(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/46 20060101AFI20240116BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20240116BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20240116BHJP
C08L 75/06 20060101ALI20240116BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240116BHJP
C09D 175/06 20060101ALI20240116BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240116BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20240116BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20240116BHJP
【FI】
C08G18/46 038
C08G18/79 010
C08G18/08 038
C08L75/06
C08L83/04
C09D175/06
C09D7/65
C09D7/20
C08J7/04 A CER
C08J7/04 A CEZ
(21)【出願番号】P 2019168878
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】紺野 貴史
(72)【発明者】
【氏名】前津 成俊
(72)【発明者】
【氏名】渡部 淳
(72)【発明者】
【氏名】畑中 慎太郎
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-001897(JP,A)
【文献】特開昭60-047013(JP,A)
【文献】特開2004-346321(JP,A)
【文献】特開平07-247346(JP,A)
【文献】特開2017-226135(JP,A)
【文献】特開2019-183151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00- 18/87
C08L 1/00-101/14
C09D 1/00-201/10
C08J 7/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とを含む組成物であって、
前記ポリオール化合物(A)が、下記式(1)
【化1】
[式中のR
1~R
3は、同一又は異なって、下記式(1a)
【化2】
(式(1a)中、L
1、L
2は同一又は異なって、炭素数1~10のアルキレン基を示し、mは0以上の数を示す。波線のついた結合手が式(1)中の窒素原子に結合する)
で表される基である。但し、R
1、R
2、及びR
3における前記式(1a)で表される基中のmが同時に0である場合は除く]
で表される化合物であって、
水酸基価が140~210(KOHmg/g)であり、数平均分子量(標準ポリスチレン換算)が800以上である化合物(1a)
と、水酸基価が300~850(KOHmg/g)、数平均分子量が200~600であるポリエステルポリオール(a2)を含み、
前記ポリエステルポリオール(a2)の含有量が前記化合物(1a)1重量部に対して0.5~1.5重量部の範囲であり、
前記イソシアネート化合物(B)が、下記式(2)
【化3】
[式中、L
3、L
4、L
5は、同一又は異なって、水素原子、NCO基を有する炭素数1~10のアルキル基、又は下記式(2a)
【化4】
(式(2a)中、L
6、L
7は、同一又は異なって、炭素数1~10のアルキレン基を示す。波線のついた結合手がアルキル基を構成する炭素原子に結合する)
で表される基を有する炭素数1~10のアルキル基を示す。但し、L
3、L
4、及びL
5が同時に水素原子である場合は除く]
で表される化合物(b)を含む、組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルポリオール(a2)
が、下記式(4)
【化5】
(式(4)中、Rはv価の炭化水素基を示し、vは1以上の整数である。L
2
’は炭素数1~10のアルキレン基を示し、uは0以上の数を示す。但し、v個のuが全て0である場合は除く)
で表される化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物中のイソシアネート化合物(B)のNCO基と、ポリオール化合物(A)のOH基の当量比(NCO/OH)が0.2~2.0の範囲である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
更に、ポリシロキサン誘導体(C)を、ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の合計100重量部に対して0.1~0.5重量部含有する、請求項1~3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
更に、下記式(3)
【化6】
(式中、R
4、R
6は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示し、R
5は炭素数1~5のアルキレン基を示す。sは1以上の整数を示し、tは0又は1を示す。sが2以上の整数である場合、複数のR
5は同一であってもよく異なっていてもよい)
で表される溶剤を含有する、請求項1~4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
コーティング剤である、請求項1~5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物からなる被膜が、表面の少なくとも一部を被覆するプラスチック成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂形成用の組成物、及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は柔軟性、伸縮性、及び強度を備える。このような性質を有するポリウレタン樹脂を形成する組成物は、例えばコーティング剤等に使用されている。
【0003】
前記コーティング剤として、例えば、車両用部材や電子デバイス等を構成するプラスチック基材を被覆する用途に使用されるコーティング剤には、基材への密着性、硬度、及び耐擦傷性を備える被膜を形成することが求められる。このようなコーティング剤としては、特許文献1、2に記載の、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのε-カプロラクトン変性体と、脂環族、脂肪族、或いは芳香族ジイソシアネートとを含む組成物が知られている。
【0004】
しかし、近年、日焼け止め剤等の薬剤がポリウレタン樹脂からなる被膜に接触すると、被膜が剥離したり、被膜の外観が劣化することが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-137145号公報
【文献】特開平04-130119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、基材への密着性、硬度、耐擦傷性、及び薬剤耐性に優れた硬化物を形成可能な組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、基材への密着性、硬度、耐擦傷性、及び薬剤耐性に優れた硬化物を提供することにある。
本発明の他の目的は、基材への密着性、硬度、耐擦傷性、及び薬剤耐性に優れた硬化物によって、表面の少なくとも一部が被覆されてなる車両用部材を提供することにある。
本発明の他の目的は、基材への密着性、硬度、耐擦傷性、及び薬剤耐性に優れた硬化物によって、表面の少なくとも一部が被覆されてなる筐体、及び前記筐体を備える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、イソシアヌレート骨格を有するポリオール化合物と、イソシアヌレート骨格を有するポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるポリウレタンは、基材への密着性、硬度、及び耐擦傷性に優れると共に、薬剤耐性にも優れることを見いだした。また、前記ポリオール化合物にポリエステルポリオールを特定の割合で配合すれば、硬度及び薬剤耐性を更に向上することができることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明はポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とを含む組成物であって、前記ポリオール化合物(A)が、下記式(1)
【化1】
[式中のR
1~R
3は、同一又は異なって、下記式(1a)
【化2】
(式(1a)中、L
1、L
2は同一又は異なって、炭素数1~10のアルキレン基を示し、mは0以上の数を示す。波線のついた結合手が式(1)中の窒素原子に結合する)
で表される基である。但し、R
1、R
2、及びR
3における前記式(1a)で表される基中のmが同時に0である場合は除く]
で表される化合物であって、数平均分子量(標準ポリスチレン換算)が800以上である化合物(1a)を含み、前記イソシアネート化合物(B)が、下記式(2)
【化3】
[式中、L
3、L
4、L
5は、同一又は異なって、水素原子、NCO基を有する炭素数1~10のアルキル基、又は下記式(2a)
【化4】
(式(2a)中、L
6、L
7は、同一又は異なって、炭素数1~10のアルキレン基を示す。波線のついた結合手がアルキル基を構成する炭素原子に結合する)
で表される基を有する炭素数1~10のアルキル基を示す。但し、L
3、L
4、及びL
5が同時に水素原子である場合は除く]
で表される化合物(b)を含む組成物を提供する。
【0009】
本発明は、また、ポリオール化合物(A)が、更に、水酸基価が80~850(KOHmg/g)であるポリエステルポリオール(a2)を前記化合物(1a)1重量部に対して0.1~1.5重量部の範囲で含有する前記組成物を提供する。
【0010】
本発明は、また、組成物中のイソシアネート化合物(B)のNCO基と、ポリオール化合物(A)のOH基の当量比(NCO/OH)が0.2~2.0の範囲である前記組成物を提供する。
【0011】
本発明は、また、更に、ポリシロキサン誘導体(C)を、ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の合計100重量部に対して0.1~0.5重量部含有する前記組成物を提供する。
【0012】
本発明は、また、更に、下記式(3)
【化5】
(式中、R
4、R
6は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示し、R
5は炭素数1~5のアルキレン基を示す。sは1以上の整数を示し、tは0又は1を示す。sが2以上の整数である場合、複数のR
5は同一であってもよく異なっていてもよい)
で表される溶剤を含有する前記組成物を提供する。
【0013】
本発明は、また、コーティング剤である前記組成物を提供する。
【0014】
本発明は、また、前記組成物の硬化物を提供する。
【0015】
本発明は、また、前記硬化物からなる被膜が、表面の少なくとも一部を被覆するプラスチック成形品を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の組成物は、基材への密着性、硬度、耐擦傷性、及び薬剤耐性に優れた硬化物を形成することができる。そのため、本発明の組成物を、基材を被覆するコーティング剤として使用すれば、基材に前記特性を備えた被膜を形成することができる。
【0017】
本発明の組成物の硬化物によって、表面の少なくとも一部が被覆されてなるプラスチック成形品は、高い表面硬度を有し、耐擦傷性及び薬剤耐性に優れる。そのため、前記プラスチック成形品を、例えば日焼け止め剤等が付着した手で触っても、プラスチック成形品の表面を被覆する前記硬化物が剥がれたり、白濁したりすることはなく、優れた外観、密着性、硬度、及び耐擦傷性を、長期に亘って保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[組成物]
本発明の組成物は、ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とを含む。本発明の組成物は、前記成分以外にも他の成分を含んでいてもよい。
【0019】
(ポリオール化合物(A))
前記ポリオール化合物(A)は、水酸基を複数個有する化合物である。前記ポリオール化合物(A)は、少なくとも、下記式(1)
【化6】
[式中のR
1~R
3は、同一又は異なって、下記式(1a)
【化7】
(式(1a)中、L
1、L
2は同一又は異なって、炭素数1~10のアルキレン基を示し、mは0以上の数を示す。波線のついた結合手が式(1)中の窒素原子に結合する)
で表される基である。但し、R
1、R
2、及びR
3における前記式(1a)で表される基中のmが同時に0である場合は除く]
で表される化合物(1a)を含む。
【0020】
L1、L2における炭素数1~10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
【0021】
前記L1としては、なかでも、炭素数1~3のアルキレン基が好ましい。
【0022】
前記L2としては、なかでも、炭素数3~8のアルキレン基が好ましく、炭素数4~6のアルキレン基が特に好ましい。また、前記アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基が好ましい。
【0023】
前記mは、式(1a)の括弧で示される単位の重合度の平均値である。mは1以上の数であり、例えば1.0~5.0の数、好ましくは1.0~3.0の数、特に好ましくは1.0~2.5の数である。
【0024】
化合物(1a)の数平均分子量(Mn:標準ポリスチレン換算)は800以上であり、好ましくは900以上である。前記Mnの上限値は、例えば2000であり、なかでも、より高い硬度を有し、耐擦傷性に優れた硬化物を形成することができる点において、好ましくは1500、特に好ましくは1200、最も好ましくは1100である。化合物(1a)の分子量分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、例えば1~3である。
【0025】
化合物(1a)の水酸基価(KOH mg/g)は、例えば80~210であり、なかでも、得られる硬化物の硬度及び薬剤耐性を向上することができる点で、好ましくは110~190、特に好ましくは140~180、最も好ましくは150~175である。
【0026】
化合物(1a)は、例えば、下記式(1’)で表される化合物に、ラクトンを開環重合させることにより製造することができる。下記式(1’)中のL
1は、式(1)中のL
1と同じである。
【化8】
【0027】
前記ポリオール化合物(A)は、化合物(1a)以外にも他のポリオール化合物を含有していても良い。他のポリオールとしては、例えば、化合物(1a)以外のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
本発明においては、なかでも、化合物(1a)と共に、化合物(1a)以外のポリエステルポリオール(=ポリエステルポリオール(a2))を含有することが好ましい。
【0029】
ポリエステルポリオール(a2)は、例えば、下記式(4)で表される。
【化9】
(式(4)中、Rはv価の炭化水素基を示し、vは1以上の整数である。L
2’は炭素数1~10のアルキレン基を示し、uは0以上の数を示す。但し、v個のuが全て0である場合は除く)
【0030】
前記vは1以上の整数であり、例えば1~6の整数、好ましくは2~6の整数、特に好ましくは3又は4である。
【0031】
前記Rはv価の炭化水素基を示す。前記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した基が含まれる。前記炭化水素基としては、なかでも脂肪族炭化水素基が好ましく、特に炭素数1~10の脂肪族炭化水素基が好ましく、とりわけ炭素数3~8の脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0032】
従って、前記Rとしては、なかでもv価の脂肪族炭化水素基が好ましく、1~6価の脂肪族炭化水素基が特に好ましく、3価又は4価の脂肪族炭化水素基が最も好ましく、炭素数1~10(なかでも、炭素数3~8)の3価又は4価の(飽和)脂肪族炭化水素基がとりわけ好ましい。
【0033】
前記L2’としては、式(1a)中のL2と同様の例を挙げることができる。
【0034】
前記L2’としては、なかでも、炭素数3~8のアルキレン基が好ましく、炭素数4~6のアルキレン基が特に好ましい。また、前記アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基が好ましい。
【0035】
前記uは、式(4)の丸括弧で示される単位の重合度の平均値である。uは0以上の数であり、例えば0.0~5.0の数、好ましくは0.5~5.0の数、より好ましくは0.5~4.0の数、特に好ましくは1.0~4.0の数、最も好ましくは1.5~4.0の数、とりわけ好ましくは1.5~3.0の数である。
【0036】
ポリエステルポリオール(a2)の数平均分子量(Mn:標準ポリスチレン換算)は、例えば200~2000であり、なかでも、得られる硬化物の硬度及び薬剤耐性を向上することができる点で、好ましくは200~1500、より好ましくは200~1000、特に好ましくは200~800、最も好ましくは300~600、とりわけ好ましくは300~500である。ポリエステルポリオール(a2)の分子量分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、例えば1~3である。
【0037】
ポリエステルポリオール(a2)の水酸基価(KOHmg/g)は、例えば80~850であり、なかでも、得られる硬化物の硬度及び薬剤耐性を向上することができる点で、好ましくは100~850、より好ましくは160~850、特に好ましくは280~600、最も好ましくは300~600、とりわけ好ましくは300~570である。尚、前記水酸基価は、JIS-K1557-1に準拠した方法で測定できる。
【0038】
ポリエステルポリオール(a2)の含有量は、得られる硬化物の硬度及び薬剤耐性を向上することができる点で、前記化合物(1a)1重量部に対して、0.1~1.5重量部の範囲で含有することが好ましく、より好ましくは0.3~1.2重量部、特に好ましくは0.5~1.2重量部、最も好ましくは0.5~1.0重量部である。
【0039】
また、ポリエステルポリオール(a2)の含有量は、得られる硬化物の硬度及び薬剤耐性を向上することができる点で、前記化合物(1a)1molに対して、0.5~5.0molの範囲で含有することが好ましく、より好ましくは0.8~4.0mol、更に好ましくは1.0molを超え、4.0mol以下、特に好ましくは1.2~4.0mol、最も好ましくは2.0~4.0mol、とりわけ好ましくは2.5~4.0molである。
【0040】
ポリエステルポリオール(a2)は、例えば、ポリオールと多価カルボン酸若しくは酸無水物を反応させる方法や、ポリオールにラクトン(ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-ブチロラクトン等)を開環重合させる方法等によって製造することができる。
【0041】
(イソシアネート化合物(B))
前記イソシアネート化合物(B)は、少なくとも、下記式(2)
【化10】
[式中、L
3、L
4、L
5は、同一又は異なって、水素原子、NCO基を有する炭素数1~10のアルキル基、又は下記式(2a)
【化11】
(式(2a)中、L
6、L
7は、同一又は異なって、炭素数1~10のアルキレン基を示す。波線のついた結合手がアルキル基を構成する炭素原子に結合する)
で表される基を有する炭素数1~10のアルキル基を示す。但し、L
3、L
4、及びL
5が同時に水素原子である場合は除く]
で表される化合物(b)を含む。
【0042】
前記炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられる。なかでも炭素数1~10のアルキル基が好ましく、特に炭素数3~8のアルキル基が好ましく、とりわけ炭素数4~8のアルキル基が好ましい。また、前記アルキル基は、なかでも直鎖状アルキル基が好ましい。
【0043】
前記炭素数1~10のアルキレン基としては、式(1a)中のL2と同様の例を挙げることができる。
【0044】
前記L6、L7としては、なかでも、炭素数3~8のアルキレン基が好ましく、炭素数4~8のアルキレン基が特に好ましい。また、前記アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基が好ましい。
【0045】
前記L3、L4、L5としては、なかでも、NCO基及び/又は上記式(2a)で表される基を有する炭素数1~10のアルキル基(特に炭素数3~8のアルキル基、とりわけ炭素数4~8のアルキル基)が好ましい。
【0046】
前記L3、L4、L5としては、とりわけ、NCO基を有する炭素数1~10のアルキル基が好ましく、特にNCO基を有する炭素数3~8のアルキル基が好ましく、とりわけNCO基を有する炭素数4~8のアルキル基が好ましい。
【0047】
化合物(b)のNCO含有量(NCO重量%)は、例えば17~25重量%、好ましくは18~24重量%、特に好ましくは19~23重量%である。
【0048】
前記イソシアネート化合物(B)は、化合物(b)以外にも他のイソシアネート化合物を1種又は2種以上含有していてもよい。他のイソシアネート化合物には、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物、イソホロジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート化合物、2,4-トリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0049】
前記イソシアネート化合物(B)は、なかでも、得られる硬化物の硬度及び薬剤耐性を向上することができる点で、化合物(b)を、組成物に含まれるイソシアネート化合物(B)全量の例えば、60重量%以上(より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上)含有することが好ましい。
【0050】
(組成物)
本発明の組成物は、ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とを含み、これらの含有量は、イソシアネート化合物(B)のNCO基と、ポリオール化合物(A)のOH基の当量比(NCO/OH)が0.2~2.0の範囲であることが、得られる硬化物の硬度及び薬剤耐性を向上することができる点で好ましく、より好ましくは0.5~1.5の範囲、特に好ましくは0.9~1.2の範囲である。
【0051】
本発明の組成物は上記成分以外にも、例えば、界面活性剤、消泡剤、表面調整剤、溶剤、無機粒子、粘弾性調整剤、湿潤剤、分散剤、防腐剤、膜形成剤、可塑剤、浸透剤、香料、殺菌剤、防かび剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、顔料、光安定剤、チクソトロピー性付与剤、艶消し剤、ウレタンビーズ等から選択される1種又は2種以上を含有していても良い。
【0052】
前記無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、合成マイカ、タルク、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、チタン酸バリウム、カオリン、ベントナイト、珪藻土、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、ガラスビーズ、ガラス繊維、グラファイト、カーボンナノチューブ、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、得られる硬化物の耐薬品性及び耐擦傷性を向上できる点から、シリカが好ましい。
【0053】
前記無機粒子の粒径は、特に限定されないが、良好な外観が得られる点から、例えば0.01nm~1μmが好ましい。
【0054】
本発明の組成物は、表面調整剤を含有することが、塗膜表面を平滑化することができる点において好ましい。表面調整剤としては、例えば、ポリシロキサン誘導体(C)が挙げられる。
【0055】
ポリシロキサン誘導体(C)としては、例えば、ポリジメチルシロキサン骨格を有する化合物が挙げられる。なかでもポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンが好ましく、特にポリエチレンオキサイド(或いは、ポリプロピレンオキサイド)付加ポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0056】
ポリシロキサン誘導体(C)の含有量は、ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の合計100重量部に対して、例えば0.1~0.5重量部である。
【0057】
本発明の組成物は、また、溶剤を添加して粘度を調整することができる。前記溶剤は、例えば、下記式(3)で表される。
【化12】
(式中、R
4、R
6は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示し、R
5は炭素数1~5のアルキレン基を示す。sは1以上の整数を示し、tは0又は1を示す。sが2以上の整数である場合、複数のR
5は同一であってもよく異なっていてもよい)
【0058】
R4、R6における炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられる。
【0059】
R5における炭素数1~5のアルキレン基としては、式(1a)中のL2と同様の例を挙げることができる。
【0060】
式(3)で表される溶剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の、モノ又はポリ(オキシC1-6アルキレン)グリコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等の、モノ又はポリ(オキシC1-6アルキレン)グリコールモノ(C1-4アルキルエーテル);エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールメチルプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルブチルエーテル等の、モノ又はポリ(オキシC1-6アルキレン)グリコールジ(C1-4アルキルエーテル);エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブタノールアセテート等の、モノ又はポリ(オキシC1-6アルキレン)グリコールモノ(C1-4アルキルエーテル)モノ(C1-4アルキルエステル)等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
式(3)で表される溶剤としては、なかでも、前記モノ又はポリ(オキシC1-6アルキレン)グリコールモノ(C1-4アルキルエーテル)モノ(C1-4アルキルエステル)が好ましく、特にモノ又はポリ(オキシエチレン)グリコールモノエチルエーテルモノアセテートが好ましい。
【0062】
本発明の組成物には、上記式(3)で表される溶剤以外にも、他の溶剤を1種又は2種以上使用してもよい。他の溶剤としては、例えば、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル;アセトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム等ハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の1価アルコール;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル等が挙げられる。
【0063】
本発明の組成物における溶剤(好ましくは、式(3)で表される溶剤)の含有量は、組成物中の固形分濃度が、例えば70~95重量%(好ましくは80~95重量%)となる範囲である。また、前記溶剤の含有量は、ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の合計100重量部に対して、例えば5~20重量部、好ましくは7~17重量部、特に好ましくは9~15重量部である。
【0064】
本発明の組成物は、上記成分を混合することにより製造することができる。尚、本発明の組成物をコーティング剤として使用する場合には、2液型コーティング剤として使用することが好ましく、ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とを別個に保管して、使用時に混合することが好ましい。
【0065】
本発明の組成物は上記構成を有するため、加熱処理を施すことで、ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とがウレタン結合して、硬化物(=ポリウレタン樹脂からなる硬化物)を形成することができる。
【0066】
前記加熱処理条件は、例えば100~150℃で、0.5~12時間程度である。加熱処理終了後は、更に、室温(1~30℃)の温度で12~60時間程度熟成してもよい。
【0067】
このようにして得られる硬化物は、基材(例えば、PET等のプラスチック基材)への密着性、及び耐擦傷性に優れる。
【0068】
前記硬化物は高硬度を有し、鉛筆硬度(JIS K5600に準拠した方法による)は、例えばHB以上、好ましくはF以上、特に好ましくはH以上、更に好ましくは2H以上である。また、前記硬化物のマルテンス硬さ(ISO14577に準拠した押し込み試験により求められる;単位はN/mm2)は、例えば5.0を超え、15.0以下、好ましくは5.5~13.0である。
【0069】
前記硬化物は薬剤耐性に優れ、例えば、日焼け止め剤が付着しても、硬化物の表面が膨潤したり、白濁することが無い。すなわち、耐サンスクリーン性に優れる。
【0070】
前記硬化物は上記特性を兼ね備える。そのため、前記硬化物を形成する前記組成物は、プラスチック成形品のコーティング剤や、フィルム材料、成型材料として好適である。尚、前記プラスチック成形品としては、例えば、家電製品(冷蔵庫、洗濯機、エアコン、テレビ等)の筐体、電子機器(パソコン、携帯電話、スマートフォン等)の筐体、楽器(ピアノ、エレクトーン、電子楽器等)を構成する部材;自動車や鉄道車両等の車両用部材(インスツルメントパネル、ドアトリム、ヘッドライニング、トノーカバー等の内装材や、バンパー等の外装材)等が挙げられる。
【0071】
また、前記プラスチック成形品を形成するプラスチックには熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0072】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル;塩化ビニル樹脂等の塩化ビニル系樹脂;ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1212等のポリアミド;ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)等のポリフェニレンエーテル;PAN樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、AES樹脂、AXS樹脂等のアクリロニトリルの単独又は共重合体;(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、及びこれらの樹脂の変性品や誘導体、更にはこれらの樹脂を含むポリマーブレンドやポリマーアロイ等が挙げられる。
【0073】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、フラン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アリル樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
【0074】
[プラスチック成形品]
本発明のプラスチック成形品は、表面の少なくとも一部に上記硬化物からなる被膜を備える。
【0075】
前記被膜の厚みは、特に制限されることがなく、例えば20~150μmの範囲において、用途に応じて適宜選択することができる。
【0076】
本発明のプラスチック成形品としては、前記と同様の例が挙げられる。本発明のプラスチック成形品は、上記硬化物から成る被膜を備えるため、高い表面硬度を有し、耐擦傷性及び薬剤耐性に優れる。そして、前記プラスチック成形品を、例えば日焼け止め剤等が付着した手で触っても、表面を被覆する前記硬化物が剥がれたり、白濁したりすることはなく、優れた外観、密着性、硬度、及び耐擦傷性を、長期に亘って保持することができる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0078】
合成例1
トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(783.6g)、ε-カプロラクトン(CLM)(2216.4g)、及びオクチル酸第一スズ(5ppm)を、窒素雰囲気下で5つ口フラスコに仕込み、170℃に昇温して重合反応を行った。ガスクロマトグラフィーによる分析で、残存CLM濃度が1.0%未満となっていることを確認した後、冷却した。これにより、化合物(1a-1)(Mw/Mn=1.3、Mn=1068、粘度4.4[Pa・s/25℃]、水酸基価169.2[KOHmg/g])を得た。
【0079】
合成例2
トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(209.0g)、CLM(791.0g)、オクチル酸第一スズ(5ppm)を使用した以外は合成例1と同様にして、化合物(1a-2)(Mw/Mn=1.5、Mn=1241、粘度3.7[Pa・s/25℃]、水酸基価135.1[KOHmg/g])を得た。
【0080】
尚、得られた化合物の分子量分布の測定は、高速GPC装置を用いて、ポリスチレン標品との比較から数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を求め、分子量分散度(Mw/Mn)を算出した。
測定条件は下記の通りである。
測定装置:高速GPC装置「HLC-8220GPC」、東ソー(株)製
移動相:テトラヒドロフラン
【0081】
実施例1(参考例とする)
50mLガラス容器内に、下記表に記載の通り、ポリオール化合物、イソシアネート化合物、表面調整剤、及び溶剤を仕込み、混合、脱泡を行った。これにより、組成物を得た。
【0082】
得られた組成物を、PETフィルム(コスモシャインA4100、♯100、東洋紡(株)製)上にアプリケータを用いて膜厚が90μmとなるように塗布し、オーブンを用いて120℃で、2時間加熱して塗膜を硬化、乾燥を行った。その後、更に、23℃、50%Rhの恒温恒湿環境下で、48時間養生を行い、硬化被膜/PETフィルム積層体を得た。
【0083】
実施例2~4(実施例2、3は参考例とする)、比較例1~3
組成物の処方を表1に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、組成物を得、硬化被膜/PETフィルム積層体を得た。
【0084】
実施例及び比較例で得られた積層体の硬化被膜について、鉛筆硬度、マルテンス硬さ、耐擦傷性、耐サンスクリーン性を、下記方法で評価した。
【0085】
(鉛筆硬度)
実施例及び比較例で得られた積層体の硬化被膜側表面の鉛筆硬度を、JIS K5600-5-4に準拠した方法で評価した。
すなわち、積層体の硬化被膜表面を鉛筆でこすり(荷重:750g、角度:45°)、表面に傷が確認できたものをNG(不良)とした。具体的には、ある硬さの鉛筆でまず評価を行い、傷が付かなかった場合に、1つ上の硬さの鉛筆で評価を行うという作業を繰り返し、傷が確認できたらその1つ下の硬さで再評価した。また、傷が確認できなかったら再度1段階上の硬さの鉛筆を用い、2回以上の再現性が確認できた場合、傷が付かない最も硬い鉛筆の硬度をその硬化塗膜の鉛筆硬度とし、評価結果は鉛筆の芯の硬度で表した
評価用鉛筆:三菱鉛筆(株)製「鉛筆硬度試験用鉛筆」
荷重:750gf
引掻き距離:7mm以上
引掻き角度:45°
測定環境:23℃、50%RH
尚、試験に使用する積層体は、23℃、50%RHの恒温恒湿機にて24時間調湿したものを用いた。
【0086】
(マルテンス硬さ)
実施例及び比較例で得られた積層体の硬化被膜側表面のマルテンス硬さは、島津ダイナミック超微小硬度計DUH-211((株)島津製作所製)を用いて測定した。マルテンス硬さは、試験荷重と圧子の侵入した表面積との商で求められる値であり、表面硬度の指標となる。
【0087】
(耐擦傷性)
実施例及び比較例で得られた積層体の硬化被膜側表面を、ラビングテスター(標準型(日本理化工業(株)製)にスチールウール(B-204 ボンスター業務用#0000)を取り付け、500gの荷重をかけた状態で往復(10往復または20往復)するラビング試験に付し、硬化被膜側表面の試験前の初期光沢(60度グロス)(G0)と、試験後2分の時点での光沢(60度グロス)(G1)を測定した。
下記式から光沢度保持率を算出し、下記基準で耐擦傷性を評価した。
光沢度保持率=(G1)/(G0)×100
尚、光沢は光沢計(Gloss Meter VG7000(日本電色工業(株)製))を用いて測定した。
(評価基準)
◎(優):光沢度保持率が90%以上
〇(良):光沢度保持率が80%以上、90%未満
△(可):光沢度保持率が80%未満
×(不可):ラビング試験中に硬化被膜が削れ、耐擦傷試験を実施することが不可能
【0088】
(擦傷回復性)
また、実施例及び比較例で得られた積層体を(耐擦傷性)試験と同様のラビング試験に付し、その後、23℃、50%Rhの恒温恒湿下で24時間静置した。
そして、硬化被膜側表面の試験前の初期光沢(60度グロス)(G0)と、試験後24時間静置した後の光沢(60度グロス)(G2)を測定した。
下記式から静置後光沢度保持率を算出し、上記評価基準で耐擦傷性を評価した。
静置後光沢度保持率=(G2)/(G0)×100
【0089】
(耐サンスクリーン性(浸漬法))
実施例及び比較例で得られた積層体の試験片[矩形、2cm2]の硬化被膜側表面全体を、スライドガラス上に計量した0.4gの日焼け止めクリーム(ニュートロジーナ Ultra Sheer Dry-Touch Sunblock SPF45)と接触させた(硬化被膜への日焼け止めクリームの接触量:0.1g/cm2)。
前記硬化被膜全体をPVDCフィルムで覆い、80℃のオーブンで5時間静置した後、日焼け止めクリームをふき取り、硬化被膜の接着状態から耐サンスクリーン性を下記基準で評価した。
(評価基準)
〇(良):硬化被膜が剥離しない
△(可):硬化被膜の一部が剥離する
×(不可):硬化被膜が完全に剥離する
【0090】
耐サンスクリーン性試験後、試験片を、硬化被膜側表面が平面に接する向きで、平面上に静置した。そして、試験片の四隅の、平面からの高さ[mm]を測定した。試験片の四隅の高さの合計値[mm]をカールとし、カールの大きさから耐サンスクリーン性を評価した。尚、カールが小さい方が耐サンスクリーン性に優れる。
【0091】
(耐サンスクリーン性(点滴法))
実施例及び比較例で得られた積層体の硬化被膜側表面に0.025g/cm2となるように日焼け止めクリーム(ニュートロジーナ Ultra Sheer Dry-Touch Sunblock SPF45)を塗布し、50℃のオーブン内で1時間静置した。
試験後、日焼け止めクリームをふき取り、硬化被膜の外観を目視で観察し、下記基準で耐サンスクリーン性を評価した。
(評価基準)
◎(優):硬化被膜の外観にほとんど変化が無い
〇(良):硬化被膜上に薬液痕が残る
△(可):硬化被膜が膨潤する
×(不可):硬化被膜が膨潤し、かつ白化する
【0092】
【0093】
1a-1:合成例1で得られた化合物(1a-1)
1a-2:合成例2で得られた化合物(1a-2)
1:PLACCEL309((株)ダイセル製)、ポリカプロラクトントリオール、Mn=987、Mw/Mn=1.5
2:PLACCEL312((株)ダイセル製)、ポリカプロラクトントリオール、Mn=1335、Mw/Mn=1.6
2a-1:PLACCEL303((株)ダイセル製)、ポリカプロラクトントリオール、水酸基価543.6[KOHmg/g]、Mn=400、Mw/Mn=1.2
(※Mn、Mw/Mnは、GPCにより求めた標準ポリスチレンによる換算値)
【0094】
イソシアネート化合物(B):ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、タケネートD-170N(三井化学(株)製)
表面調整剤:エーテル変性ポリジメチルシロキサン、BYK-306(ビックケミー・ジャパン(株)製)
溶剤:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、東京化成工業(株)製試薬