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特許7420471シリコーン感圧接着剤及びシリコーン感圧接着剤組成物
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  • 特許-シリコーン感圧接着剤及びシリコーン感圧接着剤組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】シリコーン感圧接着剤及びシリコーン感圧接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 183/06 20060101AFI20240116BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240116BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20240116BHJP
   A61L 24/04 20060101ALI20240116BHJP
   A61L 15/58 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C09J183/06
C09J11/08
A61L15/26
A61L24/04 200
A61L15/58
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018214906
(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公開番号】P2020083920
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 愛三
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0133360(US,A1)
【文献】特開平07-258624(JP,A)
【文献】特表2016-501942(JP,A)
【文献】特表2012-507607(JP,A)
【文献】特表2014-505118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 183/06
C09J 11/08
A61L 15/26
A61L 24/04
A61L 15/58
C08L 83/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン、
非官能性直鎖オルガノポリシロキサン、及び
シリケート樹脂
を含む組成物の反応生成物を含むシリコーン感圧接着剤であって、前記非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの動粘度が25℃において100,000mm/秒以上であり、前記シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンが、シラノール末端基含有直鎖ポリジメチルシロキサンであり、前記非官能性直鎖オルガノポリシロキサンが、トリメチルシリル末端基含有直鎖ポリジメチルシロキサンであり、前記反応生成物は、電子線又はガンマ線の照射によって形成された、前記非官能性直鎖オルガノポリシロキサンのメチル基を介した架橋を含む、シリコーン感圧接着剤。
【請求項2】
シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンとシリケート樹脂との縮合物であるシリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサン、
非官能性直鎖オルガノポリシロキサン、及び
シリケート樹脂
を含む組成物の硬化物を含むシリコーン感圧接着剤であって、前記非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの動粘度が25℃において100,000mm/秒以上であり、前記シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンが、シラノール末端基含有直鎖ポリジメチルシロキサンであり、前記非官能性直鎖オルガノポリシロキサンが、トリメチルシリル末端基含有直鎖ポリジメチルシロキサンであり、前記硬化物は、電子線又はガンマ線の照射によって形成された、前記非官能性直鎖オルガノポリシロキサンのメチル基を介した架橋を含む、シリコーン感圧接着剤。
【請求項3】
前記シリコーン感圧接着剤の固形分100質量部を基準として、前記シリケート樹脂を30~70質量部含む、請求項1又は2のいずれかに記載のシリコーン感圧接着剤。
【請求項4】
前記シリケート樹脂がMQ樹脂である、請求項1~のいずれか一項に記載のシリコーン感圧接着剤。
【請求項5】
前記シリコーン感圧接着剤の固形分100質量部を基準として、前記非官能性直鎖オルガノポリシロキサンを30~60質量部含む、請求項1~のいずれか一項に記載のシリコーン感圧接着剤。
【請求項6】
触媒及び反応開始剤の残渣を実質的に含まない、請求項1~のいずれか一項に記載のシリコーン感圧接着剤。
【請求項7】
皮膚に穏やかな医療用感圧接着剤である、請求項1~のいずれか一項に記載のシリコーン感圧接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はシリコーン感圧接着剤及びシリコーン感圧接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン感圧接着剤は、医療用途を含む様々な用途に使用されている。皮膚に適用される医療用シリコーン感圧接着剤は、室温で容易に皮膚に適用することのできる粘着力、及び所望の期間皮膚に固定されるのに十分な保持力を有しており、その後皮膚の剥離及び痛みを伴わずに皮膚から除去可能であることが望ましい。
【0003】
特許文献1(特開平5-86351号公報)は、「(1)約40~約70重量部のシリコーン樹脂、(2)約30~約60重量部のシリコーン流体、(3)約0.5~約20重量部のフェニル基含有ポリシロキサン流体(25℃で約5~600センチストークスの粘度のもの。例、(CHSiO〔Si(C)(OSi(CH)O〕nSi(CHの混合物 但し、(1)と(2)の合計量を100重量部とする」を記載している。
【0004】
特許文献2(特表2012-507608号公報)は、「放射線硬化されたシリコーンゲルを含む接着剤であって、前記シリコーンゲルが、架橋されたポリジオルガノシロキサン材料を含む、接着剤」を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-86351号公報
【文献】特表2012-507608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
循環器カテーテル、尿路カテーテルなどのクリティカル器具、気管内挿管チューブなどのセミクリティカル器具などのクリティカルケア用途ではより確実な固定が要求される。
【0007】
本開示は、除去時に皮膚に与える損傷及び痛みを最小限に抑えつつ、より高い接着力を有するシリコーン感圧接着剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施態様によれば、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン、非官能性直鎖オルガノポリシロキサン、及びシリケート樹脂を含む組成物の反応生成物を含むシリコーン感圧接着剤であって、前記非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの動粘度が25℃において100,000mm/秒以上である、シリコーン感圧接着剤が提供される。
【0009】
別の実施態様によれば、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンとシリケート樹脂との縮合物であるシリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサン、非官能性直鎖オルガノポリシロキサン、及びシリケート樹脂を含む組成物の硬化物を含むシリコーン感圧接着剤であって、前記非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの動粘度が25℃において100,000mm/秒以上である、シリコーン感圧接着剤が提供される。
【0010】
さらに別の実施態様によれば、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン、非官能性直鎖オルガノポリシロキサン、及びシリケート樹脂を含み、前記非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの動粘度が25℃において100,000mm/秒以上である、シリコーン感圧接着剤組成物が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、除去時に皮膚に与える損傷及び痛みを最小限に抑えつつ、より高い接着力を有するシリコーン感圧接着剤を提供することができる。
【0012】
上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一実施態様の医療品の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的で、図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0015】
本開示において「感圧接着」とは、使用温度範囲で、例えば0℃以上、50℃以下の範囲で恒久的に粘着性であり、軽い圧力で様々な表面に接着し、相変化(液体から固体へ)を呈さない材料又は組成物の特性を意味する。
【0016】
本開示において、「シリコーン感圧接着剤」とは、層、スポット、ライン、パターン、フォームなどの様々な形状を有することができる、感圧接着性を示す材料を意味する。
【0017】
本開示において、「シリコーン感圧接着剤組成物」とは、電子線照射、ガンマ線照射、過酸化物等を用いた硬化、ヒドロシリル化付加反応による硬化などにより、シリコーン感圧接着剤を形成することが可能な材料の混合物を意味する。シリコーン感圧接着組成物は、感圧接着性を示してもよく、示さなくてもよい。
【0018】
本開示において「非官能性」とは、オルガノポリシロキサンが、水酸基、シラノール基、Si-H基、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基など、他の官能基との反応性又は重合性を示す官能基を有さないことを意味する。非官能性の基として、炭素、水素、及びいくつかの実施態様ではハロゲン原子(例えばフッ素原子)からなるアルキル基又はアリール基が挙げられる。
【0019】
オルガノポリシロキサンは、流体(フルイド)、オイル、ガム、エラストマー、又は樹脂(例えば粉砕可能な固体)などの様々な形態をとる。一般に、低分子量で低粘度の材料は流体又はオイルと呼ばれ、より高分子量でより高粘度の材料はガムと呼ばれるが、これらの用語の間に厳格な区別は存在しない。エラストマー及び樹脂はガムよりもさらに大きい分子量を有し、典型的には流動しない。本開示において「流体(フルイド)」及び「オイル」とは、25℃において、1,000,000mm/秒以下の粘度を有する材料を意味し、「ガム」とは、25℃において、1,000,000mm/秒を超える粘度を有する材料を意味する。
【0020】
本開示において、オルガノポリシロキサンの動粘度はウベローデ粘度計を用いて測定された値である。動粘度がウベローデ粘度計で測定可能な上限値を超える場合は、円すい-平板形回転粘度計により測定することができる。平円板定速方式の円すい-平板形回転粘度計として、例えば、TAインスツルメント社製の動的粘弾性測定装置ARESを用いることができる。粘度計の寸法について、円平板の直径は25mm、円すいと円平板とがなす角αは0.1ラジアンとされる。動粘度は、せん断速度を0.1秒-1として測定した25℃におけるオルガノポリシロキサンの粘度(mPa・s)をオルガノポリシロキサンの密度で割った値(mm/秒)である。
【0021】
第1実施態様のシリコーン感圧接着剤は、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン、非官能性直鎖オルガノポリシロキサン、及びシリケート樹脂を含む組成物の反応生成物を含む。非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの動粘度は、25℃において約100,000mm/秒(約100,000センチストークス)以上である。
【0022】
シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン、非官能性直鎖オルガノポリシロキサン、及びシリケート樹脂を含む組成物の反応生成物は、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンとシリケート樹脂との縮合反応により生成した、シリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンを含む。シリコーン感圧接着剤が、シリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンを含むことにより、シリケート樹脂を含むがシリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンを含まない同等のシリコーン感圧接着剤と比較して、より高い接着力を得ることができる。
【0023】
さらに、上記反応生成物は、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン、非官能性直鎖オルガノポリシロキサン又はシリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンの有機側鎖基のラジカル同士が反応して形成された架橋を含んでもよく、あるいは、アルケニル基をさらに有する、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン、シリケート樹脂又はシリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとのヒドロシリル化による架橋を含んでもよい。これらの架橋により、硬化物はシリコーン感圧接着剤として十分な凝集力を示す。
【0024】
第2実施態様のシリコーン感圧接着剤は、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンとシリケート樹脂との縮合物であるシリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサン、非官能性直鎖オルガノポリシロキサン、及びシリケート樹脂を含む組成物の硬化物を含む。非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの動粘度は、25℃において約100,000mm/秒(約100,000センチストークス)以上である。シリコーン感圧接着剤が、シリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンを含むことにより、シリケート樹脂を含むがシリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンを含まない同等のシリコーン感圧接着剤と比較して、より高い接着力を得ることができる。
【0025】
上記硬化物は、シリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサン、又は非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの有機側鎖基のラジカル同士が反応して形成された架橋を含んでもよく、あるいは、アルケニル基をさらに有する、シリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサン、又はシリケート樹脂と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとのヒドロシリル化による架橋を含んでもよい。これらの架橋により、硬化物はシリコーン感圧接着剤として十分な凝集力を示す。
【0026】
シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンは、有機側鎖基を有するポリシロキサン主鎖を含み、その末端の一方又は両方にシラノール基を有する。シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンはシリケート樹脂との縮合物の形成に関与し、縮合物の存在はシリコーン感圧接着剤の接着力をより高めることに寄与する。
【0027】
一実施態様では、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンは、式(1):
【化1】
で表される。
【0028】
式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり、複数のRは互いに同じでも異なっていてもよく、複数のRは互いに同じでも異なっていてもよく、nは1以上の整数である。nは、例えば、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンの動粘度が、25℃において、約500mm/秒以上、約1,000mm/秒以上、又は約2,000mm/秒以上、約2,000,000mm/秒以下、約1,000,000mm/秒以下、又は約500,000mm/秒以下となるような数値であってよい。
【0029】
炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ヘキセニル基などのアルケニル基などが挙げられる。炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基及びフェニル基は、ハロゲン置換基、例えばフッ素を含んでもよい。ハロゲン置換基を有する炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基及びフェニル基として、例えば、-CHCHCF基、-CHCH基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
【0030】
一実施態様では、式(1)においてR及びRは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基などのアルキル基であり、特にメチル基である。式(1)においてR及びRがメチル基であるシラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンは、シラノール末端基含有直鎖ポリジメチルシロキサンである。シラノール末端基含有直鎖ポリジメチルシロキサンは、比較的柔らかい硬化物を形成するため、皮膚に対してより穏やかなシリコーン感圧接着剤を得ることができる。
【0031】
シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンの動粘度は、一般に、25℃において約500mm/秒以上、約1,000mm/秒以上、又は約2,000mm/秒以上、約2,000,000mm/秒以下、約1,000,000mm/秒以下、又は約500,000mm/秒以下とすることができる。
【0032】
一実施態様では、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンの量は、シリコーン感圧接着剤の固形分100質量部を基準として、約5質量部以上、約10質量部以上、又は約15質量部以上、約35質量部以下、約30質量部以下、又は約25質量部以下である。本開示においてシラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンの量とは、未反応すなわち遊離したシラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンと、シリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンにおけるシラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン部分との合計量を意味する。
【0033】
非官能性直鎖オルガノポリシロキサンは、皮膚に穏やかな剥離をもたらす成分である。非官能性直鎖オルガノポリシロキサンはその有機側鎖基のラジカル同士が反応して形成された架橋を形成しうるが、未反応の非官能性直鎖オルガノポリシロキサンは可塑剤として残り、皮膚に与える損傷及び痛みが最小限に抑えられた、皮膚から穏やかに除去することができる特性をシリコーン感圧接着剤に付与することができる。非官能性直鎖オルガノポリシロキサンは、25℃において約100,000mm/秒以上と高い動粘度を有する流体又はガムである、すなわち高分子量の非官能性オルガノポリシロキサンであることから、未反応であっても架橋ポリマーマトリックスとの絡み合いに起因して、感圧接着剤表面からブリードアウトしにくく、皮膚に対する接着力を過度に低下させない。そのため、本開示の感圧接着剤は、当業者であればトレードオフの関係にあると理解するであろう、皮膚に対する接着力と、皮膚から穏やかに除去することのできる特性とを、高い水準でバランスさせることができる。
【0034】
一実施態様では、非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの動粘度は、25℃において、約100,000mm/秒以上、約150,000mm/秒以上、又は約200,000mm/秒以上、約10,000,000mm/秒以下、又は約5,000,000mm/秒以下である。
【0035】
一実施態様では、非官能性直鎖オルガノポリシロキサンは、式(2):
【化2】
で表される。
【0036】
式(2)中、R、R、及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数1~6のアルキル基又はフェニル基であり、複数のRは互いに同じでも異なっていてもよく、複数のRは互いに同じでも異なっていてもよく、複数のRは互いに同じでも異なっていてもよく、mは1以上の整数である。mは、例えば、非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの動粘度が、25℃において、約100,000mm/秒以上、約150,000mm/秒以上、又は約200,000mm/秒以上、約10,000,000mm/秒以下、又は約5,000,000mm/秒以下となるような数値であってよい。
【0037】
炭素原子数1~6のアルキル基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基などが挙げられる。炭素原子数1~6のアルキル基及びフェニル基は、ハロゲン置換基、例えばフッ素を含んでもよい。ハロゲン置換基を有する炭素原子数1~6のアルキル基及びフェニル基として、例えば、-CHCHCF基、-CHCH基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
【0038】
一実施態様では、式(2)においてR、R及びRはメチル基である。式(2)においてR、R及びRがメチル基である非官能性直鎖オルガノポリシロキサンは、トリメチルシリル末端基含有直鎖ポリジメチルシロキサンである。トリメチルシリル末端基含有直鎖ポリジメチルシロキサンは、比較的柔らかい硬化物を形成するため、皮膚に対してより穏やかなシリコーン感圧接着剤を得ることができる。
【0039】
一実施態様では、非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの量は、シリコーン感圧接着剤の固形分100質量部を基準として、約25質量部以上、約30質量部以上、又は約40質量部以上、約60質量部以下、約55質量部以下、又は約50質量部以下である。
【0040】
シリケート樹脂はシリコーン感圧接着剤の粘着付与剤として機能する。また、シリケート樹脂は、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンとの縮合物の形成に関与し、縮合物の存在はシリコーン感圧接着剤の接着力をより高めることに寄与する。
【0041】
シリケート樹脂は、一般に、構造単位T(3価のRSiO3/2単位)、構造単位Q(4価のSiO4/2単位)又はこれらの組み合わせを含む、三次元ネットワーク構造を有する固体状のポリシロキサンであり、任意に構造単位M(1価のRSiO1/2単位)、構造単位D(2価のRSiO2/2単位)、又はこれらの組み合わせを含む。M単位はシリケート樹脂の末端を封止する。シリケート樹脂として、MQ樹脂、MDQ樹脂、MTQ樹脂、及びMDTQ樹脂が挙げられる。シリケート樹脂は1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
シリケート樹脂における有機基Rはそれぞれ独立して、炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり、複数のRは互いに同じでも異なっていてもよい。炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ヘキセニル基などのアルケニル基などが挙げられる。炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基及びフェニル基は、ハロゲン置換基、例えばフッ素を含んでもよい。ハロゲン置換基を有する炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基及びフェニル基として、例えば、-CHCHCF基、-CHCH基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
【0043】
一実施態様では、シリケート樹脂における有機基Rの約90%以上、約95%以上、又は100%はメチル基である。
【0044】
一実施態様では、シリケート樹脂における有機基Rの一部がビニル基、アリル基、ヘキセニル基などのアルケニル基、特にビニル基である。アルケニル基を有するシリケート樹脂は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及びヒドロシリル化触媒と組み合わせて、ヒドロシリル化付加反応による架橋を形成することができる。この実施態様において、残りの有機基Rは全てメチル基であってもよい。
【0045】
一実施態様ではシリケート樹脂はMQ樹脂である。MQ樹脂において、各M単位はQ単位に結合し、かつ各Q単位は少なくとも1つの他のQ単位に結合し、一部のQ単位は他のQ単位とのみ結合している。MQ樹脂のM単位/Q単位の個数比は、一般に約0.3以上、約0.4以上、又は約0.5以上、約1.7以下、約1.5以下、又は約1.3以下である。M単位/Q単位の個数比が約0.3以上であることにより、十分な粘着力及び初期粘着力(タック)を得ることができ、約1.7以下であることにより、十分な粘着力及び保持力を得ることができる。
【0046】
シリケート樹脂は、Q単位、T単位又は任意のD単位の一部のケイ素原子がヒドロキシル基と結合した、HO-SiO3/2単位(TOH単位)、HO-RSiO2/2単位(DOH単位)、又はHO-RSiO1/2(MOH単位)を含む。すなわち、シリケート樹脂の有機基Rの一部はOH基で置換されている。これらのTOH単位、DOH単位及びMOH単位のOH基(シラノール基)は、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンのシラノール基と縮合して、シリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンを生成させる。
【0047】
シリケート樹脂のシラノール基の濃度は、シリケート樹脂の質量に基づいて、一般に約0.01質量%以上、約0.02質量%以上、約0.05質量%以上、又は約0.1質量%以上、約1.5質量%以下、約1.2質量%以下、約1.0質量%以下、又は約0.8質量%以下とすることができる。シリケート樹脂のシラノール基の濃度を約0.01質量%以上とすることにより、シリコーン感圧接着剤の接着力を高めるのに十分な程度に、シリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンを生成させることができる。シリケート樹脂のシラノール基の濃度を約1.5質量%以下とすることにより、シリコーン感圧接着剤の初期粘着力(タック)を高めることができる。
【0048】
シリケート樹脂は、一般に約100g/mol以上、又は約500g/mol以上、約50,000g/mol以下、又は約15,000g/mol以下の数平均分子量を有する。
【0049】
一実施態様では、シリケート樹脂の量は、シリコーン感圧接着剤の固形分100質量部を基準として、約30質量部以上、約35質量部以上、又は約40質量部以上、約65質量部以下、約60質量部以下、又は約55質量部以下である。本開示においてシリケート樹脂の量とは、未反応すなわち遊離シリケート樹脂と、シリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンにおけるシリケート樹脂部分との合計量を意味する。
【0050】
第1実施態様において、シリケート樹脂のシラノール基のモル当量は、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンのシラノール基のモル当量よりも大きくてもよい。この実施態様では、シリケート樹脂とシラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンとの縮合反応後に未反応のシリケート樹脂が残存し、この未反応のシリケート樹脂が、縮合反応により生成したシリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンと協働して、シリコーン感圧接着剤により高い接着力を付与することができる。
【0051】
一実施態様において、実質的に全ての、例えば約95%以上、約98%以上、若しくは約99%以上、又は全てのシラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンの末端がシリケート樹脂で封止されていてもよい。
【0052】
シリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンは、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンとシリケート樹脂との縮合反応により形成することができる。縮合反応は一般に塩基触媒を用いて行うことができる。塩基触媒として、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩、ナトリウムメトキシド、カリウムブトキシド等の金属アルコキシド、ブチルリチウム等の有機金属、水酸化カリウムとシロキサンの複合体、アンモニアガス、アンモニア水溶液、メチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の窒素化合物などが挙げられる。減圧ストリップ等を用いて容易に除去可能であることから、塩基触媒としてアンモニアガス又はアンモニア水溶液を用いることが有利である。
【0053】
縮合反応は、溶剤中で行ってもよく、無溶剤で行ってもよい。溶剤として、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソパラフィン類等の直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素、工業用ガソリン、石油ベンジン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン等のエーテル、2-メトキシエチルアセテート、2-エトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-ブトキシエチルアセテート等のアセテート溶剤、又はこれらの混合溶剤などが挙げられる。一実施態様では、溶剤は、芳香族炭化水素、直鎖状若しくは分岐状の脂肪族炭化水素、又は直鎖状若しくは分岐状の脂肪族炭化水素とエーテル、エステル、若しくはアセテート溶剤との混合溶剤である。
【0054】
無溶剤で縮合反応を行う場合、非官能性直鎖オルガノポリシロキサンを共存させてもよい。非官能性直鎖オルガノポリシロキサンを共存させることにより、シリケート樹脂とシラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンの縮合反応に伴う過度の高粘度化又はゲル化を抑制することができる。
【0055】
縮合反応の温度は、一般に約20℃以上、約30℃以上、又は約40℃以上、約150℃以下、約110℃以下、又は約80℃以下とすることができる。縮合反応を任意成分である溶剤の還流温度で行ってもよい。
【0056】
縮合反応は、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンのシラノール基が、例えば約90%以上、約95%以上、又は約98%以上反応するまで行うことができる。一実施態様では、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンのシラノール基は、モル当量で過剰のシリケート樹脂の使用により実質的に全てシリケート樹脂との縮合反応に消費される。
【0057】
縮合反応の時間は特に限定されないが、一般に、約0.5時間以上、又は約1時間以上、約48時間以下、又は約24時間以下とすることができる。
【0058】
縮合反応後、必要に応じて、塩基触媒を中和する中和剤を添加してもよい。中和剤として、例えば、塩化水素及び二酸化炭素等の酸性ガス、酢酸、オクチル酸及びクエン酸等の有機酸、塩酸、硫酸及びリン酸等の鉱酸などが挙げられる。中和に加えて又は中和に代えて、塩基触媒を減圧ストリップ、水洗などによって除去することもできる。
【0059】
一実施態様では、シリコーン感圧接着剤は、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン、非官能性直鎖オルガノポリシロキサン又はシリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンの有機側鎖基のラジカル同士が反応して形成された架橋を有する。この実施態様では、非官能性直鎖オルガノポリシロキサンがその有機側鎖基を介して架橋されていてもよい。例えば、有機側鎖基がメチル基である場合、電子線若しくはガンマ線の照射、又は分解した有機過酸化物から生成したラジカルにより、メチル基から水素ラジカルが引き抜かれてメチレンラジカルが生じ、別のメチレンラジカルとの再結合によりポリシロキサン主鎖間に-Si-CH-CH-Si-の架橋構造が生じる。シリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンは、比較的低線量の電子線照射又はガンマ線照射を用いて架橋を行った場合でも、得られる硬化物の凝集力を有効に高めることができ、その結果、高い接着力と皮膚からの穏やかな除去を両立することができる。
【0060】
電子線又はガンマ線の照射は、公知の電子線照射装置又はガンマ線照射装置、照射条件、及び照射手順を用いて行うことができる。電子線照射とガンマ線照射を組み合わせてもよい。電子線又はガンマ線の照射は一回でもよく、被照射物に対する照射方向を変えて複数回行ってもよい。電子線又はガンマ線の照射を不活性ガス、例えば窒素又はアルゴンの雰囲気中で行ってもよい。被照射物をライナーで被覆して空気から遮断し、ライナーを通して電子線又はガンマ線を照射してもよい。ガンマ線照射装置を用いて、テープ又は創傷ドレッシングなどの半完成品又は製品の滅菌を同時に行うこともできる。
【0061】
電子線照射の線量は、例えば、約0.5Mrad以上、約0.8Mrad以上、又は約1.0Mrad以上、約15Mrad以下、約12Mrad以下、又は約10Mrad以下とすることができる。非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの分子量が高い、すなわち動粘度が高い場合は、比較的低線量の照射を行うことで架橋の生成量を少なくして、皮膚に対して移行可能な非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの量を増やしてもよい。
【0062】
電子線照射の加速電圧は、感圧接着剤の厚み、ライナーの有無などにより適宜選択することができ、例えば、約80keV以上、約100keV以上、又は約140keV以上、約500keV以下、約300keV以下、又は約250keV以下とすることができる。
【0063】
ガンマ線照射の線源として、一般にコバルト60(60Co)を用いることができる。ガンマ線照射の吸収線量は、感圧接着剤の厚み、ライナーの有無などにより適宜選択することができる。非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの分子量が高い、すなわち動粘度が高い場合は、比較的低い吸収線量の照射を行うことで架橋の生成量を少なくして、皮膚に対して移行可能な非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの量を増やしてもよい。
【0064】
有機過酸化物として、例えば、ジベンゾイルパーオキサイド、4,4’-ジメチルジベンゾイルパーオキサイド、3,3’-ジメチルジベンゾイルパーオキサイド、2,2’-ジメチルジベンゾイルパーオキサイド、2,2’,4,4’-テトラクロロジベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド等を用いることができる。有機過酸化物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0065】
有機過酸化物の形態は特に限定されない。有機過酸化物をそのまま使用してもよく、溶剤で希釈してもよく、水に分散させてもよく、あるいはシラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン又は非官能性直鎖オルガノポリシロキサンに分散させてペースト状にしてもよい。
【0066】
有機過酸化物の量は、硬化温度及び使用する有機過酸化物の分解温度に応じて適宜決定することができる。有機過酸化物の量は、一般にシリコーン感圧接着剤の固形分100質量部に対して、約0.5質量部以上、又は約0.8質量部以上、約5質量部以下、又は約3質量部以下とすることができる。
【0067】
別の実施態様では、シリコーン感圧接着剤は、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基などのアルケニル基をさらに有するシラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン、シリケート樹脂、又はシリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとのヒドロシリル化による架橋を含む。これらのアルケニル基が後述するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと付加反応して架橋を形成し、シリコーン感圧接着剤を構成する硬化物を生じさせる。
【0068】
アルケニル基をさらに有するシラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン、シリケート樹脂、又はシリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンに加えて、式(3)で表される直鎖オルガノポリシロキサンをさらに用いてもよい。
【0069】
【化3】
【0070】
式(3)中、R、R、及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり、複数のRは互いに同じでも異なっていてもよく、複数のRは互いに同じでも異なっていてもよく、複数のRは互いに同じでも異なっていてもよく、但し、R、R、及びRで表される全ての置換基のうち少なくとも1個はアルケニル基であり、lは1以上の整数である。lは、例えば、式(3)で表される直鎖オルガノポリシロキサンの動粘度が、25℃において、約500mm/秒以上、約1,000mm/秒以上、又は約2,000mm/秒以上、約2,000,000mm/秒以下、約1,000,000mm/秒以下、又は約500,000mm/秒以下となるような数値であってよい。
【0071】
炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基などのアルケニル基などが挙げられる。炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基及びフェニル基は、ハロゲン置換基、例えばフッ素を含んでもよい。ハロゲン置換基を有する炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基及びフェニル基として、例えば、-CHCHCF基、-CHCH基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
【0072】
式(3)で表される直鎖オルガノポリシロキサンの量は、シリコーン感圧接着剤の固形分100質量部を基準として、例えば、約0質量部以上、約2質量部以上、又は約5質量部以上、約30質量部以下、約20質量部以下、又は約15質量部以下とすることができる。
【0073】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、Si-H基を3個以上有しており、ヒドロシリル化による架橋において架橋剤として機能する。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは直鎖状又は分岐状であってよい。
【0074】
一実施態様では、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、式(4)又は式(5)で表される。
(3-a)SiO(HRSiO)(R SiO)SiR (3-a) (4)
(H10 (3-b)SiO1/2(HR10SiO2/2(R10 SiO2/2
-(R10SiO3/2(SiO4/2 (5)
【0075】
式(4)において、Rはそれぞれ独立して、炭素原子数1~6のアルキル基又はフェニル基であり、複数のRは互いに同じでも異なっていてもよく、aは0又は1、pは1以上の整数、qは0以上の整数、aが0の場合は、pは3以上の整数であり、p+qは1以上の整数である。p+qは、例えば、約10以上、約20以上、又は約50以上、約10,000以下、約5,000以下、又は約2,000以下であってよい。
【0076】
式(5)において、R10はそれぞれ独立して、炭素原子数1~6のアルキル基又はフェニル基であり、複数のR10は互いに同じでも異なっていてもよく、bは0又は1、rは3~12の整数、sは0以上の整数、tは0以上の整数、u+vは1~5の整数であり、r+s+t+u+vは4以上の整数である。r+s+t+u+vは、例えば、約10以上、約20以上、又は約50以上、約10,000以下、約5,000以下、又は約2,000以下であってよい。
【0077】
炭素原子数1~6のアルキル基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基などが挙げられる。炭素原子数1~6のアルキル基及びフェニル基は、ハロゲン置換基、例えばフッ素を含んでもよい。ハロゲン置換基を有する炭素原子数1~6のアルキル基及びフェニル基として、例えば、-CHCHCF基、-CHCH基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
【0078】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの量は、一般に、アルケニル基の合計個数に対するSi-H基の個数の比(Si-H基の個数/アルケニル基の合計個数)が約0.5以上、又は約0.8以上、約20以下、又は約15以下となるように調整される。アルケニル基の合計個数に対するSi-H基の個数の比を約0.5以上とすることで、十分な凝集力及び保持力を得ることができる。アルケニル基の合計個数に対するSi-H基の個数の比を約20以下とすることで、凝集力及び保持力を飽和させることができ、経済的に有利である。
【0079】
ヒドロシリル化による架橋は触媒を用いて行われる。ヒドロシリル化触媒として、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物、白金-オレフィン錯体、白金-ビニル基含有シロキサン錯体等の白金系触媒、ロジウム錯体及びルテニウム錯体等の白金族金属系触媒が挙げられる。これらのヒドロシリル化触媒はイソプロパノール、トルエン等の溶剤、又はシリコーンオイルなどに溶解又は分散させて使用してもよい。
【0080】
ヒドロシリル化触媒の量は、一般に、シリコーン感圧接着剤の固形分100質量部に対して、白金族金属の質量に換算して約5ppm以上、又は約10ppm以上、約2,000ppm以下、又は約500ppm以下とすることができる。
【0081】
ヒドロシリル化触媒と一緒に付加反応制御剤を使用してもよい。付加反応制御剤は、シリコーン感圧接着剤の組成物の硬化前に、組成物が増粘又はゲル化を起こさないように触媒作用を制御する。付加反応制御剤として、例えば、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロヘキサノール,3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ブチン、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ペンチン、3,5-ジメチル-3-トリメチルシロキシ-1-ヘキシン、1-エチニル-1-トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2-ジメチル-3-ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン及び1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン等が挙げられる。
【0082】
付加反応制御剤の量は、一般に、シリコーン感圧接着剤の固形分100質量部に対して約0.01質量部以上、又は約0.05質量部以上、約8.0質量部以下、又は約2.0質量部以下とすることができる。
【0083】
シリコーン感圧接着剤は、抗菌剤などの薬剤、充填剤、微小球(例えば膨張性微小球)、顔料、染料、接着向上剤、化粧剤、天然抽出物、ワックス、親水性ポリマー、吸水性ポリマー、保湿成分、レオロジー変性剤などの添加剤を含んでもよい。
【0084】
一実施態様では、シリコーン感圧接着剤は、低粘度、例えば動粘度が25℃において約100mm/秒~約50,000mm/秒の非官能性直鎖オルガノポリシロキサンを含んでもよい。この実施態様では、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン、非官能性直鎖オルガノポリシロキサン、及びシリケート樹脂を含む組成物の粘度、又はその組成物の反応生成物である硬化物の粘弾性、特に濡れ性などを調整することができる。
【0085】
第1実施態様のシリコーン感圧接着剤は、例えば以下のようにして形成することができる。溶剤を用いて又は用いずに、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンとシリケート樹脂との縮合反応を行って得られた反応生成物を含む溶液又は混合物に、非官能性直鎖オルガノポリシロキサン、及び任意の有機過酸化物、式(3)で表される直鎖オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ヒドロシリル化触媒、付加反応制御剤、添加剤、溶剤などを加えて、プラネタリーミキサ、ブレンダ、ミル、ロール、押出成形機などを用いて混合する。あるいは、非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの全て又は一部が、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンとシリケート樹脂との縮合反応の際に共存していてもよい。このようにして得られた感圧接着剤組成物を、例えばバーコータ、ホットメルトコータ、押出成形機などを用いてテープバッキングなどの基材に塗布し、必要に応じて乾燥して溶剤を除去し、加熱又は電子線照射若しくはガンマ線照射により硬化する。オルガノハイドロジェンポリシロキサン及びヒドロシリル化触媒の少なくとも一方は、作業中の感圧接着剤組成物の過度の粘度上昇又はゲル化を防止するため、硬化直前に混合されることが好ましい。
【0086】
第2実施態様のシリコーン感圧接着剤は、例えば以下のようにして形成することができる。シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンとシリケート樹脂との縮合物であるシリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンを調製する。このシリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサン、非官能性直鎖オルガノポリシロキサン、及びシリケート樹脂、並びに任意の有機過酸化物、式(3)で表される直鎖オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ヒドロシリル化触媒、付加反応制御剤、添加剤、溶剤などを混合する。得られた組成物を、例えばバーコータ、ホットメルトコータ、押出成形機などを用いてテープバッキングなどの基材に塗布し、必要に応じて乾燥して溶剤を除去し、加熱又は電子線照射若しくはガンマ線照射により硬化する。シリケート樹脂の全て又は一部は、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンとシリケート樹脂との縮合反応の際に未反応の状態で残存したものであってもよい。
【0087】
一実施態様では、シリコーン感圧接着剤は触媒及び反応開始剤の残渣を実質的に含まない、又は含まない。「実質的に含まない」とは、例えば、シリコーン感圧接着剤に含まれる触媒及び反応開始剤の残渣が、約0.1質量%以下、約0.05質量%以下、又は約0.01質量%以下であることを意味する。触媒として例えば白金系触媒などのヒドロシリル化触媒、反応開始剤の残渣として有機過酸化物の分解生成物などが挙げられる。
【0088】
第3実施態様のシリコーン感圧接着剤組成物は、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン、非官能性直鎖オルガノポリシロキサン、及びシリケート樹脂を含む。非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの動粘度は、25℃において約100,000mm/秒(約100,000センチストークス)以上である。この実施態様のシリコーン感圧接着剤組成物において、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンとシリケート樹脂との縮合反応をさらに行うことにより、シリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンを含む上記実施態様のシリコーン感圧接着剤を調製することができる。
【0089】
シリコーン感圧接着剤組成物は、任意成分として、有機過酸化物、式(3)で表される直鎖オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ヒドロシリル化触媒、付加反応制御剤、添加剤、又は溶剤を含んでもよい。シリコーン感圧接着剤組成物に含まれるシラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン、非官能性直鎖オルガノポリシロキサン、シリケート樹脂、及びその他の任意成分、例えば有機過酸化物、式(3)で表される直鎖オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ヒドロシリル化触媒、付加反応制御剤、添加剤、及び溶剤の説明及び実施態様は、第1実施態様及び第2実施態様のシリコーン感圧接着剤を形成する感圧接着剤組成物に関する記載を参照されたい。
【0090】
シリコーン感圧接着剤組成物は、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンとシリケート樹脂との縮合物であるシリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンを含んでもよい。シリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンは、シリコーン感圧接着剤組成物に含まれるシラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンとシリケート樹脂との縮合反応により生成したものであってもよく、別途合成して添加されたものであってもよい。
【0091】
一実施態様では、シリコーン感圧接着剤組成物は、触媒及び反応開始剤を実質的に含まない、又は含まない。「実質的に含まない」とは、例えば、シリコーン感圧接着剤組成物に含まれる触媒及び反応開始剤が、約0.1質量%以下、約0.05質量%以下、又は約0.01質量%以下であることを意味する。触媒として例えば白金系触媒などのヒドロシリル化触媒、反応開始剤として有機過酸化物などが挙げられる。
【0092】
一実施態様では、シリコーン感圧接着剤組成物は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及びヒドロシリル化触媒をさらに含み、シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン及びシリケート樹脂の少なくとも一つがアルケニル基を有する。
【0093】
一実施態様では、シリコーン感圧接着剤は、皮膚に穏やかな医療用感圧接着剤である。シリコーン感圧接着剤は、一般に皮膚よりも低い表面張力を有することから、素早く広い範囲に対して濡れることができる。シリコーン感圧接着剤は、弱い圧力により広げた場合でも高い変形速度で広がり、かつ強度及び持続時間の観点から所望される程度の接着を提供するような粘弾性を有する。放射線照射によっても架橋に関与せず、未反応の状態で残存する非官能性直鎖ポリオルガノシロキサンは、シリコーン感圧接着剤を皮膚に適用したときに流動し、架橋したシリコーン感圧接着剤と皮膚及び毛の周囲に表面上に薄い被膜として存在するため、シリコーン感圧接着剤の除去時の痛みを低減することができる。一方で、そのような未反応の非官能性直鎖ポリオルガノシロキサンの存在により、シリコーン感圧接着剤の弾性は低い状態で保たれている。そのため、シリコーン感圧接着剤の除去時に剥離応力が剥離線(剥離が進行するときの感圧接着剤と皮膚の境界線)の上に集中することを防ぐことができ、また、未反応の非官能性直鎖ポリオルガノシロキサンが接着面に広く分布することにより、剥離時の痛みを低減することができる。このようにして、シリコーン感圧接着剤に高分子量の非官能性直鎖ポリオルガノシロキサンを含ませることにより、皮膚への高い接着力と皮膚からの容易な剥離の両方を同時に達成することができる。
【0094】
シリコーン感圧接着剤は、基材の一方の表面に配置された感圧接着層の形態で、基材を生体基材(例えばヒト又は動物)に接着させることができる。一実施態様では、シリコーン感圧接着剤は、医療用基材をヒト及び/又は動物の皮膚に接着するために有利に使用することができる。
【0095】
医療用基材として、高分子材料、プラスチック、天然の高分子材料(例えばコラーゲン、木、コルク、及び皮革)、紙、織布及び不織布、金属、ガラス、セラミックス、及びそれらの複合材料が挙げられる。
【0096】
感圧接着層の厚みは特に制限されない。一実施態様では、感圧接着層の厚みは、約10μm以上、約20μm以上、又は約50μm以上、約2.0mm以下、約1.0mm以下、又は約0.5mm以下である。
【0097】
図1に一実施態様の医療品の概略断面図を示す。医療品10は、基材12の第1主表面に配置されたシリコーン感圧接着剤14を含む。図1ではシリコーン感圧接着剤は感圧接着層の形態で示されている。シリコーン感圧接着剤14の反対面は剥離ライナーによって保護されていてもよい。医療品10はそれ自体に巻き付けられるものであってよく、その場合、シリコーン感圧接着剤14の露出面は、基材12のシリコーン感圧接着剤14が配置されていない、第1主表面の反対側の第2主表面と接触する。使用時は、シリコーン感圧接着剤14の露出表面が生体基材(例えばヒトの皮膚)に適用され、基材12を生体基材に接着する。必要に応じてチューブなどの医療器具をシリコーン感圧接着剤14と生体基材の間に配置することにより、医療器具を生体基材に対して固定することができる。
【0098】
シリコーン感圧接着剤及びシリコーン感圧接着剤組成物は、テープ、創傷ドレッシング、外科用ドレープ、IV部位ドレッシング、義肢、オストミーパウチ若しくはストーマパウチ、頬パウチ、又は経皮パッチなどの医療品に使用することができ、義歯及びヘアピースを含む他の医療品に使用することもできる。シリコーン感圧接着剤及びシリコーン感圧接着剤組成物は、特に、高い接着力と穏やかに皮膚から剥がせる剥離性の両立が要求される、クリティカルケア用テープ及びシートなどに好適に使用することができる。
【実施例
【0099】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれに限定されない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。
【0100】
本実施例において使用した試薬及び材料を表1に示す。
【表1】
【0101】
本実施例で使用した評価方法は以下のとおりである。
【0102】
剥離力
基材として、SUS304、可塑剤入りPVCチューブ(PVCチューブを切り開いてステンレススチールパネル上に適用)、及び織布サージカルテープ(3M(登録商標)デュラポア(登録商標)サージカルテープ)(評価に用いるテープが当該サージカルテープの織布面に適用されるようにステンレススチールパネル上に適用)を用いて180度剥離力を測定した。
【0103】
テープを各基材上に適用し、質量2kgのローラで一往復圧着した。テープを直ぐに基材から角度180度、剥離速度300mm/分で剥離した。SUS304については、感圧接着剤の破壊モードも合わせて観察した。
【0104】
自着力(T型剥離力)を測定した。各テープを折り畳んで感圧接着面同士を接着し、質量2kgのローラで一往復圧着した。テープを直ぐに自着面からT型剥離モード、剥離速度300mm/分で剥離した。
【0105】
全ての実施例及び比較例について剥離力の総合評価の基準は以下のとおりであった。3種の基材に対する剥離力及び自着力が全て6N/25mm以上であるものを優良、3種の基材に対する剥離力及び自着力の1つでも4N/25mm未満であるものを不良とし、その他の場合を良好とした。
【0106】
皮膚パネル試験
皮膚パネル試験を以下の手順で行った。テープを25mm×75mmの大きさに切断した。テープを5人の被験者(パネルA~E)の前腕内側に適用した。テープを1日間皮膚上に置き、その後被験者が注意深く除去した。除去したテープを、ケラチンを染色するアゾルビン(アゾ染料)水溶液で赤く染色した。
【0107】
(1)痛みスコア
被験者がテープを皮膚から除去したときの痛みを採点した。点数は0~10点(1点刻み)であり、0を痛みなし、10を非常に痛い、とした。パネルA~Eの点数の平均を痛みスコアとした。
【0108】
(2)ケラチン除去スコア
染色したテープ表面の明度によりケラチン除去量を点数化した。ケラチン除去スコアの決定は以下の手順で行った。染色したテープ表面をフルカラーモードでスキャンし、スキャンした画像データの端から5~10mmをカットして、グレースケールの変換対象から除外した。フルカラー画像(RGB画像)を、以下の数式:グレー=R(レッド)×0.3+G(グリーン)×0.59+B(ブルー)×0.11に従って256階調のグレースケールに変換した。変換された256階調のグレースケールのうち、「255」が最も明るいスコア、「0」が最も暗いスコアである。得られたグレースケール画像の絶対明度の平均値を計算した。255から得られた絶対明度の平均値を引いて得られた値を絶対明度スコアとした。各パネルの絶対明度スコアから対照の絶対明度スコアを差し引くことにより相対明度スコアを得た。対照の絶対明度スコアは、皮膚に適用していないテープそのものを染色して同様の手順でグレースケール変換することによって得た。パネルA~Eの相対明度スコアの平均をケラチン除去スコアとした。
【0109】
絶対明度スコアは255から絶対明度の平均値を引いて得られる値であるため、絶対明度スコアが大きいことは、染色したテープの絶対明度の平均値が小さい、すなわちグレースケールのスコアとして暗いことを意味する。一方、相対明度スコアは皮膚に適用したテープの絶対明度スコアから対照の絶対明度スコアを引いて得られる値であるため、相対明度スコアが小さいほど、ケラチン除去が少なく好ましいことを意味する。
【0110】
シリコーン感圧接着剤組成物Aの調製
20質量部のElastomer 350N、40質量部のMQ 803 TF、25.71質量部のヘプタン、及び0.43質量部の28%アンモニア水溶液を混合し(固形分70質量%)、40℃に加熱し、24時間その温度で維持して、シラノール末端基含有直鎖PDMSとMQ樹脂の縮合反応を行った。反応生成物を室温まで冷却し、40質量部のKF-96H-100万cs、及び17.14質量部のヘプタンを混合物に添加して、シリコーン感圧接着剤組成物A(固形分70質量%)を調製した。
【0111】
シリコーン感圧接着剤組成物Bの調製
配合を表2に記載のとおり変更した以外は、シリコーン感圧接着剤組成物Aと同様の手順でシリコーン感圧接着剤組成物B(固形分70質量%)を調製した。
【0112】
シリコーン感圧接着剤組成物Cの調製
60質量部のElastomer 350N、40質量部のMQ 803 TF、77.57質量部のヘプタン、及び0.50質量部の28%アンモニア水溶液を混合し(固形分56質量%)、40℃に加熱し、24時間その温度で維持して、シラノール末端基含有直鎖PDMSとMQ樹脂の縮合反応を行った。反応生成物を室温まで冷却して、シリコーン感圧接着剤組成物C(固形分56質量%)を調製した。
【0113】
シリコーン感圧接着剤組成物Dの調製
60質量部のAK 1,000,000、40質量部のMQ 803 TF、及び42.86質量部のトルエンを混合して、シリコーン感圧接着剤組成物D(固形分70質量%)を調製した。
【0114】
例1
シリコーン感圧接着剤組成物Aを、厚み25μmのポリエステルエラストマーフィルムを不織布に加熱積層させて得られた基材にナイフコータで乾燥膜厚100μmとなるように塗布した。塗布膜を線量2.6Mrad、加速電圧210keVの電子線で硬化した。フッ素化合物コーティングを有するPETライナーで感圧接着剤表面を被覆して、感圧接着テープを作製した。
【0115】
例2
シリコーン感圧接着剤組成物Bを例1の基材にナイフコータで乾燥膜厚100μmとなるように塗布した。塗布膜を線量3.2Mrad、加速電圧210keVの電子線で硬化した。フッ素化合物コーティングを有するPETライナーで感圧接着剤表面を被覆して、感圧接着テープを作製した。
【0116】
比較例1
シリコーン感圧接着剤組成物Cを例1の基材にナイフコータで乾燥膜厚100μmとなるように塗布した。塗布膜を線量0.7Mrad、加速電圧210keVの電子線で硬化した。フッ素化合物コーティングを有するPETライナーで感圧接着剤表面を被覆して、感圧接着テープを作製した。
【0117】
比較例2
シリコーン感圧接着剤組成物Dを例1の基材にナイフコータで乾燥膜厚100μmとなるように塗布した。塗布膜を線量3.9Mrad、加速電圧210keVの電子線で硬化した。フッ素化合物コーティングを有するPETライナーで感圧接着剤表面を被覆して、感圧接着テープを作製した。
【0118】
例1及び例2、並びに比較例1及び比較例2の配合及びEB線量を表2に、剥離力の評価結果を表3に、皮膚パネル試験の評価結果を表4にそれぞれ示す。各例のEB線量は、SUS剥離モードにおいて残渣なしの結果となる最低線量に調整した。
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
【表4】
【0122】
表4の皮膚パネル試験の総合評価の基準は以下のとおりであった。痛みスコアが1.5以下を優良、1.5超~1.8以下を良好、1.8超を不良とし、ケラチン除去スコアが40以下を優良、40超~50以下を良好、50超を不良とし、痛みスコア及びケラチン除去スコアの両方が優良であるものを総合評価が優良、痛みスコア及びケラチン除去スコアのうち1つでも不良であるものを総合評価が不良とし、その他の場合を総合評価が良好であるとした。なお、痛みスコア、ケラチン除去スコア及び総合評価は、対照となる条件(例えば要求される接着力)が異なる場合は直接比較することはできない。
【0123】
シリコーン感圧接着剤組成物Eの調製
20質量部のElastomer 350N、40質量部のTSF451-100M、及び40質量部のMQ 803 TFの混合物を85℃に加熱して1時間プラネタリーミキサで撹拌することにより溶解させた。次に、0.5質量部の28%アンモニア水溶液を混合物に添加し、85℃、閉鎖系で1時間撹拌を継続した。0.25質量部の28%アンモニア水溶液を再度混合物に添加し、85℃で1.5時間撹拌を継続した。その後、アンモニア水溶液を減圧下、85℃で1時間ストリップして、シリコーン感圧接着剤組成物Eを調製した。
【0124】
シリコーン感圧接着剤組成物F~K及びMの調製
配合を表5に記載のとおり変更した以外は、シリコーン感圧接着剤組成物Eと同様の手順でシリコーン感圧接着剤組成物F~K及びMを調製した。
【0125】
シリコーン感圧接着剤組成物Lの調製
60質量部のAK1,000,000及び40質量部のMQ 803 TFの混合物を85℃に加熱して1時間プラネタリーミキサで撹拌することにより、シリコーン感圧接着剤組成物Lを調製した。
【0126】
例3
シリコーン感圧接着剤組成物Eを140℃に加熱して例1の基材にナイフコータで乾燥膜厚100μmとなるようにホットメルト塗布した。塗布膜を線量2.5Mrad、加速電圧210keVの電子線で硬化した。フッ素化合物コーティングを有するPETライナーで感圧接着剤表面を被覆して、感圧接着テープを作製した。
【0127】
例4~例9、比較例3及び比較例4
表5に記載したシリコーン感圧接着剤組成物及びEB線量を用いた以外は、例3に記載した手順で感圧接着テープを作製した。
【0128】
参考例1
アクリル系接着剤を有する3M(登録商標)トランスポア(登録商標)サージカルテープを使用した。
【0129】
参考例2
ゴム系接着剤を有するニチバン(登録商標)接着バンデージを使用した。
【0130】
例3~例9、比較例3及び比較例4の配合及びEB線量を表5に示す。各例のEB線量は、SUS剥離モードにおいて残渣なしの結果となる最低線量に調整した。例3~例9、比較例3及び比較例4、並びに参考例1及び参考例2の剥離力の評価結果を表6に示す。例3~例5、例7~例9、比較例4、並びに参考例1及び参考例2の皮膚パネル試験の評価結果を表7に示す。
【0131】
【表5】
【0132】
【表6】
【0133】
【表7】
【0134】
表7の皮膚パネル試験の総合評価の基準は以下のとおりであった。痛みスコアが3.0以下を優良、3.0超~4.0以下を良好、4.0超を不良とし、ケラチン除去スコアが60以下を優良、60超~70以下を良好、70超を不良とし、痛みスコア及びケラチン除去スコアの両方が優良であるものを総合評価が優良、痛みスコア及びケラチン除去スコアのうち1つでも不良であるものを総合評価が不良とし、その他の場合を総合評価が良好であるとした。なお、痛みスコア、ケラチン除去スコア及び総合評価は、対照となる条件(例えば要求される接着力)が異なる場合は直接比較することはできない。
【0135】
例10
50質量部(固形分)のKR-100、40質量部のAK1,000,000及び10質量部のMQ 803 TFを混合して固形分70質量%のシリコーン感圧接着剤組成物Nを調製した。シリコーン感圧接着剤組成物Nは、合計で39質量部のMQ樹脂を含んでいた。シリコーン感圧接着剤組成物Nを例1の基材にナイフコータで乾燥膜厚100μmとなるように塗布した。塗布膜を線量1.2Mrad、加速電圧210keVの電子線で硬化した。この例のEB線量は、SUS剥離モードにおいて残渣なしの結果となる最低線量に調整した。フッ素化合物コーティングを有するPETライナーで感圧接着剤表面を被覆して、感圧接着テープを作製した。例10の剥離力の評価結果を表8に示す。
【0136】
【表8】
【0137】
本発明の様々な改良及び変更が本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく可能であることは当業者にとって自明である。本発明の実施態様の一部を以下の態様1~18に記載する。
[態様1]
シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン、
非官能性直鎖オルガノポリシロキサン、及び
シリケート樹脂
を含む組成物の反応生成物を含むシリコーン感圧接着剤であって、前記非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの動粘度が25℃において100,000mm /秒以上である、シリコーン感圧接着剤。
[態様2]
シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンとシリケート樹脂との縮合物であるシリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサン、
非官能性直鎖オルガノポリシロキサン、及び
シリケート樹脂
を含む組成物の硬化物を含むシリコーン感圧接着剤であって、前記非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの動粘度が25℃において100,000mm /秒以上である、シリコーン感圧接着剤。
[態様3]
前記シリコーン感圧接着剤の固形分100質量部を基準として、前記シリケート樹脂を30~70質量部含む、態様1又は2のいずれかに記載のシリコーン感圧接着剤。
[態様4]
前記シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンが、式(1):
【化1】
で表され、式(1)中、R 及びR はそれぞれ独立して、炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり、複数のR は互いに同じでも異なっていてもよく、複数のR は互いに同じでも異なっていてもよく、nは1以上の整数である、態様1~3のいずれかに記載のシリコーン感圧接着剤。
[態様5]
前記非官能性直鎖オルガノポリシロキサンが、式(2):
【化2】
で表され、式(2)中、R 、R 、及びR はそれぞれ独立して、炭素原子数1~6のアルキル基又はフェニル基であり、複数のR は互いに同じでも異なっていてもよく、複数のR は互いに同じでも異なっていてもよく、複数のR は互いに同じでも異なっていてもよく、nは1以上の整数である、態様1~4のいずれかに記載のシリコーン感圧接着剤。
[態様6]
前記シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンが、シラノール末端基含有直鎖ポリジメチルシロキサンである、態様1~5のいずれかに記載のシリコーン感圧接着剤。
[態様7]
前記非官能性直鎖オルガノポリシロキサンが、トリメチルシリル末端基含有直鎖ポリジメチルシロキサンである、態様1~6のいずれかに記載のシリコーン感圧接着剤。
[態様8]
前記シリケート樹脂がMQ樹脂である、態様1~7のいずれかに記載のシリコーン感圧接着剤。
[態様9]
前記非官能性直鎖オルガノポリシロキサンがその有機側鎖基を介して架橋されている、態様1~8のいずれかに記載のシリコーン感圧接着剤。
[態様10]
触媒及び反応開始剤の残渣を実質的に含まない、態様1~9のいずれかに記載のシリコーン感圧接着剤。
[態様11]
皮膚に穏やかな医療用感圧接着剤である、態様1~10のいずれかに記載のシリコーン感圧接着剤。
[態様12]
シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン、
非官能性直鎖オルガノポリシロキサン、及び
シリケート樹脂
を含み、前記非官能性直鎖オルガノポリシロキサンの動粘度が25℃において100,000mm /秒以上である、シリコーン感圧接着剤組成物。
[態様13]
前記シリコーン感圧接着剤組成物の固形分100質量部を基準として、前記シリケート樹脂を30~70質量部含む、態様12に記載のシリコーン感圧接着剤組成物。
[態様14]
前記シリケート樹脂のシラノール基のモル当量が、前記シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンのシラノール基のモル当量よりも大きい、態様12又は13のいずれかに記載のシリコーン感圧接着剤組成物。
[態様15]
前記シリコーン感圧接着剤組成物の固形分100質量部を基準として、前記非官能性直鎖オルガノポリシロキサンを30~60質量部含む、態様12~14のいずれかに記載のシリコーン感圧接着剤組成物。
[態様16]
前記シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサンと前記シリケート樹脂との縮合物であるシリケート樹脂で末端が封止された直鎖オルガノポリシロキサンを含む、態様12~15のいずれかに記載のシリコーン感圧接着剤組成物。
[態様17]
触媒及び反応開始剤を実質的に含まない、態様12~16のいずれかに記載のシリコーン感圧接着剤組成物。
[態様18]
オルガノハイドロジェンポリシロキサン及びヒドロシリル化触媒をさらに含み、前記シラノール末端基含有直鎖オルガノポリシロキサン及び前記シリケート樹脂の少なくとも一つがアルケニル基を有する、態様12~16のいずれかに記載のシリコーン感圧接着剤組成物。
【符号の説明】
【0138】
10 医療品
12 基材
14 シリコーン感圧接着剤
図1