(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】レナリドミドを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/454 20060101AFI20240116BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240116BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240116BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240116BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240116BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240116BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
A61K31/454
A61K47/38
A61K47/26
A61K9/48
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2019199322
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】大谷 慧
(72)【発明者】
【氏名】小山 直紀
(72)【発明者】
【氏名】三宅 克紀
(72)【発明者】
【氏名】中村 慶吾
(72)【発明者】
【氏名】北田 幸二
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/081749(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105919958(CN,A)
【文献】国際公開第2019/129726(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0046315(US,A1)
【文献】特開2000-119175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レナリドミドまたはその薬学的に許容される塩と、結晶セルロースと、
乳糖と、を含む医薬組成物であり、
前記結晶セルロースを、医薬組成物100重量部に対して50重量部以上の量で含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項2】
前記
乳糖3重量部に対して、前記結晶セルロースを7重量部以上の比率で含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の医薬組成物をカプセルに充填してなるカプセル製剤。
【請求項4】
レナリドミドまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の製造方法であって、
前記医薬組成物が、結晶セルロース
および乳糖を含み、
前記結晶セルロースを、医薬組成物100重量部に対して50重量部以上の量で含ませることを特徴とする、方法。
【請求項5】
前記乳糖3重量部に対して、前記結晶セルロースを7重量部以上の比率で含むことを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
レナリドミドまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物からのレナリドミドまたはその薬学的に許容される塩の溶出率の低下を抑制する方法であって、
前記医薬組成物において、
結晶セルロースおよび乳糖を含ませ、
前記結晶セルロースを、医薬組成物100重量部に対して50重量部以上の量で含ませる
、
ことを特徴とする、方法。
【請求項7】
前記乳糖3重量部に対して、前記結晶セルロースを7重量部以上の比率で含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レナリドミドまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物に関する。本発明はまた、前記医薬組成物を含む製剤、前記医薬組成物の製造方法、および前記医薬組成物における溶出率の低下抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レナリドミドは、一般に、サイトカイン産生調節作用、造血器腫瘍細胞に対する増殖抑制作用、血管新生阻害作用等を有し、例えば、多発性骨髄腫、5番染色体長腕部欠失を伴う骨髄異形成症候群、再発または難治性の成人T細胞白血病リンパ腫等の治療等において有用である。
【0003】
レナリドミドに関する文献として、特許文献1が知られている。
【0004】
特許文献1には、レナリドミドを包含する、置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)フタルイミド類および置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン類が開示されている。
【0005】
また、上記化合物を有効成分として含むレナリドミド製剤が、現在市販されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、レナリドミド製剤について検討を行う中で、レナリドミド製剤を長期間保存したときに、溶出率が低下することを新たに見出した。
【0008】
そこで、本発明の一態様は、レナリドミドの溶出率の低下が抑制された新規の医薬組成物(製剤)を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、レナリドミドを含む医薬組成物において、医薬組成物中、結晶セルロースを特定の量で含ませることにより、前記医薬組成物からのレナリドミドの溶出率の低下が抑制されることを初めて見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の一態様は、以下の構成を包含する。
<1>レナリドミドまたはその薬学的に許容される塩と、結晶セルロースと、を含む医薬組成物であり、
前記結晶セルロースを、医薬組成物100重量部に対して50重量部以上の量で含むことを特徴とする、医薬組成物。
<2>さらに、糖または糖アルコールを含み、
前記糖または糖アルコール3重量部に対して、前記結晶セルロースを7重量部以上の比率で含むことを特徴とする、<1>に記載の医薬組成物。
<3>前記糖または糖アルコールが乳糖である、<2>に記載の医薬組成物。
<4><1>~<3>のいずれかに記載の医薬組成物をカプセルに充填してなるカプセル製剤。
<5>レナリドミドまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の製造方法であって、
前記医薬組成物が、結晶セルロースを含み、
前記結晶セルロースを、医薬組成物100重量部に対して50重量部以上の量で含ませることを特徴とする、方法。
<6>レナリドミドまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物からのレナリドミドまたはその薬学的に許容される塩の溶出率の低下を抑制する方法であって、
前記医薬組成物において、結晶セルロースを、医薬組成物100重量部に対して50重量部以上の量で含ませることを特徴とする、方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、レナリドミドまたはその薬学的に許容される塩の溶出率の低下が抑制された新規の医薬組成物を提供することができる。また、本発明の一様態によれば、レナリドミドまたはその薬学的に許容される塩の溶出率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る実施例および比較例における、溶出試験の結果を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る実施例における、溶出試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。
【0013】
なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を示す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0014】
〔1.概要〕
本発明の一実施形態に係る医薬組成物(以下、「本発明の医薬組成物」と称する。)は、レナリドミドまたはその薬学的に許容される塩(以下、単に「レナリドミド」と称する場合がある。)と、結晶セルロースと、を含む医薬組成物であり、当該結晶セルロースを、医薬組成物100重量部に対して50重量部以上の量で含むことを特徴とする。
【0015】
レナリドミドは、医薬として適用するためには、製剤により溶出率の低下を抑制する必要があった。そこで、本発明者らは、レナリドミドを含む医薬組成物について、とりわけ、溶出率の低下抑制の観点からレナリドミドと共に含まれる成分について詳細な検討を行った結果、以下の知見を得ることに成功した。
【0016】
レナリドミドを含む医薬組成物において、医薬組成物中、結晶セルロースを特定の量(すなわち、医薬組成物100重量部に対して50重量部以上の量)で含ませることにより、前記医薬組成物からのレナリドミドの溶出率の低下が抑制される。
【0017】
レナリドミド製剤において、医薬組成物中の結晶セルロースの含有量が、レナリドミドの溶出率の低下抑制に関連していることは、これまでに全く知られていなかった。したがって、本発明者らが得た上記知見は、極めて驚くべきことである。
【0018】
このように、本発明の医薬組成物は、上記の知見に基づく有利な効果を奏することから、有用な新規のレナリドミドまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供することができる。
【0019】
〔2.本発明の医薬組成物〕
本発明の医薬組成物は、有効成分として、レナリドミドまたはその薬学的に許容される塩を含む。本明細書において、レナリドミドは、無水物の形態であってもよいし、水和物の形態であってもよいし、異性体(例えば、鏡像異性体)の形態であってもよい。
【0020】
レナリドミドの一例であるレナリドミド無水物は、下記の式(1)および/または(2)で表される化合物である。
【0021】
【0022】
【0023】
すなわち、本発明の一実施形態において、レナリドミドは、ラセミ体であってもよく、光学活性体であってもよい。また、本発明の一実施形態において、レナリドミドは、光学活性体であるR体及びS体の、任意の混合物であってもよい。
【0024】
本明細書において、「薬学的に許容される塩」とは、医学的に、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等がなく、ヒトまたはその他の哺乳動物の組織と接触させて使用するのに適した塩を意味する。
【0025】
レナリドミドの薬学的に許容される塩は、当該技術分野において周知であり、任意のものが使用可能である。レナリドミドの薬学的に許容される塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、フッ化水素酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、2-ヒドロキシ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リンゴ酸塩、酪酸塩、安息香酸塩、ジヒドロキシ安息香酸塩、パラヒドロキシ安息香酸メチル塩、ジヒドロキシ安息香酸メチル塩、ジヒドロキシ安息香酸エチル塩、トリヒドロキシ安息香酸塩、4-ヒドロキシ3-メトキシ安息香酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ドデシルスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0026】
本明細書において、「医薬組成物」とは、医薬用途で使用可能な組成物を意味する。
【0027】
本発明の医薬組成物は、医薬組成物中、結晶セルロースを特定の量で含む。これにより、本発明の医薬組成物は、当該医薬組成物からのレナリドミドの溶出率の低下が抑制されるという効果を奏する。
【0028】
本明細書において、結晶セルロースは、α-セルロースを酸で部分的に解重合して精製した化合物であり、医薬において使用可能な形態であれば、特に限定されない。
【0029】
本発明の一実施形態において、本発明の医薬組成物に含まれる結晶セルロースの量は、医薬組成物を基準として、医薬組成物100重量部に対して50重量部以上の量であり、好ましくは、医薬組成物100重量部に対して55重量部以上の量であり、より好ましくは、医薬組成物100重量部に対して60重量部以上の量であり、特に好ましくは、医薬組成物100重量部に対して65重量部以上の量であり、さらに好ましくは、医薬組成物100重量部に対して69重量部以上の量であり、医薬組成物100重量部に対して69重量部の量、から、医薬組成物100重量部に対して76重量部の量が最も好ましい。また、本発明の一実施形態において、本発明の医薬組成物に含まれる結晶セルロースの量は、医薬組成物100重量部に対して80重量部、90重量部、95重量部の量であってもよい。本発明の医薬組成物に含まれる結晶セルロースの量が上記の範囲であることにより、本発明の医薬組成物からのレナリドミドの溶出率の低下が抑制されるという効果を奏する。なお、本発明の医薬組成物に含まれる結晶セルロースの量の上限は、本発明の効果を奏する限り特に限定されず、例えば、医薬組成物100重量部に対して99重量部未満の量であり得る。
【0030】
本発明の医薬組成物は、さらに、糖または糖アルコールを含んでいてもよい。
【0031】
糖または糖アルコールとしては、当該技術分野において通常使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、D-マンニトール、乳糖(例えば、無水乳糖)、白糖、コーンスターチ(トウモロコシデンプン)、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、部分アルファー化デンプン、バレイショデンプン、ブドウ糖等が挙げられる。好ましくは、乳糖が用いられる。
【0032】
本発明の一実施形態において、本発明の医薬組成物に含まれる糖または糖アルコールは、一種類であってもよく、複数種類であってもよい。
【0033】
本発明の医薬組成物に含まれる糖または糖アルコールと結晶セルロースとの比率は、糖または糖アルコール3重量部に対して、結晶セルロースが7重量部以上(換言すれば、糖または糖アルコール1重量部に対して、結晶セルロースが2.3重量部以上)であり、糖または糖アルコール1重量部に対して、結晶セルロースが2.8重量部、から、糖または糖アルコール1重量部に対して、結晶セルロースが7.6重量部、が特に好ましい。また、本発明の一実施形態において、本発明の医薬組成物に含まれる糖または糖アルコールと結晶セルロースとの比率は、糖または糖アルコール1重量部に対して、結晶セルロースが8重量部、9重量部、9.5重量部であってもよい。本発明の医薬組成物に含まれる糖または糖アルコールと結晶セルロースとの比率が上記の範囲であることにより、本発明の医薬組成物からのレナリドミドの溶出率の低下が抑制されるという効果を奏する。なお、本発明の医薬組成物に含まれる糖または糖アルコールと結晶セルロースとの比率の上限は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されない。
【0034】
なお、上記式において、糖または糖アルコールは、すべて無水物換算である。
【0035】
本発明の一実施形態において、本発明の医薬組成物は、レナリドミドまたはその薬学的に許容される塩と、結晶セルロースと、前記糖または糖アルコールと、を含む医薬組成物であり、前記結晶セルロースを、医薬組成物100重量部に対して50重量部以上の量で含み、前記糖または糖アルコール3重量部に対して、前記結晶セルロースを7重量部以上の比率で含むことを特徴とする、医薬組成物である。
【0036】
また、本発明の一実施形態において、本発明の医薬組成物は、レナリドミドまたはその薬学的に許容される塩と、結晶セルロースと、乳糖と、を含む医薬組成物であり、前記結晶セルロースを、医薬組成物100重量部に対して50重量部以上の量で含み、前記乳糖3重量部に対して、前記結晶セルロースを7重量部以上の比率で含むことを特徴とする、医薬組成物である。
【0037】
本発明の一実施形態において、本発明の医薬組成物に含まれるレナリドミドの量は、特に限定されることなく、従来公知の技術に基づいて、適宜設定され得る。本発明の医薬組成物に含まれるレナリドミドの量は、好ましくは、5mg、2.5mgであり得る。
【0038】
本発明の医薬組成物は、上記以外の成分として、崩壊剤、滑沢剤等を含んでいてもよい。
【0039】
崩壊剤としては、特に限定されないが、例えば、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、バレイショデンプン等が挙げられる。好ましくは、クロスカルメロースナトリウムが用いられる。
【0040】
滑沢剤としては、特に限定されないが、例えば、タルク、カオリンおよび二酸化チタン等の不活性物質、ステアリン酸マグネシウム、細かく粉砕した二酸化ケイ素、クロスポビドン、β-ラクトース等が挙げられる。好ましくは、ステアリン酸マグネシウムが用いられる。
【0041】
前記各添加剤の含有率は、特に限定されることなく、従来公知の技術に基づいて、適宜設定され得る。
【0042】
〔3.その他〕
本発明の一実施形態において、本発明の医薬組成物をカプセルに充填してなるカプセル製剤(以下、「本発明のカプセル製剤」と称する。)を提供する。
【0043】
本発明の医薬組成物は、上記カプセル製剤の他にも種々の剤形で使用される。そのような剤形としては、特に限定されないが、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、ドライシロップ等が挙げられる。
【0044】
本発明の一実施形態において、レナリドミドまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の製造方法であって、前記医薬組成物が、結晶セルロースを含み、前記結晶セルロースを、医薬組成物100重量部に対して50重量部以上の量で含ませることを特徴とする方法(以下、「本発明の製造方法」と称する。)を提供する。
【0045】
本発明の製造方法は、本発明の製造方法により得られる医薬組成物が、結晶セルロースを、医薬組成物100重量部に対して50重量部以上の量で含むようにする方法であれば特に限定されず、当該技術分野で既知の任意の方法が採用され得る。
【0046】
本発明の製造方法において、複数の賦形剤が使用される場合、各賦形剤は、同時に添加および混合されてもよく、別々に添加および混合されてもよい。例えば、賦形剤として結晶セルロースと乳糖とが使用される場合、例えば、実施例に記載の方法により、結晶セルロースとレナリドミドとを混合した後に、その混合物と乳糖とを混合し得る。
【0047】
本発明の医薬組成物をカプセル製剤とする場合には、医薬組成物に含まれる各種成分の混合後に、さらにカプセルへの充填工程を含むことにより、本発明のカプセル製剤を得ることができる。医薬組成物のカプセルへの充填は、当該技術分野で既知の任意の方法が採用され得る。
【0048】
本発明の製造方法において、各構成要素(例えば、「レナリドミドまたはその薬学的に許容される塩」、「医薬組成物」、「結晶セルロースの含量」等)の説明は、〔2.本発明の医薬組成物〕に記載したものが援用される。
【0049】
また、本発明の一実施形態において、レナリドミドまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物からのレナリドミドまたはその薬学的に許容される塩の溶出率の低下を抑制する方法であって、前記医薬組成物において、結晶セルロースを、医薬組成物100重量部に対して50重量部以上の量で含ませることを特徴とする方法(以下、「本発明の溶出率低下抑制方法」と称する。)を提供する。
【0050】
本発明の溶出率低下抑制方法は、上述の通り、レナリドミド製剤の溶出率の低下を抑制することができる。したがって、本発明の溶出率低下抑制方法は、安定なレナリドミド製剤を設計するうえで、極めて有用である。
【0051】
本発明の溶出率低下抑制方法において、各構成要素(例えば、「レナリドミドまたはその薬学的に許容される塩」、「医薬組成物」、「結晶セルロースの含量」等)の説明は、〔2.本発明の医薬組成物〕に記載したものが援用される。
【0052】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0053】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0054】
〔測定および評価方法〕
(溶出試験)
実施例および比較例の各錠剤(カプセル製剤)について、日本薬局方溶出試験法(パドル法)により、溶出試験第2液へのレナリドミドの溶出性を測定した。測定方法は、以下の通りである。
【0055】
1回の溶出試験につき錠剤1個を用いた。pH6.8の試験液(日本薬局方溶出試験第2液)900mL中に錠剤を入れ、温度37±5℃、撹拌速度50rpmの条件で、60分まで撹拌し、経時的に試験液をサンプリングした。サンプリングした試験液を、孔径0.45μm以下のメンブランフィルターで濾過してサンプル溶液とした。別に、既知量のレナリドミドを抽出液に溶解させ、得られた溶液に溶出試験第2液を加えることにより、レナリドミド測定用の標準溶液を調製した。測定は、HPLCにより行った。
【0056】
<HPLC測定条件>
・検出器:紫外吸光光度計
・カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填する。
・移動相:
移動相A:pH3.5 10mmol/Lリン酸二水素カリウム緩衝液
移動相B:メタノール/アセトニトリル混液(9:1)
〔実施例1〕
レナリドミドとレナリドミドの5倍量の結晶セルロースとを混合し、混合末を篩過した。続いて、篩過後の混合末に、残りの結晶セルロース、無水乳糖およびクロスカルメロースナトリウムを加えて混合した。その後、ステアリン酸カルシウムを加えて混合した。得られた混合末をカプセルに充填して、カプセル製剤を得た。
【0057】
なお、上記実施例1の各成分量の詳細については、表1を参照のこと。また、表1中、各成分量の単位は、mgである。
【0058】
〔比較例1〕
無水乳糖の量を139mgに変更し、結晶セルロースの量を50mgに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、カプセル製剤を得た。
【0059】
〔比較例2〕
無水乳糖の量を94.5mgに変更し、結晶セルロースの量を94.5mgに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、カプセル製剤を得た。
【0060】
なお、上記比較例1~2の各成分量の詳細については、表1を参照のこと。
【0061】
【0062】
〔実施例2〕
各成分の分量を表2に記載の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法により、カプセル製剤を得た。なお、表2中、各成分量の単位は、mgである。
【0063】
【0064】
実施例1および2では、加速条件下においても、溶出率の低下が見られず、INITIALと同程度の高い溶出率を示した。一方、比較例1~2では、加速条件下におくと、INITIALと比較して、溶出率の低下が見られた。
【0065】
これらの結果より、結晶セルロースを、賦形剤中、50重量%を超える量で含む本発明の医薬組成物に係るカプセル製剤は、結晶セルロースを、賦形剤中、50重量%以下の量で含むカプセル製剤よりも、溶出率の低下が抑制されていることが分かった。
【0066】
以上より、レナリドミドを含む医薬組成物において、レナリドミドと共に、結晶セルロースを、賦形剤中、50重量%を超える量で含ませることにより、レナリドミドを含む医薬組成物からのレナリドミドの溶出率の低下が抑制されることが示された。
【0067】
〔処方例1〕
上記実施例2と同様の方法により、カプセル製剤を得る(5mgカプセル製剤)。
【0068】
〔処方例2〕
各成分の分量を半分の量に変更した以外は、処方例1と同様の方法により、カプセル製剤を得る(2.5mgカプセル製剤)。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、レナリドミドまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の溶出率の低下が抑制されているため、レナリドミドの新規製剤として(例えば、多発性骨髄腫、5番染色体長腕部欠失を伴う骨髄異形成症候群、再発または難治性の成人T細胞白血病リンパ腫等の治療等において)、好適に利用することができる。