(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】超電導コイル及び超電導装置
(51)【国際特許分類】
H01F 6/06 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
H01F6/06 110
H01F6/06 140
(21)【出願番号】P 2019045976
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕記
(72)【発明者】
【氏名】根本 薫
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1454455(KR,B1)
【文献】特開昭63-261808(JP,A)
【文献】特開2013-030661(JP,A)
【文献】実公昭47-002042(JP,Y1)
【文献】特開2001-014961(JP,A)
【文献】特開平10-321065(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0321343(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/00-6/06
H01B 12/00-12/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導テープと、
少なくとも1つのスペーサと、
を備え、
前記超電導テープは、
径方向に重なるように巻回されると共に、互いの中心軸が一致するように
軸方向に重ねて配置された複数のパンケーキコイル部と、
隣接する2つの前記パンケーキコイル部において、一方のパンケーキコイルの内側端部と、他方のパンケーキコイルの外側端部とを連結する少なくとも1つの連結部と、
を有し、
前記少なくとも1つのスペーサは、前記超電導テープよりも伝熱性が高く、前記複数のパンケーキコイル部に挟まれるように配置されると共に、前記少なくとも1つの連結部を
螺旋状にカーブした状態で支持する
面を有する、超電導コイル。
【請求項2】
請求項1に記載の超電導コイルであって、
前記超電導テープは、高温超電導材で構成された超電導層を有する、超電導コイル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の超電導コイルであって、
前記複数のパンケーキコイル部において、前記超電導テープは、レーストラック状に巻回される、超電導コイル。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超電導コイルであって、
前記複数のパンケーキコイル部のうち、軸方向の最も外側に位置する最外層パンケーキコイル部の外側に配置されたカバーをさらに備え、
前記超電導テープは、前記最外層パンケーキコイル部の内側端部から前記最外層パンケーキコイル部の外側に向かって、又は、前記最外層パンケーキコイル部の外側端部から前記最外層パンケーキコイル部の内側に向かって延伸する延伸部をさらに有し、
前記カバーは、前記延伸部を支持する、超電導コイル。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の超電導コイルと、
前記超電導コイルに電気的に接続された永久電流スイッチと、
を備える、超電導装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超電導コイル及び超電導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導線材を巻回して得られる超電導コイルとして、超電導テープを螺旋状に巻回したソレノイドコイルが提案されている(特許文献1参照)。このソレノイドコイルでは、螺旋の端部において、超電導テープの表面と垂直な磁界成分が大きくなる。また、超電導テープを折り返して層を重ねる部分で、超電導テープに折れ曲がりが発生しやすい。そのため、超電導コイルの臨界電流が低下する。
【0003】
一方、超電導テープを径方向に重なるように巻回したいわゆるパンケーキコイルが公知である。複数のパンケーキコイルを軸方向に重ねることで、多層構造の超電導コイルが形成される。
【0004】
複数のパンケーキコイルを積層した超電導コイルでは、隣接する2つのパンケーキコイル同士を電気的に接続するために、パンケーキコイルの外周又は内周に導電性を有する板状の渡り部材が配置される。渡り部材は、パンケーキコイルの軸方向に延伸することで隣接する2つのパンケーキコイルの端部間に架け渡される。渡り部材は、例えば半田等の接合材によってパンケーキコイルに接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半田等の接合材を用いて渡り部材をパンケーキコイルに接合すると、超電導コイルへの通電時に接合材において発熱が起こる。そのため、超電導コイルの冷凍負荷が増大する。また、冷凍機が停止した際の温度上昇の速度が高くなるおそれがある。さらに、超電導コイルを励磁し永久電流モードとした場合の電流減衰も大きくなるおそれがある。
【0007】
またさらに、接合作業(つまり半田付け作業)によって、パンケーキコイルを構成する超電導テープが劣化するおそれがある。また、パンケーキコイルごとに接合作業が必要であるため、製造コストの高止まりの一因となる。
【0008】
本開示の一局面は、渡り部材を使用せずにパンケーキコイル同士を連結できる超電導コイルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、超電導テープと、少なくとも1つのスペーサと、を備える超電導コイルである。超電導テープは、径方向に重なるように巻回されると共に、互いの中心軸が一致するように配置された複数のパンケーキコイル部と、隣接する2つのパンケーキコイル部において、一方のパンケーキコイルの内側端部と、他方のパンケーキコイルの外側端部とを連結する少なくとも1つの連結部と、を有する。少なくとも1つのスペーサは、複数のパンケーキコイル部に挟まれるように配置されると共に、少なくとも1つの連結部を支持する。
【0010】
このような構成によれば、パンケーキコイル部同士が、パンケーキコイルを構成する超電導テープ自身(つまり連結部)で連結される。そのため、渡り部材によるパンケーキコイル間の接続が不要となる。その結果、半田等の接合材が不要となるため、超電導コイルの冷凍負荷の増大が抑制される。また、接合作業が不要となるため、超電導テープの劣化及び超電導コイルの製造コストの増大も抑制される。
【0011】
本開示の一態様では、超電導テープは、高温超電導材で構成された超電導層を有してもよい。このような構成によれば、臨界温度が高く、冷却が容易なパンケーキコイルの多層構造による高温超電導コイルを、渡り部材を用いることなく比較的容易に形成することができる。なお、高温超電導材で構成された超電導層を有する超電導テープは、一般に他の方法(例えばNb3Snのような金属間化合物で構成された超電導線におけるワインド・アンド・リアクト法)でのコイルの形成が困難である。
【0012】
本開示の一態様では、複数のパンケーキコイル部において、超電導テープは、レーストラック状に巻回されてもよい。このような構成によれば、レーストラックの直線部分と曲線部分とで、超電導テープの曲げ方向を変えることができる。そのため、超電導コイルの加工性及び性能を高めることができる。
【0013】
本開示の一態様は、複数のパンケーキコイル部のうち、軸方向の最も外側に位置する最外層パンケーキコイル部の外側に配置されたカバーをさらに備えてもよい。超電導テープは、最外層パンケーキコイル部の内側端部から最外層パンケーキコイル部の外側に向かって、又は、最外層パンケーキコイル部の外側端部から最外層パンケーキコイル部の内側に向かって延伸する延伸部をさらに有してもよい。カバーは、延伸部を支持してもよい。このような構成によれば、超電導コイルの2つの電極をコイルの外周側又は内周側に揃えて配置することができる。その結果、超電導コイルへの回路の接続が容易になる。
【0014】
本開示の一態様では、少なくとも1つのスペーサは、超電導テープよりも伝熱性が高くてもよい。このような構成によれば、スペーサによって超電導テープの熱を外部に伝導することができる。その結果、通電時の超電導コイルの温度を低下させることができる。
【0015】
本開示の別の態様は、上記超電導コイルと、超電導コイルに電気的に接続された永久電流スイッチと、を備える超電導装置である。
このような構成によれば、超電導コイルに対する冷凍負荷を低減しつつ、永久電流モードにおける電流減衰を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態における超電導コイルの模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の超電導コイルの一部の模式的な分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の超電導コイルにおけるパンケーキコイル部の模式的な平面図である。
【
図4】
図4は、
図3とは異なる実施形態のパンケーキコイル部の模式的な平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態における超電導装置の模式図である。
【
図6】
図6Aは、
図1とは異なる実施形態における超電導コイルの模式的な斜視図であり、
図6Bは、
図6Aの超電導コイルの一部の模式的な分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す超電導コイル1は、一定の温度条件下で超電導状態に転移する超電導テープで構成されたソレノイドコイルである。
【0018】
超電導コイル1は、例えば、超電導磁石として使用される。超電導コイル1は、超電導テープ2と、絶縁体2Aと、複数のスペーサ3A,3B,3Cと、複数のカバー4A,4Bと、コア5と、2つの電極6A,6Bとを備える。
【0019】
<超電導テープ>
超電導テープ2は、基材に中間層と超電導層とが積層され、さらにこれらの層が外層で被覆された公知のものである。
【0020】
超電導テープ2の基材は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル合金、銀合金等で形成される。超電導テープ2の中間層は、例えば、酸化セリウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、バリウムジルコニア等で形成される。
【0021】
超電導テープ2の超電導層は、超電導材の薄膜で構成される。超電導材としては、例えば、希土類元素を含むRE系超電導材、ビスマスを含むBi系超電導材、ニオビウム合金、ニオビウムを含む金属間化合物、マグネシウム合金等が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、25K以上の温度で超電導に転移する(つまり、臨界温度が25K以上である)高温超電導材を用いることで、高温超電導コイルが得られる。上記の例では、RE系超電導材、Bi系超電導材及びマグネシウム合金超電導材が高温超電導材に含まれる。
【0023】
超電導テープ2が高温超電導材で構成された超電導層を有することで、臨界温度が高く、冷却が容易なパンケーキコイルの多層構造による高温超電導コイルを、渡り部材を用いることなく比較的容易に形成することができる。
【0024】
超電導テープ2の外層は、超電導層を保護すると共に、超電導層が超電導から常電導に転移した場合において、超電導層の電流をバイパスし安定化するための、導電性の層である。外層は、例えば、銀や銅等で形成される。なお、超電導テープ2は、上記以外の層を有してもよい。
【0025】
超電導テープ2は、第1パンケーキコイル部21A、第2パンケーキコイル部21B、第3パンケーキコイル部21C及び第4パンケーキコイル部21Dと、複数の連結部22(
図2参照)とを有する。複数のパンケーキコイル部21A,21B,21C,21Dと複数の連結部22とは、一本の連続した超電導テープ2によって構成されている。なお、超電導テープ2は、複数のテープを連結して一本の長尺のテープに加工したものであってもよい。
【0026】
(パンケーキコイル部)
複数のパンケーキコイル部21A,21B,21C,21Dは、それぞれ、径方向に重なるように渦巻き状に超電導テープ2が巻回された部位である。パンケーキコイル部21A,21B,21C,21Dは、互いの中心軸が一致するように(つまり同軸上に)、厚み方向に重ねて配置されている。複数のパンケーキコイル部21A,21B,21C,21Dの間には、後述するスペーサ3A,3B,3Cが1つずつ配置されている。
【0027】
各パンケーキコイル部21A,21B,21C,21Dは、
図2に矢印で示すように、巻回方向が同じである。つまり、超電導テープ2は、超電導コイル1において、超電導コイル1の中心軸L1を中心として、一定の方向に巻回されている。
【0028】
図3に示すように、第1パンケーキコイル部21Aは、中心に空隙を有する円盤状である。なお、
図3は、第1パンケーキコイル部21Aを
図1の左側から視た状態を示している。
【0029】
第1パンケーキコイル部21Aにおいて、巻回された超電導テープ2の間には、絶縁体2Aが配置されている。つまり、超電導テープ2は、絶縁体2Aと重ねられた状態で巻回されている。絶縁体2Aは、例えば、巻回された超電導テープ2の間に含浸した樹脂、超電導テープ2に塗布された樹脂、ガラス繊維、樹脂テープ等で形成される。
【0030】
第1パンケーキコイル部21Aの中心の空隙には、後述するコア5が配置されている。第1パンケーキコイル部21Aの形状は特に限定されない。例えば、第1パンケーキコイル部21Aは、
図3のように円型(より具体的には真円型)とすることができる。また、第1パンケーキコイル部21Aは、
図4のように、超電導テープ2がレーストラック状に巻回されたレーストラック型であってもよい。
【0031】
パンケーキコイル部をレーストラック型とすることで、レーストラックの直線部分と曲線部分とで、超電導テープ2の曲げ方向を変えることができる。例えば、直線部分でエッジワイズ方向に超電導テープ2を曲げ、かつ、曲線部分でフラットワイズ方向に超電導テープ2を曲げることで、超電導コイル1の加工性及び性能を高めることができる。
【0032】
残りのパンケーキコイル部21B,21C,21Dは、第1パンケーキコイル部21Aと同じ形状を有する。複数のパンケーキコイル部の大きさ(つまり外径及び内径)は略同じである。
【0033】
なお、超電導コイル1が有するパンケーキコイル部の数は、2以上であれば特に限定されない。ただし、本開示により得られる効果を最大化する観点から、パンケーキコイル部の数は3以上であるとよい。
【0034】
(連結部)
図2に示すように、連結部22は、隣接する2つのパンケーキコイル部(例えば、第1パンケーキコイル部21A及び第2パンケーキコイル部21B)において、一方のパンケーキコイルの内側端部と、他方のパンケーキコイルの外側端部とを連結している。
図2では、第1パンケーキコイル部21Aの内側端部と、第2パンケーキコイル部21Bの外側端部とが、連結部22によって連結されている。
【0035】
連結部22は、複数のパンケーキコイル部21A,21B,21C,21Dを構成している超電導テープ2の一部である。連結部22は、後述する第1スペーサ3Aに設けられた溝に配置されている。連結部22は、第1スペーサ3Aによって、パンケーキコイル部の回転方向と同じ向きに、コア5の外側において弧を描くように引き回されている。複数のパンケーキコイル部21A,21B,21C,21Dと連結部22の繋がり部分(つまり切り替わり部分)では、エッジワイズ方向に超電導テープ2が曲げられている。
【0036】
第2パンケーキコイル部21Bと第3パンケーキコイル部21Cとの間(つまり第2スペーサ3B)、及び第3パンケーキコイル部21Cと第4パンケーキコイル部21Dとの間(つまり第3スペーサ3C)にも、それぞれ、連結部22が配置されている。
【0037】
<スペーサ>
第1スペーサ3A、第2スペーサ3B、及び第3スペーサ3Cは、それぞれ、複数のパンケーキコイル部21A,21B,21C,21Dに挟まれるように配置されている。つまり、複数のパンケーキコイル部の間には、1つずつスペーサ3A,3B,3Cが配置されている。
【0038】
スペーサ3A,3B,3Cは、連結部22をカーブした状態でそれぞれ支持する板状の部材である。本実施形態では、スペーサ3A,3B,3Cは、それぞれパンケーキコイル部と略同じ平面形状を有する円盤である。
【0039】
スペーサ3A,3B,3Cの材質は特に限定されず、金属、樹脂、セラミック等が使用できる。一方で、アルミニウム合金や炭素繊維強化プラスチック等の伝熱性の高い材料でスペーサ3A,3B,3Cを形成することで、スペーサ3A,3B,3Cの伝熱性を超電導テープ2よりも高めることができる。これにより、スペーサ3A,3B,3Cによって超電導テープ2の熱を外部に伝導することができ、通電時の超電導コイル1の温度を低下させることができる。
【0040】
また、ガラス繊維強化プラスチック等の絶縁材料、又は炭素繊維強化プラスチックやニッケル合金等の高電気抵抗率材料でスペーサ3A,3B,3Cを形成することで、スペーサ3A,3B,3Cの発熱が抑制される。これにより、超電導コイル1を励磁消磁する際の温度上昇を抑制することができる。
【0041】
<カバー>
第1カバー4A及び第2カバー4Bは、
図1に示すように、複数のパンケーキコイル部21A,21B,21C,21Dのうち、軸方向の最も外側に位置する最外層パンケーキコイル部(つまり、第1パンケーキコイル部21A及び第4パンケーキコイル部21D)の外側にそれぞれ配置されている。
【0042】
カバー4A,4Bは、スペーサ3A,3B,3Cと同じ形状を有する板状の部材である。また、カバー4A,4Bの材質は、スペーサ3A,3B,3Cと同様に、金属、樹脂、セラミック等が使用できる。カバー4A,4Bの伝熱性は超電導テープ2よりも高いとよい。また、カバー4A,4Bは絶縁性又は高電気抵抗率を有するとよい。
【0043】
<コア>
コア5は、複数のパンケーキコイル部21A,21B,21C,21Dを貫通するように配置された円筒状の部材である。つまり、超電導テープ2は、コア5の外周面に巻回されている。コア5は、例えばガラス繊維プラスチック等の絶縁材料で形成される。
【0044】
<電極>
第1電極6A及び第2電極6Bは、超電導コイル1に回路を接続するための接続端子を構成している。
【0045】
第1電極6Aは、第1パンケーキコイル部21Aの外側端部(つまり超電導コイル1の巻き終わり点)に電気的に接続されると共に、超電導コイル1の外周面に配置されている。第2電極6Bは、第4パンケーキコイル部21Dの内側端部(つまり超電導コイル1の巻き始め点)に電気的に接続されると共に、超電導コイル1の内周面に配置されている。
【0046】
<超電導装置>
図5に示す超電導装置10は、超電導コイル1と、永久電流スイッチ11と、励磁電源12とを備える。
【0047】
超電導装置10では、超電導コイル1の電極6A,6Bに永久電流スイッチ11と励磁電源12とが、それぞれ電気的に接続されている。永久電流スイッチ11を含む回路と、励磁電源12を含む回路とは、独立している。
【0048】
超電導装置10では、まず、永久電流スイッチ11が開の状態で励磁電源12から超電導コイル1に電流が供給される。その後、永久電流スイッチ11を閉とし、励磁電源12からの電流供給を停止することで、超電導装置10は超電導コイル1に電流が長期的に流れる永久電流モードに切り替わる。
【0049】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)パンケーキコイル部同士が、パンケーキコイルを構成する超電導テープ2自身(つまり連結部22)で連結される。そのため、渡り部材によるパンケーキコイル間の接続が不要となる。その結果、半田等の接合材が不要となるため、超電導コイル1の冷凍負荷の増大が抑制される。また、接合作業が不要となるため、超電導テープ2の劣化及び超電導コイル1の製造コストの増大も抑制される。
【0050】
(1b)超電導コイル1を永久電流スイッチ11に電気的に接続した超電導装置10において、超電導コイル1に対する冷凍負荷を低減しつつ、永久電流モードにおける電流減衰を小さくすることができる。
【0051】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
図6Aに示す超電導コイル1Aは、
図1の超電導コイル1において、超電導テープ2に延伸部23(
図6B参照)を追加したものである。
【0052】
延伸部23は、一方の最外層パンケーキコイル部(つまり、第4パンケーキコイル部21D)の内側端部から、この最外層パンケーキコイル部の外側に向かって延伸している。延伸部23は、複数のパンケーキコイル部21A,21B,21C,21Dを構成している超電導テープ2の一部である。
【0053】
延伸部23は、第2カバー4Bに設けられた溝に配置されることで、第2カバー4Bに支持されている。延伸部23は、連結部22と同様に、パンケーキコイル部の回転方向と同じ向きに、コア5の外側において弧を描くように引き回されている。
【0054】
本実施形態では、第2電極6Bは、延伸部23における第4パンケーキコイル部21Dとは反対側の端部(つまり、超電導テープ2の端部)に電気的に接続されると共に、超電導コイル1Aの外周面に配置されている。つまり、本実施形態では、第1電極6Aと第2電極6Bとが共に超電導コイル1Aの外周側に配置されている。
【0055】
なお、延伸部23は、第1パンケーキコイル部21Aの外側端部から第1パンケーキコイル部21Aの内側に向かって延伸してもよい。このような延伸部23は、第1カバー4Aに支持される。この場合には、第1電極6Aが延伸部23の端部に電気的に接続されることで、第1電極6Aと第2電極6Bとが共に超電導コイル1Aの内周側に配置される。
【0056】
[2-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)延伸部23によって、超電導コイル1Aの2つの電極6A,6Bをコイルの外周側又は内周側に揃えて配置することができる。その結果、超電導コイル1Aへの回路の接続が容易になる。
【0057】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0058】
(3a)上記実施形態の超電導コイル1,1Aにおいて、スペーサ3A,3B,3Cの形状は必ずしも円盤でなくてもよい。スペーサ3A,3B,3Cは、連結部22をカーブした状態で支持することができれば、円盤以外の形状であってもよい。また、スペーサ3A,3B,3Cは、複数のパーツから構成されてもよい。
【0059】
(3b)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0060】
1,1A…超電導コイル、2…超電導テープ、2A…絶縁体、
3A,3B,3C…スペーサ、4A,4B…カバー、5…コア、6A,6B…電極、
10…超電導装置、11…永久電流スイッチ、12…励磁電源、
21A,21B,21C,21D…パンケーキコイル部、22…連結部、
23…延伸部、L1…超電導コイルの中心軸。