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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】車載器
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20240116BHJP
   G07B 15/00 20110101ALI20240116BHJP
   G06F 11/14 20060101ALI20240116BHJP
   G06F 11/22 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B60R16/02 660K
G07B15/00 510
B60R16/02 660R
G06F11/14 638
G06F11/22 675Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019238259
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021104795
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩史
(72)【発明者】
【氏名】檜田 裕之
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-146249(JP,A)
【文献】特開2004-155232(JP,A)
【文献】特開平07-056773(JP,A)
【文献】特開平06-175863(JP,A)
【文献】特開平10-289114(JP,A)
【文献】特開2013-114555(JP,A)
【文献】特開2004-233583(JP,A)
【文献】特開2002-108835(JP,A)
【文献】特開2008-027464(JP,A)
【文献】特開2019-057187(JP,A)
【文献】特開2002-235598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
G07B 15/00
G06F 11/14
G06F 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載器であって、
CPUと、
車両のバッテリから電力供給を受け、内部電圧を生成する電源回路と、
周期的な割込信号に対応する前記CPUからの返送信号に基づいて、前記CPUが異常状態であるか否か判定する異常判定回路と、
前記CPUが異常状態であると判定された場合に、前記電源回路から前記CPUへの電力供給を一時的に遮断することで前記CPUを再起動させる電源制御回路と、
を備え、
前記割込信号の周期は、前記車載器と無線通信する路側機の設置間隔に基づいて設定される、
車載器。
【請求項2】
前記CPUは、前記割込信号を受信した場合に、前記CPUが実行する1又は複数のタスクに異常が生じているか否かを判定する自己診断を実施する、
請求項1に記載の車載器。
【請求項3】
前記CPUは、前記自己診断により異常が生じていると判定されたタスクの復旧を実施する、
請求項2に記載の車載器。
【請求項4】
前記CPUは、前記異常が生じていると判定されたタスクが復旧しなかった場合に、前記返送信号を送信しない、
請求項3に記載の車載器。
【請求項5】
前記CPUは、前記割込信号の受信時に所定のタスクが実行されている場合、前記所定のタスクの終了後に前記自己診断を実施する、
請求項2ないし4の何れかに記載の車載器。
【請求項6】
前記CPUは、前記自己診断の完了時に所定のタスクが実行されている場合、前記所定のタスクの終了後に前記タスクの復旧を実施する、
請求項3または4に記載の車載器。
【請求項7】
前記CPUは、前記返送信号を送信しない場合、所定のデータをメモリに書込み、再起動後に、前記メモリから前記データを読出す、
請求項1ないし6の何れかに記載の車載器。
【請求項8】
前記CPUは、
前記返送信号を送信しない場合、再起動の実施を表すデータを前記メモリに書き込み、
再起動後に前記メモリから前記データを読出した場合に、所定の動作の実施を制限する、
請求項7に記載の車載器。
【請求項9】
前記CPUは、
前記返送信号を送信しない場合、タスクの実行に利用されるデータを前記メモリに書き込み、
再起動後に前記メモリから前記データを読出し、前記タスクの実行に利用する、
請求項7に記載の車載器。
【請求項10】
前記CPUは、前記返送信号を送信しない場合に、再起動の実施をユーザに通知するための動作を実施する、
請求項1ないし9の何れかに記載の車載器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ETC車載器などの車載器は、車両のバッテリから電力供給を受けて動作する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-146249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような車載器は、車両のエンジンを停止ししなければ車載器の電源がオフにならないため、車両の走行中に車載器のCPUが異常状態になると、復旧が困難である。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、車両の走行中であってもCPUを異常状態から復旧することが可能な車載器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様の車載器は、CPUと、車両のバッテリから電力供給を受け、内部電圧を生成する電源回路と、周期的な割込信号に対応する前記CPUからの返送信号に基づいて、前記CPUが異常状態であるか否か判定する異常判定回路と、前記CPUが異常状態であると判定された場合に、前記電源回路から前記CPUへの電力供給を一時的に遮断することで前記CPUを再起動させる電源制御回路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の走行中であってもCPUを異常状態から復旧することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る車載器の構成例を示すブロック図である。
図2】車載器の動作例を示すタイミング図である。
図3】車載器の動作例を示すタイミング図である。
図4】車載器の動作例を示すタイミング図である。
図5】車載器の動作例を示すタイミング図である。
図6】車載器の動作例を示すタイミング図である。
図7】車載器の動作例を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る車載器1の構成例を示すブロック図である。車載器1は、例えば電子料金収受システム(ETC:Electronic Toll Collection System)に用いられるETC車載器である。車載器1は、車両のバッテリから電力供給を受けて動作する。
【0011】
車載器1は、無線通信部2、メモリ3、LED4、音声回路5、スピーカ6、電源回路7、電源制御回路8、異常判定回路9、及びCPU10を備えている。異常判定回路9は、周期回路91及び遅延回路92を備えている。
【0012】
その他、車載器1は、さらにGNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)受信機等を備えてもよい。
【0013】
CPU10は、プログラムに従って情報処理を実行する。プログラムは、例えばメモリ3等の情報記録媒体に記憶されている。メモリ3は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。
【0014】
無線通信部2は、路側機と無線通信するためのユニットである。無線通信部2による信号処理は、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communication:狭域通信)の規格に則って行われる。
【0015】
電源回路7は、車両のバッテリから電力供給を受け、内部電圧を生成する。電源回路7は、例えばDC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)を備えている。電源回路7は、さらにLDOレギュレータ(リニアレギュレータ)を備えてもよい。
【0016】
車両のバッテリと電源回路7との間の接続形式は、アクセサリ電源線(ACC)及びグランド線(GND)の2線を含む2線式であってもよいし、さらに常時電源線を含む3線式であってもよい。
【0017】
電源制御回路8は、電源回路7からCPU10への電力供給を制御する。例えば、電源制御回路8は、車両側からイグニッションスイッチONを表す信号を受けると、電源回路7からCPU10への電力供給を開始する。
【0018】
また、電源制御回路8は、異常判定回路9から電源制御信号を受けると、電源回路7からCPU10への電力供給を一時的に遮断することで、CPU10を再起動させる。
【0019】
具体的には、電源制御回路8は、例えばLDOレギュレータ(リニアレギュレータ)からなり、EN端子に入力される電源制御信号に応じて、電源回路7からCPU10への電力の供給と遮断を切り替える。
【0020】
異常判定回路9は、CPU10の外部に設けられており、CPU10への周期的な割込信号に対応するCPU10からの返送信号に基づいて、CPU10が異常状態であるか否か判定する。異常状態とは、例えばCPU10がフリーズした状態などを意味する。
【0021】
具体的には、周期回路91が、周期的な割込信号を生成し、CPU10へ出力する。遅延回路92は、割込信号のL/Hレベルが反転してから所定時間内に返送信号の返送用パルスが入力されれば、電源制御信号の再起動用パルスを出力せず、割込信号のL/Hレベルが反転してから所定時間内に返送信号の返送用パルスが入力されなければ、電源制御信号の再起動用パルスを出力する。
【0022】
言い換えると、割込信号のL/Hレベルが反転してから所定時間内に返送信号の返送用パルスが入力されれば、CPU10が正常状態であると判定され、割込信号のL/Hレベルが反転してから所定時間内に返送信号の返送用パルスが入力されなければ、CPU10が異常状態であると判定される。
【0023】
本実施形態では、遅延回路92は、抵抗及びコンデンサを用いたアナログ式の遅延回路であるが、これに代えて、カウンタを用いたデジタル式のウォッチドックタイマが適用されてもよい。
【0024】
図2ないし図7は、車載器1の動作例を示すタイミング図である。
【0025】
車載器1に含まれる各部は、イグニッションスイッチの状態を表すIG信号がON状態に対応するHレベルにあるときに、電力供給を受けて動作する。
【0026】
周期回路91は、周期的に変化する割込信号を生成する。遅延回路92は、割込信号の立ち下がりをトリガーとしてコンデンサの充電を開始する。これに限らず、割込信号の立ち上がりをトリガーとしてもよい。
【0027】
パラメータは、CPU10によるタスクの実行を表す。タスクは、車載器としての機能を実現するためのタスクである。図の例では、通信タスクの実行を表す、すなわち通信中であることを表すパラメータを示している。
【0028】
タスクには、例えば、路側機との通信を実施する通信タスク、他機器との通信を実施する外部IFタスク、ユーザへの通知を実施するHMIタスク、セキュリティタスク、及びタイマタスク等がある。
【0029】
HMI(Human Machine Interface)タスクは、LED4、音声回路5、及びスピーカ6(図1参照)を駆動することによって実現される。
【0030】
図2に示すように、CPU10は、割込信号の立ち下がりをトリガーとして自己診断を実施する。自己診断は、CPU10が実行する全てのタスクについて異常が生じているか否かを判定する処理である。
【0031】
図3に示すように、割込信号の立ち下がり時に通信タスク等が実行中である場合には、CPU10は、通信タスク等の終了後に自己診断を実施する。
【0032】
図2及び図3に示すように、自己診断の結果、全てのタスクに異常が生じていなければ、CPU10は返送信号の返送用パルスを出力する。返送信号の返送用パルスは、例えばHレベルの単発パルスとして出力される。遅延回路92は、返送信号の返送用パルスを検知すると、電源制御信号の再起動用パルスを出力しない。このため、CPU10は再起動されない。
【0033】
図4に示すように、自己診断の結果、異常が生じていると判定されたタスクがある場合には、CPU10は、異常が生じていると判定されたタスクの復旧をソフトウェア処理によって実施する。
【0034】
図5に示すように、自己診断の完了時に通信タスク等が実行中である場合には、CPU10は、通信タスク等の終了後に、異常が生じていると判定されたタスクの復旧をソフトウェア処理によって実施する。
【0035】
図4及び図5に示すように、異常が生じていると判定されたタスクの復旧に成功した場合には、CPU10は返送信号の返送用パルスを出力する。遅延回路92は、返送信号の返送用パルスを検知すると、電源制御信号の再起動用パルスを出力しない。このため、CPU10は再起動されない。
【0036】
図6及び図7に示すように、異常が生じていると判定されたタスクの復旧に失敗した場合には、CPU10は返送信号の返送用パルスを出力しない。遅延回路92は、返送信号を検知しないまま時定数に対応する所定時間が経過すると、電源制御信号の再起動用パルスを出力する。これにより、CPU10は再起動する。
【0037】
電源制御信号の再起動用パルスは、例えばLレベルの単発パルスとして出力され、Lレベルの期間、電源回路7からCPU10への電力を遮断する。具体的には、電源制御信号は、遅延回路92で所定時間が経過したときに立ち下がり、その後、周期回路91の割込信号が立ち上がるときに立ち上がる。
【0038】
このような異常判定回路9の動作によって、車両の走行中であってもCPU10を再起動させることが可能となる。また、始めに自己診断で異常と判定されたタスクの復旧をソフトウェア処理によって実施することで、不必要なCPU10の再起動を避けることも可能となる。
【0039】
なお、下記のように、CPU10は、返送信号の返送用パルスを出力しない場合に、再起動の実施を表すステータスデータや通信タスク等の実行に利用される料金所データ等の所定のデータをメモリ3に書込み、再起動後にメモリ3から読出してもよい。
【0040】
図6に示すように、CPU10は、返送信号の返送用パルスを出力しない場合に、再起動の実施を表すステータスデータをメモリ3に書込み、再起動後にメモリ3から読出す。CPU10は、ステータスデータを読出した場合、LED4及びスピーカ6を用いたカード認証通知の実施を制限する。
【0041】
CPU10が再起動する場合、ETCカードのカード認証を再実施する必要があるが、車両の走行中にカード認証が完了したことを通知すると、乗員が違和感を抱くおそれがある。そこで、乗員の違和感を低減するために、再起動時にはカード認証通知の実施を制限する。
【0042】
これに限らず、図7に示すように、CPU10は、返送信号の返送用パルスを出力しない場合に、再起動の実施をユーザに通知するための再起動通知を実施してもよい。再起動通知は、LED4及びスピーカ6を用いて実施される。これによっても、乗員の違和感を低減することが可能となる。
【0043】
さらに、図7に示すように、CPU10は、返送信号の返送用パルスを出力しない場合に、通信タスク等の実行に利用される料金所データ等をメモリ3に書込み、再起動後にメモリ3から読出す。CPU10は、メモリ3から読出された料金所データ等を、通信タスク等の実行に利用する。
【0044】
有料道路を走行する場合、料金所の路側機から取得した料金所データを保持しておき、精算時に使用する必要がある。そこで、CPU10が再起動する際に、通信タスク等の実行に利用される料金所データ等をメモリ3に一時的に退避しておくことで、円滑な復帰が容易となる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【0046】
周期回路91が出力する割込信号の周期は、車載器1と無線通信する路側機の設置間隔に基づいて設定されてもよい。例えば、ETC2.0においてはITSスポットが200m以上の間隔を空けて設置されるので、車両が200m走行する走行時間よりも周期を短くすることが好ましい。
【0047】
すなわち、割込信号の周期は、路側機の設置間隔を車両速度で除算することで得られる走行時間よりも短く設定される。ここで、車両速度を一定値として、割込信号の周期を予め設定してもよいし、GNSSデータ(GPSデータ)等に基づき車両速度を取得し、割込信号の周期を動的に変更してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 車載器、2 無線通信部、3 メモリ、4 LED、5 音声回路、6 スピーカ、7 電源回路、8 電源制御回路、9 異常判定回路、91 周期回路、92 遅延回路、10 CPU

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7