(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】燃料荷卸しシステム
(51)【国際特許分類】
B67D 7/34 20100101AFI20240116BHJP
B67D 7/78 20100101ALI20240116BHJP
【FI】
B67D7/34
B67D7/78 D
(21)【出願番号】P 2019118459
(22)【出願日】2019-06-26
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小関 実
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-064637(JP,A)
【文献】特開2006-287523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 7/34
B67D 7/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクローリ車に設けられ、前記タンクローリ車のハッチに対応して設けられた底弁の開閉を行う開閉制御部と、
係員が携帯可能であり前記開閉制御部と無線通信を行う携帯端末とを備え、
前記携帯端末からの前記底弁の開閉の指示に基づき当該底弁を開閉することにより、前記ハッチからタンクに燃料の荷卸しを行う燃料荷卸しシステムにおいて、
前記携帯端末は、前記底弁を開にするときおよび前記底弁を開にする間は、前記底弁を開にする指令信号となる開信号を前記開閉制御部に所定間隔で繰り返し送信し、
前記開閉制御部は、前記携帯端末
から前記開信号を受信すると前記底弁を開にし、前記開信号を受信してから前記所定間隔を超えて前記開信
号が途
絶えると、前記底弁を閉にすることを特徴とする燃料荷卸しシステム。
【請求項2】
タンクローリ車に設けられ、前記タンクローリ車のハッチに対応して設けられた底弁の開閉を行う開閉制御部と、
係員が携帯可能であり前記開閉制御部と無線通信を行う携帯端末とを備え、
前記携帯端末からの前記底弁の開閉の指示に基づき当該底弁を開閉することにより、前記ハッチからタンクに燃料の荷卸しを行う燃料荷卸しシステムにおいて、
前記開閉制御部は、前記携帯端末との通信が途切れたことを検出した場合に、前記底弁を閉にし、
前記開閉制御部は、前記ハッチ内の燃料残量を計測するためのハッチ液面計からの信号を含む前記底弁の開閉の制御に用いる状態信号を前記携帯端末に送信し、
前記携帯端末は、前記開閉制御部から受信した前記状態信号と前記係員による前記携帯端末の操作とに基づいて前記底弁を開とするか否かを演算し、この演算結果に基づいて前記開閉制御部に指令信号を送信することを特徴とす
る燃料荷卸しシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば給油所等の地下タンクにタンクローリ車から燃料(ガソリン、軽油、灯油等)を荷卸しするのに好適に用いられる燃料荷卸しシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、製油所、油槽所等から荷卸し先の給油所(ガソリンスタンド)、工場等に燃料を配送する車両として、タンクローリ車が知られている。タンクローリ車には、複数のハッチ(室、槽)が搭載されており、これらの各ハッチには、荷卸し先から予め注文された液種別の燃料がそれぞれ積込まれている。タンクローリ車が指定の荷卸し先に到着すると、所定のハッチに積込まれた燃料の液種と荷卸し先の地下タンクに貯留された液種とが一致した場合に、当該地下タンクへの荷卸しが開始される。
【0003】
従来技術による燃料荷卸しシステムは、荷卸しの開始や停止を指示するために操作される操作ボタンを有する荷卸し管理用のコンピュータが、タンクローリ車に搭載されている。この場合、荷卸し作業を行う係員(操作者)は、例えば、荷卸しホースを地下タンクの注油口に手動で接続する作業を終えた後に、操作ボタンを操作するためにタンクローリ車まで戻る必要があり、係員にとって手間のかかる作業となっていた。これに対して、特許文献1には、無線通信可能な携帯端末(例えば、タブレット端末)を備えた荷卸しシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料の荷卸しの開始または停止を、タブレット端末等の携帯端末を用いて無線により行う場合を考える。この場合、例えば、携帯端末から送信された荷卸し開始の指令信号を受信したときに燃料の荷卸しを開始し、携帯端末から送信された荷卸し停止の指令信号を受信したときに燃料の荷卸しを停止する構成とすることが考えられる。しかし、この構成は、携帯端末から荷卸し開始の指令信号を受信することにより燃料の荷卸しを開始した後、携帯端末が無線通信可能範囲から外れる等により荷卸し停止の指令信号を受信できなくなった場合に、燃料の荷卸しを停止できなくなる可能性がある。即ち、携帯端末を用いて無線により燃料の荷卸しを指示する場合、操作者が意図せず燃料の荷卸しが継続されてしまう可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、意図せず燃料の荷卸しが継続されてしまうことを抑制できる燃料荷卸しシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、タンクローリ車に設けられ、前記タンクローリ車のハッチに対応して設けられた底弁の開閉を行う開閉制御部と、係員が携帯可能であり前記開閉制御部と無線通信を行う携帯端末とを備え、前記携帯端末からの前記底弁の開閉の指示に基づき当該底弁を開閉することにより、前記ハッチからタンクに燃料の荷卸しを行う燃料荷卸しシステムにおいて、前記携帯端末は、前記底弁を開にするときおよび前記底弁を開にする間は、前記底弁を開にする指令信号となる開信号を前記開閉制御部に所定間隔で繰り返し送信し、前記開閉制御部は、前記携帯端末から前記開信号を受信すると前記底弁を開にし、前記開信号を受信してから前記所定間隔を超えて前記開信号が途絶えると、前記底弁を閉にする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハッチの底弁を開閉する開閉制御部は、携帯端末から開閉制御部への通信が途切れると、底弁を閉にする。このため、意図せず燃料の荷卸しが継続されてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態による燃料荷卸しシステムが適用されたタンクローリ車から給油所の地下タンクに燃料の荷卸しを行う状態を示す一部破断の構成図である。
【
図2】タンクローリ車と地下タンクとの間の荷卸し作業を模式的に示す構成図である。
【
図3】携帯端末(タブレット端末)および開閉制御部(荷卸し制御盤)を含む荷卸し制御装置を底弁、センサ等と共に示すブロック図である。
【
図4】携帯端末(タブレット端末)と開閉制御部(荷卸し制御盤)との間で送信される各種信号の送信間隔(応答時間)等を一覧表で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態による燃料荷卸しシステムとして、タンクローリ車から給油所の地下タンクに燃料を荷卸しする場合を例に挙げ、添付図面を参照して説明する。
【0011】
図1において、給油所1の敷地地下には、複数液種の燃料(例えば、レギュラーガソリン、ハイオクガソリン、灯油または軽油等)を貯留するタンクとしての地下タンク2が埋設されている。地下タンク2は、通常は複数個に分離または分画して設けられ、それぞれのタンク毎に液種の異なる液体燃料(例えば、レギュラーガソリン、ハイオクガソリン、灯油または軽油等)が貯留される。
【0012】
以下の説明では、複数の地下タンク2-n(n=1,2,3,4,…)とし、全体としては、地下タンク2という。なお、
図1および
図2では、例えば合計3個の地下タンク2-nを、地下タンク2-1,2-2,2-3として示している。また、
図2では、例えば合計3個の注油口4を示している。しかし、これは説明の都合上で符号を付したものであり、地下タンク2および注油口4の個数や配列等はこれに限られるものではない。また、液種と油種とは同じ意味で用いている。
【0013】
各地下タンク2-nは、それぞれ注油管3(複数個)を介して、敷地適所に配置された複数の注油口4と接続されている。各地下タンク2-nは、注油口4から各注油管3を介して、タンクローリ車8から燃料の補給を受ける。なお、各地下タンク2-nは、敷地適所に配置された給油用の計量機にも供給管(いずれも図示せず)を介して接続されている。計量機は、ポンプ、流量計等の機器(いずれも図示せず)を備えており、各地下タンク2-n内から貯留されている燃料を汲み上げ、その燃料を給油車両等の給油対象に供給(給油)する。
【0014】
各地下タンク2-nには、それぞれの燃料液面を個別に検出する液面検出器5が設けられている。これにより、地下タンク2-n内の燃料残量が個別に監視されている。液面検出器5からの検出信号は、給油所1の敷地適所に設置された地下タンク管理端末6(以下、タンク管理端末6という)に出力される。タンク管理端末6は、給油所事務所7から離間した位置に配置されている。タンク管理端末6は、給油所事務所7に配置されたメインのタンク管理装置(地下タンク管理装置)に専用の回線(いずれも図示せず)を介して接続されている。タンク管理端末6は、例えばタンクローリ車8による燃料の荷卸し作業時に、タンク管理装置から貯油管理情報等が送信される。
【0015】
これにより、タンク管理端末6は、各地下タンク2-nの液面検出器5と個別に接続され、各液面検出器5からの計測出力に基づいて各地下タンク2-nの燃料残量(在庫量)等の液量情報を演算により求めることができる。タンク管理端末6は、予め設定された各地下タンク2-nの個別識別情報(例えば、タンク番号)、貯留液種、タンク容量等のタンク情報と一緒に、この演算した各地下タンク2-nの液量情報をデータ記憶部(図示せず)に記憶し、これらタンク情報や液量情報を基に各地下タンク2-nの貯油管理を行うことができる。
【0016】
換言すると、タンク管理端末6は、各地下タンク2-nに貯留されている燃料の残量をタンク毎の在庫量として更新可能に記憶することができる。タンク管理端末6は、その記憶内容を、通信インタフェース6Aを介して後述の荷卸し制御装置23へと電送することができる。地下タンク2-nに貯留されている燃料の残量(タンク毎の在庫量)は、計量機による燃料の汲み上げやタンクローリ車8からの燃料の補給によって変動する。
【0017】
タンクローリ車8は、給油所1に燃料を配送する運搬車両である。タンクローリ車8の前部には、キャブ8Aが設けられている。キャブ8A内には、例えば運転席、ステアリングホイール、後述のデータ読取り器31(
図3)等が設けられている。タンクローリ車8は、キャブ8Aの後側に車載タンク9を備えている。車載タンク9は、内部が仕切り板によって複数のハッチ10-N(N=1,2,3,4,…)に仕切られた構造になっている。例えば
図2では、車載タンク9の合計5個のハッチ10-Nを、ハッチ10-1,10-2,10-3,10-4,10-5として示している。しかし、これは説明の都合上で符号を付したものであり、ハッチ10-Nの個数や配列等はこれに限られるものではない。
【0018】
燃料の輸送に当たって、出荷所としての製油所、油槽所等では、配送先からの注文に応じて、タンクローリ車8のハッチ10-N毎に積込液種や積込液量が適宜に割付けされる。タンクローリ車8には、ハッチ10-N毎に、割付け液種が割付け液量分だけ出荷所の出荷装置によって積込みされる。例えば、
図2に示すハッチ10-1には「ハイオクガソリン」を貯蔵し、ハッチ10-2,10-3には「レギュラーガソリン」を貯蔵し、ハッチ10-4には「灯油」を貯蔵し、ハッチ10-5には「軽油」を貯蔵するように、ハッチ10-N毎に配送先からの注文に応じた所定の液種が所定量だけ積み込まれる。各ハッチ10-Nには、当該ハッチ内の燃料残量(積載量としての在庫量)を計測するためのハッチ液面計11がそれぞれ設けられている。後述の
図3に示すように、ハッチ液面計11は、荷卸し制御装置23の荷卸し制御盤24に接続されている。
【0019】
タンクローリ車8の車載タンク9には、各ハッチ10-Nの頂部に、積荷である燃料を積込むための給液口(図示せず)がそれぞれ設けられている。各ハッチ10-Nの底部には、底弁12と荷卸し用吐出配管13とがそれぞれ設けられている。各底弁12は、後述の空圧制御ユニット20からの空気圧信号の供給により開弁作動する常閉のエア式開閉弁により構成されている。各底弁12は、配送先である給油所1での燃料の荷卸し作業時以外は、閉弁状態に保持されている。
【0020】
エア式開閉弁からなる各底弁12は、それぞれ荷卸し用吐出配管13を介して吐出口14に接続されている。吐出口14は、タンクローリ車8の側面および/または後面側に設けられており、各荷卸し用吐出配管13を介して各ハッチ10-Nの底弁12と連通される。各荷卸し用吐出配管13は、各ハッチ10-Nの下方に設けられ、上流側端部が各底弁12の流出口に連通されている。
図2に示すように、吐出口14は、中間仕切弁15を挟んで2個所に設けられている。
【0021】
各吐出口14の上流側管路には、それぞれ荷卸し用電磁弁16が設けられている。後述の
図3に示すように、荷卸し用電磁弁16は、荷卸し制御装置23の荷卸し制御盤24に接続されている。各吐出口14には、吐出口14の開閉を検出する吐出口開閉センサ17が設けられている。また、中間仕切弁15には、中間仕切弁15の開閉を検出する中間仕切弁開閉センサ18が設けられている。吐出口開閉センサ17および中間仕切弁開閉センサ18も、荷卸し制御装置23の荷卸し制御盤24に接続されている。各ハッチ10-Nに積込まれた燃料は、対応の底弁12と荷卸し用電磁弁16とを開弁したときに各荷卸し用吐出配管13を通って吐出口14に送出される。吐出口14には、タンクローリ車8の運転者(ローリ運転者)および/または給油所1の作業員により後述の荷卸しホース21が接続される。なお、以下の説明では、ローリ運転者等の燃料の荷卸しを行う荷卸し係員を「係員M」という。
【0022】
車載タンク9には、各ハッチ10-N内を大気に連通させる複数の大気開放弁19(
図3にのみ図示)が設けられている。大気開放弁19も、例えば、後述の空圧制御ユニット20からの空気圧信号の供給により開弁作動する常閉のエア式開閉弁により構成されている。大気開放弁19は、例えば、車載タンク9の上部に設けられた大気開放用配管(図示せず)を介して開放口に接続されている。大気開放用配管の開放口は、例えば、荷卸し時に図示しないホースを介して給油所1の大気開放管(図示せず)に接続される。大気開放弁19は、例えば、燃料の荷卸しのときに開弁し、ハッチ10-Nを大気と連通させることにより、ハッチ10-N内が負圧になることを抑制する。
【0023】
空圧制御ユニット20は、底弁12および大気開放弁19を開弁させる。空圧制御ユニット20は、荷卸し制御装置23の荷卸し制御盤24に接続されている。空圧制御ユニット20は、荷卸し制御装置23(荷卸し制御盤24)からの制御信号に従って空気圧信号を発生させ、この空気圧信号を各底弁12のいずれかに選択的に供給することにより、常閉のエア式開閉弁からなる底弁12を開弁させる。また、空圧制御ユニット20は、荷卸し制御装置23(荷卸し制御盤24)からの制御信号に従って空気圧信号を発生させ、この空気圧信号を各大気開放弁19のいずれかに選択的に供給することにより、常閉のエア式開閉弁からなる大気開放弁19を開弁させる。各ハッチ10-Nに積込まれた燃料は、荷卸し制御装置23によって対応の底弁12、大気開放弁19、荷卸し用電磁弁16が開弁すると、荷卸し用吐出配管13、吐出口14、荷卸しホース21を通じて地下タンク2-Nに荷卸しされる。
【0024】
荷卸しホース21は、タンクローリ車8の車載タンク9から給油所1の地下タンク2に燃料を荷卸しするためのホースである。荷卸しホース21の一端は、車載タンク9の底部側に設けられた吐出口14に接続される。荷卸しホース21の他端は、地下タンク2-nの各注油口4のうちいずれかの注油口4に接続される。
図2に示すように、各注油口4には、各地下タンク2-nに貯蔵されている液種(燃料の種別)に対応した液種キー4A,4B,4Cが設けられている。これに対して、荷卸しホース21の他端側には、注油口4の液種キー4A,4B,4Cが差込まれるホース液種キー読取器22が設けられている。
【0025】
図3に示すように、ホース液種キー読取器22も、荷卸し制御装置23の荷卸し制御盤24に接続されている。ホース液種キー読取器22は、各注油口4の液種キー4A,4B,4Cのいずれか1つが選択的に差込まれることにより、差込まれた液種キーに対応する信号を荷卸し制御装置23(荷卸し制御盤24)に出力する。また、図示は省略するが、車載タンク9の各ハッチ10-Nにも、各ハッチ10-Nに積み込まれた液種(燃料の種別)に対応した液種キーを読込むハッチ液種キー読取器が設けられている。ハッチ液種キー読取器も、各ハッチ10-Nの液種キーに対応する信号を荷卸し制御装置23(荷卸し制御盤24)に出力する。
【0026】
タンクローリ車8は、燃料荷卸しシステムを構成する荷卸し制御装置23を備えている。荷卸し制御装置23は、燃料の荷卸しの管理(情報処理)および制御(各種の弁の開閉制御)を行う燃料荷卸し制御処理装置である。荷卸し制御装置23は、例えばローリ運転者等の荷卸しを行う係員Mによって操作される。荷卸し制御装置23は、例えば、タンクローリ車8のハッチ10-Nの液種とこのハッチ10-Nに荷卸しホース21を介して接続された地下タンク2-nの液種とが一致した場合に、底弁12と荷卸し用電磁弁16を開弁させて荷卸しを開始する。
【0027】
荷卸し制御装置23は、タンクローリ車8の車体側に固定される荷卸し制御盤24と、荷卸し制御盤24と無線通信を行う携帯端末30とを備えている。なお、
図1では、荷卸し制御装置23の荷卸し制御盤24をタンクローリ車8のキャブ8Aの上部に表しているが、これは荷卸し制御盤24が車体側に固定されている点を明確にするもので、実際にこの位置に固定することを意図しているものではない。荷卸し制御盤24は、タンクローリ車8の複数のハッチ10-Nに対応してそれぞれ設けられた各底弁12の開閉を個別に行うことにより、各ハッチ10-Nのいずれかから複数の地下タンク2-nのいずれかに燃料の荷卸しを行う開閉制御部を構成している。
【0028】
図3に示すように、荷卸し制御盤24は、制御基板25を備えている。制御基板25は、例えば、演算を行うCPU、制御処理プログラムが格納されるメモリ等を含んで構成されるマイクロコンピュータに対応する。荷卸し制御盤24は、例えば、ホース液種キー読取器22、ハッチ液種キー読取器(図示せず)、吐出口開閉センサ17、ハッチ液面計11、空圧制御ユニット20、荷卸し用電磁弁16、および、中間仕切弁開閉センサ18と有線(ケーブル)で接続されている。荷卸し制御盤24は、例えば、タンク管理端末6と、有線または無線で接続される。
【0029】
さらに、荷卸し制御盤24は、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)等の低消費電力の無線通信(BLE通信)が可能な通信ユニット26を介して携帯端末30と接続されている。荷卸し制御盤24は、通信ユニット26を介して携帯端末30との間で信号の送信、受信を無線で行う。なお、実施形態では、携帯端末30は、コネクタ27を介して荷卸し制御盤24と接続することにより有線通信も可能に構成されている。即ち、実施形態では、荷卸し制御盤24と携帯端末30は、無線通信による接続が可能であることに加えて、有線通信による接続も可能に構成されている。しかし、荷卸し制御盤24と携帯端末30とを無線通信のみで接続可能に構成してもよい。
【0030】
荷卸し制御盤24は、電源スイッチ28を介して車両バッテリ29と接続されている。車両バッテリ29は、例えば、タンクローリ車8に搭載された24Vの蓄電池により構成されている。電源スイッチ28をONにすると、荷卸し制御盤24に電力が供給され、荷卸し制御盤24が起動する。この状態で、携帯端末30を操作することにより、荷卸し制御盤24を介して燃料の荷卸しを行うことできる。
【0031】
携帯端末30は、例えば、ローリ運転者等の荷卸し作業を行う係員M(操作者)が携帯可能(携行可能)なタブレット端末、スマートフォン等の携帯情報通信端末により構成されている。携帯端末30は、例えばBLF通信等の無線通信により荷卸し制御盤24と接続される。携帯端末30は、荷卸しに必要な情報、データ、指令に対応する信号を、荷卸し制御盤24との間で送信、受信する。即ち、携帯端末30と荷卸し制御盤24は、互いに必要な信号の送信、受信を行う。
【0032】
携帯端末30は、例えば、入力可能な表示画面30Aであるタッチパネルを備えている。携帯端末30の表示画面30Aには、例えば、タンクローリ車8の積載状況、地下タンク2-nのタンク状況、燃料の荷卸しの作業状況、操作ボタン(入力ボタン)等が表示される。係員Mは、携帯端末30の表示画面30Aに表示された操作ボタンを操作することにより、荷卸しの開始、停止、中断等を行うことができる。
【0033】
また、
図3に示すように、タンクローリ車8の車内(キャブ8A内)には、例えばNFCリーダー等の近距離無線通信カードリーダにより構成されるデータ読取り器31が設けられている。データ読取り器31は、タンクローリ車8の車番カード32の読取りを行う。車番カード32は、例えば、非接触ICカードにより構成されている。車番カード32には、例えば油槽所の出荷装置によってタンクローリ車8の各ハッチ10-Nにそれぞれ積込まれた燃料の液種や数量、配送先名(給油所名、タンク番号)、各配送先での荷卸し油液の液種や数量等、配送および荷卸しのための情報データ(積荷データ)が車番データとして記憶されている。データ読取り器31は、車番カード32に記憶された車番データを無線で読み取る。データ読取り器31は、車番カード32から読取ったデータ(情報)を携帯端末30に無線で送信する。
【0034】
一方、携帯端末30は、不揮発性メモリ,RAM,ROM等の記憶装置からなるメモリを有している。携帯端末30のメモリには、例えば、荷卸し制御処理用のプログラム(燃料荷卸しアプリケーションソフト)等が記憶されている。また、携帯端末30のメモリには、タンクローリ車8の各ハッチ10-N内に貯蔵された燃料の情報が更新可能に記憶される。携帯端末30のメモリには、タンク管理端末6および荷卸し制御盤24を介して給油所1の各地下タンク2-n内に貯留された燃料の情報も更新可能に記憶される。携帯端末30(より具体的には、燃料荷卸しアプリケーションソフトが起動した携帯端末30)は、メモリの記憶情報(燃料の情報)に基づき、複数のハッチ10-Nと複数の地下タンク2-nのうち荷卸し可能なハッチとタンクとの関連付け(案内処理)を行う機能を有している。
【0035】
携帯端末30の表示画面30Aは、係員Mに対して情報の報知を行う報知手段を構成している。携帯端末30の表示画面30Aには、例えば複数のハッチ10-Nと複数の地下タンク2-nのうち荷卸し可能なハッチとタンクとの関連付け表示、地下タンク2-nの状態表示、荷卸し作業時の状態表示等が行われる。また、携帯端末30の表示画面30Aには、例えば「荷卸し開始ボタン」または「荷卸し停止ボタン」等の操作ボタンが表示される。係員Mは、タンクローリ車8から給油所1の地下タンク2に燃料の荷卸しを行うときに、表示された「荷卸し開始ボタン」を指先で押下するように操作する。これにより、携帯端末30から荷卸し制御盤24に底弁12および荷卸し用電磁弁16を開弁させる信号が送信され、タンクローリ車8の車載タンク9から地下タンク2に燃料が荷卸しされる。一方、係員Mが「荷卸し停止ボタン」を押下したときには、底弁12および荷卸し用電磁弁16が閉弁し、燃料の荷卸しが停止する。
【0036】
ところで、燃料の荷卸しの開始または停止を、タブレット端末等の携帯端末を用いて無線により行う場合、燃料の荷卸しが意図せず継続されてしまう可能性がある。即ち、携帯端末で荷卸しを行う場合、例えば、携帯端末から送信された荷卸し開始の指令信号を荷卸し制御盤が受信したときに燃料の荷卸しを開始し、携帯端末から送信された荷卸し停止の指令信号を荷卸し制御装盤が受信したときに燃料の荷卸しを停止する構成とすることが考えられる。しかし、この構成は、携帯端末から荷卸し開始の指令信号を受信することにより燃料の荷卸しを開始した後、携帯端末が無線通信可能範囲から外れる等により荷卸し制御装盤が荷卸し停止の指令信号を受信できなくなった場合に、燃料の荷卸しを停止できなくなる可能性がある。これにより、燃料の荷卸しが意図せず継続されてしまう可能性がある。
【0037】
そこで、実施形態では、携帯端末30は、底弁12を開にするとき、底弁12を開にする間、底弁12を開にする指令信号となる開信号を、荷卸し制御盤24に所定間隔で繰り返し送信する(定期的に送信する)。ここで、所定間隔は、例えば、0.5S(秒)、または、これよりも短い時間とすることができる。このような開信号を所定間隔で繰り返し送信する機能は、例えば、携帯端末30で動作させる燃料荷卸しアプリケーションソフトのプログラムの処理として、携帯端末30に実装することができる。即ち、携帯端末30のメモリには、開信号を所定間隔で繰り返し送信する制御処理のプログラムを格納することができる。
【0038】
一方、荷卸し制御盤24は、携帯端末30から開信号を受信すると空圧制御ユニット20を介して底弁12を開にする。そして、荷卸し制御盤24は、開信号を受信してから所定間隔(例えば、0.5S)を超えて開信号が途絶えると、底弁12を閉にする。このような開信号が途絶えると底弁12を閉にする機能は、例えば、荷卸し制御盤24を動作させるプログラムの処理として、荷卸し制御盤24に実装することができる。即ち、荷卸し制御盤24のメモリには、開信号が途絶えると底弁12を閉にする制御処理のプログラムを格納することができる。これにより、実施形態では、例えば、携帯端末30が無線通信可能範囲から外れることにより、または、携帯端末30の電力(充電量)がゼロになることにより、携帯端末30からの開信号が途絶えると、荷卸し制御盤24は、底弁12を閉にする。この結果、燃料の荷卸しが意図せず継続されてしまうことを抑制できる。
【0039】
ここで、荷卸し制御盤24は、各ハッチ10-n内の燃料残量を計測するためのハッチ液面計11からの信号を含む底弁12の開閉の制御(荷卸し制御)に用いる状態信号を、携帯端末30に送信する。即ち、荷卸し制御盤24は、荷卸し制御盤24に入力される入力信号(センサ情報等の荷卸しに関連する状態情報に対応する信号)を、携帯端末30に送信する。これに対して、携帯端末30は、荷卸し制御盤24から受信した状態信号と係員Mによる携帯端末30の操作とに基づいて、底弁12を開とするか否かを演算(判定)し、この演算結果(判定結果)に基づいて荷卸し制御盤24に開信号を送信する。即ち、携帯端末30は、荷卸し制御盤24に出力する出力信号(開弁信号等の荷卸しに関連する指示信号)を、荷卸し制御盤24に送信する。これにより、実施形態では、携帯端末30は、係員Mが荷卸しを行うために操作する入力装置として用いるだけでなく、荷卸し制御盤24との間で
図4に示す信号を送信、受信することにより、底弁12を開とするために必要な情報(状態情報、携帯端末30の操作情報)を一元管理する。
【0040】
図4中の信号名称のうち「ホース液種キー」は、ホース液種キー読取器22で読み取られるホース液種キー(より具体的には、荷卸しホース21が接続された地下タンク2-nの液種)に対応する情報信号(状態信号)であり、「ハッチ液種キー」は、ハッチ液種キー読取器で読み取られるハッチ液種キー(より具体的には、ハッチ10-Nに貯留されている液種)に対応する情報信号(状態信号)であり、「吐出口開閉センサ」は、吐出口開閉センサ17により検出される吐出口14の開閉状態に対応する情報信号(状態信号)であり、「ハッチ液面計」は、ハッチ液面計11により検出されるハッチ10-N内の燃料の液面(燃料残量)に対応する情報信号(状態信号)であり、「中間仕切弁開閉センサ」は、中間仕切弁開閉センサ18により検出される中間仕切弁15の開閉状態に対応する情報信号(状態信号)である。これらの情報信号(状態信号)は、「IO種別」として「IN」と記載されているように、荷卸し制御盤24から携帯端末30に送信(入力)される。
【0041】
一方、
図4中の信号名称のうち「底弁」は、底弁12を開にする指令信号であり、「荷卸し用電磁弁」は、荷卸し用電磁弁16を開にする指令信号であり、「大気開放弁」は、大気開放弁19を開にする指令信号である。これらの指令信号は、「IO種別」として「OUT」と記載されているように、携帯端末30から荷卸し制御盤24に送信(出力)される。
図4中の信号名称のうち「タンク管理端末」は、地下タンク管理端末6と携帯端末30との間で送信、受信される情報信号である。
【0042】
荷卸し制御盤24は、燃料の荷卸しの制御に必要なタンクローリ車の信号の全てを収集できる構成とし、かつ、収集した信号を携帯端末30に無線で送信する構成としている。そして、携帯端末30は、荷卸し制御盤24から送信された信号(情報)と係員Mによる携帯端末30の操作とに基づいて、底弁12および荷卸し用電磁弁16を開とするか否かを演算(判定)する。携帯端末30は、演算結果(判定結果)に基づいて、底弁12および荷卸し用電磁弁16を開とする開信号を荷卸し制御盤24に送信し、荷卸し制御盤24は開信号に基づいて底弁12および荷卸し用電磁弁16を開閉する。換言すれば、実施の形態では、荷卸し制御盤24は、底弁12の開閉の演算(判定)は行わす、携帯端末30からの開信号に基づいて底弁12を開にする。これにより、燃料の荷降ろしを携帯端末30で運用する構成としている。
【0043】
実施形態では、
図4に示すように、荷卸し制御盤24または携帯端末30が送信する信号は、信号の種類に応じて送信間隔が異なっている。この場合、荷卸し制御盤24または携帯端末30が送信する信号のうち開信号の送信間隔は、開信号以外の信号のうちのいずれかの信号の送信間隔よりも短くなっている。具体的には、
図4に示すように、底弁12および荷卸し用電磁弁16を開とする開信号の送信間隔(応答時間)は、「0.5S」としている。これに対して、開信号以外の信号のうち、例えば、液種キーの情報信号の送信間隔(応答時間)は、「1S」としている。これにより、開信号の送信間隔(応答時間)を短くしている。
【0044】
さらに、携帯端末30は、開信号の送信を含む燃料荷卸しの処理を行う燃料荷卸しアプリケーションソフトを備えている。この場合、携帯端末30は、燃料荷卸しアプリケーションソフトが携帯端末30でバックグランド処理されるときは、開信号の送信を禁止する。即ち、携帯端末30は、係員Mが燃料荷卸しアプリケーションソフトを起動させて燃料の荷卸しを開始した後、携帯端末30に備えられた別のアプリケーションソフトを起動、操作する等により燃料荷卸しアプリケーションソフトがバックグランド処理に移行すると、底弁12は閉になる。なお、燃料荷卸しアプリケーションソフトが終了されたときも、開信号の送信を禁止する(開信号の送信を終了する)。
【0045】
実施の形態による燃料荷卸しシステムは、上述の如き構成を有するもので、次に、タンクローリ車8から給油所1の地下タンク2に燃料を荷卸しする作業について説明する。
【0046】
タンクローリ車8が給油所1に到着すると、係員Mは、必要に応じて、携帯端末30を操作することにより燃料荷卸しアプリケーションソフトを起動する。また、係員Mは、車載タンク9の底部側に設けられた吐出口14に荷卸しホース21の一端を接続し、荷卸しホース21の他端を地下タンク2-nの注油口4のうちいずれかの注油口4に接続する。荷卸しホース21の他端が注油口4に接続されると、荷卸しホース21の他端側に設けられたホース液種キー読取器22から、注油口4に設けられた液種キー4A(4B,4C)に対応する信号が荷卸し制御盤24に出力される。
【0047】
荷卸し制御盤24は、液種キー4A(4B,4C)に対応する信号を携帯端末30に送信する。携帯端末30は、ホース液種キー読取器22で読み込まれた液種情報がハッチ10-Nの液種と一致する場合、当該ハッチに積み込まれた油液の荷卸しを許可する。この状態で、係員Mが携帯端末30を操作(例えば、携帯端末30の表示画面30Aに表示された「荷卸し開始」のボタンを指先で押下)すると、携帯端末30から荷卸し制御盤24に対して底弁12を開にする開信号の送信が開始される。これにより、タンクローリ車8から地下タンク2への燃料の荷卸しが行われる。係員Mが携帯端末30の「荷卸し停止」のボタンを指先で押下すると、底弁12を開にする開信号の送信が停止し、燃料の荷卸しが停止する。
【0048】
ここで、実施形態によれば、ハッチ10-Nの底弁12を開閉する開閉制御部としての荷卸し制御盤24は、携帯端末30から所定間隔で繰り返し送信される開信号が途絶えると、底弁12を閉にする。このため、荷卸し制御盤24は、携帯端末30からの開信号を受信することによりハッチ10-Nの底弁12を開にした後、携帯端末30から底弁12を閉にする指令信号となる閉信号を受信しなくても、携帯端末30からの開信号が途絶えることで、底弁12を閉にできる。即ち、荷卸し制御盤24は、携帯端末30からの開信号を受信することによりハッチ10-Nの底弁12を開にした後、例えば、携帯端末30が底弁12を閉にすべく開信号の送信を停止すると、携帯端末30からの開信号が途絶えることにより、底弁12を閉にする。これに加えて、荷卸し制御盤24は、例えば、携帯端末30が無線通信可能範囲から外れることにより、または、携帯端末30の電力(充電量)がゼロになることにより、携帯端末30からの開信号が途絶えたときにも、底弁12を閉にする。このため、仮に、荷卸し制御盤24が携帯端末30からの閉信号を受信できなくなるよう状態(無線可能圏外)、または、携帯端末30が荷卸し制御盤24に閉信号を送信できなくなるような状態(充電量ゼロ)になったとしても、荷卸し制御盤24は、携帯端末30からの開信号が途絶えることで、底弁12を閉にできる。これにより、ハッチ10-Nの底弁12を閉にすべきときに開のまま維持されることを阻止することができ、意図せず燃料の荷卸しが継続されてしまうことを抑制できる。
【0049】
実施形態によれば、携帯端末30は、荷卸し制御盤24から受信した状態信号と係員Mによる携帯端末30の操作とに基づいて底弁12を開とするか否かを演算する。このため、携帯端末30は、底弁12を開とするために必要な情報(状態信号、携帯端末30の操作)を一元管理すると共に、この情報に基づいて底弁12を開とするか否かを演算(判定)できる。即ち、燃料の荷降ろしを携帯端末30で運用することができる。この場合、荷卸し制御盤24は、燃料の荷卸しの制御に必要なタンクローリ車8の信号の全てを収集できる構成とし、かつ、収集した信号を携帯端末30に無線で送信する構成としている。換言すれば、「入力信号、出力信号を管理する荷卸し制御盤24」と「これらの信号およびデータを授受し荷卸しの統括的な制御を行う携帯端末30」とに機能を分担している。
【0050】
これにより、タンクローリ車8側に搭載される荷卸し制御盤24の演算処理の負担を低減することができる。この結果、例えば、操作ボタンを有する固定型の操作盤が有線で荷卸し制御盤に接続されると共にこの荷卸し制御盤で荷卸しの統括的な制御を行う従来の燃料荷卸しシステムが搭載されたタンクローリ車にも、荷卸し制御盤を交換するような大きな設備変更を必要とすることなく、例えば、通信ユニット26を接続すると共にプログラムを書き換えることで、携帯端末30を備えた燃料荷卸しシステムに更新することができる。即ち、既存の燃料荷卸しシステムを有効利用でき、携帯端末30を導入するためのコストを低減することができる。
【0051】
実施形態によれば、荷卸し制御盤24と携帯端末30との間で送信、受信される信号の送信間隔が信号の種類に応じて異なる。このため、携帯端末30の操作性、応答性、即応性を確保することができる。即ち、荷卸し制御盤24と携帯端末30との間で信号の送信、受信を無線で行う場合、無線で信号を伝送する分、送信データ量が限られ、操作性に遅れが発生する可能性がある。そこで、開信号等の操作性、応答性、即応性の必要な信号は、例えば人間が遅れを感じないような短い送信間隔(1Sに2回)とし、液種情報等の操作性、応答性、即応性の重要度が低い信号は、長い送信間隔(1Sに1回)としている。
【0052】
例えば、ハッチ液面計11の信号の送信間隔が長いと、液面が低下し始めたことの検出(判定)が遅れることにより、とも引きに起因するコンタミの量(他の液種の混入量)が増大する可能性がある。「とも引き」は、荷卸し中のハッチ10-Nから荷卸し用吐出配管13を通って燃料が流れることに伴って他のハッチ10-N内の燃料が荷卸し用吐出配管13内に流出することであり、ハッチ液面計11の検出する液面の変化から判定することができる。そこで、ハッチ液面計11の信号は、短い間隔(応答時間:0.5S)で送信する。底弁12の開信号も、送信間隔が長いと、「とも引き」を検出したときの底弁12の閉止が遅れることによるコンタミの増大の可能性があるため、短い間隔(応答時間:0.5S)で送信する。中間仕切弁開閉センサ18の信号の送信間隔が長いと、荷卸し中に中間仕切弁15が開いたことの検出(判定)が遅れ、コンタミの増大の可能性があるため、短い間隔(応答時間:0.5S)で送信する。また、タンク管理端末6の信号の送信間隔が長いと、地下タンク2の燃料が上限に達したことの検出(判定)が遅れ、オーバーフロー量が増える可能性があるため、短い間隔(応答時間:0.5S)で送信する。
【0053】
このように、実施形態では、操作性、応答性、即応性の必要な信号と操作性、応答性、即応性の重要度が低い信号とに分けて、送信間隔(応答時間)を異ならせている。これにより、信号伝送効率を向上でき、携帯端末30を用いても(即ち、無線で信号の送信、受信を行っても)、操作性、応答性、即応性を確保することができる。特に、実施形態では、開信号の送信間隔が短い。このため、携帯端末30を用いても(即ち、無線で信号の送信、受信を行っても)、底弁12の操作性、応答性、即応性を確保できる。
【0054】
実施形態によれば、携帯端末30で燃料荷卸しアプリケーションソフトがバックグランド処理されるときは、携帯端末30からの開信号の送信が禁止される。このため、例えば、携帯端末30を操作する係員Mが燃料荷卸しアプリケーションソフトを起動させて燃料の荷卸しを開始した後、携帯端末30に備えられた別のアプリケーションソフトを起動、操作する等により燃料荷卸しアプリケーションソフトがバックグランド処理に移行すると、底弁12は閉になる。ここで、例えば、燃料荷卸しアプリケーションソフトがバックグランド処理に移行しても、バックグランド処理によって携帯端末30から開信号を送信できるように構成することも考えられる。
【0055】
しかし、この構成の場合は、係員Mが別のアプリケーションソフトを操作し始めたときに、底弁12が開となっているにも拘わらず底弁12が閉となったと考える可能性がある。これにより、係員Mの意図しない燃料の荷卸しが継続されてしまう可能性がある。これに対して、実施形態では、燃料荷卸しアプリケーションソフトがバックグランド処理に移行すると、底弁12が閉になるため、この面からも、意図せず燃料の荷卸しが継続されてしまうことを抑制できる。なお、燃料荷卸しアプリケーションソフトの処理により携帯端末30から開信号を所定間隔で繰り返し送信している途中で燃料荷卸しアプリケーションソフトが終了されたときも、開信号の送信を禁止する(開信号の送信を終了する)。
【0056】
なお、実施形態では、携帯端末30で底弁12を開とするか否かの演算を行う構成、即ち、携帯端末30で荷卸しの統括的な制御を行う構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、携帯端末30を係員Mが操作する入力装置として用いると共に、荷卸し制御盤24で底弁12を開とするか否かの演算(荷卸しの統括的な制御)を行う構成としてもよい。この場合、例えば、携帯端末30は、「荷卸し開始」のボタンが押下されると「荷卸し停止」ボタンが押下されるまでの間、荷卸し制御盤24に開信号を所定間隔で繰り返し送信し、荷卸し制御盤24は、携帯端末30からの開信号が所定間隔を超えて途絶えると底弁12を閉にする。
【0057】
実施形態では、携帯端末30と荷卸し制御盤24との間で送信、受信が行われる信号の種類に応じて送信間隔を異ならせる(開信号の送信間隔を短くする)構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、全ての信号の送信間隔を同じとしてもよい。この場合、例えば、全ての信号の送信間隔を0.5Sまたは0.5Sよりも短くしてもよい。
【0058】
実施形態では、荷卸し制御盤24は、燃料の荷卸しの制御に必要な信号の全てを携帯端末30に送信し、携帯端末30で制御処理を行う構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、とも引き判定(検出)およびこの判定(検出)に基づく閉弁処理等の緊急性を要する制御処理は、荷卸し制御盤24で行うようにしてもよい。即ち、携帯端末30で行う制御処理と荷卸し制御盤24で行う制御処理とに分けてもよい。
【0059】
実施形態では、携帯端末30が底弁12(および荷卸し用電磁弁16)の開信号の送信を停止すると底弁12(および荷卸し用電磁弁16)が閉弁する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、底弁12(および荷卸し用電磁弁16)が開弁しているときに、開信号の送信を停止するだけでなく、携帯端末30から底弁12(および荷卸し用電磁弁16)を閉にする指令信号となる閉信号を送信する構成としてもよい。この場合、荷卸し制御盤24は、「閉信号の受信」と「開信号の途絶」とのうちの少なくとも一方を満たしたときに底弁12(および荷卸し用電磁弁16)を閉弁する構成とすることができる。
【0060】
実施形態では、タンクローリ車8は、複数のハッチ10-Nを備える構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、タンクローリ車は、1つのハッチを備えた構成としてもよい。
【0061】
実施形態では、荷卸し制御盤24は、携帯端末30から開信号を受信すると底弁12を開にし、開信号を受信してから所定間隔を超えて携帯端末30からの開信号が途絶えると、底弁12を閉にする構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、携帯端末から荷卸し制御盤(開閉制御部)への信号は、繰り返し送信される開信号に限らず、例えば、開信号とは別の単に携帯端末から荷卸し制御盤(開閉制御部)へ送信される信号(例えば、携帯端末との通信が可能か否かを判定するための信号)でもよい。即ち、荷卸し制御盤(開閉制御部)は、底弁が開弁した後、携帯端末から荷卸し制御盤(開閉制御部)へ送信される信号が途切れたことにより、底弁を閉にする構成としてもよい。
【0062】
実施形態では、荷卸し制御盤24による底弁12の開弁は、携帯端末30から所定間隔で繰り返し送信される断続的な開信号を受信することによりなされる場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、携帯端末から信号が送信され続けている(継続される)ことにより、底弁が開弁される構成としてもよい。即ち、携帯端末から開信号が送信され続けていることにより、または、携帯端末から開信号とは別の信号が送信され続けていることにより、開弁される構成としてもよい。そして、この場合には、携帯端末からの信号が途切れたことにより、底弁を閉弁することになる。即ち、携帯端末から送信され続ける信号が途切れたことにより、底弁を閉弁することができる。
【0063】
実施形態では、タンクローリ車8から給油所1の地下タンクに燃料を荷卸しする場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、タンクローリ車から工場の地下タンクに燃料を荷卸しする場合等、実施形態の燃料卸しシステムは、広く適用することができる。
【0064】
以上説明した実施形態に基づく燃料荷卸しシステムとして、例えば下記に述べる態様のものが考えられる。
【0065】
第1の態様としては、タンクローリ車のハッチに対応して設けられた底弁の開閉を行うことにより、前記ハッチからタンクに燃料の荷卸しを行う開閉制御部と、係員が携帯可能であり前記開閉制御部と無線通信を行う携帯端末とを備えた燃料荷卸しシステムにおいて、前記開閉制御部により、前記底弁が開弁した後、前記携帯端末から前記開閉制御部への通信が途切れたことにより、前記底弁を閉にする。
【0066】
この第1の態様によれば、ハッチの底弁を開閉する開閉制御部は、携帯端末から開閉制御部への通信が途切れると、底弁を閉にする。このため、開閉制御部は、ハッチの底弁を開にした後、携帯端末から底弁を閉にする指令信号となる閉信号を受信しなくても、携帯端末からの通信が途切れることで、底弁を閉にできる。これにより、開閉制御部は、例えば、携帯端末が無線通信可能範囲から外れることにより、または、携帯端末の電力(充電量)がゼロになることにより、携帯端末からの通信が途切れたときに、底弁を閉にできる。即ち、仮に、開閉制御部が携帯端末からの閉信号を受信できなくなるよう状態(無線可能圏外)、または、携帯端末が開閉制御部に閉信号を送信できなくなるような状態(充電量ゼロ)になったとしても、開閉制御部は、携帯端末からの通信が途切れることで、底弁を閉にできる。これにより、ハッチの底弁を閉にすべきときに開のまま維持されることを阻止することができ、意図せず燃料の荷卸しが継続されてしまうことを抑制できる。
【0067】
第2の態様としては、第1の態様において、前記携帯端末は、前記底弁を開にするとき、前記底弁を開にする間、前記底弁を開にする指令信号となる開信号を前記開閉制御部に所定間隔で繰り返し送信し、前記開閉制御部は、前記携帯端末から前記開信号を受信すると前記底弁を開にし、前記開信号を受信してから前記所定間隔を超えて前記開信号が途絶えると、前記底弁を閉にする。
【0068】
この第2の態様によれば、ハッチの底弁を開閉する開閉制御部は、携帯端末から所定間隔で繰り返し送信される開信号が途絶えると、底弁を閉にする。このため、開閉制御部は、携帯端末からの開信号を受信することによりハッチの底弁を開にした後、携帯端末から底弁を閉にする指令信号となる閉信号を受信しなくても、携帯端末からの開信号が途絶えることで、底弁を閉にできる。即ち、開閉制御部は、携帯端末からの開信号を受信することによりハッチの底弁を開にした後、例えば、携帯端末が底弁を閉にすべく開信号の送信を停止すると、携帯端末からの開信号が途絶えることにより、底弁を閉にする。これに加えて、開閉制御部は、例えば、携帯端末が無線通信可能範囲から外れることにより、または、携帯端末の電力(充電量)がゼロになることにより、携帯端末からの開信号が途絶えたときにも、底弁を閉にする。このため、仮に、開閉制御部が携帯端末からの閉信号を受信できなくなるよう状態(無線可能圏外)、または、携帯端末が開閉制御部に閉信号を送信できなくなるような状態(充電量ゼロ)になったとしても、開閉制御部は、携帯端末からの開信号が途絶えることで、底弁を閉にできる。これにより、ハッチの底弁を閉にすべきときに開のまま維持されることを阻止することができ、意図せず燃料の荷卸しが継続されてしまうことを抑制できる。
【0069】
第3の態様としては、第2の態様において、前記開閉制御部は、前記ハッチ内の燃料残量を計測するためのハッチ液面計からの信号を含む前記底弁の開閉の制御に用いる状態信号を前記携帯端末に送信し、前記携帯端末は、前記開閉制御部から受信した前記状態信号と前記係員による前記携帯端末の操作とに基づいて前記底弁を開とするか否かを演算し、この演算結果に基づいて前記開閉制御部に前記開信号を送信する。
【0070】
この第3の態様によれば、携帯端末は、開閉制御部から受信した状態信号と係員による携帯端末の操作とに基づいて底弁を開とするか否かを演算する。このため、携帯端末は、底弁を開とするために必要な情報(状態信号、携帯端末の操作)を一元管理すると共に、この情報に基づいて底弁を開とするか否かを演算(判定)できる。即ち、燃料の荷降ろしを携帯端末で運用することができる。この場合、開閉制御部は、燃料の荷卸しの制御に必要なタンクローリ車の信号の全てを収集できる構成とし、かつ、収集した信号を携帯端末に無線で送信する構成とすることができる。換言すれば、「入力信号、出力信号を管理する開閉制御部」と「これらの信号およびデータを授受し荷卸しの統括的な制御を行う携帯端末」とに機能を分担することができる。これにより、タンクローリ車側に搭載される開閉制御部の演算処理の負担を低減することができる。この結果、例えば、操作ボタンを有する固定型の操作盤が有線で開閉制御部に接続されると共にこの開閉制御部で荷卸しの統括的な制御を行う従来の燃料荷卸しシステムが搭載されたタンクローリ車にも、開閉制御部を交換するような大きな設備変更を必要とすることなく、携帯端末を備えた燃料荷卸しシステムに更新することができる。即ち、既存の燃料荷卸しシステムを有効利用でき、携帯端末を導入するためのコストを低減することができる。
【0071】
第4の態様としては、第1の態様ないし第3の態様のいずれかにおいて、前記開閉制御部または前記携帯端末が送信する信号は、信号の種類に応じて送信間隔が異なる。この第4の態様によれば、携帯端末の操作性、応答性、即応性を確保することができる。即ち、開閉制御部と携帯端末との間で信号の送信、受信を無線で行う場合、無線で信号を伝送する分、送信データ量が限られ、操作性に遅れが発生する可能性がある。そこで、操作性、応答性、即応性の必要な信号と操作性、応答性、即応性の重要度が低い信号とに分け、操作性、応答性、即応性の必要な信号は、例えば人間が遅れを感じないような短い送信間隔(一定時間内に複数)とし、操作性、応答性、即応性の重要度が低い信号は、長い送信間隔(一定時間内に1回)とすることができる。これにより、信号伝送効率を向上でき、携帯端末を用いても(即ち、無線で信号の送信、受信を行っても)、操作性、応答性、即応性を確保することができる。
【0072】
第5の態様としては、第4の態様において、前記開閉制御部または前記携帯端末が送信する信号のうち前記開信号の送信間隔は、前記開信号以外の信号のうちのいずれかの信号の送信間隔よりも短い。この第5の態様によれば、携帯端末を用いても(即ち、無線で信号の送信、受信を行っても)、底弁の操作性、応答性、即応性を確保できる。
【0073】
第6の態様としては、第1の態様ないし第5の態様のいずれかにおいて、前記携帯端末は、前記開信号の送信を含む燃料荷卸しの処理を行う燃料荷卸しアプリケーションソフトを備えており、前記燃料荷卸しアプリケーションソフトが前記携帯端末でバックグランド処理されるときは、前記開信号の送信を禁止する。
【0074】
この第6の態様によれば、例えば、携帯端末を操作する係員が燃料荷卸しアプリケーションソフトを起動させて燃料の荷卸しを開始した後、携帯端末に備えられた別のアプリケーションソフトを起動、操作する等により燃料荷卸しアプリケーションソフトがバックグランド処理に移行すると、底弁は閉になる。ここで、例えば、燃料荷卸しアプリケーションソフトがバックグランド処理に移行しても、バックグランド処理によって携帯端末から開信号を送信できるように構成することも考えられる。しかし、この構成の場合は、係員が別のアプリケーションソフトを操作し始めたときに、底弁が開となっているにも拘わらず底弁が閉となったと考える可能性がある。これにより、係員の意図しない燃料の荷卸しが継続されてしまう可能性がある。これに対して、燃料荷卸しアプリケーションソフトがバックグランド処理に移行すると底弁が閉になるため、この面からも、意図せず燃料の荷卸しが継続されてしまうことを抑制できる。なお、燃料荷卸しアプリケーションソフトの処理により携帯端末から開信号を所定間隔で繰り返し送信している途中で燃料荷卸しアプリケーションソフトが終了されたときも、開信号の送信を禁止する(開信号の送信を終了する)。
【符号の説明】
【0075】
1 給油所
2(2-n) 地下タンク(タンク)
8 タンクローリ車
10-N ハッチ
11 ハッチ液面計
12 底弁
23 荷卸し制御装置(燃料荷卸しシステム)
24 荷卸し制御盤(開閉制御部)
30 携帯端末