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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】粒子測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/0227 20240101AFI20240116BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G01N15/02 B
G01N21/05
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019237757
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021105581
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【弁理士】
【氏名又は名称】加久田 典子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 郁
(72)【発明者】
【氏名】坂東 和奈
(72)【発明者】
【氏名】田渕 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】近藤 聡太
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-089540(JP,A)
【文献】特表2019-521316(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082186(WO,A1)
【文献】特表2019-527348(JP,A)
【文献】特開2018-179971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/02
G01N 21/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
料の流路が内部に形成されたフローセルと、
照射光を出射する光源と、
前記照射光をその焦点位置における断面が略帯状の形状をなすフラットトップビームに整形する回折光学素子と、
整形された前記照射光の照射により前記流路の所定区間内に形成される検出領域を通過する前記試料に含まれる粒子からの散乱光を、前記所定区間を前記試料の流れ方向に仮想的に延長させた位置から検出する検出手段と、
前記散乱光に基づいて前記粒子の粒径を解析する解析手段と
備えた粒子測定装置。
【請求項2】
請求項に記載の粒子測定装置において、
前記光源が出射した照射光を前記回折光学素子の要求を満たす径及び開き角に調整して前記回折光学素子に入射させる調整手段をさらに備えた粒子測定装置。
【請求項3】
請求項又はのいずれかに記載の粒子測定装置において、
前記回折光学素子は、
前記照射光の焦点深度方向における光エネルギー密度のばらつきが所定範囲内であるフラットトップビームに整形することを特徴とする粒子測定装置。
【請求項4】
請求項からのいずれかに記載の粒子測定装置において、
前記回折光学素子による前記照射光の整形の過程で生じた高次回折光を除去する除去手段をさらに備えた粒子測定装置。
【請求項5】
請求項に記載の粒子測定装置において、
前記除去手段は、
間隔をあけて配置された形状の異なる複数のスリットにより、前記回折光学素子により整形された前記照射光を通過させつつ前記高次回折光を段階的に除去することを特徴とする粒子測定装置。
【請求項6】
請求項からのいずれかに記載の粒子測定装置において、
前記検出手段は、
前記散乱光を所定のフレームレートで撮像し、
前記解析手段は、
個々のフレーム画像に撮像された前記散乱光に基づく前記粒子の輝点位置から前記流れ方向に対し垂直な面における前記粒子の移動量を算出し、前記移動量に基づいて前記粒子の拡散係数相当の粒径を解析することを特徴とする粒子測定装置。
【請求項7】
請求項からのいずれかに記載の粒子測定装置において、
前記検出手段は、
前記散乱光を受光して強度に応じた大きさの信号を出力し、
前記解析手段は、
前記信号に基づいて前記粒子の光散乱相当の粒径を解析することを特徴とする粒子測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料中に浮遊する粒子の大きさを求める1つの手法として、FPT(flow particle tracking)法が知られている。FPT法は、試料に光を照射して粒子からの散乱光を検出することで粒子の動きを追跡し、拡散による移動量から幾何寸法に近い粒子の大きさを測定する手法であり、FPT法を用いた装置(以下、「FPT装置」と称する。)として、拡散による粒子の運動を試料の流れによる粒子の輸送運動から分離して粒径を測定するものが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/159131号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したFPT装置においては、粒子が検出領域を通過する間にその動きを所定時間おきに撮像して各時点における粒子の位置を特定し、各時間内の移動距離を求めて平均2乗変位を算出し、これに基づいて粒径を測定する(以下、このような粒径を「拡散係数相当径」と称する。)。ここで、照射光がガウシアンビームであると、検出領域における粒子通過方向(媒体の流れ方向)の長さが一定でなくなる。その場合には、粒子が検出領域のどの位置を通過するかによって撮像可能な回数に差異が生じる。すなわち、粒子の通過位置に応じて粒径の測定精度にばらつきが生じ、結果として、FPT装置の粒径分解能は低くなる。FPT装置においては、粒子の拡散係数相当径と散乱光強度とを同時に特定することで粒子の屈折率を求めることができるが、拡散係数相当径と散乱光強度の測定値のばらつきが相乗して、求まる屈折率の精度にも影響を及ぼす。また、光散乱式の粒子測定装置においては、検出された光の強度に基づいて粒径が求められる(以下、このような粒径を「光散乱相当径」と称する。)ことから、照射光のエネルギー密度が検出領域において一様でない場合には、やはり測定装置の粒径分解能は低くなる。
【0005】
また、仮に検出領域を小さく設定すれば、検出領域における光エネルギー密度を高めることができ、粒子の検出感度を向上させることが可能となると考えられる。しかしながら、この場合には試料の実効的な流量が減少し、測定装置の性能にも影響するため、検出領域を小さくすることは好ましくない。
【0006】
そこで、本発明は、粒径分解能を向上させる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の粒子測定装置を採用する。なお、以下の括弧書中の文言はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0008】
すなわち、本発明の粒子測定装置は、粒子に照射する光をその焦点位置における断面が略帯状の形状をなすフラットトップビームに整形する回折光学素子を備えている。より具体的には、試料の流路が内部に形成されたフローセルと、照射光を出射する光源と、光の照射により流路の所定区間内に形成される検出領域を通過する試料に含まれる粒子からの散乱光を、所定区間を試料の流れ方向に仮想的に延長させた位置から検出する検出手段と、散乱光に基づいて粒子の粒径を解析する解析手段とをさらに備え、回折光学素子は、照射光を整形して所定区間を流れる試料に照射する。
【0009】
光線をフラットトップに整形する手法として、シリンドリカルレンズや非球面レンズ等の組み合わせが知られている。これらの手法は、光線の一部分だけがフラットトップ状になる、高度な調整が必要になる等、実用するには課題が多い。これに対し、回折光学素子は、高効率で容易にフラットトップ形状とすることができる点で優位性がある。
【0010】
上記の態様の粒子測定装置は回折光学素子を備えており、この粒子測定装置においては、回折光学素子により照射光はその焦点位置における断面が略帯状(細長い矩形状)の形状のフラットトップビームに整形され、焦点深度方向にシート状となる。そして、このように整形された照射光が照射されることで粒子の検出領域が形成される。したがって、この態様によれば、照射光をシート形状にすることで、検出領域における照射光のエネルギー密度を高くすることができ粒子検出感度の向上が図れる。また、広範囲に浮遊する粒子からの散乱光を捉えることができ検出流量の増加が見込まれる。さらに、フラットトップビームを用いることで、粒径分解能(粒径の解析精度)を向上させることが可能となる。
【0011】
また、上記の粒子測定装置において、光源が出射した照射光を回折光学素子の要求を満たす径及び開き角に調整して回折光学素子に入射させる調整手段をさらに備えている。
【0012】
この態様の粒子測定装置においては、光源が出射した照射光を調整手段(ビームエキスパンダ)が回折光学素子の要求を満たす形状(径及び開き角)になるよう調整する。したがって、この態様によれば、回折光学素子には最適な形状に調整された照射光が入射するため、回折光学素子による照射光の整形をより精度よく実現させることができる。
【0013】
好ましくは、上記のいずれかの粒子測定装置において、回折光学素子は、照射光の焦点深度方向における光エネルギー密度のばらつきが所定範囲内であるフラットトップビームに整形する。
【0014】
この態様の粒子測定装置によれば、検出領域のいずれの地点においても光強度は略均一となるため、同一の粒径を有する粒子が検出領域のどの地点を通過するとしても、その粒子からの散乱光を略同一の強度で検出することができ、粒径分解能の向上に寄与することが可能となる。
【0015】
より好ましくは、上記のいずれかの粒子測定装置において、回折光学素子による照射光の整形の過程で生じた高次回折光を除去する除去手段をさらに備えている。また、除去手段は、間隔をあけて配置された形状の異なる複数のスリットにより、回折光学素子により整形された照射光を通過させつつ高次回折光を段階的に除去する。
【0016】
この態様の粒子測定装置においては、除去手段(スリット板)が回折光学素子による照射光の整形の過程で生じた高次回折光を除去しつつ整形された照射光を通過させて焦点に向かわせる。したがって、この態様によれば、測定に必要な光は確保されるのに対して測定の邪魔になる迷光は除去されるため、ノイズを低減させることができる。
【0017】
さらに好ましくは、上記のいずれかの粒子測定装置において、検出手段は、粒子からの散乱光を所定のフレームレートで撮像し、解析手段は、個々のフレーム画像に撮像された散乱光に基づく粒子の輝点位置から流れ方向に対し垂直な面における粒子の移動量を算出し、移動量に基づいて粒子の拡散係数相当の粒径を解析する。
【0018】
この態様の粒子測定装置においては、粒子からの散乱光が検出手段(撮像器)により撮像され、個々のフレーム画像に撮像された散乱光に基づいて、試料の流れ方向(Y方向)対し垂直な面(XZ平面)における粒子の移動量が算出され、算出された移動量に基づいて粒子の粒径、すなわち拡散係数相当径が解析される。つまり、この態様の粒子測定装置は、FPT装置である。
【0019】
この態様によれば、検出領域を形成する照射光がフラットトップ形状に整形されていることから検出領域のいずれの地点においても光強度は略均一であるため、粒子がどの位置をY方向に通過するとしても、粒子の動きを略同一のフレーム数にわたって撮像して一定の回数で追跡することができ、拡散係数相当径の粒径分解能を向上させることが可能となる。
【0020】
或いは、上記のいずれかの粒子測定装置において、検出手段は、散乱光を受光して強度に応じた大きさの信号を出力し、解析手段は、信号に基づいて粒子の光散乱相当の粒径を解析する。
【0021】
この態様の粒子測定装置においては、粒子からの散乱光が検出手段(例えば、受光素子)により受光されてその強度に応じた信号が出力され、信号に基づいて粒子の粒径、すなわち光散乱相当径が解析される。つまり、この態様の粒子測定装置は、光散乱式の粒子計数器である。
【0022】
この態様によれば、検出領域を形成する照射光がフラットトップ形状に整形されていることから検出領域のいずれの地点においても照射光の強度は略均一であるため、同一の粒径を有する粒子からの散乱光の強度を粒子の通過位置に関わらず均一化させることができ、光散乱相当径の粒径分解能を向上させることが可能となる。さらに、光散乱相当径と拡散係数相当径から粒子の屈折率を算出する際の屈折率分解能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、粒径分解能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施形態における粒子測定装置の構成を示すブロック図である。
図2】一実施形態における検出ユニットの構成を簡略的に示す図である。
図3】一実施形態における照射光学系の構成を簡略的に示す図である。
図4】一実施形態におけるスリットの形状を示す図である。
図5】照射光の焦点位置におけるビーム形状及びその強度分布を示す図である。
図6】一実施形態における検出ユニットの構成を簡略的に示す垂直断面図(図2中のVI-VI切断線に沿う断面図)である。
図7】焦点位置におけるビーム形状による作用について実施形態と比較例とを対比させて説明する図である。
図8】フラットトップに整形された光の強度に関するシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は好ましい例示であり、本発明はこの例示に限定されるものではない。
【0026】
〔粒子測定装置の構成〕
図1は、一実施形態における粒子測定装置1の構成を示すブロック図である。ここでは一例として、粒子測定装置1がFPT装置である場合の構成を説明する。
【0027】
図1に示されるように、粒子測定装置1は、大きくみると検出ユニット2及び制御演算ユニット3からなる。このうち、検出ユニット2は、試料流体に光を照射し、試料流体中を浮遊する粒子と照射光との相互作用により生じる散乱光を検出することに関わる機器群である。また、制御演算ユニット3は、検出ユニット2を構成する各機器の制御、及び、検出ユニット2により検出された散乱光に基づき個々の粒子の移動量を特定して粒径を解析することに関わる機能群である。
【0028】
〔検出ユニットの構成〕
先ず、検出ユニット2の構成について説明する。
【0029】
検出ユニット2は、例えば、光源10、照射光学系20、フローセル30、集光光学系40、撮像器50等で構成されている。光源10は、例えば半導体レーザダイオードであり、シングルモード(TEM00モード)の円形レーザを照射光として出射する。照射光学系20は、光源10が出射した照射光を所定の形状に整形してフローセル30の内部に集光する。なお、照射光学系20の具体的な構成については、別の図面を参照しながら詳しく後述する。
【0030】
フローセル30は、石英やサファイア等の透明な材料からなり、その内部に試料流体が流し込まれる流路が形成されている。フローセル30に照射光が入射すると、流路内に検出領域が形成される。集光光学系40は、例えば光学レンズであり、検出領域を通過する粒子からの散乱光を撮像器50に集光する。撮像器50は、例えばCCD(charge-coupled device)やCMOS(complementary metal-oxide semiconductor)等のイメージセンサを備えたカメラであり、集光光学系40によりイメージセンサの受光面に集光された散乱光を撮像する。
【0031】
図2は、一実施形態における検出ユニット2の構成を簡略的に示す図である。
【0032】
図2中(A):フローセル30の斜視図である。フローセル30はL字状の形状をなしており、その内部には、第1開口31からY方向に延びる第1区間32と、第2開口33からZ方向に延びる第2区間34とが各端部において連通したL字形の流路が形成されている。試料流体は、第1開口31から第1区間32に流し込まれ、第2区間34を経て第2開口33から外部へ排出される。なお、フローセル30の形状は、L字状に屈曲した部位を有する形状であればよく、L字形に代えて、例えばコの字形やクランク形を採用してもよい。
【0033】
図2中(B):検出ユニット2の構成、特に各構成間の位置関係を簡略的に示す平面図である。照射光学系20は、第1区間32における試料流体の流れ方向(Y方向)に対して垂直な方向(X方向)から、整形された照射光Lをフローセル30に入射させる。また、集光光学系40及び撮像器50は、第1区間32における試料流体の流れに対向する位置、すなわち第1区間32を試料流体の流れ方向に仮想的に延長させた位置に配置され、検出領域Mを通過した粒子からの散乱光Lを集光して撮像する。これらの構成により、個々の粒子のXZ平面における動き(拡散運動)が観測される。なお、散乱光Lの撮像については、別の図面を用いてさらに後述する。
【0034】
図3は、一実施形態における照射光学系20の構成を簡略的に示す図である。図3においては、発明の理解を容易とするために、各構成間の距離や照射光Lのビーム径の変化、焦点の大きさ等を誇張して示しており、これらは実際のスケール比とは一致しない。
【0035】
照射光学系20は、例えば、ビームエキスパンダ21、回折光学素子22、第1スリット板23、第2スリット板24、第3スリット板25等で構成されている。ビームエキスパンダ21は、複数枚の光学レンズからなり、光源10が出射したシングルモードの照射光Lを、その開き角をビームエキスパンダ21で調整しながら回折光学素子22の要求を満たす形状(大きさ)にする。例えば、本実施形態の回折光学素子22に対しては、ビームエキスパンダ21は、拡大して径を合わせ、平行光にして回折光学素子22の適切な位置に入射させる。つまり、ビームエキスパンダ21は、照射光Lを回折光学素子22に最適な形状に調整する。なお、図3においては、一例として2枚の光学レンズからなるガリレオ式のビームエキスパンダを図示しているが、ガリレオ式に代えてケプラー式のビームエキスパンダを採用してもよく、また、光学レンズの枚数は2枚に限定されない。
【0036】
回折光学素子22は、入射した照射光Lのビーム形状を整形する。具体的には、回折光学素子22は、シングルモードのガウス分布に近似した強度分布を有する照射光L(ガウシアンビーム)を均一な強度分布を有するフラットトップ(トップハット)ビームに整形しつつ、焦点付近におけるビームの形状が焦点深度方向にシート状となるように整形する。ここで、「シート状」とは、平面と多少の厚みを有する立体形状であり、その厚み方向に切断した断面形状が細長い矩形状(ライン状、略帯状)をなす形状のことである。
【0037】
本実施形態における回折光学素子22は、例えば、焦点位置における断面の長辺(Z方向の長さ)を2mmとし、短辺(Y方向の長さ)を20μmとした、長辺が短辺の100倍の長さを有する細長い矩形状のフラットトップビームに照射光Lを整形する。また、照射光Lの焦点位置からの焦点深度方向の距離±1mm(X方向の長さ2mm)を検出領域とする場合には、その範囲でのデフォーカスによる光エネルギー密度のばらつきを所定範囲、例えば±20%以内に制御する回折光学素子の設計が必要となる。本実施形態の回折光学素子22は、そのように設計されているため、光エネルギー密度のばらつきが許容範囲内であるシート形状の検出領域を形成することができる。なお、本実施形態においては、回折光学素子22として住友電気工業社製のDOEビームシェイパを用いた。また、焦点位置におけるビームの断面形状(以下、「ビーム形状」と略称する。)及びその強度プロファイルについては、別の図面を用いてさらに後述する。
【0038】
ところで、ガウシアンビームをフラットトップに整形するには、複数のレンズを用いて実現することも可能である。しかしながら、球面レンズ(fθレンズやシリンドリカルレンズ等も含む)を用いる場合には、複数枚のレンズを複雑に組み合わせて構成する必要がある上に、十分なフラットトップを得ることが困難である。また、非球面レンズを用いる場合には、レンズに入射する光線の角度やビーム形状がフラットトップ形状に大きく影響することから、高度な調整及び構造の安定性が求められる。これに対し、本実施形態においては回折光学素子22を用いるため、簡易な構成でフラットトップへの整形を行うことができる。
【0039】
回折光学素子22と焦点との間には、例えば3枚の各スリット板23,24,25が配置されている。これらのスリット板は、照射光Lが回折光学素子22を通過することにより生じる高次回折光を除去するためのものである。高次回折光は迷光となり、測定におけるノイズとなるため、除去する必要がある。主光線と高次回折光の分離状態に応じて、複数のスリット板を適切な位置に配置する。例えば、開き角が大きい高次回折光を除去するには、回折光学素子22の近傍に配置すれば小さなスリットで十分だが、回折光学素子22から離れるに従って大きなスリットが必要になる。また、開き角が小さな高次回折光を除去するには、回折光学素子22の近傍に配置するならば主光線との分離が十分でないため除去が困難であるが、回折光学素子22から離れるに従って十分に分離するので除去が容易になる。回折光学素子22から焦点に向かう照射光Lのビーム形状は位置により異なるが、各位置におけるビーム形状はシミュレーションにより予め算出されており、各スリット板の中央部には、それぞれが配置される位置における照射光Lのビーム形状よりもやや大きい形状のスリットが形成されている。
【0040】
図4は、一実施形態におけるスリットの形状を示す図である。このうち、(A)は第1スリット板23に形成された第1スリット23aの形状、(B)は第2スリット板24に形成された第2スリット24aの形状、(C)は第3スリット板25に形成された第3スリット25aの形状を示している。
【0041】
例えば、各スリット板には、ビーム形状よりもやや大きく同心の矩形状のスリットが形成される。また、3枚のスリット板を比較すると、最も上流側に配置される第1スリット板23には、最も大きいスリット23aが形成されており、最も下流側に配置される第3スリット板25には、最も小さいスリット25aが形成されており、中間部に配置される第2スリット板24には、スリット23aより小さくスリット25aより大きいスリット24aが形成されている。
【0042】
回折光学素子22において照射光Lのビーム形状が整形される過程では、回折格子の構造により高次回折光が生じる。そのため、回折光学素子22からは、整形された照射光Lが焦点に向かって出射するのに加え、高次回折光が放射状に発散していき点状の光となって現れる。
【0043】
回折光学素子22を通過した光が第1スリット板23に到達すると、回折光学素子22から大きな角度で発散した高次回折光が第1遮蔽面23bにより遮蔽される一方、残りの光、すなわち整形後の照射光L及び遮蔽されなかった高次回折光は第1スリット23aを通過する。また、第1スリット23aを通過した光が第2スリット板24に到達すると、回折光学素子22から中程度の角度で発散した高次回折光が第2遮蔽面24bにより遮蔽される一方、残りの光は第2スリット24aを通過する。さらに、第2スリット24aを通過した光が第3スリット板25に到達すると、回折光学素子22から小さな角度で発散した高次回折光が第3遮蔽面25bにより遮蔽される一方、残りの光は第3スリット25aを通過する。
【0044】
このように複数のスリット板を配置することで、回折光学素子22から発散した高次回折光を複数の遮蔽面によって段階的に遮蔽しつつも、整形された照射光Lは複数のスリットを確実に通過させて焦点に到達させ、所望の検出領域を形成することができる。したがって、測定に必要な光は確実に確保しながら、測定の邪魔になる迷光を効果的に除去し(低減させ)てノイズを低減させることができ、測定におけるノイズの影響を最小限に抑制し、粒径の検出感度を向上させることが可能となる。
【0045】
なお、図3に示した各スリット板の相対位置や図4に示した各スリットの形状は、一例として挙げたものであり、上記の例に限定されない。また、配置するスリット板の枚数についても、状況に応じて適宜変更が可能である。
【0046】
図5は、回折光学素子22により整形された照射光Lの焦点位置におけるビーム形状及びその強度分布を示す図である。
【0047】
図5中(A):焦点位置における照射光Lのビーム形状を捉えた写真を、ビーム形状の中心を原点としてY軸及びZ軸上に重ねて示している。この図に示されるように、照射光Lは、焦点位置においてZ方向に細長い矩形状(ライン状、略帯状)のビーム形状をなしている。
【0048】
図5中(B):図5中(A)に示されたビームのY軸に重なる位置における強度分布を示すグラフである。このグラフから、Y方向においては、原点を中心とした±10μmの範囲(中心部の20μm)では光の強度が概ね1.0で均一であり、-30~-10μm及び+10~30μmの範囲(中心部の外側の約20μm)で光の強度が概ね1.0から0.0まで急降下していることが分かる。
【0049】
図5中(C):図5中(A)に示されたビームのZ軸に重なる位置における強度分布を示すグラフである。このグラフから、Z方向においては、原点を中心とした±1000μmの範囲(中心部の2mm)では光の強度が概ね1.0で均一であり、-1200~-1000μm及び+1000~1200μmの範囲(中心部の外側の約0.2mm)で光の強度が概ね1.0から0.0まで急降下していることが分かる。
【0050】
これらのグラフから、整形された照射光Lの焦点位置における強度は、Y方向の長さ20μm×Z方向の長さ2mmの範囲内で概ね均一であることが分かる。
【0051】
照射光Lの焦点位置は、フローセル30の流路内(より具体的には、第1区間32内)に設定されており、照射光Lがフローセル30に入射すると、焦点位置に検出領域が形成される。回折光学素子22により照射光Lをシート形状のフラットトップビームに整形することで、検出領域における光エネルギー密度を高くすることができる。これにより、広範囲に浮遊するサブミクロンオーダの粒子からの散乱光を観測することが可能となる。
【0052】
図6は、一実施形態における検出ユニット2の構成を簡略的に示す垂直断面図(図2中のVI-VI切断線に沿う断面図)である。なお、集光光学系40及び撮像器50については、断面の図示を省略している。
【0053】
上述したように、整形された照射光Lは、X方向からフローセル30に入射して第1区間32に検出領域Mを形成する。検出領域Mの形状は、長辺をZ方向とし、短辺をY方向として、長辺と略同等の奥行(デフォーカス範囲)をX方向に有したシート状のものとなる。
【0054】
検出領域Mと集光光学系40との間に位置するフローセル30の内壁には、凹状の形状をなし検出領域Mの中心からの距離が概ねその曲率半径となる凹面部35が形成されている。検出領域Mを通過した粒子Pから生じた散乱光Lがフローセル30の内壁に入射する際には、試料流体の屈折率とフローセル30の屈折率との差異から光の屈折が生じうるが、凹面部35により、フローセル30の内壁に入射する散乱光Lの屈折を抑制することができる。
【0055】
フローセル30に対する集光光学系40及び撮像器50の位置は、集光光学系40の光軸を基準に決定されており、各構成は、集光光学系40の光軸が検出領域Mの中心、凹面部35の中心、撮像器50が備えるイメージセンサの受光面の中心を通過する位置にそれぞれ配置されている。撮像器50は、XZ平面に対向しており、検出領域Mで生じた散乱光の動き、すなわち検出領域Mを通過する個々の粒子Pの拡散運動を観測し、所定のフレームレートで動画として撮像する。
【0056】
このように、試料の流れに対向する位置に散乱光の検出系(集光光学系40及び撮像器50)を配置することで、試料の実効流量を減らすことなく散乱光の動き(粒子Pの拡散運動)を観測することが可能となる。
【0057】
〔制御演算ユニットの構成:図1参照〕
続いて、制御演算ユニット3の構成について説明する。
【0058】
制御演算ユニット3は、例えば、制御部60、画像取得部70、画像解析部80、粒径解析部90、出力部100等で構成されている。制御部60は、検出ユニット2における各機器の動作や、制御演算ユニット3において実行される一連の処理を制御する。制御部60は、例えば、光源10による照射光の出射、フローセル30に流し込む試料の流速(単位時間当たりの流量)、撮像器50による動画の撮像を制御する。なお、試料の流速については、マスフローコントローラ等の流量制御機器を設け、これを用いて制御してもよい。
【0059】
画像取得部70は、撮像器50により所定のフレームレートで撮像された動画からフレーム毎の静止画(フレーム画像)を取得する。画像解析部80は、連続するフレームのフレーム画像に捉えられた個々の粒子を関連付けた上でその軌跡を特定し、フレーム画像毎にブラウン運動による2次元方向(X方向及びZ方向)の移動量を特定する。
【0060】
粒径解析部90は、画像解析部80により解析された個々の粒子の移動量に基づいて、個々の粒子の粒径(拡散係数相当径)を解析し、粒径毎の個数濃度を算出する。なお、粒径の具体的な解析方法は、平均2乗変位と試料の粘度、温度から拡散係数を求め、ストークス・アインシュタインの式に従って粒径を算出する、例えば特許6549747号公報に記載されているものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0061】
出力部100は、粒径解析部90による解析の結果を出力する。出力部100は、画面への表示、プリンタへの出力、或いはネットワークを介した他のデバイスへの送信等、様々な態様により解析結果を出力することが可能である。
【0062】
なお、図1に図示した制御演算ユニット3の構成は、あくまで主要なものであり、構成はこれらに限定されない。例えば、画像解析部70により特定された粒子の軌跡の各測定点の平均輝度値や最大輝度値等から粒子の散乱光強度相当値を特定する散乱光強度特定部を設け、さらに、粒径解析部90により解析された拡散係数相当径及び散乱光強度特定部により特定された散乱光強度相当値に基づいて、粒子毎にその特性を解析する特性解析部を設けてもよい。特性解析部は、例えば、粒径が既知であり概ね単一の粒径と見なせる試料粒子、例えばポリスチレンラテックス粒子等を用いて予め求められた既知の粒径及び既知の屈折率に対する相対的な散乱光強度の関係に基づいて、粒子の屈折率を特定したり、粒子と気泡との区別を行ったりする。その他、記憶部を設けて解析結果等を記憶させてもよい。
【0063】
また、動画のフレームレート及び試料の流速は、撮像された動画から個々の粒子につき所定枚数のフレーム画像を取得できるように制御される。例えば、検出領域MのY方向の長さが20μmであり、30fpsで(すなわち1秒間に30回)撮像される動画から10枚のフレーム画像を取得するためには、試料の流速は60μm/秒に設定されることとなる。
【0064】
〔ビーム形状の比較〕
図7は、焦点位置における照射光のビーム形状による作用について実施形態と比較例とを対比させて説明する図である。図7においては、光の強度分布が染色の濃淡で示されており、強度がより高い領域はより濃く染色されており、強度がより低い領域はより淡く染色されている。
【0065】
なお、発明の理解を促進するために、ビームの形状(長辺と短辺の比率等)や濃淡の度合いは誇張して表現されており、実際のものとは一致しない。また、比較のために、実施形態及び比較例のいずれにおいても、動画のフレームレート、試料の流速は同一であると仮定し、試料流体の流れに運搬されてY方向に進む個々の粒子PのXZ平面における動きが所定のフレームレートで撮像されるものとする。
【0066】
図7中(A):実施形態におけるビーム形状及びその強度分布を示している。上述したように、実施形態においては、検出領域Mは、長辺をZ方向とし短辺をY方向として、長辺と略同等の長さのデフォーカス範囲がX方向に確保されたシート形状のフラットトップビームにより形成される。
【0067】
すなわち、実施形態においては、焦点位置における検出領域Mのいずれの地点においても光強度は略均一であるため、粒子Pが検出領域MにおけるZ方向の略中心の位置z1をY方向に進む場合でも、検出領域MにおけるZ方向の端部付近の位置z2をY方向に進む場合でも、所定の時間(所定のフレーム数)にわたって粒子Pの動きを撮像することができる。したがって、実施形態によれば、粒子PのXZ平面における拡散運動の追跡回数(取得されるフレーム画像の枚数)を、粒子Pの通過位置に関わらず一定にすることができ、これにより拡散係数相当径の粒径分解能を向上させることができる。また、粒子が通過する位置による屈折率の測定誤差を低減させることができる。
【0068】
図7中(B):比較例におけるビーム形状及びその強度分布を示している。比較例においては、断面が楕円形状のガウシアンビームにより検出領域M´が形成されるものとする。また、ここでは比較のために、検出領域M´の形状は実施形態における検出領域Mの形状と同一であると仮定し、図7中(A)における検出領域Mと同じ大きさの矩形をガウシアンビームに中心を合わせて重ねた領域を検出領域M´として示している。周知のように、ガウシアンビームにおける強度分布はガウス分布に近似しており、光強度は中心部で高く周辺部で低くなる。
【0069】
すなわち、比較例においては、検出領域M´内の光強度は均一でないため、粒子PのXZ平面における拡散運動の追跡回数(取得されるフレーム画像の枚数)は、必然的に粒子Pの通過位置に応じて相違することとなる。例えば、検出領域M´におけるZ方向の略中心の位置z1´とZ方向の端部付近の位置z2´とを比較すると、全体として位置z1´の方が位置z2´よりも光強度が高い。したがって、粒子Pが位置z1´をY方向に進む場合には、所定の時間(所定のフレーム数)にわたって粒子Pの動きを撮像することができても、粒子Pが位置z2´をY方向に進む場合には、位置z1´をY方向に進む場合よりも撮像することができる時間が短く(フレーム数が少なく)なる。このように、比較例においては、粒子Pの通過位置によって粒子PのXZ平面における拡散運動の追跡回数(取得されるフレーム画像の枚数)にばらつきが生じることから、拡散係数相当径の粒径分解能は、自ずと低くなる。
【0070】
このように、上述した実施形態によれば、比較例による場合と比較して、拡散係数相当径の粒径分解能(粒径の測定精度)を向上させることができる。
【0071】
〔フラットトップビームの強度分布〕
図8は、フラットトップビームに整形された光の強度に関するシミュレーション結果を示す図である。図8のグラフにおいて、線Gは、ガウシアンビームの強度分布(ガウス分布)を表している。また、線F及び線Fは、いずれも線Gに示されるガウシアンビームを所定のビーム幅を有するフラットトップビームに整形した場合のシミュレーション上の強度分布を表している。
【0072】
線F:ガウシアンビームをその中心強度の1/e(=0.135)となる径のビーム幅を有するフラットトップビームに整形した場合の強度分布を表している。このフラットトップビームにおいては、光の強度がガウス分布のピークの約63%の大きさで均一になる。ガウシアンビームを用いて測定する場合には、ビームの中心と外周付近とで同径の粒子からの散乱光に対する検出信号の大きさに約7.4倍(=1/0.135)のばらつきが生じることとなる。これに対し、線Fの強度分布を有するフラットトップビームを用いて同径の粒子を測定する場合には、光の強度がガウス分布のピークの約63%にはなるものの、この点さえ許容すれば、どの位置においても同径の粒子からの散乱光に対する検出信号の大きさを同等にすることができる。
【0073】
また、粒子が検出領域を通過する時間、すなわち粒子を所定の光散乱強度で観測可能な時間を、粒子の通過位置に関わらず同等にすることができる。また、XZ平面における粒子の拡散運動を観測する上で、ガウス分布の中心強度の1/eの領域の約2倍の領域において(相対強度約0.63において、線Fに示されるフラットトップビームの相対径2(-1~1)に対し、線Gに示されるガウシアンビームの相対径1(-0.5~0.5))、追跡回数のばらつきを抑制することができる。
【0074】
線F:ガウシアンビームをその中心強度の0.5となる径のビーム幅を有するフラットトップビームに整形した場合の強度分布を表している。このフラットトップビームにおいては、光の強度がガウス分布のピークの約105%(約1.05倍)の大きさで均一になる。つまり、このフラットトップビームを用いて測定する場合には、ガウシアンビームを用いて測定する場合よりも高い光散乱強度を得ることができる。
【0075】
なお、上記の各シミュレーション値は、ガウシアンビームの成分がロスなく全てフラットトップに整形されると仮定した場合におけるものである。実際には、ガウシアンビームの多少の成分が高次回折光となって除去されるため、その差分だけ数値は低くなると考えられる。いずれにせよ、上記のシミュレーション結果に影響を与えるものではない。
【0076】
〔本発明の優位性〕
以上のように、上述した実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
【0077】
(1)回折光学素子22により照射光が検出領域においてシート形状をなすフラットトップビームに整形されるため、広範囲に浮遊するサブミクロンオーダの粒子からの散乱光を観測可能とする光エネルギー密度と実効流量を確保することができる。
【0078】
(2)長辺をZ方向、短辺をY方向とし、長辺と略同等の長さのデフォーカス範囲がX方向に確保されたシート形状のフラットトップビームにより検出領域を形成することで、検出領域のいずれの地点においても光強度は略均一となるため、粒子がZ方向におけるどの位置をY方向に通過するかに関わらず、粒子のXZ平面における動きを略同一の時間(略同一のフレーム数)にわたって撮像し、一定の回数(取得されるフレーム画像の枚数)で追跡することができ、これにより拡散係数相当径の粒径分解能を向上させることができる。
【0079】
(3)回折光学素子22を用いて照射光がフラットトップに整形されるため、他の光学系(例えば、光学レンズ)を用いる場合と比較して、照射光学系20を簡易な構成とすることができる。
【0080】
(4)光源10と回折光学素子22との間にビームエキスパンダ21が設けられているため、光源10が出射した照射光の開き角を調整しながら回折光学素子22の要求を満たす形状に調整することができ、照射光を回折光学素子22に対し最適な形状で入射させることができる。
【0081】
(5)回折光学素子22と照射光の焦点との間に異なる複数のスリット板23~25が配置されているため、回折光学素子22から発散した高次回折光を複数の遮蔽面23b~25bによって段階的に遮蔽しつつ、回折光学素子22により整形された照射光は複数のスリット23a~25aを確実に通過させて焦点に到達させることで、測定に必要な光は確保しつつ、測定の邪魔になる迷光を効果的に除去してノイズを低減させることができる。
【0082】
本発明は、上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することが可能である。
【0083】
上述した実施形態においては、照射光の焦点位置におけるビーム形状を、Y方向の長さを20μmとし、Z方向の長さを2mmとしているが、あくまで一例として挙げたものであり、この長さに限定されない。撮像器50の性能に応じて、適宜設定すればよい。
【0084】
上述した実施形態においては、整形された照射光LをX方向から第1区間32に入射させているが、これに代えて、Z方向から第1区間32に入射させてもよい。その場合には、長辺をX方向とし短辺をY方向としてデフォーカス範囲がZ方向に確保されたシート形状のフラットトップビームにより検出領域が形成されることとなる。
【0085】
上述した実施形態においては、粒子測定装置1がFPT装置である場合の構成例を説明しているが、粒子測定装置1はFPT装置に限定されず、流体に含まれる粒子から放出される散乱光の強度に基づいて粒子数の計数や粒径の特定を行う光散乱式の粒子計数器であってもよい。その場合には、撮像器50に代えて受光素子等からなる受光器を設け、さらに画像解析部80に代えて受光器から出力された受光信号を解析する信号解析部を設ければよい。このような構成により、照射光の強度が均一なシート形状の検出領域が形成されるため、同一の粒径を有する粒子からの散乱光の強度を粒子の通過位置に関わらず均一化させることができ、光散乱相当径の粒径分解能を向上させることが可能となる。
【0086】
その他、粒子測定装置1の各構成部品の例として挙げた材料や数値等はあくまで例示であり、本発明の実施に際して適宜に変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0087】
1 粒子測定装置
2 検出ユニット
3 制御演算ユニット
10 光源
20 照射光学系
21 ビームエキスパンダ (調整手段)
22 回折光学素子
23 第1スリット板 (除去手段)
24 第2スリット板 (除去手段)
25 第3スリット板 (除去手段)
30 フローセル
40 集光光学系
50 撮像器 (検出手段)
60 制御部
70 画像取得部
80 画像解析部 (解析手段)
90 粒子解析部 (解析手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8