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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】排気管バルブ
(51)【国際特許分類】
   F01N 1/08 20060101AFI20240116BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20240116BHJP
【FI】
F01N1/08 A
F01N1/08 F
F01N1/08 G
F01N13/08 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019231758
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021099077
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-09-03
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】都築 裕介
(72)【発明者】
【氏名】梶川 正博
(72)【発明者】
【氏名】太田 和真
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正也
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】河端 賢
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-15226(JP,A)
【文献】特開平5-231454(JP,A)
【文献】実開昭60-191735(JP,U)
【文献】特開2015-94316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00
F01N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気管に配置される排気管バルブであって、
弁座と、
前記弁座に配置された弁軸と、
前記弁軸を中心に回動することで排気管の少なくとも一部を開閉する弁体と、
捩じりバネとして機能し、一端が前記弁体に当接する第1スプリングと、
捩じりバネとして機能し、一端が前記弁座に当接し、他端が前記第1スプリングに直列に接続される第2スプリングと、
前記弁体開こうとする力に抗するように前記第2スプリングに初期荷重が付された状態で、前記第1スプリング及び前記第2スプリングの接続部位が、前記第2スプリングへの荷重が大きくなるように移動することを許容し、かつ前記第2スプリングへの荷重が小さくなるように移動することを抑制するように構成された抑制機構であって、前記弁体が閉じた状態で、当該抑制機構の一部が前記弁座に接触し、前記弁体が開くと、前記弁体を開こうとする力が初期荷重と一致するまでは、当該抑制機構の一部が弁座に接触した状態が維持され、前記弁体を開こうとする力が、初期荷重を超えると、当該抑制機構の一部が前記弁座から離れるように構成された抑制機構と、
を備え、
前記第1スプリングには、前記弁体が閉じた状態で、前記弁体開こうとする力に抗するように抵抗荷重が付された排気管バルブ。
【請求項2】
請求項1に記載の排気管バルブであって、
前記抑制機構として、
前記第1スプリング及び前記第2スプリングの接続部位に配置され、前記第2スプリングへの荷重が大きくなる方向に回転することを許容し、かつ前記弁座に係止されることによって前記第2スプリングへの荷重が小さくなる方向に回転することを抑制するように構成された抑制部材、
をさらに備える排気管バルブ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の排気管バルブであって、
前記第1スプリングの捩じりバネとしてのバネ定数は、前記第2スプリングの捩じりバネとしてのバネ定数よりも大きく設定される
排気管バルブ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の排気管バルブであって、
当該排気管バルブは、消音器の内部に配置される
排気管バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の排気管に配置される排気管バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
弁座に対して弁体が弁軸を中心に回動するように構成された排気管バルブにおいて、複数のコイルスプリングを用いて、バルブを開こうとする力とバルブの開度との関係が非線形になるように構成した排気管バルブが知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1の技術では、第1のコイルスプリングの内側に先細り形状のスライド部材を配置している。この構成では、バルブを開こうとする力によって第1のコイルスプリングの内径が小さくなると、第1のコイルスプリングに押されてスライド部材が第1のコイルスプリングの内径が大きい方向に移動させられる。スライド部材の移動方向側には、第2のコイルスプリングが配置されており、第2のコイルスプリングは、スライド部材が元の位置に戻るように付勢力を生じさせる。
【0004】
この構成では、バルブの開度に応じて第1のコイルスプリングがスライド部材に当接する位置が変化するので、バルブを開こうとする力とバルブの開度との関係が非線形になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-328967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の排気管バルブでは、第1のコイルスプリングとスライド部材とが摺動するので、異音が生じたり、摩耗によって特性が変化したりするという悪影響が生じることがある。
【0007】
本開示の1つの局面は、内燃機関の排気管に配置される排気管バルブにおいて、バルブを開こうとする力とバルブの開度との関係が非線形になるようにしつつ、異音や摩耗による悪影響を抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、内燃機関の排気管に配置される排気管バルブであって、弁座と、弁軸と、弁体と、第1スプリングと、第2スプリングと、抑制機構と、を備える。
弁軸は、弁座に配置される。弁体は、弁軸を中心に回動することで排気管の少なくとも一部を開閉する。第1スプリングは、捩じりバネとして機能し、一端が弁体に当接する。第2スプリングは、捩じりバネとして機能し、一端が弁座に当接し、他端が第1スプリングに直列に接続される。
【0009】
抑制機構は、弁体が開こうとする力(換言すれば、弁体を開こうとする荷重)に抗するように第2スプリングに初期荷重が付された状態で、第1スプリング及び第2スプリングの接続部位が、第2スプリングへの荷重が大きくなるように移動することを許容し、かつ第2スプリングへの荷重が小さくなるように移動することを抑制するように構成される。
【0010】
このような構成では、バルブが閉じた状態から開いた状態に遷移するときに、バルブを開こうとする力が第2スプリングの初期荷重と一致するまでは、第1スプリングのみがバルブを開こうとする力の抵抗となる。また、バルブを開こうとする力が第2スプリングの初期荷重を超えると、直列に接続された第1スプリング及び第2スプリングがバルブを開こうとする力の抵抗となるため、バルブを開こうとする力の抵抗は、第1スプリングのみが存在する場合よりも小さくなる。
【0011】
よって、このような構成によれば、バルブを開こうとする力とバルブの開度との関係が非線形になるようにすることができる。また、このような排気管バルブによれば、第1スプリング及び第2スプリングと摺動する部材を備えないので、異音や摩耗による悪影響を抑制することができる。
【0012】
本開示の一態様は、抑制機構として、抑制部材をさらに備えてもよい。抑制部材は、第1スプリング及び第2スプリングの接続部位に配置され、第2スプリングへの荷重が大きくなる方向に回転することを許容するように構成されてもよい。かつ抑制部材は、弁座に係止されることによって第2スプリングへの荷重が小さくなる方向に回転することを抑制するように構成されてもよい。
【0013】
このような構成によれば、弁座に係止される抑制部材を用いて第2スプリングを保持することができるので、抑制機構の構成を簡素な構成とすることができる。
本開示の一態様では、第1スプリングの捩じりバネとしてのバネ定数は、第2スプリングの捩じりバネとしてのバネ定数よりも大きく設定されてもよい。
【0014】
このような構成によれば、弁体を開こうとする荷重が初期荷重以下のときには、弁体を開こうとする力の増加に対して弁体の開度を小さくすることができる。また、弁体を開こうとする荷重が初期荷重を超えてからは、弁体を開こうとする力の増加に対して弁体の開度を大きくすることができる。
【0015】
本開示の一態様では、第1スプリングには、弁体が閉じた状態で、弁体が開こうとする力に抗するように抵抗荷重が付されていてもよい。
このような構成によれば、第1スプリングに抵抗荷重が付されているので、弁体が開こうとする力が抵抗荷重以下のときには、弁体が開きにくいように構成することができる。
【0016】
本開示の一態様では、当該排気管バルブは、消音器の内部に配置されてもよい。
このような構成によれば、排気管バルブが消音器の内部に配置されるので、排気の圧力が低いときには、弁体を閉じて消音性能を高め、排気の圧力が高いときには、弁体を開いて排気の圧力を低減する構成を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の排気管バルブの斜視図である。
図2】実施形態の排気管バルブの正面図である。
図3】排気管バルブの正面図におけるIII-III断面図である。
図4】排気管バルブがやや開いた状態を示す断面図である。
図5】排気管バルブがさらに開いた状態を示す断面図である。
図6】バルブを開こうする力(荷重)とバルブの開き角度との関係の一例を示すグラフである。
図7】実施形態の排気管バルブの配置例を示す説明図である。
図8】変形例の排気管バルブの配置例を示す説明図である。
図9】別の変形例の排気管バルブの配置例を示す説明図である。
図10】変形例の排気管バルブの正面図である。
図11】別の変形例の排気管バルブの正面図である。
図12】さらに別の変形例の排気管バルブの正面図である。
図13】さらに別の変形例の排気管バルブの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.実施形態]
[1-1.構成]
図1及び図2に示す排気管バルブ1Aは、内燃機関の排気管の任意の部位に配置されるバタフライバルブである。排気管バルブ1Aは、弁座11と、弁軸13と、弁体15と、第1スプリング20Aと、第2スプリング30Aと、抑制機構40と、を備える。
【0019】
弁座11は、排気管に対して直接的又は間接的に固定配置され、この弁座11の外周部の一端には、弁軸13が配置される。弁軸13は、弁座11の端部にて弁座11に対して固定配置され、弁体15の端部を挿通する。弁体15は、弁軸13を中心に回動する。
【0020】
つまり、排気管バルブ1Aは、弁軸13が弁体15の中央を通過しない、偏心型のバタフライバルブとして構成され、排気管における排気の流路の少なくとも一部を開閉する。なお、以下では、弁体15が弁座11と接触した状態を、バルブが閉じた状態と表記し、弁体15が弁座11から離れた状態を、バルブが開いた状態と表記する。
【0021】
ただし、バルブが閉じた状態において、排気の一部が排気管バルブ1Aを通過することを許容してもよい。図1及び図2では、バルブが閉じた状態を図示している。
弁座11及び弁体15は、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aによって弁を閉じようとする力が付勢される。詳細には、第1スプリング20Aは、図2に示すように、本体部21と、直線部22と、接続部23と、を備える。
【0022】
また、第2スプリング30Aは、同様に、本体部31と、直線部32と、接続部33と、を備える。第1スプリング20Aの本体部21、直線部22、及び接続部23は、一部材にて構成され、また、第2スプリング30Aの本体部31、直線部32、及び接続部33は、一部材にて構成される。
【0023】
本体部21,31は、線状に形成された金属部材が周方向に巻回されることによってコイルスプリングとして構成される。本体部21,31は、周方向に沿って捩じられることで捩じりバネとして機能する。本体部21,31の中心には、弁軸13が挿通される。つまり、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの中心軸は、弁軸13と同軸上になるように配置される。
【0024】
この構成は、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの配置スペースの効率化、及び第1スプリング20A及び第2スプリング30Aにて生じる力が弁体15の開閉に作用しやすくなることに寄与する。
【0025】
直線部22,32は、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aにおける抑制部材41とは反対側の端部において、本体部21,31から直線的に延びる部位である。第1スプリング20Aにおける直線部22は、先端部が弁体15に当接し、第1スプリング20Aによる付勢力を弁体15に伝達する。第2スプリング30Aにおける直線部22は、先端部が弁座11に当接し、弁座11に対して第2スプリング30Aが自由に回転しないように第2スプリング30Aを支持する。
【0026】
接続部23,33は、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aにおける抑制部材41側の端部において、抑制部材41と接続される部位である。接続部23,33は、本体部21,31から延びる金属部材が、約90deg抑制部材41側に方向転換されて、抑制部材41に接続される。
【0027】
この構成により、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aは、抑制部材41を介して直列に接続される。ここで、本開示及び本明細書において、「直列に接続される」とは、概ね、下記の関係式を満たすことを示す。ただし、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの捩じりバネとして合成バネ定数K、第1スプリング20Aの捩じりバネとしてバネ定数K、及び第2スプリング30Aの捩じりバネとしてバネ定数Kとする。
【0028】
【数1】
【0029】
つまり、この関係式を概ね満たせば、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aが同軸上に配置される必要はない。また、後述するように、抑制部材41が自由に移動できる状況において、この関係式が満たされればよく、抑制部材41が固定される状況においては、この関係式を満たす必要はない。
【0030】
抑制機構40は、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの接続部位が、第2スプリング30Aへの荷重が大きくなるように移動することを許容する機能を有する。かつ、抑制機構40は、第2スプリング30Aへの荷重が所定の初期荷重よりも小さくなるように移動することを抑制する機能を有する。本実施形態の抑制機構40としては、抑制部材41を備える。
【0031】
抑制部材41は、前述のように、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの接続部位に配置される。抑制部材41は、図3図5に示すように、弁軸13と同軸上に設定された回転軸14Aを中心に回転するように構成される。抑制部材41の回転方向は、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aが捩じられる方向と一致する。
【0032】
ただし、抑制部材41には、抑制部材41の径方向に突出する係止片41Bが形成されており、この係止片41Bが弁座11の係止部11Aと接触すると、抑制部材41の回転が抑制される。
【0033】
換言すれば、抑制部材41は、第2スプリング30Aへの荷重が大きくなる方向に回転することを許容し、かつ弁座11に係止されることによって第2スプリング30Aへの荷重が小さくなる方向に回転することを抑制するように構成される。「係止」とは、ある部材がある方向に移動することで他の部材と接触し、その移動が抑制されることを示す。
【0034】
ここで、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aは、それぞれ、弁体15を閉じようとする力が発生するように、予め捩じられた状態で配置される。弁体15を閉じようとする力は、換言すれば、弁体15が開こうとする力に抗する力である。
【0035】
なお、バルブが閉じた状態で第1スプリング20Aにて発生する、弁体15をさらに閉じようとする力を抵抗荷重と称する。また、バルブが閉じた状態で第2スプリング30Aにて発生する、弁体15をさらに閉じようとする力を初期荷重と称する。
【0036】
抵抗荷重は、第1スプリング20Aの変位量と第1スプリング20Aの捩じりバネとしてバネ定数Kとの積にて表される。また、初期荷重は、第2スプリング30Aの変位量と第2スプリング30Aの捩じりバネとしてバネ定数Kとの積にて表される。
【0037】
初期荷重は、抵抗荷重よりも大きく設定される。また、第1スプリング20Aのバネ定数Kは、第2スプリング30Aのバネ定数Kよりも大きく設定される。このような構成では、抑制部材41は、図3に示すように、弁体15が弁座11に対して閉じた状態である際に、係止片41Bが弁座11の係止部11Aと接触した状態となる。
【0038】
ここで、排気管バルブ1Aが排気の圧力等の外力により開かれる場合の作動について図3図6を用いて説明する。図6に示すように、第1スプリング20Aには抵抗荷重が付されているため、弁体15に加わるバルブを開こうとする力が、抵抗荷重と一致するまではバルブが開くことが抑制され、バルブが閉じた状態が維持されやすくなる。
【0039】
弁体15に加わるバルブを開こうとする力が、抵抗荷重を超えると、図4に示すように、バルブが開き始める。このとき、バルブを開こうとする力が初期荷重と一致するまでは、係止片41Bが、弁座11の係止部11Aと接触した状態が維持され、バルブを開こうとする力に対しては、第1スプリング20Aのみが抵抗となる。
【0040】
すなわち、図6に示すように、バルブを開こうとする力とバルブの開き角度との関係は、第1スプリング20Aのバネ定数Kを傾きとする一次関数で表記できる。このとき、物理的には第1スプリング20A及び第2スプリング30Aが直列に接続されているが、これらは直列に接続されたスプリングとは機能しない。
【0041】
弁体15に加わるバルブを開こうとする力が、初期荷重を超えると、図5に示すように、さらにバルブが開いた状態となる。このとき、係止片41Bは、弁座11の係止部11Aから離れ、バルブを開こうとする力に対しては、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aが抵抗となる。
【0042】
この状態では、図6に示すように、バルブを開こうとする力とバルブの開き角度との関係は、1/(1/K+1/K)を傾きとする一次関数で表記できる。このとき、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aは、直列に接続されたスプリングとして機能する。
【0043】
つまり、バルブを開こうとする力に対する抵抗は、第1スプリング20Aのみが存在する場合よりも小さくなる。そして、バルブを開こうとする力とバルブの開き角度との関係を非線形にすることができる。図6に示す例では、バルブを開こうとする力が初期荷重と一致する点が変曲点となる。
【0044】
この構成では、内燃機関が低回転であり、排気管における排気の圧力が低いときには、比較的、バルブが開きにくく設定でき、内燃機関で発生する低周波数ノイズを排気管の外部に漏れにくくすることができる。また、内燃機関が高回転であり、排気管における排気の圧力が高いときには、比較的、バルブを開きやすく設定でき、排気管の圧力を速やかに低減し、内燃機関の燃費向上に寄与することができる。
【0045】
[1-2.配置例]
排気管バルブ1Aは、図7に示すように、例えば、消音器50Aの内部に配置される。消音器50Aは排気が導入される排気管の一部を構成する。消音器50Aは、筐体51と、インレットパイプ52と、アウトレットパイプ53と、を備える。筐体51は、内部に、隔壁56にて仕切られた第1室54及び第2室55を備える。
【0046】
隔壁56には、前述の排気管バルブ1Aが配置され、バルブが閉じた状態のときに、第1室54と第2室55とが概ね遮断され、バルブが開いた状態のときに、第1室54と第2室55とが連通される。第1室54は、拡張室として機能する。第2室55は、バルブが閉じた状態では共鳴室として機能し、バルブが開いた状態では拡張室として機能する。
【0047】
インレットパイプ52は、内燃機関に繋がる排気管に接続され、第1室54を貫通して第2室55に繋がるように配置される。アウトレットパイプ53は、第1室54から第2室55を貫通し、外気と連通する排気管に繋がるように配置される。
【0048】
インレットパイプ52における第1室54を貫通する部位には、複数の孔部52Aが形成されている。消音器50Aでは、複数の孔部52Aによって、バルブが閉じた状態での排気の流路が確保される。
【0049】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)本開示の一態様は、内燃機関の排気管に配置される排気管バルブ1Aである。排気管バルブ1Aは、弁座11と、弁軸13と、弁体15と、第1スプリング20Aと、第2スプリング30Aと、抑制機構40と、を備える。
【0050】
弁軸13は、弁座11に配置される。弁体15は、弁軸13を中心に回動することで排気管の少なくとも一部を開閉する。第1スプリング20Aは、捩じりバネとして機能し、一端が弁体15に当接する。第2スプリング30Aは、捩じりバネとして機能し、一端が弁座11に当接し、他端が第1スプリング20Aに直列に接続される。
【0051】
抑制機構40は、弁体15が開こうとする力に抗するように第2スプリング30Aに初期荷重が付された状態で、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの接続部位が、第2スプリング30Aへの荷重が大きくなるように移動することを許容し、かつ第2スプリング30Aへの荷重が小さくなるように移動することを抑制するように構成される。
【0052】
このような構成では、バルブが閉じた状態から開いた状態に遷移するとき、バルブを開こうとする力が第2スプリング30Aの初期荷重と一致するまでは、第1スプリング20Aのみがバルブを開こうとする力の抵抗となる。また、バルブを開こうとする力が第2スプリング30Aの初期荷重を超えると、直列に接続された第1スプリング20A及び第2スプリング30Aがバルブを開こうとする力の抵抗となるため、バルブを開こうとする力の抵抗は、第1スプリング20Aのみが存在する場合よりも小さくなる。
【0053】
よって、このような構成によれば、バルブを開こうとする力とバルブの開度との関係が非線形になるようにすることができる。また、このような構成によれば、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aと摺動する部材を備えないので、異音や摩耗による悪影響を抑制することができる。
【0054】
(1b)本開示の一態様は、抑制機構40として、抑制部材41をさらに備える。抑制部材41は、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの接続部位に配置され、第2スプリング30Aへの荷重が大きくなる方向に回転することを許容し、かつ弁座11に係止されることによって第2スプリング30Aへの荷重が小さくなる方向に回転することを抑制するように構成される。
【0055】
このような構成によれば、弁座11に係止される抑制部材41を用いて第2スプリング30Aを保持することができるので、抑制機構40の構成を簡素な構成とすることができる。
【0056】
(1c)本開示の一態様では、第1スプリング20Aの捩じりバネとしてのバネ定数は、第2スプリング30Aの捩じりバネとしてのバネ定数よりも大きく設定される。
このような構成によれば、弁体15を開こうとする荷重が初期荷重以下のときには、弁体15を開こうとする力の増加に対して弁体15の開度を小さくすることができ、弁体15を開こうとする荷重が初期荷重を超えてからは、弁体15を開こうとする力の増加に対して弁体15の開度を大きくすることができる。
【0057】
(1d)本開示の一態様では、第1スプリング20Aには、弁体15が閉じた状態で、弁体15が開こうとする力に抗するように抵抗荷重が付されている。
このような構成によれば、第1スプリング20Aに抵抗荷重が付されているので、弁体15が開こうとする力が抵抗荷重以下のときには、弁体15が開きにくいように構成することができる。
【0058】
(1e)本開示の一態様では、当該排気管バルブ1Aは、消音器50Aの内部に配置される。
このような構成によれば、排気管バルブ1Aが消音器50Aの内部に配置されるので、排気の圧力が低いときには、弁体15を閉じて消音性能を高め、排気の圧力が高いときには、弁体15を開いて排気の圧力を低減することができる。
【0059】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は前述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。下記の構成であっても、上記実施形態と同様の効果を享受できる。
【0060】
(2a)上記実施形態では、消音器50A内部の隔壁56に排気管バルブ1Aを配置したが、これに限定されるものではない。例えば、図8に示すように、消音器50B内部の第2室55におけるインレットパイプ52の先端部に排気管バルブ1Aを配置してもよい。
【0061】
また、消音器50A及び50Bの内部に限らず、図9に示すように、消音器50A,50B以外の排気管60の内部に配置されていてもよい。図9に示す例では、排気管60は、排気管60における排気の上流側及び下流側を仕切る仕切壁62を備え、仕切壁62に排気管バルブ1Aが配置される。
【0062】
(2b)排気管バルブ1Aの構成は、排気管バルブ1Aに限らず、種々の構成を採用できる。詳細には、以下に示すような構成を採用してもよい。
(2b-1)例えば、図10に示す排気管バルブ1Bでは、抑制機構40における抑制部材41に換えて、抑制部材42が備えられる。抑制部材42には、外周部に、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの軸方向に沿って突出する突出部42Aが備えられる。
【0063】
突出部42Aは、抑制部材42の外周部において弁軸13を挟んで対称となる位置の2カ所に配置され、一方は第1スプリング20A側に突出し、他方は第2スプリング30A側に突出する。そして、突出部42Aには、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの接続部23,33が接続される。上記実施形態での排気管バルブ1Aでは、接続部23,33が抑制部材41に曲げられる必要があったが、抑制部材42を備える構成であれば、接続部23,33が曲げられる必要がなく、接続部23,33を直線的に抑制部材42に接続できる。
【0064】
(2b-2)また例えば、図11に示す排気管バルブ1Cでは、弁軸13が弁座11に対して回動可能に支持され、弁軸13と一体になって回動する抑制部材43を備える。この構成では、抑制部材43が弁軸13とは別に回転する構成と比較して、抑制部材43が軸方向に傾くことを抑制し、安定して回転させることができる。
【0065】
(2b-3)また例えば、排気管バルブでは、第1スプリング20Aとは本体部31の径が異なる第2スプリング30Bを採用してよい。図12に示す排気管バルブ1Dでは、前述の第2スプリング30Aに換えて、第1スプリング20Aとは本体部31の径が小さな第2スプリング30Bを採用している。
【0066】
また、抑制部材44は、第1スプリング20A及び第2スプリング30Bを良好に保持し、前述の抑制部材41と同様の機能を有するように構成される。
このような構成では、第1スプリング20A及び第2スプリング30Bのバネ定数の設定を容易にすることができる。
【0067】
(2b-4)また例えば、排気管バルブでは、3以上のスプリングを採用してもよい。図13に示す排気管バルブ1Eでは、前述の第1スプリング20Aを第1スプリング20B及び20Cに分割して採用し、第2スプリング30Aよりも短い第2スプリング30Cを採用している。また、第1スプリング20B及び20Cの間、並びに第1スプリング20C及び第2スプリング30Cの間には、抑制部材41と同様の抑制部材45A及び45Bを備える。
【0068】
このような構成では、各スプリング20B,20C,30Cのバネ定数の設定によっては、バルブを開こうとする力とバルブの開き角度との関係に、複数の変曲点を持たせることができる。よって、必要とされるバルブの特性を満たしやすくすることができる。
【0069】
(2c)上記実施形態では、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aは、弁軸13と同軸上に配置されたが、これに限定されるものではない。例えば、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aは、弁軸13とは異なる軸上に配置されてもよい。また、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aは、互いに異なる軸上に配置されてもよい。
【0070】
(2d)上記実施形態では、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの端部が弁座11或いは弁体15に当接するように構成したが、これに限定されるものではない。例えば、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aは、捩じりバネとして機能するのであれば、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの中間部分が弁座11或いは弁体15に当接するように構成してもよい。つまり、本開示での、「一端」或いは「他端」とは、捩じりバネとして機能する部位に対する「一端」或いは「他端」であることを示す。
【0071】
(2e)上記実施形態では、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aを別部材として構成したが、第2スプリング30Aは、第1スプリング20Aと一体に構成されていてもよい。この場合、抑制機構40(例えば、抑制部材41)は、一体となった第1スプリング20A及び第2スプリング30Aに貫通される構成を適用できる。
【0072】
(2f)上記実施形態では、第1スプリング20Aのバネ定数Kは、第2スプリング30Aのバネ定数Kよりも大きく設定したが、これに限定されるものではない。例えば、第1スプリング20Aのバネ定数Kは、第2スプリング30Aのバネ定数Kよりも小さくてもよいし、同じでもよい。
【0073】
(2g)上記実施形態では、抑制部材41を用いて抑制機構40の機能を実現したが、これに限定されるものではない。例えば、抑制部材41を用いることなく、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの接続部位を弁座11の一部で係止する構成を採用してもよい。
【0074】
(2h)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0075】
(2i)前述した排気管バルブ1Aの他、当該排気管バルブ1Aを構成要素とするシステムなど、種々の形態で本開示を実現することもできる。
また、本開示の排気管バルブは、下記のように構成してもよい。すなわち、
内燃機関の排気管に配置される排気管バルブであって、
弁座と、
前記弁座に配置された弁軸と、
前記弁軸を中心に回動することで排気管の少なくとも一部を開閉する弁体と、
捩じりバネとして機能し、一端が前記弁体に当接し、他端が抑制機構に接続される第1スプリングと、
捩じりバネとして機能し、一端が前記弁座に当接し、他端が前記抑制機構に接続され、前記抑制機構を介して、前記第1スプリングにばねの直列接続の関係となるように接続される第2スプリングと、
前記弁体が開こうとする力に抗するように前記第2スプリングに初期荷重が付された状態で、前記第1スプリング及び前記第2スプリングの接続部位が、前記第2スプリングへの荷重が大きくなるように移動することを許容し、かつ前記弁座に係止されることによって、前記第2スプリングへの荷重が小さくなるように移動することを抑制するように構成された前記抑制機構と、
を備える排気管バルブ、
としてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1A~1E…排気管バルブ、11…弁座、11A…係止部、13…弁軸、14A…回転軸、15…弁体、20A,20B,20C…第1スプリング、21,31…本体部、22,32…直線部、23,33…接続部、30A,30B,30C…第2スプリング、40…抑制機構、41,42,43,44,45A,45B…抑制部材、41B…係止片、42A…突出部、50A,50B…消音器、51…筐体、52…インレットパイプ、52A…孔部、53…アウトレットパイプ、54…第1室、55…第2室、56…隔壁、60…排気管、62…仕切壁。
図1
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