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特許7420488UV放射から表面を保護するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】UV放射から表面を保護するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20240116BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20240116BHJP
   B64D 11/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B64C1/00 B
B64D11/00
【請求項の数】 32
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019109254
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020032717
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】16/007,872
(32)【優先日】2018-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グロス, アダム エフ.
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-214053(JP,A)
【文献】特開2016-064340(JP,A)
【文献】特開2009-149012(JP,A)
【文献】特開平11-246690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 9/00
B64C 1/00
B64D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーを紫外線(UV)劣化から保護する方法であって、
人工UV源(18)からのUV放射を内部物体(12)に当てることを含み、前記内部物体(12)が、i)ポリマー基板(14)、及びii)前記ポリマー基板(14)を前記UV放射から保護する、前記ポリマー基板(14)上の連続無機膜(16)を含み、
前記人工UV源(18)が、約180nmから約280nmの範囲の波長を有する放射を発し、
前記連続無機膜(16)が、3.1eVより大きく6.9eV以下のバンドギャップを有する半導体である、
方法。
【請求項2】
ポリマーを紫外線(UV)劣化から保護する方法であって、
人工UV源(18)からのUV放射を内部物体(12)に当てることを含み、前記内部物体(12)が、i)ポリマー基板(14)、及びii)前記ポリマー基板(14)を前記UV放射から保護する、前記ポリマー基板(14)上の連続無機膜(16)を含み、
前記人工UV源(18)が、約180nmから約280nmの範囲の波長を有する放射を発し、
前記連続無機膜(16)が絶縁体である、
方法。
【請求項3】
前記人工UV源(18)が、約180nmから約280nmの範囲の波長の放射のみを発する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記人工UV源(18)が、約200nmから約270nmの範囲の波長の放射のみを発する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記人工UV源(18)が、約200nmから約250nmの範囲の波長の放射のみを発する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記人工UV源(18)が、UVC LED、水銀蒸気ランプ、又はエキシマランプである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記内部物体(12)が屋内にあり、かつ壁、カウンター、シンク、ハンドル、蛇口、トイレ、電化製品、又は床である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー基板(14)が、エポキシ、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性オレフィン(TPO)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル(PVF)、シリコーン、又はそれらの任意の組み合わせから選択されたポリマーを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記半導体が、ダイヤモンド、リチウムコロンバイト、二酸化スズ、酸化ニッケル(II)、硫化亜鉛、ヒ化ホウ素、窒化ガリウム、炭化ケイ素、4H-SiC、酸化亜鉛、二酸化チタン、アナターゼ、フッ素化酸化スズ、酸化インジウムスズ及びそれらの混合物から選択された材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記半導体が、ダイヤモンド、炭化ケイ素、4H-SiC、硫化亜鉛、窒化ガリウム及びそれらの混合物から選択された材料を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記絶縁体が、ダイヤモンド状炭素、酸化インジウム、窒化クロム、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸石灰ガラスから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記連続無機膜(16)が、約10nmから約2mmの範囲の厚さを有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記連続無機膜(16)が、約30nmから約1mmの範囲の厚さを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記連続無機膜(16)が、約50nmから約500ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記連続無機膜(16)が、約100nmから約200ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記連続無機膜(16)が、約200nmから約280nmの範囲の波長を有する前記UV放射の50%から100%を吸収し、400nmから800nmの範囲の波長を有する放射の約60%以上を透過する、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記連続無機膜(16)が、約200nmから約280nmの範囲の波長を有する前記UV放射の90%から100%を吸収し、400nmから800nmの範囲の波長を有する放射の約80%から100%を透過する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記連続無機膜(16)が、前記UV放射に曝露される前記内部物体(12)の表面積の少なくとも90%を覆う、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記内部物体(12)が、前記連続無機膜(16)上にバリア層(22)を更に含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記バリア層(22)が、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、又はそれらの組み合わせから選択された材料を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記内部物体(12)が、前記ポリマー基板(14)と前記連続無機膜(16)との間に接着層(15)を更に含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記接着層(15)が、クロム、チタン、及びそれらの混合物から選択された材料を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記接着層(15)が、1nmから10nmの厚さを有する、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記内部物体(12)が、航空機、宇宙船、バス、ボート、鉄道車両、レクリエーション用車両、及び建物のいずれか1つの中に配置される、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ポリマーを紫外線(UV)劣化から保護する方法であって、
殺菌に適したUVC波長でのUV放射を吸収する特性を有する連続無機膜(16)をポリマー基板(14)上にコーティングすること
を含み、
前記連続無機膜(16)が、3.1eVより大きく6.9eV以下のバンドギャップを有する半導体である、
方法。
【請求項26】
ポリマーを紫外線(UV)劣化から保護する方法であって、
殺菌に適したUVC波長でのUV放射を吸収する特性を有する連続無機膜(16)をポリマー基板(14)上にコーティングすること
を含み、
前記連続無機膜(16)が絶縁体である、
方法。
【請求項27】
前記半導体が、ダイヤモンド、リチウムコロンバイト、二酸化スズ、酸化ニッケル(II)、硫化亜鉛、ヒ化ホウ素、窒化ガリウム、炭化ケイ素、4H-SiC、酸化亜鉛、二酸化チタン、アナターゼ、フッ素化酸化スズ、酸化インジウムスズ及びそれらの混合物から選択された材料を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記絶縁体が、ダイヤモンド状炭素、酸化インジウム、窒化クロム、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸石灰ガラスから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記連続無機膜(16)が、約10nmから約2mmの範囲の厚さを有する、請求項25から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記連続無機膜(16)が、約200nmから約280nmの範囲の波長を有する前記UV放射の90%から100%を吸収し、400nmから800nmの範囲の波長を有する放射の約80%から100%を透過する、請求項25から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記コーティングすることが、前記コーティングすることの前に前記ポリマー基板(14)上に存在する第1の無機膜を補充する、請求項25又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記コーティングすることは、前記ポリマー基板(14)が移動体に取り付けられた後に行われる、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマーを含む物体をUV劣化から保護するためのシステム及び方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
太陽からのUV放射が、ポリマー製の物体を含む多くの材料の劣化を引き起こすことがよく知られている。このような物体を保護するために、UV保護剤がよく使用される。ほとんどの従来のUV保護剤は、約275nmから約400nmの地上のUV放射から保護するように設計される。UV保護の現在の手法には、保護する表面にUV保護剤を組み込むか、表面の上部にUV保護剤又は吸収剤を含むポリマーコーティングを塗布することが含まれる。
【0003】
殺菌目的で、人工UV放射が使用されることもある。ただし、殺菌用途のUV放射は、紫外Cスペクトル(「UVC」)に対応する280nm以下で最も効果的である。以下で詳しく考察するように、従来のUV保護技術は、UVC放射に対する保護に効果的ではない場合がある。
【0004】
UV吸収剤がプラスチック又はポリマー表面に組み込まれる従来のシステムについて、吸収剤は、1)ヒンダードアミンと組み合わせた有機UV吸収分子、2)日焼け止めローション又は自動車用のセラミック窓の色合いとして市販されているポリマー膜に使用される酸化亜鉛又は二酸化チタンのナノ粒子、又は3)UV放射を吸収する無機顔料のいずれかである。ただし、このUV保護層には、連続的なUV保護層が含まれない。むしろ、これらのシステムで使用される吸収剤、ナノ粒子、及び顔料は、衛生化又は殺菌に使用される高強度のUV放射ではなく、低強度の太陽光ベースのUV放射を遮断するように設計される。したがって、これらの種類の有機UV吸収剤が275nm未満で機能するかどうかは不明である。更に、高強度のUVC放射のいずれかが吸収剤を透過するか、吸収剤分子、ナノ粒子又は顔料間のポリマー/プラスチックに吸収される場合、下にあるプラスチック又はポリマーが損傷することになる。最後に、1)有機分子が1-2重量%以上で相分離し、表面の外観が変化することになる、2)ナノ粒子が20-30重量%以上で凝集して、光の散乱により表面の外観を変化させることになる、及び3)顔料レベルが増加するにつれて、顔料が知覚されるポリマーの色を変化させることになる(これは望ましくないことが多い)ので、ポリマー又はプラスチックの保護剤の量を増やすことは、常に実現可能とは限らない。また、高レベルの充填剤は、ポリマーを非常に脆くして亀裂を生じさせることになる。
【0005】
他の従来のUV保護システムでは、ポリマーマトリックス材料中のUV吸収分子又は粒子を含む透明なUV保護膜が表面上に塗布されることがある。この膜/コーティングは、例えば、上記のヒンダードアミン又は酸化亜鉛又は酸化チタンのナノ粒子と組み合わせた有機UV吸収分子を使用して、すべてのUV放射を吸収することにより、表面をUV損傷から保護する。ただし、この手法は、ポリマーマトリックス材料がUV透過性であり、UV放射を吸収せず、フォトダークニングされる(photodarken)場合にのみ機能する。残念ながら、多くのポリマーは、UVC領域のUV放射を吸収するため、UVC放射に曝露されると、露光によりフォトダークニングすることになる。
【0006】
一般にUV保護とは関係のない分野では、工具、家電製品(蛇口、電化製品の前面、ハンドル)、手術用具、及び可動機械部品(ギア、シリンダーヘッド)の腐食防止と耐摩耗性のために、透明な連続無機コーティングが塗布される。例えば、TiN膜などの窒化物層を金属製の蛇口に物理的に蒸着して、腐食や水斑を防止することが知られている。ただし、これらのコーティングは、ポリマー材料のUV保護については一般的に知られていない。更に、TiNは可視光に対して透明ではない。
【0007】
したがって、280nm以下の波長を有する衛生化に使用されるUV放射から物体を含むポリマーを保護するための新しい膜は、当該技術分野における一歩前進とみなされるだろう。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、ポリマーをUV劣化から保護する方法を対象とする。方法は、人工紫外線(UV)源からのUV放射を内部物体に当てることを含み、内部物体は、i)ポリマー基板、及びii)ポリマー基板上の連続無機膜を含む。連続無機膜が、ポリマー基板を紫外線放射から保護する。
【0009】
本開示はまた、UV放射殺菌システムも対象とする。UV放射殺菌システムは、i)ポリマー基板、及びii)ポリマー基板上の連続無機膜を含む内部物体を含む。UV放射殺菌システムはまた、人工紫外線(UV)源の電源がオンになると、UV放射を内部物体上に当てるように方向付けられた人工UV源を含む。人工UV源は、殺菌に適したUVC波長で放射を発するように設計される。連続無機膜は、UVC波長でのUV放射を吸収する特性を有する。
【0010】
本開示はまた、内部物体も対象とする。内部物体は、ポリマー基板、及びポリマー基板上の連続無機膜を含む。連続無機膜は、殺菌に適したUVC波長でのUV放射を吸収する特性を有する。
【0011】
本開示はまた、連続無機膜をポリマー基板上にコーティングすることを含む方法も対象とする。連続無機膜は、殺菌に適したUVC波長でのUV放射を吸収する特性を有する。
【0012】
先述の一般的な記載及び後述の詳細な説明は、例示及び説明に過ぎず、特許請求される本教示を制限するものでないと理解すべきである。
【0013】
本明細書に組み込まれ、かつこの明細書の一部を構成する添付図面は、本教示の態様を例示しており、説明部分と共に、本教示の原理を説明する役割を果たしている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示によるUV放射殺菌システムを示す。
図2】本開示による、表面を殺菌するためのシステムで使用されるUVC放射などの紫外線(UV)放射を、人工UV源から内部物体に当てることを含む方法を示す。
図3】本開示による、ポリマー基板上に連続無機膜をコーティングすることを含む方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面のいくつかの細部は、厳密な構造的精度、細部、及び縮尺を維持するよりむしろ、理解を促すために簡略化されて図示されていることに留意されたい。
【0016】
以下、本教示について詳しく言及していくが、本教示の実施例は、添付図面に示されている。図面において、同一の要素を示すために、類似の参照番号が全体を通して使用されている。以下の説明において、添付図面を参照するが、添付図面は本明細書の一部を形成するものであり、本教示を実行する特定の例示的な実施例によって示されている。したがって、以下の説明は単なる例示にすぎない。
【0017】
180nmから280nmの範囲の波長を含むUVC放射は、以下本明細書で説明するように、例えば航空機のトイレの表面、又は他のそのような表面など、細菌が問題となる表面の殺菌に非常に効果的であることが分かった。殺菌される表面は、ポリマーを含むことが多い。出願人は、これらのポリマー表面を殺菌するために繰り返し使用すると、UVC放射がポリマー表面を変色させ、潜在的に劣化又は亀裂を引き起こす可能性があることを発見した。本開示は、これらの問題に対する解決策を提供し、これには、UVC放射に曝露されたポリマー表面を連続無機膜で保護することが含まれる。連続無機膜は、UVC放射を吸収し、それにより、下にあるポリマー基板の劣化を低減又は防止する。この解決策とその他の技術的効果については、以下で詳しく説明する。
【0018】
図1を参照すると、本開示は、UV放射殺菌システム10を対象とする。このシステムは、ポリマー基板14を含む内部物体12を含む。連続無機膜16がポリマー基板14上に配置される。人工UV源18は、人工UV源18の電源がオンになると、紫外線(「UV」)放射20を内部物体12に当てるように方向付けられる。人工UV源18は、約180nm-約280nmの範囲の波長など、殺菌に適したUVC波長で放射を発するように設計される。連続無機膜16は、人工UV源18が発するように設計されたUVC波長のUV放射を吸収する特性を有し、それによりポリマー基板14をUV放射から保護する。
【0019】
内部物体12は、UV放射に曝露される可能性が高いポリマー基板14を含む任意の物体とすることができる。本開示の実施態様において、内部物体12は、構造体21内に配置することができる。構造21は、例えば、航空機、宇宙船、公共又は民間の建物、バス、クルーズ船などのボート、潜水艦など、鉄道車両またはレクリエーション用車両のいずれかのトイレ又は食品調理エリアなどの建物又は移動体の中といった、UV放射が殺菌目的で使用されうる屋内とすることができる。内部物体12の例は、壁、カウンター、シンク、ハンドル、蛇口、トイレ、電化製品又は床などの屋内にある任意の物体、又はUV保護が望まれるポリマー表面を含む他の物体を含むことができる。ポリマー基板14は、内部物体12の任意の部分とすることができ、内部物体の任意の重量%を構成することができる。例えば、ポリマー基板(ポリマー基板に使用される任意の無機又は有機充填剤を含む)は、連続無機膜16又はポリマー基板内のワイヤメッシュ若しくは金属バーといった機械的補強材の重量をカウントせずに、内部物体の1重量%から100重量%を含むことができる。
【0020】
ポリマー基板14は、UVC放射を吸収する任意の適切なポリマーを含むことができる。この用途の目的では、ポリマーは、10,000を超える多くの繰り返しモノマー単位、例えば、10,000から1E+100以上のモノマー単位、又は100,000から100,000,000のモノマー単位などで構成される有機高分子である。モノマー単位の数の上限は、ポリマー基板のサイズによってのみ制限されるため、実質的に無制限になる可能性があるだろう。ポリマーの例は、エポキシ、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性オレフィン(TPO)、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、テフロン)、ポリフッ化ビニル(PVF)及びシリコーン、又はそれらの任意の組み合わせを含む。PVFポリマーの商業的な例は、デラウェア州ウィルミントンのE.I.du Pont de Nemours and Companyによって製造されているTEDLAR(登録商標)である。
【0021】
保護されていない場合、ポリマー基板14は、UVC放射を吸収する。光の吸収は、ポリマーの化学結合を光学的に励起した結果である。UVC放射の吸収は、変色(本明細書ではフォトダークニングと呼ばれる)及び亀裂などの他の種類の劣化をもたらす可能性がある。ポリマーが、例えば、入射UVC放射の1-2%から100%、例えば10%から100%を吸収する場合、そのようなポリマーの劣化は、時間の経過とともに生じることがある。
【0022】
そのような劣化を低減又は防止するために、ポリマー基板上に連続無機膜を使用して、UVC放射を遮断する。連続無機膜は、人工UV源18が放出するように設計されたUVC波長のUV放射を吸収する任意の半導体又は絶縁体とすることができる。半導体材料が連続無機膜として使用される場合、半導体は、3.1eVを超えるバンドギャップを有し、そのバンドギャップを超えるエネルギーで光を吸収する。半導体層が透明に見えるように、3.1eVの最小値が選択される。半導体バンドギャップの上限は、6.9eV以下又は約6.2eVなど、UV放射源のエネルギーよりも小さくなる。適切な半導体材料の例は、所望のバンドギャップを有するIV族半導体、II-VI族半導体、III-V族半導体、金属リン化物半導体、金属窒化物半導体、金属硫化物半導体、及び金属酸化物半導体から選択することができる。具体例は、ダイヤモンド、リチウムコロンバイト、二酸化スズ、酸化ニッケル(II)、硫化亜鉛、ヒ化ホウ素、窒化ガリウム、4H-SiCなどの炭化ケイ素、酸化亜鉛、アナターゼなどの二酸化チタン、フッ素化酸化スズ、インジウム酸化スズ、及びそれらの混合物を含む。実施態様では、半導体材料は、4H-SICなどの炭化ケイ素、硫化亜鉛及び窒化ガリウムから選択される。
【0023】
連続無機膜として使用される絶縁材料は、本明細書で考察されるUVC範囲のいずれかの波長の光を含むUVC放射を吸収する任意の導電性材料とすることができる。連続無機膜が絶縁体である実施態様では、絶縁体は、例えば、ダイヤモンド状炭素、酸化インジウム、窒化クロム、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸石灰ガラスから選択することができる。市販のガラスは、例えば、ニューヨーク州コーニングのコーニング社製のGorilla Glass(登録商標)及びWillow Glass(登録商標)、並びにPyrex(登録商標)(ホウケイ酸ガラス)を含む。GorillaGlass(登録商標)は、二酸化ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、及びナトリウムの4つすべてといった、1つ又は複数を含むアルミノケイ酸塩ガラスである。WillowGlass(登録商標)は、アルカリフリーのホウケイ酸ガラスである。
【0024】
「連続無機膜」という語句の「連続」という用語は、膜が個別の無機粒子でできているのではなく、UV放射に曝露される内部物体の表面積の少なくとも90%(90%から100%など)を覆う材料のシートであることを示す。使用する場合、有機膜は時間とともにフォトダークニングする可能性が高いため、有機膜の代わりに無機膜が使用される。
【0025】
当技術分野でよく理解されているように、膜のUV吸収は、一般に膜の厚さに依存する可能性がある。連続無機膜は、所望のUV吸収を提供する任意の適切な厚さを有することができる。適切な厚さの例示的な範囲は、約10nmから約2mm、又は約30nmから約1mm、又は約50nmから約500ミクロン、又は約100nmから約200ミクロンである。これらの厚さの範囲内の連続無機膜は、UV放射の約50%から約100%、例えば、約70%から約100%、約80%から100%、又は約90%から約100%などを吸収することができ、UV放射の約100%、ここで、UV放射は、約180nmから約280nmの範囲内の波長、例えば、約200nmから約280nm、又は約200nmから約270nm、又は約200nmから約250nmの波長を有する。更に、連続無機膜は、可視光を透過することができる。例えば、連続無機膜は、400nmから800nmの可視スペクトルの放射の約80%から100%など、約60%以上を透過させる。実施態様では、連続無機膜16は、実質的に透き通って又は透明に見えるので、連続無機膜16を通して見ると、下にあるポリマー基板14を人が目視することができる。必要に応じて、連続無機膜を滑らかにするか、光沢を低減するために粗くすることができる。膜に吸収されるUV放射の量を測定する技術がよく知られている。例えば、標準的な技術は、2ビームUV/VIS/NIR分光計で透過率を測定することである。分光計のベースラインにサンプルがない100%の透過スペクトルが、最初に収集される。次に、サンプルをサンプルホルダーに入れ、サンプルを含むビームとサンプルを含まないビームとの透過率を比較する。これと同じ技術は、可視スペクトルの放射に対する材料の透過率を測定するために使用することができる。
【0026】
本開示の連続無機膜は、連続無機膜なしで同一のUV放射に曝露された同一の下位のポリマー層と比較して、下位のポリマー層へのUV損傷を低減又は防止すること、連続無機膜なしで同一のUV放射に曝露された同一の下位のポリマー層と比較して、UV損傷による下位のポリマー層の変色を低減又は防止すること、連続無機膜なしで同一の下位のポリマー層と比較して耐スクラッチ性を改善することのうちの1つ又は複数を提供することができる。
【0027】
本開示の実施態様において、内部物体は、ポリマー基板14と連続無機膜16との間に任意の接着層15を更に含むことができる。実施例は、クロム、チタン、又はそれらの混合物から選択された材料を含む接着層を含む。接着層15の厚さは、例えば1nmから10nmなどの任意の適切な厚さとすることができる。そのような接着層を作るための例示的な技術は、当技術分野で周知のスパッタリング又は他の堆積技術を含む。
【0028】
本開示の実施態様において、内部物体は、連続無機膜上に配置されたオプションのバリア層22を更に含む。バリア層22は、水又は他の潜在的な汚染物質を通さない任意の適切な材料を含む。適切な材料の例は、酸化ケイ素ガラス、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、及びそれらの任意の組み合わせを含む。入射UV放射のエネルギーより大きいバンドギャップを有する任意の他の無機材料を使用することができる。例えば、バンドギャップは、3.1eVから約6.1eV、又は約3.3eVから約5.9eVの範囲など、3.1eVより大きくてもよい。バリア層22は、上記の任意の連続無機膜上で使用することができるが、上記の半導体材料のいずれかなど、水を潜在的に吸収する連続無機膜を保護するのに特に有用である場合がある。
【0029】
人工UV源18は、約180nmから約280nmの範囲の波長を有する放射を発する。例えば、人工UV光源は、約200nmから約280nm、又は約200nmから約250nm、又は約200nmから約230nmの範囲の波長を有する放射を発する。実施例では、UV源は約180nmから約280nmの範囲の放射のみを発する。実施例では、UVC放射は、単色又は実質的に単色であり、実質的に単色は、放射の少なくとも85%が特定の波長(例えば、KrClエキシマ電球について222nm)にある放射として定義される。単色及び実質的に単色のUV光源は、当技術分野で周知であり、例えば、UV放射を発するLED、エキシマ電球、及びいくつかの水銀低圧電球を含む。約180nmから約280nmの波長の範囲は、特定の利点を提供することができる。例えば、280nm以下の波長で、微生物を減少させる又は除去することが知られている。例えば、約260-約280nmの波長は、微生物のDNAに損傷を与えることが知られているが、240nm未満の波長は、微生物のタンパク質に損傷を与えることが知られている。更に、オゾンは一般に望ましくないと考えられており、200nm未満のエネルギーを有する源によって生成されるため、状況によっては200nm以上の源が望ましい場合がある。約200nmから約230nmの範囲の波長には、追加の利点がありうる。例えば、コロンビア大学の研究では、この範囲の波長(例えば、207nm及び222nm)が254nmの水銀源よりもヒト細胞に与える影響が少ないことが示された。
【0030】
放射が当たる表面でのUV放射の放射強度は、所望の殺菌を提供できる任意の適切な強度とすることができる。例えば、放射強度は、約0.1-30ミリワット/cm、例えば0.5-約20ミリワット/cm、例えば約1-約10ミリワット/cm、例えば約2-約5ミリワット/cmの範囲とすることができる。上記列挙の波長と強度での光は、表面の細菌などの微生物を除去又は低減するのに役立つ可能性がある。
【0031】
人工UV源18は、所望の波長でUVC放射を発する任意の既知の又は今後開発されるUV源とすることができる。既知の適切な光源の例は、UVC LED及び水銀蛍光灯(水銀蒸気ランプとも呼ばれる)を含む。LEDの波長は、約230nmから約280nmまでと低い。水銀蛍光灯は、約254nmの波長の放射を発する。更に他のUVC源及びそれらの関連する波長は、ヨウ化クリプトン(KrI)エキシマランプ(190nm)、フッ化アルゴン(ArF)エキシマランプ(193nm)、臭化クリプトン(KrBr)エキシマランプ(207nm)、臭化クリプトン(KrCl)エキシマランプ(222nm)、フッ化クリプトン(KrF)エキシマランプ(248nm)ヨウ化キセノン(XeI)エキシマランプ(253nm)、塩化物(Cl2)エキシマランプ(259nm)及び臭化キセノン(XeBr)エキシマランプ(282nm)を含む。約180nmから約280nmの放射波長に関連する上記の同じ技術的効果は、これらのUVC放射源にも関連し、これらはすべてこの波長範囲の放射を発する。例えば、約222nmで放射するKrClエキシマランプと、207nmで放射するKrBrエキシマランプは、上記のように254nmの水銀源を引き起こす癌よりもヒト細胞に与える損傷が少ないという技術的効果、更には、実質的な量のオゾン(例えば、国立労働安全衛生研究所で定められた分子オゾンで0.1ppm未満)を発生させずに微生物を除去又は削減する利点がある。
【0032】
本開示はまた、連続無機膜の製造方法も対象とする。図3に示されるように、この方法は、ポリマー基板上に連続無機膜をコーティングすることを含む。本明細書に記載の連続無機膜はいずれも、既知の又は今後開発される任意の適切なコーティング方法を使用して、コーティングすることができる。適切なコーティング方法の例は、物理蒸着、化学蒸着、スパッタリング、スプレー熱分解、プラズマコーティング、浸漬コーティング及びラミネーティングなどの気体又は液体コーティング技術を含む。連続無機膜は、ポリマー基板上に形成することができ、又は代替的には、ガラス層(例えば、ホウケイ酸ガラス又は本明細書で適切であると記載されている他のガラス材料のいずれか)を事前に形成し、次いで事前に形成されたガラス層をポリマー基板に積層することなどによって、連続無機膜を個別に形成し、ポリマー基板に取り付けることができる。得られた無機膜は、本明細書に記載の波長のいずれかなど、殺菌に適したUVC波長のUV放射を吸収する特性を有する。
【0033】
本開示の方法は、連続無機膜を初めてポリマー基板に塗布するためのものでありうる。代替的には、無機膜を作る方法は、コーティングが、少なくとも部分的に摩耗するか、そうでなければUV保護に対する有効性を失ったポリマー基板上にすでに存在する連続的な無機膜を補充するプロセスとすることができる。例えば、連続無機膜を補充するためのコーティングは、ポリマー基板が本明細書に記載の移動体のいずれかのような移動体に設置された後に起こりうる。
【0034】
本開示はまた、ポリマーをUV劣化から保護する方法も対象とする。図2に示すように、この方法は、表面を殺菌するためのシステムで使用されるUVC放射などの紫外線(UV)放射を、人工UV源から内部物体に当てることを含む。内部物体は、ポリマー基板上に配置された連続無機膜を含み、連続無機膜は、紫外線放射からポリマー基板を保護するように作用する。内部物体は、本明細書に記載の内部物体のいずれかとすることができる。連続無機膜は、本明細書に記載の連続無機膜のいずれかとすることができる。
【0035】
更に、本開示は、以下の条項による実施例を含む。
条項1. ポリマーを紫外線(UV)劣化から保護する方法であって、人工UV源からのUV放射を内部物体に当てることを含み、内部物体が、i)ポリマー基板、及びii)ポリマー基板をUV放射から保護する、ポリマー基板上の連続無機膜を含む方法。
条項2. 人工UV源が、約180nmから約280nmの範囲の波長を有する放射を発する、条項1に記載の方法。
条項3. 人工UV源が、約180nmから約280nmの範囲の波長の放射のみを発する、条項1に記載の方法。
条項4. 人工UV源が、UVC LED、水銀蒸気ランプ、又はエキシマランプである、条項1に記載の方法。
条項5. 内部物体が屋内にあり、かつ壁、カウンター、シンク、ハンドル、蛇口、トイレ、電化製品、又は床である、条項1から4のいずれか一項に記載の方法。
条項6. ポリマー基板が、エポキシ、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性オレフィン(TPO)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル(PVF)、シリコーン、又はそれらの任意の組み合わせから選択されたポリマーを含む、条項1から5のいずれか一項に記載の方法。
条項7. 連続無機膜が、3.1eVより大きく6.9eV以下のバンドギャップを有する半導体である、条項1から6のいずれか一項に記載の方法。
条項8. 半導体が、ダイヤモンド、リチウムコロンバイト、二酸化スズ、酸化ニッケル(II)、硫化亜鉛、ヒ化ホウ素、窒化ガリウム、炭化ケイ素、4H-SiC、酸化亜鉛、二酸化チタン、アナターゼ、フッ素化酸化スズ、酸化インジウムスズ及びそれらの混合物から選択された材料を含む、条項7に記載の方法。
条項9. 連続無機膜が絶縁体である、条項1から8のいずれか一項に記載の方法。
条項10. 絶縁体が、ダイヤモンド状炭素、酸化インジウム、窒化クロム、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸石灰ガラスから選択される、条項9に記載の方法。
条項11. 連続無機膜が、約10nmから約2mmの範囲の厚さを有する、条項1から10のいずれか一項に記載の方法。
条項12. 連続無機膜が、約200nmから約280nmの範囲の波長を有するUV放射の90%から100%を吸収し、400nmから800nmの範囲の波長を有する放射の約80%から100%を透過する、条項1から11のいずれか一項に記載の方法。
条項13. 連続無機膜が、UV放射に曝露される内部物体の表面積の少なくとも90%を覆う、条項1から12のいずれか一項に記載の方法。
条項14. 内部物体が、連続無機膜上にバリア層を更に含む、条項1から13のいずれか一項に記載の方法。
条項15. 内部物体が、ポリマー基板と連続無機膜との間に接着層を更に含む、条項1から14のいずれか一項に記載の方法。
条項16. 内部物体が、航空機、宇宙船、バス、ボート、鉄道車両、レクリエーション用車両、及び建物のいずれか1つの中に配置される、条項1に記載の方法。
条項17. i)ポリマー基板、及びii)ポリマー基板上の連続無機膜を含む内部物体と、人工紫外線(UV)源の電源がオンになると、UV放射を内部物体上に当てるように方向付けられた人工UV源であって、殺菌に適したUVC波長で放射を発するように設計されている人工UV源とを含み、連続無機膜が、UVC波長でのUV放射を吸収する特性を有する、UV放射殺菌システム。
条項18. 人工UV源が、約180nmから約280nmの範囲の波長を有する放射を発する、条項17に記載のシステム。
条項19. 人工UV源が、UVC LED、水銀蒸気ランプ、又はエキシマランプである、条項17又は18に記載のシステム。
条項20. 内部物体が屋内にあり、かつ壁、カウンター、シンク、ハンドル、蛇口、トイレ、電化製品、又は床である、条項17から19のいずれか一項に記載のシステム。
条項21. ポリマー基板が、エポキシ、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性オレフィン(TPO)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル(PVF)、シリコーン、又はそれらの任意の組み合わせから選択されたポリマーを含む、条項17から20のいずれか一項に記載のシステム。
条項22. 連続無機膜が、3.1eVより大きく6.9eV以下のバンドギャップを有する半導体である、条項17から21のいずれか一項に記載のシステム。
条項23. 半導体が、ダイヤモンド、リチウムコロンバイト、二酸化スズ、酸化ニッケル(II)、硫化亜鉛、ヒ化ホウ素、窒化ガリウム、炭化ケイ素、4H-SiC、酸化亜鉛、二酸化チタン、アナターゼ、フッ素化酸化スズ、酸化インジウムスズ及びそれらの混合物から選択された材料を含む、条項22に記載のシステム。
条項24. 連続無機膜が絶縁体である、条項17から23のいずれか一項に記載のシステム。
条項25. 絶縁体が、ダイヤモンド状炭素、酸化インジウム、窒化クロム、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸石灰ガラスから選択される、条項24に記載のシステム。
条項26. 内部物体が、連続無機膜上にバリア層を更に含む、条項17から25のいずれか一項に記載のシステム。
条項27. 内部物体が、航空機、宇宙船、バス、レクリエーション用車両、ボート、鉄道車両及び建物のいずれか1つの中に配置される、条項17から26のいずれか一項に記載のシステム。
条項28. ポリマー基板と、殺菌に適したUVC波長でのUV放射を吸収する特性を有する、ポリマー基板上の連続無機膜とを含む内部物体。
条項29. 屋内にあり、かつ壁、カウンター、シンク、ハンドル、蛇口、トイレ、電化製品、又は床である、条項28に記載の内部物体。
条項30. ポリマー基板が、エポキシ、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性オレフィン(TPO)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル(PVF)、シリコーン、又はそれらの任意の組み合わせから選択されたポリマーを含む、条項28又は29に記載の内部物体。
条項31. 連続無機膜が、3.1eVより大きく6.9eV以下のバンドギャップを有する半導体である、条項28から30のいずれか一項に記載の内部物体。
条項32. 半導体が、ダイヤモンド、リチウムコロンバイト、二酸化スズ、酸化ニッケル(II)、硫化亜鉛、ヒ化ホウ素、窒化ガリウム、炭化ケイ素、4H-SiC、酸化亜鉛、二酸化チタン、アナターゼ、フッ素化酸化スズ、酸化インジウムスズ及びそれらの混合物から選択された材料を含む、条項31に記載の内部物体。
条項33. 連続無機膜が絶縁体である、条項28から32のいずれか一項に記載の内部物体。
条項34. 絶縁体が、ダイヤモンド状炭素、酸化インジウム、窒化クロム、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸石灰ガラスから選択される、条項33に記載の内部物体。
条項35. 連続無機膜上にバリア層を更に含む、条項28から34のいずれか一項に記載の内部物体。
条項36. 殺菌に適したUVC波長でのUV放射を吸収する特性を有する連続無機膜をポリマー基板上にコーティングすることを含む方法。
条項37. コーティングすることが、コーティングすることの前にポリマー基板上に存在する第1の無機膜を補充する、条項36に記載の方法。
条項38. コーティングすることは、ポリマー基板が移動体に取り付けられた後に行われる、条項37に記載の方法。
【0036】
本開示の広い範囲を説明している数値の範囲及びパラメータは概算であるが、特定の実施例で説明されている数値は、可能な限り正確に記載されている。しかしながら、任意の数値は、それぞれの試験的測定に見られる標準偏差から必然的に生じる若干の誤差を本質的に含んでいる。更に、本明細書で開示されたすべての範囲が、本明細書内に包含される任意のすべての部分範囲を含むと理解すべきである。
【0037】
本教示は1つ又は複数の実施態様に関して例示されてきたが、添付の特許請求の範囲の主旨及び範囲から逸脱することなく、示された例に対して変更及び/又は修正を行うことができる。また、本教示の特定の特徴が幾つかの実施態様のうちの1つのみに関して開示されてきたかもしれないが、こうした特徴は、任意の所与の機能若しくは特定の機能に関して所望かつ有利であり得るように、他の実施態様の1つ又は複数の特徴と組み合わせてもよい。また更に、「含んでいる(including)」「含む(includes)」「有している(having)」「有する(has)」「伴う(with)」又はそれらの変形の用語が詳細な説明及び特許請求の範囲のどちらにも使用される限りにおいては、そのような用語は、「備えている(comprising)」という用語と同様に包含されることを意図している。更に、本明細書における考察及び特許請求の範囲において、「約」という用語は、変更が本明細書に記載の意図された目的に対してプロセス又は構造の不適合を生じさせない限り、列挙された値がいくらか変更されてもよいことを示している。最後に、「例示的」は、記述が、理想的であることを示唆するというよりむしろ、例として使用されていることを示している。
【0038】
先ほど開示された変形例並びに他の特性及び機能、若しくはそれらの代替例が、他の多くの異なるシステム又は用途に組み込まれてもよいことが理解されよう。現在予見できない若しくは予期しない様々な代替例、修正例、変形例、又はそれらの中での改良が、引き続き当業者により実行されるかもしれないが、それらもまた以下の特許請求の範囲によって包含されることになろう。
図1
図2
図3