IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ヤクルト本社の特許一覧

<>
  • 特許-クレンジング化粧料 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】クレンジング化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20240116BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240116BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20240116BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/04
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/39
A61K8/86
A61Q1/14
A61Q19/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018033713
(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公開番号】P2019147765
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-10-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 俊方
(72)【発明者】
【氏名】松本 崇
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】瀬良 聡機
【審判官】冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-224061(JP,A)
【文献】特開2017-178930(JP,A)
【文献】特開2008-63310(JP,A)
【文献】特開2010-1231(JP,A)
【文献】特開2014-58499(JP,A)
【文献】特開2017-66085(JP,A)
【文献】特許第4512265(JP,B2)
【文献】特開2013-32348(JP,A)
【文献】特開2017-114814(JP,A)
【文献】増田 政彦 外1名、メーク落とし用洗浄料について~最近のクレンジングの進化~、香料、日本香料協会、2004年6月、No.222、p.87~96
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)HLB10以上の分岐脂肪酸ポリオキシエチレングリセリルからなる非イオン性界面活性剤と、(2)液状油と、(3)3価以上の多価アルコールと、(4)1価及び2価のアルコールと、(5)水とを含有し、バイコンティニュアス構造を有することを特徴とするクレンジング化粧料であって、前記クレンジング化粧料は、その100質量部のうち、前記(1)HLB10以上の分岐脂肪酸ポリオキシエチレングリセリルからなる非イオン性界面活性剤が22~45質量部を占め、前記(2)液状油が5~40質量部を占め、前記(3)3価以上の多価アルコールが6~28質量部を占め、前記(4)1価及び2価のアルコールのうちの該2価のアルコールが5~38質量部を占め、前記(4)1価及び2価のアルコールのうちの該1価のアルコールが少なくともエタノールを含み該エタノールが1~10質量部を占め、前記(3)3価以上の多価アルコールと、前記(4)1価及び2価のアルコールと、前記(5)水との合計が30~60質量部を占める、前記クレンジング化粧料は、更に、乳酸菌発酵物を含み、その100質量部のうち、前記乳酸菌発酵物を乾燥固形分として0.00004~0.2質量部含有する、該クレンジング化粧料。
【請求項2】
前記(3)3価以上の多価アルコールは、グリセリン、ジグリセリン、及び糖アルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む、請求項1記載のクレンジング化粧料。
【請求項3】
前記(4)1価及び2価のアルコールは、該2価のアルコールとしてジプロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンチレングリコール、及び1,2-へキシレングリコールからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む、請求項1又は2記載のクレンジング化粧料。
【請求項4】
前記クレンジング化粧料は、その100質量部のうち、前記(3)3価以上の多価アルコールが11~18質量部を占める、請求項1~のいずれか1項に記載のクレンジング化粧料。
【請求項5】
前記クレンジング化粧料は、その100質量部のうち、前記(1)HLB10以上の分岐脂肪酸ポリオキシエチレングリセリルからなる非イオン性界面活性剤と、前記(2)液状油と、前記(3)3価以上の多価アルコールと、前記(4)1価及び2価のアルコールと、前記(5)水との合計が80質量部以上を占める、請求項1~のいずれか1項に記載のクレンジング化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メイク化粧料等の肌の汚れを落とすのに適したクレンジング化粧料に関し、より詳細には、バイコンティニュアス構造を有し、使用感に優れたクレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に肌の汚れを落とすためのクレンジング化粧料には、油性のものと水性のものとがある。油性のクレンジング化粧料では、肌上に残ったファンデーション、口紅、マスカラ、アイシャドー等のメイク汚れなどの油性の汚れとよく馴染み、これを効果的に落とすことができる反面、使用後に拭き取ってもベタツキが残ったり、また、場合によっては、更に石鹸等による洗浄が必要であって、煩わしい、といったような欠点があった。一方、水性のクレンジング化粧料では、さっぱりとした使用感は良いが、汚れを落とす効果に乏しいという欠点があった。
【0003】
このような問題に対して、近年では、バイコンティニュアス構造を有するクレンジング化粧料が知られている。バイコンティニュアス構造を有するクレンジング化粧料では、油性成分からなる油相と、水性成分からなる水相とが、それらが共に連続した相を成すことで、マイクロエマルション構造を形成している。これにより、メイク化粧料等による油性の汚れとよく馴染み、なお且つ、水やお湯にも馴染みがよいので、皮膚に塗布してメイク化粧料等の汚れと馴染ませた後にこれを水またはお湯で洗い流すことで、効果的にその汚れを落とすことができる、という使用形態を実現している。
【0004】
しかしながら、このバイコンティニュアス構造を有するクレンジング化粧料では、使用する成分の組み合わせによっては製品中に濁りや沈殿が生じてしまい、品質に対する疑念を生じさせるといった問題が生じていた。具体的には、例えば、下記特許文献1、2には、グリセリン等の3価のアルコール類によって、バイコンティニュアス構造の形成が妨げられたり(特許文献1の段落0019)、白濁を生じてしまったりする(特許文献2の比較例5、段落0053)、といった問題が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-280644号公報
【文献】特開2014-58499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの研究によると、バイコンティニュアス構造を有するクレンジング化粧料にグリセリンやジグリセリンなどの3価以上の多価アルコールを配合することにより、使用後に洗い流した後の肌にしっとり感が付与され、使用感が向上した。しかしながら、その反面、上記先行技術文献にも挙げられているように、バイコンティニュアス構造を安定に形成しにくくなるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、グリセリンやジグリセリンなどの3価以上の多価アルコールを配合しても、安定にバイコンティニュアス構造を形成するようにした、クレンジング化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究し、以下の構成を備える、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1は、(1)分岐脂肪酸ポリオキシエチレングリセリルを含む非イオン性界面活性剤と、(2)液状油と、(3)3価以上の多価アルコールと、(4)1価及び/又は2価のアルコールと、(5)水とを含有し、バイコンティニュアス構造を有することを特徴とするクレンジング化粧料を提供するものである。
【0010】
本発明に係るクレンジング化粧料は、バイコンティニュアス構造を有することにより、その連続した油相によって油性の汚れを落とす効果が高く、また、その連続した水相によってオイル感が強すぎることなく、使用感がよい。加えて、特定の非イオン界面活性剤と、1価及び/又は2価のアルコールを配合したことにより、3価以上の多価アルコールを配合してもバイコンティニュアス構造を安定に形成し、その3価以上の多価アルコールの配合によって、使用後の肌にしっとり感を付与する効果に優れている。
【0011】
本発明においては、前記(3)3価以上の多価アルコールは、グリセリン、ジグリセリン、及び糖アルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。これによれば、3価以上の多価アルコールが、使用後の肌にしっとり感を付与する効果により一層寄与する。
【0012】
本発明においては、前記(4)1価及び/又は2価のアルコールは、該2価のアルコールとしてジプロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンチレングリコール、及び1,2-へキシレングリコールからなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。これによれば、2価のアルコールがバイコンティニュアス構造の安定な形成により一層寄与する。
【0013】
本発明においては、前記(4)1価及び/又は2価のアルコールは、該1価のアルコールとして少なくともエタノールを含むことが好ましい。これによれば、エタノールがより安定なバイコンティニュアス構造の形成に寄与する。
【0014】
本発明においては、前記(1)分岐脂肪酸ポリオキシエチレングリセリルを含む非イオン性界面活性剤は、少なくともHLB10以上の分岐脂肪酸ポリオキシエチレングリセリルを含むことが好ましい。これによれば、HLB10以上の分岐脂肪酸ポリオキシエチレングリセリルが、バイコンティニュアス構造の安定な形成により一層寄与する。
【0015】
本発明においては、前記クレンジング化粧料は、その100質量部のうち、前記(1)非イオン性界面活性剤が22~45質量部を占め、前記(2)液状油が5~40質量部を占め、前記(3)3価以上の多価アルコールと、前記(4)1価及び/又は2価のアルコールと、前記(5)水との合計が30~60質量部を占めることが好ましい。これによれば、その配合割合が、バイコンティニュアス構造の安定な形成により一層寄与する。
【0016】
本発明においては、前記クレンジング化粧料は、その100質量部のうち、前記(1)非イオン性界面活性剤と、前記(2)液状油と、前記(3)3価以上の多価アルコールと、前記(4)1価及び/又は2価のアルコールと、前記(5)水との合計が80質量部以上を占めることが好ましい。これによれば、その配合割合が、バイコンティニュアス構造の安定な形成により一層寄与する。
【0017】
本発明においては、前記クレンジング化粧料は、更に、乳酸菌発酵物を含むことが好ましい。これによれば、乳酸菌発酵物を所定量配合してもバイコンティニュアス構造を安定に形成し、その乳酸菌発酵物に含まれるアミノ酸等の成分が、肌の状態を良好に保つのに寄与する。
【0018】
本発明においては、前記クレンジング化粧料は、その100質量部のうち、前記乳酸菌発酵物を乾燥固形分として0.00004~0.2質量部含有することが好ましい。これによれば、乳酸菌発酵物の配合により、そのアミノ酸等の成分が、肌の状態を良好に保つのにより一層寄与する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るクレンジング化粧料は、バイコンティニュアス構造を有することにより、その連続した油相によって油性の汚れを落とす効果が高く、また、その連続した水相によってオイル感が強すぎることなく、使用感がよい。加えて、特定の非イオン性界面活性剤と、1価及び/又は2価のアルコールを配合したことにより、3価以上の多価アルコールを配合してもバイコンティニュアス構造を安定に形成し、その3価以上の多価アルコールの配合によって、使用後の肌にしっとり感を付与する効果に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】試験例5において調製した各クレンジング化粧料について、界面活性剤、油相、及び水相の配合比の値をそれぞれ各軸にとって三角座標上にプロットして示した図表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るクレンジング化粧料は、
成分(1)として非イオン性界面活性剤を、
成分(2)として液状油を、
成分(3)として3価以上の多価アルコールを、
成分(4)として1価及び/又は2価のアルコールを、
成分(5)として水を、含有し、バイコンティニュアス構造を有するものである。
【0022】
ここで、「バイコンティニュアス構造」を有するか否かは、当業者に周知の方法により、例えば、色素分散試験や、偏光板による光透過試験や、フリーズフラクチャー法を用いて調製したレプリカの電子顕微鏡観察などにより判定することができる。
【0023】
より具体的には、色素分散試験によれば、試料に水溶性色素もしくは油溶性色素をそれぞれ滴下したときに当該色素が分散する様子を観察することで、バイコンティニュアス構造に特有の、水及び油の双方に混ざり合う性質を確認することができる。
【0024】
また、偏光板による光透過試験によれば、試料を、偏光方向を直交させるようにして2枚の偏光板の間にはさみ、これに光源からの光を当てたときに、複屈折等による光の透過漏れがないことを観察することで、バイコンティニュアス構造に特有の、光学等方性を確認することができる。
【0025】
また、フリーズフラクチャー法を用いて調製したレプリカの電子顕微鏡観察によれば、油相と水相とが、共に連続した相を成しているイメージを、より直接的に観察することができる。
【0026】
一般にバイコンティニュアス構造を示すときには比較的低粘な液体状となる。本発明に係るクレンジング化粧料にあっても、特に増粘のための素材を配合しない限り、その粘度は、通常、1~2500mPa・s程度であり、より典型的には1~1000mPa・s程度である。
【0027】
成分(1)の非イオン性界面活性剤としては、後述の実施例で示されるように、分岐脂肪酸ポリオキシエチレングリセリルを含む必要がある。分岐脂肪酸ポリオキシエチレングリセリル以外の非イオン性界面活性剤では、グリセリンやジグリセリンなどの3価以上の多価アルコールを配合したときに、安定なバイコンティニュアス構造を形成させるようにする効果に乏しい。分岐脂肪酸ポリオキシエチレングリセリルとしては、イソステアリン酸PEG-8グリセリル、イソステアリン酸PEG-10グリセリル、イソステアリン酸PEG-15グリセリル、イソステアリン酸PEG-20グリセリル、イソステアリン酸PEG-30グリセリル、イソステアリン酸PEG-60グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-10グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-30グリセリル等が挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤のHLB値としては、特に制限はないが、安定なバイコンティニュアス構造を形成させる観点からは、HLB値が10以上のものを用いることが好ましく、HLB値が10.0~13.0のものを用いることがより好ましい。
【0028】
成分(1)は、非イオン性界面活性剤として、1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
成分(1)の含有量としては、成分(2)~(5)の配合量や、クレンジング化粧料の全体に対する、成分(1)~(5)の合計配合量との関係もあり、一概ではないが、典型的には、例えば、クレンジング化粧料の100質量部のうち、成分(1)が22~45質量部を占めることが好ましく、25~30質量部を占めることがより好ましい。この範囲を外れると、安定なバイコンティニュアス構造を形成させる効果に乏しくなる。
【0030】
成分(2)の液状油としては、クレンジング化粧料に配合することができるものであれば特に制限はないが、低粘で肌に塗布しやすいクレンジング化粧料とする観点からは、常温(25℃)で液体状となる液状油を用いることが好ましい。
【0031】
具体的には、例えば、脂肪酸類とアルコール類とをエステル結合してなるエステル油である。エステル油としては、例えば、2-エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、オレイン酸2-オクチルドデシル、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、2-エチルヘキサン酸ジグリセリド等が挙げられる。低粘性及び安定性の観点からは、2-エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニルやトリ2-エチルヘキサン酸グリセリルが好ましい。
【0032】
また、例えば、炭化水素系の非エステル油である。非エステル油としては、例えば、ミネラルオイル(流動パラフィン)、スクワラン、スクワレン、セレシン等が挙げられる。低粘性及び安定性の観点からは、ミネラルオイルやスクワランが好ましい。
【0033】
また、例えば、シリコーン系のシリコーン油である。シリコーン油としては、例えば、ジフェニルシロキシトリメチコン、ジメチコン、フェニルトリメチコン、シクロペンタシロキサン等が挙げられる。メイクなじみや、2種以上の液状油を使用する場合の他の油相成分との相溶性の観点からは、ジフェニルシロキシトリメチコンやシクロペンタシロキサンが好ましい。
【0034】
また、例えば、植物油である。植物油としては、例えば、ホホバ油、オリーブ油、マカダミアナッツ油、ツバキ油、アボガド油、ローズヒップ油、ククイナッツ油、ヘーゼルナッツ油、メドウフォーム油等が挙げられる。安定性の観点からは、マカダミアナッツ油やメドウフォーム油が好ましい。
【0035】
成分(2)は、液状油として、1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
成分(2)の含有量としては、成分(1)、(3)~(5)の配合量や、クレンジング化粧料の全体に対する、成分(1)~(5)の合計配合量との関係もあり、一概ではないが、典型的には、例えば、クレンジング化粧料の100質量部のうち、成分(2)が5~40質量部を占めることが好ましく、15~33質量部を占めることがより好ましい。この範囲より少ないと、油性の汚れを落とす効果に乏しくなる。この範囲を超えると、安定なバイコンティニュアス構造を形成させにくくなる。
【0037】
成分(3)の3価以上の多価アルコールとしては、クレンジング化粧料に配合することができるものであれば特に制限はないが、肌にしっとり感を付与し、使用感を向上させるという観点からは、ソルビトール、キシリトール、マルチトールといった糖アルコールや、グリセリン、ジグリセリン等を用いることが好ましい。
【0038】
成分(3)は、3価以上の多価アルコールとして、1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
成分(3)の含有量としては、成分(1)~(2)、(4)~(5)の配合量や、クレンジング化粧料の全体に対する、成分(1)~(5)の合計配合量との関係もあり、一概ではないが、典型的には、例えば、クレンジング化粧料の100質量部のうち、成分(3)が6~28質量部を占めることが好ましく、11~18質量部を占めることがより好ましい。この範囲より少ないと、肌にしっとり感を付与する効果に乏しくなる。この範囲を超えると、安定なバイコンティニュアス構造を形成させにくくなる。
【0040】
成分(4)の1価及び/又は2価のアルコールとしては、クレンジング化粧料に配合することができるものであれば特に制限はないが、安定なバイコンティニュアス構造を形成させる観点からは、2価のアルコールとしては、ジプロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンチレングリコール、1,2-へキシレングリコール等を用いることが好ましい。また、1価のアルコールとしては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等を用いることが好ましい。
【0041】
成分(4)は、1価及び/又は2価のアルコールとして、1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
成分(4)の含有量としては、成分(1)~(3)、(5)の配合量や、クレンジング化粧料の全体に対する、成分(1)~(5)の合計配合量との関係もあり、一概ではないが、典型的には、例えば、クレンジング化粧料の100質量部のうち、成分(4)が6~39質量部を占めることが好ましく、9~15質量部を占めることがより好ましい。この範囲を外れると、安定なバイコンティニュアス構造を形成させにくくなる。
【0043】
本発明の好ましい態様においては、成分(4)は、1価及び/又は2価のアルコールとして、1価のアルコールと2価のアルコールとを、それぞれ少なくとも1種類以上含むことが好ましい。特に、1価のアルコールとして少なくともエタノールを含むことがより好ましい。これによれば、5℃~40℃といった幅広い温度帯でも安定なバイコンティニュアス構造をより一層形成させやすくなる。この場合、クレンジング化粧料の100質量部のうち、成分(4)の2価のアルコールが5~38質量部を占め、成分(4)の1価のアルコールが1~10質量部を占めることが好ましく、成分(4)の2価のアルコールが7~12質量部を占め、成分(4)の1価のアルコールが1~3質量部を占めることがより好ましい。
【0044】
特に、エタノールの含有量としては、クレンジング化粧料の100質量部のうち、1~10質量部を占めることが好ましく、1~3質量部を占めることがより好ましい。この範囲より少ないと、安定なバイコンティニュアス構造をより一層形成させやすくする効果に乏しくなる。この範囲を超えると、肌への刺激性が強くなってしまう。
【0045】
成分(5)の水としては、例えば、精製水、蒸留水、イオン交換水、RO水、滅菌処理水等、クレンジング化粧料に配合することができるものを適宜用いればよく、特に制限はない。
【0046】
成分(5)の含有量としては、成分(1)~(4)の配合量や、クレンジング化粧料の全体に対する、成分(1)~(5)の合計配合量との関係もあり、一概ではないが、典型的には、例えば、クレンジング化粧料の100質量部のうち、成分(5)の水が9~30質量部を占めることが好ましく、17~27質量部を占めることがより好ましい。この範囲を外れると、安定なバイコンティニュアス構造を形成させにくくなる。
【0047】
本発明の好ましい態様においては、クレンジング化粧料の100質量部のうち、上記成分(1)である非イオン性界面活性剤が22~45質量部を占め、上記成分(2)である液状油が5~40質量部を占め、上記成分(3)である3価以上の多価アルコールと、上記成分(4)である価及び/又は2価のアルコールと、上記成分(5)である水との合計が30~60質量部を占めることが好ましく、クレンジング化粧料の100質量部のうち、上記成分(1)である非イオン性界面活性剤が25~30質量部を占め、上記成分(2)である液状油が15~33質量部を占め、上記成分(3)である3価以上の多価アルコールと、上記成分(4)である1価及び/又は2価のアルコールと、上記成分(5)である水との合計が38~60質量部を占めることがより好ましい。これによれば、上記成分(1)~(5)の配合バランスにより、安定なバイコンティニュアス構造をより一層形成させやすい。
【0048】
また、クレンジング化粧料の100質量部のうち、上記成分(1)である非イオン性界面活性剤と、上記成分(2)である液状油と、上記成分(3)である3価以上の多価アルコールと、上記成分(4)である1価及び/又は2価のアルコールと、上記成分(5)である水との合計が80質量部以上を占めることが好ましく、90質量部以上を占めることがより好ましい。これによれば、上記成分(1)~(5)の配合バランスを他の素材により崩されることなく、安定なバイコンティニュアス構造をより一層形成させやすい。
【0049】
本発明に係るクレンジング化粧料には、上記成分(1)~(5)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、通常クレンジング化粧料に配合される成分、例えば、防腐剤、香料、色素、保湿剤、炎症剤、植物抽出物等を何れも配合することができる。また、増粘のための増粘剤を配合してもよい。
【0050】
本発明の好ましい態様においては、その他の素材として、更に、乳酸菌発酵物を含む。乳酸菌発酵物は通常クレンジング化粧料に配合される成分を乳酸菌(ビフィズス菌を含む)で発酵させたものを指し、例えば、特公平02-040643号公報記載の乳酸菌発酵液(牛乳)、特許第4512265号公報記載の乳酸菌発酵液(牛乳)、特許第3795011号記載の乳酸桿菌/アロエベラ発酵液、特許第3184114号公報記載の豆乳ビフィズス菌発酵液等が挙げられるが、これらに限らない。
【0051】
乳酸菌発酵物の含有量としては、クレンジング化粧料の全体に対する、上記成分(1)~(5)の合計配合量との関係もあり、一概ではないが、典型的には、例えば、クレンジング化粧料の100質量部のうち、乳酸菌発酵物の湿潤重量が0.001~7質量部を占めることが好ましく、0.002~1質量部を占めることがより好ましい。また、乾燥固形分として0.00004~0.2質量部含有することが好ましい。この範囲を外れると、安定なバイコンティニュアス構造を形成させにくくなる。
【実施例
【0052】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0053】
各試験は、以下のとおり行った。
【0054】
<外観濁度試験>
容量20mLのガラス容器に試料を入れ、外観を目視で判定した。容器の反対側に5mm幅の白黒で縞模様の紙を置き、どの程度判別できるか評価を行った。
・透明:容器を通して、はっきりと白黒の縞が判別できる。
・半透明:縞模様がある程度確認できる。
・白濁:白黒の縞が全く判別できない。
【0055】
<色素分散試験>
油溶性色素としてはスダンIIIを用いて、その0.1gをミネラルオイル99.9gに溶解させた液体を用意し、染色液とした。試験管に試料2.5gを採取後、染色液を添加し、浸潤が見られるかを確認した。
水溶性色素としてはメチレンブルーを用いて0.1%水溶液を調製し、上記と同様に確認を行った。
【0056】
<エマルション構造の状態>
外観濁度試験において透明であり、色素分散試験において水溶性色素及び油溶性色素のいずれも浸潤したとき、バイコンティニュアス構造を有すると評価した(以下の表中「BC」と表す)。
外観濁度試験において半透明又は白濁し、色素分散試験において水溶性色素のみ浸潤したとき、O/W型のエマルション構造を有すると評価した(以下の表中「O/W」と表す)。
【0057】
<官能評価>
前腕内側部に市販の口紅適量を塗布し、その上から試料0.1gを塗布し、クレンジング動作として指で両者をなじませるように15往復させた。その後、流水で洗い流し、メイク汚れの除去性と使用後の肌のしっとり感を評価した。評価は、専門パネラー5名で実施し、下記評価基準に従い判定した。
【0058】
(5段階評価)
5点: 非常に良い
4点: 良い
3点: 普通
2点: やや悪い
1点: 悪い
(判定)
◎: 平均点が4.5点以上
○: 3.5点以上、4.5点未満
△: 2.5点以上、3.5点未満
×: 平均点が2.5点未満
【0059】
[試験例1]
表1に示す配合で各原料を混合して調製例1~4のクレンジング化粧料を調製し、外観濁度試験と色素分散試験を行った。また、調製例3、4については、加えて、メイク汚れの除去性と使用後の肌のしっとり感について、官能評価を行った。
【0060】
結果を表1の下段にまとめて示す。また、表2には官能評価におけるパネラーごとの評価結果の内訳を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
その結果、以下のことが明らかとなった。
【0064】
(1)調製例1と調製例2の比較から、2価のアルコールであるジブロピレングリコールを配合して調製した調製例1では、バイコンティニュアス構造を有するクレンジング化粧料が得られたが、これを4価のアルコールであるジグリセリンに代えると、外観濁度試験において白濁し、色素分散試験において水溶性色素のみ浸潤して、O/W型のエマルション構造を有するようになった。
【0065】
(2)調製例3と調製例4の比較から、2価のアルコールであるジブロピレングリコールを配合して調製した調製例3では、メイク汚れの除去性が良好であった一方、水で洗い流した後の肌のしっとり感がやや悪い結果となったが、これを3価のアルコールであるグリセリンに代えると、メイク汚れの除去性が良好で、更に、水で洗い流した後の肌のしっとり感が非常に良好となった。また、調製例3及び調製例4のいずれでも、バイコンティニュアス構造を有するクレンジング化粧料が得られた。
【0066】
(3)以上の結果、3価以上のアルコールであるグリセリンを配合し、更に、全体の配合を工夫することによって、安定にバイコンティニュアス構造を形成し、メイク汚れの除去性が良好で、更に、使用後の肌にしっとり感を付与する効果に優れており、使用感が向上したクレンジング化粧料が得られることが明らかとなった。
【0067】
[試験例2]
表3に示す配合で各原料を混合して調製例5~11のクレンジング化粧料を調製し、外観濁度試験と色素分散試験を行った。結果を表3の下段にまとめて示す。
【0068】
【表3】
【0069】
その結果、以下のことが明らかとなった。
【0070】
(1)調製例5と、調製例6、調製例7、又は調製例8との比較から、非イオン性界面活性剤としてイソステアリン酸PEG-8グリセリルを配合して調製した調製例5では、バイコンティニュアス構造を有するクレンジング化粧料が得られたが、これをイソステアリン酸PEG-10ブチレングリコールに代えた調製例6や、ミリスチン酸デカグリセリルに代えた調製例7や、PEG-40水添ヒマシ油に代えた調製例8では、2相に分離してマイクロエマルション構造を形成しなかった。
【0071】
(2)非イオン性界面活性剤としてトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルを配合して調製した調製例9や、イソステアリン酸PEG-10グリセリルを配合して調製した調製例10や、イソステアリン酸PEG-8グリセリルとトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルを併用して配合して調製した調製例11では、バイコンティニュアス構造を有するクレンジング化粧料が得られた。
【0072】
(3)以上の結果、使用後の肌のしっとり感を向上する効果のあるジグリセリンを配合し、更に、非イオン性界面活性剤として分岐鎖脂肪酸ポリオキシエチレングリセリルを使用することによって、安定にバイコンティニュアス構造を形成するクレンジング化粧料が得られることが明らかとなった。
【0073】
[試験例3]
表4に示す配合で各原料を混合して調製例12~18のクレンジング化粧料を調製し、外観濁度試験と色素分散試験を行った。結果を表4の下段にまとめて示す。
【0074】
【表4】
【0075】
その結果、以下のことが明らかとなった。
【0076】
(1)調製例12と、調製例13~調製例15の比較から、乳酸菌発酵物として乳酸桿菌/アロエベラ発酵液を配合した調製例13やその配合量を増量した調製例14では、乳酸菌発酵物を配合しない調製例12と同様に、バイコンティニュアス構造を有するクレンジング化粧料が得られたが、その乳酸菌発酵物の配合量を更に増加させた調製例15では、外観濁度試験において半透明であり、色素分散試験において水溶性色素のみ浸潤して、O/W型のエマルション構造を有するようになった。
【0077】
(2)調製例12と、調製例16~調製例17の比較から、乳酸菌発酵物として乳酸菌培養液(牛乳)を配合した調製例16では、乳酸菌発酵物を配合しない調製例12と同様に、バイコンティニュアス構造を有するクレンジング化粧料が得られたが、その乳酸菌発酵物の配合量を更に増加させた調製例17では、外観濁度試験において白濁し、色素分散試験において水溶性色素のみ浸潤して、O/W型のエマルション構造を有するようになった。
【0078】
(3)調製例12と、調製例18の比較から、乳酸菌発酵物として豆乳ビフィズス菌発酵液を配合した調製例18では、乳酸菌発酵物を配合しない調製例12と同様に、バイコンティニュアス構造を有するクレンジング化粧料が得られた。
【0079】
(4)以上の結果、アミノ酸等の成分が、肌の状態を良好に保つのに寄与する乳酸菌発酵物を配合しても、全体の配合を工夫することによって、安定にバイコンティニュアス構造を形成するクレンジング化粧料が得られることが明らかとなった。ただし、乳酸菌発酵物を所定量以上増量するとバイコンティニュアス構造を保てなくなる傾向がみられた。なお、本試験例において実施した、バイコンティニュアス構造が保たれた乳酸菌発酵物の最大含有量は、乾燥固形分として0.203質量%であった(調製例14)。
【0080】
[試験例4]
表5に示す配合で各原料を混合して調製例19~22のクレンジング化粧料を調製し、外観濁度試験と色素分散試験を行った。結果を表5の下段にまとめて示す。
【0081】
【表5】
【0082】
その結果、表5に示されるように、乳酸菌発酵物以外にも化粧料に汎用されるその他の素材を配合しても、全体の配合を工夫することによって、安定にバイコンティニュアス構造を形成するクレンジング化粧料が得られることが明らかとなった。なお、本試験例において実施した、乳酸菌発酵物の最小含有量は、乾燥固形分として0.00004質量%であった(調製例19)。
【0083】
[試験例5]
表6に示す配合で各原料を混合して調製例23~51のクレンジング化粧料を調製し、外観濁度試験と色素分散試験を行った。結果を表6の下段にまとめて示す。また、図1には、バイコンティニュアス構造を有するか否かについて、バイコンティニュアス構造を有する調製例について「○」で表し、バイコンティニュアス構造を有しない調製例について「●」で表し、これを、界面活性剤、油相、及び水相の配合比の値をそれぞれ各軸にとって三角座標上にプロットして示した。
【0084】
【表6】
【0085】
その結果、表6及びその結果をプロットした図1に示されるように、クレンジング化粧料がバイコンティニュアス構造を有するには、その100質量部のうち、(1)非イオン性界面活性剤が22~45質量部を占め、(2)液状油が5~40質量部を占め、(3)3価以上の多価アルコールと、(4)1価及び/又は2価のアルコールと、(5)水との合計が30~60質量部を占めることが、特に望ましいことが明らかとなった。
【0086】
[試験例6]
試験例5で調製した調製例40のクレンジング化粧料と、その配合のうちエタノールを除いた配合の調製例52のクレンジング化粧料を調製し、5℃、25℃、及び40℃における外観濁度試験を行った。結果を表7の下段にまとめて示す。
【0087】
【表7】
【0088】
その結果、表7に示されるように、エタノールを配合した調製例40のクレンジング化粧料では、5℃、25℃、及び40℃のいずれの温度条件においても、外観が透明に維持された。これに対して、エタノールを配合しない調製例52のクレンジング化粧料では、25℃では透明な外観であったものの、5℃や40℃では透明な外観を維持できなかった。よって、エタノールが、より安定なバイコンティニュアス構造の形成に寄与しているものと考えられた。
図1