IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジルテクトラ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許7420478SiCと金属被膜又は電気部品とからなる複合構造から固体層を分離する方法
<>
  • 特許-SiCと金属被膜又は電気部品とからなる複合構造から固体層を分離する方法 図1
  • 特許-SiCと金属被膜又は電気部品とからなる複合構造から固体層を分離する方法 図2
  • 特許-SiCと金属被膜又は電気部品とからなる複合構造から固体層を分離する方法 図3
  • 特許-SiCと金属被膜又は電気部品とからなる複合構造から固体層を分離する方法 図4
  • 特許-SiCと金属被膜又は電気部品とからなる複合構造から固体層を分離する方法 図5
  • 特許-SiCと金属被膜又は電気部品とからなる複合構造から固体層を分離する方法 図6
  • 特許-SiCと金属被膜又は電気部品とからなる複合構造から固体層を分離する方法 図7
  • 特許-SiCと金属被膜又は電気部品とからなる複合構造から固体層を分離する方法 図8
  • 特許-SiCと金属被膜又は電気部品とからなる複合構造から固体層を分離する方法 図9
  • 特許-SiCと金属被膜又は電気部品とからなる複合構造から固体層を分離する方法 図10
  • 特許-SiCと金属被膜又は電気部品とからなる複合構造から固体層を分離する方法 図11
  • 特許-SiCと金属被膜又は電気部品とからなる複合構造から固体層を分離する方法 図12
  • 特許-SiCと金属被膜又は電気部品とからなる複合構造から固体層を分離する方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】SiCと金属被膜又は電気部品とからなる複合構造から固体層を分離する方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/53 20140101AFI20240116BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20240116BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B23K26/53
B23K26/064 Z
H01L21/78 B
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019076128
(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公開番号】P2020015091
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】10 2018 003 675.9
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511153080
【氏名又は名称】ジルテクトラ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【住所又は居所原語表記】Manfred-von-Ardenne-Ring 7,01099 Dresden,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】スヴォボダ,マルコ
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-036062(JP,A)
【文献】特開2009-226457(JP,A)
【文献】特開2007-253156(JP,A)
【文献】特開2015-074002(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0001416(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合構造(83)の内部に改質(9)を生成する方法であって、
前記方法は、前記複合構造(83)を提供又は生成するステップを少なくとも含み、
前記複合構造(83)は、固体(1)と、前記固体(1)の一方側に設置又は提供された少なくとも1つの金属被膜及び/又は電気部品(82)とを有し、他方側に平坦面(8)を形成し、
前記固体(1)は、炭化ケイ素(SiC)を含有するか又は炭化ケイ素(SiC)で形成され、
前記方法は、前記平坦面(8)を介して、レーザ放射(14)を前記固体(1)に導入することにより、前記固体(1)の内部に複数の改質(9)を生成し、複数の線形形状(103)を形成するステップを少なくとも含み、
記レーザ放射(14)は、多光子励起を生じ、
前記多光子励起は、プラズマ生成を引き起こし、
前記複数の改質(9)は、前記プラズマによって有効となり、
記固体(1)内圧縮応力が生成され、
前記固体(1)は、特定の改質(9)の周囲領域に未臨界クラックを成長させ、
前記複数の改質(9)は、前記金属被膜及び/又は前記電気部品(82)から150μm未満の距離に生成され、
前記レーザ放射(14)は、パルスで前記固体(1)内に導入され、
パルスのパルス強度は、特定パルスの開始後10ns以内に、最大パルス強度に達し、
2つの直接隣接する線形形状(103)は、間隔をあけて形成される、
方法。
【請求項2】
各パルスは、前記固体(1)内にエネルギーを導入し、
定パルスの前記エネルギーの最大20%が、前記固体を通じて前記金属被膜及び/又は前記電気部品まで進入する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各パルスの前記プラズマは、前記パルスの開始後、時間x内に生成され、
xは、パルス持続時間yより短く、xは、10ns未満であり、x<0.5×yである、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ビーム品質(M2)は、1.4未満である、
請求項1~3の一項に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザ放射(14)は、9ns未満のパルス持続時間で生成される、
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記最大パルス強度に到達した後のパルスの放射強度は、加熱プロセスを生成するためには、10psの持続時間を有する、
請求項1~5の一項に記載の方法。
【請求項7】
前記レーザ放射(14)は、直線偏光で偏光され、
前記レーザ放射の偏光方向は、前記固体の結晶軸に対して、0°又は90°の固定角度、又は、-20°~20°の角度範囲に配向される、
請求項1~6の一項に記載の方法。
【請求項8】
前記レーザ放射(14)によって前記固体(1)の内部に生成された前記複数の改質(9)の長手延在方向(R)は、前記複数の改質(9)が生成された面(生成面)と結晶格子面(6)と間の交線(10)に対して、0°又は90°の固定角度、又は、-20°~20°の角度範囲で配向される、
請求項1~7の一項に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザ放射(14)は、少なくとも1つの光学要素を介して、前記固体(1)内に導入され、
前記光学要素は、0.4超の開口数(NA)を有し、
前記固体(1)への進入に先立って、前記レーザ放射(14)は、浸漬流体を通じて導かれ、
浸漬流体使用時の前記NAは、1超である、
請求項1~8の一項に記載の方法。
【請求項10】
個々の改質(9)は、前記固体の長手方向(Z)に最大広がりを有し、
前記改質(9)の前記最大広がりは、各場合において、100μm未満である、
請求項1~9の一項に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の線形形状(103)は、複数のスクライブラインであり、
前記未臨界クラックは、前記特定の線形形状(103)の長手延在方向に対して垂直に、150μm未満の平均クラック長を有する、
請求項1~10の一項に記載の方法。
【請求項12】
つの直接隣接する線形形状(103)間の距離は、400μm未満である、
請求項1~11の一項に記載の方法。
【請求項13】
回折光学素子(DOE)は、前記レーザ放射(14)の前記固体(1)への透過の上流の前記レーザ放射(14)の進路内に設置され、前記レーザ放射(14)は、複数の焦点を生成するために、前記DOEにより、複数の光路に分割され、
前記DOEは、50μm以下の像面湾曲を生成し、
前記DOEは、前記固体(1)の材料特性を変更するために、少なくとも2個の焦点を同時に生成する、
請求項1~12の一項に記載の方法。
【請求項14】
複合構造(83)の内部に改質(9)を生成する方法であって、
前記方法は、前記複合構造(83)を提供するステップを少なくとも含み、
前記複合構造(83)は、固体(1)と、前記固体(1)の一方側に設置又は提供された少なくとも1つの金属被膜及び/又は電気部品(82)とを有し、他方側に平坦面(8)を形成し、
前記固体(1)は、炭化ケイ素(SiC)を含有するか又は炭化ケイ素(SiC)で形成され、
前記方法は、前記平坦面(8)を介して、レーザ放射(14)を前記固体(1)に導入することにより、前記固体(1)の内部に複数の改質(9)を生成し、複数の線形形状(103)を形成するステップを少なくとも含み、
記レーザ放射(14)は、多光子励起を生じ、
前記多光子励起は、プラズマ生成を引き起こし、
前記複数の改質(9)は、前記プラズマによって有効となり、
記固体(1)内に圧縮応力が生成され、
前記固体(1)は、特定の改質(9)の周囲領域に未臨界クラックを成長させ、
前記複数の改質(9)は、前記金属被膜及び/又は前記電気部品(82)から150μm未満の距離に生成され、
前記レーザ放射(14)は、パルスで前記固体(1)内に導入され、
前記各パルスは、前記固体(1)内にエネルギーを導入し、特定パルスの前記エネルギーの最大20%が、前記固体(1)を通じて前記金属被膜及び/又は前記電気部品(82)まで進入し、
2つの直接隣接する線形形状(103)は、間隔をあけて形成される、
方法。
【請求項15】
複合構造(83)から少なくとも1つの固体層(2)を分離する方法であって、前記方法は、
請求項1~14の一項に記載の方法を実施するステップと、
前記固体(1)内に応力を生成するため、前記複合構造に外的な力を導入し、及び/又は、前記固体(1)内に内的な力を生成するステップと、
を少なくとも含み、
前記外的な力及び/又は前記内的な力は、前記未臨界クラックのクラック伝搬又は接合が、結果として、分離領域(8)に沿って生じるのに十分な強さである、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
請求項1及び14に係る本発明は、各々、固体の内部に改質を生じる方法に関連し、請求項15に係る本発明は、固体から少なくとも1つの固体層を分離する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
公開DE第102017206178号は、第1配向面と、第1配向面より短く、第1配向面に直交する第2配向面とを備えた円筒形周面と、円形上面とを有した円筒形SiC単結晶インゴットからウェハを製造するウェハ製造方法を開示している。円筒形SiC単結晶インゴットは、第2配向面の方向において、円形上面に直交する垂直軸から傾斜したc軸を有し、c軸に直交するc面と上面との間に形成される偏差角を有する。当該ウェハ製造方法は、c軸が傾斜する方向と第2配向面とが互いに直交するか否かを確認し、c軸が傾斜する方向に直交する加工送り方向を検出する加工送り方向の検出ステップと、レーザビームの焦点を配置し、円形上面から開始して、円筒形SiC単結晶インゴットにおける、製造されるウェハの厚さに対応する深さにおいて強度低減領域を形成するステップとを備え、加工送り方向の検出ステップにおいて検出された加工送り方向において円筒形SiC単結晶インゴットと焦点とが相対的に移動する間、円形上面に平行な改質層と、製造されるウェハの厚さに対応するc面に沿った深さで改質層から延びるクラックとからなる直線状の強度低減領域を形成するために、SiCを[通じて]透過する波長を有するレーザビームを、円筒形SiC単結晶インゴットに照射し、さらに、加工送り方向に直交する方向における所定距離において、強度低減領域の形成ステップを複数回実行することにより、円筒形SiC単結晶インゴットに剥離面を形成する剥離面形成ステップと、剥離面形成ステップ後、境界面として機能する剥離面から、円筒形SiC単結晶インゴットの一部を剥離することにより、円筒形SiC単結晶インゴットからウェハを製造するウェハ製造ステップとを備え、加工送り方向の検出ステップは、レーザビームの前記焦点を位置決めするために走査放射を実行し、円形上面から開始し、円筒形SiC単結晶インゴットの所定深度において、円筒形SiC単結晶インゴットと焦点とを互いに移動しつつ、第2配向面に平行な方向と傾斜した複数の方向とに沿ってSiCを[通じて]透過する波長のレーザビームで円筒形単結晶インゴットを照射し、円筒形SiC単結晶インゴットにおいて、各々が円形上面に平行な改質面とc面に沿って改質層から延びるクラックとからなる、強度を低減した複数の走査直線状領域を形成するために、時計回り方向及び反時計回り方向において各々修正した角度で第2配向面から開始する走査ステップと、撮像手段を使用して、強度を低減した走査直線状領域の各画像を記録し、強度を低減した走査直線状領域の各々に対して単位長さ当たりの、それら画像のうちの1つに存在するノードの数を測定し、測定されるノードの数がゼロである場合に、走査直線状強度低減領域が延びる方向を加工送り方向として判定する判定ステップとを備える。
【0003】
パルスエネルギーは、初期のレーザによるダメージの際、下地材料領域を部分的に透過することが認識されている。しかしながら、これらの領域ではレーザ放射への露出がないか、又は限定的である場合がある。
【0004】
特に、透過した放射エネルギーにより、主に、その金属部品がレーザ放射の大部分を吸収するために、電子部品にダメージを生じることがある。これにより、結果として、中間層と、金属構造自体とにダメージを生じる。例えば、金属の中間層と半導体が所望のダイオード効果を生る、ショットキーバリアダイオードがある。レーザエネルギーによる中間層の変化の結果、部品の欠陥が生じる。
【0005】
この問題は、必要のない下方部分を、いわゆるデバイスウェハ、すなわち、完成及び半完成した電子部品構造を備えたウェハから分離するときに生じる。ひとつには、これにより切削コストが節約される。これは経済的な側面から非常に妥当であり、特に、SiC等の非常に硬度の高い材料において顕著である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、少なくとも1つの金属層及び/又は電気部品を有することになる複合構造からSiC固体部分又は固体層、特に、SiC層をスプリットすることにより、非常に薄い複合構造の作成を可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的は、請求項1に係る複合構造の内部にマイクロクラックを生成する方法により、本発明に従って達成される。本発明の方法は、少なくとも、複合構造を提供又は生成するステップであって、複合構造は、固体と、固体の一方側に設置又は提供される少なくとも1つの金属被膜及び/又は電気部品とを有し、他方側に平坦面を形成し、固体は、炭化ケイ素(SiC)を含有するか、又は炭化ケイ素(SiC)で形成されることが好ましいステップと、固体の内部に改質を生成するステップであって、レーザ放射が平坦面を介して固体内に導入され、レーザ放射は多光子励起を生じ、多光子励起は、プラズマ生成を引き起こし、改質は、材料転換の形態でプラズマによって有効となり、材料転換では固体に圧縮応力が生成され、固体は、特定の改質の周囲領域内に未臨界クラックを成長させるステップとを備えることが好ましい。改質は、金属被膜及び/又は電気部品から150μm未満の距離に生成されることが好ましい。レーザ放射は、パルスで固体内に導入されることが好ましく、パルスのパルス強度は、特定パルスの開始後、10ns以内、特に、8ns、6ns、5ns、4ns、3ns、2ns、1.5ns、又は1ns以内に最大パルス強度に達することが特に好ましい。パルスの開始は、最高パルス強度を1%超過したものとして規定される。パルスが開始した後、最高パルス強度の1%未満に下回る前に、最大パルス強度が達成される場合、パルスの終了は、最高パルス強度の1%未満を下回るものとして規定されることが好ましい。パルス持続時間は、パルス開始とパルス終了との間の時間である。
【0008】
このアプローチは、高強度でプラズマ生成が急速に開始するので有利であり、その結果として、金属層又は電気部品へのレーザ放射の透過が制限又は防止される。従って、金属層又は電気部品に達する放射が少なくなり、引いてはエネルギーが少なくなるので、金属被膜及び/又は電気部品から150μm未満の距離であっても、金属被膜及び/又は電気部品に対するダメージが回避される。
【0009】
このアプローチは、最初に、個別のレーザパルスに亘って非常に精密なエネルギー分布が特定されるので、有利でもある。
【0010】
本アプローチの他の利点として、固体の部分がクラックに起因して分離するため、デバイスウェハとして再び使用されることである。これは、結果として、生産上の著しいゲインとなる。一方、切削による厚さ低減に比較して、生じるツールの摩耗がはるかに少ない。一方、分離対象の固体の部分は、断面に転換されるのでなく、代わりに、固体層又はウェハとして同様に使用されてもよい。
【0011】
金属層は、基本的又は完全に、全面設計を有してもよく、数μm、特に、1μm~100μm、特に、1μm~10μm、数nmまで、特に、1nm~100nm、特に、1nm~10nmの厚さを有する金属ストリップ導体として設計されてもよい。
【0012】
基本的に、本発明に係る固体のレーザ処理では、焦点に光を束ねることが有効となるため、多光子吸収による自由電荷キャリアを生じる。これは、結果として、電子の解放を生じ、これが自由電荷キャリアを表す。従って、既に存在する自由電荷キャリアは、より多くのレーザエネルギーを吸収し、エネルギーは、固体材料に伝達されるので、引いては、より多くの電子が多光子吸収の連続と同時に解放される。これは、結果として、雪崩的な電子密度の急速な増加を生じ、その結果として、電子プラズマが点火され、引いては、SiCの非晶質成分への位相転換を引き起こす高温を生じる。SiCは、従って、Si及びCに転換される。この点に関して、電子プラズマの点火後、レーザ放射の透過が非常に大幅に抑制されることが必須である。これは、プラズマ中の自由電子の吸収、及び/又は、プラズマによる放射の反射及び散乱により生じる。
【0013】
プラズマ点火には、膨張プロセスが含まれ、電子の雪崩を開始するためには、多光子プロセスの臨界強度に達しなければならず、そして電子雪崩が結果としてプラズマの点火を生じる前に、膨張エネルギーを上回るエネルギーが焦点に付与されなければならない。従って、本発明に係るアプローチの結果として、レーザパルスは非常に急激な初期エッジを有することで、可能な限り早く、強度閾値を上回り、プラズマが点火するようにする。
【0014】
「未臨界」とは、クラックが固体を少なくとも2つの部分に分割する前に、クラックの伝搬を終えるか、又は停止することを意味する。未臨界クラックは、固体中、5mm未満、特に、1mm未満、500μm未満、250μm未満、又は100μm未満、伝搬することが好ましい。改質は、例えば、平坦な固体プレートからの分離時、未臨界クラックが同一面、特に、レーザビームが固体を透過する際に通過する固体の面に対して平行又は規定の方法で配向された面において、主に伝搬することが好ましい。不均一な個体からの分離時、未臨界クラックが規定の方法で伝搬することが好ましく、例えば、球状のプライ又は層において、分離領域が規定形状、特に、球状に生じるように、改質を生じることが好ましい。
【0015】
さらに好適な実施形態として、従属項の主題と、以下の説明部分とが挙げられる。
【0016】
本発明の好適な一実施形態によると、各パルスは、エネルギーEを固体内に導入し、プラズマ生成及び/又は既に生成されたマイクロクラックの結果として、特定パルスのエネルギーEの最大20%、特に、最大15%、最大10%、最大5%、最大1%、又は最大0.5%が固体を通じて金属被膜及び/又は電気部品まで透過される。本実施形態は、パルス当たりの最大エネルギー入力の限界が金属層又は金属構造又は電気部品に生じることで、レーザ放射の透過による金属層又は金属構造又は電気部品へのダメージを防ぐため、有利である。電気部品は、例えば、ショットキーバリアダイオードであってもよく、複合構造は、複数のショットキーバリアダイオード、部品、又はその一部を有してもよい。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態によると、各パルスのプラズマは、パルスの開始後、時間x内に生成される。xは、パルス持続時間yより短いことが好ましい。xは、特に、10ns未満、特に7.5ns未満、5ns未満、3ns未満、2ns未満、1ns未満、0.75ns未満、又は0.5ns未満である。追加又は代替として、x<0.5*y、特に、x<0.2*y、x<0.1*y、x<0.05*y、又はx<0.01*yが適用されてもよい。本実施形態は、プラズマが早期に生成されるため、結果として、金属層又は金属構造又は電気部品を保護することとなるので有利である。
【0018】
本発明の他の好適な実施形態によると、ビーム品質(M2)は、1.4未満、特に、1.3未満、1.2未満、又は1.1未満である。本実施形態は、同様に、多光子励起と、引いてはプラズマ生成とが非常に精密に制御可能となるため、有利である。
【0019】
本発明の他の好適な実施形態によると、レーザ放射は、9ns未満、特に、8ns未満、7ns未満、6ns未満、5ns未満、4ns未満、3ns未満、2ns未満、1.8ns未満、1.6ns未満、1.4ns未満、1.1ns未満、0.9ns未満、0.75ns未満、0.6ns未満、0.5ns未満、又は0.4ns未満のパルス持続時間で生成される。
【0020】
本発明の他の好適な実施形態によると、0.9ns~10nsの間のパルス持続時間に対して、10~200nJ/μm2の表面エネルギーが付与され、10ps~1.1nsの間のパルス持続時間に対して、0.1~50nJ/μm2の表面エネルギーが付与され、100fs~11psの間のパルス持続時間に対して、0.01~0.1nJ/μm2の表面エネルギーが提供される。
【0021】
本発明の他の好適な実施形態によると、最大に達した後のパルスの放射強度は、特に加熱処理を生じるために、10ps、特に、少なくとも50ps、少なくとも100ps、500ps、1nsの最短持続時間を有し、放射強度の50%を超えると、25ns、特に、15ns、10ns、7.5ns、5ns、3.5ns、2.5ns、又は2nsの最長持続時間を有する。本実施形態は、熱処理、特に、改質を生じるのに十分な時間があるため、有利である。
【0022】
本発明の他の好適な実施形態によると、レーザ放射は、規定の方法で偏光され、特に直線偏光される。レーザ放射の偏光方向は、固体の結晶軸に対して、規定の角度、特に、0°又は90°の固定角度、又は規定の角度範囲、特に、-20°~20°、-10°~10°、-5°~5°、-1°~1°、70°~110°、80°~100°、85°~95°、89°~91°、又は<30°の角度、<20°の角度、<15°の角度、<10°の角度、又は<5°の角度で配向されることが好ましい。
【0023】
主要面と平行なレーザの偏光中、SiC基板のC側をレーザ加工するには、本構成における主要面と直交するレーザ偏光と比較すると、匹敵するダメージパターンを与えるには、約50%多くのレーザエネルギーを必要とする。円偏光された光を使用すると、直接偏光と反対の偏光器については、測定される透過レーザパワーが1/3少ない。これは、円偏光された光の場合、利用されるレーザエネルギーが線形の理想的な偏光に比べて50%まで明らかに増加しているはずであることを意味する。しかしながら、特に、プロセスの非線形状と、円偏光された光に対するSiCにおける多光子効果に効果的な断面とにより、この差異がさらに小さくなることもある。従って、理想的なレーザ偏光と、互いに対して90°回転したレーザ偏光との双方が回転レーザ偏光の途中で過渡的に掃引されるため、双方の膨張エネルギー間の値もとり得る。しかしながら、多光子効果は、通常、直線偏光された光に対してより有効な断面を有するので、完璧に円偏光された光についてはより高いエネルギーが消費されるはずである。
【0024】
本発明の他の好適な実施形態によると、レーザ放射は、直線偏光、又は楕円偏光、又は円偏光される。本実施形態は、改質が規定のレーザ放射の偏光によって生成されてもよく、未臨界クラックのクラック伝搬が非常に短くなり、特に、場合によっては100μm未満となり、有利である。
【0025】
レーザビームによって固体の内部に生成される改質の長手方向は、特に、改質が生成される面(生成面)と、特に、格子面に生じる架空又は仮想交線との間の架空又は仮想の接続に生じる交線に対して、規定の角度、特に、0°又は90°の固定角度、又は固定の角度範囲、特に、-20°~20°、-10°~10°、-5°~5°、-1°~1°、70°~110°、80°~100°、85°~95°、89°~91°、配向される。
【0026】
平均のクラック長は、1つの面で判定されることが好ましい。すなわち、線形形状の長手方向に対して垂直方向のクラック伝搬が、同一面、線形形状の一方側と他方側とに検出され、改質のためのソリューションで評価又は判定されることが好ましい。
【0027】
固体は、炭化ケイ素を含有してもよく、又は炭化ケイ素で形成されてもよく、特に、ドープされた炭化ケイ素で形成されてもよい。
【0028】
本発明の他の好適な実施形態によると、レーザ放射は、少なくとも1つの光学要素を介して固体内に導入され、光学要素、特にレンズは、0.4超、特に、0.5超、0.6超、0.7超、0.8超、又は0.9超の開口数(NA)を有する。追加又は代替として、固体内への進入に先立ち、レーザ放射は、浸漬流体、特に、浸漬液体を通じて導かれることが好ましく、浸漬流体使用時のNAは、1超、特に、1.1超、1.2超、又は1.3超であることが好ましく、最大数2であることが好ましい。
【0029】
本発明の他の好適な実施形態によると、個々の改質は、固体の縦方向(Z)に最大広がりを有し、改質の最大広がりは、各場合において、100μm、特に、80μm未満、70μm未満、60μm未満、50μm未満、40μm未満、30μm未満、20μm未満、15μm未満、10μm未満、8μm未満、6μm未満、5μm未満、4μm未満、3μm未満、2μm未満、1μm未満、又は0.5μm未満であることが好ましい。固体の延びる方向において、レーザビームが固体を透過する際に通過する第1表面と、金属層及び/又は電気部品が設置又は提供される固体の第2表面とが、互いに離間する。
【0030】
本発明の他の好適な実施形態によると、複数の改質は、1つの線形形状又は複数の線形形状、特に、1つのスクライブライン又は複数のスクライブラインを形成するように生成される。未臨界クラックは、特定の線形形状の長手方向に対して垂直に、150μm未満、特に、120μm未満、110μm未満、90μm未満、75μm未満、60μm未満、50μm未満、40μm未満、30μm未満、又は25μm未満の平均クラック長を有する。
【0031】
本発明の他の好適な実施形態によると、同一の線形形状に含まれ、連続して生成される改質は、(d-x)/d<-0.31、特に、<-0.4であり、x>dである関数によって規定される両者間の距離で生成される。このアプローチは、前述の条件(d-x)/d<-0.31により、同一線形形状の連続生成改質の焦点が、後続の材料転換において、以前に生成された材料転換が結果としてほとんど効果を生じないか、まったく効果を生じない、特に、ほとんど吸収を増加させないか、まったく吸収を増加させないように、互いから十分遠くに離間されることを規定する。これは、改質がこのようにして非常に精密に生成され、その結果として、未臨界クラックがより集中的に伝搬する傾向がさらに良好に制御されるようになるため、有利である。
【0032】
本発明の他の好適な実施形態によると、各場合において、2つの直接隣接する線形形状の間の距離は、400μm未満、特に、300μm未満、250μm未満、200μm未満、150μm未満、100μm未満、75μm未満、50μm未満、40μm未満、30μm未満、25μm未満、20μm未満、15μm未満、又は10μm未満である。
【0033】
本実施形態は、クラックの先端が生じ、固体の残りの部分の露出面と、分離された固体層の露出面とに、特徴的な形状を付与するため、有利である。この特徴的形状は、ジグザグ形状の山部及び/又は谷部を、固体層の側及び/又は固体の残りの部分の側に形成することが好ましい。このことは、結晶面及び/又はすべり面、すなわち好適なクラック面が、レーザ放射の固体への導入時に通過する第1表面に対して傾斜するすべての固体に適用される。
【0034】
本発明の他の好適な実施形態によると、固体中に生成された改質は、レーザの光学システムに対する固体の第1の相対的移動時の第1部分と、レーザの光学システムに対する固体の第2の相対的移動時に生成される第2の部分とで生成される。第1の相対的移動は、第1方向における線形移動であることが好ましく、第2の相対的移動は、第2方向における線形移動であることが好ましく、これらの進路は、互いに平行であることが好ましい。進路全体は、蛇行形状か、又はXYテーブルで生じる横行形状を形成することが好ましい。
【0035】
本発明の他の好適な実施形態によると、回折光学素子(DOE)は、ドナー基板又は固体内へのレーザ放射の透過の上流のレーザ放射路内に設置される。レーザ放射は、複数の焦点を生成するために、DOEで複数の光路に分割される。DOEは、50μm以下、特に、30μm以下、10μm以下、5μm以下、3μm以下、好ましくは200μmを超える長さの像面湾曲を生成し、DOEは、ドナー基板の材料特性を変更するために、少なくとも2個、好ましくは、少なくとも又はちょうど3個、少なくとも又はちょうど4個、少なくとも又はちょうど5個、少なくとも又はちょうど又は最大10個、少なくとも又はちょうど又は最大20個、少なくとも又はちょうど又は最大50個、又は100個までの焦点を同時に生成する。本実施形態は、このプロセスが著しくスピードアップ可能であるため、有利な実施形態である。
【0036】
従って、本発明の範囲内において、回折光学光子(DOE)による高いパワーレベルが焦点面で複数の焦点に亘って分割されることが認識された。DOEは、焦点面の前方においても界面現象を示し、焦点面前方の表面における界面が、深さ加工を行うためのレーザ放射の透過を低減することに加え、表面へのダメージを生じ得る局所的な強度最大化を生じることもあることが認識された。さらに、SiC等の一部の材料は、例えば、材料ドーピング(ドーピングスポットの頻繁な発生)による屈折率及びその他の材料特性(吸収、透過、散乱等)の局所的差異を有することが認識された。さらに、材料の深さにおけるレーザの波先は、レーザ結合面における材料の表面粗さに応じて、著しく損なわれることもあり、焦点の強度が低減され(多光子遷移の可能性がより低くなる)、上述の問題で再び強度がより高くなるであろう。
【0037】
ブルースター角度での固体又はドナー基板上、若しくは、固体又はドナー基板内へのレーザビームの照射は、種々のビーム要素が高度屈折媒体において異なる長さの進路を進行するため、複雑化され、潜在的に要求が厳しくなる。従って、焦点は、より高いエネルギー及び/又はビーム形成によって適合化されなければならない。ビーム形成は、例えば、1つ以上の回折光学素子(DOE)を介して生じることが好ましく、これにより、レーザビームプロファイルに亘ってこの差異が均衡される。ブルースター角度は、比較的大きく、大きな開口数に対しては、光学システムと、その寸法と、加工距離とについて要件を課す。しかしながら、このアプローチは、材料への光強度の結合がより良好であるが故に、表面で低減された反射も表面のダメージ低減に貢献するため、依然として有利である。本発明の意味の範囲内では、レーザビームはまた、本文書に開示の他のすべての実施形態において、ブルースター角度又は略ブルースター角度で照射されてもよい。ブルースター角度の結合に関しては、資料「テクスチャ加工単一結晶シリコン基板上のスピンコートTiO2反射防止膜の光学特性」(Hindawi Publishing Corporation,International Journal of Photoenergy、2015巻、記事ID147836、8頁、http://dx.doi.org/10.1155/2015/147836)を参照する。この資料は、本特許出願の主題について、完全に参照するため、本明細書中に援用する。参照及び援用する文書は、特に、種々の材料の最適な照射角度の計算と、ひいては、屈折率とを開示している。レーザのエネルギ又はレーザ処理装置は、材料の関数としてでなく、むしろ特定角度において可能な透過の関数として適合される。従って、例えば、最適な透過が93%である場合、特定の照射でロスが後に17%となる試験に関連してこれらのロスが考慮に入れられなければならず、これに応じて、レーザパワーが調整されなければならない。
【0038】
例:ある角度で93%の透過に対する83%の直角透過は、深さで同一エネルギーを達成するのに、直角照射に使用されるレーザパワーの89%のみが要求される(0.83/0.93=0.89)ことを意味する。従って。本発明の意味の範囲内において、斜め放射の部分では、結果として、表面反射による光のロスが少なくなり、深さへの光の導入が多くなる。特定の構成において生じる可能性のある1つの2次的問題として、深さにおける焦点が「歪曲」プロファイルを取得するものであり、従って、達成される強度、すなわち多光子加工について可変キーがより低くなり、場合によっては、すべてのビーム要素が材料の同一光学進路を通じて進行する直角放射よりも低くなる。これは、これらの追加進路及び/又は個々のビームへの影響、特に、ビームプロファイルに亘って特定の異なる球状収差に貢献するビーム進路において、回折光学素子の結果として、又は、複数の回折素子、若しくは連続くさび又は複数の連続くさび、及び/又は、その他の光学要素により、発生することが好ましい。これらのDOEは、好適なソフトウェアソリューション(例えば、Lighttrans,Jenaより入手されるVirtuallab)を使用して数値計算が可能であり、その後、材料を完成又は提供することができる。
【0039】
本発明の他の好適な実施形態によると、以下のパラメータが設定される。すなわち、NA>0.6、10nsより速い速度での1%から最大パルス強度への強度増加、2つの線形形状間の距離が100μm未満であること、ビーム品質が1.4未満であること、ダメージ深さ(金属層又は金属構造又は電気部品までの距離)が115μm未満であること、2つの隣接する改質間の点間距離が5μmであること、1064nmのレーザであること、5~20μジュール/パルスのレーザパルスエネルギーであること、ドーピングが10~50ミリオーム/cmであることである。このSiCのための設定が非常に有利な結果をもたらすことが示されている。
【0040】
前述の目的も、請求項14に係る複合構造の内部にマイクロクラックを生成する方法により、本発明に従って達成される。当該方法は、少なくとも、複合構造を提供するステップであって、複合構造は、固体と、固体の一方側に設置又は提供される少なくとも1つの金属被膜及び/又は電気部品とを有し、他方側に平坦面を形成し、固体は、炭化ケイ素(SiC)を含有するか、又は炭化ケイ素(SiC)で形成されるステップと、固体の内部に改質を生成するステップであって、レーザ放射は、平坦面を介して固体内に導入され、レーザ放射は、多光子励起を生じ、多光子励起は、プラズマ生成を引き起こし、改質は、材料転換の形態でプラズマによって有効となり、材料転換では、固体内に圧縮応力が生成され、固体は、特定改質の周囲領域に未臨界クラックを成長させ、改質は、金属被膜及び/又は電気部品から150μm未満の距離に生成され、レーザ放射は、パルスで固体内に導入されるステップとを備えることが好ましい。
【0041】
固体内に連結される各レーザパルスは、固体内にエネルギーEを導入することが好ましく、プラズマ生成及び/又は既に生成されたマイクロクラックの結果として、特定パルスのエネルギーEの最大20%、最大15%、最大10%、最大5%、最大1%、又は最大0.5%が、固体を通じて金属被膜及び/又は電気部品まで進入する。
【0042】
追加又は代替として、本発明は、複合構造の内部にマイクロクラックを生成する方法に関連してもよい。この方法は、少なくとも、以下のステップを備えることが好ましい。すなわち、複合構造を提供するステップであって、複合構造は、固体と、固体の一方側に設置又は提供される少なくとも1つの金属被膜及び/又は電気部品とを有し、他方側に平坦面を形成するステップである。レーザ放射を固体内に透過する際に通過する、好ましくは平坦な面又は表面は、第1表面又は主要面とされることが好ましい。第1表面から一定距離で、且つ、好ましくは第1表面と平行に設置され、金属層及び/又は電気部品が設置又は生成される面は、第2表面とされることが好ましい。固体は、炭化ケイ素(SiC)を含有するか、又は炭化ケイ素(SiC)で形成される。また、固体の内部に改質を生成するステップであって、レーザ放射が平坦面を介して固体内に導入され、レーザ放射は、多光子励起を生じ、多光子励起は、プラズマ生成を引き起こし、改質は、材料転換の形態でプラズマによって有効となり、材料転換では、固体内に圧縮応力が生成され、固体は、特定の改質の周囲領域に未臨界クラックを成長させ、改質は、金属被膜及び/又は電気部品から150μm未満の距離に生成されるステップである。
【0043】
レーザ放射は、パルスで、固体内に導入されることが好ましい。各パルスのプラズマは、パルスの開始後、時間x以内に生成されることが好ましい。xは、パルス持続時間yより短いことが好ましい。xは、10ns未満、特に、5ns未満、3ns未満、2ns未満、1.5ns未満、1ns未満、0.8ns未満、又は0.5ns未満であることが特に好ましい。さらに、x<0.5*y、特に、x<0.2*y、x<0.1*y、x<0.05*y、又はx<0.01*yが適用されることが好ましい。
【0044】
本発明はさらに、複合構造から少なくとも1つの固体層を分離する方法に関連する。当該方法は、少なくとも、複合構造の内部にマイクロクラックを生成する、本発明に係る方法を実施するステップと、固体内に応力を生成するために、複合構造内、特に、固体内に外的な力を導入するステップと、及び/又は、固体内に内的な力を生成するステップとを備え、外的な力及び/又は内的な力は、未臨界クラックのクラック伝搬又は接合が、結果として、分離領域に沿って生じるのに十分な強さであることが好ましい。
【0045】
本発明は、さらに、特に、固体から少なくとも1つの固体層を分離するために、少なくとも1つの固体層を生成する方法に関連する。当該方法は、少なくとも、本明細書に記載の方法、特に、複合構造の内部にマイクロクラックを生成する方法を実施するステップと、固体内に応力を生成するために、固体内に外的な力を導入するステップと、及び/又は、固体内に内的な力を生成するステップとを備え、外的な力及び/又は内的な力は、未臨界クラックのクラック伝搬又は接合が、結果として、分離領域に沿って生じるのに十分な強さであることが好ましい。
【0046】
本発明の他の好適な実施形態によると、外的な力を導入するために、受容層は、分離対象の固体層の露出面に設けられ、受容層は、ポリマー材料、特に、PDMSを含み、固体内に特定の機械的応力を生成するために、受容層には加熱効果が施され、加熱効果は、周辺温度を下回る温度、特に、0℃を下回る温度、-10℃下回る温度、又は-20℃~-200℃の温度まで受容層を冷却することを表し、冷却は、受容層のポリマー材料がガラス転移するように行われ、クラックは、応力の結果として、固体から第1の固体層を分離する分離領域に沿って伝搬し、及び/又は、外的な力を導入するように、固体には音、特に、超音波が作用し、及び/又は、外的な力が導入するように、固体の周面に加熱効果が施され、及び/又は、分離面のレベルで加工を行い、及び/又は、外的な力を生成するために、固体層を分離する単一クラックに未臨界クラックを接合させる多数の改質が、固体の内部に生成される。
【0047】
本発明はさらに、特に、本明細書に記載の方法に係る方法で生成される固体層に関連する。ウェハの固体層は、SiCを含有するか、又はSiCで形成されることが好ましい。固体層は、表面を形成することが好ましく、表面は、トポグラフィを形成し、トポグラフィは、長尺ジグザグ形状又は波形の山部を有し、長尺ジグザグ形状又は波形の山部の大部分は、各場合において、特に、結晶格子に平行で、且つ、表面に平行な方向から異なる1つ又は複数の方向において、2°~30°の間の角度、特に、3°~15°、特に、4°~9°の角度で互いに傾斜して、全体に亘って延び、ジグザグ形状又は波形の山部の平均高さ又は表面の最も深い箇所に対するジグザグ形状又は波形の山部の最大の高さが、100μm未満であり、特に、75μm未満、50μm、又は30μmである。最も深い箇所は、固体層の縁部又はウェハから少なくとも1mm、又は少なくとも5mm、又は少なくとも10mmの距離に設置された箇所のみであると考慮されることが好ましい。固体層は、SiCインゴット又はSiCブールから分離されたウェハ又は、薄膜化複合構造であることが好ましく、複合構造のSiC固体部分は、スプリット、分割、又は分離されているか、複合構造から分離された固体層であり、複合構造のSiC固体部分は、スプリット、分割、又は分離されている。
【0048】
複合構造は、少なくとも1つの固体又は1つのドナー基板を有し、固体又はドナー基板は、SiCを含有するか、又はSiCで形成される。また、複合構造は、少なくとも1つの金属層及び/又は電気部品を有する。
【0049】
このアプローチは、その表面構造がクラックの無制御伝搬を低減又は防止する複合構造及び固体層が生成されるため、有利である。
【0050】
追加又は代替として、前述の目的は、固体の内部に改質を生成する方法によって達成されてもよく、この方法は、少なくとも、以下のステップを備えることが好ましい。すなわち、固体の第1表面を介して、固体の内部にレーザのレーザ放射を導入するステップであって、固体は、結晶構造を形成し、SiCで形成されることが好ましく、レーザ放射は、分離面を特定するために、固体の内部において、生成面上の所定の箇所に改質を生成し、各改質のレーザ放射は、固体を改質するために、プラズマの調整を引き起こし、プラズマは、改質生成期間中、存在し続け、レーザパルスが始まるときに開始し、プラズマの調整直前まで、レーザ放射が少なくとも部分的に固体を通過する透過期間が存在し、プラズマの調整は、プラズマ調整期間内に生じ、プラズマに作用するレーザ放射は、少なくとも大部分が、好ましくは完全に、プラズマによって吸収及び/又は反射及び/又は散乱され、改質生成期間、透過期間、プラズマ調整期間、特にプラズマの点火及び加熱を含む時間全体が、改質生成時のレーザ放射のパルス持続時間の少なくとも70%に対応し、パルス持続時間は、100ns未満であり、レーザ放射では、焦点において規定された放射強度を生成し、結果として、規定の電子密度を生じ、改質生成期間内の焦点における電子密度は、所定の閾値を超過し、改質生成期間は、70nsより短いステップである。改質生成期間は、4nsより短く、特に、3ns、2ns、又は1nsより短いことが好ましい。
【0051】
本発明のさらなる利点、目的、及び特性は、本発明に係る分離方法の例を示す、以下の添付の図面に関する説明に基づいて説明される。本発明に係る方法で使用されることが好ましく、及び/又は、図面中で、関数に関して少なくとも略合致する構成要素又は要素については、同一の参照符号で示されることがあるが、これらの構成要素又は要素は、必ずしもすべての図中において数字で示され、説明される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1図1aは、スクライブラインと偏光レーザの放射の関係を示す第1の模式図である。図1bは、スクライブラインと偏光レーザの放射の関係を示す第2の模式図である。
図2図2a~図2eは、異なる偏光を示す種々の例示を示す。
図3図3aは、スクライブライン及び偏光レーザの放射の関係を示す第3の模式図である。図3bは、スクライブライン及び偏光レーザの放射の関係を示す第4の模式図である。
図4図4aは、縦軸に対して90°でない角度で配向された結晶格子面を備えたドナー基板と、生成されたレーザスクライブラインとを示す。図4bは、金属層及び/又は電気部品の追加された、図4aから既知の固体を示す。
図5図5は、縦軸に対して90°以外の角度で配向された結晶格子面を備える他のドナー基板と、生成されたレーザスクライブラインとを示しており、レーザスクライブラインの配向又は線形形状は、面によって規定される。
図6図6は、線形形状の改質が複数の異なる結晶格子面と交差することを示す。
図7図7は、4H-SiCのすべり面を有する結晶格子の一例を示す。
図8図8aは、Siのすべり面110を有する結晶格子の一例を示す。図8bは、Siのすべり面100を有する結晶格子の一例を示す。図8cは、Siのすべり面111を有する結晶格子の一例を示す。
図9図9aは、式(d-x)/xの理論的関係を示す模式図である。図9bは、本発明に係る方法を使用して分離された固体層の固体面の一般的な表面構造を示す。図9cは、異なって規定されたパラメータの結果として生成されたスクライブラインの図を示す。図9dは、種々のジグザグ線を示す。
図10図10a~cは、レーザビーム特性を変更する光学手段を示す。
図11図11は、時間の関数としてのレーザパルスの放射強度の曲線を模式的に示す。
図12図12は、レーザパルス時の焦点における電子密度を模式的に示す。
図13図13は、時間の関数として、特に、頂上部ヘッドプロファイルにおける理想的なレーザパルスの放射強度の曲線を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1aは、処理中、特に、固体1の内部における改質9の生成中の、固体1の模式図を示す。改質9は、多光子励起によって生成される、固体材料、特に、SiCの相転移を表している。同図によると、改質9は、互いに離間するように生成される。このアプローチは、既に生成された改質9によるレーザビームの吸収への影響に全く変化がないか、又は顕著でない変化しかないという利点がある。改質9は、線形形状又はスクライブライン103の形態で生成されることが好ましい。スクライブライン103は、直線として設計されることが好ましい。同図によると、スクライブライン103は、交線10に平行に配向されることが好ましい。交線10は、生成面4と結晶格子面6との間の接続の結果として生じることが好ましい(図4を参照のこと)。同図によると、改質9は、常に、同一方向に配向されることも明らかである。結果として、レーザ放射は、規定の方法で偏光される。そこで、図1aによると、第1偏光が使用されており、図1bによると、異なる偏光が使用されている。異なるダメージパターンも、異なる偏光の結果として生じることが好ましい。
【0054】
図2a~図2eは、異なって偏光されたレーザ放射を示すいくつかの例を示している。図2aの例は、図1aの例に対応しており、図2bの例は、図1bの例に対応している。
【0055】
また、複数又はすべてのスクライブライン103に対する偏光は、スクライブライン103の長手方向に対して規定の角度を形成するように設定されてもよい。この角度は、0°~90°、好ましくは5°~85°、特に、15°~75°、特に30°~60°、特に40°~50°、又は45°、又は約45°であることが好ましくてもよい。これは、例えば、図2c~図2eに示される。
【0056】
図2dは、異なるスクライブライン103の改質9が異なって配向されてもよいことを示している。特定箇所又は特定点におけるスクライブラインの改質9を、規定の方法で異なって偏光することもできる。
【0057】
図2eは、2つ超、特に、3つ以上の異なって偏光されたスクライブライン103が生成される変形例を示している。
【0058】
線形形状の個々の又は複数の改質、又は、改質の大部分の各配向Rが互いに異なることも考えられる。改質の各配向Rは、特に、曲線的又は螺旋的な線形形状で互いに異なってもよい。従って、改質の配向Rは、例えば、連続的に、ステップで、又はブロックで変化してもよく、1つのブロックは、複数の、特に、2~200、2~100、又は2~50の改質から成ることが好ましい。
【0059】
図3aは、スクライブラインが交線10に対して傾斜してもよいことを示している。スクライブの方向に対する偏光の配向に応じて、生成される改質9は、交線10に対して傾斜した配向を有してもよい。図3bは、改質が交線10に対して90°の配向で生成されてもよく、スクライブラインは、交線10に対して傾斜するか、平面内において回転されることを示している。
【0060】
図4aは、少なくとも1つのレーザ焦点の領域において固体1の材料特性を変化させるために、レーザのレーザ放射14(図10cを参照のこと)が固体1の内部に主要面8を介して導入され、レーザ焦点は、レーザによって発射されるレーザビームで形成されることを模式的に示している。材料特性の変化は、ドナー基板1内へのレーザ放射の透過部位を変化させることにより、線形形状103を形成し、材料特性の変化は、少なくとも1つの、特に同一の生成面4上に生成される。ドナー基板1の結晶格子面6は、特に、生成面4に対して、0.1°~9°、好ましくは2°、4°、又は8°の角度で傾斜する。線形形状103又はスクライブラインは、生成面4と結晶格子面6との間の接続に結果として生じる交線10に対して傾斜する。材料特性の変化の結果として、ドナー基板1は、未臨界クラックの形態でクラックを成長させる。未臨界クラックを接合するために、ドナー基板1に外的な力を導入することにより、固体層2を分離するステップは図示されていない。代替として、未臨界クラックを接合し、固体層2がドナー基板1から分離するレーザ放射により、生成面4上の材料を十分に変化させてもよい。生産面4は、主要面8と平行であることが好ましい。固体又はドナー基板1又は複合構造は、固体又はドナー基板1又は複合構造の他方側に第2表面を形成する。
【0061】
加工は、線形形状103又はスクライブライン又は規定の空間間隔で個々のレーザショットを適用することによって形成されるラインを生成する形態で生じる。
【0062】
特に、炭化ケイ素、特に、>0°(業界標準は、主軸の方向周りに4°又は8°)の結晶軸におけるオフ角度で、ドーピングの有無を問わず、00001面を有したポリタイプ4Hの炭化ケイ素で形成されたウェハを生成することができる。六方晶構造のすべり面が0001面に平行に延びるため、ウェハ表面は後にそれらに対してオフ角度、傾斜するので、ウェハ表面の0001結晶面の直線状の交線が結果として生じる。
【0063】
従って、新規の方法の基本的な基礎的コンセプトは、レーザライン103の加工方向がこれらの直線状交線の方向とは異なることである。同様に、加工方向は、結晶の主要方向の1つに沿って、又は、結晶表面を備えた結晶の好適なすべり面の交線に沿って延びないことが好ましいはずである。
【0064】
さらに、例えば、ポリタイプ4H炭化ケイ素で形成されたウェハの作成が可能である。ポリタイプ4H炭化ケイ素は、0001面にウルツ鉱構造及び6回対称を備えた六方晶系を有する。従って、結晶の新たな主軸は、60°毎に存在する。加工レーザが加工対象の材料片に透過される際に通過する表面が0001面に沿って切断されるとき、6回対称は、表面法線周りの回転に際し、再び現れる。そしてラインスクライブ方向は、結果として、各主軸に対して30°回転され、引いては2つの主軸間に配向される。これにより、スクライブラインが結晶の単位セルに交差することが好ましいことと、かなり大きな領域を包囲し、且つ、一度に複数の単位セルを含むクラックの形成がより複雑となることとが確実となる。ポリタイプ4H炭化ケイ素は、後続の加工におけるエピタキシステップを簡易化するために、0001面に対して4°のオフ角度で切断されることが多い。互いに対する結晶の主軸の突出が依然として仮想的に60°であること、またこの理由として、30°±3°は、本発明に係る加工に好適なスクライブ角度であることは明らかである。
【0065】
また、例えば、立方晶SiC(いわゆる3C)からウェハを生成することができる。立方晶SiCは、立方晶結晶系の挙動を有するため、好適なすべり面として111面を有し、結果として、22.5°±3°の好適なラインスクライブ方向が得られる。
【0066】
また、例えば、0°の結晶軸のオフ角度において、ドーピングの有無を問わず、100表面を有するシリコンウェハを生成することもできる。
【0067】
その立方晶構造(ダイアモンド構造)を備えた、シリコンに好適なすべり面は、結晶主軸に対して45°の角度でウェハ表面に交差する111面である。これは、結果として、互いに対して45°配向された、結晶の軸と、ウェハ平面を備えたすべり面の交線の主軸とに対して、22.5°±3°の所望のラインスクライブ角度が得られる。
【0068】
シリコン基板は、オフ角度で切断されてもよいため、再び、異なる加工角度がここでは好適であってもよい。基板の表面において主軸に対して或る角度で傾きがあるとき、この傾きが故に、4回対称から2回対称まで対称が壊れる。そして、主軸への射影長(主軸に対する傾きがない)は、cos(a)に比例し、結果として、主軸と平面を備えたすべり面の直線状の交線との間の理想的な角度に変化が生じる。この対称が壊れることによって可能となる2つのラインスクライブ角度bは、b1=tan-1(cos a)/2又はb2=tan-1(1/cos a)/2のいずれかとなる。
【0069】
0001面における6回対称を備えた六方晶ウルツ鉱構造を有し、好適なすべり面が00001面である窒化ガリウムについて、結晶の主軸について結果として得られる60°の角度は、結果として、主軸に対して、30°±3°の好適なライン方向が得られる。
【0070】
サファイヤ、すなわち、0001面に6回結晶対称を備えた六方コランダム構造を有する酸化アルミニウムについては、結晶の主軸について結果として得られる60°の角度が、結果として、いわゆるC面サファイヤの主軸に対して30°±3°の好適な線形方向が得られる。
【0071】
A面カットサファイヤについては、主軸配向は、180°対称で90°の角度であり、結果として、45°±3°の好適なラインスクライブ角度が得られる。
【0072】
サファイヤのC面基板は、表面に6回対称が現れ、この表面が、すべり面に合致するように切断され、すなわち、30°±3°の角度が好ましい。
【0073】
M面切断サファイヤについては、主軸配向が、180°対称で90°の角度であり、結果として、45°±3の好適なラインスクライブ角度が得られる。
【0074】
R面サファイヤは、回転対称を有さないものの、すべり面の直線の突出線に対して45°の主軸投影を有し、ここでも同様に、22.5°±3°のスクライブ方向が好適となる。
【0075】
タンタル酸リチウムは、六方晶系に関連の三斜晶構造を有するが、結果として、基板の配向に応じて、個々の主軸とそれらの基板表面への投影に対して、10°±3°~45°±3°のスクライブ方向が得られる。
【0076】
ガリウムひ素は、100平面内に4回結晶対称を備えたスファレライト構造を有し、その好適なすべり面は111面であるが、結晶の主軸について結果として得られる90°の角度は、結果として、100表面を備えた基板又はドナー基板1の主軸に対して22.5°±3°の好適な線方向が得られる。
【0077】
酸化ガリウムは、100平面内に4回結晶対称を備えた立方単斜構造を有し、その好適なすべり面は111面であるが、結晶の主軸について結果として得られる90°の角度により、結果として100表面を備える基板の主軸に対して22.5°±3°の好適な線方向が得られる。
【0078】
ゲルマニウムは、100平面内に4回結晶対称を備えたダイアモンド構造を有し、その好適なすべり面は111面であるが、結晶の主軸について結果として得られる90°の角度により、結果として、100表面を備える基板の主軸に対して22.5°±3°の好適な線方向が得られる。
【0079】
リン化インジウムは、100平面内に4回結晶対称を備えたスファレライト構造を有し、その好適なすべり面は111面であるが、結晶の主軸について結果として得られる90°の角度により、結果として、100表面を備える基板の主軸に対して22.5°±3°の好適な線方向を得られる。
【0080】
イットリウム-アルミニウムガーネットは、100平面内に4回結晶対称を備えた立方晶構造を有し、その好適なすべり面は111面であるが、結晶の主軸について結果として得られる90°の角度により、結果として、100表面を備える基板の主軸に対して、22.5°±3°の好適な線方向が得られる。
【0081】
図4bは、改質9が金属層及び/又は電気部品82から非常に近く、特に、150μm未満に生成される様子を示している。レーザ放射は、第1表面8を介して固体1内に導入されることが好ましい。非常に少量の特定のレーザパルスのエネルギーのみが金属層又は電気部品に到達することが重要である。改質9が金属層82に近接しているため、材料転換に要求されるプラズマが非常に短時間内に生成されるようなレーザパラメータが選択される。プラズマは、レーザ放射を部分的に吸収し、且つ、部分的に反射する特性を有するため、金属層及び/又は電気部品82に透過されるエネルギーの量を著しく低減する。従って、改質9は、金属層及び/又は電気部品82の非常に近くに生成されてもよい。参照符号83は、固体1と、金属層及び/又は電気部品を全体と示しており、これらは複合構造と称される。
【0082】
図5は、ドナー基板1から少なくとも1つの固体層2を分離するための本発明に係る方法の重要なステップと、スクライブライン103の配向又は線形形状の配向の幾何学的ずれとを示している。
【0083】
同図によると、本発明に係る方法は、追加又は代替として、以下のステップを備えてもよい。すなわち、ドナー基板1を提供するステップであって、ドナー基板1は、平坦部主要面8に対して傾斜した結晶格子面6を有し、主要面8は、ドナー基板1の縦方向の一方側においてドナー基板1の境界を定め、結晶格子面法線60は、主要面法線80に対して第1方向に傾斜するステップと、少なくとも1つのレーザ29を提供するステップと、少なくとも1つのレーザ焦点の領域における固体の材料特性を変更するために、主要面8を介して固体又はドナー基板1の内部にレーザのレーザ放射14を導入するステップであって、レーザ焦点は、レーザより射出されるレーザビームによって形成され、材料特性の変化により、ドナー基板1内のレーザ放射の透過部位を変更することで、線形形状を形成し、線形形状は、少なくとも部分的に、直線として延びることが好ましく、線形形状は、特に、少なくとも直線として延びる部分が、主要面8と平行に形成され、第1方向に対して90°とは異なる角度で傾斜する第2方向に延び、ドナー基板1は、材料特性の変更により、未臨界クラックの形態でクラックを成長させるステップと、未臨界クラックを接合するためにドナー基板に外的な力を導入するか、又は、未臨界クラックの接合で、固体層がドナー基板から分離されるレーザ放射により、生成面上に十分な材料を変更させることにより、固体層を分離するステップとを備える。主要面は、分離された固体層2の構成要素であることが好ましい。
【0084】
第2方向は、第1方向に対して45°~87°の角度範囲、特に、70°~80°の角度範囲、好ましくは76°傾斜していることが好ましい。
【0085】
図6は、線形形状103又はスクライブラインが、結晶格子面の端部に対して、又は、図5に示される通り、生成面4と結晶格子面6との間の接続の結果として生じる交線10又は直線状交線に対して、傾斜していることを示している。この配向の結果として、クラックの成長は、結晶格子面6(特に、すべり面)の方向に限定される。従って、各スクライブラインの改質9は、同一の結晶格子面6内に生成されない。例えば、各スクライブライン103に対する改質の最初の1~5%は、僅かのみ、特に、基板の縦方向Lにおける同一のスクライブライン103の改質の最後の1~5%の結晶格子面に対して75%未満、50%未満、25%未満、10%未満切断されるか、又は全く切断されなくてもよい。特に、改質9aが結晶格子面6a~6cを切断し、改質9bが結晶格子面6a、6d、及び6eを切断するというこの関係が、模式的に示されている。そこで、2つの改質9a及び9bは、同一の線形形状103又はスクライブラインの構成要素であるものの、異なる結晶格子面を切断する。さらに、例えば、改質9c及び9dは、改質aとは異なる、特に、大部分が異なるか、又は完全に異なる結晶格子面を切断することが好ましい。
【0086】
主要面8上で終わる結晶格子面6の端部7は、顕微鏡断面図において、鋸歯型を形成することが好ましい。
【0087】
個々の結晶格子面6は、縦軸Lに対して、0.1°~10°、特に、2°~9°、例えば、4°~8°の角度で傾斜することが好ましい。ドナー基板1の個々の結晶格子面は、互いに平行に配向されることが好ましい。
【0088】
図7は、4H-SiCのためのすべり面を有する結晶格子の例を示している。図8aは、Siのためのすべり面110を有する結晶格子の例を示している。図8bは、Siのためのすべり面100を有する結晶格子の例を示している。図8cは、Siのためのすべり面111を有する結晶格子の例を示している。
【0089】
結晶格子面6は、特定種別のすべり面であることが好ましい。結晶構造が、面心立方晶である場合、すべり面は、プレーン{111}であることが好ましく、すべり方向は、方向<110>である。結晶構造が体心立方晶である場合、すべり面は、面{110}であることが好ましく、すべり方向は、方向<111>であるか、又はすべり面は、面{112}であることが好ましく、すべり方向は、方向<111>であるか、又はすべり面は、{123}であることが好ましく、すべり方向は、方向<111>である。結晶構造が六方晶である場合、すべり面は、{0001}であることが好ましく、すべり方向は、方向<1120>であるか、又はすべり面は、平面{1010}であることが好ましく、すべり方向は、方向<1120>であるか、又はすべり面は、{1011}であることが好ましく、すべり方向は、方向<1120>である。
【0090】
図9aは、条件(d-x)/d<yであり、yは、-0.31、又は0.31未満、0.35未満、又は0.4未満であることが好ましい理論的根拠を示している。さらに、式「d=1.22λ/NA-回折制限焦点サイズ」が適用されることが好ましい。xは、線形形状において連続して生成される点間の距離、又は、2つの焦点の中心間の距離であることが好ましい。また、x>dが適用されることが好ましい。本発明によると、0.5超、0.6超、0.65超、0.7超、0.75超、0.8超、又は0.85超の開口数が使用されることが好ましい。
【0091】
図9bは、固体から分離された固体層の、分離ステップで露出された表面200を示している。表面200は、長尺ジグザグ形状を備えたトポグラフィを有する。長尺ジグザグ形状山部は、大部分が、また各場合においては全体として、結晶格子面と平行で、且つ、表面と平行な方向とは異なり、特にそれに対して2°~30°、特に、3°~15°、特に、4°~9°の角度傾斜した1つの方向又は複数の方向204に延びる。ジグザグ形状山部の平均高さ又はジグザグ形状山部の、特に、表面の最も深い箇所に対する最大高さは、100μm未満、特に、75μ未満、50μm未満、又は30μm未満であることが好ましい。
【0092】
ゼロでない主要平坦部に対するスクライブラインの角度にて、均一なクラックパターン又は光学密度、すなわち相転移/レーザ改質を生じるためのレーザエネルギ閾値は、横断方向の関数であるため、このレーザエネルギーを特定の加工方向に適合することが有利である。これは、図11cに示されており、図中、加工のために蛇行進行が実施され、1つ置きのライン210(加工方向1)が各隣接のライン212(加工方向2)とは異なる改質強度を有している。従って、可能な限り均一なダメージパターンを提供し、引いては、各ラインの横断においてクラック形成が等しい確率で得られるようにするために、ラインが弱いほど、これに対応して高いレーザエネルギーに適合されるであろう。
【0093】
図9dは、4つの異なるジグザグ形状線(1)~(4)を示している。これらの線は、山部202又は窪みが有してもよい[形状の]例を模式的に特定している。山部202又は窪みは、区間ごとに、均一又は略均一に繰り返されてもよい。均一に繰り返されるジグザグパターンは、パターン(1)及び(2)で示されている。山部及び窪みは、常に、第1方向に延びる第1構成要素と、第2方向に延びる第2構成要素とを有することが好ましい。これらの構成要素は、方向204に沿って、特に、スクライブ方向に沿って、又は、線形形状の改質が生成される方向に沿って反復されることが好ましい。しかしながら、第1構成要素は、「ジグザグの各方向について」又は「個々のジグザグの方向」について、平均的な長さに比較して、より長い距離、又は、より短い距離、延びるものとすることもできる。しかしながら、追加又は代替として、第2構成要素は、「ジグザグの各方向について」又は「個々のジグザグの方向」について、平均的な長さに比較して、より長い距離、又は、より短い距離、延びるものとすることができる。第1方向は、ジグザグの各方向について、0°~45°の角度範囲で、特に、0°~20°又は0°~5°の角度範囲で変化することが好ましくてもよい。追加又は代替として、第2方向は、ジグザグの各方向について、0°~45°、特に、0°~20°又は0°~5°の角度範囲で変化することが好ましくてもよい。例(3)及び(4)は、可変長構成要素及び角度を備えたクラックパターンを示している。
【0094】
図10aは、焦点5700[sic、5701]が固体1内に形成される際に仲介される入射光円錐5700を示している。同図は、ガウスビームプロファイルを有するレーザで照射されたレンズの焦点画像を示している。
【0095】
図10bは、例えば、SLMによってビームが補正された後に、非ガウスビームプロファイルを有するレーザで照射されたレンズの焦点画像5702を模式的に表している。空間光変調器(SLM)は、光のための空間変調器、ひいては、空間変調を光に適用する際に仲介される装置である。焦点のZ広がりは、ガウスビームプロファイルと比較して大幅に低減されるか、又は低減可能である。
【0096】
図10cは、例えば、回折光学素子(DOE)によってビームが補正された後に、非ガウスビームプロファイルを有するレーザで照射されたレンズの焦点画像5703を模式的に表している。このビームは、DOEによってスプリットされ、複数の焦点を形成することが好ましい。DOEは、焦点の空間撮像を変更するために、レーザビームを回折すべく使用されることが好ましい。
【0097】
回折光学素子(DOE)は、レーザ放射の回折で作用する。レーザ波長のスケールに合わせた構造が使用される。回折構造上の光回折を数値シミュレーションすることにより、大きな生産ボリュームで製造されてもよい要素が計算される。一般的に、レーザビームプロファイルにおける光の空間分布は、要素のすぐ下流か、又は焦点合わせ要素の下流の焦点において変更される。これは、例えば、ビームが多数のビームにスプリットされてもよいこと、(通常発生する)ガウスビーム強度プロファイルが他の何らかの形態に変換されること、又は、焦点におけるレーザ放射の強度分布は、従来のレンズでは達成できなかった方法で、例えば、所望のレーザ相互作用に必要な二次的最大値の意図的な導入又は抑制によっては達成できなかった方法で補正される。
【0098】
対照的に、空間光変調器(SLM)は、空間変調を光に適用する装置である。
【0099】
SLMは、通常、光ビームの強度を変調するが、位相を変調することも可能であり、又は位相と強度とを同時に変調することも可能である。
【0100】
DOEについては、この空間変調は、要素内の構造で実施され、一方でSLMについては、SLM上の個々の画素によって実施される。特に、強度変調ビーム及び位相変調ビームの撮像又は焦点合わせ後、焦点におけるプログラム可能な強度分布が達成可能である。一方、DOEは、例えば、SLMの使用によってレーザビームに静的且つ再現可能に作用し、レーザ加工装置において使用されるビーム又はレーザビームのプロファイルの数は、動的に切り替えられてもよい。さらに、例えば、プロセスの進行を同時にモニタリングしたフィードバックに従い、プロセスの途中での動的な適合化が可能である。
【0101】
本発明によると、本明細書に提示の方法は、固体への透過に先立ち、レーザビームのビーム特性を変更するステップであって、ビーム特性は、焦点における強度分布であり、ビーム特性の変化又は適合は、少なくとも1つ又はちょうど1つの空間光変調器、及び/又は、少なくとも1つ又はちょうど1つのDOEによって引き起こされ、空間光変調器及び/又はDOEは、固体と放射源との間の、レーザ放射のビーム進路内に設置されるステップを備える。
【0102】
DOE及び空間光変調器の操作原則を説明するために、以下の刊行物を参照する。すなわち、レーザマイクロマシニングにおけるプロセス開発のための次世代フレキシブルビーム成形システム、LANE2016、Photonic Technologiesによる第9回国際会議、LANE2016、Tobias Klerks,Stephan Eifelである。
【0103】
法線ガウス形状とは異なるレーザビーム強度プロファイルは、非ガウスビームプロファイルと称され、他の何らかの加工結果を達成するために使用されてもよい。従って、例えば、第2の寸法よりも、ビーム伝搬方向に直交する寸法がかなり異なる広がりを有する線状焦点が考えられる。これにより、加工ステップにおいて、かなり広い領域のワークピースがレーザビームで掃引されるようになる。ビームの中心に定常的な強度を有する「トップハット」プロファイルが知られており、これは、加工時、焦点に異なる強度の領域が存在しないか、又は少なくとも同一強度の領域のみがレーザ加工閾値を上回るという利点をもたらす。これは、例えば、分離後の切削ロスを最少化するのに使用されてもよい。
【0104】
従って、本発明は、固体1の内部に改質9を生成する方法に関連することが好ましい。当該方法は、固体1の第1表面8を介して、固体1の内部にレーザ29のレーザ放射14を導入するステップを備えることが好ましい。レーザ放射14が固体1を透過する際に通過する表面8は、分離対象の固体層の構成要素であることが好ましい。分離対象の固体層は、固体の残りの部分より薄いことが好ましい。
【0105】
固体1は、結晶構造として形成することが好ましく、レーザ放射14が故に、改質9は、固体1の内部の生成面4上の所定箇所に生成される。生成面は、第1表面8に平行であることが好ましい。改質9は、第2表面よりも第1表面8の近くに設置されることが好ましく、第2表面は、第1表面8に平行して設けられることが好ましい。改質9の結果として、複数の線形形状103、特に、点線又は実線のスクライブラインが生成され、固体1は、特定改質9の領域に未臨界クラックを成長させ、特定の線形形状の長手方向に垂直な未臨界クラックは、150μm未満、特に、120μm未満、110μm未満、90μm未満、75μm未満、又は60μm未満のクラック長又は平均クラック長を有する。
【0106】
改質9の「領域内」とは、固体1が改質部分又は材料転換部分と、固体の接合部分とにおいてクラックを形成することを意味するものと理解されてもよい。しかしながら、クラックは、改質領域でなく、むしろ固体の縦方向における改質の上下に形成することもできる。固体が改質の上下にクラックを成長させる場合、生成面からのクラック(特に、未臨界クラック)の距離は、20μm未満、特に、15μm未満、10μm未満、5μm未満、4μm未満、3μm未満、2μm未満、又は1μm未満であることが好ましい。
【0107】
同一の線形形状103に含まれ、連続して生成される改質9は、関数(d-x)/d<-0.31、特に、<-0.4で規定される互いに対する距離で生成されることが好ましい。
【0108】
追加又は代替として、レーザ放射は、規定の方法で偏光されてもよい。レーザ放射14の偏光方向は、固体1の結晶軸に対して、規定の角度又は規定の角度範囲、配向されることが好ましく、又は、レーザビーム14によって固体1の内部に生成された改質9の長手方向Rが、生成面4と結晶格子面との間の接続に結果として生じた交線10に対して規定の角度又は規定の角度範囲、配向される。
【0109】
図11は、時間401の関数としての焦点400における放射強度分布を示す。
【0110】
参照符号402は、IMP、すなわち、多光子プロセスの始まりが生じる焦点における放射強度を示している。多光子プロセスの始まりは、参照符号409によって示される。参照符号410は、tmp、すなわち、多光子プロセスの始まりが生じるパルス開始408後の時間を示す。透過期間403は、パルス開始408から始まり、改質の生成までの時間を意味すると理解される。透過期間403は、プラズマ調整期間を包含してもよい。
【0111】
参照符号404は、IBD、すなわち、電子プラズマ破壊が生じる焦点における放射強度を示す。すなわち、この瞬間に開始して、電子プラズマが始動される。参照符号405は、電子生成エネルギーを示し、その大部分が透過される。これは、本発明の意味の範囲内で、この時間を短縮することを表す。参照符号406は、ION、すなわち、改質の始まり413が生じる焦点における放射強度を示す。すなわち、この瞬間に開始して、材料転換又は相転移が生じる。同様に、参照符号412は、パルス開始408後の、改質の始まりが生じる時間を示している。参照符号414は、改質期間、すなわち、材料転換が行われる期間を示している。
【0112】
参照符号416は、吸収BD>吸収ONであるため、電子プラズマ破壊IBD<IONであることを示す。電子プラズマ破壊は、結果として、直後の改質破壊418をもたらす。参照符号420は、レーザパルスのパルス端部を示す。
【0113】
これは、結果として、本発明に係る方法を生じる。本発明に係る方法は、固体1の内部に改質9を生成するのに使用されることが好ましく、少なくとも、以下のステップを備えることが好ましい。すなわち、固体1の第1表面8を介して固体1の内部にレーザ29のレーザ放射14を導入するステップであって、固体1は、結晶構造を形成し、レーザ放射14は、分離面を特定するために、固体1の内部の生成面4上の所定位置に改質9を生成し、各改質のためのレーザ放射は、固体を改質するためのプラズマの調整を引き起こし、プラズマは、改質生成期間414、存在し続け、レーザパルスを始めるときに開始し、プラズマ調整の直前まで、レーザ放射が少なくとも部分的に固体を通過する透過期間403が存在し、プラズマの調整は、プラズマ調整期間412内に生じ、プラズマに作用するレーザ放射は、少なくとも大部分、好ましくは完全に、プラズマによって吸収及び/又は反射及び/又は散乱され、改質生成期間414、透過期間403、及びプラズマ調整期間、特に、プラズマの点火及び加熱を含む合計時間は、改質の生成時のレーザ放射のパルス持続時間の少なくとも70%に対応し、パルス持続時間は、100ns未満、特に、10ns未満、5ns未満、3ns未満、2ns未満、又は1ns未満である。レーザ放射は、焦点において規定の放射強度を生成し、結果として規定の電子密度を生じ、改質生成期間内の焦点における電子密度は、所定の閾値を上回り、透過期間は、70nsより短い。透過期間は、2nsより短く、特に、1ns、0.75ns、又は0.5nsより短いことが特に好ましい。
【0114】
図12は、時間401の関数としての電子密度450の曲線を示す。参照符号451は、プラズマが始まる時点、すなわち、プラズマが形成され、レーザ放射の吸収、反射、及び散乱が始まる瞬間、すなわちプラズマがレーザビームの金属層又は金属構造又は電気部品への透過の低減又は防止を始める瞬間を示している。参照符号[sic]は、最大電子密度を示している。電子プラズマは、レーザ放射によって振動することが好ましい。
【0115】
吸収核が存在する場合、電子密度は、パルス開始後により急激に増加し、この結果として、透過期間403はより短くなるであろう。この場合には、参照符号453は、既に存在するアモルファス化結晶領域による線形吸収を示している。
【0116】
従って、固体1の内部に改質9を生成するためのさらなる方法が可能である。このさらなる方法は、固体1の第1表面8を介して固体1の内部にレーザ29のレーザ放射14を導入するステップを備えることが好ましい。固体1は、結晶構造を形成することが好ましい。レーザ放射14は、固体1の内部の生成面4上の所定箇所に改質9を生成する。第2表面81は、第1表面8に平行して提供されることが好ましい。複数の線形形状、特に、スクライブラインは、改質9によって生成されることが好ましい。固体1は、好ましくは特定の改質9の領域に未臨界クラックを成長させ、未臨界クラックは、特定の線形形状の長手方向に対して垂直に、150μm未満、特に、120μm未満、110μm未満、90μm未満、75μm未満、又は60μm未満の平均クラック長を有することが好ましい。レーザ放射は、規定の方法で偏光されることが好ましく、特に、直線偏光されることが好ましく、レーザ放射14の偏光方向は、固体1の結晶軸に対して規定角度、又は規定角度範囲で配向されることが特に好ましい。追加又は代替として、レーザビーム14によって固体1の内部に生成される改質9の長手方向Rは、生成面4と結晶格子面6との間の接続に結果として生じる交線10に対して、規定角度、又は規定角度範囲に配向される。
【0117】
各改質のためのレーザ放射は、固体を改質するために、プラズマの調整をもたらすことが好ましい。プラズマは、改質生成期間414、存在し続けることが好ましく、プラズマの調整直前、且つ、レーザパルスの開始時に、レーザ放射が少なくとも部分的に固体を通過する透過期間403が存在し、プラズマの調整は、プラズマ調整期間内に生じ、プラズマに作用するレーザ放射は、少なくとも大部分が、好ましくは完全に、プラズマによって吸収及び/又は反射及び/又は散乱される。プラズマ調整期間の長さは、透過期間と改質期間との間であることが好ましく、非常に短くてもよく、特に、1ns、0.1ns、又は0.01nsより短くてもよい。改質生成期間414、透過期間403、及びプラズマ調整期間(図示せず)、特に、プラズマの点火及び加熱を含む合計時間は、10ns未満であることが好ましく、特に、4ns未満であることが好ましい。従って、焦点において規定の放射強度を生成することが好ましく、結果として、規定の電子密度を生じ、焦点における電子密度は、透過期間が改質生成期間より短くなることが特に好ましく、これを達成するのに十分な電子密度となる。従って、改質生成期間中、プラズマは、特に、加熱効果により、特に、固体材料を相転移温度以上の値に加熱するが故に、相転移を引き起こす。
【0118】
レーザパルスのエッジ、すなわち、レーザパルスエネルギーがその最大値まで増え、その最大値から限界値を下回って降下する時間範囲を非常に精密に設定することと、個々のレーザパルスの曲線に亘って個々のレーザ強度分布を設定することとが生じることが好ましい。分光で拡大されたパルスでは、例えば、いわゆる「チャープ」、すなわち時間的にオフセットされた個々のレーザ放射頻度列が故に、ガウス分布とはずれた非対称の強度分布が達成され得る。
【0119】
図13は、時間401の関数としての焦点400における代替の放射強度曲線、すなわち、有利な特性を有する理想的なパルス形状を示している。放射強度の急激な増加が故に、透過期間403は、非常に短く、その結果として、比較的少ない放射が金属層又は金属構造又は電気部品を透過可能となる。改質設計は、同様に非常に精密に設定されることの好ましい改質期間の長さが故に、非常に精密に制御されてもよい。
【0120】
従って、本発明は、複合構造83の内部にマイクロクラック9を生成する方法に関連する。本発明に係る当該方法は、少なくとも、複合構造83を提供又は生成するステップであって、複合構造83は、固体1と、固体1の一方側に設置又は提供される少なくとも1つの金属被膜及び/又は電気部品82とを有し、他方側に平坦面8を形成し、固体1は、炭化ケイ素(SiC)を含有するか、又は炭化ケイ素(SiC)で形成されるステップと、固体1の内部に改質9を生成するステップであって、レーザ放射14が平坦面8を介して固体1内に導入され、レーザ放射14は、多光子励起を生じ、多光子励起は、プラズマ生成を引き起こし、改質は、材料転換の形態でプラズマによって有効となり、材料転換では、固体1内に圧縮応力が生成され、固体1は、特定の改質9の周囲領域に未臨界クラックを成長させ改質9は、金属被膜及び/又は電気部品82から1550μm未満の距離に生成され、レーザ放射14は、パルスで固体1内に導入されるステップとを備えることが好ましい。パルスのパルス強度は、特定パルスの開始後10ns以内に最大パルス強度に達することが好ましい。
【符号の説明】
【0121】
1:固体/ドナー基板
2:固体層
4:生成面
5:改質生成箇所
6:結晶格子面
6a/b/c:結晶格子面
7:結晶格子面端部
8:主要面/第1表面
9:改質
9a/b:改質
10:交線
12:未臨界クラック
11:平坦部
13:機械的応力
14:レーザ放射
29:レーザ
30:再配置装置
32:レーザ放射
45:回転装置
49:中心
50:回転中心
51:接続セグメント
52:方向
60:結晶格子面法線
80:主要面法線
81:第2表面
82:金属層又は電気部品
83:複合構造
90:法平面
92:法平面に垂直な平面
94:結晶格子面端部の延びる方向
103:レーザライン/スクライブライン/線形形状
200:分離で露出された固体層の表面
202:ジグザグ形状山部
204:ジグザグ形状山部の延びる方向
210:第1方向
212:第2方向(第1方向210の反対方向)
400:焦点における放射強度
401:時間
402:多光子プロセスの始まりが生じる焦点におけるIMP-放射強度
403:透過期間
404:電子プラズマ破壊が生じる焦点におけるIBD-放射強度
405:電子生成エネルギー(大部分は透過される)
406:改質の始まりが生じる焦点におけるION-放射強度
408:パルス開始
409:多光子プロセスの始まり
410:多光子プロセスの始まりが生じるパルス開始後のtmp-時間
412:改質の始まりが生じるパルス開始後の時間
413:改質の始まり
414:改質期間
416:吸収BD>吸収ONであるため、電子プラズマ破壊IBD<ION
418:改質破壊
420:パルス端部
450:焦点における電子密度
451:プラズマの始まり(なだれ破壊、最大電子密度の2分の1に対応する)
452:電子プラズマがレーザ放射で振動する
453:既に存在しているアモルファス化結晶領域による線形吸収
5700:光円錐
5702:焦点画像
5703:焦点画像
R:改質の長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13