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  • 特許-ワーク搬送システム 図1
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  • 特許-ワーク搬送システム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】ワーク搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B21J 13/10 20060101AFI20240116BHJP
   B21K 27/00 20060101ALI20240116BHJP
   B21J 1/06 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B21J13/10 C
B21K27/00 B
B21K27/00 A
B21J1/06 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019232862
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021100763
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】古屋 好丈
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-303644(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1796198(KR,B1)
【文献】特開2011-240411(JP,A)
【文献】特開平03-236418(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016220431(DE,A1)
【文献】特開2012-45565(JP,A)
【文献】特開2003-154408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 13/10
B21K 27/00
B21J 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉から取り出されたワークをプレス鍛造装置に搬送するロボットと、
該ロボットによる搬送中に前記ワークの輪郭の内側における2次元的な温度分布を測定する温度測定装置と、
目標温度分布と前記温度測定装置により測定された前記温度分布とを比較することにより、前記ワークにおける低温領域の位置情報を算出する位置情報算出部と、
該位置情報算出部により算出された位置情報に基づいて、前記ワークの前記低温領域を局所的に加熱する加熱装置とを備えるワーク搬送システム。
【請求項2】
前記加熱装置が、前記目標温度分布を記憶し、前記ワークにおける前記低温領域を加熱することにより、前記ワークの温度分布を前記目標温度分布に近づける請求項1に記載のワーク搬送システム。
【請求項3】
前記加熱装置が、前記ワークにレーザ光を照射することにより、前記ワークを局所的に加熱する請求項1に記載のワーク搬送システム。
【請求項4】
前記ワークの位置を検出する位置検出装置を備え、
前記加熱装置が、前記ロボットによる搬送中に前記位置検出装置により検出された前記ワークの位置に追従させて前記レーザ光の照射位置を調整する請求項3に記載のワーク搬送システム。
【請求項5】
前記加熱装置は、前記低温領域において前記レーザ光を走査させるスキャナを備える請求項3または請求項4に記載のワーク搬送システム。
【請求項6】
前記加熱装置が、前記プレス鍛造装置における前記ワークの成形性の良否情報に基づいて、前記目標温度分布を補正する請求項2に記載のワーク搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワーク搬送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱間鍛造に際して、炉から取り出されたワークを金型に搬送するワーク搬送装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このワーク搬送装置は、赤外線カメラによってワークの姿勢を検出し、ロボットによりハンドリングすることによって、ワークの姿勢を調整しながら金型に搬送する。これにより、ワークの搬送および姿勢調整に要する時間を低減してワークの温度低下を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-92229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炉から取り出されたワークを金型に搬送する間に、ワークからの放熱によってワークの温度が部分的に低下すると、その後に熱間鍛造されたワークの品質にばらつきが発生する。したがって、搬送中のワークの温度分布を適正にして、ワークの品質を安定させることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、炉から取り出されたワークをプレス鍛造装置に搬送するロボットと、該ロボットによる搬送中に前記ワークの輪郭の内側における2次元的な温度分布を測定する温度測定装置と、目標温度分布と前記温度測定装置により測定された前記温度分布とを比較することにより、前記ワークにおける低温領域の位置情報を算出する位置情報算出部と、該位置情報算出部により算出された位置情報に基づいて、前記ワークの前記低温領域を局所的に加熱する加熱装置とを備えるワーク搬送システムである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の一実施形態に係るワーク搬送システムを示す全体構成図である。
図2図1のワーク搬送システムの温度測定装置により取得されたワークにおける温度分布の一例を等高線によって示した図である。
図3図1のワーク搬送システムの主制御装置の記憶部に記憶している目標温度分布の一例を等高線によって示した図である。
図4図2の温度分布および図3の目標温度分布に基づいて加熱すべき低温領域の一例を斜線で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の一実施形態に係るワーク搬送システム1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るワーク搬送システム1は、加熱炉(炉)において加熱されたワークWをプレス鍛造装置(図示略)に搬送するロボット2と、ワークWの温度分布を測定する温度測定装置3と、ワークWを局所的に加熱可能な加熱装置4と、ロボット制御装置7とを備えている。
【0008】
ロボット2は、例えば、垂直6軸多関節型ロボットであって、手首5の先端にワークWを把持するハンド6を備えている。ロボット2には、各関節を駆動するモータに、各関節の回転角度位置を検出する図示しないエンコーダが備えられており、ロボット2に接続されたロボット制御装置7が、エンコーダにより検出された位置情報に基づいてロボット2を制御する。
【0009】
温度測定装置3は、ロボット2によるワークWの搬送経路の途中位置に配置され、ワークWを撮影するカメラ(位置検出装置)8と、ワークWの温度を測定する赤外線放射温度計9とを備えている。これにより、図2に示されるように、カメラ8により取得されたワークWの輪郭の内側における温度分布を、赤外線放射温度計9により測定することができる。
【0010】
加熱装置4は、図1に示されるように、レーザ光を発生するレーザ発振器10と、レーザ発振器10から発せられたレーザ光を2次元的に走査するスキャナ11と、これらを制御するレーザ制御装置12とを備えている。
図中、符号13は、レーザ発振器10から発せられたレーザ光をスキャナ11に導光する光ファイバである。
【0011】
レーザ制御装置12は、主制御装置14と、出力制御装置15と、スキャナ制御装置16とを備えている。レーザ制御装置12は、プロセッサおよびメモリにより構成されている。
【0012】
主制御装置14は、図3に示されるワークWの目標温度分布を記憶する記憶部(図示略)を備えている。そして、主制御装置14は、カメラ8および赤外線放射温度計9により測定された図2の温度分布と、記憶部に記憶している図3の目標温度分布とを比較して、例えば、図4に斜線で示される目標温度分布よりも低い温度の低温領域の情報を抽出する。
低温領域の情報としては、ワークWを、例えば下方から見た輪郭内における低温領域のローカルな(ワークWに固定された座標系における)位置情報と、低温領域における目標温度分布の温度との温度差の情報とを含んでいる。
【0013】
また、主制御装置14は、ロボット制御装置7から、ロボット2のハンド6により把持しているワークWの位置情報を逐次取得する。具体的には、ロボット2の各関節の角度情報を取得し、ハンド6により把持しているワークWのグローバルな(ロボット2の設置面に固定された座標系における)位置情報とを算出する。そして、主制御装置14は、ワークWのグローバルな位置情報と、抽出された低温領域のローカルな位置情報とに基づいて、低温領域のグローバルな位置情報を逐次算出する。
【0014】
主制御装置14は、算出した低温領域のグローバルな位置情報をスキャナ制御装置16に送り、抽出した低温領域の情報の内の、目標温度分布の温度との温度差の情報を出力制御装置15に送る。
出力制御装置15は、送られてきた温度差の情報に基づいて、必要なレーザ光の強度を算出し、算出された強度のレーザ光を射出するようレーザ発振器10を制御する。
【0015】
また、スキャナ制御装置16は、時々刻々移動する低温領域のグローバルな位置情報に基づいて、移動する低温領域にスキャナ11を追従させて、低温領域にレーザ光を照射し続けるようスキャナ11を制御する。低温領域が小さいときには、低温領域にピンポイントでレーザ光を照射し、低温領域が大きいときには、低温領域全体においてレーザ光を走査させる。
【0016】
このように構成された本実施形態に係るワーク搬送システム1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係るワーク搬送システム1を用いて、加熱炉から取り出されたワークWをプレス鍛造装置まで搬送するには、ロボット2の手首5の先端に取り付けたハンド6によってワークWを把持し、カメラ8の視野範囲かつ赤外線放射温度計9の測定範囲にワークWを移動する。
これにより、ワークWの輪郭形状とその内側の温度分布が取得される。取得されたワークWの輪郭形状と温度分布の情報はレーザ制御装置12の主制御装置14に送られる。
【0017】
主制御装置14は、測定された温度分布と、記憶部に記憶されている目標温度分布とを比較して、目標温度分布の温度よりも低い低温領域のワークWの輪郭内における位置情報と、温度差の情報を抽出する。
そして、主制御装置14は、ロボット制御装置7から逐次取得したワークWのグローバルな位置情報と、カメラ8から取得した低温領域のローカルな位置情報とに基づいて、低温領域のグローバルな位置情報を算出する。
【0018】
逐次算出される低温領域のグローバルな位置情報はスキャナ制御装置16に送られて、低温領域にレーザ光が照射され続けるようにスキャナ11が制御される。
また、主制御装置14において抽出された温度差の情報は出力制御装置15に送られて、レーザ発振器10により出力されるレーザ光の強度が調整される。すなわち、温度差が大きい場合には、レーザ光の強度を高くし、温度差が小さい場合には、レーザ光の強度を低くする。
【0019】
このように、本実施形態に係るワーク搬送システム1によれば、加熱炉から取り出されたワークWは、ハンド6によって把持された状態でロボット2によりプレス鍛造装置まで搬送される経路上において、温度分布が測定され、低温領域が抽出される。
そして、低温領域は、ロボット2による搬送中にレーザ光の照射により加熱され続け、目標雄温度分布との温度差が低減される。
【0020】
この場合に、本実施形態に係るワーク搬送システム1によれば、ロボット2による搬送中にスキャナ11を追従させてワークWを加熱する。これにより、ワークWを停止させて加熱する場合と比較して、効率的に加熱することができ、サイクルタイムを短縮することができるという利点がある。
【0021】
また、レーザ光によれば、ワークWを局所的に効率よく加熱することができる。また、スキャナ11によりレーザ光を走査させることによって、低温領域の大きさに関わらず、ワークWを十分に加熱することができるという利点がある。
その結果、ワークWからの放熱によってワークWの温度が部分的に低下しても、搬送中にワークWの温度分布を適正に補正して、鍛造後のワークWの品質を安定させることができる。
【0022】
なお、本実施形態においては、ロボット2によるワークWの移動に追従(トラッキング)させてスキャナ11によりワークWの低温領域にレーザ光を照射させることとしたが、これに代えて、トラッキングを行うことなく、定位置にてワークWを加熱することにしてもよい。
【0023】
また、本実施形態においては、鍛造後のワークWの成形性の良否情報を取得し、成形性が良好ではない領域の目標温度分布を補正してもよい。例えば、目標温度分布における成形性不良の領域の温度を増大させればよい。成形性の良否情報は、作業者が鍛造後のワークWを測定することにより取得してもよいし、鍛造後のワークWの3次元形状を測定することにより取得してもよい。
【0024】
また、本実施形態においては、加熱装置4としてレーザ光の照射により加熱する装置を例示したが、これに代えて、他の任意の加熱装置4を採用してもよい。また、ロボット2として6軸多関節型ロボットを例示したが、これに限定されるものではなく、他の任意の形態のロボットを使用してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 ワーク搬送システム
2 ロボット
3 温度測定装置
4 加熱装置
8 カメラ(位置検出装置)
11 スキャナ
W ワーク
図1
図2
図3
図4