(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20240116BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H05K5/02 L
H01R13/52 301H
(21)【出願番号】P 2019091563
(22)【出願日】2019-05-14
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大上 達也
(72)【発明者】
【氏名】中田 裕樹
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-116504(JP,A)
【文献】特開2018-74097(JP,A)
【文献】実開平5-45327(JP,U)
【文献】特開2013-119910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/02
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状の筐体、この筐体内に格納された回路基板、この回路基板に搭載され一部が前記筐体の外部に露出するコネクタ、及び流動性シール剤が硬化して得られたシールを備え、
前記筐体が、下ケースと、この下ケースに被せられた上ケースとを備え、前記コネクタがこの上ケースと下ケースとに挟まれており、
前記下ケースが、この下ケースの前記上ケース側の面に、この面の周縁部に沿って延びるケース溝を備えており、
前記上ケースが、この上ケースの前記下ケース側の面に、この面の周縁部に沿って延びるケース突条を備えており、
前記コネクタが、前記上ケース側の面にコネクタ溝を備え、前記下ケース側の面にコネクタ突条を備えており、
前記コネクタが挟まれている位置において、前記コネクタ突条が前記ケース溝に嵌め込まれ、前記コネクタ溝に前記ケース突条が嵌め込まれており、
前記コネクタが挟まれていない位置において、前記ケース溝に前記ケース突条が嵌め込まれており、
前記シールが、前記ケース溝と前記ケース突条及び前記コネクタ突条との隙間、並びに前記コネクタ溝と前記ケース突条との隙間に充填されており、
前記ケース溝又はコネクタ溝に、前記シール剤の流動を抑制する障害体が設けられて
おり、
前記障害体が、前記ケース溝又はコネクタ溝の底に設けられた段差であり、
前記ケース溝が位置する前記下ケースの面が、前記コネクタが挟まれた位置と前記コネクタが挟まれていない位置との境界で折れ曲がることなく水平に延びており、
前記段差が、前記ケース溝の、前記コネクタ突条が嵌め合わされた部分全体において前記下ケースの面から計測した深さを、前記ケース突条が嵌め合わされた部分での前記下ケースの面から計測した深さより深くすることで形成されている、電子機器。
【請求項2】
前記段差の高さが2mm以上である、請求項
1に記載の電子機器。
【請求項3】
箱状の筐体、この筐体内に格納された回路基板、この回路基板に搭載され一部が前記筐体の外部に露出するコネクタ、及び流動性シール剤が硬化して得られたシールを備え、
前記筐体が、下ケースと、この下ケースに被せられた上ケースとを備え、前記コネクタがこの上ケースと下ケースとに挟まれており、
前記下ケースが、この下ケースの前記上ケース側の面に、この面の周縁部に沿って延びるケース溝を備えており、
前記上ケースが、この上ケースの前記下ケース側の面に、この面の周縁部に沿って延びるケース突条を備えており、
前記コネクタが、前記上ケース側の面にコネクタ溝を備え、前記下ケース側の面にコネクタ突条を備えており、
前記コネクタが挟まれている位置において、前記コネクタ突条が前記ケース溝に嵌め込まれ、前記コネクタ溝に前記ケース突条が嵌め込まれており、
前記コネクタが挟まれていない位置において、前記ケース溝に前記ケース突条が嵌め込まれており、
前記シールが、前記ケース溝と前記ケース突条及び前記コネクタ突条との隙間、並びに前記コネクタ溝と前記ケース突条との隙間に充填されており、
前記ケース溝又はコネクタ溝に、前記シール剤の流動を抑制する障害体が設けられて
おり、
前記障害体が、前記ケース溝又はコネクタ溝の側壁に設けられた突起であり、
複数の前記突起がこの溝の延びる方向に間隔をおいて並列されており、それぞれの突起の全体が前記ケース溝又は前記コネクタ溝の側壁に位置している、電子機器。
【請求項4】
前記突起間の間隔が、前記突起の幅よりも大きい、請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記ケース溝又はコネクタ溝が、水平方向に対して傾斜する傾斜部を備えており、前記突起がこの傾斜部に設けられている、請求項
3又は4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記ケース溝又はコネクタ溝において、前記突起が設けられた部分におけるこの溝の幅の、前記突起がない部分におけるこの溝の幅に対する比が、60%以上95%以下である、請求項
3から5のいずれかに記載の電子機器。
【請求項7】
前記突起の幅の前記突起間の間隔に対する比が、5%以上25%以下である、請求項
3から
6のいずれかに記載の電子機器。
【請求項8】
前記ケース溝の、前記ケース突条が嵌め合わされた部分と、前記コネクタ突条が嵌め合わされた部分との境界において、前記ケース溝に、他の部分より幅が大きい液溜まり部が設けられている、
請求項1から7のいずれかに記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アイドリングストップ機能の普及により、自動車には、エンジン停止時にもエアコン、オーディオ、ナビシステム等の電装品を安定動作させることが求められている。エンジン再開時の電圧低下による、表示画面等への影響を抑えることも求められている。エンジン停止時や再開時にも安定して電気が供給できるように、自動車には、リチウムイオン電池等の高圧バッテリーの電圧を降圧する、DC-DCコンバータやDC-ACインバータ等の電源用の電子機器が搭載されている。さらには、自動車には、エンジン制御の電子機器も搭載されている。
【0003】
自動車は、悪天候の中を走行することや、水が溜まった悪路を走行することがある。自動車に搭載される電子機器の筐体には、内部の回路部品を水分から守ることができるように、高い防水性が求められている。
【0004】
水分に対するシール性が向上された電子機器についての検討が、特開2009-70855公報で報告されている。この電子機器では、筐体は、上面が開口した箱状のケースと、下面が開口したと箱状のケースとを重ね合わせることで構成される。これらのケースの接合部分において、一方のケースの接触面に突条が設けられ、他方のケースの接触面に溝が設けられる。この溝にシール剤を充填し、突条を嵌め込むことで、これらのケースの接合部分でのシール性が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シール剤は流動性であるため、ケースの接触面の溝に充填されたシール剤は、溝の中で流動することがある。シール剤の流動が起こると、この溝において、シール剤の量が不足する場所が生じうる。これは、筐体のシール性の低下の要因となりうる。高いシール性が実現された、電子機器が求められている。
【0007】
本発明の目的は、水分に対する高いシール性が実現された電子機器の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子機器は、箱状の筐体、この筐体内に格納された回路基板、この回路基板に搭載され一部が前記筐体の外部に露出するコネクタ、及び流動性シール剤が硬化して得られたシールを備える。前記筐体は、下ケースとこの下ケースに被せられた上ケースとを備え、前記コネクタがこの上ケースと下ケースとに挟まれている。前記下ケースは、この下ケースの前記上ケース側の面に、この面の周縁部に沿って延びるケース溝を備えている。前記上ケースは、この上ケースの前記下ケース側の面に、この面の周縁部に沿って延びるケース突条を備えている。前記コネクタは、前記上ケース側の面にコネクタ溝を備え、前記下ケース側の面にコネクタ突条を備えている。前記コネクタが挟まれている位置において、前記コネクタ突条が前記ケース溝に嵌め込まれ、前記コネクタ溝に前記ケース突条が嵌め込まれている。前記コネクタが挟まれていない位置において、前記ケース溝に前記ケース突条が嵌め込まれている。前記シールは、前記ケース溝と前記ケース突条及び前記コネクタ突条との隙間、並びに前記コネクタ溝と前記ケース突条との隙間に充填されている。前記ケース溝又はコネクタ溝に、前記シール剤の流動を抑制する障害体が設けられている。
【0009】
好ましくは、前記障害体は、前記ケース溝又はコネクタ溝の側壁に設けられた突起である。
【0010】
好ましくは、前記ケース溝又はコネクタ溝が水平方向に対して傾斜する傾斜部を備えており、前記突起はこの傾斜部に設けられている。
【0011】
好ましくは、前記ケース溝又はコネクタ溝において、前記突起が設けられた部分におけるこの溝の幅の、前記突起がない部分におけるこの溝の幅に対する比は、60%以上95%以下である。
【0012】
好ましくは、前記ケース溝又はコネクタ溝において、複数の前記突起がこの溝の延びる方向に並べられており、前記突起の幅の前記突起間の間隔に対する比は、5%以上25%以下である。
【0013】
前記障害体は、前記ケース溝又はコネクタ溝の底に設けられた段差であってもよい。
【0014】
好ましくは、前記段差は、前記ケース溝の、前記コネクタ突条が嵌め合わされた部分での深さを、前記ケース突条が嵌め合わされた部分での深さより深くすることで形成されている。
【0015】
好ましくは、前記段差の高さは2mm以上である。
【0016】
本発明に係る電子機器は、箱状の筐体、この筐体内に格納された回路基板、この回路基板に搭載され一部が前記筐体の外部に露出するコネクタ、及び流動性シール剤が硬化して得られたシールを備える。前記筐体は、下ケースとこの下ケースに被せられた上ケースとを備え、前記コネクタがこの上ケースと下ケースとに挟まれている。前記下ケースは、この下ケースの前記上ケース側の面に、この面の周縁部に沿って延びるケース溝を備えている。前記上ケースは、この上ケースの前記下ケース側の面に、この面の周縁部に沿って延びるケース突条を備えている。前記コネクタは、前記上ケース側の面にコネクタ溝を備え、前記下ケース側の面にコネクタ突条を備えている。前記コネクタが挟まれている位置において、前記コネクタ突条が前記ケース溝に嵌め込まれ、前記コネクタ溝に前記ケース突条が嵌め込まれている。前記コネクタが挟まれていない位置において、前記ケース溝に前記ケース突条が嵌め込まれている。前記シールは、前記ケース溝と前記ケース突条及び前記コネクタ突条との隙間、並びに前記コネクタ溝と前記ケース突条との隙間に充填されている。前記ケース溝の、前記ケース突条が嵌め合わされた部分と、前記コネクタ突条が嵌め合わされた部分との境界において、前記ケース溝に、他の部分より幅が大きい液溜まり部が設けられている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る電子機器では、下ケースはケース溝を備え、このケース溝にコネクタに設けられたコネクタ突条及び上ケースに設けられたケース突条が嵌め込まれる。また、コネクタは、コネクタ溝を備え、このコネクタ溝にケース突条が嵌め込まれる。ケース溝又はコネクタ溝に、シール剤の流動を阻害する障害体が設けられている。この障害体がシール剤の流動を阻害することにより、これらの溝において、シール剤の量が不足する場所が生じることが防止されている。この電子機器では、高いシール性が実現されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器が示された斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2の下ケースの一部が示された斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2の上ケースの一部が示された斜視図である。
【
図6】
図6(A)は
図5のコネクタの溝が示された平面図であり、
図6(B)はこの溝の側壁が示された正面図である。
【
図7】
図7は、下ケースの溝にコネクタの突条が嵌め込まれた様子が示された、断面図である。
【
図8】
図8は、
図2の下ケースの一部が示された側面図である。
【
図9】
図9は、
図3の下ケースにコネクタが載せられた状態が示された斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0020】
図1に、本発明の一実施形態に係る電子機器2が示されている。この電子機器2は、自動車に搭載される、DC-DCコンバータである。この明細書では、
図1の矢印Xが示す方向がこの電子機器2の前方とされ、この逆の方向が後方とされる。矢印Yが示す方向が右方向とされ、この逆の方向が左方向とされる。矢印Zが示す方向が上方向とされ、この逆の方向が下方向とされる。矢印Y及びZは、
図2においても同じ意味を表す。
図2は、
図1の電子機器2の分解図である。この電子機器2は、筐体4、回路基板6及びコネクタ8を備える。
【0021】
筐体4は、箱状を呈する。筐体4は、回路基板6が収容される内部空間を有する。筐体4は、熱伝導性及び導電性に優れた金属からなる。この筐体4は、放熱及び電磁ノイズのシールドに寄与する。筐体4が、絶縁性で低熱伝導性の材料からなっていてもよい。例えば筐体4が、樹脂よりなっていてもよい。樹脂からなる筐体4は、電子機器2の低コスト化に寄与する。筐体4は、下ケース10と上ケース12とを備えている。
【0022】
下ケース10は、上面が開口した箱状を呈する。
図1及び2に示されるように、下ケース10には、筐体4内部の熱を逃がすための、ヒートシンク14が設けられている。下ケース10の上ケース12側の面(上面)は、上ケース12と接触する。この面は、接触面と称される。
図3は、下ケース10の、
図2の符号Aで示された部分を、矢印Pで示される方向から見た斜視図である。
図3で示されるように、下ケース10の接触面16は、その周縁部に沿って延びるケース溝18を備えている。ケース溝18は、接触面16の周縁部に沿って、連続して延びている。
【0023】
上ケース12は、下面が開口した箱状を呈する。上ケース12は下ケース10に被せられている。
図2に示されるように、上ケース12の前面には、その下辺側に、台形状の陥部20が設けられている。
図4には、この陥部20の部分が拡大されて示されている。この図は、上ケース12を下側から見た斜視図である。上ケース12の下ケース10側の面(下面)は、下ケース10と接触する。この面は、接触面22と称される。
図2及び
図4で示されているように、上ケース12の接触面22は、その周縁部に沿って延びるケース突条24を備えている。ケース突条24は、接触面22の周縁部に沿って、連続して延びている。
【0024】
回路基板6は、筐体4の内部空間に格納されている。回路基板6には、トランジスタ、容量、トランス等の複数の回路要素が搭載されている。この実施形態では、これらの回路要素により、DC-DCコンバータの回路が実現されている。この回路基板6には、さらにコネクタ8が搭載されている。
【0025】
コネクタ8は、回路基板6に搭載され、その一部が筐体4の外部に露出している。コネクタ8は、筐体4内部の回路と外部とを電気的に接続する。
図1で示されるように、この実施形態では、電子機器2は、信号コネクタ8a、バスバーコネクタ8b及び容量コネクタ8cの3つのコネクタ8を備えている。
【0026】
信号コネクタ8aは、筐体4の前面側に位置している。
図5は、信号コネクタ8aが示された斜視図である。信号コネクタ8aは、中央部26と、筒部28と、
図5では中央部26に隠れて見えていない内部接続部を備えている。中央部26は、正面視において、台形状を呈する。内部接続部は、筐体4の内部に位置している。筒部28は、中央部26から前方に突出している。筒部28は、筒状を呈している。図示されないが、筒部28の内部には、複数のコネクタ端子が位置している。コネクタ端子は、内部接続部を介して、回路基板6の回路要素と電気的に接続している。
【0027】
図5に示されるように、中央部26の下ケース10側の面(台形の下辺に対応する面)には、この面の周縁部に沿って延びるコネクタ突条30が設けられている。中央部26の上ケース12側の面(台形の二つの斜辺と上辺に対応する面)には、この面の周縁部に沿って延びるコネクタ溝32が設けられている。
図5では、このコネクタ溝32の底の位置が、点線で示されている。換言すれば、コネクタ溝32は、水平方向に延びる水平部32aと、水平方向に対して傾斜する一対の傾斜部32bとを備える。一対の傾斜部32bは、それぞれ水平部32aの対応する端から延びている。
【0028】
図6(A)は、コネクタ溝32の傾斜部32bを上方から見た図である。これは、コネクタ溝32の傾斜部32bの平面図である。
図6(B)は、この傾斜部32bの一方の側壁34を、正面から見た図である。
図6(A)及び(B)に示されるように、コネクタ溝32の側壁34には、突起36が設けられている。この実施形態では、コネクタ溝32の両側壁34に、突起36が設けられている。
図6(B)に示されるように、複数の突起36が、この溝の延びる方向に並べられている。それぞれの突起36は、上下方向に延びている。この実施形態では、突起36は、コネクタ溝32の側壁34の上端から下端まで延びている。
【0029】
図6(A)の実施形態では、コネクタ溝32の一方の側壁34に並べられた突起36の位置と、他方の側壁34に並べられた突起36の位置とは、コネクタ溝32が延びる方向において同じとなっている。これらの位置がずれていてもよい。例えば、コネクタ溝32の一方の側壁34の突起36と、他方の側壁34の突起36とが、互い違いに並べられていてもよい。
【0030】
図6(A)の実施形態では、コネクタ溝32の両側壁34に、突起36が並べられている。突起36が、一方の側壁34のみに並べられていてもよい。
【0031】
図1で示されるように、信号コネクタ8aの中央部26は、上ケース12の陥部20に嵌め込まれている。信号コネクタ8aの中央部26は、下ケース10と上ケース12とに挟まれている。このとき、信号コネクタ8aが挟まれている位置において、コネクタ突条30はケース溝18に嵌め込まれている。この位置において、コネクタ溝32にケース突条24が嵌め込まれている。さらに、コネクタ8が挟まれていない位置においては、ケース溝18にケース突条24が嵌め込まれている。
【0032】
図7は、コネクタ突条30が、ケース溝18に嵌め込まれた状態が示された断面図である。この図には、ケース溝18が延びる方向に垂直な断面が示されている。
図7で示されるように、ケース溝18とコネクタ突条30との隙間には、シール38が充填されている。すなわち、この電子機器2は、シール38をさらに備えている。シール38は、ケース溝18とコネクタ突条30との隙間を埋める。同様に、ケース溝18とケース突条24の隙間、及びコネクタ溝32とケース突条24の隙間にもシール38が充填されている。シール38は、これらの溝と突条との隙間を埋めている。
【0033】
上記では、信号コネクタ8aについて、このコネクタ8と上ケース12及び下ケース10との接合の構造が説明された。バスバーコネクタ8b及び容量コネクタ8cについても、この構造は同様である。バスバーコネクタ8b及び容量コネクタ8cは、その下ケース10側の面に、コネクタ突条30が設けられている。バスバーコネクタ8b及び容量コネクタ8cは、その上ケース12側の面に、コネクタ溝32が設けられている。バスバーコネクタ8b及び容量コネクタ8cは、下ケース10と上ケース12とに挟まれている。このとき、バスバーコネクタ8b及び容量コネクタ8cのコネクタ突条30は、ケース溝18に嵌め込まれている。バスバーコネクタ8b及び容量コネクタ8cのコネクタ溝32には、ケース突条24が嵌め込まれている。
【0034】
図8は、下ケース10の、
図2の符号Aで示された部分の近辺が拡大された側面図である。
図8には、ケース溝18の底が、点線で示されている。
図8おいて、符号X1で示された領域では、ケース溝18に、コネクタ突条30が嵌め合わされている。ケース溝18のこの部分は、コネクタ嵌合部18aと称される。符号X2で示された領域では、ケース溝18に、ケース突条24が嵌め合わされている。ケース溝18のこの部分は、ケース嵌合部18bと称される。このケース溝18では、コネクタ嵌合部18aの深さは、ケース嵌合部18bの深さより深い。これにより、コネクタ嵌合部18aとケース嵌合部18bとの境界において、ケース溝18の底に段差40が形成されている。
【0035】
図5において、両矢印H1はコネクタ突条30の高さを表す。
図4において、両矢印H2はケース突条24の高さを表す。上記のとおり、コネクタ嵌合部18aの深さはケース嵌合部18bの深さより深いことから、これに対応して、高さH1は高さH2より高くなっている。
【0036】
この電子機器2の組み立ては、次のS1-S5のステップで行われる。
【0037】
[ステップS1]
ケース溝18のコネクタ嵌合部18aに、流動性のシール剤が流し込まれる。前述のとおり、コネクタ嵌合部18aはケース嵌合部18bより深い。コネクタ嵌合部18aの底とケース嵌合部18bの底との間の段差40により、シール剤がコネクタ嵌合部18aからケース嵌合部18bに流れ出ることが、防止されている。ケース溝18の底に設けられたこの段差40は、シール剤の流動を阻害する障害体を構成している。
【0038】
[ステップS2]
図2の矢印S2で示されるように、コネクタ8を搭載した回路基板6が下ケース10内部に配置され、コネクタ突条30がケース溝18のコネクタ嵌合部18aに嵌め込まれる。
図9には
図3で示された下ケース10の部分において、回路基板6が下ケース10内部に配置された状態が示されている。
図9で示されるように、この状態では、ケース嵌合部18bとコネクタ嵌合部18aとの境界において、ケース嵌合部18bとコネクタ溝32とが連結されている。ケース溝18のケース嵌合部18bとコネクタ溝32とが、連続した溝を形成している。
【0039】
[ステップS3]
連結されたケース嵌合部18bとコネクタ溝32の全体に、シール剤が流し込まれる。前述のとおり、コネクタ溝32の傾斜部32bの側壁34には、複数の突起36が設けられている。この突起36は、シール剤が傾斜部32bから流れ出るのを抑制する。コネクタ溝32の側壁34に設けられた突起36は、シール剤の流動を阻害する障害体を構成している。
【0040】
図3及び9に示されるように、ケース嵌合部18bとコネクタ嵌合部18aとの境界において、ケース溝18の幅が広くなった部分が存在する。この部分は、ケース溝18の液溜まり部42と称される。連結されたケース嵌合部18bとコネクタ溝32の全体にシール剤が流し込まれたとき、この液溜まり部42にもシール剤が流れ込む。
【0041】
[ステップS4]
図2の矢印S4で示されるように、下ケース10に上ケース12が被せられる。コネクタ8は、下ケース10と上ケース12との間に挟まれる。コネクタ8が挟まれた位置において、ケース突条24がコネクタ溝32に嵌め込まれる。コネクタ8が挟まれていない位置において、ケース突条24がケース溝18に嵌め込まれる。
【0042】
[ステップS5]
下ケース10に上ケース12が被せられた状態で、これらは所定の時間保管される。シール剤は、時間の経過とともに硬化する。シール剤が硬化して、シール38となる。これにより、電子機器2の組み立てが終了する。
【0043】
以下、本発明の作用効果が説明される。
【0044】
本発明に係る電子機器2では、コネクタ溝32は、その側壁34に突起36を備える。この突起36は、シール剤の流動を阻害する障害体を構成している。この突起36がシール剤の流動を阻害することにより、コネクタ溝32でシール剤の量が不足する場所が生じることが防止されている。この電子機器2では、高いシール性が実現されている。
【0045】
突起36は、傾斜部32bに設けられるのが好ましい。傾斜部32bは、シール剤が流動し易い。傾斜部32bでは、シール剤が不足した状態となりやすい。傾斜部32bに突起36を設けることで、この傾斜部32bにおいてもシール剤の流動が抑制される。この電子機器2では、高いシール性が実現されている。
【0046】
図6(A)において、両矢印W1は、突起36がない場所でのコネクタ溝32の幅を表す。幅W1は、側壁34と垂直な方向に計測される。両矢印W2は、突起36が設けられた場所でのコネクタ溝32の幅を表す。この実施形態では、幅W2は、側壁34と垂直な方向に計測した、突起36の先端間の距離である。突起36が一方の側壁34のみに存在するときは、幅W2は、側壁34と垂直な方向に計測した、突起36の先端と、この突起36が位置していない側壁34の平坦な部分との距離である。
【0047】
幅W2の幅W1に対する比(W2/W1)は、95%以下が好ましい。比(W2/W1)を95%以下とすることで、この突起36は、シール剤の流動を効果的に阻害する。この電子機器2では、高いシール性が実現されている。比(W2/W1)は60%以上が好ましい。比(W2/W1)を60%以上とすることで、この突起36は、シール剤を流し込むときに、シール剤をコネクタ溝32の隅々まで行き渡らせる邪魔となりにくい。このようにすることで、シール剤をコネクタ溝32の隅々まで行き渡らせることができる。この電子機器2では、高いシール性が実現されている。
【0048】
図6(B)において、両矢印Dgは、コネクタ溝32が延びる方向に計測した、突起36間の間隔を表す。両矢印Wpは、コネクタ溝32が延びる方向に計測した突起36の幅を表す。幅Wpの間隔Dgに対する比(Wp/Dg)は5%以上が好ましい。比(Wp/Dg)を5%以上とすることで、これらの突起36は、シール剤の流動を効果的に阻害する。この電子機器2では、高いシール性が実現されている。比(Wp/Dg)は25%以下が好ましい。比(Wp/Dg)を25%以下とすることで、これらの突起36は、シール剤を流し込むときに、シール剤をコネクタ溝32の隅々まで行き渡らせる邪魔となりにくい。このようにすることで、シール剤をコネクタ溝32の隅々まで行き渡らせることができる。この電子機器2では、高いシール性が実現されている。
【0049】
上記では、コネクタ溝32に突起36を設ける場合の実施形態が説明された。ケース溝18に突起36が設けられてもよい。このとき、突起36は、ケース溝18の一方の側壁34のみに並べられていてもよく、両側壁34に並べられていてもよい。突起36が両側壁34に並べられている場合、一方の側壁34に並べられた突起36の位置と、他方の側壁34に並べられた突起36の位置とが、ケース溝18が延びる方向において同じであってもよく、ずれていてもよい。例えば、ケース溝18の一方の側壁34の突起36と、他方の側壁34の突起36とが、互い違いに並べられていてもよい。
【0050】
ケース溝18が傾斜部32bを備えるときは、この傾斜部32bに突起36が設けられるのが好ましい。ケース溝18に突起36を設ける場合の、突起36がない場所でのケース溝18の幅と、突起36が設けられた場所でのケース溝18の幅との比の好ましい範囲は、上記比(W2/W1)の好ましい範囲と同じである。ケース溝18に突起36を設ける場合の、突起36間の間隔と突起36の幅との比の好ましい範囲は、上記比(Wp/Dg)の好ましい範囲と同じである。
【0051】
この電子機器2では、コネクタ嵌合部18aはケース嵌合部18bより深くなっており、これによりコネクタ嵌合部18aの底とケース嵌合部18bの底との間に段差40が形成されている。この段差40は、シール剤の流動を阻害する障害体を構成している。これにより、コネクタ嵌合部18aに流し込まれたシール剤が、ケース嵌合部18bに流れ出ることが防止されている。コネクタ嵌合部18aにおいて、シール剤が不足した状態となることが防止されている。この電子機器2では、高いシール性が実現されている。
【0052】
図8において、両矢印Huは、段差40の高さを表す。高さHuは、2mm以上が好ましい。高さHuを2mm以上とすることで、この段差40は、シール剤の流動を効果的に阻害する。この電子機器2では、高いシール性が実現されている。高さHuは、10mm以下が好ましい。高さHuを10mm以下とすることで、
ケース溝18の深さが深くなり過ぎない。この装置では、必要となるシール剤の量が、抑えられている。
【0053】
上記では、ケース溝18の底に段差40を設ける場合の実施形態が説明された。コネクタ溝32の底に段差40が設けられてもよい。コネクタ溝32の底に段差40を設ける場合の段差40の高さの好ましい範囲は、上記高さHuの好ましい範囲と同じである。
【0054】
ケース嵌合部18bとコネクタ嵌合部18aとの境界部分には、下ケース10、上ケース12及びコネクタ8が位置している。この部分は、これら3つの部品の接点となっている。この部分では、他の部分と比べて構造が複雑であるため、高いシール性の実現が難しくなっている。
【0055】
この電子機器2では、ケース嵌合部18bとコネクタ嵌合部18aとの境界に、ケース溝18の液溜まり部42が位置している。電子機器2の組み立てにおいて、この液溜まり部42に、シール剤が流れ込む。この液溜まり部42に流れ込んだシール剤は、下ケース10、上ケース12及びコネクタ8の接点でのシール性の向上に効果的に寄与する。この電子機器2では、高いシール性が実現されている。
【0056】
以上説明されたとおり、本発明によれば、高いシール性が実現された電子機器が得られる。このことから、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明された電子機器は、自動車をはじめ、種々の車両や装置に使用される。
【符号の説明】
【0058】
2・・・電子機器
4・・・筐体
6・・・回路基板
8・・・コネクタ
10・・・下ケース
12・・・上ケース
14・・・ヒートシンク
16・・・下ケースの接触面
18・・・ケース溝
18a・・・コネクタ嵌合部
18b・・・ケース嵌合部
20・・・陥部
22・・・上ケースの接触面
24・・・ケース突条
26・・・中央部
28・・・筒部
30・・・コネクタ突条
32・・・コネクタ溝
32a・・・水平部
32b・・・傾斜部
34・・・側壁
36・・・突起
38・・・シール
40・・・段差
42・・・液溜まり部