(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】巾木及び巾木巻回体
(51)【国際特許分類】
E04F 19/04 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
E04F19/04 101A
(21)【出願番号】P 2019178254
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2018232858
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000221580
【氏名又は名称】東都積水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 誠
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-207626(JP,A)
【文献】特開2012-026111(JP,A)
【文献】特開2013-044142(JP,A)
【文献】特開2018-150727(JP,A)
【文献】実開昭61-080933(JP,U)
【文献】特表2015-519494(JP,A)
【文献】特開2016-169551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 17/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂の本体と、
前記本体の正面、背面、天面及び底面を覆う非発泡樹脂の被覆層とを有し、
前記本体と前記被覆層とが一体に成形され、
長尺で可撓性を有し、
高さ15cm未満である、巾木。
【請求項2】
100%モジュラスが、5~20MPaである、請求項1に記載の巾木。
【請求項3】
前記被覆層のデュロ硬度Aが、50~80であり、
前記本体の密度が、0.4~0.9g/cm
3である、請求項1又は2に記載の巾木。
【請求項4】
設置された際に床に対向する底面は、正面から背面に向かうに従い天面に近づき、
設置された状態で、前記底面の延長線と前記床の面の延長線とのなす角度が10~60°である、請求項1~3のいずれか一項に記載の巾木。
【請求項5】
共押出成形品である、請求項1~4のいずれか一項に記載の巾木。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の巾木を巻回してなる、巾木巻回体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巾木及び巾木巻回体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の建築物の壁と床との取り合い部分には、壁に沿って長尺状の巾木が設置されている。建築現場では、卓上丸鋸等で、巾木を所望の長さに切断し、接着剤等で壁に固定する。汎用の巾木としては、中密度繊維板(MDF)の巾木がある。
車椅子等が壁面に衝突した際の衝撃吸収を目的として、幅広な(高さが高い)巾木が提案されている。
例えば、特許文献1には、軟質発泡基材に、繊維補強材、樹脂表層を積層し、所定の長さで切断した高さ150~1000mmの巾木が提案されている。特許文献1に記載の発明によれば、寸法安定性、強度等の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、設置場所の長さに合わせて、施工時に巾木を卓上丸鋸等で切断する。この際、集合住宅等では、卓上丸鋸等の動作音が隣室に伝わってしまうという問題がある。加えて、搬送に適した長さの巾木を用いて、長い範囲に巾木を設置する場合、巾木同士の継ぎ目を生じてしまう。継ぎ目をなくすために巾木を長尺にすると、巾木の搬送、取り扱いが煩雑となる。
また、巾木に掃除機や椅子の脚等が衝突した際、隣室に衝突音が伝わったり、巾木が破損してしまうという問題がある。このため、巾木には、耐衝撃性が求められる。
さらに、賃貸用の集合住宅のリフォームにおいては、部屋の賃貸を早期に開始できるよう、早急に工事を完了する必要がある。
上記事情に鑑み、従来の巾木には、施工現場での取り扱いが容易であること(易施工性が高い)と、耐衝撃性とが求められる。
そこで、本発明は、易施工性が高く、かつ耐衝撃性が高い巾木を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
<1>発泡樹脂の本体と、前記本体の表面の少なくとも一部を覆う非発泡樹脂の被覆層とを有し、
前記本体と前記被覆層とが一体に成形され、
長尺で可撓性を有し、
高さ15cm未満である、巾木。
<2>100%モジュラスが、5MPa~20Mpaである、<1>に記載の巾木。
<3>前記被覆層のデュロ硬度Aが、50~80である、<1>又は<2>に記載の巾木。
<4>設置された際に床に対向する底面は、正面から背面に向かうに従い天面に近づく、<1>~<3>のいずれかに記載の巾木。
<5>共押出成形品である、<1>~<4>のいずれかに記載の巾木。
<6><1>~<5>のいずれかに記載の巾木を巻回してなる、巾木巻回体。
【発明の効果】
【0006】
本発明の巾木は、易施工性を高め、かつ耐衝撃性を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る巾木の設置例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る巾木の斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る巾木の断面図である(設置された状態での鉛直断面図)。
【
図4】本発明の一実施形態に係る巾木の断面斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る巾木の断面斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る巾木の断面斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る巾木の断面斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る巾木の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書及び特許請求の範囲において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0009】
本発明の一実施形態に係る巾木について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る巾木の設置例を示す斜視図である。
図1に示すように、巾木1は、壁Wと床Fとの取り合い部分に設置される。巾木1は全体として可撓性を有する軟質な材質で構成されている。
【0010】
図2は、巾木1を正面(巾木正面)20f(設置された状態で室内側)から見た斜視図である。
図2に示すように、巾木1は、本体10と、本体10の表面に位置する被覆層20と、を有する。巾木1は、一方向(
図2のX方向)に延びる長尺状である。
【0011】
巾木正面20fには、化粧凹部12が形成されている。化粧凹部12は、巾木正面20fから巾木1の背面(巾木背面)20bに向かって凹む凹条である。化粧凹部12は、巾木1の長手方向に延びている。
【0012】
巾木背面20bには、2以上の縦溝部(不図示)が形成されている。巾木背面20bは、巾木1を設置した際に、壁に対向する面である。
縦溝部は、巾木背面20bから巾木正面20fに向かって凹む凹条である。巾木1が壁Wに設置された状態で、縦溝部は鉛直上下方向(
図2のY方向)に延びている。換言すると、縦溝部は巾木1の長手方向と直交する方向に延びている。各縦溝部11の上端は、巾木1の天面(巾木天面)20tよりも僅かに下方に位置している。2以上の縦溝部は、巾木1の長手方向に間隔を空けて並んでいる。
【0013】
図2~3に示すように、巾木背面20bには、固定用凹部16が形成されている。固定用凹部16は、巾木1における上下方向の略中間に位置している。固定用凹部16は、巾木背面20bから巾木正面20fに向かって凹む凹条である。固定用凹部16は、巾木1の長手方向に延びている。
【0014】
図3に示すように、巾木1の底面(巾木底面)20aは、巾木正面20fから巾木背面20bに向かうに従い巾木天面20tに近づいている。巾木底面20aの延長線Q1と床Fの面の延長線Q2とのなす角度θは、10~60°が好ましく、20~45°がより好ましい。角度θが上記下限値以上であれば、巾木正面20fの下端と床F面との間に、隙間を生じにくい。角度θが上記上限値以下であれば、巾木1の下端における強度をより高められる。
【0015】
被覆層20は、本体10における正面(本体正面)10f、背面(本体背面)10b、天面(本体天面)10t、底面(本体底面)10aを覆っている。即ち、被覆層20は、長手方向の両端面を除き、本体10の表面を覆っている。
【0016】
巾木1のX方向の長さは特に限定されず、例えば、50cm以上30m以下とされる。
【0017】
巾木1の高さH(Y方向の長さ)は、15cm(150mm)未満であり、25mm以上150mm未満が好ましく、35~60mmがより好ましい。高さHが上記上限値以下であれば、巾木1の長手方向における柔軟性をより高め、易施工性を高められる。高さHが上記下限値以上であれば、巾木としての機能を高められる。
【0018】
巾木1の厚さT(Z方向の長さ)は、例えば、4~15mmが好ましく、5~9mmがより好ましい。厚さTが上記上限値以下であれば、巾木1のX方向における柔軟性をより高め、易施工性を高められる。厚さTが上記下限値以上であれば、耐衝撃性をより高められる。
【0019】
化粧凹部12の深さA2は、意匠性を勘案して決定され、例えば、1~5mmである。
化粧凹部12の幅W2は、意匠性を勘案して決定され、例えば、2~10mmである。
【0020】
固定用凹部16の深さA1は、例えば、1~5mmである。
固定用凹部16の幅W1は、例えば、2~10mmである。
【0021】
巾木1の100%モジュラスは、5~20MPaが好ましく、10~15MPaがより好ましい。100%モジュラスが上記下限値以上であれば、巾木の強度を高められる。100%モジュラスが上記上限値以下であれば、充分に軟質であり、可撓性により優れる。
100%モジュラスは、「JIS K6251:2010 引張特性の求め方」に準じた引張試験により求められる値である。
【0022】
本体10は軟質であり、可撓性を有する発泡樹脂である。
本体10を構成する樹脂の種類としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴムが好ましい。熱可塑性樹脂としては、硬質ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂とポリスチレン樹脂との混合物、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂及びこれらの混合物等を例示できる。熱可塑性エラストマーとしては、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー及びこれらの混合物等を例示できる。ゴムとしてはスチレン・ブタジエンゴムやイソプレンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等のジエン系ゴムや、ブチルゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、シリコーンゴム及びこれらの混合物等を例示できる。
また、本体10は、発泡核剤、界面活性剤、滑沢剤、顔料、可塑剤等の任意成分を含有してもよい。
【0023】
本体10を形成している発泡樹脂は、軟質である。
【0024】
本体10の線膨張係数は、7.5×10-5/℃以下が好ましく、7.0×10-5/℃以下がより好ましく、5.0×10-5/℃以下がさらに好ましい。
本体10の線膨張係数は、JIS K7197:1991に準じて測定される値である。
【0025】
本体10のデュロ硬度Aは、50~80が好ましく、60~70がより好ましい。デュロ硬度Aは、JIS 7215:1986により測定される値である。
【0026】
本体10の密度は、例えば、0.4~0.9g/cm3が好ましく、0.4~0.7g/cm3がより好ましい。密度が下限値以上であれば、巾木1の強度をより高められる。密度が上記上限値以下であれば、巾木1の軽量化を図れ、巾木1の易施工性をより高められる。
本体10の密度は、発泡剤の種類又は組成、発泡条件(加熱温度、加熱時間等)等の組み合わせにより調節される。
【0027】
被覆層20は、非発泡樹脂である。被覆層20を形成する樹脂の種類としては、本体10と同様であり、中でも、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴムが好ましい。
被覆層20を構成する樹脂の種類と、本体10を構成する樹脂の種類とは、同じでもよいし、異なってもよい。ただし、被覆層20と本体10とを一体に成形しやすいことから、被覆層20を構成する樹脂と、本体10を構成する樹脂とは、同じ種類の樹脂を含むことが好ましい。
【0028】
被覆層20は、界面活性剤、滑剤、タルク、顔料等の任意成分を含有してもよい。
【0029】
被覆層20の厚みT20は、例えば、0.5~1.5mmが好ましく、0.5~1.0mmがより好ましい。厚みT20が上記下限値以上であれば、外部からの衝撃に対して、本体10の破損を防止できる。厚みT20が上記上限値以下であれば、柔軟性をより高められる。
【0030】
被覆層20の線膨張係数は、7.5×10-5/℃以下が好ましく、7.0×10-5/℃以下がより好ましく、5.0×10-5/℃以下がさらに好ましい。
【0031】
被覆層20のデュロ硬度Aは、40~90が好ましく、50~80がより好ましく、60~70がさらに好ましい。
【0032】
被覆層20の鉛筆硬度は、5B以上が好ましい。
【0033】
巾木1の製造方法としては、例えば、共押出法で、本体10と被覆層20とを一体に成形する方法が好ましい。即ち、本発明の巾木1は、共押出成形品が好ましい。
共押出法で巾木1を製造する方法の一例を説明する。
本体10を構成する樹脂、発泡剤及び任意成分を混錬して第一の樹脂組成物とする。
被覆層20を構成する樹脂及び任意成分を混錬して第二の樹脂組成物とする。
第一の樹脂組成物は、樹脂と発泡剤と任意成分とを含む。
発泡剤としては、分解型発泡剤、熱膨張性カプセル、圧縮ガス等が挙げられる。
分解型発泡剤としては、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、p,p’-オキシビスベンゼンスルホンヒドラジド、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド等が挙げられる。
熱膨張性カプセルとしては、発性の低沸点炭化水素が熱可塑性樹脂樹脂内に内包されたカプセルが挙げられる。
圧縮ガスとしては、二酸化炭素、窒素、空気等が挙げられる。
発泡剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、10~20質量部が好ましく、14~16質量部がより好ましい。
【0034】
溶融した第一の樹脂組成物と溶融した第二の樹脂組成物とを共押出する。第一の樹脂組成物の溶融温度は、例えば、90~180℃である。第二の樹脂組成物の溶融温度は、例えば、90~180℃である。
押し出された第一の樹脂組成物は、大気圧下で発泡し、本体10を形成する。押し出された第二の樹脂組成物は、押出方向に沿って、本体10の表面に広がり、硬化して被覆層20となる。
こうして、長尺の巾木1を得る。得られた巾木1を必要に応じて任意の長さに切断してもよい。あるいは、長尺の巾木1を巻回して、巻回体(巾木巻回体)としてもよい。
【0035】
巾木1の使用方法について、説明する。
例えば、巾木巻回体を施工現場に持ち込む。巾木巻回体は、長尺の巾木1を巻回してコンパクトとなっているため、施工現場への持ち込みが容易である。
施工現場では、巾木巻回体から巾木1を繰り出し、施工場所に応じた長さに切断する。巾木1は、軟質であるため、カッターナイフ等で容易に切断できる。この際、巾木背面20bに形成された縦溝の位置で切断すれば、より容易に巾木1を切断できる。このため、卓上丸鋸等を用いる必要がなく、騒音を発生しにくい。
加えて、施工場所が長くても、つなぎ目を形成せずに、巾木1を取り付けられる。このため、集合住宅のリフォーム等、施工時間が限られた条件下でも、速やかに工事を完了できる。
【0036】
切り出された巾木1の固定用凹部16に、接着剤を塗布するか、又は、両面テープを貼着する。次いで、
図3に示すように、巾木背面20bを壁Wに押し当て、巾木1を壁に貼着する。こうして、固定用凹部16内の接着剤又は両面テープは、貼着部30となる。この際、巾木底面aが特定の方向に傾斜しているため、巾木正面20fの下端が、床Fから浮き上がるのを防止できる。
【0037】
こうして設置された巾木1は、内部が発泡樹脂の本体10とされているため、衝撃を受けた場合でも衝撃音を容易に吸収でき、破損しにくい。加えて、巾木1は、表面に非発泡樹脂の被覆層20を有するため、衝撃を受けた場合でも傷つきにくい。
【0038】
上述の実施形態では、本体の長手方向の両端面を除き、被覆層が本体を覆っている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。被覆層は本体の表面の一部を覆っていてもよいし、長手方向の両端面を覆っていてもよい。ただし、発泡樹脂である本体を保護する観点からは、少なくとも本体正面を被覆層が覆っていることが好ましく、本体正面と本体天面とを被覆層が覆っていることがより好ましく、本体正面と本体天面と本体底面とを被覆層が覆っていることがさらに好ましく、本体正面と本体天面と本体底面と本体背面とを被覆層が覆っていることが特に好ましい。
【0039】
上述の実施形態では、1本の化粧凹部が形成されているが、本発明はこれに限定されない。化粧凹部は、2本以上でもよいし、形成されていなくてもよい。また、化粧凹部がY方向に延びる凹部でもよい。
【0040】
上述の実施形態では、巾木背面に、長手方向に延びる1本の固定用凹部が形成されているが、本発明はこれに限定されない。
固定用凹部は、2本以上でもよいし、形成されていなくてもよい。
あるいは、凹条に代えて、貼着部を設けるための円形又は多角形の凹部が固定用凹部として形成されていてもよい。
【0041】
上述の実施形態では、巾木底面が特定の方向に傾斜している。しかしながら、本発明は、これに限定されず、巾木底面が傾斜していなくてもよい。
あるいは、巾木底面から下方(床方向)に突出するクッション部を有してもよい。クッション部は、発泡樹脂でもよいし、非発泡樹脂でもよい。巾木は、クッション部を有することで、床面との隙間を生じにくい。
【0042】
上述の実施形態では、本体は発泡樹脂による中実構造であるが、本発明はこれに限定されず、本体内部に中空部を有する中空構造でもよい。本体が中空構造であれば、耐衝撃性をさらに高められる。本体が中空構造であれば、巾木に掃除機や家具等が衝突した場合でも、隣室に伝わる音量を優位に小さくできる(遮音性に優れる)。
中空構造の本体部を有する巾木の一例について、図面4~8を参照して説明する。
【0043】
図4の巾木101は、発泡樹脂の本体110と、本体110の正面、背面、天面及び底面を覆う被覆層120とを有する。
巾木101の正面には、X方向に延びる化粧凹部112が形成されている。化粧凹部112は、巾木101におけるY方向の略中間に形成されている。巾木101は、化粧凹部112の上方と下方とで、厚み(Z方向の長さ)が同じである。
本体110の内部には、X方向に延びる中空部130が形成されている。中空部130の断面形状は、巾木101の断面形状と相似形である。即ち、本体110は、X方向の断面において、均一な厚さとなっている。
【0044】
図5の巾木201は、発泡樹脂の本体210と、本体210の正面、背面、天面及び底面を覆う被覆層220とを有する。
巾木201の厚みは、巾木201の厚みよりも薄い。
巾木201の正面には、X方向に延びる化粧凹部212が形成されている。化粧凹部212は、巾木201におけるY方向の略中間に形成されている。巾木201は、化粧凹部212の上方と下方とで、厚み(Z方向の長さ)が同じである。
本体210の内部には、X方向に延びる中空部230が形成されている。中空部230の断面形状は、巾木201の断面形状と相似形である。即ち、本体210は、X方向の断面において、均一な厚さとなっている。
巾木201は、第一の実施形態の巾木101に比べて、厚みが薄い。しかしながら、巾木201は、中空部230を有するため、耐衝撃性の向上が図れる。
【0045】
図6の巾木301は、発泡樹脂の本体310と、本体310の正面、背面、天面及び底面を覆う被覆層320とを有する。
巾木301の正面には、X方向に延びる化粧凹部312が形成されている。化粧凹部312は、巾木301におけるY方向の中央よりも天面寄りに形成されている。即ち、底面から化粧凹部312までの高さh1は、巾木301の高さHの1/2超となっている。このため、化粧凹部312の下方は、化粧凹部312の上方よりも広い。また、巾木301において、化粧凹部312の下方の厚さT1は、化粧凹部312の上方の厚さt1よりも厚い。
本体310は、化粧凹部312の位置において中実な発泡体となっている。本体310は、化粧凹部312よりも上方の位置に、X方向に延びる第一の中空部331を有する。本体310は、化粧凹部312よりも下方の位置に、X方向に延びる第二の中空部332を有する。
巾木301は、掃除機等が衝突しやすい下方において、面積が大きく、厚みが厚く、かつ第二の中空部332を有するため、耐衝撃性のさらなる向上が図れる。
【0046】
図7の巾木401は、発泡樹脂の本体410と、本体410の正面、背面、天面及び低面を覆う被覆層420とを有する。
巾木401の正面には、X方向に延びる化粧凹部412が形成されている。化粧凹部412は、巾木401におけるY方向の略中間に形成されている。巾木401は、化粧凹部412の上方と下方とで、厚みが同じである。
本体410の内部には、Y方向上方から順に、X方向に延びる中空部431、432、433、434が形成されている。即ち、中空部431、432、433、434は、Y方向において発泡樹脂の隔壁で区画されている。
中空部431は、化粧凹部412よりも上方に位置する。中空部434は、化粧凹部412よりも下方に位置する。中空部432及び中空部433は、化粧凹部412に位置する。
巾木401は、中空部が隔壁で仕切られている。このため、巾木401の合成を高められる。
【0047】
図8の巾木501は、発泡樹脂の本体510と、本体510の正面、背面、天面及び低面を覆う被覆層520とを有する。
巾木501の厚みは、巾木401の厚みよりも薄い。
巾木501の正面には、X方向に延びる化粧凹部512が形成されている。化粧凹部512は、巾木501におけるY方向の略中間に形成されている。巾木501は、化粧凹部512の上方と下方とで、厚みが同じである。
本体510の内部には、Y方向上方から順に、X方向に延びる中空部531、532、533、534が形成されている。即ち、中空部531、532、533、534は、Y方向において発泡樹脂の隔壁で区画されている。
中空部531は、化粧凹部512よりも上方に位置する。中空部534は、化粧凹部512よりも下方に位置する。中空部532及び中空部533は、化粧凹部512に位置する。
巾木501は、巾木401に比べて、厚みが薄い。しかしながら、巾木501は、中空部531、532、533、534を有するため、耐衝撃性の向上が図れる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されない。
【0049】
(評価方法)
<耐衝撃性>
耐衝撃性は、JIS K5600-5-3:1999により測定した。
【0050】
<表面硬度(鉛筆硬度)>
JIS K 5600-5-4:1999に従い、鉛筆硬度を測定した。
【0051】
<遮音性>
木造アパートの壁面下部の既存の巾木を取り外し、製造した長さ30mmの巾木を設置した。長さ1000mmのパイプの一端を巾木の正面に向けて、設置した。この際、パイプの前記一端を下端とし、パイプの中心軸と床面との仰角を15°とし、パイプの中心軸と巾木の長手方向とを上面視で垂直とし、パイプの下端(出口)と巾木との距離を20mmとした。また、パイプには、出口から100mm、300mm、500mm、700mmの位置に、仕切り板を差し込めるようになっている。
質量1.0kgの鉄球をパイプ内に置き、仕切り板で鉄球を支え、次いで、仕切り板を外し、鉄球を走行させて、鉄球を巾木に当てた。この時、巾木を設置した室(試験室)内の騒音(室内騒音)及び隣室の騒音(隣室騒音)について、騒音計(普通騒音計NL-42、リオン社製)にて測定した。パイプ内における仕切り板の位置(落下位置)を100mm、300mm、500mm、700mmに変えて、試験を行った。
試験室及び隣室における騒音計の集音部を、壁からの水平距離1.5m、高さ1.0mに設置した。隣室との界壁は、厚さ12.5mmの石膏ボード2枚の間に厚さ10.5cmの木製間柱が配置された厚さ13cmの木造界壁であった。
【0052】
(実施例1)
下記条件にて、第一の樹脂組成物と、第二の樹脂組成物とを共押出して、
図1の巾木1と同様の巾木を製造した。得られた巾木の仕様は、下記の通りであった。
得られた巾木について、耐衝撃性、表面硬度及び遮音性を測定した。耐衝撃性の結果は、破損がなく、かつ凹み0.87mm(復元後0.1mm)であった。表面硬度は、4B(後に復元)であった。また、本例の巾木は、カッターナイフで容易に切断できた。
【0053】
<製造条件>
・第一の樹脂組成物の組成:軟質ポリ塩化ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル樹脂(徳山積水工業社製、「TS-1000R」)100質量部とフタル酸ジオクチル50質量部を混錬したもの)100質量部、化学発泡剤(ADCA(アゾジカルボンアミド)、永和化成工業社製)15質量部。
・第二の樹脂組成物の組成:軟質ポリ塩化ビニル樹脂100質量部(第一の樹脂組成物と同じ)、金属石けん(滑剤)1質量部。
【0054】
<巾木仕様>
・高さ:60mm。
・厚さ:5mm。
・長さ:10m/巻き。
・被覆層の厚み:1mm。
・本体の密度:0.6g/cm3。
【0055】
(実施例2)
下記条件にて、第一の樹脂組成物と、第二の樹脂組成物とを共押出して、
図6の巾木301と同様の巾木を製造した。得られた巾木の仕様は、下記の通りであった。
得られた巾木について、耐衝撃性、表面硬度及び遮音性を測定した。耐衝撃性の結果は、破損がなく、かつ凹み0.87mm(復元後0.1mm)であった。表面硬度は、4B(後に復元)であった。また、本例の巾木は、カッターナイフで容易に切断できた。
【0056】
<製造条件>
・第一の樹脂組成物の組成:ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(リケンテクノス社製「アクティマー」GA-1075N)100質量部、発泡剤(クレハ社製「クレハマイクロスフェアー」H750)15質量部。
・第二の樹脂組成物の組成:ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(リケンテクノス社製「アクティマー」GA-1075N)100質量部。
【0057】
<巾木仕様>
・高さH1:40mm。
・高さh1:28mm。
・厚さT1:10mm。
・厚さt1:7mm。
・長さ:10m/巻き。
・被覆層の厚み:1mm。
・本体の密度:0.5g/cm3。
【0058】
(比較例1)
下記仕様の巾木(MDF)について、耐衝撃性、表面硬度及び遮音性を測定した。耐衝撃性の結果は、0.35mmであり、破損が認められた。表面硬度は、2B(復元せず)であった。また、本例の巾木は、カッターナイフで容易に切断できなかった。
<巾木仕様>
・高さ:45mm。
・厚さ:9mm。
・長さ:4m/本。
・密度:0.87g/cm3。
【0059】
(比較例2)
下記仕様の巾木(発泡ポリスチレン樹脂)について、耐衝撃性、表面硬度及び遮音性を測定した。耐衝撃性の結果は、0.4mmであった。表面硬度は、4Bであった。また、本例の巾木は、カッターナイフで容易に切断できた。
<巾木仕様>
・高さ:60mm。
・厚さ:5mm。
・長さ:4m/本。
・被覆層の厚み:1mm。
・本体の密度:0.6g/cm3。
【0060】
上述の通り、本発明を適用した実施例1は、易施工性が高く、耐衝撃性に優れていた。
【0061】
表1に示す通り、本発明を適用した実施例1~2は、落下位置100~700mmのいずれにおいても、比較例1~2に比べて、室内騒音及び隣室騒音が小さかった。
加えて、中空部を有する実施例2は、中空部を有しない実施例1に比べて、隣室騒音が小さかった。
図9は、横軸に落下位置、縦軸に隣室騒音(db)を取ったグラフである。
図9に示すように中空部を有する実施例2は、いずれの落下位置でも隣室騒音は、騒音として聞こえない音量(40db以下)であった。
【0062】
【符号の説明】
【0063】
1、101、201、301、401、501 巾木
10、110、210,310、410、510 本体
20、120、220、320、420、520 被覆層
20a 巾木底面
20b 巾木背面
20f 巾木正面
20t 巾木天面