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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】塗料カートリッジの個体識別システム
(51)【国際特許分類】
   B05B 15/00 20180101AFI20240116BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20240116BHJP
   B05B 12/14 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B05B15/00
B05B12/00 A
B05B12/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020061367
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021159799
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】服部 吉起
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-275746(JP,A)
【文献】特開2003-093931(JP,A)
【文献】特開2018-047544(JP,A)
【文献】特開平11-000592(JP,A)
【文献】特開平05-296751(JP,A)
【文献】特開2006-334577(JP,A)
【文献】特開平09-206640(JP,A)
【文献】特開2013-188796(JP,A)
【文献】国際公開第2019/088237(WO,A1)
【文献】特開2015-202428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 5/00-5/16
12/00-16/80
B05D 1/00-7/26
B25J 1/00-21/02
G05B 19/18-19/416
19/42-19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームの先端に塗装機が取り付けられた産業用塗装ロボットと、
前記塗装機に着脱可能な塗料カートリッジが装着される複数のストッカを有し、前記塗料カートリッジに対して複数色の塗料を選択的に充填可能な充填部を有する塗料充填装置と、
使用済みの前記塗料カートリッジを前記塗装機から取り外して前記塗料充填装置の前記充填部に装着するとともに、前記塗料が充填された使用前の前記塗料カートリッジを前記ストッカから取り外して前記塗装機に装着する搬送装置と
を塗装領域内に設置してなる塗装設備において、前記塗料カートリッジの個体を識別するシステムであって、
前記搬送装置は、
互いに直交する3軸方向に駆動可能な3つの電動アクチュエータからなり、垂直方向に沿って駆動するZ軸用電動アクチュエータをX軸用電動アクチュエータ及びY軸用電動アクチュエータに支持させた構造の駆動装置と、
前記Z軸用電動アクチュエータの可動部に設けられ、前記塗料カートリッジを把持可能なチャック装置と、
前記Z軸用電動アクチュエータの前記可動部に設けられ、前記ストッカ上の前記塗料カートリッジに付された個体ごとの識別子を読み取る画像センサと、
前記画像センサにより読み取った前記識別子を判別し、その識別子に対応した前記ストッカ上に前記塗料カートリッジが装着されているか否かを判定する個体識別手段と、
前記ストッカ上に適切な前記塗料カートリッジが装着されていないときに警告を発する警告手段と
を備えたことを特徴とする、塗料カートリッジの個体識別システム。
【請求項2】
前記3つの電動アクチュエータはそれぞれ防爆構造及び制振機構を有するとともに、前記画像センサは防爆構造を有することを特徴とする請求項1に記載の塗料カートリッジの個体識別システム。
【請求項3】
前記可動部において前記チャック装置よりも高い位置には、センサ支持ブラケットが突設され、前記画像センサは、斜め下方を向く状態で前記センサ支持ブラケットに支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の塗料カートリッジの個体識別システム。
【請求項4】
前記識別子は、前記塗料カートリッジの上端面に付された数字であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塗料カートリッジの個体識別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装設備において、塗料カートリッジの個体を識別するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車ボディの塗装設備(塗装ライン)では、塗装色の異なる自動車ボディが混在して搬送されるため、自動車ボディに応じた色替塗装を可能にする技術が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。例えば、図9に示されるように、塗装設備101は、産業用塗装ロボット(図示略)、塗料充填装置102及び搬送装置103を備える。産業用塗装ロボットは、アームの先端に塗装機を取り付けた構造を有する。塗料充填装置102は、塗装機に着脱可能な塗料カートリッジ104が装着される複数のストッカ105a~105cと、塗料カートリッジ104に対して塗料を充填する充填部106とを有する。そして、搬送装置103は、使用済みの塗料カートリッジ104を塗装機から取り外して充填部106に装着するとともに、塗料が充填された使用前の塗料カートリッジ104をストッカ105a~105cのいずれか1つから取り外して塗装機に装着することにより、塗料カートリッジ104を交換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-130530号公報(図8等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、塗料充填装置102は、充填部106に装着されている塗料カートリッジ104に対して、複数色の塗料のうちいずれか1つの塗料を選択して充填する充填工程を行う。また、作業者は、充填工程後に、塗料カートリッジ104に充填された塗料の色(塗色)を確認する。そして、作業者は、塗料カートリッジ104を充填部106から取り外した後、確認した塗色に対応付けられたストッカに装着する。例えば、赤色の塗料が充填されている場合には塗料カートリッジ104を赤色塗料用のストッカ105aに装着し、青色の塗料が充填されている場合には塗料カートリッジ104を青色塗料用のストッカ105bに装着する。そして、搬送装置103は、赤色に塗装する場合には塗料カートリッジ104を赤色塗料用のストッカ105aから取り外して塗装機に装着し、青色に塗装する場合には塗料カートリッジ104を青色塗料用のストッカ105bから取り外して塗装機に装着する。
【0005】
ところが、充填部106からストッカ105a~105cに塗料カートリッジ104を移動する作業は、作業者が行っているため、置き間違いが生じる可能性がある。この場合、搬送装置103は、人為的ミスを検出することができないため、間違った塗色の塗料カートリッジ104を取り外してそのまま塗装機に装着してしまう。また、作業者にとっても、塗料カートリッジ104の塗色を目視で確認することはそもそも困難である。その結果、塗装機から間違った色の塗料が自動車ボディに噴霧されるため、色混じり等の塗装不良が生じてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、間違った色の塗料カートリッジの塗装機への装着を防止することにより、塗装不良を未然に防止することができる塗料カートリッジの個体識別システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、アームの先端に塗装機が取り付けられた産業用塗装ロボットと、前記塗装機に着脱可能な塗料カートリッジが装着される複数のストッカを有し、前記塗料カートリッジに対して複数色の塗料を選択的に充填可能な充填部を有する塗料充填装置と、使用済みの前記塗料カートリッジを前記塗装機から取り外して前記塗料充填装置の前記充填部に装着するとともに、前記塗料が充填された使用前の前記塗料カートリッジを前記ストッカから取り外して前記塗装機に装着する搬送装置とを塗装領域内に設置してなる塗装設備において、前記塗料カートリッジの個体を識別するシステムであって、前記搬送装置は、互いに直交する3軸方向に駆動可能な3つの電動アクチュエータからなり、垂直方向に沿って駆動するZ軸用電動アクチュエータをX軸用電動アクチュエータ及びY軸用電動アクチュエータに支持させた構造の駆動装置と、前記Z軸用電動アクチュエータの可動部に設けられ、前記塗料カートリッジを把持可能なチャック装置と、前記Z軸用電動アクチュエータの前記可動部に設けられ、前記ストッカ上の前記塗料カートリッジに付された個体ごとの識別子を読み取る画像センサと、前記画像センサにより読み取った前記識別子を判別し、その識別子に対応した前記ストッカ上に前記塗料カートリッジが装着されているか否かを判定する個体識別手段と、前記ストッカ上に適切な前記塗料カートリッジが装着されていないときに警告を発する警告手段とを備えたことを特徴とする、塗料カートリッジの個体識別システムをその要旨とする。
【0008】
請求項1に記載の発明において、個体識別手段は、塗料カートリッジの識別子を判別し、塗料カートリッジが識別子に対応したストッカ上に装着されているか否かを判定する。そして、警告手段は、塗料カートリッジが識別子に対応したストッカ上に装着されていないときに警告を発する。このため、人為的なミスにより、塗料カートリッジが識別子に対応しないストッカ上に装着されたとしても、警告が発せられることにより、間違った色の塗料カートリッジの装着が作業者に通知される。その結果、搬送装置が間違った色の塗料カートリッジをストッカから取り外して塗装機に装着する、といった事態を回避できるため、塗装機から間違った色の塗料が噴霧されることに起因する塗装不良を未然に防止することができる。
【0009】
上記搬送装置は、ストッカ上の塗料カートリッジに付された個体ごとの識別子を読み取る画像センサを備える。ここで、識別子としては、文字、数字、記号、絵等を用いることができる。なお、識別子として、QRコード(株式会社デンソーウェーブの登録商標)等の二次元コードやバーコード等の一次元コードを用いてもよい。
【0010】
また、警告手段としては、例えば、ストッカ上に適切な塗料カートリッジが装着されていないことを発光(点灯・点滅等)にて警告するランプ等の発光手段、適切な塗料カートリッジが装着されていないことを音声(警告音等)にて警告するアラーム等の音声出力手段、適切な塗料カートリッジが装着されていないことを表示(文字、記号、絵等)にて警告する液晶式表示装置等の表示手段、などが挙げられる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記3つの電動アクチュエータはそれぞれ防爆構造及び制振機構を有するとともに、前記画像センサは防爆構造を有することをその要旨とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、3つの電動アクチュエータ及び画像センサが防爆構造を有するため、塗料ミストが充満する環境での使用に適している。また、3つの電動アクチュエータは、防爆構造を有することで重くなっているため、停止時に揺れが収まりにくい。なお、請求項2では、各電動アクチュエータが制振機構を有するため、制振機構によって各電動アクチュエータの揺れを抑えることができる。よって、各電動アクチュエータを素早く移動させたとしても確実に停止させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記可動部において前記チャック装置よりも高い位置には、センサ支持ブラケットが突設され、前記画像センサは、斜め下方を向く状態で前記センサ支持ブラケットに支持されていることをその要旨とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、画像センサを斜め下方に向けた状態で支持するセンサ支持ブラケットが、Z軸用電動アクチュエータの可動部においてチャック装置よりも高い位置に配置される。その結果、画像センサの向きが鉛直方向に対して鋭角をなすため、画像センサは、ストッカ上に装着された塗料カートリッジの直上に近い位置から塗料カートリッジを読み取ることが可能となる。従って、識別子が塗料カートリッジの上端面に付されている場合には、読み取った識別子の形状が変形してしまう、といった斜め撮影に起因する問題を最小限に抑えることができる。このため、画像センサの読み取り精度が向上する。また、画像センサは、Z軸用電動アクチュエータに直接取り付けられるのではなく、Z軸用電動アクチュエータの可動部に突設されたセンサ支持ブラケットを介してZ軸用電動アクチュエータに取り付けられる。その結果、Z軸用電動アクチュエータを含む3つの電動アクチュエータの搬送時の振動(搬送揺れ)が画像センサに伝わりにくくなるため、画像センサが読み取ったストッカにブレが生じにくくなる。即ち、画像センサを上記した態様で上記した位置に取り付けることにより、識別子を画像センサを用いて高精度で読み取ることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記識別子は、前記塗料カートリッジの上端面に付された数字であることをその要旨とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、識別子が塗料カートリッジの上端面に付されているため、ストッカ上に塗料カートリッジを装着した際に、識別子が上端面に露出するようになる。よって、画像センサが塗料カートリッジの上方に配置される場合に、識別子を画像センサを用いて確実に読み取ることができる。また、識別子は、比較的単純な形状をなす数字であるため、画像センサによって読み取った識別子を個体識別手段によって認識(判別)しやすくなる。
【発明の効果】
【0017】
以上詳述したように、請求項1~4に記載の発明によると、間違った色の塗料カートリッジの塗装機への装着を防止することにより、塗装不良を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態における塗料カートリッジの個体識別システムを示す概略構成図。
図2】塗装設備を示す側面図。
図3】塗装設備を示す正面図。
図4】塗料充填装置を示す概略平面図。
図5】ストッカ上に適切な塗料カートリッジが装着された状態を示す概略図。
図6】ストッカ上に適切な塗料カートリッジが装着されていない状態を示す概略図。
図7】塗料カートリッジ、Z軸用電動アクチュエータ、チャック装置及び画像センサを示す側面図。
図8】塗料カートリッジ、Z軸用電動アクチュエータ、チャック装置及び画像センサを示す正面図。
図9】従来技術における塗装設備を示す概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
図1図3に示されるように、本実施形態における塗料カートリッジ21の個体識別システム1は、塗装設備10において、塗料カートリッジ21の個体を識別するシステムである。個体識別システム1は、一部が張り出した状態で、自動車ボディを塗装するための塗装ライン内に設けられる。塗装設備10は、産業用塗装ロボット11、塗料充填装置31及び搬送装置40を塗装領域(図示略)内に設置してなり、塗装ラインに組み込まれている。
【0021】
産業用塗装ロボット11は、本体部12と、本体部12から延びるアーム13と、アーム13の先端に取り付けられる塗装機14とを備えている。塗装機14を構成する機体15の下面側には、回転霧化頭16が回転可能に設けられている。一方、機体15の上端面には、円筒状をなす塗料カートリッジ装着部位17が突設されている。塗料カートリッジ装着部位17には、塗料が充填された塗料カートリッジ21が着脱可能に装着されている。塗料カートリッジ21は、内部にタンク(図示略)を有する本体22と、本体22の上端中央部に突設された突出部23と、本体22の下端中央部に突設されたフィードチューブ24とを含んで構成されている。なお、塗料カートリッジ21内の塗料は、フィードチューブ24を通過して回転霧化頭16に供給される。そして、回転霧化頭16が回転することにより、塗料が霧化されて自動車ボディに噴霧される。
【0022】
また、図5図6に示されるように、塗料カートリッジ21の上端面21aの中央部には、識別子25が付されている。本実施形態の識別子25は、シールに記載された色の種類を示す数字である。具体的に言うと、赤色(専用色1)の塗料が充填された塗料カートリッジ21には、識別子25である赤色の数字「01」が付された白色のシールが貼付され、青色(専用色2)の塗料が充填された塗料カートリッジ21には、識別子25である青色の数字「02」が付された白色のシールが貼付されている。
【0023】
図1図4に示されるように、塗料充填装置31の上面31aには、円筒状をなす複数のストッカ32が突設されている。各ストッカ32は、上面31aの面方向に沿って縦横に配置されている。そして、各ストッカ32には、塗料カートリッジ21が着脱可能に装着されている。また、図4に示されるように、各ストッカ32は、赤色の塗料が充填された塗料カートリッジ21が装着される3個の第1ストッカ32aと、青色の塗料が充填された塗料カートリッジ21が装着される3個の第2ストッカ32bとを含んでいる。各第1ストッカ32a及び各第2ストッカ32bは、それぞれ塗料充填装置31の縦方向(図4では上下方向)に沿って一直線上に配置されている。各第1ストッカ32aは、ストッカ32群の左端の列を構成しており、各第2ストッカ32bは、各第1ストッカ32aからなる列の右隣の列を構成している。
【0024】
また、図4図6に示されるように、各ストッカ32の基部33の上面34には、ストッカ側識別子26が付されている。ストッカ側識別子26は、基部33の上面34においてビジョンセンサ61寄りの位置(図2図4図6において右寄りの位置)に配置されている。本実施形態のストッカ側識別子26は、シールに記載された色の種類を示す数字である。具体的に言うと、各第1ストッカ32aには、ストッカ側識別子26である赤色の数字「01」が付された白色のシールが貼付され、各第2ストッカ32bには、ストッカ側識別子26である青色の数字「02」が付された白色のシールが貼付されている。
【0025】
さらに、図4に示されるように、塗料充填装置31の側方(図4では下側)には、円筒状をなす複数の充填部35が配置されている。各充填部35は、塗料充填装置31の横方向(図4では左右方向)に沿って一直線上に配置されている。そして、各充填部35には、塗料カートリッジ21が着脱可能に装着されている。また、塗料充填装置31は、充填部35に装着されている塗料カートリッジ21に対して複数色の塗料を選択的に充填可能となっている。具体的に言うと、各充填部35は、塗料カートリッジ21に赤色の塗料を充填するための第1充填部35aと、塗料カートリッジ21に青色の塗料を充填するための第2充填部35bとを含んでいる。第1充填部35aは第1ストッカ32a群の側方(図4では下側)に配置され、第2充填部35bは第2ストッカ32b群の側方(図4では下側)に配置されている。
【0026】
図1図3に示されるように、搬送装置40は、使用済みの塗料カートリッジ21を塗装機14から取り外して充填部35に装着するとともに、塗料が充填された使用前の塗料カートリッジ21をストッカ32から取り外して塗装機14に装着するための装置である。搬送装置40は、駆動装置41、チャック装置51a,51b及びビジョンセンサ61(画像センサ)を備えている。
【0027】
駆動装置41は、互いに直交する3軸方向に駆動可能な3つの電動アクチュエータ(X軸用電動アクチュエータ42a、Y軸用電動アクチュエータ42b、Z軸用電動アクチュエータ42c)からなる。駆動装置41は、垂直方向に沿って駆動するZ軸用電動アクチュエータ42cを、水平方向に沿って駆動するX軸用電動アクチュエータ42a及びY軸用電動アクチュエータ42bに支持させた構造を有している。なお、X軸用電動アクチュエータ42a及びY軸用電動アクチュエータ42bは、産業用塗装ロボット11よりも高い位置に設置されている。一方、Z軸用電動アクチュエータ42cは、産業用塗装ロボット11とほぼ同じ高さにあるものの、上端が塗装機14及びチャック装置51a,51bよりも高い位置に設置されている。
【0028】
詳述すると、X軸用電動アクチュエータ42aは、X軸方向(図2では左右方向)に沿って延びるレール部43aを備えており、レール部43aには、同レール部43aの延出方向に移動するスライダ部44aが設けられている。X軸用電動アクチュエータ42aは、レール部43aを、複数の支持柱71を介してフレーム70の天井部72に支持させた構造を有している。また、Y軸用電動アクチュエータ42bは、Y軸方向(図3では左右方向)に沿って延びるレール部43bを備えており、レール部43bには、同レール部43bの延出方向に移動するスライダ部44bが設けられている。Y軸用電動アクチュエータ42bは、レール部43bを、支持柱73を介してX軸用電動アクチュエータ42aのスライダ部44aに支持させた構造を有しており、水平方向に沿って移動するようになっている。さらに、Z軸用電動アクチュエータ42cは、Z軸方向(図2図3では上下方向)に沿って延びるレール部43cを備えており、レール部43cには、同レール部43cの延出方向に沿って移動するスライダ部44c(可動部)が設けられている。Z軸用電動アクチュエータ42cは、Y軸用電動アクチュエータ42bのスライダ部44bに支持された構造を有しており、垂直方向に沿って移動するようになっている。また、各レール部43a~43cの側部には、スライダ部44a~44cを移動させるためのモータ(図示略)が取り付けられている。なお、各モータは、それぞれ防爆構造を有している。
【0029】
また、各電動アクチュエータ42a~42cは、それぞれ制振機構を有している。本実施形態の制振機構は、X軸用電動アクチュエータ42aの振動を打ち消すような波形で、レール部43aに取り付けられたモータを駆動させることにより、X軸用電動アクチュエータ42aの揺れを抑える制御(制振制御)を行う。また、制振機構は、Y軸用電動アクチュエータ42bの振動を打ち消すような波形で、レール部43bに取り付けられたモータを駆動させることにより、Y軸用電動アクチュエータ42bの揺れを抑える制御(制振制御)を行う。さらに、制振機構は、Z軸用電動アクチュエータ42cの振動を打ち消すような波形で、レール部43cに取り付けられたモータを駆動させることにより、Z軸用電動アクチュエータ42cの揺れを抑える制御(制振制御)を行う。
【0030】
図1図3図7図8に示されるように、Z軸用電動アクチュエータ42cのスライダ部44cには、一対のチャック装置51a,51bが並列に設けられている。各チャック装置51a,51bは、図3から見たときに左右一対となっており、それぞれが塗料カートリッジ21を把持可能となっている。各チャック装置51a,51bは、シリンダ52と、互いに接離可能な一対の挟持部材53とを備えている。なお、両挟持部材53が互いに接近した場合、塗料カートリッジ21の突出部23を挟持する挟持状態となる一方、両挟持部材53が互いに離間した場合には、塗料カートリッジ21を挟持しない開放状態となる。
【0031】
また、各チャック装置51a,51bの上端には、図7図8に示されるバネユニット54(衝撃吸収手段)が取り付けられている。また、本実施形態では、一方のチャック装置51bで塗料カートリッジ21を把持したままの状態で、もう一方のチャック装置51aでドッキング動作を行うようになっている。なお、バネユニット54は、コイル状をなす4本の圧縮バネ55と、Z軸用電動アクチュエータ42cのスライダ部44cに固定される支持板56と、チャック装置51aのシリンダ52に接続される接続板57とを備えている。そして、圧縮バネ55の両端は、支持板56と接続板57とにそれぞれ当接している。よって、塗料カートリッジ21をストッカ32に装着する際にチャック装置51aに加わる衝撃は、圧縮バネ55が収縮することによって吸収される。
【0032】
図1図3図7図8に示されるように、Z軸用電動アクチュエータ42cのスライダ部44cには、上記のビジョンセンサ61が設けられている。ビジョンセンサ61は、ストッカ32上の塗料カートリッジ21に付された個体ごとの識別子25(図5図6参照)を読み取る機能を有している。詳述すると、スライダ部44cに取り付けられたバネユニット54には、センサ支持ブラケット62が突設されている。センサ支持ブラケット62は、チャック装置51aよりも高い位置であって、スライダ部44cとほぼ同じ高さに配置されている。そして、センサ支持ブラケット62にはビジョンセンサ61が取り付けられている。よって、本実施形態のビジョンセンサ61は、左右一対のチャック装置51a,51bのうち、ドッキング専用のチャック装置51aに取り付けられており、チャック装置51aとともに移動可能となっている。また、ビジョンセンサ61は、鉛直方向に対して角度θ1だけ斜め下方を向く状態で、センサ支持ブラケット62に支持されている。なお、本実施形態のビジョンセンサ61は防爆構造を有している。
【0033】
次に、塗装設備10の電気的構成について説明する。
【0034】
図1に示されるように、塗装設備10は、設備全体を統括的に制御する制御装置80を備えている。制御装置80は、CPU81、メモリ82及び入出力ポート83等からなる周知のコンピュータにより構成されている。CPU81は、塗料充填装置31、X軸用電動アクチュエータ42a、Y軸用電動アクチュエータ42b、Z軸用電動アクチュエータ42c、チャック装置51a,51b及びビジョンセンサ61に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。また、CPU81は、警告手段であるアラーム84及び表示装置85に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。
【0035】
次に、塗装設備10での塗装時の処理を説明する。
【0036】
まず、未塗装状態の自動車ボディをコンベア(図示略)上に載置する。なお、コンベア上に載置された自動車ボディは、コンベアの下流側に移動して、塗装設備10内に搬入される。そして、自動車ボディが塗装設備10の塗装領域に到達すると、産業用塗装ロボット11に取り付けられている塗装機14に駆動信号を出力し、塗装機14から自動車ボディに対して塗料を吹き付ける制御を行う。その結果、自動車ボディの表面に塗膜が形成される。
【0037】
その後、塗装機14に装着された塗料カートリッジ21に充填されている塗料が空になると、産業用塗装ロボット11に駆動信号を出力し、塗装機14を原点位置(図示略)に移動させる制御を行う。そして、CPU81は、X軸用電動アクチュエータ42a及びY軸用電動アクチュエータ42bに駆動信号を出力し、原点位置に存在する塗装機14の上方にチャック装置51bを移動させる制御を行う。
【0038】
次に、CPU81は、Z軸用電動アクチュエータ42cに駆動信号を出力し、スライダ部44cをレール部43cの下降端まで下降させる制御を行う。そして、CPU81は、チャック装置51bに駆動信号を出力し、塗装機14の塗料カートリッジ装着部位17に装着されている塗料カートリッジ21の突出部23を、チャック装置51bを構成する一対の挟持部材53に挟持させる制御を行う。さらに、CPU81は、Z軸用電動アクチュエータ42cに駆動信号を出力し、スライダ部44cをレール部43cの上昇端に上昇させる制御を行う。この時点で、使用済みの塗料カートリッジ21が塗装機14から取り外される。
【0039】
次に、CPU81は、X軸用電動アクチュエータ42a及びY軸用電動アクチュエータ42bに駆動信号を出力し、塗料充填装置31の充填部35の上方位置にチャック装置51bを移動させる制御を行う。例えば、自動車ボディを赤色に塗装している場合、CPU81は、塗料充填装置31が備える複数の充填部35のうち、塗料カートリッジ21に赤色の塗料を充填する第1充填部35aの上方位置にチャック装置51bを移動させる制御を行う。そして、CPU81は、Z軸用電動アクチュエータ42cに駆動信号を出力し、スライダ部44cをレール部43cの下降端まで下降させる制御を行う。この時点で、使用済みの塗料カートリッジ21が第1充填部35aに装着(ドッキング)される。
【0040】
そして、CPU81は、塗料充填装置31に駆動信号を出力し、第1充填部35aから塗料カートリッジ21に赤色の塗料を充填させる制御を行う。その後、作業者は、塗料カートリッジ21を第1充填部35aから取り外した後、取り外した塗料カートリッジ21を、3つの第1ストッカ32a(図4参照)のうち、塗料カートリッジ21が装着されていない第1ストッカ32aに装着する。
【0041】
次に、CPU81は、塗料が充填された使用前の塗料カートリッジ21が装着されている複数のストッカ32の中から1つのストッカ32を選択する制御を行う。例えば、自動車ボディを赤色に塗装する場合、CPU81は、3つの第1ストッカ32aの中から、塗料カートリッジ21が装着されている第1ストッカ32a(例えば、図4において左上に位置する第1ストッカ32a)を選択する。そして、CPU81は、メモリ82に記憶されている各ストッカ32の位置情報(X座標、Y座標)の中から選択したストッカ32(第1ストッカ32a)の位置情報を選択する。さらに、CPU81は、選択した位置情報に基づいてX軸用電動アクチュエータ42a及びY軸用電動アクチュエータ42bに駆動信号を出力し、選択したストッカ32(第1ストッカ32a)の上方位置にチャック装置51aを移動させる制御を行う。
【0042】
次に、CPU81は、ビジョンセンサ61に駆動信号を出力し、選択したストッカ32上の塗料カートリッジ21に付された識別子25と、選択したストッカ32に付されたストッカ側識別子26とをビジョンセンサ61に読み取らせる制御を行う。具体的には、識別子25の像をビジョンセンサ61によって撮影する。次に、ビジョンセンサ61の撮影データをCPU81に取り込んで画像認識処理を行い、その認識した画像に基づいて、識別子25の数字の種類及び色を検出する。また、CPU81は、ビジョンセンサ61に駆動信号を出力し、選択したストッカ32に付されたストッカ側識別子26をビジョンセンサ61に読み取らせる制御を行う。具体的には、ストッカ側識別子26の像をビジョンセンサ61によって撮影する。次に、ビジョンセンサ61の撮影データをCPU81に取り込んで画像認識処理を行い、その認識した画像に基づいて、ストッカ側識別子26の数字の種類及び色を検出する。
【0043】
そして、CPU81は、ビジョンセンサ61により読み取った識別子25を判別し、判別した識別子25に対応したストッカ32上に塗料カートリッジ21が装着されているか否か、即ち、選択したストッカ32上に適切な塗料カートリッジ21が装着されているか否かを判定する制御を行う。具体的に言うと、CPU81は、塗料カートリッジ21の識別子25とストッカ32のストッカ側識別子26とが一致するか否かを判定する。より詳しくは、CPU81は、識別子25の数字とストッカ側識別子26の数字とが一致し、かつ、識別子25の数字の色とストッカ側識別子26の数字の色とが一致するか否かを判定する。即ち、CPU81は、『個体識別手段』としての機能を有している。
【0044】
なお、本実施形態のCPU81は、塗料の色ごとに対応付けられたストッカ32の位置情報(X座標、Y座標)に基づいてチャック装置51aを移動させるため、チャック装置51aは、選択したストッカ32の上方に位置に確実に移動する。従って、CPU81は、識別子25とストッカ側識別子26とで数字及び数字の色が一致するか否かを判定する代わりに、塗料カートリッジ21の識別子25の数字や数字の色が適切であるか否かを判定することによって、選択したストッカ32上に適切な塗料カートリッジ21が装着されているか否かを判定してもよい。この場合、塗料カートリッジ21が適切であるか否かの判定に、ストッカ側識別子26を用いなくても済む。また、識別子25とストッカ側識別子26とで数字及び数字の色が一致するか否かの判定と、識別子25の数字及び数字の色が適切であるか否かの判定との両方を行うことにより、塗料カートリッジ21が適切であるか否かを判定してもよい。
【0045】
そして、本実施形態において、識別子25の数字とストッカ側識別子26の数字とが一致しない場合(図6参照)、CPU81は、判別した識別子25に対応したストッカ32上に適切な塗料カートリッジ21が装着されていないと判定する。なお、図6は、作業者が、青色の塗料が充填された塗料カートリッジ21(識別子25である青色の数字「02」が付されたシールが貼付)を、間違えて赤色塗料用のストッカ32(第1ストッカ32a:ストッカ側識別子26である赤色の数字「01」が付されたシールが貼付)に装着してしまった状態を示している。また、本実施形態では、識別子25の数字の色とストッカ側識別子26の数字の色とが一致しない場合においても、CPU81は、判別した識別子25に対応したストッカ32上に適切な塗料カートリッジ21が装着されていないと判定する。この場合、CPU81は、アラーム84(図1参照)に駆動信号を出力し、ストッカ32上に適切な塗料カートリッジ21が装着されていない旨を音声にて警告する制御を行う。また、CPU81は、表示装置85(図1参照)に駆動信号を出力し、ストッカ32上に適切な塗料カートリッジ21が装着されていない旨を示す画像を表示させる制御を行う。さらに、CPU81は、異常が発生しているとして塗装設備10を停止させる制御を行う。そして、作業者は、塗料カートリッジ21を正しいストッカ32に装着し直す作業を行う。
【0046】
一方、本実施形態において、識別子25の数字とストッカ側識別子26の数字とが一致し、かつ、識別子25の数字の色とストッカ側識別子26の数字の色とが一致する場合(図5参照)、CPU81は、判別した識別子25に対応したストッカ32上に適切な塗料カートリッジ21が装着されていると判定する。この場合、CPU81は、Z軸用電動アクチュエータ42cに駆動信号を出力し、スライダ部44cをレール部43cの下降端まで下降させる制御を行う。そして、CPU81は、チャック装置51aに駆動信号を出力し、選択したストッカ32(例えば第1ストッカ32a)に装着されている塗料カートリッジ21の突出部23を、チャック装置51aを構成する一対の挟持部材53に挟持させる制御を行う。さらに、CPU81は、Z軸用電動アクチュエータ42cに駆動信号を出力し、スライダ部44cをレール部43cの上昇端に上昇させる制御を行う。この時点で、空になった塗料と同じ色(例えば赤色)の塗料が充填された塗料カートリッジ21が、ストッカ32(例えば第1ストッカ32a)から取り外される。
【0047】
次に、CPU81は、チャック装置51aに挟持されている塗料カートリッジ21を塗装機14に装着させる制御を行う。詳述すると、CPU81は、X軸用電動アクチュエータ42a及びY軸用電動アクチュエータ42bに駆動信号を出力し、原点位置(図示略)にある産業用塗装ロボット11の塗装機14の上方にチャック装置51aを移動させる制御を行う。そして、CPU81は、Z軸用電動アクチュエータ42cに駆動信号を出力し、スライダ部44cをレール部43cの下降端まで下降させる制御を行う。この時点で、塗料カートリッジ21が、塗装機14の塗料カートリッジ装着部位17に装着(ドッキング)される。
【0048】
次に、CPU81は、チャック装置51aに駆動信号を出力し、チャック装置51aを構成する一対の挟持部材53による、塗料カートリッジ21の突出部23の挟持を解除させる制御を行う。さらに、CPU81は、Z軸用電動アクチュエータ42cに駆動信号を出力し、スライダ部44cをレール部43cの上昇端に上昇させる制御を行う。なお、この時点で、塗料カートリッジ21の交換作業が終了する。
【0049】
その後、産業用塗装ロボット11に取り付けられている塗装機14に駆動信号を出力し、塗装機14から自動車ボディに対して塗料を吹き付ける制御を行う。その結果、塗料カートリッジ21の交換前と同じ色(例えば赤色)の塗料が自動車ボディに吹き付けられ、自動車ボディの表面に塗膜が形成される。
【0050】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0051】
(1)本実施形態の塗料カートリッジ21の個体識別システム1では、CPU81が、塗料カートリッジ21の識別子25を判別し、塗料カートリッジ21が識別子25に対応したストッカ32上に装着されているか否かを判定する。そして、アラーム84及び表示装置85が、塗料カートリッジ21が識別子25に対応したストッカ32上に装着されていないときに警告を発する。このため、人為的なミスにより、塗料カートリッジ21が識別子25に対応しないストッカ32上に装着されたとしても、警告が発せられることにより、間違った色の塗料カートリッジ21の装着が作業者に通知される。その結果、搬送装置40が間違った色の塗料カートリッジ21をストッカ32から取り外して塗装機14に装着する、といった事態を回避できるため、塗装機14から間違った色の塗料が噴霧されることに起因する塗装不良を未然に防止することができる。
【0052】
(2)本実施形態では、ビジョンセンサ61を斜め下方に向けた状態で支持するセンサ支持ブラケット62が、Z軸用電動アクチュエータ42cのスライダ部44cにおいてチャック装置51aよりも高い位置に配置される。その結果、ビジョンセンサ61のレンズ面から焦点(チャック装置51aの下方に位置するストッカ32)までの高さ(焦点距離)が大きくなり、ビジョンセンサ61の向きが鉛直方向に対して鋭角(角度θ1)をなすようになる。このため、ビジョンセンサ61は、ストッカ32上に装着された塗料カートリッジ21の直上に近い位置から塗料カートリッジ21を読み取ることが可能となる。従って、識別子25が塗料カートリッジ21の上端面21aに付され、ストッカ側識別子26がストッカ32の上面34に付された本実施形態において、読み取った識別子25及びストッカ側識別子26の数字が変形するために読み取り率が低下する、といった斜め撮影に起因する問題を最小限に抑えることができる。
【0053】
(3)本実施形態では、識別子25が塗料カートリッジ21の上端面21aに付されているため、ストッカ32上に塗料カートリッジ21を装着した際に、識別子25が上端面21aに露出するようになる。よって、塗料カートリッジ21の上方に配置されたビジョンセンサ61を用いて、識別子25を確実に読み取ることができる。また、本実施形態では、ストッカ側識別子26が、ストッカ32の基部33の上面34であって、ビジョンセンサ61側(図2図5図6では右側)の位置に付されている。よって、ビジョンセンサ61を用いて、ストッカ32に装着された塗料カートリッジ21に遮られることなく、ストッカ側識別子26を確実に読み取ることができる。従って、識別子25及びストッカ側識別子26の読み取り率を向上させることができる。
【0054】
(4)例えば、ビジョンセンサ61を、塗装設備10外(具体的には、フレーム70の柱部74の上端部付近)の位置(図2の領域R1参照)に取り付けることが考えられる。また、ビジョンセンサ61を、フレーム70の天井部72において、塗料カートリッジ装着部位17の直上位置(図2の領域R2参照)と、塗料充填装置31のストッカ32群の直上位置(図2の領域R3)とにそれぞれ取り付けることが考えられる。しかし、ビジョンセンサ61を領域R1に取り付ける場合には、塗料カートリッジ装着部位17及びストッカ32群のいずれか一方しか読み取ることができないという問題がある。また、ビジョンセンサ61を領域R2,R3に取り付ける場合には、2つのビジョンセンサ61が必要になるため、塗装設備10の製作コストが上昇してしまうという問題がある。しかも、領域R3内のビジョンセンサ61とストッカ32群との間には、Y軸用電動アクチュエータ42bやチャック装置51a等が位置する。このため、領域R3内のビジョンセンサ61を用いて、ストッカ32のストッカ側識別子26を読み取ることや、ストッカ32に装着された塗料カートリッジ21の識別子25を読み取ることは困難である。一方、本実施形態のビジョンセンサ61は、Z軸用電動アクチュエータ42cのスライダ部44cに突設されたセンサ支持ブラケット62に対して斜め下方を向く状態で支持されているため、上記の問題を解消することができる。
【0055】
(5)本実施形態では、各電動アクチュエータ42a~42cが有する制振機構が、スライダ部44a~44cを移動させるためのモータの駆動態様を制御することにより、電動アクチュエータ42a~42cの揺れを抑えるようになっている。このため、各電動アクチュエータ42a~42cが制振機構を有していたとしても、電動アクチュエータ42a~42cは重くならずに済む。
【0056】
(6)本実施形態では、一方のチャック装置51aがドッキング専用のものであり、もう一方のチャック装置51bが、ドッキング状態にあるものを取り外して返却する返却専用のものである。従って、ドッキング専用のチャック装置51aを用いて使用前の塗料カートリッジ21を塗料充填装置31のストッカ32から取り外す作業と、返却専用のチャック装置51bを用いて使用済みの塗料カートリッジ21をストッカ32に装着する作業とを、ほぼ同時に行うことも可能であるため、塗料カートリッジ21の交換作業を効率良く行うことができる。
【0057】
なお、本実施形態を以下のように変更してもよい。
【0058】
・上記実施形態の識別子25及びストッカ側識別子26は、白色のシールに記載された赤色や青色等の数字であったが、識別子25及びストッカ側識別子26は適宜変更することができる。例えば、識別子25及びストッカ側識別子26は、赤色や青色等のシールに記載された白抜きの数字であってもよい。また、識別子25及びストッカ側識別子26は、文字、記号、絵等の他のものであってもよいし、QRコード等の二次元コードやバーコード等の一次元コードであってもよい。但し、二次元コードや一次元コードを用いる場合、作業者が識別子25及びストッカ側識別子26を見たとしても、何色を示しているのかを確認することができない。よって、識別子25及びストッカ側識別子26としては、作業者が確認可能な数字や文字等を用いることが好ましい。
【0059】
・上記実施形態のCPU81は、識別子25の数字とストッカ側識別子26の数字とが一致し、かつ、識別子25の数字の色とストッカ側識別子26の数字の色とが一致するか否かを判定することにより、適切な塗料カートリッジ21が装着されているか否かを判定していた。しかし、CPU81は、識別子25の数字とストッカ側識別子26の数字とが一致するか否かのみを判定することにより、適切な塗料カートリッジ21が装着されているか否かを判定してもよい。この場合、識別子25の数字の色及びストッカ側識別子26の数字の色は、適宜変更することが可能である。また、CPU81は、識別子25の色とストッカ側識別子26の色とが一致するか否かのみを判定することにより、適切な塗料カートリッジ21が装着されているか否かを判定してもよい。この場合、識別子25及びストッカ側識別子26は、特に数字でなくてもよい。
【0060】
・上記実施形態のCPU81は、ストッカ32上に適切な塗料カートリッジ21が装着されていないときに、異常が発生しているとして塗装設備10を停止させる制御を行っていたが、塗装設備10を停止させずに別の制御を行ってもよい。例えば、CPU81は、チャック装置51a(またはチャック装置51b)や各電動アクチュエータ42a~42cを駆動制御することにより、塗料カートリッジ21を正しいストッカ32に装着し直すようにしてもよい。また、CPU81は、チャック装置51a(またはチャック装置51b)や各電動アクチュエータ42a~42cを駆動制御することにより、適切な塗料カートリッジ21が装着されている別のストッカ32から塗料カートリッジ21を取り外すようにしてもよい。
【0061】
・上記実施形態のCPU81は、塗料充填装置31の上面31aに配置された各ストッカ32において、識別子25に対応したストッカ32上に塗料カートリッジ21が装着されているか否かの判定を行っていた。しかし、CPU81は、塗料充填装置31の側方に配置された各充填部35においても、同様の判定、具体的には、識別子25に対応した充填部35上に塗料カートリッジ21が装着されているか否かの判定を行ってもよい。
【0062】
・上記実施形態のビジョンセンサ61は、ストッカ32上の塗料カートリッジ21に付された識別子25とストッカ32に付されたストッカ側識別子26とを読み取るためのものであった。しかし、ビジョンセンサ61は、塗料の漏れ等に起因する汚れを検出する機能や、塗料カートリッジ21やストッカ32の破損等の他の異常を検出する機能をさらに有していてもよい。
【0063】
・上記実施形態では、塗料充填装置31、X軸用電動アクチュエータ42a、Y軸用電動アクチュエータ42b、Z軸用電動アクチュエータ42c、チャック装置51a,51b、ビジョンセンサ61、アラーム84及び表示装置85の制御を1つのCPU81で制御していたが、各制御を別々のCPUで行うように構成してもよい。
【0064】
・上記実施形態は、自動車ボディを塗装するための塗装設備10において、塗料カートリッジ21の個体を識別するシステムに具体化するものであったが、バンパーなどの自動車部品やそれ以外の部品を塗装する塗装設備において、塗料カートリッジ21の個体を識別するシステムに具体化してもよい。
【0065】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0066】
(1)請求項3において、前記センサ支持ブラケットは、前記Z軸用電動アクチュエータの可動部に突設されていることを特徴とする塗料カートリッジの個体識別システム。
【0067】
(2)請求項2において、前記3つの電動アクチュエータは制振制御を行うことを特徴とする塗料カートリッジの個体識別システム。
【0068】
(3)請求項1乃至4のいずれか1項において、左右一対の前記チャック装置が並列で設けられ、一方の前記チャック装置で前記塗料カートリッジを把持したままの状態で、もう一方の前記チャック装置でドッキング動作を行うことを特徴とする塗料カートリッジの個体識別システム。
【0069】
(4)請求項1乃至4のいずれか1項において、左右一対の前記チャック装置が並列で設けられ、一方の前記チャック装置はドッキング専用のものであり、もう一方の前記チャック装置は、ドッキング状態にあるものを取り外して返却する返却専用のものであることを特徴とする塗料カートリッジの個体識別システム。
【0070】
(5)技術的思想(4)において、前記画像センサは、左右一対の前記チャック装置のうち、前記ドッキング専用の前記チャック装置に取り付けられていることを特徴とする塗料カートリッジの個体識別システム。
【0071】
(6)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記X軸用電動アクチュエータ及び前記Y軸用電動アクチュエータは、前記産業用塗装ロボットよりも高い位置に設置され、前記Z軸用電動アクチュエータは、前記塗装機及び前記チャック装置よりも高い位置に設置されていることを特徴とする塗料カートリッジの個体識別システム。
【0072】
(7)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記塗料カートリッジは、内部にタンクを有する本体とその下端中央部に突設されたフィードチューブとを含んで構成されていることを特徴とする塗料カートリッジの個体識別システム。
【0073】
(8)請求項3において、前記画像センサは、前記チャック装置とともに移動可能であるとともに、斜め下方を向いて配置されていることを特徴とする塗料カートリッジの個体識別システム。
【0074】
(9)請求項3において、前記センサ支持ブラケットは、前記チャック装置よりも高い位置であって、前記可動部とほぼ同じ高さに位置していることを特徴とする塗料カートリッジの個体識別システム。
【0075】
(10)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記個体識別システムは、一部が張り出した状態で塗装ライン内に設けられることを特徴とする塗料カートリッジの個体識別システム。
【符号の説明】
【0076】
1…個体識別システム
10…塗装設備
11…産業用塗装ロボット
13…アーム
14…塗装機
21…塗料カートリッジ
21a…塗料カートリッジの上端面
25…識別子
31…塗料充填装置
32…ストッカ
32a…ストッカとしての第1ストッカ
32b…ストッカとしての第2ストッカ
35…充填部
35a…充填部としての第1充填部
35b…充填部としての第2充填部
40…搬送装置
41…駆動装置
42a…電動アクチュエータとしてのX軸用電動アクチュエータ
42b…電動アクチュエータとしてのY軸用電動アクチュエータ
42c…電動アクチュエータとしてのZ軸用電動アクチュエータ
44c…Z軸用電動アクチュエータの可動部としてのスライダ部
51a,51b…チャック装置
61…画像センサとしてのビジョンセンサ
62…センサ支持ブラケット
81…個体識別手段としてのCPU
84…警告手段としてのアラーム
85…警告手段としての表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9