(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂積層発泡シート及び成形品
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20240116BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240116BHJP
B29C 51/14 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B27/32 Z
B29C51/14
(21)【出願番号】P 2019199307
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】396000422
【氏名又は名称】リスパック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 佳慶
(72)【発明者】
【氏名】中川 満弘
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-019056(JP,A)
【文献】特開2005-119147(JP,A)
【文献】特開2005-125582(JP,A)
【文献】特開2001-287276(JP,A)
【文献】特開2001-277352(JP,A)
【文献】特開2006-088349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C49/00-49/46
49/58-49/68
49/72-51/28
51/42
51/46
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂印刷フィルムが、押出ラミネートにより非発泡ポリプロピレン系樹脂層を介してポリプロピレン系樹脂発泡シートに積層されたポリプロピレン系樹脂積層発泡シートを熱成形することにより得られる成形品であって、
前記ポリプロピレン系樹脂印刷フィルムは、ポリプロピレン系樹脂フィルムと印刷層とを有し、前記印刷層は、前記非発泡ポリプロピレン系樹脂層側に配置され、
前記非発泡ポリプロピレン系樹脂層は、厚さが30~100μmであって、少なくとも前記ポリプロピレン系樹脂印刷フィルムの前記印刷層側に変性ポリプロピレン樹脂層が、前記ポリプロピレン系樹脂発泡シート側にホモポリプロピレン樹脂層がそれぞれ配置されている2層以上の層構成
であり、
前記ホモポリプロピレン樹脂層と前記変性ポリプロピレン樹脂層との厚さの比が(9~1):1であることを特徴とする、成形品。
【請求項2】
前記ポリプロピレン系樹脂積層発泡シートの前記ポリプロピレン系樹脂フィルムと前記印刷層との剥離強度が、以下の(a)又は(b)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の成形品:
(a)JIS Z 0238に準拠し、幅15mmの試験片を、剥離速度300mm/min、剥離角度180°で測定された剥離強度が1.8N/15mm以上;
(b)JIS Z 0237に準拠し、幅25mmの試験片を、剥離速度200mm/min、剥離角度90°で測定された剥離強度が2.6N/25mm以上。
【請求項3】
ポリプロピレン系樹脂印刷フィルムが、押出ラミネートにより非発泡ポリプロピレン系樹脂層を介してポリプロピレン系樹脂発泡シートに積層され、
前記ポリプロピレン系樹脂印刷フィルムは、ポリプロピレン系樹脂フィルムと印刷層とを有し、前記印刷層は、前記非発泡ポリプロピレン系樹脂層側に配置され、
前記非発泡ポリプロピレン系樹脂層は、厚さが30~100μmであって、少なくとも前記ポリプロピレン系樹脂印刷フィルムの前記印刷層側に変性ポリプロピレン樹脂層が、前記ポリプロピレン系樹脂発泡シート側にホモポリプロピレン樹脂層がそれぞれ配置されている2層以上の層構成
であり、
前記ホモポリプロピレン樹脂層と前記変性ポリプロピレン樹脂層との厚さの比が(9~1):1であることを特徴とする、成形用ポリプロピレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項4】
前記ポリプロピレン系樹脂フィルムと前記印刷層との剥離強度が、以下の(a)又は(b)を満たすことを特徴とする、請求項3に記載の成形用ポリプロピレン系樹脂積層発泡シート:
(a)JIS Z 0238に準拠し、幅15mmの試験片を、剥離速度300mm/min、剥離角度180°で測定された剥離強度が1.8N/15mm以上;
(b)JIS Z 0237に準拠し、幅25mmの試験片を、剥離速度200mm/min、剥離角度90°で測定された剥離強度が2.6N/25mm以上。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量性及び層間の接着性に優れるポリプロピレン系樹脂積層発泡シート及び該積層発泡シートを成形することにより得られる成形品を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン(以下、「PP」という。)系樹脂の発泡シートは、物理的特性に優れることから各種成形品、例えば、飲食品用容器として広く使用されている。また、様々な機能を発揮させるために、基材であるPP系樹脂発泡シートに、他の層を積層した積層発泡シートが用いられている。
【0003】
特許文献1には、未延伸PPフィルム及びPPから主としてなる発泡シート又はフィラーシートに対し、特定の酸価及び重量平均分子量を有する酸変性PP系樹脂を含有する中間層を介して熱ラミネート加工を行い、前記中間層は、有機溶剤に前記酸変性PP系樹脂を溶解させてなるものを用いて形成する、PP積層物の製造方法が記載されている。また、特許文献2には、PP系樹脂発泡シートに印刷したPP系樹脂フィルムを印刷面が内側(発泡シート側)になるよう積層され、PP系樹脂発泡シート側に接着する印刷層とPP系樹脂フィルムとの間の剥離強度が特定の値となるようPP系樹脂にて押出ラミネートで積層するPP系積層発泡シートの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4987200号公報
【文献】特開2008-68529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層発泡シートは、各層の接着強度に優れていることが求められる。特に、近年、電子レンジで加熱して食する弁当等の需要の高まりから、PP系樹脂積層発泡シートからなる飲食品用容器の需要が高まっている。このような用途に用いられるPP系樹脂積層発泡シートは、加熱後の各層の接着強度に優れていることが求められる。また、飲食品用容器等の成形品として用いるために、PP系樹脂積層発泡シートは軽量であることが望ましい。
【0006】
積層発泡シートを成形する手法の一つとして、基材であるPP系樹脂発泡シートとフィルムとの間に溶融した樹脂を流す押出ラミネートがある。該押出ラミネートを用いることにより、PP系樹脂発泡シートとフィルムとの間に接着層が形成され、接着性の優れる積層発泡シートを成形することが可能となる。押出ラミネートにより押出される樹脂の温度や材質によっては、発泡シートと押出ラミネートにより該発泡シートに積層されたフィルムとの接着性が不十分となり、積層発泡シートから熱成形によって得られた容器で食品を包装し電子レンジで加熱すると、発泡シートとフィルムの間において、大きな剥離が発生し、あるいは小さな剥離が発生しフクレとなって現れる場合がある。
【0007】
また、押出ラミネートによって、非発泡PP系樹脂及びPP系樹脂印刷フィルムをPP系樹脂発泡シートに積層する場合、接着層を構成する非発泡PP系樹脂層の厚みが薄くなるほど、PP系樹脂発泡シート層とPP系樹脂印刷フィルム層の剥離強度が低くなり、非発泡PP系樹脂層が剥がれやすくなる。更に、前記接着層を構成する非発泡PP系樹脂層の厚みを薄くした構成のPP系樹脂積層発泡シートを熱成形して得られる成形品を電子レンジにより加熱した場合においても、発泡シートとフィルムの間において、大きな剥離が発生したり、小さな剥離が発生しフクレとなって現れたりする。一方、十分な接着力を得るために、非発泡PP系樹脂層を厚くすると、得られる積層体の重量が増加するという問題がある。
【0008】
特許文献1記載のPP積層物の製造方法では、熱ラミネートにより、フィルムとPP発泡シートとの間に中間層を形成している。しかし、この方法では、有機溶剤に酸変性PP系樹脂を溶解させる必要があり、製造に多くの工程を要する。また、特許文献2記載の方法により得られるPP系積層発泡シートでは、ポリウレタンをインキ樹脂とした容器において剥離する結果となっている。また、特許文献2では、得られた容器の加熱後の各層の接着強度について全く言及がない。
【0009】
本発明は、軽量性及び層間の接着性に優れるPP系樹脂積層発泡シート及び該積層発泡シートを成形して得られる成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の成形用PP系樹脂積層発泡シートは、ポリプロピレン系樹脂印刷フィルムが、押出ラミネートにより非発泡ポリプロピレン系樹脂層を介してポリプロピレン系樹脂発泡シートに積層され、前記ポリプロピレン系樹脂印刷フィルムは、ポリプロピレン系樹脂フィルムと印刷層とを有し、前記印刷層は、前記非発泡ポリプロピレン系樹脂層側に配置され、前記非発泡ポリプロピレン系樹脂層は、厚さが30~100μmであって、少なくとも前記ポリプロピレン系樹脂印刷フィルムの前記印刷層側に変性ポリプロピレン樹脂層が、前記ポリプロピレン系樹脂発泡シート側にホモポリプロピレン樹脂層がそれぞれ配置されている2層以上の層構成であることを特徴とする。
【0011】
ポリプロピレン系樹脂印刷フィルムが、押出ラミネートにより非発泡ポリプロピレン系樹脂層を介してポリプロピレン系樹脂発泡シートに積層されたポリプロピレン系樹脂積層発泡シートを熱成形することにより得られ、前記ポリプロピレン系樹脂印刷フィルムは、ポリプロピレン系樹脂フィルムと印刷層とを有し、前記印刷層は、前記非発泡ポリプロピレン系樹脂層側に配置され、前記非発泡ポリプロピレン系樹脂層は、厚さが30~100μmであって、少なくとも前記ポリプロピレン系樹脂印刷フィルムの前記印刷層側に変性ポリプロピレン樹脂層が、前記ポリプロピレン系樹脂発泡シート側にホモポリプロピレン樹脂層がそれぞれ配置されている2層以上の層構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のPP系樹脂積層発泡シート及び成形品は、軽量性に優れると共に、層間の接着性、特に加熱時の接着性に優れる。よって、本発明のPP系樹脂積層発泡シート及び成形品は、飲食品等の包装用容器、特に電子レンジ等により加熱される包装用容器及びその材料として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態のPP系樹脂積層発泡シートの概略を示す図である。
【
図2】実施例の押出ラミネートの概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0015】
(1)成形用PP系樹脂積層発泡シート
本実施形態に係る成形用PP系樹脂積層発泡シート(以下、「本積層発泡シート」という。)の一例を
図1に示す。本積層発泡シート1は、PP系樹脂発泡シート層11及びPP系樹脂印刷フィルム層13を含む。PP系樹脂印刷フィルム層13は、印刷層131及びフィルム層132を有する。
【0016】
PP系樹脂発泡シート層11及びPP系樹脂印刷フィルム層13は、非発泡PP系樹脂層12を介して接着及び積層されている。非発泡PP系樹脂層12は、ホモPP樹脂層121及び変性PP樹脂層122からなる2層構造である。前記変性PP樹脂層122は、前記PP系樹脂印刷フィルム13の前記印刷層131側に配置され、前記印刷層131と接着している。また、ホモPP樹脂層121は、前記PP系樹脂発泡シート11側に配置され、前記PP系樹脂発泡シート11と接着している。
【0017】
前記PP系樹脂発泡シート層を構成するPP系樹脂発泡シートは、PP系樹脂を主成分とする発泡シートである限り、具体的構成に限定はない。前記PP系樹脂は単独重合体のプロピレンホモポリマーでもよく、プロピレンと他の単量体との共重合体でもよい。該共重合体としては、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体が挙げられる。また、前記ポリプロピレン系樹脂として、線状のポリプロピレン系樹脂に、電子線を照射する等の方法により長鎖分岐を導入したものでもよい。前記PP系樹脂発泡シートは、公知の方法、例えば、主成分であるポリプロピレン系樹脂と発泡成分とを溶融混練し、押出発泡することにより得ることができる。溶融混練及び発泡の条件には特に限定はなく、必要に応じて適宜設定することができる。
【0018】
前記非発泡PP系樹脂層は、前記PP系樹脂発泡シート層及び前記PP系樹脂印刷フィルム層を接着させる接着層として機能する。前記非発泡PP系樹脂層は、少なくとも前記PP系樹脂印刷フィルムの前記印刷層側に変性PP樹脂層が、前記PP系樹脂発泡シート側にホモPP樹脂層がそれぞれ配置されている2層以上の層構成である。かかる構成により、押出ラミネートによって非発泡PP系樹脂層を薄くしながら、十分な層の接着性を実現できる。特に、加熱時の接着性を向上させると共に、フィルムのインキの樹脂の種類によらず、優れた接着性を実現することができる。
【0019】
前記変性PP樹脂層を構成する変性PP樹脂は、グラフト重合を用いて極性基を導入して変性したPPであり、非極性のポリプロピレン骨格に極性基を持つため、極性の異なる異種材料間の接着性が良い。前記変性PP樹脂の具体的構造には特に限定がない。前記変性PP樹脂として具体的には、酸変性PP樹脂が挙げられる。PP樹脂を酸変性するために、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸及びメタクリル酸、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸)及びその誘導体(例えば、酸無水物)が挙げられる。前記酸変性PP樹脂として具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸変性PP樹脂、マレイン酸変性PP樹脂、及び無水マレイン酸変性PP樹脂が挙げられ、無水マレイン酸変性PP樹脂が好ましい。
【0020】
前記非発泡PP系樹脂層は、前記ホモPP樹脂層及び変性PP樹脂層の2層で構成されていてもよく、前記ホモPP樹脂層及び変性PP樹脂層の間に他の層を有する3層以上の層構成でもよい。
【0021】
前記非発泡PP系樹脂層の厚さは20~150μm、好ましくは20~100μm、更に好ましくは30~100μmである。前記非発泡PP系樹脂層の厚さが前記範囲内であると、十分な層の接着性を実現しつつ、積層発泡シートを軽量化することができるので好ましい。
【0022】
また、前記非発泡PP系樹脂層中の前記ホモPP樹脂層及び変性PP樹脂層の厚さは、必要に応じて適宜決定することができる。前記ホモPP樹脂層及び変性PP樹脂層の厚さは同じでもよく、異なっていてもよい。コストの観点から、前記変性PP樹脂層より前記ホモPP樹脂層の方が厚いことが好ましい。前記ホモPP樹脂層の厚さは、例えば、20~100μmとすることができる。前記変性PP樹脂層の厚さは、1~20μm、好ましくは3~15μmとすることができる。また、前記非発泡PP系樹脂層中の前記ホモPP樹脂層と前記変性PP樹脂層との厚さの比も特に限定はなく、必要に応じて適宜決定することができる。該比として、例えば(20~1):1、好ましくは(20~3):1とすることができる。上記厚さと比は適宜組み合わせることができる。
【0023】
PP系樹脂印刷フィルム層は、印刷層及びフィルム層を有する。前記印刷層は、本積層発泡シートに意匠性を付与することができる限り、その形成方法に制限はない。前記フィルム層は、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする限り、具体的構成に限定はない。前記ポリプロピレン系樹脂は単独重合体のプロピレンホモポリマーでもよく、プロピレンと他の単量体との共重合体でもよい。該共重合体としては、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体が挙げられる。また、前記フィルム層は、無延伸フィルムでもよく、2軸延伸フィルム等の延伸フィルムでもよい。前記フィルム層として好ましくは、無延伸フィルム(CPP)である。
【0024】
PP系樹脂印刷フィルム層に適用されるインキを構成する樹脂の種類には特に限定はない。前記樹脂として具体的には、例えば、ハロゲン化PP樹脂(塩素化PP樹脂等)、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、及びアクリル樹脂が挙げられる。
【0025】
本積層発泡シートにおいて、前記PP系樹脂フィルムと前記印刷層との剥離強度は、(a)JIS Z 0238に準拠し、幅15mmの試験片を、剥離速度300mm/min、剥離角度180°で測定した場合に1.8N/15mm以上であるか、又は(b)JIS Z 0237に準拠し、幅25mmの試験片を、剥離速度200mm/min、剥離角度90°で測定した場合に2.6N/25mm以上であることが好ましい。前記剥離強度が前記範囲であると、十分な層の接着性を実現できる。
【0026】
本積層発泡シート並びに前記PP系樹脂発泡シート層及びPP系樹脂印刷フィルム層の厚さに特に限定はなく、必要に応じて適宜決定することができる。本積層発泡シートの厚さは例えば、0.8mmを超え2mm以下、好ましくは0.8mmを超え1.8mm以下とすることができる。前記PP系樹脂発泡シートの厚さは、例えば、0.8~2.0mmとすることができる。前記PP系樹脂印刷フィルム層の厚さは例えば、10~100μm、好ましくは20~70μmとすることができる。
【0027】
本積層発泡シートは、前記PP系樹脂発泡シート層、非発泡PP系樹脂層、及びPP系樹脂印刷フィルム層のみで構成されていてもよく、本積層発泡シートの軽量性及び各層の接着性を著しく損なわない範囲で、必要に応じて他の層を有していてもよい。
【0028】
本積層発泡シートを構成する各層は、本積層発泡シートの軽量性及び各層の接着性を著しく損なわない範囲で、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。前記他の成分として具体的には、例えば、公知の樹脂シートに用いられている添加剤、例えば、難燃剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、及び抗菌剤が挙げられる。
【0029】
本積層発泡シートの形状、寸法、及び具体的用途には特に限定はない。後述のように、本積層発泡シートは、成形することにより、各種の成形品を得るために用いることができる。該成形品として具体的には、包装用容器等の容器、例えば、飲食品包装用容器が挙げられる。よって、本積層発泡シートは好ましくは、熱成形又は成形品製造のために用いることができ、より好ましくは、包装用容器の製造のために用いることができる。尚、前記「容器」は、容器全体だけでなく、容器の一部も含む。例えば、前記「容器」には、容器の本体のみならず、容器の蓋体も含まれる。
【0030】
本積層発泡シートは、押出ラミネートにより、非発泡PP系樹脂を介してPP系樹脂印刷フィルムをPP系樹脂発泡シートに積層して製造される。その一例を
図2に示す。2台の押出機(図示しない)から溶融状態の非発泡PP系樹脂5であるホモPP樹脂及び変性PP樹脂を、ダイ2内で合流させてフィルム状に押出し、次いで、ロール3により、非発泡PP系樹脂5を介して、PP系発泡樹脂シート4及びPP系樹脂印刷フィルム6を圧着することにより、本積層発泡シートを得ることができる。
【0031】
前記押出ラミネートにおいて、ダイから押出された直後の非発泡PP系樹脂の樹脂温度は280℃~290℃とすることができる。樹脂温度が前記範囲であると、本積層発泡シートを構成する各層の接着性に優れ、熱成形して得られる成形品の状態で電子レンジにより加熱しても、いずれの層も剥離が生じないので好ましい。
【0032】
ダイから押出された直後の非発泡PP系樹脂の樹脂温度が高いと、PP系樹脂印刷フィルムの印刷層に含まれるインキを溶解し、PP系樹脂印刷フィルムとPP系樹脂発泡シートの接着性が高まると考えられる。また、ダイから押出された直後の非発泡PP系樹脂の樹脂温度が高いと、PP系樹脂発泡シートの多孔構造内に非発泡PP系樹脂の一部が進入し易く、その結果、アンカー効果が生まれ、発泡シートと非発泡PP系樹脂層の間の接着性が高まると考えられる(尚、以上の説明は発明者の見解であり、何ら本発明を定義又は限定する意図はない。)。
【0033】
前記樹脂温度の具体的測定方法としては、例えば、接触温度センサー(理化学工業(株)製 携帯型温度計 DP-350等)を用いて、Tダイから押出された非発泡PP系樹脂層の温度を測定し、PP系樹脂の樹脂温度とすることができる。
【0034】
前記押出ラミネートにおいて、冷却ロールの温度は30~70℃、好ましくは40~70℃、より好ましくは40~60℃とすることができる。
【0035】
前記押出ラミネートの他の具体的条件は、必要に応じて適宜設定することができる。例えば、ライン速度は10~40m/分、好ましくは10~35m/分、更に好ましくは12~31m/分とすることができる。ライン速度を上記範囲とすることにより、本積層発泡シートの生産性を高めることができる。特に、非発泡PP系樹脂の樹脂温度を高くすることにより、ライン速度を速くすることができ、その結果、本積層発泡シートの生産性をより高めることができるので好ましい。
【0036】
(2)成形品
本実施形態に係る成形品(以下、「本成形品」という。)は、本積層発泡シートを成形することにより得られる。本成形品の形状、寸法、及び具体的用途には特に限定はない。本成形品の用途としては、包装用容器等の容器、例えば、飲食品包装用容器が挙げられる。後述のように、本成形品は、電子レンジ等による加熱に対する剥離強度が優れていることから、本成形品は、加熱用容器として好適に用いることができる。尚、前記「容器」は、容器全体だけでなく、容器の一部も含む。例えば、前記「容器」には、容器の本体のみならず、容器の蓋体も含まれる。
【0037】
前記成形の具体的方法には特に限定はない。前記成形としては通常、熱成形が挙げられる。該熱成形の具体的方法には特に限定はなく、公知の熱成形方法、例えば、熱盤成形、真空成形、圧空成形又は真空圧空成形を用いることができる。また、熱成形の条件も特に限定はない。成形条件は必要に応じて適宜決定することができる。
【0038】
上記のように、本積層発泡シートは各層の接着性に優れている。そのため、本発明の成形品もまた、各層の接着性に優れている。具体的には、成形品の状態で電子レンジにより加熱(条件;500~1600W、60~100秒)しても、成形品を構成するPP系樹脂積層発泡シートのいずれかの層の間、例えば、前記PP系樹脂印刷フィルム層の前記印刷層と前記フィルム層との間や、前記PP系樹脂印刷フィルム層の前記印刷層と前記非発泡PP系樹脂層の間で剥離が生じない。このような加熱による剥離が生じない成形品とする方法として、例えば、本積層発泡シートを押出ラミネートにより製造する際、ダイから押出された直後の非発泡PP系樹脂の樹脂温度や冷却ロールの温度を制御する方法が挙げられる。具体的には、例えば、ダイから押出された直後の非発泡PP系樹脂の樹脂温度を280℃~290℃とし、且つ冷却ロール温度を30~90℃、好ましくは40~70℃、より好ましくは40~60℃とすることにより実現することができる。前記樹脂温度の測定方法は上述の通りである。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、実施例に示す形態に限定されない。本発明の実施形態は、目的及び用途等に応じて、本発明の範囲内で種々変更することができる。
【0040】
(1)PP系樹脂積層発泡シートの製造
PP系樹脂発泡シートは、PP系樹脂を押出機内にて溶融後、発泡剤を圧入し、発泡適性温度に冷却し、ダイを通して押出発泡させてシート化することにより得た(厚さ1.5mm)。PP系樹脂印刷フィルムとして、サントックス社製CPPフィルム「KT」(厚さ25μm、インキ:塩素化PP)及び「KL」(厚さ25μm、インキ:ウレタン)を使用した。非発泡PP系樹脂のうち、ホモPP樹脂として、日本ホリプロ(株)製ノバテックPP 「FL03H」を使用し、変性PP樹脂として、三菱ケミカル(株)製モディックAP「P555」(無水マレイン酸変性PP)を使用した。
【0041】
押出ラミネートの概略を
図2に示す。溶融したホモPP及び変性PPをダイ2から供給すると共に、PP系発泡樹脂シート4及びPP系樹脂印刷フィルム6をロール3に通すことにより、ホモPP樹脂及び変性PP樹脂からなる非発泡PP系樹脂層を介してPP系樹脂発泡シートにPP系樹脂印刷フィルムを積層して、実施例1~
4のPP系樹脂積層発泡シートを得た。該積層発泡シートの概略を
図1に示す。押出樹脂温度、ロール温度、及びライン速度を表1に示す。得られたPP系樹脂積層発泡シートのホモPP樹脂層及び変性PP樹脂層並びにPP系樹脂印刷フィルムの厚みも表1に併記する。押出樹脂温度は、接触温度センサー(理化学工業株式会社製 携帯型温度計 DP-350)により測定した。
【0042】
真空圧空成形により、上記の方法により得られたPP系樹脂積層発泡シートを熱成形して、実施例1~4の容器(容器サイズ;縦152mm、横215mm、高さ30mm)を製造した。
【0043】
非発泡PP系樹脂として、前記ホモPP樹脂のみを用いる以外には、上記と同じ方法により、比較例1~6のPP系樹脂積層発泡シート及び容器を製造した。
【0044】
(2)PP系樹脂積層発泡シートの剥離強度試験
前記方法により得られた実施例1~4及び比較例1~6のPP系樹脂積層発泡シートについて、90°方向の剥離強度及び180°方向の剥離強度を測定した。以上の剥離強度試験の結果を表1に示す。
【0045】
90°方向の剥離強度は、JIS Z 0237に準拠して測定した。具体的には、PP系樹脂積層発泡シートから25mm幅で短冊状の試験片を切り出した(n=3)。PP系樹脂積層発泡シートを構成するフィルムの端約20mmを剥がし、該フィルム及びフィルムを剥がした基材シートの端をそれぞれ冶具で掴み、フィルムとシートを速度200mm/minで90°方向へ引っ張り、フィルム剥離時の試験力を測定した。
【0046】
180°方向の剥離強度は、JIS Z 0238に準拠して測定した。具体的には、
PP系樹脂積層発泡シートから15mm幅で短冊状の試験片を切り出した(n=3)。PP系樹脂積層発泡シートを構成するフィルムの端約20mmを剥がし、該フィルム及びフィルムを剥がした基材シートの端をそれぞれ冶具で掴み、フィルムとシートを速度300mm/minで180°方向へ引っ張り、フィルム剥離時の試験力を測定した。
【0047】
(3)加熱試験
上記の方法で得られた容器内に、食材として牛すじ煮込み(180g)を充填し、電子レンジで加熱(試験条件;500W、1分40秒)した後、容器を構成するPP系樹脂積層発泡シートの層の剥離の有無を目視で確認した。その結果を表1に示す。表1中、「◎」はデラミ(デラミネーション;印刷層と非発泡PP系樹脂層の界面に生じた剥離)が無く、「○」はデラミがほとんど認められず(じっくり見ないと分からないレベル)、「△」は独立したデラミが数個見られ、「×」は連続したデラミが目立つことを示す。
【0048】
【符号の説明】
【0049】
1;PP系樹脂積層発泡シート、11;PP系樹脂発泡シート層、12;非発泡PP系樹脂層、121;ホモポリプロピレン樹脂層、122;変性ポリプロピレン樹脂層、13;PP系樹脂印刷フィルム層、131;印刷層、132;フィルム層、2;ダイ、3;ロール、4;PP系発泡樹脂シート、5;非発泡PP系樹脂、6;PP系樹脂印刷フィルム。