより、キャリア制御部111がストラドルキャリア11を制御して自律的に運転したとしても、ストラドルキャリア11と他の作業車との正面衝突を可能となる。そのため、ストラドルキャリア11の自律的な走行速度を上げて、全体の作業速度を上げることがさらに容易となる。
【0073】
なお、上記の実施例では海上コンテナをコンテナヤード内に搬入して船積みする輸出の場合を例示した。しかし、船から荷揚げされた海上コンテナをコンテナヤードから搬出する輸入の場合にも、本実施例の海上コンテナ管理システム1及び海上コンテナ管理方法は、同様に有効である。この場合も、中央管理部5に全ての作業車が中央集約的に指示を仰いで報告するのではなく、作業車間でETC装置からDSRCアンテナに通信を行うことにより、不測の事態にも柔軟な対応が可能となる。また、中央管理部への負担軽減が可能となる。
【0074】
さらに、キャリアETC115は、ストラドルキャリア11がTP9に到着した際、TPアンテナ93に対してETC通信を行うものであってもよい。また、キャリア通信部117は、キャリア決定部113が作業対象とする海上コンテナを決定した後に、中央管理部5に作業対象と決定した海上コンテナのコンテナ番号を含む通信を行うものであってもよい。この場合、通信を受けた中央管理部5は、更新した情報を中央記憶部55に記憶させるものであってもよい。
【実施例3】
【0075】
また、上記の実施例において、ストラドルキャリア11の代わりにトランステナー(本願請求項に記載の「第2作業車」の他の例)及びシャーシ(本願請求項に記載の「第1作業車」の他の例)を用いるトランステナー方式にも本発明は適用可能である。この場合、トランステナーがTP9でコンテナヤード内を走行するシャーシに海上コンテナ15を搭載し、シャーシが海上コンテナ15をトランステナーからガントリークレーン13まで運搬するものであってもよい。
【0076】
トランステナー方式を採用した船積みの場合には、海上コンテナ管理システムは、TPの代わりに海上コンテナを積み重ねて置くためのレーンと、そのレーンをまたぐように走行するトランステナーと、専らコンテナヤード内を走行する構内用シャーシとを備える。トランステナーは、脚部にDSRCアンテナ(本願請求項に記載の「第2受信機」及び「DSRCアンテナ」の他の例)を有する。海上コンテナ管理システムは、レーンを複数備えてもよく、各レーンごとにトランステナーを備えるものであってもよい。
【0077】
また、トランステナーがGPS装置とGPS受信装置(本願請求項に記載の「GPS受信部」の一例)と位置判定部(本願請求項に記載の「位置判定部」の一例)を搭載して、作業対象となる海上コンテナの正しい作業位置に移動していることを自己照合する(本願請求項に記載の「第2位置判定ステップ」の一例)ものであってもよい。
【0078】
さらに、海上コンテナ管理システムは、GPS信号を受信する基地局をコンテナターミナルの敷地内に複数備えるものであってもよい。ここで、基地局は、GPS信号を受信する受信装置と、自らの基準位置を記憶する基準位置記憶部を有する。GPS信号にはズレが生じることが知られている。そのため、GPS信号のみでは作業車が正確に自らの位置を把握できないことが起こり得る。基地局を作業車の近くに設置することにより、平面的な位置のズレを補正することが可能となる。また、複数の基地局を作業車の近くに設置することにより、地震による地面の隆起や陥没など、三次元的な位置のズレが生じた場合にも複数の基地局との相対的な位置情報に基づいてズレを補正することが可能となる。
【0079】
海上コンテナを搭載したシャーシがゲートを通過する際、中央管理部からシャーシに対して海上コンテナを運搬するべきレーンが指示される。シャーシは、指示されたレーンに海上コンテナを運搬する。シャーシがレーンに接近すると、シャーシが備えるシャーシETC装置(本願請求項に記載の「第1送信機」及び「ETC車載器」の他の例)が、そのレーンに対応するトランステナーのDSRCアンテナに対して、中央管理部を経由しない直接的な通信であって、シャーシETC装置のETC番号を含む通信であるシャテ通信を行う。トランステナーが有するテナー通信部は、中央管理部に対してシャーシを特定する情報を含む通信であるテ菅通信を行う。この通信により中央管理部は、どのシャーシがどのレーンに到着したかを把握する。中央管理部は、シャーシが適切なレーンに到着しているか否かを判定する。また、中央管理部は、テナー通信部に対して判定結果を送信する。仮にシャーシが不適切なレーンに到着している場合、トランステナーからシャーシに対してその旨が伝えられる。この際、適切なレーンをトランステナーからシャーシに伝えるものであってもよい。中央管理部は、テ管通信を受けて更新した情報を中央記憶部に記憶させる。
【0080】
トランステナーは、シャーシが適切であれば、海上コンテナをレーンに積み上げる作業を完了する。シャーシは、レーンからゲートに異動してコンテナヤードから退出する。
【0081】
続いて、構内用シャーシが、トランステナーが積み上げたレーンからガントリークレーンに海上コンテナを運搬する。構内用シャーシがレーンに接近すると、構内用シャーシが有するETC装置がそのレーンに対応するトランステナーが有するDSRCアンテナに対して、中央管理部を経由しない直接的な通信であって、構内用シャーシを特定する情報を含む通信である構テ通信を行う。トランステナーが有するテナー通信部は、中央管理部に対して構内用シャーシを特定する情報を含む通信であるテ菅通信を行う。この通信により中央管理部は、どの構内用シャーシがどのレーンから海上コンテナを運び出したかを把握する。中央管理部は、構内用シャーシが適切なレーンに到着しているか否かを判定する。また、中央管理部は、テナー通信部に対して判定結果を送信する。仮に構内用シャーシが不適切なレーンに到着している場合、トランステナーから構内用シャーシに対してその旨が伝えられる。この際、適切なレーンをトランステナーから構内用シャーシに伝えるものであってもよい。中央管理部は、テ管通信を受けて更新した情報を中央記憶部に記憶させる。
【0082】
従来の技術では、海上コンテナを運搬してきたわけではないシャーシが本来どのレーンに行くべきか、トランステナー側で把握できなかった。しかし、本発明においては、シャーシがトランステナーに接近した際に、自動的にETC装置とDSRCアンテナとの通信、トランステナーから中央管理部への通信、中央管理部における判定、中央管理部からトランステナーへの判定結果の通信が行われる。そのため、トランステナー側で自動的に不適切なシャーシが本来どのレーンに向かうべきか把握することが可能となる。
【0083】
トランステナーは、対応する海上コンテナを構内用シャーシに積む作業を完了する。構内用シャーシは、レーンからガントリークレーンに移動する。以後、ガントリークレーンが船積みする作業や通信の流れについては、実施例1と同様である。
【0084】
なお、レーンの右側にシャーシ用の道路が設けられている場合と左側に道路が設けられている場合がある。そのため、トランステナーは2つある脚部の両方にDSRCアンテナを有してもよい。あるいは、トランステナーを複数備える場合に、トランステナーの片側の脚部に近い道路を走行するシャーシとのみ通信を行うこととしてもよい。この場合、トランステナーは、片側の脚部のみにDSRCアンテナを有してもよい。
【0085】
さらに、船積みを急ぐ海上コンテナ15の場合は、海上コンテナ15を搭載したシャーシ3が、ゲート7からコンテナヤード内に進入した後、TP9ではなく直接ガントリークレーン13に海上コンテナ15を運搬するものであってもよい。この場合、ゲート7から侵入したシャーシ3が、本願請求項における「第1作業車」の他の一例となる。すなわち、シャーシ3が有するシャーシETC33とガントリークレーンが有するクレーンアンテナ133との間で、運搬されている海上コンテナ15のコンテナ番号を含む通信であるシガ通信が行われるものであってもよい。
【0086】
さらに、本発明において、シャーシはETC装置を有する一方、中央管理部と通信するためのシャーシ通信部を有さないものであってもよい。また、シャーシが中央管理部やその他の装置からの信号を受診する受信部やシャーシ通信部を有する場合、受信部やシャーシ通信部がシャーシに搭載されたカーナビ等の表示部と通信可能であり、表示部に情報が表示されるものであってもよい。
【0087】
上記のように、本発明においては、ETC装置及び/又はDSRCアンテナを有する各作業車が他の作業車からの通信をトリガー(契機)として作業を行う。これにより、中央集約的な海上コンテナ管理システムではなく、中央管理部の指示を待つことなく各作業車がお互いからの通信により作業を行う自律分散的な海上コンテナ管理システム等を実現できる。結果として、作業車の一部が故障して予定されていた作業フローが遂行できない場合も、システム全体が動き続ける柔軟な対応が可能となる。
【0088】
上記のトリガーとなる信号には、コンテナ番号の他にも、受信した車両の目的地や作業内容が含まれているものであってもよい。このような情報が車両間で直接通信される信号に含まれていれば、中央管理部を経由せずに自律分散的な海上コンテナ管理システムの実現が容易となる。
【0089】
また、本発明において、トランステナー以外の車両がGPS受信部を備えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1; 海上コンテナ管理システム、3;シャーシ、5;中央管理部、7;ゲート、9;トランスファーポイント(TP)、11;ストラドルキャリア、13;ガントリークレーン、15;海上コンテナ、21;船
【要約】
本発明は、人がコンテナ番号を確認する際のヒューマンエラーのリスクを低減すると共に、突発的な事態にも柔軟に対応可能な海上コンテナ作業管理方法等を提供することを目的とする。
海上コンテナに対する作業を管理する海上コンテナ管理システムを用いた海上コンテナ管理方法であって、前記海上コンテナ管理システムは、前記海上コンテナに対して作業を行う第1作業車に設置されて第1信号を無線により発信する第1送信機と、前記海上コンテナに対して作業を行う第2作業車が有して無線信号を受信する第2受信機とを備え、前記第1送信機が、前記第2受信機に対して前記第1信号を無線により発信する第1送信ステップと、前記第2受信機が、前記第1信号を受信する第2受信ステップと、前記第2作業車が、前記第2受信ステップを契機として前記海上コンテナに対する作業を開始する第2作業開始ステップとを含む。