(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】医療器具の放熱能力を高めるための装置
(51)【国際特許分類】
A61B 1/12 20060101AFI20240116BHJP
F25B 21/02 20060101ALI20240116BHJP
A61B 1/06 20060101ALI20240116BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20240116BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
A61B1/12 542
F25B21/02 T
A61B1/06 531
A61B1/00 714
G02B23/24 A
(21)【出願番号】P 2019547979
(86)(22)【出願日】2018-05-08
(86)【国際出願番号】 US2018031670
(87)【国際公開番号】W WO2018208834
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-27
(32)【優先日】2017-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510253996
【氏名又は名称】インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ファン,アンキ
(72)【発明者】
【氏名】フ,ティユン
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0335233(US,A1)
【文献】特開2008-136721(JP,A)
【文献】特開2006-198413(JP,A)
【文献】特開平11-299775(JP,A)
【文献】特開平10-178571(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0206939(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0306834(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
A61B 13/00 -18/18
A61B 34/00 -34/20
A61B 42/00 -90/98
A61F 2/01
A61N 7/00 - 7/02
G02B 23/24 -23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器であって、当該機器は、
先端部及び基端部を有する細長い部材と、
電子部品を含むハウジングと、
前記細長い部材の前記基端部と前記ハウジングとの間に配置されたヒートポンプ装置であって、前記ハウジングの外側に少なくとも部分的に配置され、且つ前記細長い部
材の本体を形成する材料
と前記ハウジングとの間で熱エネルギーを移動させるように構成されたヒートポンプ装置と、を有
しており、
該ヒートポンプ装置は、前記細長い部材の最大径よりも大きい最大径を有する、
機器。
【請求項2】
前記ヒートポンプ装置は、
前記細長い部材の前記基端部に結合された第1の側と、
前記ハウジングに結合された第2の側と、を含む、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記ヒートポンプ装置は、該ヒートポンプ装置の前記第1の側における前記細長い部材の第1の温度を、前記ハウジングの周りの周囲温度よりも低くなるように制御する、又は
前記ヒートポンプ装置は、該ヒートポンプ装置の前記第2の側における前記ハウジングの第2の温度を、前記細長い部材の前記先端部の最大接触温度よりも高くなるように制御する、請求項2に記載の機器。
【請求項4】
前記ヒートポンプ装置は、前記ヒートポンプ装置によって生成された廃熱を前記ハウジングを介して放散する、請求項2に記載の機器。
【請求項5】
前記ヒートポンプ装置は、前記細長い部材の前記基端部の基端部温度が前記ハウジングのハウジング温度よりも低くなるように、前記細長い部材から前記ハウジングに熱エネルギーを移動させるように構成される、請求項2に記載の機器。
【請求項6】
前記ヒートポンプ装置は熱電冷却器を含む、請求項1に記載の機器。
【請求項7】
前記細長い部材の前記先端部は、前記熱エネルギーを生成する発熱装置を含む、請求項1に記載の機器。
【請求項8】
機器であって、当該機器は、
先端部及び基端部を有する細長い部材と、
電子部品を含むハウジングと、
前記細長い部材の前記基端部と前記ハウジングとの間に配置されたヒートポンプ装置であって、前記ハウジングの外側に少なくとも部分的に配置され、前記細長い部材の第1の放熱能力を変化させ、且つ前記ハウジングの本体の第2の放熱能力を変化させるように構成されるヒートポンプ装置と、を有
しており、
該ヒートポンプ装置は、前記細長い部材の最大径よりも大きい最大径を有する、
機器。
【請求項9】
前記ヒートポンプ装置は、
前記細長い部材の前記基端部に結合された第1の側と、
前記ハウジングに結合された第2の側と、を含む、請求項8に記載の機器。
【請求項10】
前記ヒートポンプ装置は、該ヒートポンプ装置の前記第1の側における前記細長い部材の第1の温度を、前記ハウジングの周りの周囲温度よりも低くなるように制御する、又は
前記ヒートポンプ装置は、該ヒートポンプ装置の前記第2の側における前記ハウジングの第2の温度を、前記細長い部材の前記先端部の最大接触温度よりも高くなるように制御する、請求項9に記載の機器。
【請求項11】
前記ヒートポンプ装置は、前記細長い部材の第1の温度を、前記ハウジングの周りの周囲温度よりも低い第1の値に実質的に維持させ、且つ前記ハウジングの第2の温度を、前記細長い部材の前記先端部の最大接触温度よりも高い第2の値に実質的に維持させる、請求項8に記載の機器。
【請求項12】
前記ヒートポンプ装置は、廃熱が生成される速度が前記第2の放熱能力と前記第1の放熱能力との間の差よりも小さい場合に、前記ヒートポンプ装置によって生成された前記廃熱の放散を与える、請求項8に記載の機器。
【請求項13】
前記ヒートポンプ装置は、前記細長い部材の前記基端部の基端部温度が前記ハウジングのハウジング温度よりも低くなるように、前記細長い部材から前記ハウジングに熱を移動させる、請求項8に記載の機器。
【請求項14】
前記ヒートポンプ装置は熱電冷却器を含む、請求項8に記載の機器。
【請求項15】
前記細長い部材の前記先端部は、前記細長い部材の第1の放熱能力を変化させ、且つ前記ハウジングの第2の放熱能力を変化させる発熱装置を含む、請求項8に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2017年5月9日に出願された米国仮出願第62/503,521号の利益を主張するものであり、この文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、医療器具、特に熱を発生する医療器具を対象とする。より具体的には、本開示は、内視鏡等の医療器具に沿った放熱能力を高めるためのシステム及び方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
患者の解剖学的構造内の届き難い空間又はコンパクトな空間の視覚的検査のために、低侵襲性撮像器具が使用され得る。内視鏡は、低侵襲性撮像器具の例であり、この器具は患者の体内に挿入できる先端チップを有するシャフトを含み得る。ハウジングが、このシャフトの他端部に接続され得る。ハウジングは、例えば、人間のオペレータがシャフトの先端チップで取り込んだ画像を見る及び/又は記録するのを可能にする様々な光学部品及び電子部品を含み得る。内視鏡は、検査対象の解剖学的領域に照明を提供し得る。
【0004】
光学部品及び電子部品のいくつかをシャフトの先端チップの近くに配置することにより、撮像器具の画質及び電力効率を改善することが望ましい場合がある。既存のシステムでは、通常、安全規制によって設定される最大接触温度よりも低い温度に先端チップ/解剖学的構造の接触温度を維持する必要があるため、そのような改善は制限されている。最大接触温度は、例えば、先端チップが身体内部又は患者の組織の選択された範囲又はその範囲内で安全に直接的に接触することができる最高温度であり得る。こうして、先端チップを最大接触温度以下の温度に維持するための改善されたシステム及び方法が所望され得る。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、以下の特許請求の範囲によって要約される。
【0006】
例示的な一実施形態では、機器は、細長い部材、ハウジング、及びヒートポンプ装置を有する。細長い部材は、先端部及び基端部を有する。ハウジングは、細長い部材の基端部に結合される。ヒートポンプ装置は、細長い部材とハウジングとの間に結合される。ヒートポンプ装置は、細長い部材とハウジングとの間で熱エネルギーを移動させるように構成される。
【0007】
別の例示的な実施形態では、機器は、細長い部材、ハウジング、及びヒートポンプ装置を有する。細長い部材は、先端部及び基端部を有する。ハウジングは、細長い部材の基端部に結合される。ヒートポンプ装置は、細長い部材及びハウジングの少なくとも一方に結合される。ヒートポンプ装置は、細長い部材の第1の放熱能力を変化させ、ハウジングの第2の放熱能力を変化させるように構成される。
【0008】
さらに別の例示的な実施形態では、機器は、細長い部材、ハウジング、及び複数のヒートポンプ装置を有する。細長い部材は、先端部及び基端部を有する。ハウジングは、細長い部材の基端部の近くに配置される。複数のヒートポンプ装置のそれぞれは、細長い部材の先端部とハウジングとの間に形成された熱経路に沿った複数の位置のそれぞれに配置される。複数のヒートポンプ装置は、細長い部材の第1の放熱能力を変化させ且つハウジングの第2の放熱能力を変化させるように熱エネルギーを移動させる。
【0009】
さらに別の例示的な実施形態では、方法が提供される。熱エネルギーが、細長い部材の先端部で生成される。熱エネルギーは、細長い部材とハウジングとの間に熱的に結合されたヒートポンプ装置を作動させることにより、細長い部材と細長い部材の基端部に結合されたハウジングとの間で移動される。
【0010】
前述した一般的な説明及び以下の詳細な説明は、本質的に例示及び説明であり、本開示の範囲を限定することなく本開示の理解を与えることを意図していることを理解されたい。その点に関して、本開示の追加の態様、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明から当業者には明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の態様は、添付の図面と併せて読むとき、以下の詳細な説明から最もよく理解される。業界の標準的な慣行に従って、様々な特徴を縮尺通りに描いていないことを強調しておく。実際に、議論を明確にするために、様々な特徴の寸法を適宜拡大又は縮小し得る。さらに、本開示は、様々な例において参照番号及び/又は文字を繰り返す場合がある。この繰返しは、単純化及び明瞭化を目的とするものであり、それ自体、議論する様々な実施形態及び/又は構成の間の関係を規定するものではない。
【
図1】例示的な実施形態による撮像システムの図である。
【
図2】例示的な実施形態による撮像システムの概略図である。
【
図3】例示的な実施形態による放熱能力を高めるための方法の図である。
【
図4】例示的な実施形態による放熱能力を高めるための方法の図である。
【
図5】例示的な実施形態による、チップ及びハウジングの放熱能力対細長い部材及びハウジングの温度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明では、本開示と一致するいくつかの実施形態を説明する特定の詳細が記載される。実施形態の完全な理解を与えるために多数の特定の詳細が記載される。しかしながら、これらの特定の詳細の一部又は全てがなくてもいくつかの実施形態を実施し得ることが当業者には明らかであろう。本明細書に開示される特定の実施形態は例示的であり、限定的ではないことを意味する。当業者は、本明細書に具体的に説明していないが、本開示の範囲及び精神の範囲内にある他の要素を理解し得る。また、不必要な繰返しを避けるために、一実施形態に関連して図示及び説明した1つ又は複数の特徴は、他に特段の記載のない限り、又は1つ又は複数の特徴によって実施形態が機能しなくなる場合を除き、他の実施形態に組み込まれ得る。いくつかの例では、実施形態の態様を不必要に不明瞭にしないために、よく知られた方法、手順、構成要素、及び回路は詳細に説明していない。
【0013】
例示的な実施形態は、内視鏡等の医療器具の先端部の構成要素の動作によって発生した熱を放散するための装置及び方法を有することが望ましい場合があることを認識しており、これを考慮に入れる。熱は、先端部から患者の体外に配置されたハウジングに伝達される。次に、熱は、ハウジングの周りの周囲環境に吸収される場合がある。例示的な実施形態は、様々な要因によって内視鏡の先端部での放熱能力が制限される可能性があることを認識している。これらの要因には、例えば、限定するものではないが、先端チップの最大接触温度、周囲環境の周囲温度、及び先端チップとハウジングとの間に配置された電気部品及び機械部品の熱抵抗が含まれ得る。こうして、例示的な実施形態は、これらの制限要因の文脈において、チップの放熱能力及びハウジングの放熱能力を高めるための装置及び方法を提供する。
【0014】
以下に説明する例示的な実施形態は、内視鏡等の医療用撮像器具に沿った様々な関心領域で放熱能力を高めるための方法及び装置を提供する。例示的な一実施形態では、機器は、細長い部材、ハウジング、及びヒートポンプ装置を有する。細長い部材は、先端部及び基端部を有する。ハウジングは、細長い部材の基端部に結合される。ヒートポンプ装置は、細長い部材とハウジングとの間に結合される。ヒートポンプ装置は、細長い部材とハウジングとの間で熱エネルギーを移動させるように構成される。この熱エネルギーの移動には、先端部及びハウジングの放熱能力が含まれ得る。特に、ヒートポンプ装置を使用することによって、周囲温度を変更する必要なく、また内視鏡に望ましくない重量又は体積を追加することなく、先端部からの熱をハウジングを介して放散させることができる。
【0015】
さらに、先端部及びハウジングにおける放熱能力を高めることにより、先端部の温度が最大接触温度を超えることなく、熱を発生する構成要素をチップに又はその近くで使用できるようになり得る。例えば、内視鏡の画質、電力効率、及び堅牢性を高めるために、1つ又は複数の照明部品、1つ又は複数の電子部品、又はそれらの組合せを内視鏡の先端部のチップに又はその近くに再配置してもよい。特に、これらの構成要素をチップに向けて移動させると、光学系の簡素化に役立ち、それにより内視鏡の全体重量を減らすことができる。
【0016】
図面の
図1を参照すると、例示的な実施形態による撮像システム100が示されている。撮像システム100は、患者の解剖学的構造内の様々な身体内部及びキャビティを視覚的及び医学的に検査するために使用できる器具であり得る。例えば、撮像システム100は、患者の解剖学的構造の内部のビューを提供するために使用される内視鏡の形態をとってもよい。
【0017】
例示的な一実施形態では、撮像システム100は、細長い部材102、ハウジング106、及びヒートポンプ装置108を含む。実施態様に応じて、細長い部材102は、剛性、可撓性、関節運動性、部分的な可撓性、又はこれらの組合せであり得る。さらに、細長い部材102は、金属、プラスチック、これら2つの組合せ、又は他の何らかの適切な材料で構成してもよい。例示的な一例として、細長い部材102は、1つ又は複数の内部通路を有するシャフトの形態をとってもよい。細長い部材102は、放熱を高めるのに役立つように選択された熱抵抗を有し得る。
【0018】
撮像システム100を使用して患者の内部の解剖学的構造を視覚化する医療処置中に、細長い部材102の一部を患者の解剖学的構造の内部に挿入する一方、細長い部材102の別の部分を患者の解剖学的構造の外部に保持することができる。例えば、限定するものではないが、細長い部材102の第1の部分110が患者の解剖学的構造の内部に配置される一方、第2の部分112が患者の解剖学的構造の外部に配置され得る。
【0019】
細長い部材102は、先端部114及び基端部116を有する。シャフトの先端チップ104が、先端部114に配置される。例示的な一実施形態では、チップ104は、細長い部材の一体化部分であってもよい。他の例示的な実施形態では、チップ104は、細長い部材102に結合される別個の部品であってもよい。
【0020】
ハウジング106は、細長い部材102の基端部116の近くに配置される。この例示的な実施形態では、ハウジング106は、ヒートポンプ装置108を介して細長い部材102の基端部116に間接的に結合され得る。ハウジング106には、様々な構成要素をいくつでも含めることができる。例えば、限定するものではないが、ハウジング106は、人間のオペレータが撮像システム100の先端部114で取り込まれた画像を見るのを可能にする1つ又は複数の光学素子を含むことができる。これらの光学部品は、例えば、限定するものではないが、1つ又は複数のミラー、1つ又は複数のレンズ、1つ又は複数の他の光学部品、又はこれらの組合せを含んでもよい。実施態様に応じて、ハウジング106は追加の構成要素を含んでもよい。
【0021】
さらに、ハウジング106は、放熱を高めるために選択された1つ又は複数の材料から構成してもよい。例示的な一実施形態では、ハウジング106はアルミニウムから構成される。
【0022】
撮像システム100は、先端部114に配置された構成要素117も含む。構成要素117は、先端部114の温度を上昇させる熱エネルギーを生成し得る。いくつかの例示的な実施形態では、構成要素117は、熱エネルギーを生成する発光ダイオード(LED)又は別のタイプの電力供給を受ける光源又は照明源の形態をとる。他の例示的な実施形態では、構成要素117は、熱エネルギーを生成するセンサー又は信号送信機等の電動電子部品であってもよい。熱エネルギーを生成する構成要素117が省略される代替実施形態では、本明細書に記載の放熱システムを使用して、体熱を放散する、又は他に先端部114を冷却することもできる。
【0023】
先端部114、従ってチップ104は、先端部114が身体内部又は患者の組織の選択された範囲と又はその範囲内で直接的に接触する場合に安全であると考えられる最大接触温度(TC)を有する。例示的な一例では、この選択された範囲は、約2ミリメートル~約10ミリメートルの間であり得る。先端部114の最大接触温度は、安全基準により調整され得る。例示的な一例として、最大接触温度は、約40℃度~45℃の間の値であり得る。他の例示的な例では、最大接触温度は、約40℃~約50°の間の値であり得る。従って、先端部114の温度は、先端部114が最大接触温度を超える温度に到達しないことを確実するように制御する必要があり得る。
【0024】
この実施形態では、先端部114の温度は、構成部品117によって生成された熱エネルギーをチップ104からの主熱経路に沿ってハウジング106の周りの周囲環境118に放散することにより制御され得る。一例として、熱は、先端部114のチップ104から細長い部材102に沿って伝達され、次にハウジング106に拡がり、最終的にハウジング106から周囲環境118に放散され得る。
【0025】
周囲環境118は、周囲温度(TA)を有し得る。場合によっては、周囲温度は可変であり得る。例えば、限定するものではないが、周囲環境118は、病院又は診療所の手術室であってもよい。場合によっては、手術室は、約18℃~23℃の間で選択された温度に維持され得る。周囲環境118のタイプに応じて、周囲温度は、約18℃~約28℃の間の値に維持され得る。
【0026】
主熱経路は、先端部114の最大接触温度(TC)及び周囲環境118の周囲温度(TA)によって範囲制限されるシステム全体の温度差(ΔTO)を有する。例えば、最大接触温度が約40℃~45℃であり、周囲温度が約23℃~26℃である場合に、システム全体の温度差は約16℃~20℃であり得る。
【0027】
ヒートポンプ装置108は、主熱経路に沿った熱の移動を加速させる。この実施形態では、ヒートポンプ装置108は、細長い部材102とハウジング106との間に位置付けされる。より具体的には、ヒートポンプ装置108は、ヒートポンプ装置108の片側で細長い部材102の基端部116に結合され、且つヒートポンプ装置108の反対側でハウジング106の先端側107に結合され得る。このようにして、細長い部材102は、ヒートポンプ装置108を介してハウジング106に間接的に結合され得る。
【0028】
ヒートポンプ装置108は、細長い部材102の放熱能力及びハウジング106の放熱能力を高めるために使用される。特に、ヒートポンプ装置108は、細長い部材102の放熱能力及びハウジング106の放熱能力を高めて、主熱経路に沿った全体的な放熱を加速させ、且つ先端部114からの熱の除去を加速させることができる。細長い部材の放熱能力は、チップの放熱能力、先端部の放熱能力、又は細長い部材の放熱能力と呼ばれることもあり得る。ハウジングの放熱能力は、ハウジング放熱能力と呼ばれることもあり得る。
【0029】
図2は、撮像システム100の概略図である。この例示的な実施形態では、ヒートポンプ装置108は、熱電冷却器の形態をとる。しかし、他の例示的な実施形態では、熱源からヒートシンクに熱エネルギー(すなわち、熱)を移動させる他のタイプの装置が使用され得る。
【0030】
図示のように、ヒートポンプ装置108は、シャフト側200及びハウジング側202を有する。この例示的な実施形態では、シャフト側200は細長い部材102に熱的に結合され、ハウジング側202はハウジング106に熱的に結合される。ヒートポンプ装置108によって、細長い部材102の基端部116の温度(T1)を周囲環境118の周囲温度より低いレベルに制御するのを可能にする。さらに、ヒートポンプ装置108によって、ハウジング106の先端側107の温度(T2)を先端部114の最大接触温度よりも高いレベルに制御することを可能にする。
【0031】
例えば、周囲温度が約25℃に設定されている場合に、細長い部材の温度T1は、ヒートポンプ装置108の動作により約20℃に維持され得る。さらに、ヒートポンプ装置108は、ハウジング106の先端側107の温度T2を、先端部114の最大接触温度よりも実質的に高い値に制御する。例えば、限定するものではないが、最大接触温度が約42℃に設定されると、結果として得られる温度T2は約50℃になり得る。このようにして、温度T2と温度T1との間の差は、約30℃となり得、システム全体の温度差(TC-TA)の約17℃よりも大きい。
【0032】
従って、細長い部材102の基端部116は、ヒートポンプ装置108によって制御される温度を有し、この温度はハウジング106の温度よりも低い温度を有し得る。さらに、ヒートポンプ装置108のシャフト側200は、ヒートポンプ装置108のハウジング側202より低い温度を有し得る。ヒートポンプ装置108によって、熱をシャフト側200のより冷たい細長い部材102からハウジング側202のより暖かいハウジング106に移動させるのを可能にする。こうして、ヒートポンプ装置108は、細長い部材102とハウジング106との間の熱移動を加速させる。
【0033】
例示的な一実施形態では、ヒートポンプ装置108を動作させるために供給される外部電力は廃熱を生成する。ヒートポンプ装置108は、この廃熱をハウジング106を介して放散させることもできる。ハウジング106の放熱能力と細長い部材102の放熱能力との差が廃熱を生成する速度よりも大きい場合に、ハウジング106は、細長い部材102とヒートポンプ装置108との両方から放熱させることができる。一例では、ヒートポンプ装置を使用して達成されるハウジング106の放熱能力は、約7ワットであり得る。ヒートポンプ装置108を使用して達成される細長い部材102の放熱能力は、約3ワットであり得る。ヒートポンプ装置108による廃熱を生成する速度が約4ワット未満である場合に、ハウジング106は、先端部114とヒートポンプ装置108との両方から効果的に放熱させることができる。
【0034】
図1及び
図2の図解は、異なる例示的な実施形態を実施し得る方法に対する物理的又は構造的な制限を暗示することを意図していない。図示された構成要素に加えて、又はその構成要素の代わりに、他の構成要素を使用できる。一部の構成要素はオプションであり得る。
【0035】
いくつかの例示的な実施形態では、複数のヒートポンプ装置を含むヒートポンプシステムが、撮像システム100の主熱経路に沿って使用され得る。例えば、複数のヒートポンプ装置は、主熱経路に沿った複数の位置に配置され、各位置での熱エネルギーの移動を加速させ、それにより細長い部材102の放熱能力及びハウジング106の放熱能力を高めることができる。複数のヒートポンプ装置は、主熱経路に沿った複数の位置に複数の選択された温度差を生じさせ得る。集合的に又は個別的に、複数の位置のそれぞれの位置での複数の選択された温度差は、システム全体の温度差より大きくなり得る。従って、複数の位置のそれぞれで移動される熱エネルギー又は熱が増大する。
【0036】
図3は、例示的な実施形態に従って描かれた、放熱能力を高める方法の図である。
図3に示される方法300を使用して、以前の図で説明した撮像システム100のチップ104とハウジング106との間の細長い部材102等の医療器具に沿った放熱能力を高めることができる。方法300は、1組の動作又はプロセス302及び304として示される。示されるプロセス302及び304の全てが、方法300の全ての実施形態で実行されるわけではない。さらに、
図3に明確に示されていない1つ又は複数のプロセスが、プロセス302及び304の前に、後に、間に、又はプロセスの一部として含まれ得る。いくつかの実施形態では、プロセス302及び304のうちの1つ又は複数はオプションであり、従って省略され得る。
【0037】
方法300は、細長い部材の先端部で熱エネルギーを生成することを含むプロセス302で開始し得る。プロセス302において、先端部又はその近くで電力供給を受ける構成要素を動作させることにより、熱エネルギーが生成され得る。例えば、限定するものではないが、先端部又はその近くの発光ダイオード等の照明源の動作によって熱が発生し得る。別の例では、先端部又はその近くでの電子部品の動作によって熱が発生し得る。
【0038】
プロセス304において、ヒートポンプ装置が作動される。ヒートポンプは、細長い部材とハウジングとの間に熱的に結合され得る。
【0039】
プロセス306において、熱エネルギーは、細長い部材とハウジングとの間で移動される。こうして、ヒートポンプの使用によって、ヒートポンプ装置を省略した同様のシステムと比較して、細長い部材の放熱能力及びハウジングの放熱能力を高めることができる。従って、ヒートポンプ装置によって、ヒートポンプ装置が省略される場合と比較して、より強力な構成要素を先端チップ又はその近くで使用することを可能にし得る。例示的な一実施形態では、ヒートポンプ装置は熱電冷却器であってもよい。実施態様に応じて、熱エネルギーは、細長い部材からハウジングに、ハウジングから細長い部材に、又は両方に移動され得る。
【0040】
より詳細には、ヒートポンプ装置は、ヒートポンプ装置のシャフト側の細長い部材の温度を制御することができる。いくつかの例示的な実施形態では、ヒートポンプ装置は、シャフト側の温度を周囲温度よりも低いレベルに制御することができる。さらに、ヒートポンプ装置は、ヒートポンプ装置のハウジング側のハウジングの温度を制御することができる。いくつかの例示的な実施形態では、ヒートポンプ装置は、ハウジング側の温度を先端部114の最大接触温度よりも高い値に制御することができる。
【0041】
図4は、例示的な実施形態に従って描かれた、放熱能力を高めるための方法の図である。
図4に示される方法400を使用して、内視鏡等の撮像システムの放熱能力を高めることができる。方法400は、1組の動作又はプロセス402~410として示される。示されるプロセス402~410の全てが、方法400の全ての実施形態で実行されるわけではない。さらに、
図4に明確に示されていない1つ又は複数のプロセスが、プロセス402~410の前に、後に、間に、又はプロセスの一部として含まれ得る。いくつかの実施形態では、プロセス402~410のうちの1つ又は複数はオプションであり、従って省略され得る。
【0042】
方法は、内視鏡の先端部を患者の解剖学的構造の内部に挿入することを含むプロセス402で開始し得る。プロセス404では、内視鏡の先端部に配置された照明源が作動される。照明源は、例えば、発光ダイオードであってもよい。発光ダイオードを作動させることは、例えば、発光ダイオードに電力を供給することを含み得る。この例では、発光ダイオードの作動に応答して、内視鏡の先端部で熱が発生する。
【0043】
プロセス406では、内視鏡の先端部で発生した熱は、内視鏡のシャフトに沿って運ばれる。プロセス408では、熱は、ヒートポンプ装置によってシャフトから内視鏡のハウジングに移動される。ヒートポンプ装置は、シャフトの放熱能力及びハウジングの放熱能力を高めることができる。プロセス408において、ハウジングは患者の解剖学的構造の外部に配置される。
【0044】
プロセス408において、ヒートポンプ装置は、シャフト側の温度をハウジングの周りの周囲環境の周囲温度より低い値に維持する。さらに、ヒートポンプ装置を使用して、ハウジング側の温度を内視鏡の先端部114の最大接触温度を超える値に維持することができる。従って、ヒートポンプ装置は、シャフトとハウジングとの間の温度差を、先端部114と周囲環境との間のシステム全体の温度差よりも大きくさせ、それによってシャフトの放熱能力及びハウジングの放熱能力を高める。他の例示的な実施形態では、ヒートポンプ装置を使用して、ハウジング側の温度を内視鏡の先端部114の最大接触温度より低いが周囲温度よりも高い値に維持することができる。
【0045】
プロセス410では、熱は、ハウジングからハウジングの周りの周囲環境に放散される。このタイプの放散は、周囲環境への熱吸収とも呼ばれ得る。
【0046】
図5は、例示的な実施形態に従って描かれた、チップ及びハウジングの放熱能力対細長い部材及びハウジングの温度のグラフ500である。グラフ500は、
図1の撮像システム100のヒートポンプ装置108を使用して、
図1の細長い部材102、従って先端部114の放熱能力、及びハウジング106のハウジング放熱能力を高めることができる方法を示している。
【0047】
グラフ500は、温度軸502、チップの放熱能力軸504、及びハウジングの放熱能力軸506を含む。温度軸502は、摂氏温度の温度値を特定する。チップの放熱能力軸504は、先端部114におけるチップ104の放熱能力値をワットで特定する。ハウジングの放熱能力軸506は、ハウジング106の放熱能力値をワットで特定する。
【0048】
グラフ500は、線508、線510、線512、線514、及び線516も含む。この例示的な例では、第1の線508は、細長い部材102が1ワット当たり約6℃の熱抵抗を有する場合の撮像システム100の細長い部材102の放熱能力を表す。第2の線510は、細長い部材102が1ワット当たり約10℃の熱抵抗を有する場合の撮像システム100の細長い部材102の放熱能力を表す。第3の線512は、細長い部材102が1ワット当たり約15℃の熱抵抗を有する場合の撮像システム100の細長い部材102の放熱能力を表す。
【0049】
さらに、第1のハウジング線514は、ハウジングがアルミニウムで構成される場合の撮像システム100のハウジング106の放熱能力を表す。第2のハウジング線516は、ハウジングがステンレス鋼で構成される場合の撮像システム100のハウジング106の放熱能力を表す。
【0050】
この例示的な実施形態では、ハウジング106は、約120ミリメートルの長さ及び1平方メートルケルビン当たり約30ワット(W/m2K)の熱貫流率(thermal transmittance)を有し得る。ハウジング106の周りの周囲環境118の周囲温度は、約27℃に設定され得る。さらに、先端部114、従ってチップ104の最大接触温度は、約42℃であってもよい。こうして、システム全体の温度差は、最大接触温度と周囲温度との間の差であり、約15℃である。
【0051】
細長い部材102とハウジング106との間のヒートポンプ装置108を使用して、細長い部材102の温度は、ヒートポンプ装置108においてハウジング106の温度から切り離される。例えば、ヒートポンプ装置108を使用して、細長い部材102を周囲温度よりも低い温度に保ち、且つハウジング106を先端部114の最大接触温度よりも高い温度に保つことができる。
【0052】
線508に沿った点518によって示されるように、ハウジング106がアルミニウムで作製され、細長い部材が1ワット当たり約6℃の熱抵抗を有する場合に、ヒートポンプ装置108を使用して、シャフト側の温度を約25℃に維持することができる。さらに、線514に沿った点520によって示されるように、ヒートポンプ装置108を使用して、ハウジング側の温度を約50℃に維持することができる。こうして、細長い部材102とハウジング106との間に生じる温度差は、約25℃であり得、これは、システム全体の温度差よりも大きい。
【0053】
細長い部材102とハウジング106との間にこのより大きな温度差を生じさせることにより、ヒートポンプ装置は、チップの放熱能力を約3ワットに、ハウジングの放熱能力を約7ワットに増大させることができる。ヒートポンプ装置が、ハウジングとチップの放熱能力の差である4ワット未満の速度で廃熱を生成する場合に、ヒートポンプ装置は、チップからの熱とヒートポンプ装置からの廃熱との両方を放散させることができる。
【0054】
第1の線508と線514の交差点522によって示されるように、ヒートポンプ装置108がなければ、細長い部材102及びハウジング106は、細長い部材102とハウジング106との間の接合部で約35℃の温度を有するだろう。さらに、ヒートポンプ装置108がなければ、チップの放熱能力は約1.33ワットのみであり、ハウジングの放熱能力は約2.37ワットのみである。
【0055】
こうして、例示的な実施形態は、内視鏡等の医療器具に沿った放熱能力を高めるための方法及び装置を提供する。チップ及びハウジングの放熱能力を高めることによって、より多くの熱を発生する構成要素を内視鏡のチップ又はその近くで使用するのを可能する。例えば、高出力の発光ダイオードを内視鏡のチップに使用して、チップの最大接触温度を超えることなく、且つハウジングの再設計や周囲温度の変更を必要とせずに、より良い照明を提供することができる。
【0056】
さらに、ヒートポンプ装置として熱電冷却器を使用することによって、内視鏡に望ましくない重量又は体積を追加しないようにすることができる。さらに、熱電冷却器を使用することによって、内視鏡の動作中に追加の不要な音響又は電気ノイズが発生しないことが保証され得る。
【0057】
本発明の特定の例示的な実施形態について説明し、添付の図面に示したが、そのような実施形態は広範な発明の単なる例示であり、広範な発明を限定するものではないことを理解されたい。さらに、本発明の実施形態は、当業者には様々な他の修正が考えられるので、図示及び説明した特定の構造及び構成に限定されないことを理解されたい。
【0058】
さらに、本発明の実施形態の詳細な説明では、開示された実施形態の完全な理解を与えるために、多くの特定の詳細が記載されている。しかしながら、これらの特定の詳細なしに本開示の実施形態を実施し得ることは当業者には明らかであろう。場合によっては、本発明の実施形態の態様を不必要に曖昧にしないように、よく知られた方法、手順、及び構成要素は詳細に説明していない。