(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】タングステンのための中性からアルカリ性のケミカルメカニカルポリッシング組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240116BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20240116BHJP
B24B 37/24 20120101ALI20240116BHJP
B24B 37/10 20120101ALI20240116BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20240116BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
B24B37/24 C
B24B37/10
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019119564
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-06-13
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】イ・グォ
(72)【発明者】
【氏名】トニー・クアン・トラン
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-541204(JP,A)
【文献】国際公開第2017/120402(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/052408(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0121561(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0087065(US,A1)
【文献】特開2005-082649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
B24B 37/24
B24B 37/10
C09K 3/14
C09G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期成分として:
水;
ヨウ素酸カリウム、ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウム及びそれらの混合物からなる群より選択される酸化剤;
アミノシラン化合物、1~8個の炭素原子を有するアミノ酸、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム及びそれらの混合物からなる群より選択される含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒
;
pH調整剤;及
び
殺生物剤を含むケミカルメカニカルポリッシング組成物であって、そのpHが7以上であ
り、
酸化剤が、ケミカルメカニカルポリッシング組成物に0.001重量%~1重量%の量で含まれ、そして、
コロイダルシリカ砥粒が、正味の負ゼータ電位を有する、ケミカルメカニカルポリッシング組成物。
【請求項2】
pHが、7~13である、請求項1記載のケミカルメカニカルポリッシング組成物。
【請求項3】
タングステンのケミカルメカニカルポリッシング方法であって、
タングステン及び絶縁体を含む基板を提供すること;
請求項1に記載されたケミカルメカニカルポリッシング組成物を提供すること;
研磨面を有するケミカルメカニカルポリッシングパッドを提供すること;
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基板との界面に動的接触を生じさせること;そして
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基板との界面又はその近傍でケミカルメカニカルポリッシング組成物をケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨面上に分注してタングステンの少なくとも一部を除去することを含む方法。
【請求項4】
ケミカルメカニカルポリッシング組成物が、200mm研磨機で、プラテン速度93~113回転/分、キャリア速度87~111回転/分、ケミカルメカニカルポリッシング組成物流量125~300mL/分、公称ダウンフォース21.4kPaで、≧500Å/分のタングステン除去速度を有しており;そしてケミカルメカニカルポリッシングパッドが、ポリマー中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層及びポリウレタン含浸不織サブパッドを含む、請求項
3記載の方法。
【請求項5】
酸化剤が、ケミカルメカニカルポリッシング組成物に0.1重量%~1重量%の量で含まれる、請求項1記載のケミカルメカニカルポリッシング組成物。
【請求項6】
酸化剤が、ケミカルメカニカルポリッシング組成物に0.3重量%~0.5重量%の量で含まれる、請求項5記載のケミカルメカニカルポリッシング組成物。
【請求項7】
酸化剤が、ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸カリウム及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1記載のケミカルメカニカルポリッシング組成物。
【請求項8】
含窒素化合物がアミノシラン化合物であり、コロイダルシリカ砥粒におけるアミノシラン化合物対シリカのモル比が、0.1%より大きく10%より小さい、請求項1記載のケミカルメカニカルポリッシング組成物。
【請求項9】
pHが、8~12である、請求項2記載のケミカルメカニカルポリッシング組成物。
【請求項10】
pHが、8~10である、請求項9記載のケミカルメカニカルポリッシング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板からタングステンの一部を除去し、中性からアルカリ性のpH範囲でタングステンの静的エッチングを少なくとも抑制するためのタングステンのケミカルメカニカルポリッシングの分野に関する。より具体的には、本発明は、基板からタングステンの一部を除去し、中性からアルカリ性のpH範囲でタングステンの静的エッチングを少なくとも抑制するためのタングステンのケミカルメカニカルポリッシング組成物及びケミカルメカニカルポリッシング方法であって、タングステンを含有する基板、並びに初期成分として:水;ヨウ素酸塩化合物、過ヨウ素酸塩化合物及びそれらの混合物からなる群より選択される酸化剤;含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒;場合により、pH調整剤;及び場合により、殺生物剤を含有するケミカルメカニカルポリッシング組成物であって、そのpHが7以上である、ケミカルメカニカルポリッシング組成物を提供すること;研磨面を有するケミカルメカニカルポリッシングパッドを提供すること;研磨パッドと基板との界面に動的接触を生じさせること;そして研磨パッドと基板との界面又はその近傍で研磨組成物を研磨面上に分注することによる方法であって、ここで、タングステンの一部が基板から研磨され、タングステンの静的エッチングが少なくとも抑制される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路及び他の電子デバイスの製造において、導電性材料、半導体材料及び絶縁材料の複数の層が半導体ウェーハの表面上に堆積されるか、又はそこから除去される。導電性材料、半導体材料、及び絶縁材料の薄層は、幾つかの堆積手法によって堆積され得る。最新の加工における一般的な堆積手法は、スパッタリングとしても知られている物理気相成長法(PVD)、化学気相成長法(CVD)、プラズマ化学気相成長法(PECVD)、及び電気化学的めっき法(ECP)を含む。
【0003】
材料の層が順次堆積され除去されるにつれ、ウェーハの最上面は平坦でなくなる。後続の半導体加工(例えば、メタライゼーション)はウェーハが平らな表面を有することを要求するため、ウェーハを平坦化する必要がある。平坦化は、望ましくない表面トポグラフィー及び表面欠陥(粗面、凝集物質、結晶格子損傷、スクラッチ、及び混入層又は物質など)を除去するのに有用である。
【0004】
ケミカルメカニカルプラナリゼーション、又はケミカルメカニカルポリッシング(CMP)は、半導体ウェーハのような基板を平坦化するために使用される一般的な手法である。従来のCMPにおいて、ウェーハはキャリアアセンブリに取り付けられ、CMP装置内に研磨パッドと接触して配置される。キャリアアセンブリは、ウェーハに調節可能な圧力を提供し、ウェーハを研磨パッドに押し付ける。パッドを、外部駆動力によってウェーハに対して移動(例えば、回転)させる。それと同時に、研磨組成物(「スラリー」)又は他の研磨溶液がウェーハと研磨パッドとの間に提供される。よって、パッド表面及びスラリーの化学的及び機械的作用によって、ウェーハ表面が研磨されて、平坦化される。しかし、CMPにはかなりの複雑さが伴う。各種類の材料は、独自の研磨組成物、適切に設計された研磨パッド、研磨及びCMP後洗浄の両方に最適化されたプロセス設定、並びに特定の材料の研磨の適用に個々に合わせることが必須の他の要因を必要とする。
【0005】
ケミカルメカニカルポリッシングは、集積回路設計におけるタングステン相互接続部及びコンタクトプラグの形成中にタングステンを研磨するための好ましい方法となっている。タングステンは、コンタクト/ビアプラグ用の集積回路設計において頻繁に使用されている。典型的には、コンタクト又はビアホールが基板上の絶縁層を貫通して形成され、下層の構成要素、例えば、第1レベルのメタライゼーション又は相互接続部の領域を露出させる。タングステンは硬質金属であり、タングステンCMPは、酸性pH範囲<7、更に典型的には<4のような比較的侵襲的な設定で進行するが、これがタングステンCMPに特有の課題を投げかける。残念ながら、中性からアルカリ性のケミカルメカニカルポリッシング組成物を用いるタングステン除去速度は低く、実質的には不十分である。中性からアルカリ性のpH範囲でのこのような不十分なタングステン除去速度の要素は、硬質ペルオキシ-タングステン膜の望ましくない形成である。多くの酸性CMP組成物は、許容し得るタングステン除去速度を達成するために、鉄触媒のような複数の酸化状態の金属触媒、及び過酸化水素酸化剤を含む。pHが中性からアルカリ性である場合、過酸化物の化学的性質が不安定になり、ペルオキシタングステン膜が形成されてタングステン除去速度を抑制する。
【0006】
現在まで、実質的に酸性ケミカルメカニカルポリッシング組成物のみが許容し得るタングステン除去速度を提供してきた。また、タングステンを研磨するために使用される多くのCMPスラリーは、その侵襲的な酸性の性質のために、タングステンの静的エッチングを引き起こす。タングステンの静的エッチングは酸性CMP組成物の一般的な副作用である。CMPプロセスの間、基板の表面上に残る金属研磨スラリーは、CMPの効果を超えてタングステンをエッチング又はコロージョンし続ける。時にはそのような静的エッチングが望まれる;しかしながら、大部分の半導体プロセスにおいて、静的エッチングは低減されるべきであり、又は好ましくは完全に抑制されるべきである。
【0007】
したがって、高いタングステン除去速度を提供し、更にタングステンの静的エッチングを少なくとも抑制する、タングステン用の中性からアルカリ性のCMP組成物及び中性からアルカリ性のCMP法が必要とされる。
【0008】
発明の要約
本発明は、ケミカルメカニカルポリッシング組成物であって、初期成分として:
水;
ヨウ素酸塩化合物、過ヨウ素酸塩化合物及びそれらの混合物からなる群より選択される酸化剤;
含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒;
場合により、pH調整剤;及び
場合により、殺生物剤を含むケミカルメカニカルポリッシング組成物であって、そのpHが7以上である、ケミカルメカニカルポリッシング組成物に関する。
【0009】
本発明はまた、ケミカルメカニカルポリッシング組成物であって、初期成分として:
水;
アルカリ金属ヨウ素酸塩、ヨウ素酸カルシウム、ヨウ素酸マグネシウム、ヨウ素酸アンモニウム、アルカリ金属過ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸カルシウム、過ヨウ素酸マグネシウム、過ヨウ素酸アンモニウム及びそれらの混合物からなる群より選択される酸化剤;
含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒;
場合により、pH調整剤;及び
場合により、殺生物剤を含むケミカルメカニカルポリッシング組成物であって、そのpHが7~13である、ケミカルメカニカルポリッシング組成物に関する。
【0010】
本発明は更に、ケミカルメカニカルポリッシング組成物であって、初期成分として:
水;
ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム及びそれらの混合物からなる群より選択される酸化剤;
含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒であって、含窒素化合物が、コロイダルシリカ砥粒の表面上、コロイダルシリカ砥粒内、又はそれらの組合せに存在する砥粒;
場合により、ジカルボン酸;
無機酸、無機塩基及びそれらの混合物からなる群より選択されるpH調整剤;及び
場合により、殺生物剤を含むケミカルメカニカルポリッシング組成物であって、そのpHが8~12である、ケミカルメカニカルポリッシング組成物に関する。
【0011】
本発明は、タングステンのケミカルメカニカルポリッシング方法であって、
タングステン及び絶縁体を含む基板を提供すること;
初期成分として:
水;
ヨウ素酸塩化合物、過ヨウ素酸塩化合物及びそれらの混合物からなる群より選択される酸化剤;
含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒;
場合により、pH調整剤;及び
場合により、殺生物剤を含むケミカルメカニカルポリッシング組成物であって、そのpHが7以上である、ケミカルメカニカルポリッシング組成物を提供すること;
研磨面を有するケミカルメカニカルポリッシングパッドを提供すること;
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基板との界面に動的接触を生じさせること;そして
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基板との界面又はその近傍でケミカルメカニカルポリッシング組成物をケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨面上に分注してタングステンの少なくとも一部を除去することを含む方法に関する。
【0012】
本発明はまた、タングステンのケミカルメカニカルポリッシング方法であって、
タングステン及び絶縁体を含む基板を提供すること;
初期成分として:
水;
アルカリ金属ヨウ素酸塩、ヨウ素酸カルシウム、ヨウ素酸マグネシウム、ヨウ素酸アンモニウム、アルカリ金属過ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸カルシウム、過ヨウ素酸マグネシウム、過ヨウ素酸アンモニウム及びそれらの混合物からなる群より選択される酸化剤;
含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒;
場合により、ジカルボン酸;
無機酸、無機塩基及びそれらの混合物からなる群より選択されるpH調整剤;及び
場合により、殺生物剤を含むケミカルメカニカルポリッシング組成物であって、そのpHが7~13である、ケミカルメカニカルポリッシング組成物を提供すること;
研磨面を有するケミカルメカニカルポリッシングパッドを提供すること;
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基板との界面に動的接触を生じさせること;そして
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基板との界面又はその近傍でケミカルメカニカルポリッシング組成物をケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨面上に分注してタングステンの少なくとも一部を除去することを含む方法に関する。
【0013】
本発明はまた、タングステンのケミカルメカニカルポリッシング方法であって、
タングステン及び絶縁体を含む基板を提供すること;
初期成分として:
水;
ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム及びそれらの混合物からなる群より選択される酸化剤;
含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒であって、含窒素化合物が、コロイダルシリカ砥粒の表面上、コロイダルシリカ砥粒内、又はそれらの組合せに存在する砥粒;
場合により、ジカルボン酸;
アンモニア水、水酸化カリウム及びそれらの混合物からなる群より選択される無機塩基であるpH調整剤;及び
場合により、殺生物剤を含むケミカルメカニカルポリッシング組成物であって、そのpHが8~12である、ケミカルメカニカルポリッシング組成物を提供すること;
研磨面を有するケミカルメカニカルポリッシングパッドを提供すること;
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基板との界面に動的接触を生じさせること;そして
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基板との界面又はその近傍でケミカルメカニカルポリッシング組成物をケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨面上に分注してタングステンの少なくとも一部を除去することを含む方法に関する。
【0014】
本発明は更に、タングステンのケミカルメカニカルポリッシング方法であって、
タングステン及び絶縁体を含む基板を提供すること;
初期成分として:
水;
ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸カリウム及びそれらの混合物からなる群より選択される酸化剤;
正味の負ゼータ電位を有しており、含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒であって、含窒素化合物が、コロイダルシリカ砥粒の表面上、コロイダルシリカ砥粒内、又はそれらの組合せに存在する砥粒;
場合により、ジカルボン酸;
pH調整剤であって、アンモニア水、水酸化カリウム及びそれらの混合物からなる群より選択されるpH調整剤;及び
場合により、殺生物剤を含むケミカルメカニカルポリッシング組成物であって、そのpHが8~10である、ケミカルメカニカルポリッシング組成物を提供すること;
研磨面を有するケミカルメカニカルポリッシングパッドを提供すること;
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基板との界面に動的接触を生じさせること;そして
ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基板との界面又はその近傍でケミカルメカニカルポリッシング組成物をケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨面上に分注してタングステンの少なくとも一部を除去することを含む方法であって;提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物が、200mm研磨機で、プラテン速度93~113回転/分、キャリア速度87~111回転/分、ケミカルメカニカルポリッシング組成物流量125~300mL/分、公称ダウンフォース21.4kPaで、≧500Å/分のタングステン除去速度を有しており;そしてケミカルメカニカルポリッシングパッドが、ポリマー中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層及びポリウレタン含浸不織サブパッドを含む方法に関する。
【0015】
本発明の上記のアルカリ性ケミカルメカニカルポリッシング組成物及び方法は、7を超えるpH値で500Å/分以上のタングステン除去速度を有しており、そして更に、不要なタングステンの静的エッチングを少なくとも抑制する。
【0016】
発明の詳細な説明
文脈上特に断りない限り、本明細書を通して使用されるとき、以下の略語は以下の意味を有する:℃=摂氏度;g=グラム;L=リットル;mL=ミリリットル;μ=μm=ミクロン;kPa=キロパスカル;Å=オングストローム;mV=ミリボルト;DI =脱イオン化;ppm=百万分の一=mg/L;mm=ミリメートル;cm=センチメートル;min=分;rpm=毎分回転数;lbs=ポンド;kg=キログラム;W=タングステン;2.54cm=1インチ;DLS=動的光散乱;重量%=重量パーセント;RR=除去速度;PS=本発明の研磨スラリー;CS=比較スラリー;KIO3=ヨウ素酸カリウム;KIO4=過ヨウ素酸カリウム;H2O2=過酸化水素;KClO3=塩素酸カリウム;K2S2O8=過硫酸カリウム;(NH4)2S2O8=過硫酸アンモニウム;DEAMS=(N,N-ジエチルアミノメチル)トリエトキシシラン、98%(Gelest Inc., Morrisville, PA);TMOS=オルトケイ酸テトラメチル;TMAH=水酸化テトラメチルアンモニウム;TEA =テトラエチルアンモニウム;及びEDA=エチレンジアミン。
【0017】
「ケミカルメカニカルポリッシング」又は「CMP」という用語は、化学的力及び機械的力のみによって基板を研磨するプロセスのことをいい、電気バイアスが基板に印加されるエレクトロケミカルメカニカルポリッシング(ECMP)とは区別される。「TEOS」という用語は、オルトケイ酸テトラエチル(Si(OC2H5)4)の分解により形成される二酸化ケイ素を意味する。「平面的」という用語は、長さと幅の二次元を有する実質的に平らな表面又は平らなトポグラフィーを意味する。「組成物」及び「スラリー」という用語は、本明細書を通して互換的に使用される。「相乗的」という用語は、2つ以上の物質、材料、化合物又はパラメータの別個の効果の合計よりも大きい複合効果を生み出すための、それらの間の相互作用又は協力作用を意味する。「アルキル」という用語は、置換基を有するものとして本明細書中に別段の記載がない限り、炭素と水素のみからなり(ヒドロカルビル)、そして一般式:CnH2n+1を有する有機化学基を意味する。「a」及び「an」という用語は、単数形及び複数形の両方を指す。FUSO BS-3(商標)粒子のようなFUSO(商標)粒子(Fuso Chemical Co., Ltd.(日本、大阪)から入手可能)は、Stober法によって調製されるが、このような全ての粒子は粒子内に含窒素化合物を含む。KLEBOSOL(商標)1598-B25粒子のようなKLEBOSOL(商標)粒子(AZ Electronic Materialsにより製造され、The Dow Chemical Companyから入手可能)は、水ガラス法によって調製され、したがって、含窒素化合物は粒子内に組み込まれない。特に断りない限り、全ての百分率は重量による。全ての数値範囲は全体を含み、任意の順序で組合せることができるが、そのような数値範囲が合計して最大100%になることが論理的である場合を除く。
【0018】
本発明のタングステンを含有する基板の研磨方法は、初期成分として:水;ヨウ素酸塩化合物、過ヨウ素酸塩化合物及びそれらの混合物からなる群より選択される酸化剤;含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒;場合により、pH調整剤;及び場合により、殺生物剤を含むケミカルメカニカルポリッシング組成物であって、そのpHが7を超える、ケミカルメカニカルポリッシング組成物を含む。本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物及び方法は、鉄(III)触媒のような複数の酸化状態の金属触媒を含まず、かつペルオキシ型の酸化剤を含まない。
【0019】
本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物及び方法のヨウ素酸塩及び過ヨウ素酸塩化合物は、ヨウ素酸の塩及び過ヨウ素酸の塩を含むが、これらに限定されない。ヨウ素酸の塩は、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム、ヨウ素酸リチウム及びそれらの混合物からなる群より選択されるアルカリ金属ヨウ素酸塩;ヨウ素酸カルシウム、ヨウ素酸マグネシウム及びそれらの混合物からなる群より選択されるアルカリ土類金属ヨウ素酸塩;並びにヨウ素酸アンモニウムを含むヨウ素酸のアンモニウム塩を含むが、これらに限定されない。過ヨウ素酸の塩は、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸リチウム及びそれらの混合物からなる群より選択されるアルカリ金属過ヨウ素酸塩;過ヨウ素酸カルシウム、過ヨウ素酸マグネシウム及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されないアルカリ土類金属過ヨウ素酸塩;並びに過ヨウ素酸アンモニウムを含む過ヨウ素酸アンモニウム塩を含むが、これらに限定されない。好ましくは、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物及び方法において、ヨウ素酸塩化合物は、アルカリ金属ヨウ素酸塩から選択されるヨウ素酸の塩であり、そして過ヨウ素酸塩化合物は、アルカリ金属過ヨウ素酸塩から選択される過ヨウ素酸の塩である;更に好ましくは、ヨウ素酸塩化合物は、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム及びそれらの混合物からなる群より選択されるヨウ素酸の塩であり、そして過ヨウ素酸塩化合物は、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム及びそれらの混合物からなる群より選択される過ヨウ素酸の塩である;最も好ましくは、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物及び方法において、ヨウ素酸塩化合物はヨウ素酸のカリウム塩である、ヨウ素酸カリウム(KIO3)であり、そして過ヨウ素酸塩化合物は、過ヨウ素酸のカリウム塩である、過ヨウ素酸カリウム(KIO4)であり、そしてここで、最も特に好ましいのは、ヨウ素酸のカリウム塩である、ヨウ素酸カリウム(KIO3)である。このようなヨウ素酸塩及び過ヨウ素酸塩化合物は、例えば、SIGMA-ALDRICH(登録商標)(Milwaukee, WI)から市販されているか、又は化学文献にしたがって当業者には調製することができる。
【0020】
好ましくは、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物及び方法において、ヨウ素酸塩化合物、過ヨウ素酸塩化合物、又はそれらの混合物は、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物に少なくとも0.001重量%以上の量で含まれ、更に好ましくは、ヨウ素酸塩化合物、過ヨウ素酸塩化合物、又はそれらの混合物は、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物に0.001重量%~1重量%の量で含まれ;更になお好ましくは、ヨウ素酸塩化合物、過ヨウ素酸塩化合物、又はそれらの混合物は、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物に0.1重量%~1重量%の量で含まれ;そして最も好ましくは、ヨウ素酸塩化合物、過ヨウ素酸塩化合物、又はそれらの混合物は、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物に0.3重量%~0.5重量%の量で含まれる。
【0021】
好ましくは、本発明のタングステンを含む基板のケミカルメカニカルポリッシング方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物に初期成分として含有される水は、偶発的な不純物を制限するために脱イオン水及び蒸留水の少なくとも1種である。
【0022】
場合により、本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、初期成分として、第2の酸化剤であって、一過硫酸塩、過硫酸塩、臭素酸塩、過臭素酸塩、硝酸塩、ハロゲン、及びそれらの混合物からなる群より選択される第2の酸化剤を含有する。好ましくは、第2の酸化剤が本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物に含まれる場合、第2の酸化剤は、一過硫酸塩、過硫酸塩又はそれらの混合物である。過硫酸塩の一例は、過硫酸アンモニウムである。最も好ましくは、このような第2の酸化剤は、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物及び方法から除外される。
【0023】
第2の酸化剤が本発明の方法及びケミカルメカニカルポリッシング組成物に含まれる場合、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、初期成分として、0.01~5重量%、更に好ましくは0.1~5重量%、最も好ましくは0.1~0.5重量%の第2の酸化剤を含有する。
【0024】
本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、初期成分として、コロイダルシリカ砥粒であって、含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒を含有する。このような含窒素化合物は、コロイダルシリカ砥粒内に組み込むことができるか、又はコロイダルシリカ砥粒の表面上に組み込むことができるか、あるいは本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、初期成分として、含窒素化合物がコロイダルシリカ砥粒内に組み込まれており、そして含窒素化合物がコロイダルシリカ砥粒の表面上に組み込まれている、組合せを有するコロイダルシリカ砥粒を含有することができる。好ましくは、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物による基板の研磨方法において、コロイダルシリカ砥粒は、コロイダルシリカ砥粒内及び表面上に組み込まれた含窒素化合物の組合せを含む。好ましくは、本発明のコロイダルシリカ砥粒は、正味の負ゼータ電位を有する。
【0025】
含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒は、市販されているか、又は化学文献及びコロイダルシリカ砥粒の文献に記載されるとおり当業者には調製することができる。正味の(-)負ゼータ電位を有しており、含窒素化合物を含む、市販されているコロイダルシリカ粒子の例は、KLEBOSOL(商標)1598-B25表面改質コロイダルシリカ粒子(AZ Electronic Materialsにより製造され、The Dow Chemical Company, Midland, MIから入手可能);並びにFUSO(商標)BS-3内部改質コロイダルシリカ粒子、及びFUSO(商標)BS-3内部と表面の同時改質コロイダルシリカ粒子(Fuso Chemical Co., Ltd.(日本、大阪))である。内部改質コロイダルシリカ粒子は、好ましくは当業者には周知のStober法によって調製される。
【0026】
本発明の基板の研磨方法において、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、含窒素化合物を含まないコロイダルシリカ砥粒と混合された、含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒を有することができる。市販されている混合物の例は、DEAMS表面改質FUSO BS-3(商標)砥粒スラリー(80ppm DEAMS対1重量%シリカ)と正味の負ゼータ電位を持つKLEBOSOL(商標)1598-B25スラリー(AZ Electronic Materialsにより製造され、The Dow Chemical Company, Midland, MIから入手可能)との混合物である。
【0027】
本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒を含有し、そしてここで、ケミカルメカニカルポリッシング組成物は、pHが7以上、好ましくは7~13、好ましくは8~12、更に好ましくは8~10、最も好ましくは8~9である。更に好ましくは、本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、永久的な正味の負ゼータ電位を有しており、含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒を含有し、そしてここで、ケミカルメカニカルポリッシング組成物は、-1mV~-50mV、好ましくは-20mV~-45mV、最も好ましくは-30mV~-45mVの負ゼータ電位により示されるとおり、pHが7以上、好ましくは7~13、更に好ましくは8~12、更になお好ましくは8~10、最も好ましくは8~9である。
【0028】
好ましくは、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物による本発明の基板の研磨方法において、本発明のコロイダルシリカ砥粒は、一般式(I):
R1R2R3R4N+ (I)
[式中、R1、R2、R3及びR4は、水素、(C1-C6)アルキル、(C7-C12)アリールアルキル及び(C6-C10)アリールから独立に選択される]を有するアンモニウム化合物を含むが、これらに限定されない含窒素化合物を(コロイダルシリカ砥粒の表面上、コロイダルシリカ砥粒内、又はそれらの組合せに)含む。このような基は、1個以上のヒドロキシル基で置換することができる。このようなアンモニウム化合物を含有するコロイダルシリカ砥粒は、当技術分野又は文献において公知の方法により調製することができる。
【0029】
このような窒素含有アンモニウム化合物の例は、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム及びジエチルジメチルアンモニウムである。
【0030】
含窒素化合物はまた、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン又は第4級アミンのようなアミノ基を有する化合物を含むことができるが、これらに限定されない。このような含窒素化合物はまた、リジン、グルタミン、グリシン、イミノ二酢酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン及びトレオニンのような、1~8個の炭素原子を有するアミノ酸を含むことができる。
【0031】
種々の実施態様において、本発明のコロイダルシリカ砥粒における化学種対シリカのモル比は、好ましくは0.1%より大きく10%より小さい。
【0032】
アミノシラン化合物は、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物のコロイダルシリカ粒子の表面上又は粒子内に組み込むための最も好ましい含窒素化合物である。このようなアミノシラン化合物は、第1級アミノシラン、第2級アミノシラン、第3級アミノシラン、第4級アミノシラン及びマルチポーダル(multi-podal)(例えば、ダイポーダル(dipodal))アミノシランを含むが、これらに限定されない。アミノシラン化合物は、実質的に任意の適切なアミノシランを含むことができる。本発明を実施するのに使用できるアミノシランの例は、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、ジエチルアミノメチルトリアルコキシシラン、(N,N-ジエチル-3-アミノプロピル)トリアルコキシシラン)、3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノプロピルトリアルコキシシラン)、アミノプロピルトリアルコキシシラン、(2-N-ベンジルアミノエチル)-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン)、トリアルコキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウム、N-(トリアルコキシシリルエチル)ベンジル-N,N、N-トリメチルアンモニウム、(ビス(メチルジアルコキシシリルプロピル)-N-メチルアミン、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)尿素、ビス(3-(トリアルコキシシリル)プロピル)-エチレンジアミン、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミン、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(N-トリアルコキシシリルプロピル)ポリエチレンイミン、トリアルコキシシリルプロピルジエチレントリアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、4-アミノブチル-トリアルコキシシラン、(N,N-ジエチルアミノメチル)トリエトキシシラン、及びそれらの混合物である。アミノシラン化合物が一般に水性媒体中で加水分解(又は部分加水分解)されることは、当業者ならば直ちに理解する。このように、アミノシラン化合物を列挙することによって、アミノシラン又はその加水分解(又は部分加水分解)種若しくは縮合種をコロイダルシリカ砥粒に組み込むことができることは理解される。
【0033】
種々の実施態様において、コロイダルシリカ砥粒におけるアミノシラン種対シリカのモル比は、好ましくは0.1%より大きく10%より小さい。
【0034】
コロイダルシリカ砥粒内に組み込まれた含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒は、好ましくはStober法によって調製されるが、ここでは、TMOS及びTEOSのような有機アルコキシシランが、シリカ合成のための前駆体として使用され、そして含窒素化合物が触媒として使用される。前駆体としてのTMOS及びTEOSは、水性アルカリ性環境中で加水分解及び縮合を受ける。アルカリ性pHを維持するために使用される触媒は、アンモニア、TMAH、TEA及びEDAなどの、しかしこれらに限定されない窒素含有種である。対イオンとして、これらの含窒素化合物は、粒子の成長中には必然的にコロイダルシリカ砥粒内に捕捉されており、よってコロイダルシリカ砥粒内部に組み込まれた含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒が得られる。市販されている粒子内に組み込まれた含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒の例は、FUSO BS-3(商標)コロイダルシリカ砥粒のようなFUSO(商標)から入手可能な粒子である。
【0035】
好ましくは、本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、初期成分として、粒子内、粒子の表面上、又はそれらの組合せに組み込まれた含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒を含有し、そしてここで、更に好ましくは、コロイダルシリカ砥粒は、正味の負ゼータ電位を有しており、粒子内、粒子の表面上、又はそれらの組合せに組み込まれた含窒素化合物を含み、そして動的光散乱法(DLS)によって測定されるとき平均粒径≦100nm、好ましくは5~100nm、更に好ましくは10~90nm、最も好ましくは20~80nmを有する。
【0036】
好ましくは、本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、0.01~15重量%、好ましくは0.05~10重量%、更に好ましくは0.1~7.5重量%、更になお好ましくは0.2~5重量%、最も好ましくは0.2~2重量%のコロイダルシリカ砥粒であって、粒子内、粒子の表面上、又はそれらの組合せに組み込まれた含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒を含有する。更に好ましくは、含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒は、永久的な正味の負ゼータ電位を有する。
【0037】
場合により、本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、初期成分として、ジカルボン酸であって、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グルタル酸、酒石酸、それらの塩又はそれらの混合物を含むが、これらに限定されないジカルボン酸を含有する。更に好ましくは、本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、初期成分として、ジカルボン酸であって、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、それらの塩及びそれらの混合物からなる群より選択されるジカルボン酸を含有する。更になお好ましくは、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、初期成分として、ジカルボン酸であって、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、それらの塩、及びそれらの混合物からなる群より選択されるジカルボン酸を含有する。最も好ましくは、本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、初期成分として、ジカルボン酸であるマロン酸又はその塩を含有する。最も好ましくは、このようなジカルボン酸は、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物及び方法から除外される。
【0038】
本発明の基板の研磨方法において、ジカルボン酸が本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物に含まれる場合、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、初期成分として、1~2,600ppm、好ましくは100~1,400ppm、好ましくは120~1,350ppm、更に好ましくは130~1,100ppmのジカルボン酸であって、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グルタル酸、酒石酸、それらの塩又はそれらの混合物を含むが、これらに限定されないジカルボン酸を含有する。場合により、本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、初期成分として、1~2,600ppmのマロン酸、その塩又はその混合物を含有する。好ましくは、本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、初期成分として、100~1,400ppm、更に好ましくは120~1,350ppm、最も好ましくは130~1,350ppmのジカルボン酸であるマロン酸又はその塩を含有する。
【0039】
本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、pHが7以上である。好ましくは、本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、pHが7~13である。更に好ましくは、本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、pHが8~12である。更になお好ましくは、本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、pHが8~10;そして最も好ましくはpHが8~9である。
【0040】
好ましくは、本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、場合により、pH調整剤を含有する。好ましくは、pH調整剤は、無機及び有機pH調整剤からなる群より選択される。好ましくは、pH調整剤は、無機酸及び無機塩基からなる群より選択される。更に好ましくは、pH調整剤は、アンモニア水及び水酸化カリウムからなる群より選択される。最も好ましくは、pH調整剤は、水酸化カリウムである。
【0041】
場合により、研磨組成物は、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン及び5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンという活性成分を含有する、それぞれThe Dow Chemical Companyによって製造される、KORDEX(商標)MLX(9.5~9.9% メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、89.1~89.5%水及び≦1.0%関連反応生成物)又はKATHON(商標)ICP IIIのような殺生物剤を含有することができる(KATHON(商標)及びKORDEX(商標)はThe Dow Chemical Companyの商標である)。このような殺生物剤は、当業者には公知のとおり、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物に従来量で含まれ得る。
【0042】
好ましくは、提供される基板は、タングステン及びTEOSのような絶縁体を含む半導体基板である。
【0043】
好ましくは、本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、当技術分野において公知の任意の適切な研磨パッドであってよい。当業者であれば、本発明の方法において使用するための適切なケミカルメカニカルポリッシングパッドを選択することを知っている。更に好ましくは、本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、織物の及び不織の研磨パッドから選択される。更になお好ましくは、本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、ポリウレタン研磨層を含む。最も好ましくは、本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、ポリマー中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層及びポリウレタン含浸不織サブパッドを含む。好ましくは、提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドは、研磨面上に少なくとも1つの溝を有する。
【0044】
好ましくは、本発明の基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、ケミカルメカニカルポリッシングパッドと基板との界面又はその近傍で提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨面上に分注される。
【0045】
好ましくは、本発明の基板の研磨方法において、動的接触は、提供されるケミカルメカニカルポリッシングパッドと基板との界面に、研磨される基板の表面に垂直な0.69~34.5kPaのダウンフォースにより生じる。
【0046】
本発明のタングステンを含む基板の研磨方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング組成物は、タングステン除去速度≧500Å/分;好ましくはタングステン除去速度≧1,000Å/分;更に好ましくは、≧1,100Å/分;更に好ましくは≧1200Å/分;更になお好ましくは≧2000Å/分;及びW/TEOS選択比≧11、好ましくはW/TEOS選択比≧12、更に好ましくはW/TEOS選択比18~24を有しており、このとき200mm研磨機上で、プラテン速度93~113回転/分、キャリア速度87~111回転/分、ケミカルメカニカルポリッシング組成物流量125~300mL/分、公称ダウンフォース21.4kgで測定されており;そしてここで、ケミカルメカニカルポリッシングパッドは、ポリマー中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層及びポリウレタン含浸不織サブパッドを含む。
【0047】
以下の実施例は、本発明のアルカリ性ケミカルメカニカルポリッシング組成物を用いた基板からタングステンの高い除去速度、タングステンの静的エッチング速度の抑制、及びW/TEOS選択比を説明することを目的としているが、以下の実施例は、発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0048】
スラリー配合物
本実施例のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、表1に記載された量の成分をDI水である残りと合わせ、そして45重量%アンモニア水を用いて組成物のpHを表1に記載された最終pHに調整することによって調製された。
【0049】
【実施例2】
【0050】
W除去速度
上記の実施例1の表1の研磨スラリーについての研磨実験は、Applied Materials 6EC研磨機に設置された200mmのブランケットウェーハ上で行われた。研磨除去速度実験は、Novellus製の200mmブランケット厚さ15kÅ TEOSシートウェーハ、並びにWaferNet Inc.、Silicon Valley Microelectronics又はSKW Associates, Inc.から入手可能なW、Ti、及びTiNブランケットウェーハ上で行われた。全ての研磨実験は、典型的ダウン圧力21.4kPa(3.1psi)、ケミカルメカニカルポリッシング組成物流量200mL/分、テーブル回転速度113rpm及びキャリア回転速度111rpmで、SP2310サブパッド(Rohm and Haas Electronic Materials CMP Inc.から市販されている)と対になったIC1010(商標)ポリウレタン研磨パッドを用いて行われた。Kinik PDA33A-3ダイヤモンドパッドコンディショナー(Kinik Companyから市販されている)を使用して研磨パッドをドレッシングした。研磨パッドに、80rpm(プラテン)/36rpm(コンディショナー)で9lbs(4.1kg)で15分間及び7lbs(3.2kg)で15分間のダウンフォースを用いてコンディショナーでブレークインした。研磨パッドは、7lbs(3.2kg)で24秒間のダウンフォースを用いて、研磨する前に実験室内で更にコンディショニングした。W除去速度は、KLA-Tencor RS100C計測ツールを用いて決定された。
【0051】
【0052】
研磨試験の結果は、比較組成物とは対照的に、本発明のアルカリ性ケミカルメカニカルポリッシング組成物を使用した場合のW RRの有意な増大を示した。
【実施例3】
【0053】
W RR及びTEOS RR
本実施例のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、表3に記載された量の成分をDI水である残りと合わせ、そして45重量%水酸化カリウム水溶液により組成物のpHを表3に記載された最終pHに調整することによって調製された。
【0054】
【0055】
表3の研磨スラリーについての研磨実験は、Applied Materials Reflexion研磨機に設置された200mmのブランケットウェーハ上で行われた。研磨除去速度実験は、Novellus製の200mmブランケット厚さ15kÅ TEOSシートウェーハ、並びにWaferNet Inc.、Silicon Valley Microelectronics又はSKW Associates, Inc.から入手可能なW、Ti、及びTiNブランケットウェーハ上で行われた。全ての研磨実験は、典型的ダウン圧力21.4kPa(3.1psi)、ケミカルメカニカルポリッシング組成物流量300mL/分、テーブル回転速度93rpm及びキャリア回転速度87rpmで、SP2310サブパッド(Rohm and Haas Electronic Materials CMP Inc.から市販されている)と対になったIC1000(商標)K7+R32ポリウレタン研磨パッドを用いて行われた。研磨パッドに、実施例2に上記されたとおりブレークイン及びコンディショニングが行われた。W及びTEOS除去速度は、KLA-Tencor RS100C計測ツールを用いて決定された。
【0056】
【0057】
第2の酸化剤を添加すると、酸化剤としてKIO3のみを含む本発明の研磨組成物とは対照的に、著しく有害なWの研磨結果が得られた。
【実施例4】
【0058】
W RR及びTEOS RR
本実施例のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、表5に記載された量の成分をDI水である残りと合わせ、そして45重量%アンモニア水により組成物のpHを表5に記載された最終pHに調整することによって調製された。
【0059】
【0060】
表5の研磨スラリーについての研磨実験は、Applied Materials Reflexion研磨機に設置された200mmのブランケットウェーハ上で行われた。研磨除去速度実験は、Novellus製の200mmブランケット厚さ15kÅ TEOSシートウェーハ、並びにWaferNet Inc.、Silicon Valley Microelectronics又はSKW Associates, Inc.から入手可能なW、Ti、及びTiNブランケットウェーハ上で行われた。全ての研磨実験は、典型的ダウン圧力21.4kPa(3.1psi)、ケミカルメカニカルポリッシング組成物流量200mL/分、テーブル回転速度113rpm及びキャリア回転速度111rpmで、SP2310サブパッド(Rohm and Haas Electronic Materials CMP Inc.から市販されている)と対になったVP6000(商標)K7+R32ポリウレタン研磨パッドを用いて行われた。研磨パッドに、実施例2に上記されたとおりブレークイン及びコンディショニングが行われた。W及びTEOS除去速度は、KLA-Tencor RS100C計測ツールを用いて決定された。
【0061】
【0062】
ヨウ素酸カリウムと、正味の負ゼータ電位を有しており、含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒との組合せを含有する本発明のスラリーは、ヨウ素酸カリウムと、正味の負ゼータ電位を有しており、含窒素化合物を含むコロイダルシリカ砥粒との組合せを有していなかった比較スラリーに対してW RRが有意に増大した。
【実施例5】
【0063】
W RR及びTEOS RR
本実施例のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、表7に記載された量の成分をDI水である残りと合わせ、そして45重量%水酸化カリウム水溶液により組成物のpHを表7に記載された最終pHに調整することによって調製された。
【0064】
【0065】
表7の研磨スラリーについての研磨実験は、Applied Materials Mirra研磨機に設置された200mmのブランケットウェーハ上で行われた。研磨除去速度実験は、Novellus製の200mmブランケット厚さ15kÅ TEOSシートウェーハ、並びにWaferNet Inc.、Silicon Valley Microelectronics又はSKW Associates, Inc.から入手可能なW、Ti、及びTiNブランケットウェーハ上で行われた。全ての研磨実験は、典型的ダウン圧力21.4kPa(3.1psi)、ケミカルメカニカルポリッシング組成物流量125mL/分、テーブル回転速度113rpm及びキャリア回転速度111rpmで、SP2310サブパッド(Rohm and Haas Electronic Materials CMP Inc.から市販されている)と対になったIK4250H(商標)K7+R32ポリウレタン研磨パッドを用いて行われた。研磨パッドに、実施例2に上記されたとおりブレークイン及びコンディショニングが行われた。W及びTEOS除去速度は、KLA-Tencor RS100C計測ツールを用いて決定された。
【0066】
【0067】
PS-13を除いて、本発明のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、高いW RR及び高いW/TEOS選択比を示した。
【実施例6】
【0068】
W静的エッチング速度
本実施例のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、表9及び10に記載された量の成分をDI水である残りと合わせ、そして45重量%水酸化カリウム水溶液により組成物のpHを表9及び10に記載された最終pHに調整することによって調製された。
【0069】
【0070】
【0071】
静的エッチング試験は、直径20cm(8インチ)Wブランケットウェーハを15gスラリー試料に室温で浸漬することにより行われた。30分後にWウェーハを試験スラリーから取り出した。W除去は、4プローブ導電率法を用いて測定された、後(pst)厚さから前(pre)厚さを差し引いて算出された。静的エッチング試験の結果を表11に示す。
【0072】
【0073】
静的エッチング速度の結果は、本発明の研磨スラリーが、鉄触媒及び過酸化水素酸化剤を含有する従来の酸性研磨スラリーとは対照的に、静的エッチング速度が有意に低下したことを示した。
【実施例7】
【0074】
W RR及びTEOS RR
本実施例のケミカルメカニカルポリッシング組成物は、表12に記載された量の成分をDI水である残りと合わせ、そして45重量%水酸化カリウム水溶液により組成物のpHを表12に記載された最終pHに調整することによって調製された。
【0075】
【0076】
表12の研磨スラリーについての研磨実験は、Applied Materials Reflexion研磨機に設置された200mmのブランケットウェーハ上で行われた。研磨除去速度実験は、Novellus製の200mmブランケット厚さ15kÅ TEOSシートウェーハ、並びにWaferNet Inc.、Silicon Valley Microelectronics又はSKW Associates, Inc.から入手可能なW、Ti、及びTiNブランケットウェーハ上で行われた。全ての研磨実験は、典型的ダウン圧力21.4kPa(3.1psi)、ケミカルメカニカルポリッシング組成物流量250mL/分、テーブル回転速度113rpm及びキャリア回転速度111rpmで、SP2310サブパッド(Rohm and Haas Electronic Materials CMP Inc.から市販されている)と対になったIK4250H(商標)K7+R32ポリウレタン研磨パッドを用いて行われた。研磨パッドに、実施例2に上記されたとおりブレークイン及びコンディショニングが行われた。W及びTEOS除去速度は、KLA-Tencor RS100C計測ツールを用いて決定された。
【0077】
【0078】
第2の酸化剤を添加すると、酸化剤としてKIO3のみを含む本発明の研磨組成物とは対照的に、著しく有害なWの研磨結果が得られた。